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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024240
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20240215BHJP
   B25C 1/06 20060101ALI20240215BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B25C7/00 C
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126920
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗木 駿
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
(72)【発明者】
【氏名】長尾 雅也
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068AA04
3C068BB01
3C068CC02
3C068CC07
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】ガスばね式の打ち込み工具において、ピストンに当接するクッションのボリュームを増やすことでクッションの衝撃吸収性と耐久性を向上させる。
【解決手段】打ち込み工具1は、シリンダ12と、シリンダ12内をガス圧で移動するピストン14と、ピストン14とともに移動して打ち込み具Nを打撃するドライバ本体15と、ドライバ本体15の側縁に沿ってドライバ本体15から幅方向に突出する複数のドライバ凸部16を有する。打ち込み工具1は、複数のドライバ凸部16と係合する複数の係合部24を備えかつ回転することでドライバ本体15を初期位置へ戻すリフト機構20と、ドライバ本体15が挿通される貫通孔18aを具備しかつピストン14の衝撃を受ける筒状のクッション18を有する。ドライバ本体15の幅中心線Kがピストン14の幅中心線Lよりもリフト機構20から離れる方向にオフセットするようにドライバ本体15が配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
シリンダと、
前記シリンダ内をガス圧で移動するピストンと、
前記ピストンとともに移動して打ち込み具を打撃するドライバ本体と、
前記ドライバ本体の側縁に沿って前記ドライバ本体から幅方向に突出する複数のドライバ凸部と、
前記複数のドライバ凸部と係合する複数の係合部を備えかつ回転することで前記ドライバ本体を初期位置へ戻すリフト機構と、
前記ドライバ本体が挿通される貫通孔を具備しかつ前記ピストンの衝撃を受ける筒状のクッションを有し、
前記ドライバ本体の幅中心線が前記ピストンの幅中心線よりも前記リフト機構から離れる方向にオフセットするように前記ドライバ本体が配置される打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1に記載の打ち込み工具であって、
前記ドライバ本体は、前記ピストンに対して前記幅方向に回転可能に連結される打ち込み工具。
【請求項3】
請求項2に記載の打ち込み工具であって、
前記ドライバ本体の前記ピストンに対する回転中心が前記ピストンの前記幅中心線上に位置する打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の打ち込み工具であって、
打ち込み方向の端部において前記ドライバ本体を案内するドライバガイドを有し、
前記ドライバガイドの幅中心線が前記ピストンの前記幅中心線よりも前記リフト機構から離れる方向にオフセットするように前記ドライバガイドが配置される打ち込み工具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記クッションの前記貫通孔の内周面は、前記ドライバ本体の移動方向から見て円形状である打ち込み工具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記リフト機構は、工具本体に回転可能に支持されたホイールと、前記ホイールの周方向に沿って並ぶ前記複数の係合部を有し、
