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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024239
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】止水栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/70 20060101AFI20240215BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20240215BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F16K31/70 B
E03C1/042 B
E03C1/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126918
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洵輝
【テーマコード(参考)】
2D060
3H057
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BB07
2D060BF01
3H057AA03
3H057BB46
3H057CC04
3H057DD13
3H057EE02
3H057FA12
3H057FA22
3H057FB03
3H057FB09
3H057FC04
3H057HH03
3H057HH13
(57)【要約】
【課題】通水路内の水の凍結を適切に防止することが可能な止水栓を提供すること。
【解決手段】止水栓Fは、通水路Tを成す管軸方向に延びる上流側の第1管路11及び第1管路11から直交方向に延びる下流側の第2管路12を備える偏心管10と、偏心管10の管内に第1管路11に沿って管軸方向に移動可能に組み込まれる筒状のスピンドル20と、スピンドル20の筒内に形成された収容部23に組み込まれる低温作動弁機構30と、を有する。スピンドル20が、第1管路11に形成された止水弁座11Cとの当接により通水路Tを止水するパッキン24と、収容部23を第1管路11の管内と連通させる連通路21Bと、収容部23を通水路Tを通らない外気と連通させる漏水孔B2と、を有する。低温作動弁機構30が、収容部23の温度が所定温度以上となることで漏水孔B2を塞ぎ、所定温度未満となることで漏水孔B2を開く感温式の弁機構とされる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水路を止水可能な止水栓であって、
前記通水路を成す管軸方向に延びる上流側の第1管路及び該第1管路から交差する方向に延びる下流側の第2管路を備える通水管と、
該通水管の管内に前記第1管路に沿って管軸方向に移動可能に組み込まれる筒状のスピンドルと、
該スピンドルの筒内に形成された収容部に組み込まれる低温作動弁機構と、を有し、
前記スピンドルが、前記第1管路に形成された止水弁座との当接により前記通水路を止水する止水弁体と、前記収容部を前記第1管路の管内と連通させる連通路と、前記収容部を前記通水路を通らない外気と連通させる漏水孔と、を有し、
前記低温作動弁機構が、前記収容部の温度が所定温度以上となることで前記漏水孔を塞ぎ、前記所定温度未満となることで前記漏水孔を開く感温式の弁機構とされる止水栓。
【請求項2】
請求項1に記載の止水栓であって、
前記第2管路が、止水機能を備える給水栓への給水路を成す止水栓。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の止水栓であって、
前記連通路が、前記スピンドルの筒軸方向の一端に筒軸方向に貫通するように形成され、前記漏水孔が、前記スピンドルの前記通水管から管軸方向の外部に延び出す延出部に形成される止水栓。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の止水栓であって、
前記スピンドルが、前記止水弁体よりも筒軸方向の上流側の位置に前記収容部及び該収容部を筒径方向に開口させる開口孔を有し、前記止水弁体が前記止水弁座から離間した通水状態において前記開口孔が前記第2管路と連通し、該連通により前記収容部が前記連通路を流入口とし前記開口孔を流出口とする前記通水路の連絡路を成す止水栓。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の止水栓であって、
前記スピンドルが、前記止水弁体よりも筒軸方向の下流側の位置に前記収容部を有し、かつ、前記収容部及び前記止水弁体よりも筒軸方向の上流側の位置に前記連通路と連通して筒径方向に開口する開口孔を有し、前記止水弁体が前記止水弁座から離間した通水状態において前記開口孔が前記第2管路と連通し、該連通により前記収容部を通ることなく前記連通路を流入口とし前記開口孔を流出口とする前記通水路の連絡路が形成される止水栓。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の止水栓であって、
前記低温作動弁機構が、前記収容部に沿って筒軸方向に摺動可能な低温作動弁体と、該低温作動弁体を前記スピンドルに対して前記漏水孔を塞ぐ摺動方向に付勢する感温ばねと、前記低温作動弁体を前記スピンドルに対して前記漏水孔を開く摺動方向に付勢するバイアスばねと、を有する止水栓。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の止水栓であって、
前記通水管に管軸方向に移動可能かつ前記スピンドルを内部に通すように螺合され、回転による管軸方向の移動により前記通水路と外気との連通/遮断を切り替える筒状の水抜きキャップを更に有し、
前記スピンドルが、前記水抜きキャップの内周段差面との筒軸方向の当接により前記止水弁座からの離間移動が規制される止水栓。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の止水栓であって、
前記第1管路が、水平向きに延在するように設けられる止水栓。
【請求項9】
請求項8に記載の止水栓であって、
前記通水管が、混合水栓の水栓本体を施工壁に取り付けるための連結脚となる一対の偏心管のそれぞれを成す止水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水栓に関する。詳しくは、通水路を止水可能な止水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給水栓に通水路内の水の凍結を防止するための低温作動弁機構が組み込まれた構成が開示されている。具体的には、低温作動弁機構は、ハンドルの回転操作により通水路を開閉するスピンドルの内部に組み込まれている。低温作動弁機構は、スピンドルに対して軸方向に摺動可能な低温作動弁体と、低温作動弁体を軸方向の各側から挟み込み状に付勢する感温ばね及びバイアスばねを備える構成とされる。
【0003】
低温作動弁体は、外気の温度が所定温度以上の時には、感温ばねの硬化に伴うばね付勢力の増大によって、給水栓の通水路を塞ぐスピンドルの止水弁体に穿たれた貫通孔を内側から塞ぐ。それにより、スピンドルの止水弁体により塞がれた通水路内の水が下流側へと漏出することを防止する。一方、低温作動弁体は、外気の温度が所定温度より低下すると、感温ばねの軟化に伴うばね付勢力の減少により、上記スピンドルの貫通孔を開くように動作する。それにより、スピンドルの止水弁体により塞がれていた通水路内の水が貫通孔を通って下流側へと少量ずつ漏出される。この漏出する流れにより、通水路内の水の凍結が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-133762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の低温作動弁機構は、給水栓の吐水口から凍結防止用の水を漏出させる構成とされる。しかし、例えば、給水栓より上流側に設けられる止水栓のように、下流側の通水路が止水されてしまう構成では、下流側の通水路に凍結防止用の水を漏出させることができない。そこで、本発明は、通水路内の水の凍結を適切に防止することが可能な止水栓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の止水栓は、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、通水路を止水可能な止水栓であって、前記通水路を成す管軸方向に延びる上流側の第1管路及び該第1管路から交差する方向に延びる下流側の第2管路を備える通水管と、該通水管の管内に前記第1管路に沿って管軸方向に移動可能に組み込まれる筒状のスピンドルと、該スピンドルの筒内に形成された収容部に組み込まれる低温作動弁機構と、を有し、前記スピンドルが、前記第1管路に形成された止水弁座との当接により前記通水路を止水する止水弁体と、前記収容部を前記第1管路の管内と連通させる連通路と、前記収容部を前記通水路を通らない外気と連通させる漏水孔と、を有し、前記低温作動弁機構が、前記収容部の温度が所定温度以上となることで前記漏水孔を塞ぎ、前記所定温度未満となることで前記漏水孔を開く感温式の弁機構とされる止水栓である。
