(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024238
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04303 20160101AFI20240215BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240215BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20240215BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240215BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240215BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20240215BHJP
【FI】
H01M8/04303
H01M8/0432
H01M8/04664
H01M8/04228
H01M8/04858
H01M8/04955
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126917
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】横尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英隆
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB09
5H127AB23
5H127AC09
5H127AC17
5H127BA01
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127GG04
5H127GG10
(57)【要約】
【課題】異常発生によって運転が停止している場合において、適切に凍結防止運転を行うことができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置100は、外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサTH7と、水経路内の水の温度を検知する第二温度センサTH5、TH6と、第一温度センサTH7または第二温度センサTH5、TH6の検知結果が凍結防止運転条件を満たしているかを判定し、凍結防止運転を制御する制御装置30と、を備える。制御装置30は、異常が検知されたことによって燃料電池の発電を停止する場合、該異常が凍結防止運転の実行を不可とする異常ではなく、かつ異常発生前の所定期間内において凍結防止運転条件を満たしている場合は、凍結防止運転を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池モジュールと、
水が流通する水経路と、
外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサと、
前記水経路内の水の温度を検知する第二温度センサと、
前記第一温度センサまたは前記第二温度センサの検知結果が凍結防止運転条件を満たしているかを判定し、前記水経路における凍結を防止する凍結防止運転を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、異常が検知されたことによって前記燃料電池の発電を停止する場合、該異常が前記凍結防止運転の実行を不可とする異常ではなく、かつ異常発生前の所定期間内において前記凍結防止運転条件を満たしている場合は、前記凍結防止運転を実行する燃料電池装置。
【請求項2】
前記所定期間は、異常が発生した当日または前日において最も外気温が低くなる時間帯を判定対象に含む期間である請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記水流路に設けられるヒータと、
前記ヒータによって加熱された水の温度を検知する第三温度センサを備え、
前記制御装置は、異常停止時に前記凍結防止運転として前記ヒータをONした場合、前記凍結防止運転の実行中は前記第三温度センサの検知する値に応じて、前記ヒータはONのまま通電量のみを変更する請求項1または2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記燃料電池モジュールの排熱と水とで熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器で加熱された水を貯留する蓄熱タンクと、を備え、