前記複数の係合部の少なくとも1つは、前記ホイールに対して前記ホイールの径方向に移動可能である打ち込み工具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ドライバ本体は、前記幅方向の両側において前記ドライバ本体の移動方向および前記幅方向と交差する高さ方向に突出する第1凸部を有する打ち込み工具。
【請求項8】
請求項7に記載の打ち込み工具であって、
前記ドライバ本体は、前記幅方向の中央において前記高さ方向に突出する第2凸部を有し、前記第2凸部は、前記第1凸部よりも突出高さが低い打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、釘やステープル等の打ち込み具を木材等に打ち込むための打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮ガスの推力を打撃力として利用するガスばね式の打ち込み工具が開示されている。ガスばね式の打ち込み工具は、シリンダ内を打ち込み方向に上下動するピストンと、ピストンから下方へ延出するドライバ本体を有する。ピストンとドライバ本体は、蓄圧室のガス圧によって共に打ち込み方向に下動する。ドライバは、下方の打ち込み通路に装填された打ち込み具を打撃する。これにより打ち込み具が木材等の被打ち込み材に射出される。
【0003】
ガスばね式の打ち込み工具は、ピストンとドライバ本体を下動端から初期位置および上動端へと上動させるリフト機構を有する。ドライバ本体は、上下方向に並んで形成される複数のドライバ凸部(ラック歯)を有する。リフト機構は、複数のドライバ凸部に係合される複数の係合部(ピン)を具備するホイールを有する。複数の係合部は、ホイールの外周に沿って配置される。ホイールは、例えば電動モータ等の駆動源によって回転する。打ち込み具を射出した後、ホイールと共にホイール軸回りに回転する係合部がドライバ凸部に噛み合わされる。ドライバ凸部は、上方のドライバ凸部から順次、係合部と噛み合わされる。これによりドライバとピストンが反打ち込み方向に上動する。ピストンが反打ち込み方向に上動することで、蓄圧室のガス圧が高められる。ドライバが上動端まで上動されると、最下部のドライバ凸部とリフト機構の係合部との係合状態が解除される。これによりドライバの打ち込み動作が再度なされる。
【0004】
複数のドライバ凸部は、ドライバ本体からリフト機構側へ突出する。ドライバ本体の左右方向の幅中心は、ピストンの軸心と同軸上に設けられている。そのためドライバ凸部の先端からピストンの軸心までの左右方向の距離は、ドライバ本体の反リフト機構側の端面からピストンの軸心までの左右方向の距離よりも長い。
【0005】
シリンダの下端には、下動端へ移動したピストンの衝撃を緩衝するためのクッションが設けられる。クッションは、ピストンの下面に対して均等に当接するようにピストンの軸心を中心とする略円筒状に形成される。そのためクッションのボリュームは、ピストンの軸心に対して左右均等に配置される。クッションの中央には、ドライバ本体およびドライバ凸部が通過可能に上下方向に貫通した貫通孔が設けられる。貫通孔は、少なくともドライバ本体またはドライバ凸部と接触しない孔径を必要とする。そのため貫通孔の孔径は、ドライバ凸部の先端からピストンの軸心までの左右方向の距離を基準にして設定される。貫通孔の孔径を維持しながらクッションのボリュームを大きくしようとすると、製品を大型化する必要がある。したがってピストンの下面と当接するクッションのボリュームを大きくすることに制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6915682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがってガスばね式の打ち込み工具において、ピストンに当接するクッションのボリュームを増やすことでクッションの衝撃吸収性と耐久性を向上させることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つの特徴によると打ち込み工具は、シリンダと、シリンダ内をガス圧で移動するピストンを有する。打ち込み工具は、ピストンとともに移動して打ち込み具を打撃するドライバ本体を有する。打ち込み工具は、ドライバ本体の側縁に沿ってドライバ本体から幅方向に突出する複数のドライバ凸部を有する。打ち込み工具は、複数のドライバ凸部と係合する複数の係合部を備えかつ回転することでドライバ本体を初期位置へ戻すリフト機構を有する。打ち込み工具は、ドライバ本体が挿通される貫通孔を具備しかつピストンの衝撃を受ける筒状のクッションを有する。ドライバ本体の幅中心線がピストンの幅中心線よりもリフト機構から離れる方向にオフセットするようにドライバ本体が配置される。
