(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024227
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】調光体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20240215BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20240215BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/1334
G02F1/13 505
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126900
(22)【出願日】2022-08-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄大
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088FA19
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA03
2H088JA06
2H088MA20
2H189AA04
2H189AA05
2H189AA52
2H189AA57
2H189AA60
2H189AA64
2H189AA70
2H189CA08
2H189CA13
2H189JA06
2H189LA01
2H189LA02
2H189LA05
2H189LA07
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】透明支持体からの調光シートの剥離を抑えることを可能とした調光体を提供する。
【解決手段】調光体は、調光シート11と、調光シート11を支持する透明支持体12と、調光シート11と透明支持体12との間に位置し、調光シート11を透明支持体12に貼り付ける接着層13と、を備える。透明支持体12は、調光シート11が貼り付けられ内周面12S1を備え、内周面12S1は曲面状を有する。調光体は、調光シート11の外周部11Dを内周面12S1に固定する固定部14を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光シートと、
前記調光シートを支持する透明支持体と、
前記調光シートと前記透明支持体との間に位置し、前記調光シートを前記透明支持体に貼り付ける接着層と、を備える調光体であって、
前記透明支持体は、前記調光シートが貼り付けられる第1面を備え、
前記第1面は曲面状を有し、
前記調光シートの外周部を前記第1面に固定する固定部を備える
調光体。
【請求項2】
前記接着層は、自己粘着によって前記調光シートを前記透明支持体に貼り付ける
請求項1に記載の調光体。
【請求項3】
前記調光シートの端面を封止する封止部をさらに備え、
前記固定部は、前記封止部を覆う
請求項1または2に記載の調光体。
【請求項4】
前記透明支持体は、半円筒状を有し、
前記透明支持体は、第1半円筒面と、前記第1半円筒面に対向する第2半円筒面とを含み、
前記第1半円筒面の曲率半径が、前記第2半円筒面の曲率半径よりも小さく、
前記第1半円筒面が、前記調光シートが貼り付けられる前記第1面である
請求項1または2に記載の調光体。
【請求項5】
前記透明支持体は、半円筒状を有し、
前記透明支持体は、第1半円筒面と、前記第1半円筒面に対向する第2半円筒面とを含み、
前記第1半円筒面の曲率半径が、前記第2半円筒面の曲率半径よりも小さく、
前記第2半円筒面が、前記調光シートが貼り付けられる前記第1面である
請求項1または2に記載の調光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光体に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートの一例は、一対の透明導電膜と、透明導電膜間に位置する液晶層とを備えている。液晶層は、高分子分散型液晶またはポリマーネットワーク液晶である。一対の透明電極間に印加される電圧の大きさに応じて、調光シートは2以上のヘイズ値を有することが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、調光シートが貼り付けられる対象は、屋内に設置されたパーティション、住宅の窓、店舗のエントランスやショーケースなどが有する板部材などの透明支持体である。透明支持体の意匠性を高める目的で調光シートが用いられる場合には、透明支持体自体の意匠性を高めるために、透明支持体が曲面状を有する場合がある。曲面状を有した透明支持体に調光シートを貼り付けた場合には、調光シートが有する剛性によって調光シートが平面状に戻ろうとするから、透明支持体から調光シートが剥がれやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための調光体は、調光シートと、前記調光シートを支持する透明支持体と、前記調光シートと前記透明支持体との間に位置し、前記調光シートを前記透明支持体に貼り付ける接着層と、を備える。前記透明支持体は、前記調光シートが貼り付けられる第1面を備え、前記第1面は曲面状を有する。前記調光シートの外周部を前記第1面に固定する固定部を備える。