【0007】
第1の発明によれば、スピンドルの回転により止水弁体が第1管路の止水弁座に当接することで、通水路が閉じられる。また、スピンドルの回転により止水弁体が第1管路の止水弁座から離間することで、通水路が開かれる。上記スピンドルの収容部に収容された低温作動弁機構は、収容部に取り込まれた水の温度が外気の温度低下により所定温度未満となった場合に、漏水孔を開くように感温動作する。それにより、第1管路からスピンドルの連通路を通って収容部内に入り込んでいる水が、漏水孔から外部へと漏出される。したがって、この漏出する流れにより、通水路内の水の凍結を適切に防止することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記第2管路が、止水機能を備える給水栓への給水路を成す止水栓である。
【0009】
第2の発明によれば、第2管路の下流側の給水栓が止水されていても、通水路内の水を外部へと適切に漏出させて凍結防止することができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記連通路が、前記スピンドルの筒軸方向の一端に筒軸方向に貫通するように形成され、前記漏水孔が、前記スピンドルの前記通水管から管軸方向の外部に延び出す延出部に形成される止水栓である。
【0011】
第3の発明によれば、第1管路からスピンドルの収容部内に水を通して漏水孔から外部へと漏出させられる構造を簡素に具現化することができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記スピンドルが、前記止水弁体よりも筒軸方向の上流側の位置に前記収容部及び該収容部を筒径方向に開口させる開口孔を有し、前記止水弁体が前記止水弁座から離間した通水状態において前記開口孔が前記第2管路と連通し、該連通により前記収容部が前記連通路を流入口とし前記開口孔を流出口とする前記通水路の連絡路を成す止水栓である。
【0013】
第4の発明によれば、スピンドルの収容部を通水時の通水路としても機能するように合理化することができ、スピンドルを筒軸方向に小型化することができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記スピンドルが、前記止水弁体よりも筒軸方向の下流側の位置に前記収容部を有し、かつ、前記収容部及び前記止水弁体よりも筒軸方向の上流側の位置に前記連通路と連通して筒径方向に開口する開口孔を有し、前記止水弁体が前記止水弁座から離間した通水状態において前記開口孔が前記第2管路と連通し、該連通により前記収容部を通ることなく前記連通路を流入口とし前記開口孔を流出口とする前記通水路の連絡路が形成される止水栓である。
【0015】
第5の発明によれば、通水時に第1管路から連通路に流入した水が収容部を通ることなく開口孔から第2管路へと流出される。その結果、収容部に収容される低温作動弁機構が流水に晒されにくく、外気の温度の影響を受けやすい環境に置かれることとなる。したがって、低温作動弁機構を外気の温度変化に合わせてより敏感に動作させることができる。
【0016】
本発明の第6の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記低温作動弁機構が、前記収容部に沿って筒軸方向に摺動可能な低温作動弁体と、該低温作動弁体を前記スピンドルに対して前記漏水孔を塞ぐ摺動方向に付勢する感温ばねと、前記低温作動弁体を前記スピンドルに対して前記漏水孔を開く摺動方向に付勢するバイアスばねと、を有する止水栓である。
【0017】
第6の発明によれば、スピンドルの筒内に組み込まれる低温作動弁機構を、低温作動弁体と感温ばねとバイアスばねとを用いた比較的簡素な構成によって具現化することができる。
【0018】
本発明の第7の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記通水管に管軸方向に移動可能かつ前記スピンドルを内部に通すように螺合され、回転による管軸方向の移動により前記通水路と外気との連通/遮断を切り替える筒状の水抜きキャップを更に有し、前記スピンドルが、前記水抜きキャップの内周段差面との筒軸方向の当接により前記止水弁座からの離間移動が規制される止水栓である。
【0019】
第7の発明によれば、通水路に螺合される水抜きキャップの構成を利用して、スピンドルの移動規制を合理的に行うことができる。このような構成により、低温作動弁機構と水抜きキャップとを止水栓の過度な大型化を伴わないように止水栓に組み込むことができる。
【0020】
本発明の第8の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記第1管路が、水平向きに延在するように設けられる止水栓である。
【0021】
第8の発明によれば、漏水孔から外部に漏出される水を重力作用により外部に適切に排出することができる。
【0022】
本発明の第9の発明は、上記第8の発明において、前記通水管が、混合水栓の水栓本体を施工壁に取り付けるための連結脚となる一対の偏心管のそれぞれを成す止水栓である。
【0023】
第9の発明によれば、混合水栓の水栓本体を施工壁に取り付ける湯水の各偏心管に、これらの意匠性を損なうことなく、止水機能と凍結防止機能とを適切に具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る止水栓の概略構成を表す斜視図である。
図2図1の正面図である。
図3】止水栓単体の斜視図である。
図4】止水栓から断熱カバーを外した分解斜視図である。
図5】止水栓からスピンドル及び水抜きキャップを外した分解斜視図である。
図6】スピンドルの分解斜視図である。
図7】スピンドルの通水状態を表す図2のVII-VII線断面図である。
図8】スピンドルの止水状態を表す図7に対応する断面図である。
図9図7から低温作動弁機構が漏水孔を開いた状態を表す断面図である。
図10】水抜きキャップの排水状態を表す断面図である。
図11】第2の実施形態に係る止水栓の概略構成を表す斜視図である。
図12】止水栓から断熱カバーを外した分解斜視図である。
図13】止水栓からスピンドル及び水抜きキャップを外した分解斜視図である。
図14】スピンドルの分解斜視図である。
図15】スピンドルの通水状態を表す図7に対応する断面図である。
図16】スピンドルの止水状態を表す図7に対応する断面図である。
図17図15から低温作動弁機構が漏水孔を開いた状態を表す断面図である。
図18】水抜きキャップの排水状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
《第1の実施形態》
(止水栓Fの概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る止水栓Fの構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、本実施形態に係る止水栓Fが適用された混合水栓1を正面から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0027】