【0009】
したがってドライバ凸部の先端からピストンの幅中心線までの距離を、ドライバ本体の幅中心線とピストンの幅中心線が相互にオフセットしている長さ分短くすることができる。そのためドライバ本体とドライバ凸部を挿通させるクッションの貫通孔の開口面積を小さくすることができる。そのためピストンの下面に当接するクッションのボリュームを増やすことができる。これによりクッションの衝撃吸収性を高めることができる。また、相互に接触するクッションとピストンの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例に係る打ち込み工具のピストンとドライバが初期位置に位置する状態を示す縦断面図である。
図2】本実施例に係る打ち込み工具のピストンとドライバが下動端に位置する状態を示す縦断面図である。
図3図1中III-III線断面矢視図である。
図4図2中IV-IV線断面矢視図である。
図5図1中V-V線断面矢視図である。
図6】ドライバの斜視図である。
図7】ドライバの前面図である。
図8図7中VIII-VIII線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の他の特徴によるとドライバ本体は、ピストンに対して幅方向に回転可能に連結される。したがってドライバ本体は、ピストンとの連結部分を中心にして所定の角度範囲で幅方向に回転できる。そのため、例えばドライバ本体を案内するドライバガイドとドライバ本体とが摺動し得る場合でも、ドライバ本体が幅方向に回転することでドライバガイドとの摺動を速やかに回避できる。これによりドライバ本体に不用意な力が加わることを抑制でき、ドライバ本体の摩耗を抑制できる。
【0012】
本開示の他の特徴によるとドライバ本体のピストンに対する回転中心がピストンの幅中心線上に位置する。したがってドライバ本体は、ピストンの幅中心線に対する振れ幅が幅方向に略均等である。クッションは、ピストンの下面と均等に当接するためにピストンの幅中心線を中心にして略均等に配置される。そのためドライバ本体は、クッションの幅方向の中心に対して幅方向に略均等に回転可能である。これによりドライバ本体が幅方向に回転する際、ドライバ本体またはドライバ凸部がクッションの貫通孔の内周面に不用意に接触することを抑制できる。
【0013】
本開示の他の特徴によると打ち込み工具は、打ち込み方向の端部においてドライバ本体を案内するドライバガイドを有する。ドライバガイドの幅中心線がピストンの幅中心線よりもリフト機構から離れる方向にオフセットするようにドライバガイドが配置される。したがってドライバ本体は、ドライバ本体の幅中心線がドライバガイドの幅中心線上に位置するように打ち込み方向に移動する。打ち込み具は、ドライバガイドの幅中心線上に供給される。そのためドライバ本体は、打ち込み具の幅方向の略中心を打撃できる。これにより打ち込み具を打ち込み方向に真っ直ぐに射出できる。
【0014】
本開示の他の特徴によるとクッションの貫通孔の内周面は、ドライバ本体の移動方向から見て円形状である。したがってピストンとクッションは、周方向において略均等に当接する。そのためクッションは、ピストンの衝撃を受ける際に周方向において略均等に変形する。これによりクッションの特定の箇所が摩耗することを抑制でき、クッションの耐久性を向上させることができる。また、ピストンがクッションに当接する際に不用意に傾斜することを抑制できる。これによりピストンとシリンダの摩耗を抑制できる。
【0015】
本開示の他の特徴によるとリフト機構は、工具本体に回転可能に支持されたホイールと、ホイールの周方向に沿って並ぶ複数の係合部を有する。複数の係合部の少なくとも1つは、ホイールに対してホイールの径方向に移動可能である。
【0016】
したがってドライバ凸部の幅方向の突出長さを、ホイールの径方向に移動可能な係合部の移動分だけ長く設ける必要がある。ドライバ本体の幅中心線をピストンの幅中心線よりもリフト機構から離れる方向にオフセットするように配置することで、ドライバ凸部の突出長さを長く設ける場合でもクッションのボリュームの減少を抑制できる。また、ドライバ本体の幅中心線とピストンの幅中心線が相互にオフセットしている長さ分だけ、係合部をピストンの幅中心線に近づけることができる。そのため係合部がドライバ凸部の底部を上方へ押す力がピストンの幅中心線の近くで作用する。これによりドライバとピストンを上方へ真っ直ぐ移動させることができる。