【0006】
上記調光体によれば、調光シートの外周部が固定部によって透明支持体の第1面に固定されるから、固定部が調光シートを透明支持体に向けて押さえつける力によって、調光シートの反発力を小さくすることが可能である。これによって、調光シートが透明支持体の第1面から剥がれることが抑えられる。
【0007】
上記調光体において、前記接着層は、自己粘着によって前記調光シートを前記透明支持体に貼り付けてもよい。この調光体によれば、接着層が自己粘着による接着力しか有しないから、調光体が固定部を有することの実効性が高まる。
【0008】
上記調光体において、前記調光シートの端面を封止する封止部をさらに備え、前記固定部は、前記封止部を覆ってもよい。この調光体によれば、調光シートの端面が封止部で封止され、封止部を含む調光シートの外周部が固定部によってさらに覆われるから、調光シートの封止性がさらに高められる。この調光体によれば、調光シートのうち、第1半円筒面の頂部に対向する部位が、第1半円筒面から剥がれることが抑えられる。
【0009】
上記調光体において、前記透明支持体は、半円筒状を有し、前記透明支持体は、第1半円筒面と、前記第1半円筒面に対向する第2半円筒面とを含み、前記第1半円筒面の曲率半径が、前記第2半円筒面の曲率半径よりも大きく、前記第1半円筒面が、前記調光シートが貼り付けられる前記第1面であってもよい。この調光体によれば、調光シートのうち、第1半円筒面の頂部に対向する部位が、第1半円筒面から剥がれることが抑えられる。
【0010】
上記調光体において、前記透明支持体は、半円筒状を有し、前記透明支持体は、第1半円筒面と、前記第1半円筒面に対向する第2半円筒面とを含み、前記第1半円筒面の曲率半径が、前記第2半円筒面の曲率半径よりも大きく、前記第2半円筒面が、前記調光シートが貼り付けられる前記第1面であってもよい。
【0011】
上記調光体によれば、調光シートの外周部において、調光シートが透明支持体から離れる方向に向かう応力が、固定部が外周部を透明支持体に向けて押さえつける力によって小さくされるから、調光シートの層間において剥離が生じることも抑えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明支持体からの調光シートの剥離を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の調光体における構造を示す断面図である。
【
図2】
図1が示す領域Aを拡大して示す断面図である。
【
図3】
図1が示す調光体を調光シートと対向する視点から見た平面図である。
【
図4】第2実施形態の調光体における構造を示す断面図である。
【
図5】
図4が示す領域Bを拡大して示す断面図である。
【
図6】
図4が示す調光体を調光シートと対向する視点から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1から
図3を参照して調光体の第1実施形態を説明する。
[調光体]
図1は、調光体が延びる方向に直交する平面に沿う断面での調光体の構造を示している。
【0015】
図1が示すように、調光体10は、調光シート11と、調光シート11を支持する透明支持体12と、接着層13とを備えている。接着層13は、調光シート11と透明支持体12との間に位置し、調光シート11を透明支持体12に貼り付ける。
【0016】
本実施形態において、透明支持体12は、半円筒状を有している。透明支持体12は、内周面12S1と外周面12S2とを含んでいる。内周面12S1と外周面12S2とは、透明支持体12において互いに対向している。内周面12S1および外周面12S2は、半円筒状を有している。内周面12S1の曲率半径が、外周面12S2の曲率半径よりも小さい。透明支持体12の内周面12S1に、調光シート11が貼り付けられている。内周面12S1は、第1半円筒面の一例であり、かつ、曲面状を有した第1面の一例である。外周面12S2は、第2半円筒面の一例である。
【0017】
図2は、
図1が示す領域Aを拡大した構造を示している。
図2が示すように、調光シート11は、第1透明シート11A、第2透明シート11B、および、調光層11Cを備えている。調光層11Cは、第1透明シート11Aと第2透明シート11Bとの間に位置している。調光シート11の型式がノーマル型である場合には、各透明シート11A,11Bは、基材シートと基材シートに形成された透明電極層とを備えている。透明シート11A,11Bの透明電極層が、調光層11Cを挟んでいる。調光シート11の型式がリバース型である場合には、各透明シート11A,11Bは、透明電極層に対して基材シートとは反対側に位置する垂直配向膜をさらに備えている。透明シート11A,11Bの垂直配向膜が、調光層11Cを挟んでいる。