図1図2に示すように、本実施形態に係る止水栓Fは、浴室の壁面(施工壁W)に設置されるいわゆる壁付タイプの混合水栓1に適用されている。上記混合水栓1は、施工壁Wの裏側から供給される湯と水とを内部で混合して吐出することができる機能を備える。
【0028】
具体的には、混合水栓1は、その水栓本体2が、浴室の施工壁Wに対して、湯水の供給配管となる左右一対のクランク状に折れ曲がった各偏心管10を介して流路接続された状態に取り付けられている。各偏心管10は、向かって右側の偏心管10が水の供給配管とされ、向かって左側の偏心管10が湯の供給配管とされる。ここで、水栓本体2が、本発明の「給水栓」に相当する。また、各偏心管10が、それぞれ本発明の「通水管」に相当する。
【0029】
各偏心管10は、水栓本体2とその奥側の施工壁Wとの間で互いに正面視「ハ」の字を成す形に設けられる。各偏心管10は、それらの「ハ」の字の下端側の管路が、それぞれ、図示奥側へと円管状に延びて、施工壁Wの対応する各位置に形成された図示しない湯水の各接続口に手前側から捩じ込まれて流路接続されている。また、各偏心管10の「ハ」の字の上端側の各管路は、それぞれ、図示手前側へと円管状に延びて、水栓本体2の奥面の対応する各位置に形成された図示しない湯水の各接続口に奥側から螺合されて流路接続されている。
【0030】
上記混合水栓1は、水栓本体2の向かって左側の側部に取り付けられた略円筒型の温度調節ハンドル3の操作により、各偏心管10から水栓本体2に供給される湯水の混合割合を内部で調節することができる構成とされる。また、混合水栓1は、水栓本体2の向かって右側の側部に取り付けられた略円筒型の切替ハンドル4の操作により、混合した湯水の吐水/止水を切り替えたり、吐出する湯水の量を調節したりすることができる構成とされる。
【0031】
具体的には、使用者が温度調節ハンドル3を所望の回転位置へと回すことで、水栓本体2の内部で混合される湯水の混合割合が、上記の回転位置に応じた設定温度となるように調節される。また、使用者が切替ハンドル4を所定の止水位置(図示位置)から上向きに回すことで、その回転移動量に応じた量の湯水が、水栓本体2の奥面に流路接続されたシャワエルボ5(図1参照)から不図示のシャワーヘッドへと吐出される。
【0032】
また、使用者が切替ハンドル4を所定の止水位置(図示位置)から下向きに回すことで、その回転移動量に応じた量の湯水が、水栓本体2の下面に流路接続されたカラン6から吐出される。上記水栓本体2とその奥側の施工壁Wとの間を流路接続する各偏心管10には、それぞれ、内部の通水路Tを止水可能なスピンドル20が組み込まれている。それにより、各偏心管10は、上記スピンドル20が組み込まれてユニット化される止水栓Fの通水管として構成されている。
【0033】
各偏心管10を含んで構成される止水栓Fは、それぞれ、上記の「止水機能」に加え、通水量の調節を行うことが可能な「流量調節機能」も備える。また、各止水栓Fは、各偏心管10の凍結防止を目的に、内部の水を直接外部へ排出するように手動操作することが可能な「水抜き機能」も備える。
【0034】
また、各止水栓Fは、上記の水抜き機能に加え、水抜きの操作をし忘れた場合に備えた補助機能としての「凍結防止機能」を更に備える。凍結防止機能は、仮に水抜きの操作が行われずに、浴室内の温度(外気の温度)が凍結の生じうる所定温度未満の低温となることがあった場合に、その温度に感応して、各偏心管10の内部の水を直接外部へ少量ずつ漏出させるように動作する。
【0035】
また、凍結防止機能は、浴室内の温度(外気の温度)が所定温度以上に戻ることにより、その温度に感応して、上記水の排出を止めるように動作する。凍結防止機能は、上記低温時に各偏心管10の内部の水を外部へ少量ずつ漏出させることにより、各偏心管10の内部に水の流れを生じさせる。それにより、各偏心管10の内部における水の凍結が防止され、各偏心管10の流路凍結に伴う破損を防止することができる。
【0036】
(止水栓Fの各部構成)
以下、各偏心管10を含んで構成される止水栓Fの各部の具体的な構成について詳しく説明する。なお、各止水栓Fは、湯側に偏心管10を覆う断熱管カバーC1が取り付く点を除いては、互いに同一の構成となっている。したがって、以下では、これらを代表して、図2の向かって左側となる湯側の止水栓Fの構成について詳しく説明することとする。
【0037】
図3は、湯側の止水栓F単体の斜視図である。図4は、この湯側の止水栓Fから断熱管カバーC1を外した分解斜視図である。これらの図に示すように、止水栓Fは、偏心管10の内部に上述した止水機能、流量調節機能、水抜き機能及び凍結防止機能を担う各機構部品が内蔵された構成とされる。
【0038】
具体的には、図5及び図7に示すように、止水栓Fは、クランク状に折れ曲がった通水路Tを成す偏心管10と、偏心管10の管内に組み込まれる筒状のスピンドル20と、を有する。また、止水栓Fは、スピンドル20の筒内に形成された収容部23に組み込まれる低温作動弁機構30と、スピンドル20を筒内に通すように偏心管10の管内に組み込まれる水抜きキャップ40と、を有する。
【0039】
偏心管10は、図示前後方向に直線状に延びる円管状の第1管路11と、第1管路11の下流端(図示手前端)と繋がって図示右斜め上方に直角に折れ曲がるように延びる角管状の第2管路12と、を有する。第1管路11は、その外周面に雄ねじ11Aが形成されている。第1管路11は、その外周面の雄ねじ11Aに目隠しとなるリング板状の座金11Bが螺合されて、施工壁Wの図示しない接続口に図示手前側から雄ねじ11Aの螺合を伴い捩じ込まれて流路接続される。
【0040】
第2管路12は、その第1管路11の下流端と繋がる図示左下側の上流端から、第1管路11の管軸方向と直交する方向(図示右斜め上方)に直線状に延びる矩形管形状に形成されている。図5に示すように、第2管路12の下流端には、図示手前方向に開口する開口が形成され、この開口に袋ナット12Aが装着されている。袋ナット12Aは、水栓本体2(図1参照)の対応する接続口と螺合される接続金具となるものである。
【0041】
図7に示すように、第2管路12は、その第1管路11の下流端と繋がる図示左下側の上流端が、第1管路11の管外径よりもひとまわり大きな管外径を成す形状とされる。それにより、第2管路12は、第1管路11の下流端において、第1管路11に対して段差状に拡径される拡径部12Bを形成する構成とされる。
【0042】
拡径部12Bは、その図示上下及び前後の各側面が、第2管路12の矩形面に沿った平坦面となっている。しかし、拡径部12Bの図示左側面、すなわち第2管路12の上流側の端面は、第1管路11の円管形状に沿って、これよりもひとまわり大きな同心円状の曲率で湾曲する湾曲面となっている。
【0043】
図5及び図7に示すように、拡径部12Bの図示手前面には、正面視円形状に貫通する開口部12Cが形成されている。開口部12Cは、第1管路11の管軸方向の延長線上の位置に、第1管路11の管内径よりも広い同心円状の開口を形成している。
【0044】
図5図6に示すように、スピンドル20は、螺合部材21と、嵌合部材22と、パッキン24と、を有する段付き円筒状に組まれた部材から成る。螺合部材21は、円筒状の部材から成り、その図示奥端部の外周面に雄ねじ21Aが形成されている。図7に示すように、螺合部材21は、その雄ねじ21Aを第1管路11の内周面に形成された雌ねじ11Dに下流側(図示手前側)から螺合させることにより、第1管路11内に組み込まれる構成とされる。
【0045】
この組み付けにより、螺合部材21は、第1管路11に対して、回転により第1管路11に沿って管軸方向に移動することができるようにセットされる。螺合部材21の筒軸方向の先端部(図示奥端部)には、その中心部を筒軸方向に貫通させる丸孔状の連通路21Bが形成されている。連通路21Bは、螺合部材21の筒内径よりも僅かに狭い孔径に形成されている。この連通路21Bの形成により、螺合部材21は、その筒内と第1管路11の管内とが連通路21Bを通じて連通する構成とされる。
【0046】
図6図7に示すように、螺合部材21の筒周壁には、その筒周方向の4箇所の位置に、筒径方向に丸孔状に貫通する開口孔21Cが形成されている。これら開口孔21Cは、螺合部材21の筒内と連通する構成とされる。そのため、各開口孔21Cは、螺合部材21の筒内を通じて連通路21Bと連通し、連通路21Bを通じて第1管路11の管内とも連通するようになっている。