【0017】
本開示の他の特徴によるとドライバ本体は、幅方向の両側においてドライバ本体の移動方向および幅方向と交差する高さ方向に突出する第1凸部を有する。したがってドライバ本体は、幅方向の両側に設けられる第1凸部に案内されて打ち込み方向に真っ直ぐに移動する。そのためドライバ本体が打ち込み具を打ち込み方向に打撃する安定性を高めることができる。
【0018】
本開示の他の特徴によるとドライバ本体は、幅方向の中央において高さ方向に突出する第2凸部を有し、第2凸部は、第1凸部よりも突出高さが低い。したがって第2凸部の突出高さを抑えることでドライバ本体を軽量に設けることができる。また、ドライバ本体は、第2凸部の下端で打ち込み具を打撃する。そのため所定の突出高さの第2凸部を設けることで、ドライバ本体に打撃された打ち込み具を良好な安定性で射出することができる。
【0019】
次に本開示の実施例の1つを図1~8に基づいて説明する。打ち込み工具1の一例として、シリンダ上方の蓄圧室のガス圧を打ち込み具Nを打ち込むための推力として利用するガスばね式の打ち込み工具を示す。以下の説明では、打ち込み具Nの打ち込み方向を下方向とし、反打ち込み方向を上方向とする。打ち込み工具1の使用者は、図1において概ね打ち込み工具1の左側に位置する。使用者の手前側を後方向(使用者側)、手前側と反対側の奥側を前方向とする。左右方向については使用者を基準とする。
【0020】
図1,3に示すように打ち込み工具1は、工具本体10を有する。工具本体10は、概ね円筒形の本体ハウジング11にシリンダ12を収容した構成を有する。シリンダ12内にはピストン14が上下に往復動可能に収容される。ピストン14よりも上方のシリンダ12の上部は、蓄圧室13に連通される。蓄圧室13には、例えば空気等の圧縮ガスが封入される。蓄圧室13のガス圧は、ピストン14の上面に作用することでピストン14を下動させる推力を発生させる。
【0021】
図3,4に示すようにシリンダ12の下部は、工具本体10の下部に設けられた打ち込みノーズ部2の打ち込み通路2aに連通される。打ち込みノーズ部2は、多数本の打ち込み具N(図1参照)が装填されたマガジン9と結合される。打ち込み通路2aには、マガジン9内から打ち込み具Nが1本ずつ上下に延出した姿勢で供給される。打ち込みノーズ部2の下部には、上下にスライド可能なコンタクトアーム3が設けられる。コンタクトアーム3は、被打ち込み材Wと当接することにより図4の仮想線で示すように上動する。
【0022】
図3に示すようにピストン14の下面には、上下方向に長いドライバ30が連結される。ドライバ30の下部は、打ち込み通路2a内に進入している。ドライバ30は、ピストン14の上面に作用する蓄圧室13のガス圧によって打ち込み通路2a内を下動する。下動するドライバ30は、打ち込み通路2a内に供給される1本の打ち込み具Nを打撃する。打撃された打ち込み具Nは、打ち込み通路2aの下端で開口する射出口2cから射出される。射出された打ち込み具Nは被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0023】
図1,2に示すように工具本体10の後部には、使用者が把持するグリップ4が設けられる。グリップ4の前部下面には、使用者が指先で引いて操作するトリガ5が設けられる。被打ち込み材Wにコンタクトアーム3を押し付けて打ち込みノーズ部2に対して相対的に上動させることでトリガ5の引き操作が有効になる。グリップ4には、トリガの引き操作によってオンオフ状態が切り替えられるトリガスイッチ5aが設けられる。グリップ4の後部にはバッテリ取付部6が設けられる。バッテリ取付部6の後面には、バッテリパック7を取り外し可能に装着できる。バッテリパック7は、バッテリ取付部6から取り外して別途用意した充電器で繰り返し充電して使用できる。バッテリパック7は、他の電動工具の電源として流用することができる。バッテリパック7は、後述する電動モータ26に電力を供給する電源として動作する。
【0024】