【0018】
調光シート11において、第1透明シート11Aのうち、調光層11Cとは反対側の面が表面であり、第2透明シート11Bのうち、調光層11Cとは反対側の面が裏面である。調光シート11の裏面が、接着層13によって透明支持体12の内周面12S1に貼り付けられている。
【0019】
接着層13は、自己粘着によって調光シート11を透明支持体12に貼り付ける。接着層13が有する自己粘着性は、接着層13の自ら有する粘着性によって、調光シート11の透明支持体12に対する外部応力による剥離と、調光シート11と透明支持体12との再接着とを可能にする。接着層13の自己粘着による接着は、接着層13が調光シート11と透明支持体12とに接した状態において加熱や乾燥による加工を要せず、透明支持体12に調光シート11を押圧することなく、調光シート11の自重によって調光シート11を透明支持体12に接着する。
【0020】
接着層13と対向する視点から見て、接着層13は、調光シート11の外縁からはみ出している。すなわち、接着層13は調光シート11よりも大きく、かつ、調光シート11は接着層13内に位置している。
【0021】
調光体10の透明性を高めることが要求される場合には、接着層13の厚さは、例えば50μm以下であることが好ましい。調光シート11の自己剥離の抑制を高めることが要求される場合には、接着層13の厚さは、例えば10μm以上であることが好ましい。
【0022】
調光体10は、調光シート11の端面11Eを封止する封止部15をさらに備えている。封止部15の封止対象である調光シート11の端面11Eは、調光シート11の表面に裏面を繋ぐ面であり、各透明シート11A,11Bにおいて厚さ方向に沿って延びる面と、調光層11Cにおいて厚さ方向に沿って延びる面とを含んでいる。調光シート11の端面11Eは、調光シート11の表面と裏面とに略直交している。
【0023】
封止部15は、調光シート11の周方向の全体にわたり、調光シート11の端面11Eに接し、かつ、調光シート11の端面11Eを覆うことによって、調光シート11の端面11Eを封止する。封止部15は、調光シート11の端面11Eを接着層13に接着する。調光シート11の自己剥離が、調光シート11の端面11Eから生じやすいため、接着層13に調光シート11の端面を接着する封止部15は、調光シート11における自己剥離の起点を低減する。
【0024】
封止部15は、調光シート11の端面11Eを覆い、かつ、調光シート11の表面における外縁上まで広がっている。さらに、封止部15は、接着層13において調光シート11外にはみ出す部分のうち、調光シート11に接する面の外縁上まで広がっている。
【0025】
調光体10は、調光シート11の外周部11Dを透明支持体12の内周面12S1に固定する固定部14を備えている。固定部14による固定対象である調光シート11の外周部11Dは、調光シート11の端面11Eと、表面の外縁、および、裏面の外縁を含む部分である。調光シート11における表面の外縁は、表面のなかで端面11Eに繋がる部分である。調光シート11における裏面の外縁は、裏面のなかで端面11Eに繋がる部分である。
【0026】
固定部14は、調光シート11における表面の外縁、端面11E、接着層13の端面、および、透明支持体12のうち、調光シート11に接する内周面12S1のなかで調光シート11からはみ出た部分に接する。これにより、固定部14は、調光シート11の外周部11Dを透明支持体12の内周面12S1に固定する。固定部14は、調光シート11の外周部11Dとともに封止部15を覆っている。
【0027】
図3は、調光シート11と対向する視点から見た調光体10の平面構造を示している。
図3では、固定部14の位置を明確にする目的で、固定部14に網点が付されている。
図3が示すように、調光シート11と対向する視点から見て、透明支持体12は長方形状を有している。調光シート11と対向する視点から見て、調光シート11は長方形状を有し、かつ、透明支持体12内に位置している。固定部14は、調光シート11の周方向の全体にわたり、調光シート11の外周部11Dに接している。そのため、調光シート11と対向する視点から見て、固定部14は長方形枠状を有している。
【0028】
本実施形態では、透明支持体12の内周面12S1に調光シート11が位置し、かつ、固定部14が調光シート11を内周面12S1に固定する。そのため、調光シート11と対向する視点から見た平面構造において、透明支持体12が固定部14よりも外側に位置し、かつ、固定部14よりも内側に調光シート11が位置している。
【0029】
[作用]
