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特開2024-24220系統安定化システム及び系統安定化方法
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  • 特開-系統安定化システム及び系統安定化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024220
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】系統安定化システム及び系統安定化方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126890
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】長倉 孝行
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AD14
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】系統状態の変化に応じて需要家における受電電力の変化率を制御することにより、系統周波数の変動や停電を回避するようにした系統安定化システム及び系統安定化方法を提供する。
【解決手段】商用電力系統10から解列された構内電力系統13が単独運転状態となり、系統全体が低慣性になった時に構内電力系統13を安定化するための系統安定化システムであって、構内電力系統13が繋がる系統全体が低慣性になったことを検出する低慣性系統検出手段(受電電力検出部41)と、構内電力系統13に接続されて蓄電装置22を充放電制御するPCS23を備えたバックアップ電源21と、少なくとも受電電力検出値に基づいて構内電力系統13の周波数の変動が許容範囲に収まるようにバックアップ電源21から構内電力系統13への出力電力を制御して受電電力の変化率を所定値に調整する受電電力監視制御装置40と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統に接続された需要家の構内電力系統を安定化するための系統安定化システムであって、
前記商用電力系統から前記需要家が受電する電力を検出する受電電力検出手段と、
前記構内電力系統に接続され、かつ、蓄電装置を充放電制御する電力変換器を備えたバックアップ電源と、
少なくとも前記受電電力検出手段による検出値に基づいて前記バックアップ電源から前記構内電力系統に供給する電力を制御することにより、前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整する受電電力監視制御手段と、
を有することを特徴とした系統安定化システム。
【請求項2】
請求項1に記載した系統安定化システムにおいて、
前記需要家の受電点に分散型電源が接続されていることを特徴とした系統安定化システム。
【請求項3】
商用電力系統に接続された需要家の構内電力系統を安定化するための系統安定化方法であって、
前記需要家内の負荷量の急変時に前記構内電力系統の周波数の変動が許容範囲に収まるように、前記需要家の受電電力検出値及び前記構内電力系統が繋がる系統全体の慣性の大きさに基づいて、蓄電装置を充放電制御可能なバックアップ電源から前記構内電力系統に供給される電力を制御することにより、前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整することを特徴とした系統安定化方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載した系統安定化システムにおいて、
前記構内電力系統が繋がる系統全体が低慣性状態になったことを検出する低慣性系統検出手段を更に備え、
前記低慣性系統検出手段により前記系統全体が低慣性になったことを検出した状態で前記負荷量が急変した時に、前記受電電力監視制御手段によって前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整することを特徴とした系統安定化システム。
【請求項5】
請求項4に記載した系統安定化システムにおいて、
前記受電電力検出手段が、前記低慣性系統検出手段として機能することを特徴とする系統安定化システム。
【請求項6】
請求項4に記載した系統安定化システムにおいて、
前記商用電力系統と前記需要家との間に設置された回路遮断器のオン・オフ情報を検出する手段を備え、当該手段が前記低慣性系統検出手段として機能することを特徴とする系統安定化システム。