【0047】
図5図6に示すように、嵌合部材22は、その図示手前側の端部に底部(頭部22B)を有する有底円筒状の部材から成る。詳しくは、嵌合部材22は、その筒軸方向の途中から先(図示奥側の先)の領域が、手前側の領域よりもひとまわり大きな筒外径を成すように段差状に拡径された段付き円筒形状とされる。
【0048】
嵌合部材22は、その拡径された図示奥側の筒領域内に螺合部材21を図示奥側から螺合させることで、螺合部材21と一体的に組み付けられている。その際、螺合部材21は、その外周部にリング状のパッキン24が装着されてから嵌合部材22に組み付けられることで、嵌合部材22との間にパッキン24を挟持した状態に組み付けられる。ここで、パッキン24が、本発明の「止水弁体」に相当する。
【0049】
パッキン24は、螺合部材21の外周部に図示手前側から筒軸方向に通されて、螺合部材21の外周部から環状に張り出すフランジ21Dに筒軸方向に当てられてセットされる。そして、その状態で螺合部材21が嵌合部材22に組み付けられることで、図7に示すように、パッキン24が螺合部材21のフランジ21Dと嵌合部材22の図示奥側の端面との間に筒軸方向に挟持された状態にセットされる。螺合部材21のフランジ21Dは、開口孔21Cよりも下流側となる図示手前側の位置に形成されている。
【0050】
嵌合部材22は、その内周側の段差面である第1内周段差面22Aに螺合部材21の下流端となる図示手前側の端面が筒軸方向に当接することで、螺合部材21の筒軸方向の嵌め込みが係止される。なお、螺合部材21は、嵌合部材22に対して圧入嵌合により嵌め込まれる構成であってもよい。
【0051】
図5図6に示すように、嵌合部材22は、その図示手前端の底部を形成する頭部22Bに、不図示の工具(マイナスドライバ)を図示手前側から差し込んで回転操作することが可能な工具穴B1が形成されている。図7に示すように、上記頭部22Bの中心部には、その筒内側から筒軸方向の途中位置まで穴あけされた小孔状の漏水孔B2が形成されている。ここで、頭部22Bが、本発明の「延出部」に相当する。
【0052】
漏水孔B2は、その筒軸方向に穴あけされた図示手前端から頭部22Bを筒径方向の相反する2方向に抜けるように筒径方向に一直線状に穿たれた形状とされる。頭部22Bの筒内側の側面の漏水孔B2の周囲には、漏水孔B2の周縁に沿って筒軸方向に環状に膨出する漏止弁座B3が形成されている。
【0053】
上記スピンドル20は、螺合部材21と嵌合部材22との組み付けにより、これらの筒内に低温作動弁機構30を収容可能な筒状空間である収容部23を形成する。スピンドル20は、螺合部材21と嵌合部材22との組み付けの際に、螺合部材21の筒内に低温作動弁機構30がセットされることにより、螺合部材21と嵌合部材22との間の収容部23に低温作動弁機構30が収容された状態に組み上げられる。
【0054】
そして、図5に示すように、スピンドル20は、偏心管10に対し、図示手前側から開口部12C内に差し込まれ、図7に示すように、螺合部材21の雄ねじ21Aが第1管路11の雌ねじ11Dに螺合された状態に組み付けられる。この組み付けにより、スピンドル20は、その漏水孔B2の形成された頭部22Bが偏心管10から手前側に張り出して外部に露出した状態に設けられる。
【0055】
上記スピンドル20は、上述した頭部22Bの工具穴B1に不図示の工具が差し込まれて反時計回りに回されることで、螺合部材21の雄ねじ21Aが第1管路11の雌ねじ11Dに沿って回されながら全体が一体的となって図示手前方向へと引き出される。この移動により、図7に示すように、スピンドル20は、パッキン24が第1管路11の下流端(図示手前端)に沿って形成された止水弁座11Cから引き離される。
【0056】
その結果、スピンドル20のパッキン24よりも上流箇所に形成された開口孔21Cが、第2管路12の管内に臨んで連通した状態となる。したがって、この連通により、スピンドル20の連通路21B、収容部23及び開口孔21Cを通じて第1管路11と第2管路12とが連通され、第1管路11から供給される湯水が第2管路12へと流される通水状態となる。スピンドル20は、その嵌合部材22の外周側の段差面である外周段差面22Cが、後述する水抜きキャップ40の内周段差面43に図示奥側から当接する位置まで、図示手前方向に最大に引き出せるようになっている。
【0057】
図7に示すように、スピンドル20は、その嵌合部材22の外周部の溝に装着されたOリング25が、後述する水抜きキャップ40の装着に伴い水抜きキャップ40の内周面に押し付けられてシールされる。このシールにより、スピンドル20は、偏心管10の管内の湯水がスピンドル20の外周面と水抜きキャップ40の内周面との間の隙間から外部に排出されない状態となる。
【0058】
図8に示すように、スピンドル20は、上述した不図示の工具により時計回りに回されることで、螺合部材21の雄ねじ21Aが第1管路11の雌ねじ11Dに沿って回されながら全体が一体的となって図示奥方向へと押し込まれる。この移動により、スピンドル20は、パッキン24が第1管路11の下流端に形成された止水弁座11Cに押し付けられる。
【0059】
その結果、スピンドル20のパッキン24よりも上流箇所に形成された開口孔21Cが、パッキン24のシールに伴い第1管路11の管内に臨み、第2管路12とは連通しない状態となる。したがって、このシールにより、スピンドル20の連通路21Bを介して第1管路11と収容部23とは連通するものの、これらと第2管路12とは連通せず、第1管路11内の湯水が第2管路12へは流されない止水状態となる。
【0060】
スピンドル20は、図7に示す最大通水位置と図8に示す止水位置との間の移動範囲においては、上述した嵌合部材22の外周部に装着されたOリング25が水抜きキャップ40の内周面に押し付けられてシールされる状態を維持する。スピンドル20は、図7に示す最大通水位置、すなわち、外周段差面22Cが水抜きキャップ40の内周段差面43に当接する位置では、偏心管10の開口部12Cから外部に延び出す頭部22Bの図示手前側の端面が、水抜きキャップ40の図示手前側の端面と筒軸方向の配置が揃うようになっている。すなわち、スピンドル20は、その頭部22Bが水抜きキャップ40から外部へ張り出さない構成とされる。
【0061】
図6図7に示すように、低温作動弁機構30は、段付きの軸棒から成る低温作動弁体31と、形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばね32と、金属製のコイルばねから成るバイアスばね33と、を有する。低温作動弁体31は、スピンドル20の収容部23に沿って筒軸方向に摺動可能なように組み付けられる段付きの軸棒形状とされる。低温作動弁体31は、その筒軸方向の摺動により、スピンドル20の頭部22Bの漏水孔B2を開いたり閉じたりする構成とされる。
【0062】
具体的には、低温作動弁体31は、図示奥側の軸部を成す丸棒状の第1軸部31Aと、図示手前側の軸部を成す丸棒状の第2軸部31Bと、これらの間に円板状の拡径部を形成するフランジ31Cと、を有する形状とされる。第1軸部31A、第2軸部31B及びフランジ31Cは、互いに同心状の丸棒を成す形状とされる。図7に示すように、低温作動弁体31は、フランジ31Cが螺合部材21の筒内に筒軸方向に摺動可能となるように緩やかに嵌まり込んだ状態にセットされる。
【0063】
感温ばね32は、低温作動弁体31の第1軸部31Aに通されて収容部23内にセットされる。それにより、感温ばね32は、フランジ31Cの図示奥面と螺合部材21の連通路21Bの周囲の筒内側の側面との間に押し挟まれた状態に設けられる。この組み付けにより、感温ばね32は、低温作動弁体31をスピンドル20に対して図示手前方向、すなわち漏水孔B2を塞ぐ摺動方向に押し出すように付勢する。
【0064】
感温ばね32は、その周囲の温度変化により硬さを変化させる特性を備える。具体的には、感温ばね32は、その周囲の温度が高くなるにつれて、ばね力を強めるように硬くなる特性を備える。また、感温ばね32は、その周囲の温度が低くなるにつれて、ばね力を弱めるように軟らかくなる特性を備える。
【0065】