前記ヒータは前記蓄熱タンク内の水を加熱可能に設けられている請求項3記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を含有する燃料ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電を行ない、電気を外部に供給する燃料電池装置が知られており、燃料電池からは発電に伴って熱が排出される。そのため、燃料電池装置は、燃料電池からの排熱と熱媒体とで熱交換を行う熱交換器、熱媒体が循環する循環流路、熱媒体を蓄える蓄熱タンクを備えており、燃料電池の発電によって発生した排熱を熱媒体に回収して蓄熱タンクに蓄え、この熱媒体を給湯や暖房等に使用している。また、熱媒体としては一般に水が用いられる。
【0003】
燃料電池装置内を循環する熱媒体(水)が凍結すると、循環流路を破損したり動作不良を起こす原因となってしまう。そこで、水が凍結するおそれがあると予測される場合には、凍結を防止するための凍結防止運転が行われるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1では、水の温度を検知する温度検知器と、循環経路に設けられた水循環器と水加熱器を備えており、温度検知器が検知する水の温度が閾値以下であって凍結防止運転が必要と判断される場合には、水循環器を駆動して循環経路内の水を循環させる水循環動作と、加熱器を動作させて水を加熱する加熱動作とを実行する方法が開示されている。また、燃料電池装置に何らかの異常が発生したため発電運転を停止している場合においても、温度検知器の検知温度に基づいて凍結防止運転の要否を判定することで、運転停止中の凍結が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の燃料電池装置では、異常発生による運転停止中に温度検知器にも異常が発生した場合、適切に凍結防止運転を行うことができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、異常発生によって運転が停止し、温度検知器にも異常が発生している場合においても適切に凍結防止運転を行うことができる燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池モジュールと、
水が流通する水経路と、
外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサと、
前記水経路内の水の温度を検知する第二温度センサと、
前記第一温度センサまたは前記第二温度センサの検知結果が凍結防止運転条件を満たしているかを判定し、前記水経路における凍結を防止する凍結防止運転を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、異常が検知されたことによって前記燃料電池の発電を停止する場合、該異常が前記凍結防止運転の実行を不可とする異常ではなく、かつ異常発生前の所定期間内において前記凍結防止運転条件を満たしている場合は、前記凍結防止運転を実行する燃料電池装置である。
【発明の効果】
【0009】
上述のように構成することにより、異常停止前の所定期間内の状態から凍結防止運転の要否を予測するため、異常停止中に温度センサに異常が発生した場合であっても凍結防止運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。
【
図2】凍結防止運転条件と凍結防止解除条件の一例を示す図である。
【
図3】異常停止時における凍結防止運転の要否を判定するフローチャートである。
【
図4】凍結防止運転の動作を通常時と異常停止時とで比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0012】
本発明の燃料電池装置は、外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサと、水経路内の水の温度を検知する第二温度センサと、第一温度センサまたは第二温度センサの検知結果が凍結防止運転条件を満たしているかを判定し、水経路における凍結を防止する凍結防止運転を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、異常が検知されたことによって燃料電池の発電を停止する場合、該異常が凍結防止運転の実行を不可とする異常ではなく、かつ異常発生前の所定期間内において凍結防止運転条件を満たしている場合は、凍結防止運転を実行する。つまり、異常停止する前の所定期間内の状態から凍結防止運転の要否を予測して判断する。これにより、運転停止中に温度センサに異常が発生していて、正しい温度を検知することができない場合であっても、異常停止前の所定期間内において凍結防止運転が必要な状態であったことが検知されていた場合には、凍結防止運転を行うことが可能となる。
【0013】
また、所定期間とは、異常が発生した当日または前日において最も外気温が低くなる時間帯を判定対象に含む期間である。少なくとも、当日または前日において外気温が最も低くなる時間帯を判定対象に含むことで、凍結防止運転の要否を高い確率で予測することができる。
【0014】