【請求項7】
請求項2に記載した系統安定化システムにおいて、
前記負荷量が急変した時の前記蓄電装置への充電電力を、前記分散型電源から前記構内電力系統を介して供給することを特徴とする系統安定化システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載した系統安定化システムにおいて、
前記受電電力監視制御手段は、前記受電電力の変化率を前記蓄電装置の蓄電余力に応じて変化させることを特徴とする系統安定化システム。
【請求項9】
需要家の構内電力系統が繋がる系統全体が低慣性になった状態で負荷量が急変した時に前記構内電力系統を安定化するための系統安定化方法であって、
前記負荷量が急変した時に、少なくとも前記需要家の受電電力検出値に基づいて、前記構内電力系統に接続されたバックアップ電源により蓄電装置の充放電電力を制御することにより、前記構内電力系統の周波数の変動が許容範囲に収まるように前記需要家の受電電力の変化率を所定値に制御することを特徴とする系統安定化方法。
【請求項10】
請求項9に記載した系統安定化方法において、
前記負荷量が急変した時の前記蓄電装置への充電電力を、前記需要家の受電点に接続された分散型電源から前記構内電力系統を介して供給することを特徴とする系統安定化方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載した系統安定化方法において、
前記受電電力の変化率を、前記蓄電装置の蓄電余力に応じて変化させることを特徴とする系統安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の慣性に起因して負荷量の急変時に系統周波数の変動や停電が発生するのを防止するための系統安定化システム及び系統安定化方法に関する。特に、本発明は、電力系統に事故が発生して単独運転状態になった場合や、離島や僻地における小規模の独立電力系統のように、本来的に低慣性の電力系統において負荷量が急変した際の安定化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、送配電系統に事故が発生し、それまで送配電系統から受電していた工場の構内電力系統が単独運転状態になった場合に、構内電力系統内部の需給バランスを調整しながら負荷への電力供給を継続する技術が開示されている。
この特許文献1では、複数台の発電機及び負荷を有する構内電力系統が送電系統から遮断されて単独運転状態になると、両系統間の連系線の潮流状態に基づいて構内電力系統の安定化に必要な調整量(総発電量と総負荷量との差)を算出する。そして、総発電量と総負荷量との乖離率が所定値以上である場合には、両者の大小関係(潮流の順逆)に応じて高優先度の負荷を遮断し、或いは、上記調整量を各発電機に按分する等の対策を講じることにより、需給バランスを調整しつつ構内電力系統の安定化を図っている。
【0003】
また、特許文献2には、外部サーバ内の電力系統監視部が電力系統の安定度(慣性、予備力等)を常時監視し、系統事故により商用電源が脱落して系統安定度が低下した時に、単独運転系統を構成する需要家内のPCSを運転して分散型電源から負荷に給電することにより、単独運転系統の周波数を安定化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-5336号公報([0010]~[0026]、図1図3等)
【特許文献2】特開2019-201453号公報([0013]~[0105]、図1図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は、大規模火力発電機等からなる商用電力系統10と回路遮断器12との間で事故が発生し、回路遮断器12の動作によって商用電力系統10から解列された送電系統11を介して、工場20の構内電力系統13が単独運転系統となった場合の構成図である。商用電力系統10は、規模が十分に大きく、慣性も十分に大きいと想定する。
この系統構成は、特許文献1,2により想定されている系統事故の発生時と基本的に同一である。
【0006】
図4において、30は送電系統11に接続された分散型電源であり、例えば、太陽電池31とその直流出力を所定の大きさ及び周波数の交流電力に変換する電力変換器としてのPCS(Power Conditioning System)32との組み合わせ、または、図示されていないディーゼル発電機等により構成されている。この分散型電源30は、工場20の構内設備として設置される場合もある。
【0007】