バイアスばね33は、低温作動弁体31の第2軸部31Bに通されて収容部23内にセットされる。バイアスばね33は、フランジ31Cの図示手前面と嵌合部材22の内周側の段差面である第2内周段差面22Dとの間に押し挟まれた状態に設けられる。この組み付けにより、バイアスばね33は、低温作動弁体31をスピンドル20に対して図示奥方向、すなわち漏水孔B2を開く摺動方向に押し出すように付勢する。
【0066】
図7図8に示すように、低温作動弁機構30は、第1管路11から収容部23へと取り込まれる水の温度が所定温度以上となる時には、感温ばね32がバイアスばね33よりも高いばね力を作用させる状態となる。それにより、低温作動弁体31が図示手前方向に押動されて、その第2軸部31Bの先端に装着されたシートパッキン31Dが漏止弁座B3に図示奥側から押し付けられて漏水孔B2を塞ぐ。その結果、収容部23に取り込まれた水が漏水孔B2から外部に漏出されることが阻止される。
【0067】
一方、図9に示すように、低温作動弁機構30は、第1管路11から収容部23へと取り込まれる水の温度が所定温度未満の低温となる時には、感温ばね32のばね力がバイアスばね33のばね力よりも弱められる状態となる。それにより、低温作動弁体31が図示奥方向に押動されて、第2軸部31Bの先端に装着されたシートパッキン31Dが漏止弁座B3から図示奥側に引き離されて漏水孔B2を開く。その結果、収容部23に取り込まれた水が、小孔である漏水孔B2から外部に少量ずつ漏出される。
【0068】
図5に示すように、水抜きキャップ40は、スピンドル20よりもひとまわり大きな筒外径を有する円筒状の部材から成る。水抜きキャップ40は、その図示奥側の筒領域が、外周面に雄ねじ41Aが形成された螺合部41とされる。また、水抜きキャップ40は、その図示手前側の筒領域が、使用者により手で掴まれて回転操作される操作部42とされる。操作部42は、螺合部41よりも僅かに大きな筒外径を成すように段差状に拡径された筒形状とされる。
【0069】
図5及び図7に示すように、水抜きキャップ40は、偏心管10に対し、図示手前側からスピンドル20を筒内に通すように開口部12C内に差し込まれる。そして、水抜きキャップ40は、その螺合部41の雄ねじ41Aが開口部12Cの内周面に形成された雌ねじ12Dに螺合されることにより、操作部42が偏心管10から手前側に張り出して外部に露出した状態に設けられる。図7に示すように、偏心管10の開口部12Cは、その周縁が、偏心管10の管内にバーリング状に立ち上がるように延びる形状とされ、その内周面に雌ねじ12Dが形成された構成とされる。
【0070】
図7に示すように、水抜きキャップ40は、操作部42が時計回りに回されることで、螺合部41の雄ねじ41Aが開口部12Cの雌ねじ12Dに沿って回されながら図示奥方向へ捩じ込まれる。水抜きキャップ40は、その操作部42の図示奥面の周縁が、開口部12Cの周縁に図示手前側から当接する位置まで図示奥側に最大に捩じ込めるようになっている。
【0071】
この最大位置への捩じ込みにより、水抜きキャップ40は、その螺合部41の図示手前端の外周部の溝に装着されたOリング41Bが、偏心管10の開口部12Cの内周面に押し付けられてシールされる。このシールにより、水抜きキャップ40は、偏心管10の管内の湯水が螺合部41の外周面と偏心管10の開口部12Cの内周面との間の隙間から外部に排出されない状態となる。
【0072】
また、水抜きキャップ40は、上記の捩じ込み位置から、図10に示すように、操作部42が反時計回りに回されることで、螺合部41の雄ねじ41Aが開口部12Cの雌ねじ12Dに沿って回されながら図示手前方向へと引き出される。そして、その操作により、水抜きキャップ40のOリング41Bが偏心管10の開口部12Cの内周面との当接状態から図示手前側へ外されることで、Oリング41Bによるシール状態が解除される。
【0073】
それにより、水抜きキャップ40は、偏心管10の管内の湯水が螺合部41の外周面と偏心管10の開口部12Cの内周面との間の隙間から外部に排出される水抜き状態となる。水抜きキャップ40の水抜きは、通常、各偏心管10よりも上流側にある不図示の元栓が凍結防止を目的に閉められた状態において行われる。また、湯側の止水栓Fにおいては、偏心管10に被せられている断熱管カバーC1(図3図4参照)を外して水抜きキャップ40の操作部42を手で掴める状態に露出させてから、水抜きキャップ40の水抜きが行われる。
【0074】
図7に示すように、水抜きキャップ40の螺合部41には、その内周部に円筒状のメッシュ材から成るフィルタ44が筒軸方向に延び出るように装着される。フィルタ44は、水抜きキャップ40の偏心管10への組み付けに伴い、その図示奥端が第1管路11の下流端に形成された止水弁座11Cの周囲面に当てられる。それにより、通水時に第1管路11から第2管路12へと流される湯水に異物が含まれている場合に、フィルタ44により異物を捕獲して下流側へ流さないようにすることができる。
【0075】
このように、止水栓Fは、スピンドル20に内蔵される低温作動弁機構30により、外気の温度が所定温度未満の低温となる場合に、偏心管10の管内の水を漏水孔B2から外部へと漏出させる。スピンドル20の低温作動弁機構30を収容する収容部23は、パッキン24(止水弁体)よりも上流側の位置で、連通路21B及び開口孔21Cと連通するように形成される。それにより、スピンドル20の収容部23を通水時の通水路Tとしても機能させられるように合理化することができ、スピンドル20を筒軸方向に小型化することができる。
【0076】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る止水栓Fは、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0077】
すなわち、止水栓(F)は、通水路(T)を成す管軸方向に延びる上流側の第1管路(11)及び第1管路(11)から交差する方向に延びる下流側の第2管路(12)を備える通水管(10)と、通水管(10)の管内に第1管路(11)に沿って管軸方向に移動可能に組み込まれる筒状のスピンドル(20)と、スピンドル(20)の筒内に形成された収容部(23)に組み込まれる低温作動弁機構(30)と、を有する。
【0078】
スピンドル(20)が、第1管路(11)に形成された止水弁座(11C)との当接により通水路(T)を止水する止水弁体(24)と、収容部(23)を第1管路(11)の管内と連通させる連通路(21B)と、収容部(23)を通水路(T)を通らない外気と連通させる漏水孔(B2)と、を有する。低温作動弁機構(30)が、収容部(23)の温度が所定温度以上となることで漏水孔(B2)を塞ぎ、所定温度未満となることで漏水孔(B2)を開く感温式の弁機構とされる。
【0079】
上記構成によれば、スピンドル(20)の回転により止水弁体(24)が第1管路(11)の止水弁座(11C)に当接することで、通水路(T)が閉じられる。また、スピンドル(20)の回転により止水弁体(24)が第1管路(11)の止水弁座(11C)から離間することで、通水路(T)が開かれる。上記スピンドル(20)の収容部(23)に収容された低温作動弁機構(30)は、収容部(23)に取り込まれた水の温度が外気の温度低下により所定温度未満となった場合に、漏水孔(B2)を開くように感温動作する。それにより、第1管路(11)からスピンドル(20)の連通路(21B)を通って収容部(23)内に入り込んでいる水が、漏水孔(B2)から外部へと漏出される。したがって、この漏出する流れにより、通水路(T)内の水の凍結を適切に防止することができる。
【0080】
また、第2管路(12)が、止水機能を備える給水栓(2)への給水路を成す。上記構成によれば、第2管路(12)の下流側の給水栓(2)が止水されていても、通水路(T)内の水を外部へと適切に漏出させて凍結防止することができる。
【0081】
また、連通路(21B)が、スピンドル(20)の筒軸方向の一端に筒軸方向に貫通するように形成され、漏水孔(B2)が、スピンドル(20)の通水管(10)から管軸方向の外部に延び出す延出部(22B)に形成される。上記構成によれば、第1管路(11)からスピンドル(20)の収容部(23)内に水を通して漏水孔(B2)から外部へと漏出させられる構造を簡素に具現化することができる。
【0082】