また、水経路に設けたヒータと、ヒータによって加熱された水の温度を検知する第三温度センサを備え、制御装置は、異常停止時に凍結防止運転としてヒータをONした場合、凍結防止運転の実行中は第三温度センサの検知する値に応じて、ヒータはONのまま通電量のみを変更する。燃料電池装置が異常停止する原因の一つとして、燃料ガスの漏洩があるが、燃料ガスの漏洩が原因で運転を停止している場合でも、ヒータをON/OFFさせないことで、ヒータによる加熱が発火の原因となることを防止する。よって、異常停止中であってもヒータで水を加熱することができ、凍結防止を効果的に実施することができる。
【0015】
また、燃料電池モジュールの排熱と水とで熱交換を行う熱交換器と、熱交換器で加熱された水を貯留する蓄熱タンクと、を備えており、ヒータは蓄熱タンク内の水を加熱可能に設けられている。ヒータが水中にあることで、燃料ガスに引火する可能性を極力低下させることができるため、凍結防止運転を安全に実施することできる。
【実施例0016】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0017】
図1は本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1を含み、燃料電池モジュール1を作動させるための、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、凝縮水タンク4、放熱器5、空気供給装置14、燃料供給装置15、改質水供給装置16等の複数の補機が筐体50内に納められている。筐体50内には上述の装置全てが収められる必要はなく、例えば、第1熱交換器2や蓄熱タンク3を筐体50の外部に設けてもよい。また、上述の装置の一部を省略した燃料電池装置も可能である。
【0018】
燃料電池モジュール1は、箱状の収納容器10の内部に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行なう燃料電池11と、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する改質器12と、を収容して構成される。
【0019】
燃料電池11の構成については特に限定はしないが、例えば、複数の燃料電池セルが配列されてなるセルスタック構造を有していてもよい。セルスタック構造の燃料電池11は、例えば、各燃料電池セルの下端を、ガラスシール材等の絶縁性接合材を用いて、マニホールドに固定することによって構成される。
【0020】
改質器12は、天然ガス、LPガス等の原燃料ガスを水蒸気改質し、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する。改質器12には、原燃料ガスを供給する燃料供給装置15と、改質水を供給する改質水供装置16が接続されており、原燃料ガスと改質水は加熱された改質器12で改質反応し、水素を含む燃料ガスが生成される。
【0021】
燃料電池11には、改質器12で生成された燃料ガスと、空気供給装置14によって導入された空気(酸素含有ガス)が供給される。燃料ガスは、燃料電池セル内を通過するときに酸素含有ガスと反応して発電が行われる。燃料電池11と改質器12の間の空間は燃焼部13であり、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスは燃焼部13で合流して燃焼する。この燃料ガスの燃焼によって高温の排ガスが生成され、改質器12はこの熱によって加熱される。このようにして燃料電池モジュール1内で生じた排ガスは、第1熱交換器2に供給される。
【0022】
第1熱交換器2には配管を介して、蓄熱タンク3、熱媒ポンプP1および放熱器5が接続され、第1熱媒循環ラインHC1が形成されている。この第1熱媒循環ラインHC1には熱媒体が導入されており、第1熱交換器2ではこの熱媒体と前述の排ガスとで熱交換が行われて熱媒体が加熱される。熱媒体としては水などを用いることができ、蓄熱タンク3は熱交換により温度が上昇した熱媒体を蓄える。蓄熱タンク3に蓄えられた熱媒体は、放熱器5に送られて冷却され、再び第1熱交換器2で排ガスと熱交換を行った後、蓄熱タンク3に還流する。これにより、蓄熱タンク3には上部から温度の高い熱媒体が蓄えられ温度成層が形成される。
【0023】
蓄熱タンク3には、水を補給するための補給流路25が接続されている。補給流路25は、外部の水供給源に接続された供給流路26から分岐して設けられ、途中に流路を開閉する給水弁25aを備えている。燃料電池装置100の設置時や、運転中に蓄熱タンク3内の水位が所定以下となったときには給水弁25aを開くことで補給流路25を通じて蓄熱タンク3に水道水が供給される。
【0024】
また、蓄熱タンク3には、蓄熱タンク3内の水量を監視するための水位検知手段7と、熱媒体を加熱するための加熱ヒータ8が設けられている。水位検知手段としては、フロートセンサや静電容量センサなど公知の水位センサを用いることができ、蓄熱タンク3内の水量が所定量以上であるときに水有を検知し、所定量を下回ったときに水無しを検知する。本実施形態においては、水位検知手段7が1箇所に設けられている例を示しているが、水位検知手段7を上下方向に複数設け、複数箇所における水位を検知するようにしてもよい。
【0025】