本実施形態の調光体10によれば、調光シート11の外周部11Dが固定部14によって透明支持体12の内周面12S1に固定されるから、固定部14が調光シート11を透明支持体12に向けて押さえつける力によって、調光シート11の反発力を小さくすることが可能である。これによって、調光シート11が透明支持体12の内周面12S1から剥がれることが抑えられる。
【0030】
調光シート11が曲面に貼り付けられた場合には、調光シート11が有する剛性による反発力が調光シート11に生じる。調光シート11が透明支持体12の内周面12S1に貼り付けられた場合には、調光シート11の反発力によって、調光シート11のうち、内周面12S1の頂部12S1Pと対向する部位が略平面状に戻るから、内周面12S1から剥がれやすい。なお、内周面12S1の頂部12S1Pは、透明支持体12が延びる方向に直交する断面において、内周面12S1のなかで、内周面12S1の端部を結ぶ直線に対して最も突き出た部分である。
【0031】
ただし、本実施形態によるように、調光シート11の外周部11Dが固定部14によって内周面12S1に固定されていれば、調光シート11が透明支持体12に対してずれることが抑えられる。そのため、調光シート11のうち、内周面12S1の頂部12S1Pと対向する部位が透明支持体12から剥がれることが抑えられる。また、接着層13が自己粘着による接着力しか有しないから、調光体10が固定部14を有することの実効性が高まる。
【0032】
本実施形態では、調光シート11の端面11Eが封止部15で封止され、封止部15が固定部14によってさらに覆われるから、調光シート11の封止性がさらに高められる。
【0033】
[材料]
調光体10が備える各層を形成するための材料を以下に例示する。
透明シート11A,11Bにおいて、基材シートを形成するための材料は、合成樹脂、または、無機化合物であってよい。合成樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などであってよい。ポリエステル系樹脂は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどであってよい。ポリアクリレート系樹脂は、例えばポリメチルメタクリレートなどであってよい。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素などであってよい。
【0034】
透明電極層を形成するための材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)から構成される群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0035】
調光層11Cは、上述したように透明高分子層と液晶組成物とを含んでいる。透明高分子層による液晶組成物の保持型式は、高分子分散型、ポリマーネットワーク型、カプセル型から構成される群から選択されるいずれか一種である。
【0036】
高分子分散型の調光層11Cは、有機高分子層の内部に多数の空隙を区画する有機高分子層を備え、かつ有機高分子層の内部に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。ポリマーネットワーク型の調光層11Cは、3次元の網目状を有した有機高分子層を備え、かつ相互に連通した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型の調光層11Cは、有機高分子層の内部に分散したカプセル状の空隙を区画する有機高分子層を備え、かつカプセル状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。
【0037】
液晶組成物は、液晶化合物を含んでいる。液晶化合物は、シッフ塩基系化合物、アゾ系化合物、アゾキシ系化合物、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、安息香酸エステル系化合物、トラン系化合物、ピリミジン系化合物、シクロヘキサンカルボン酸エステル系化合物、フェニルシクロヘキサン系化合物、および、ジオキサン系化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0038】
液晶組成物は、液晶化合物の他に、透明高分子層を形成するための重合性組成物を含んでもよい。液晶組成物は、調光層11Cを着色するための二色性色素を含んでもよいし、液晶化合物の応答性を高めるための可塑剤を含んでもよい。重合性組成物は、紫外線の照射によって重合が可能なモノマーでもよいし、オリゴマーでもよい。二色性色素は、アゾ二色性色素、アントラキノン二色性色素、ジオキサン二色性色素から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。可塑剤の一例は、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0039】