また、スピンドル(20)が、止水弁体(24)よりも筒軸方向の上流側の位置に収容部(23)及び収容部(23)を筒径方向に開口させる開口孔(21C)を有する。スピンドル(20)は、止水弁体(24)が止水弁座(11C)から離間した通水状態において開口孔(21C)が第2管路(12)と連通し、この連通により収容部(23)が連通路(21B)を流入口とし開口孔(21C)を流出口とする通水路(T)の連絡路を成す。上記構成によれば、スピンドル(20)の収容部(23)を通水時の通水路(T)としても機能するように合理化することができ、スピンドル(20)を筒軸方向に小型化することができる。
【0083】
また、低温作動弁機構(30)が、収容部(23)に沿って筒軸方向に摺動可能な低温作動弁体(31)と、低温作動弁体(31)をスピンドル(20)に対して漏水孔(B2)を塞ぐ摺動方向に付勢する感温ばね(32)と、低温作動弁体(31)をスピンドル(20)に対して漏水孔(B2)を開く摺動方向に付勢するバイアスばね(33)と、を有する。上記構成によれば、スピンドル(20)の筒内に組み込まれる低温作動弁機構(30)を、低温作動弁体(31)と感温ばね(32)とバイアスばね(33)とを用いた比較的簡素な構成によって具現化することができる。
【0084】
また、止水栓(F)が、通水管(10)に管軸方向に移動可能かつスピンドル(20)を内部に通すように螺合され、回転による管軸方向の移動により通水路(T)と外気との連通/遮断を切り替える筒状の水抜きキャップ(40)を更に有する。スピンドル(20)が、水抜きキャップ(40)の内周段差面(43)との筒軸方向の当接により止水弁座(11C)からの離間移動が規制される。上記構成によれば、通水路(T)に螺合される水抜きキャップ(40)の構成を利用して、スピンドル(20)の移動規制を合理的に行うことができる。このような構成により、低温作動弁機構(30)と水抜きキャップ(40)とを止水栓(F)の過度な大型化を伴わないように止水栓(F)に組み込むことができる。
【0085】
また、第1管路(11)が、水平向きに延在するように設けられる。上記構成によれば、漏水孔(B2)から外部に漏出される水を重力作用により外部に適切に排出することができる。
【0086】
また、通水管(10)が、混合水栓(1)の水栓本体(2)を施工壁(W)に取り付けるための連結脚となる一対の偏心管(10)のそれぞれを成す。上記構成によれば、混合水栓(1)の水栓本体(2)を施工壁(W)に取り付ける湯水の各偏心管(10)に、これらの意匠性を損なうことなく、止水機能と凍結防止機能とを適切に具備させることができる。
【0087】
《第2の実施形態》
続いて、本発明の第2の実施形態に係る止水栓Fの構成について、図11図18を用いて説明する。図11は、図3に対応する湯側の止水栓F単体の斜視図である。図12は、この湯側の止水栓Fから断熱管カバーC1及び断熱軸カバーC2を外した分解斜視図である。これらの図に示すように、止水栓Fは、偏心管10に第1の実施形態で示した構成と同一の止水機能、流量調節機能、水抜き機能及び凍結防止機能を担う各機構部品が組み込まれた構成とされる。
【0088】
具体的には、図12に示すように、止水栓Fは、クランク状に折れ曲がった通水路Tを構成する偏心管10と、偏心管10の管内に一部が図示手前側に突出するように組み込まれる筒状のスピンドル50と、を有する。また、止水栓Fは、スピンドル50の筒内に形成された収容部54に組み込まれる低温作動弁機構30と、スピンドル50を筒内に通すように偏心管10の管内に組み込まれる水抜きキャップ40と、を有する。
【0089】
上述した偏心管10、低温作動弁機構30及び水抜きキャップ40は、第1の実施形態で示した構成と同一の構成となっている。しかし、スピンドル50は、第1の実施形態で示した構成とは異なり、頭部53Bが偏心管10の管内から図示手前側に長く突出する長尺な構成となっている。また、本実施形態に係る止水栓Fは、上記スピンドル50の外部に突出する頭部53Bを覆う有底円筒状の断熱軸カバーC2を更に有する構成となっている。ここで、頭部53Bが、本発明の「延出部」に相当する。
【0090】
図13図14に示すように、スピンドル50は、螺合部材51と、中間部材52と、嵌合部材53と、パッキン55と、を有する段付き円筒状に組まれた部材から成る。螺合部材51は、図示手前側に向かって筒径が段々と細くなる段付き円筒状の部材から成る。螺合部材51は、その図示奥端部の外周面に雄ねじ51Aが形成されている。図15に示すように、螺合部材51は、その雄ねじ51Aを第1管路11の内周面に形成された雌ねじ11Dに下流側(図示手前側)から螺合させることにより、第1管路11内に組み込まれる構成とされる。
【0091】
この組み付けにより、螺合部材51は、第1管路11に対して、回転により第1管路11に沿って管軸方向に移動することができるようにセットされる。螺合部材51の図示手前側の端部には、図示手前側に向かって同心状に延びる細筒状の連結軸部51Bが形成されている。螺合部材51には、その中心部を筒軸方向に貫通させる丸孔状の連通路51Cが形成されている。連通路51Cは、細筒状の連結軸部51B内においてその孔径が窄められるものの、螺合部材51に筒軸方向に貫通して形成された構成とされる。この連通路51Cの形成により、螺合部材51は、その筒内と第1管路11の管内とが連通する構成とされる。
【0092】
図14図15に示すように、螺合部材51の筒周壁には、その筒周方向の4箇所の位置に、筒径方向に丸孔状に貫通する開口孔51Dが形成されている。これら開口孔51Dは、螺合部材51の筒内、すなわち連通路51Cと連通する構成とされる。それにより、各開口孔51Dは、連通路51Cを通じて第1管路11の管内とも連通するようになっている。
【0093】
中間部材52は、螺合部材51よりもひとまわり大きな筒外径を有する円筒状の部材から成る。中間部材52は、その筒軸方向の途中から先(図示奥側の先)の領域に、筒内径を段差状に狭めて筒軸方向に同心状に貫通する丸孔状の連通路52Aが形成された構成とされる。
【0094】
中間部材52は、その連通路52Aに螺合部材51の連結軸部51Bを図示奥側から螺合させることで、螺合部材51と一体的に組み付けられている。その際、螺合部材51は、その連結軸部51Bの外周部にリング状のパッキン55が装着されてから中間部材52に組み付けられることで、中間部材52との間にパッキン55を挟持した状態に組み付けられる。ここで、パッキン55が、本発明の「止水弁体」に相当する。
【0095】
パッキン55は、螺合部材51の連結軸部51Bに図示手前側から筒軸方向に通されて、螺合部材51の外周側の段差面である外周段差面51Eに筒軸方向に当てられてセットされる。そして、その状態で螺合部材51の連結軸部51Bが中間部材52に組み付けられることで、図15に示すように、パッキン55が螺合部材51の外周段差面51Eと中間部材52の図示奥側の端面との間に筒軸方向に挟持された状態にセットされる。螺合部材51の外周段差面51Eは、開口孔51Dよりも下流側となる図示手前側の位置に形成されている。
【0096】
図13図14に示すように、嵌合部材53は、その図示手前側の端部に底部(頭部53B)を有する有底円筒状の部材から成る。嵌合部材53は、その図示奥側の筒領域の外周部を中間部材52の筒内に図示手前側から螺合させることで、中間部材52と一体的に組み付けられている。詳しくは、図15に示すように、嵌合部材53は、その上流端となる図示奥側の端面が中間部材52の内周側の段差面である第1内周段差面52Bに筒軸方向に当接することで、中間部材52に対する筒軸方向の嵌め込みが係止される。
【0097】
上記組み付けにより、嵌合部材53は、その外周部の溝に装着されたOリング53Cが、中間部材52の内周面に押し付けられてシールされる。なお、嵌合部材53は、中間部材52に対して圧入嵌合により嵌め込まれる構成であってもよい。
【0098】
図13図14に示すように、嵌合部材53は、その図示手前端の底部を形成する頭部53Bに、不図示の工具(マイナスドライバ)を図示手前側から差し込んで回転操作することが可能な工具穴B1が形成されている。図15に示すように、上記頭部53Bの中心部には、その筒内側から筒軸方向の途中位置まで穴あけされた小孔状の漏水孔B2が形成されている。ここで、頭部53Bが、本発明の「延出部」に相当する。
【0099】