加熱ヒータ8は、蓄熱タンク3内に配設されて蓄熱タンク3内の水を加熱する。例えば、外気温が低く、燃料電池装置100内で水が凍結するおそれのあるときは、加熱ヒータ8に通電することで水温を上昇させて凍結を防止することができる。さらには、燃料電池11での発電量が需要家での消費電力量を超える場合には、余った電力(余剰電力)を消費させるために加熱ヒータ8に通電するようにしてもよい。
【0026】
また、第1熱交換器2には、凝縮水回収路20を介して凝縮水タンク4が接続されている。燃料電池モジュール1で発生した排ガスが熱交換によって冷却されると、排ガス中に含まれる水蒸気が水と気体に分離され、分離された水は、凝縮水回収流路20を通って凝縮水タンク4に回収される。凝縮水タンク4では、イオン交換器(図示せず)などを経て、回収した水から不純物を取り除いて純水化する。純水化した水は水供給装置16により改質器12に供給され、改質水として使用される。一方で、水分が取り除かれた気体は、排気流路21を通ってから筐体50の外に排出される。
【0027】
改質器12に原燃料を供給する燃料供給装置15は、燃料の供給源から繋がる原燃料流路22上に、第1電磁弁150、圧力センサ151、脱硫器152、ガス流量計153、燃料ポンプ154、第2電磁弁155等の補機が設けられている。改質器12に改質水を供給する改質水供給装置16は、凝縮水タンク4から繋がる改質水流路23上に改質水ポンプ160等の補機が設けられている。燃料電池モジュール1に酸素含有ガスを供給する空気供給装置14は、酸素含有ガス流路24上に、エアフィルタ140、空気流量計141、ブロワ142等の補機が設けられている。なお、ここに挙げた補機は一例であって、この他の補機を備える構成としてもよい。
【0028】
また、燃料電池装置100は、第2熱交換器6、蓄熱タンク3から熱媒体を循環させる与熱ポンプP2およびこれらを繋ぐ配管を含む第2熱媒循環ラインHC2を備えている。第2熱媒循環ラインHC2では、外部から供給流路26を介して供給された水道水を、蓄熱タンク3に貯留された高温の熱媒体を用いて第2熱交換器6で加温する。加温された水を外部の給湯器等の再加熱装置に向けて送給流路26を介して送給することができる。
【0029】
さらに燃料電池装置100は、筐体50内外の各部の温度を計測するための、温度センサやサーミスタ等の温度検知手段を複数備える。
【0030】
第1熱媒循環ラインHC1や第2熱媒循環ラインHC2のように熱媒体が流れる流路には、熱媒体の温度を計測するため温度検知手段TH1~TH6が設けられている。
【0031】
例えば、蓄熱タンク3内の熱媒体の温度を検知する手段として、タンク低サーミスタTH1、タンク高サーミスタTH2を有している。タンク低サーミスタTH1は、蓄熱タンク3内の比較的低温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3の下部に設けられている。タンク高サーミスタTH2は、蓄熱タンク3内の比較的高温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3近傍の第2熱媒循環ラインHC2上に設けられている。また、第1熱媒循環ラインHC1を流れる熱媒体の温度を検知する手段として、熱媒低サーミスタTH3、熱媒高サーミスタTH4を有している。熱媒低サーミスタTH3は熱媒ポンプP1と第1熱交換器2の間に設けられ、放熱器5で冷却されて第1熱交換器2に流入する熱媒体の温度を検知する。熱媒高サーミスタTH4は第1熱交換器2と蓄熱タンク3との間に設けられ、第1熱交換器2を通過した後の熱媒体の温度を検知する。さらに、供給流路26には外部から供給される水の温度を検知する入水サーミスタTH5、送給流路27には第2熱交換器6により加温された水の温度を検知する出湯サーミスタTH6が設けられる。
【0032】
燃料電池モジュール1内には、燃料電池11の中心部の温度を検知する中心部温度センサTC1と、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスが燃焼する燃焼部13の温度を検知する燃焼部温度センサTC2が配設されている。
【0033】
また、燃料電池装置100の周囲の気温を検知するために、外気温サーミスタTH7が配設されている。この外気温サーミスタTH7は、直接外気温を測定してもよいし、筐体50内において外気温と相関を有する部分の温度を測定してもよい。
【0034】
なお、上述のサーミスタは温度検知手段の一例であって、検知する温度や配置場所は本実施形態に限らない。また、これ以外の温度検知手段を備えていてもよい。
【0035】
さらに、燃料電池装置100には、各種機器の動作を制御する制御装置30が設けられているほか、燃料電池モジュール1にて発電された直流電力を交流電力に変換し、変換された電気の外部負荷への供給量を調整するための供給電力調整部(パワーコンディショナ)40を備えている。
【0036】
制御装置30は、燃料電池装置100を構成する補機や各種センサに接続されており、各種センサが検知する値や図示しないリモコンからの指示に基づいて燃料電池装置100の動作を制御する。