透明支持体12を形成するための材料は、例えば、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂であってよい。
接着層13を形成するための材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0040】
固定部14を形成するための材料は、紫外線硬化性樹脂でもよいし、溶剤の揮発によって硬化する溶剤揮発型の硬化性樹脂でもよいし、環境中の湿気によって硬化する湿気硬化型の硬化性樹脂でもよい。また、固定部14を形成するための材料は、アクリル系樹脂であってもよい。
【0041】
封止部15は、接着層13よりも高い自己粘着性を有してもよいし、自己粘着性を有さず、かつ、光硬化性、あるいは熱硬化性を有してもよい。封止部15を形成するための材料は、ポリアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、アリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0042】
以上説明したように、調光体の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1‐1)固定部14が調光シート11を透明支持体12に向けて押さえつける力によって、調光シート11の反発力を小さくすることが可能であるから、調光シート11が透明支持体12の内周面12S1から剥がれることが抑えられる。
【0043】
(1‐2)接着層13が自己粘着による接着力しか有しないから、調光体10が固定部14を有することの実効性が高まる。
(1‐3)調光シート11の端面11Eが封止部15で封止され、封止部15が固定部14によってさらに覆われるから、調光シート11の封止性がさらに高められる。
【0044】
(1‐4)調光シート11のうち、内周面12S1の頂部12S1Pに対向する部位が、内周面12S1から剥がれることが抑えられる。
【0045】
[第2実施形態]
図4から
図6を参照して調光体の第2実施形態を説明する。調光体の第2実施形態において、上述した第1実施形態と比べて、支持体が有する面のうち、調光シートが貼り付けられる面が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第2実施形態において第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態と同じ符号を付すことによって、当該構成の詳しい説明を省略する。
【0046】
[調光体]
図4は、調光体が延びる方向に直交する平面に沿う断面での調光体の構造を示している。
図4が示すように、調光体20は、第1実施形態の調光体10と同様に、調光シート11、透明支持体12、および、接着層13を備えている。
本実施形態では、第1実施形態の透明支持体12と同様に、透明支持体12は、半円筒状を有している。調光シート11は、外周面12S2に貼り付けられている。すなわち、接着層13は、透明支持体12の外周面12S2に位置している。
【0047】
図5は、
図4が示す領域Bを拡大した構造を示している。
図5が示すように、調光シート11は、第1実施形態の調光シート11と同様に、第1透明シート11A、第2透明シート11B、および、調光層11Cを備えている。第1透明シート11Aのうち、調光層11Cとは反対側の面が表面であり、第2透明シート11Bのうち、調光層11Cとは反対側の面が裏面である。調光シート11の裏面が、接着層13によって透明支持体12の外周面12S2に貼り付けられている。接着層13は、第1実施形態の接着層13と同様に、自己粘着によって調光シート11を透明支持体12に貼り付ける。
【0048】
接着層13と対向する視点から見て、接着層13は、調光シート11の外縁からはみ出している。すなわち、接着層13は調光シート11よりも大きく、かつ、調光シート11は接着層13内に位置している。
【0049】
調光体20は、調光シート11の外周部11Dを透明支持体12の外周面12S2に固定する固定部24を備えている。固定部24は、調光シート11における表面の外縁、端面11E、接着層13の端面、および、透明支持体12のうち、調光シート11に接する外周面12S2のなかで調光シート11からはみ出た部分に接する。これにより、固定部24は、調光シート11の外周部11Dを透明支持体12の外周面12S2に固定する。固定部24は、調光シート11の外周部11Dとともに封止部15を覆っている。
【0050】
図6は、調光シート11と対向する視点から見た調光体20の平面構造を示している。
図6では、固定部24の位置を明確にする目的で、固定部24に網点が付されている。
図6が示すように、調光シート11と対向する視点から見て、透明支持体12は長方形状を有している。調光シート11と対向する視点から見て、調光シート11は長方形状を有し、かつ、透明支持体12内に位置している。固定部24は、調光シート11の周方向の全体にわたり、調光シート11の外周部11Dに接している。そのため、調光シート11と対向する視点から見て、固定部24は長方形枠状を有している。