図1,2に示すようにグリップ4には、主として電動モータ26の駆動を制御するコントローラ8が収容される。コントローラ8は、矩形箱形のケースに回路基板が収容されて形成される。コントローラ8は、バッテリ取付部6の前方において厚み方向(最短辺方向)が前後方向に沿った姿勢でグリップ4に収容される。
【0025】
図3,4に示すように打ち込みノーズ部2の右側部には、リフト機構20が結合されている。リフト機構20は、打ち込み具Nの打撃後にピストン14とドライバ30を上方へ戻す。リフト機構20によりピストン14が上方へ戻されることで、蓄圧室13のガス圧が高められる。
【0026】
図5に示すようにリフト機構20の後部には、リフト機構20を動作させるための電動モータ26と減速ギヤ列27が並設される。電動モータ26と減速ギヤ列27とリフト機構20は、略円筒状の駆動部ケース11aに収容される。駆動部ケース11aは、本体ハウジング11の下部とバッテリ取付部6の下部を連結する(図1参照)。駆動部ケース11aは、本体ハウジング11と一体に設けられる。
【0027】
図5に示すように電動モータ26は、出力軸26aのモータ軸線Jを前後方向(図5において紙面に直交する打ち込み方向と直交する方向)に沿わせた姿勢で収容される。出力軸26aの周囲には、出力軸26aに一体に連結された回転子26cが設けられる。回転子26cの径方向外方には、駆動部ケース11aに回転不能に支持された固定子26bが設けられる。電動モータ26の出力軸26aは、軸受26d,26eを介して駆動部ケース11aに回転可能に支持される。電動モータ26は、バッテリパック7の電力を電源としてトリガ5の引き操作によって起動する。
【0028】
図5に示すように出力軸26aの前部は、減速ギヤ列27に接続される。減速ギヤ列27は、駆動部ケース11aに収容された略円筒状のギヤ列ケース28の内周側に支持される。減速ギヤ列27には3列の遊星ギヤ列が用いられる。3列の遊星ギヤ列は、相互に同軸でありかつモータ軸線Jと同軸に配置されている。電動モータ26の回転出力は、減速ギヤ列27で減速されて前方のリフト機構20に出力される。
【0029】
図5に示すようにリフト機構20は、減速ギヤ列27に連結された軸部材21と、軸部材21に支持されたホイール22を有する。リフト機構20は、駆動部ケース11a内に設けられた略円筒状の機構ケース25に収容される。軸部材21の回転軸は、モータ軸線Jに一致している。機構ケース25の前部は蓋部25aで塞がれる。軸部材21の前端は、蓋部25aの内面に装着された軸受21aに回転可能に支持される。軸部材21の後端の連結部21bは、減速ギヤ列27の最終段のキャリア27aに一体に連結される。キャリア27aは、外周側に設けられた軸受27bを介して機構ケース25に回転可能に支持される。電動モータ26が起動すると、リフト機構20の軸部材21とホイール22が一体で図3において反時計回り方向に回転する。
【0030】
図3~5に示すように軸部材21の前後方向中央には、ホイール22を支持する支持部21cが設けられる。支持部21cは、概ね円柱状であるが、径方向に延在しかつ相互に平行である二面幅状の一対の支持平面21dを有する。支持部21cは、一対の支持平面21dの中間位置にばね収容部21eを有する。ばね収容部21eは、一対の支持平面21dの延出方向に沿って凹設される。ばね収容部21eには、ホイール22を径方向に付勢するための圧縮ばね23が収容される。
【0031】
図3,4に示すようにホイール22の中央には、支持部21cを挿入可能な取付孔22fが設けられる。取付孔22fの内壁面には、径方向に延在しかつ相互に平行である一対のスライド面22eが設けられる。一対のスライド面22eの互いの距離は、支持部21cに設けられた一対の支持平面21dの互いの距離と略同じである。取付孔22fに支持部21cを挿入することで、各スライド面22eと各支持平面21dが対向して当接する。スライド面22eが支持平面21dに対して摺接されることで、ホイール22が軸部材21に対して径方向に一定の範囲で移動する。
【0032】
図3,4に示すホイール22は、ホイール22の中心22cが軸部材21の回転軸であるモータ軸線J上に位置する初期位置の状態である。ホイール22は、圧縮ばね23によって軸部材21に対して初期位置に向けて付勢される。ホイール22は、圧縮ばね23の付勢力に抗して、中心22cがモータ軸線Jから最も離れた移動位置へスライド可能である。例えば、後述する係合部24がドライバ凸部16によって右方へ押される時、係合部24を支持するホイール22は、スライド面22eと支持平面21dの案内に沿って初期位置から移動位置へ径方向に移動する。