漏水孔B2は、その筒軸方向に穴あけされた図示手前端から頭部53Bを筒径方向の相反する2方向に抜けるように筒径方向に一直線状に穿たれた形状とされる。頭部53Bの筒内側の側面の漏水孔B2の周囲には、漏水孔B2の周縁に沿って筒軸方向に環状に膨出する漏止弁座B3が形成されている。
【0100】
上記スピンドル50は、中間部材52と嵌合部材53との組み付けにより、これらの筒内に低温作動弁機構30を収容可能な筒状空間である収容部54を形成する。スピンドル50は、中間部材52と嵌合部材53との組み付けの際に、嵌合部材53の筒内に低温作動弁機構30がセットされることにより、嵌合部材53と中間部材52との間の収容部54に低温作動弁機構30が収容された状態に組み上げられる。
【0101】
そして、図13に示すように、スピンドル50は、偏心管10に対し、図示手前側から開口部12C内に差し込まれ、図15に示すように、螺合部材51の雄ねじ51Aが第1管路11の雌ねじ11Dに螺合された状態に組み付けられる。この組み付けにより、スピンドル50は、その中間部材52の筒軸方向の途中から手前側の領域が、偏心管10から手前側に張り出して外部に露出した状態に設けられる。その結果、スピンドル50は、漏水孔B2の形成された頭部53Bが偏心管10から手前側に張り出して外部に露出した状態に設けられる。
【0102】
上記スピンドル50は、上述した頭部53Bの工具穴B1に不図示の工具が差し込まれて反時計回りに回されることで、螺合部材51の雄ねじ51Aが第1管路11の雌ねじ11Dに沿って回されながら全体が一体的となって図示手前方向へと引き出される。この移動により、図15に示すように、スピンドル50は、パッキン55が第1管路11の下流端(図示手前端)に沿って形成された止水弁座11Cから引き離される。
【0103】
その結果、スピンドル50のパッキン55よりも上流箇所に形成された開口孔51Dが、第2管路12の管内に臨んで連通した状態となる。したがって、この連通により、螺合部材51の連通路51Cと開口孔51Dとを通じて第1管路11と第2管路12とが連通され、第1管路11から供給される湯水が第2管路12へと流される通水状態となる。詳しくは、上記連通により、第1管路11と第2管路12とは、スピンドル50の低温作動弁機構30を収容する収容部54を経由することなく、螺合部材51の連通路51Cと開口孔51Dとを通って互いに連通される。
【0104】
すなわち、スピンドル50は、上記通水状態では、低温作動弁機構30を収容する収容部54が、第1管路11と第2管路12とを連通させる連絡路(螺合部材51の連通路51Cと開口孔51D)から連通路52Aを介して図示手前側に引き込まれた先の位置に配置される状態となる。その結果、収容部54と連通路51C,52Aとは互いに連通されてはいるものの、第1管路11から第2管路12へと流される湯水は収容部54内には流れ込みにくくなっている。スピンドル50は、その中間部材52の外周側の段差面である外周段差面52Dが、水抜きキャップ40の内周段差面43に図示奥側から当接する位置まで、図示手前方向に最大に引き出せるようになっている。
【0105】
図15に示すように、スピンドル50は、その中間部材52の外周部の溝に装着されたOリング56が、水抜きキャップ40の装着に伴い水抜きキャップ40の内周面に押し付けられてシールされる。このシールにより、スピンドル50は、偏心管10の管内の湯水がスピンドル50の外周面と水抜きキャップ40の内周面との間の隙間から外部に排出されない状態となる。
【0106】
図16に示すように、スピンドル50は、上述した不図示の工具により時計回りに回されることで、螺合部材51の雄ねじ51Aが第1管路11の雌ねじ11Dに沿って回されながら全体が一体的となって図示奥方向へと押し込まれる。この移動により、スピンドル50は、パッキン55が第1管路11の下流端に形成された止水弁座11Cに押し付けられる。
【0107】
その結果、スピンドル50のパッキン55よりも上流箇所に形成された開口孔51Dが、パッキン55のシールに伴い第1管路11の管内に臨み、第2管路12とは連通しない状態となる。したがって、このシールにより、スピンドル50の連通路51C,52Aを介して第1管路11と収容部54とは連通するものの、これらと第2管路12とは連通せず、第1管路11内の湯水が第2管路12へは流されない止水状態となる。
【0108】
スピンドル50は、図15に示す最大通水位置と図16に示す止水位置との間の移動範囲においては、上述した嵌合部材53の外周部に装着されたOリング56が水抜きキャップ40の内周面に押し付けられてシールされる状態を維持する。
【0109】
図15に示すように、低温作動弁機構30は、次のようにスピンドル50の収容部54内にセットされている。すなわち、低温作動弁体31は、フランジ31Cが中間部材52の筒内に筒軸方向に摺動可能となるように緩やかに嵌まり込んだ状態にセットされる。
【0110】
また、感温ばね32は、低温作動弁体31の第1軸部31Aに通されて収容部54内にセットされる。それにより、感温ばね32は、フランジ31Cの図示奥面と中間部材52の連通路52Aの周囲の筒内側の側面である第2内周段差面52Cとの間に押し挟まれた状態に設けられる。この組み付けにより、感温ばね32は、低温作動弁体31をスピンドル50に対して図示手前方向、すなわち漏水孔B2を塞ぐ摺動方向に押し出すように付勢する。
【0111】
バイアスばね33は、低温作動弁体31の第2軸部31Bに通されて収容部54内にセットされる。バイアスばね33は、フランジ31Cの図示手前面と嵌合部材53の内周側の段差面である内周段差面53Aとの間に押し挟まれた状態に設けられる。この組み付けにより、バイアスばね33は、低温作動弁体31をスピンドル50に対して図示奥方向、すなわち漏水孔B2を開く摺動方向に押し出すように付勢する。
【0112】
図15図16に示すように、低温作動弁機構30は、第1管路11から収容部54へと取り込まれる水の温度が所定温度以上となる時には、感温ばね32がバイアスばね33よりも高いばね力を作用させる状態となる。それにより、低温作動弁体31が図示手前方向に押動されて、その第2軸部31Bの先端に装着されたシートパッキン31Dが漏止弁座B3に図示奥側から押し付けられて漏水孔B2を塞ぐ。その結果、収容部54に取り込まれた水が漏水孔B2から外部に漏出されることが阻止される。
【0113】
一方、図17に示すように、低温作動弁機構30は、第1管路11から収容部54へと取り込まれる水の温度が所定温度未満の低温となる時には、感温ばね32のばね力がバイアスばね33のばね力よりも弱められる状態となる。それにより、低温作動弁体31が図示奥方向に押動されて、第2軸部31Bの先端に装着されたシートパッキン31Dが漏止弁座B3から図示奥側に引き離されて漏水孔B2を開く。その結果、収容部54に取り込まれた水が、小孔である漏水孔B2から外部に少量ずつ漏出される。
【0114】
低温作動弁機構30は、上述したように、第1管路11と第2管路12とを連通させる連絡路(螺合部材51の連通路51Cと開口孔51D)から連通路52Aを介して図示手前側に引き込まれた先の位置に形成された収容部54に収容されている。そうしたことから、低温作動弁機構30は、第1管路11から第2管路12へと流される流水に晒されにくく、外気の温度の影響を受けやすい環境に配置された構成とされている。したがって、低温作動弁機構30を外気の温度変化に合わせてより敏感に動作させることができる。
【0115】
水抜きキャップ40は、図15に示す捩じ込み位置から、図18に示すように、操作部42が反時計回りに回されることで、螺合部41の雄ねじ41Aが開口部12Cの雌ねじ12Dに沿って回されながら図示手前方向へと引き出される。そして、その操作により、水抜きキャップ40のOリング41Bが偏心管10の開口部12Cの内周面との当接状態から図示手前側へ外されることで、Oリング41Bによるシール状態が解除される。それにより、水抜きキャップ40は、偏心管10の管内の湯水が螺合部41の外周面と偏心管10の開口部12Cの内周面との間の隙間から外部に排出される水抜き状態となる。
【0116】
上記以外の構成は、第1の実施形態で示した止水栓Fと実質的に同一の構成となっている。したがって、第1の実施形態で示した構成と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0117】