【0051】
本実施形態では、透明支持体12の外周面12S2に調光シート11が位置し、かつ、固定部24が調光シート11を外周面12S2に固定する。そのため、調光シート11と対向する視点から見た平面構造において、固定部24が最も外側に位置し、かつ、調光シート11は視認されない。透明支持体12は、固定部24よりも内側に位置している。
【0052】
[作用]
調光シート11が透明支持体12の外周面12S2に貼り付けられた場合には、調光シート11の剛性によって平面状に戻ろうとする反発力が生じる。本実施形態では、調光シート11の外周部11Dが固定部24によって外周面12S2に固定されているから、固定部24が調光シート11の外周部11Dを透明支持体12に向けて押さえつける力によって、調光シート11の反発力が小さくされる。これにより、調光シート11が透明支持体12の外周面12S2から剥がれることが抑えられる。
【0053】
また、調光体20によれば、調光シート11の外周部11Dにおいて、調光シート11が透明支持体12から離れる方向に向かう応力が、固定部24が外周部11Dを透明支持体12に向けて押さえつける力によって小さくされるから、調光シート11の層間において剥離が生じることも抑えられる。
【0054】
[材料]
固定部24を形成するための材料には、第1実施形態の固定部14を形成するための材料を用いることができる。
【0055】
以上説明したように、調光体の第2実施形態によれば、上述した(1‐1)から(1‐3)の効果に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
(2‐1)調光シート11の外周部11Dにおいて、調光シート11が透明支持体12から離れる方向の応力が、固定部24が外周部11Dを透明支持体12に向けて押さえつける力によって小さくされるから、調光シート11の層間において剥離が生じることも抑えられる。
【0056】
[変更例]
上述した各実施形態は、以下のように変更することができる。
[透明支持体]
・透明支持体12は、調光シート11が貼り付けられる曲面である第1面を有していれば、任意の外形を有することが可能である。
【0057】
[接着層]
・接着層13は、感圧型の接着剤から形成されてもよいし、熱硬化型の接着剤から形成されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…調光体
11…調光シート
12…透明支持体
13…接着層
14…固定部
15…封止部
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光シートと、
前記調光シートを支持する透明支持体と、
前記調光シートと前記透明支持体との間に位置し、前記調光シートを前記透明支持体に貼り付ける接着層と、を備える調光体であって、
前記透明支持体は、前記調光シートが貼り付けられる第1面を備え、
前記第1面は曲面状を有し、
前記調光シートの外周部を前記第1面に固定する固定部を備え、
前記固定部は、硬化性樹脂製であり、
前記接着層は、樹脂製であり、前記接着層と対向する視点から見て、前記調光シート外にはみ出す部分を有し、かつ、自己粘着によって前記調光シートを前記透明支持体に貼り付け、
前記調光体は、前記調光シートの端面を封止するとともに前記接着層のうちで前記調光シート外にはみ出す前記部分に接し、かつ、前記接着層よりも高い自己粘着性を有した樹脂製の封止部をさらに備え、
前記固定部は、前記封止部を覆うとともに、前記第1面のうちで前記調光シートおよび前記接着層からはみ出た部分に接し、かつ、前記第1面の端部からはみ出していない
調光体。
【請求項2】
前記調光シートは、第1透明シートと、第2透明シートと、前記第1透明シートと前記第2透明シートとの間に位置する調光層と、を備え、
前記第1透明シートおよび前記第2透明シートは、基材シートと、前記基材シートに形成された透明電極層と、を含み、
前記調光層は、空隙を区画する透明高分子層と前記空隙のなかに保持された液晶組成物とを含み、前記第1透明シートの前記透明電極層と、前記第2透明シートの前記透明電極層とに挟まれている
請求項1に記載の調光体。
【請求項3】
前記透明支持体は、半円筒状を有し、
前記透明支持体は、第1半円筒面と、前記第1半円筒面に対向する第2半円筒面とを含み、
前記第1半円筒面の曲率半径が、前記第2半円筒面の曲率半径よりも小さく、
前記第1半円筒面が、前記調光シートが貼り付けられる前記第1面である
請求項1または2に記載の調光体。
【請求項4】
前記透明支持体は、半円筒状を有し、
前記透明支持体は、第1半円筒面と、前記第1半円筒面に対向する第2半円筒面とを含み、
前記第1半円筒面の曲率半径が、前記第2半円筒面の曲率半径よりも小さく、
前記第2半円筒面が、前記調光シートが貼り付けられる前記第1面である
請求項1または2に記載の調光体。