【0037】
制御装置30は、燃料電池装置100内において水が凍結するおそれがあると予測される場合には、燃料電池装置100に凍結防止運転を行わせる。具体的には、制御装置30は、凍結防止運転条件が満たされていると判断した場合に凍結防止運転を実行する。また、凍結防止運転の実行中に、凍結防止解除条件が満たされていると判断した場合には、凍結防止運転を停止する。
【0038】
凍結防止運転条件および凍結防止解除条件には、外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する外気温サーミスタTH7の検出値と、水の経路(第1熱媒循環ラインHC1、第2熱媒循環ラインHC2、供給流路26、送給流路27)内を流れる水の温度を計測する温度検知手段TH1~TH6の検出値と、を含むことができる。制御装置30は、それぞれの温度検知手段が検知した温度と閾値とを比較して、凍結防止運転の要否を判断する。
【0039】
図2は、凍結防止運転条件と凍結防止解除条件の一例を示す図である。本実施形態においては、外気温サーミスタTH7と、入水サーミスタTH5と、出湯サーミスタTH6が検知する温度に基づいて凍結防止運転条件と凍結防止解除条件が構成されている。
【0040】
凍結防止運転条件は、外気温サーミスタTH7がX1℃(例えば6℃)以下、入水サーミスタTH5がY1℃(例えば4℃)以下、出湯サーミスタTH6がY1℃以下、のいずれかを満たしているかである。制御装置30は、この凍結防止運転条件が満たされると、凍結防止運転が必要であると判断し、凍結防止運転を実行する。つまり、外気温がX1℃以下である場合は、外気温が低く凍結の可能性が高いため凍結防止運転が実行される。また、外部から流入する水の温度または外部へ流出する水の温度が低い場合には、外気温がそれほど低くない場合(X1℃以上)であっても凍結する可能性があるため、凍結防止運転が実行される。
【0041】
一方の凍結防止解除条件は、外気温サーミスタTH7がX2℃(例えば10℃)以上、入水サーミスタTH5がY2℃(例えば10℃)以上、出湯サーミスタTH6がY2℃以上、を全て満たし、かつ凍結防止運転を5分以上継続しているかである(X2>X1、Y2>Y1)。制御装置30は、この凍結防止解除条件が満たされると、凍結防止運転が不要になったと判断し、凍結防止運転を停止する。
【0042】
なお、上述の例では、水の温度として、入水サーミスタTH5と、出湯サーミスタTH6の検出値を判定条件としているが、他の温度検知手段が検知する温度を判定条件にしてもよいし、温度条件をさらに追加してもよい。また、判定の閾値に関しても上述の例に限らず、温度検知手段の配置位置等を考慮して適宜設定することができる。
【0043】
制御装置30は、凍結防止運転において、加熱ヒータ8に通電することによって蓄熱タンク3内の水の温度を上昇させるとともに、熱媒ポンプP1、与熱ポンプP2、を駆動して循環ライン内の水を流動させる。加熱ヒータ8は、水の温度に応じてON/OFFを制御してもよく、例えば、熱媒低サーミスタTH3が検知する温度が30℃以下の場合に通電し、40℃を超える場合に通電を停止することができる。また、水が流通する経路には、加熱ヒータ8の他にヒータを設けてもよい。
【0044】
以上は、通常時における凍結防止運転の動作である。しかしながら凍結防止運転は、燃料電池装置100に異常が発生したことにより発電運転が停止している場合(以下、この状態を異常停止、または異常停止中という)にも実施することができる。異常停止中に凍結防止運転を実行することで、異常停止状態が解除されるまでの間に水が凍結して水の経路を破損してしまう事態を防ぐことができる。ただし、異常停止となった原因によっては凍結防止運転を行うことができない場合もあり、また、温度検知手段が正常に動作しない可能性があるため、通常時とは凍結防止運転の要否を判断する方法が異なる。
【0045】
異常停止時においては、制御装置30は以下の手順で判定を行う。第一に、その異常停止の原因が凍結防止運転の実行を不可とする異常ではないこと。そもそも凍結防止運転の実行が不可の場合には、凍結防止運転は行われない。第二に、異常発生前の所定期間内において凍結防止運転条件を満たしていること。この二つを満たしたときに、凍結防止運転が実行される。
【0046】
燃料電池装置100では、運転の履歴として過去一定期間の発電運転に関するデータを保存しているので、この保存されたデータに基づき、異常発生前の所定期間内において凍結防止運転条件を満たしていたかを判断することができる。つまり、所定期間内に凍結防止運転条件を満たしていれば、異常停止中においても凍結防止運転条件を満たす可能性が高いと判断し、凍結防止運転を実行するのである。これにより、異常停止中に温度検知手段が正常に動作していなかったとしても、凍結防止運転を実行することができ、凍結による装置の破損を回避することができる。
【0047】
図3は、異常停止時における凍結防止運転の要否を判定するフローチャートである。燃料電池装置100に異常が発生して発電運転が停止したときにフローチャートがスタートする。
【0048】