工場20の構内に設置されたバックアップ電源21は、蓄電池やキャパシタ等の蓄電装置22と、蓄電装置22の充放電を制御して構内電力系統13と蓄電装置22との間で電力を授受するための電力変換器としてのPCS23と、から構成されている。
また、構内電力系統13には交流電動機等の負荷が接続されている。
【0008】
いま、回路遮断器12が動作しておらず、商用電力系統10に接続されている場合には、送電系統11の慣性が十分大きいため、図5に示すように、仮に時刻tで負荷量が急減して工場20の受電電力が急減しても、受電電力の周波数は矢印aに示す如くそれほど変動せず、許容レベル(周波数の大きさの許容値、または周波数の変動幅の許容値)の範囲に収まっている。
【0009】
しかし、例えば商用電力系統10と回路遮断器12との間で事故が発生して回路遮断器12が動作し、構内電力系統13が単独運転系統になった場合、PCS32が擬似同期発電機としての制御機能を備えていない時や分散型電源30が小容量ディーゼル発電機である時には、構内電力系統13は低慣性状態となる。
【0010】
図6は、低慣性状態において、負荷量が急変することで受電電力が急減した際の波形である。
このとき、分散型電源30の出力は時刻t以後、直ちには立ち上がらないものとし、バックアップ電源21の出力は時刻tの前後にわたって不変(ゼロ)であると仮定している。
【0011】
この場合、構内電力系統13の周波数は図6における矢印bのように変動して許容レベルを超えてしまい、図示されていない継電器等が動作して負荷24が停電するおそれがあった。
すなわち、従来では、系統慣性の低下に応じた対策が採られていないため、構内電力系統13の安定化対策が不十分であった。
【0012】
そこで、本発明の解決課題は、需要家の受電電力変化率を調整することにより、負荷量の急変時における電力系統の周波数の変動や停電を回避すること、特に、低慣性系統を安定的に維持可能とした系統安定化システム及び系統安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の系統安定化システムは、商用電力系統に接続された需要家の構内電力系統を安定化するための系統安定化システムであって、
前記商用電力系統から前記需要家が受電する電力を検出する受電電力検出手段と、
前記構内電力系統に接続され、かつ、蓄電装置を充放電制御する電力変換器を備えたバックアップ電源と、
少なくとも前記受電電力検出手段による検出値に基づいて前記バックアップ電源から前記構内電力系統に供給する電力を制御することにより、前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整する受電電力監視制御手段と、
を有するものである。
より詳しくは、前記需要家内の負荷量の急変時に前記構内電力系統の周波数の変動が許容範囲に収まるように、前記需要家の受電電力検出値及び前記構内電力系統が繋がる系統全体の慣性の大きさに基づいて、蓄電装置を充放電制御可能なバックアップ電源から前記構内電力系統に供給される電力を制御することにより、前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整するものである。
【0014】
また、本発明の系統安定化システムは、前記構内電力系統が繋がる系統全体が低慣性状態になったことを検出する低慣性系統検出手段を更に備え、
前記低慣性系統検出手段により前記系統全体が低慣性になったことを検出した状態で前記負荷量が急変した時に、前記受電電力監視制御手段によって前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整するものである。
【0015】
更に、本発明の系統安定化方法は、商用電力系統に接続された需要家の構内電力系統を安定化するための系統安定化方法であって、
前記需要家内の負荷量の急変時に前記構内電力系統の周波数の変動が許容範囲に収まるように、前記需要家の受電電力検出値及び前記構内電力系統が繋がる系統全体の慣性の大きさに基づいて、蓄電装置を充放電制御可能なバックアップ電源から前記構内電力系統に供給される電力を制御することにより、前記需要家の受電電力の変化率を所定値に調整するものである。
【0016】
また、本発明の系統安定化方法は、需要家の構内電力系統が繋がる系統全体が低慣性になった状態で負荷量が急変した時に前記構内電力系統を安定化するための系統安定化方法であって、