【0033】
図3,4に示すようにホイール22の外周縁に沿って複数の係合部24が装着される。本実施例では、例えば10個の係合部24が設けられる。各係合部24には、円柱形状の軸部材(ピン)が用いられる。係合部24は、ホイール22の周方向に所定の間隔で設けられる。第1係合部24aと最終係合部24bの間の概ね1/4周の範囲には、係合部24を有さない逃がし部22dが設けられる。ホイール22の左側領域は、機構ケース25に設けられた窓部25bを経て打ち込み通路2a内に進入する。打ち込み通路2a内に進入した係合部24は、後述するドライバ30のドライバ凸部16の底部に係合する。係合部24の少なくとも1つがドライバ凸部16の底部に係合した状態で、ホイール22を図3,4において反時計回り方向に回転させる。これによりドライバ30とピストン14が上動する。
【0034】
図5に示すようにホイール22は、前後に一定の間隔をおいて相互に平行な前フランジ部22aと後フランジ部22bを有する。前フランジ部22aと後フランジ部22bは、径方向の張出形状が同じになるように形成される。各係合部24は、前フランジ部22aに設けられた貫通孔と、後フランジ部22bに設けられた溝孔によってホイール22の周方向の所定の位置で保持される。各係合部24は、それぞれの軸中心回りに回転可能にホイール22に支持される。
【0035】
図3,6,7に示すようにドライバ30は、上下方向に長いドライバ本体15と、ドライバ本体15の右側部から右方に突出するラック歯形状の複数のドライバ凸部16を有する。本実施例では10個のドライバ凸部16がドライバ本体15の長手方向(上下方向)に並んで配置される。各ドライバ凸部16は、右方へ張り出しかつ底部を下方に向けた形状に設けられる。ドライバ凸部16は、前後方向から見て略三角形である。各ドライバ凸部16は、上下方向に所定の間隔で設けられる。各ドライバ凸部16は、右方への突出長さが略同じである。ドライバ凸部16の底部は、係合部24のいずれか1つと係合する。
【0036】
図3,6,7に示すようにドライバ本体15は、ドライバ本体15から前方へ突出する一対の第1凸部15eと、ドライバ本体15から前方へ突出する1つの第2凸部15gを有する。一対の第1凸部15eは、それぞれドライバ本体15の左右側端部に設けられる。第2凸部15gは、一対の第1凸部15eの左右方向の中間に設けられる。第1凸部15eと第2凸部15gは、上下方向に長く延出し、相互に平行である。第1凸部15eと第2凸部15gの間には、上下方向に長く延出する凹部15fが設けられる。第1凸部15eと第2凸部15gは、打ち込み方向から見てそれぞれ略矩形状である。第1凸部15eは、ドライバ凸部16の前後方向の厚みと略同じ高さで前方へ突出する。第2凸部15gは、第1凸部15eよりも前方への突出高さが低い。
【0037】
図1,3に示すようにドライバ本体15の第2凸部15gの下端には、上下方向と直交する平面状の先端面15aが設けられる。先端面15aは、打ち込み具Nの頭部を打撃する。先端面15aの左右方向の中心は、打ち込み具Nの左右方向の打撃中心を打撃する。第2凸部15gは、打ち込み具Nの頭部と略同じ高さで前方へ突出する。
【0038】
図3,6,7に示すようにドライバ本体15の上部には、ピストン14の連結部14aと連結される連結部15bが設けられる。連結部15bの中央には、前後方向に貫通する円形の貫通孔15dが形成される。貫通孔15dには、円柱状の連結ピン17(が前後両方に突出するようにして圧入される。貫通孔15dの中心(連結ピン17の軸中心)は、ピストン14に対するドライバ本体15の回転中心15cである。回転中心15cは、ドライバ本体15の左右方向の幅中心線Kよりも右方に位置し、かつピストン14の左右方向の幅中心線L上に位置する。
【0039】
図1,3に示すようにピストン14の下部には、ドライバ本体15の連結部15bと連結可能な連結部14aが設けられる。連結部14aには、下端の開口からドライバ本体15を挿入可能なドライバ挿通溝14cが設けられる。ドライバ挿通溝14cは、連結部14aの前後方向の厚みよりもわずかに大きい前後方向の開口幅を有する。ドライバ挿通溝14cの下端の開口は、ドライバ本体15が左右方向に所定の振れ幅で回転できるように、連結部15bよりも左右方向に大きい開口幅で設けられる。
【0040】