まず最初に、異常停止の原因が凍結防止運転の実行を不可とする異常でないかを判定する(ステップ1)。ステップ1でNOの場合、つまり凍結防止運転の実行が不可である場合、凍結防止運転は行われず、判定フローは終了する。ステップ1でYES、つまり凍結防止運転の実行が可の場合、次のステップに進む。
【0049】
次に、異常発生前の所定期間T(例えば、24時間)内において、外気温サーミスタTH7の検知する温度がX1℃以下を15秒連続で検知していたかを判断する(ステップ2)。ステップ2でYESの場合は、凍結防止運転条件を満たすため、ステップ5に進み凍結防止運転を実行する。一方、ステップ2でNOの場合は、次に、所定期間T内において入水サーミスタTH5の検知する温度がY1℃以下を15秒連続で検知していたかを判断する(ステップ3)。ステップ3でYESの場合は、ステップ5に進み凍結防止運転を実行する。一方、ステップ3でNOの場合は、次に、所定期間T内において出湯サーミスタTH6の検知する温度がY1℃以下を15秒連続で検知していたかを判断する(ステップ4)。ステップ4でYESの場合は、ステップ5に進み凍結防止運転を実行する。一方で、ステップ4でNOの場合は、凍結防止運転は不要と判断されたため、凍結防止運転を行わずに(ステップ6)、判定フローが終了する。
【0050】
このように、制御装置30が、異常発生前の所定期間T内に検知された温度から、凍結防止運転条件を満たしていたかを判断することで、異常停止中において凍結防止運転が必要となる可能性を判定する。これにより、温度検知手段が正常に動作していなかったとしても、凍結防止運転を実行することができる。また、所定期間Tについては、特にその時間や日数などに制限はなく、適宜設定することができる。
【0051】
ただし、異常停止した日の周辺において、検知される温度の最低値が閾値を下回っていたとすると、異常停止中に凍結する可能性が高いと予測できるため、凍結防止運転を実行させるのが適切である。よって、所定期間Tには、少なくとも異常停止した時点よりも前であって最も外気温が低くなる時間帯が含まれるとよい。言い換えると、所定期間Tは、異常が発生した当日または前日において最も外気温が低くなる時間帯を判定対象に含む期間とするのがよい。
【0052】
また、所定期間Tは、時間(または日数)で指定してもよいし、時刻を指定してもよい。時間であれば「異常停止前の○○時間」、時刻であれば「午前○時~午前○時の間」のように指定することができる。さらには、所定期間Tは一定とする必要はなく、例えば、外気温によって所定期間Tの長さを変えることもできる。
【0053】
ところで、異常が検知されたことによって発電運転を停止した場合、制御装置30が凍結防止運転の要否判定を行うのは1回のみである。また、温度検知手段が正常に動作していない可能性があるため、異常停止後に検知された温度に基づいて凍結防止運転の要否を判定しない。したがって、凍結防止運転の実行中に、凍結防止解除条件を満たしたとしても凍結防止運転は停止されない。ただし、凍結防止運転の実行中に、異常停止状態が解除されるか、もしくは凍結防止運転を不可とする新たな異常が発生した場合には、凍結防止運転が停止される。異常停止状態が解除されたときには、制御装置30は通常時の判定手順で凍結防止運転の要否を判断する。
【0054】
本実施形態では、凍結防止運転条件に関し、通常時の温度条件と異常停止時の温度条件を同じとした例を示した。しかしながら、通常時と異常停止時とで温度条件を異なる条件にしてもよい。
【0055】
図4は、凍結防止運転の動作を通常時と異常停止時とで比較した図である。熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2は、通常時と異常停止時とで動作は同じである。なお、図では熱媒ポンプP1をduty制御し、与熱ポンプP2を回転数制御する場合を示しているが、ポンプの駆動方法についてはこれに限定するものではない。
【0056】
加熱ヒータ8は、通常時は熱媒低サーミスタTH3の検知温度に基づきON/OFF制御する。これに対し、異常停止時は熱媒低サーミスタTH3の検知温度に基づき通電量を増減するがOFFにはしておらず、通常時と異常停止時とで異なる動作をしている。
【0057】
燃料電池装置100が異常停止する原因の一つとして、燃料ガスの漏洩があるが、燃料ガスの漏洩が疑われる場合には、ヒータの通電ON/OFFを切り替えた際に燃料ガスに引火する可能性がある。そこで、異常停止中においては、加熱ヒータ8をON/OFFさせないことで、もし燃料ガスの漏洩が原因で運転を停止している場合でも、加熱ヒータ8による加熱が発火の原因となることを防止する。よって、異常停止中であっても加熱ヒータ8で水を加熱することができ、凍結防止を効果的に実施することができる。
【0058】
また、燃料電池装置100は、加熱ヒータ8が水中(蓄熱タンク3内)に配置される構成とすることで、加熱ヒータ8の発熱箇所は燃料ガスと接触せず、燃料ガスに引火する可能性をさらに低下させることができる。よって、異常停止中における凍結防止運転をより安全に実行することできる。