前記負荷量が急変した時に、少なくとも前記需要家の受電電力検出値に基づいて、前記構内電力系統に接続されたバックアップ電源により蓄電装置の充放電電力を制御することにより、前記構内電力系統の周波数の変動が許容範囲に収まるように前記需要家の受電電力の変化率を所定値に制御するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、負荷量の急変時に需要家の受電電力変化率を調整することにより、電力系統の周波数の変動や停電を回避すると共に、単独運転系統にあってはその単独運転状態を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る系統安定化システムの構成図である。
図2図1において回路遮断器が動作した時(単独運転状態により低慣性系統が構成された時)の動作説明図である。
図3図1において回路遮断器が動作した時(単独運転状態により低慣性系統が構成された時)の動作説明図であり、特に、蓄電装置の蓄電余力が所定値より小さい場合の動作説明図である。
図4】構内電力系統が単独運転系統になった場合の構成図である。
図5図4において送電系統が健全な時の動作説明図である。
図6図4において回路遮断器が動作した時(単独運転状態により低慣性系統が構成された時)の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る系統安定化システムの構成図であり、図4と同一の部分については同一の参照符号を付して説明を省略し、以下では図4との相違点を中心に説明する。
【0020】
なお、図1における分散型電源30内の電力変換器は太陽電池31の直流出力を交流電力に変換するインバータでも良いし、バックアップ電源21内の電力変換器は蓄電装置22と構内電力系統13との間で順逆変換(双方向の電力変換)を行って電力を授受するインバータでも良い。すなわち、これらの電力変換器の種類は、いわゆるPCSに限定されるものではない。
【0021】
図1において、工場20の受電点には受電電力検出部41が設置されている。この受電電力検出部41は、送電系統11または分散型電源30から入力される電流及び電圧に基づいて工場20の受電電力を検出し、その検出結果を受電電力監視制御装置40に無線回線または有線回線を介して送信する機能を有する。なお、受電電力監視制御装置40は、回路遮断器12のオン・オフ状態も取得可能になっている。
【0022】
受電電力監視制御装置40は、受電電力検出部41から受信した受電電力検出値や回路遮断器12のオン・オフ状態に基づいて所定のプログラムを実行するCPU等の演算処理装置、メモリ、通信インターフェース等を備えている。なお、受電電力監視制御装置40は工場20に付随させて設置しても良いが、他の需要家を含む電力系統全体を監視制御する上位の系統監視制御装置に、受電電力監視制御装置40の機能を持たせても良い。
【0023】
受電電力監視制御装置40は、構内電力系統13(バックアップ電源21内のPCS23)が繋がる系統全体の慣性の大きさ、及び、受電電力検出値や回路遮断器12のオン・オフ状態に基づいて、負荷量の急減時に、工場20の受電電力の変化率を調整する。
具体的には、バックアップ電源21が構内電力系統13に出力するべき電力に応じた充放電制御信号を受電電力監視制御装置40が生成し、この充放電制御信号をPCS23に送信して蓄電装置22を充放電させることにより、工場20の受電電力の潮流の変化率を調整する。
なお、負荷量が急減したことは、受電電力検出値や負荷24からの情報に基づいて検出可能である。
【0024】
上述した負荷量急変時における受電電力変化率の調整動作は、
(a)送電系統11(商用電力系統10と回路遮断器12との間の送電路を含む)に事故が発生して回路遮断器12がオフされ、構内電力系統13が単独運転状態となり、構内電力系統13が繋がる系統全体が低慣性系統になった場合、
(b)構内電力系統13が単独運転状態となり、構内電力系統13が繋がる系統全体が低慣性系統となって、バックアップ電源21内の蓄電装置22の蓄電余力が小さい場合(蓄電装置22の定格容量が小さい場合やSOCが大きい場合)、
(c)送電系統11が健全であって回路遮断器12がオン状態であり、構内電力系統13が繋がる系統全体の慣性が十分に大きい場合、
の何れの場合にも実行される。
【0025】
上記の(a),(b)において、前記系統全体が低慣性系統になったことは、受電電力監視制御装置40が回路遮断器12のオフ状態や受電電力検出部41による受電電力検出値を受信することにより検出可能である。受電電力監視制御装置40は、前記系統全体が低慣性となった場合、負荷量が急減した時に受電電力変化率を徐々に減少(緩減)させる。
また、上記の(c)の場合には、上記の(a),(b)の場合よりも大きい変化率で受電電力を減少させれば良い。
なお、受電電力変化率の調整に当たっては、蓄電装置22のSOCの範囲内で実現可能な変化率を考慮することは言うまでもない。