以上をまとめると、第2の実施形態に係る止水栓Fは、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0118】
すなわち、止水栓(F)は、通水路(T)を成す管軸方向に延びる上流側の第1管路(11)及び第1管路(11)から交差する方向に延びる下流側の第2管路(12)を備える通水管(10)と、通水管(10)の管内に第1管路(11)に沿って管軸方向に移動可能に組み込まれる筒状のスピンドル(50)と、スピンドル(50)の筒内に形成された収容部(54)に組み込まれる低温作動弁機構(30)と、を有する。
【0119】
スピンドル(50)が、第1管路(11)に形成された止水弁座(11C)との当接により通水路(T)を止水する止水弁体(55)と、収容部(54)を第1管路(11)の管内と連通させる連通路(51C,52A)と、収容部(54)を通水路(T)を通らない外気と連通させる漏水孔(B2)と、を有する。低温作動弁機構(30)が、収容部(54)の温度が所定温度以上となることで漏水孔(B2)を塞ぎ、所定温度未満となることで漏水孔(B2)を開く感温式の弁機構とされる。
【0120】
上記構成によれば、スピンドル(50)の回転により止水弁体(55)が第1管路(11)の止水弁座(11C)に当接することで、通水路(T)が閉じられる。また、スピンドル(50)の回転により止水弁体(55)が第1管路(11)の止水弁座(11C)から離間することで、通水路(T)が開かれる。上記スピンドル(50)の収容部(54)に収容された低温作動弁機構(30)は、収容部(54)に取り込まれた水の温度が外気の温度低下により所定温度未満となった場合に、漏水孔(B2)を開くように感温動作する。それにより、第1管路(11)からスピンドル(50)の連通路(51C,52A)を通って収容部(54)内に入り込んでいる水が、漏水孔(B2)から外部へと漏出される。したがって、この漏出する流れにより、通水路(T)内の水の凍結を適切に防止することができる。
【0121】
また、連通路(51C,52A)が、スピンドル(50)の筒軸方向の一端に筒軸方向に貫通するように形成され、漏水孔(B2)が、スピンドル(50)の通水管(10)から管軸方向の外部に延び出す延出部(53B)に形成される。上記構成によれば、第1管路(11)からスピンドル(50)の収容部(54)内に水を通して漏水孔(B2)から外部へと漏出させられる構造を簡素に具現化することができる。
【0122】
また、スピンドル(50)が、止水弁体(55)よりも筒軸方向の下流側の位置に収容部(54)を有し、かつ、収容部(54)及び止水弁体(55)よりも筒軸方向の上流側の位置に連通路(51C)と連通して筒径方向に開口する開口孔(51D)を有する。止水弁体(55)が止水弁座(11C)から離間した通水状態において、開口孔(51D)が第2管路(12)と連通し、この連通により収容部(54)を通ることなく連通路(51C)を流入口とし開口孔(51D)を流出口とする通水路(T)の連絡路が形成される。
【0123】
上記構成によれば、通水時に第1管路(11)から連通路(51C)に流入した水が収容部(54)を通ることなく開口孔(51D)から第2管路(12)へと流出される。その結果、収容部(54)に収容される低温作動弁機構(30)が流水に晒されにくく、外気の温度の影響を受けやすい環境に置かれることとなる。したがって、低温作動弁機構(30)を外気の温度変化に合わせてより敏感に動作させることができる。
【0124】
また、低温作動弁機構(30)が、収容部(54)に沿って筒軸方向に摺動可能な低温作動弁体(31)と、低温作動弁体(31)をスピンドル(50)に対して漏水孔(B2)を塞ぐ摺動方向に付勢する感温ばね(32)と、低温作動弁体(31)をスピンドル(50)に対して漏水孔(B2)を開く摺動方向に付勢するバイアスばね(33)と、を有する。上記構成によれば、スピンドル(50)の筒内に組み込まれる低温作動弁機構(30)を、低温作動弁体(31)と感温ばね(32)とバイアスばね(33)とを用いた比較的簡素な構成によって具現化することができる。
【0125】
また、止水栓(F)が、通水管(10)に管軸方向に移動可能かつスピンドル(50)を内部に通すように螺合され、回転による管軸方向の移動により通水路(T)と外気との連通/遮断を切り替える筒状の水抜きキャップ(40)を更に有する。スピンドル(50)が、水抜きキャップ(40)の内周段差面(43)との筒軸方向の当接により止水弁座(11C)からの離間移動が規制される。上記構成によれば、通水路(T)に螺合される水抜きキャップ(40)の構成を利用して、スピンドル(50)の移動規制を合理的に行うことができる。このような構成により、低温作動弁機構(30)と水抜きキャップ(40)とを止水栓(F)の過度な大型化を伴わないように止水栓(F)に組み込むことができる。
【0126】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0127】
1.本発明の止水栓は、給水栓を施工壁に取り付けるための連結脚となるアングル止水栓(水の入口と出口が直角になっているタイプの止水栓)として構成されるものであっても良い。通水管を構成する第2管路は、第1管路に対して必ずしも直交する方向に延びるものでなくても良く、交差する方向に斜めの角度で延びるものであっても良い。
【0128】
止水栓は、その第2管路が、止水機能を備える他の給水栓には接続されず、外部にそのまま水を吐出する吐水管を構成するものであっても良い。止水栓は、第1管路が鉛直方向に延在する向きで配置される構成であっても良い。止水栓は、水抜き機能、すなわち通水管の通水路と外気との連通/遮断を切り替える水抜きキャップを備えない構成であっても良い。
【0129】
2.低温作動弁機構の感温構造は、感温ばねの他、WAX(パラフィンワックス)の膨張収縮により感温動作するサーモエレメントで構成されるものであっても良い。低温作動弁機構は、感温ばねやサーモエレメント等の感温体がバイアスばねよりも下流側に配置される関係となる構成であっても構わない。但し、その場合であっても、感温体が温度低下によりばね力を弱めたり収縮したりする動作によって漏水孔を開けられるように漏水孔を配置する必要がある。漏水孔は、スピンドルに対し、筒軸方向及び/又は筒径方向に開口するように形成されるものであっても良い。
【0130】
3.スピンドルの連通路、すなわち低温作動弁機構が収容される収容部を第1管路の管内と連通させる連通路は、スピンドルに対して筒径方向に開口するように形成されるものであっても構わない。
【0131】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1…混合水栓、2…水栓本体(給水栓)、3…温度調節ハンドル、4…切替ハンドル、5…シャワエルボ、6…カラン、10…偏心管(通水管)、11…第1管路、11A…雄ねじ、11B…座金、11C…止水弁座、11D…雌ねじ、12…第2管路、12A…袋ナット、12B…拡径部、12C…開口部、12D…雌ねじ、20…スピンドル、21…螺合部材、21A…雄ねじ、21B…連通路、21C…開口孔、21D…フランジ、22…嵌合部材、22A…第1内周段差面、22B…頭部(延出部)、B1…工具穴、B2…漏水孔、B3…漏止弁座、22C…外周段差面、22D…第2内周段差面、23…収容部、24…パッキン(止水弁体)、25…Oリング、30…低温作動弁機構、31…低温作動弁体、31A…第1軸部、31B…第2軸部、31C…フランジ、31D…シートパッキン、32…感温ばね、33…バイアスばね、40…水抜きキャップ、41…螺合部、41A…雄ねじ、41B…Oリング、42…操作部、43…内周段差面、44…フィルタ、50…スピンドル、51…螺合部材、51A…雄ねじ、51B…連結軸部、51C…連通路、51D…開口孔、51E…外周段差面、52…中間部材、52A…連通路、52B…第1内周段差面、52C…第2内周段差面、52D…外周段差面、53…嵌合部材、53A…内周段差面、53B…頭部(延出部)、53C…Oリング、54…収容部、55…パッキン(止水弁体)、56…Oリング、F…止水栓、T…通水路、W…施工壁、C1…断熱管カバー、C2…断熱軸カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18