【0026】
次に、図2は、送電系統11に事故が発生して回路遮断器12がオフし、構内電力系統13が、十分に大きい慣性を有する商用電力系統10から解列されて単独運転系統(低慣性系統)となった場合において、時刻tで負荷量が急減した時の動作を示している。
受電電力監視制御装置40は、受電電力検出部41から受信した受電電力検出値や回路遮断器12のオフ情報に基づいて構内電力系統13が繋がる系統全体が低慣性になったことを検出する。この状態で時刻tに負荷量が急減したら、時刻t以後は受電電力を緩減させるように受電電力変化率を設定する。そして、この設定値に従って工場20の受電電力が緩やかに減少するように蓄電装置22の充放電制御信号を生成してPCS23に送信し、PCS23が蓄電装置22を充電させることにより、バックアップ電源21の出力を制御して受電電力変化率を上記設定値に一致させる。
【0027】
図2では、時刻tに蓄電装置22への充電電力を大きくし、その後は時刻tまで充電電力を徐々に小さくする充放電制御信号をPCS23に与えて受電電力変化率を緩減させている。この期間(t~t)の蓄電装置22への充電電力Pは、分散型電源30から構内電力系統13、PCS23を介して蓄電装置22に向う潮流によって供給される。
【0028】
図2から明らかなように、時刻t以後は、受電電力とバックアップ電源21の出力(蓄電装置22への充電電力P)との和が負荷量と等しくなる。言い換えれば、期間(t~t)における受電電力の減少分が蓄電装置22への充電電力Pとなり、負荷24に供給される電力(負荷量)は時刻t以後、一定値のままとなっている。
上述した受電電力監視制御装置40及びバックアップ電源21の動作により、受電電力の周波数は図2に矢印cで示すようにそれほど変動しなくなり、停電を回避して構内電力系統13の安定化を図ることができる。
【0029】
次に、図3は、図2と同様に構内電力系統13が繋がる系統全体が低慣性になった状態で時刻tに負荷量が急減した場合の動作を示すものであるが、特に、蓄電装置22の蓄電余力が小さい場合の動作説明図である。
蓄電装置22の蓄電余力が所定値より小さい場合(蓄電装置22の容量がもともと小さい場合、または、蓄電装置22のSOCが大きいため更に充電できる容量が小さい場合)には、図2に示したように受電電力変化率を緩減させるための充電電力Pを確保できないことが考えられる。
【0030】
従って、このような場合には、図3に示すごとく、期間(t~t)における蓄電装置22への充電電力P図2の充電電力Pよりも小さくなるように、受電電力変化率を図2の場合より大きい値に変更することを許容する。この場合、受電電力の周波数は矢印dのように変動するが、許容レベルを超えない限り、この周波数変動を受け容れても特に支障はない。
蓄電余力が所定値より小さい場合に受電電力変化率をどの程度大きくするかは、蓄電装置22の容量やSOC等に基づいて決定すれば良い。
【0031】
ここで、図3に示したような受電電力変化率は、送電系統11が健全であって回路遮断器12がオン状態であり、構内電力系統13が繋がる系統全体の慣性が十分に大きい場合であって、時刻tに負荷量が急減した場合にも適用可能である。この場合も、受電電力の周波数が時刻t以後に変動したとしても、許容レベルを超えない限り特に支障はない。
【0032】
図2図3における時刻t以降の受電電力変化率は、分散型電源30の種類や容量を考慮した系統全体の慣性の大きさや負荷量の変化率に応じて予め演算した値を記憶しておき、実際に時刻tで負荷量が急変した場合に、記憶されている受電電力変化率に変更しても良い。
【0033】
なお、上記の実施形態では需要家が工場20である場合を説明したが、本発明は、オフィスビルや大規模商業施設等の需要家を対象とした場合にも適用可能であることは言うまでもない。
また、上記の実施形態では、低慣性系統が構成される例として、商用電力系統10から解列された電力系統が単独運転状態になった場合を例示したが、例えば離島や僻地のように、本来的に慣性の小さいディーゼル発電機等から電力が供給される電力系統も上記低慣性系統に含まれるものであり、本発明は、これらの低慣性系統において負荷が急変した場合に有効である。
【符号の説明】
【0034】
10:商用電力系統
11:送電系統
12:回路遮断器
13:構内電力系統
20:工場
21:バックアップ電源
22:蓄電装置
23:PCS
24:負荷
30:分散型電源
31:太陽電池
32:PCS
40:受電電力監視制御装置
41:受電電力検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6