図1,3に示すように連結部14aには、前後方向に貫通する円形状の貫通孔14bが設けられる。貫通孔14bは、ドライバ挿通溝14cと交差して連通される。貫通孔14bは、連結ピン17を挿通可能な径で設けられる。貫通孔14bの中心は、ピストン14の左右方向の幅中心線L上に配置される。連結ピン17は、ドライバ本体15の連結部15bから前後両方に突出する。連結ピン17の前後の突出部が貫通孔14bに挿通される。これにより連結ピン17は、貫通孔14b内で回転可能に連結部14aに支持される。連結ピン17は、ドライバ本体15と一体になって回転中心15cを中心にして回転する。ピストン14の下部には、連結部14aの径方向外方において後述するクッション18と当接するクッション受け面14dが設けられる。クッション受け面14dは、上下方向と略直交する略平面状に設けられる。
【0041】
図1~4に示すようにシリンダ12の下部には、ピストン14の下動端での衝撃を吸収するためのクッション18が設けられる。クッション18は、例えばウレタンゴム等のゴム製や合成樹脂製の弾性部材を素材とする。クッション18は、略円筒状に設けられる。クッション18の中央には、クッション18を上下方向に貫通する貫通孔18aが設けられる。貫通孔18aの内周面は、打ち込み方向(上下方向)から見て円形状である。貫通孔18aにドライバ30が挿通される。貫通孔18aは、ドライバ30が上動端から下動端までのいずれの位置に移動した場合でもクッション18に接触しない大きさの径で設けられる。クッション18は、貫通孔18aの左右方向および前後方向の中心がピストン14の幅中心線L上に位置するように配設される。また、クッションの左右方向および前後方向の厚みは略同じである。そのためクッション18は、ピストン14のクッション受け面14dに対して左右方向および前後方向に均等に当接する。
【0042】
クッション18の左右方向の厚みは、ドライバ凸部16が突出していないドライバ30の左方の領域と、ドライバ30の右方の領域で略同じである。ピストン14に対してクッション18が接触するボリュームを増やすために、例えばドライバ30の左方の領域におけるクッション18の左右方向の厚みをさらに厚くした形状が考えられる。しかしながら当該形状では、クッション18の左右方向の対称性が低くなる。そのためピストン14がクッション18に衝突する際、ピストン14が左右方向に傾く場合がある。打ち込み動作を繰り返し行うことで、ピストン14の傾斜によってピストン14とシリンダ12の内周面が摩耗するおそれがある。クッション18の前後方向の厚みについて同様に衝突時のピストン14の傾斜が考えられる。したがってクッション18は、左右方向および前後方向に対称性の高い構造が好ましく、例えば円筒状、正多角形の筒状であることが好ましい。より好ましくは円筒状である。
【0043】
図3,4に示すようにクッション18の下方かつリフト機構20の左方には、ドライバ30を上下方向に案内するガイド部材19が設けられる。ガイド部材19は、上下方向に長く延出する。ドライバ凸部16の設けられていないドライバ本体15の左側壁は、ガイド部材19の右側壁によって打ち込み方向に案内される。しかも打ち込み通路2aの左右の側壁2bは、打ち込みノーズ部2の幅中心線Mに対して左右対称的に配置される。下動するドライバ本体15の左側壁は、側壁2bによって打ち込み方向に案内される。かくしてドライバ本体15は、ドライバ本体15の幅中心線Kが打ち込みノーズ部2の幅中心線Mと同軸上に位置するように案内される。打ち込み具Nは、上端の打撃中心が打ち込みノーズ部2の幅中心線M上に位置するように打ち込み通路2aに供給される。そのため打ち込み具Nの打撃中心は、ドライバ本体15の幅中心線Kと同軸上に位置する。
【0044】
図3,4に示すようにドライバ本体15の幅中心線Kは、ピストン14の幅中心線Lに対してリフト機構20から離れる左方へオフセットしている。ドライバ本体15の幅中心線Kは、ドライバ本体15が左右方向に傾斜していない状態で、ピストン14の幅中心線Lと平行である。幅中心線Kと幅中心線Lの左右方向の距離は、例えばドライバ凸部16の突出長さの40%以下、30%以下、20%以下であり、かつ例えば5%以上、10%以上である。幅中心線Kと幅中心線Lの左右方向の距離は、例えば第2凸部15gの左右幅よりも小さい。
【0045】
次に打ち込み工具1の打ち込み動作の一連の流れを説明する。図3は、ピストン14とドライバ30が初期位置で待機している状態を示している。ドライバ30とピストン14は、上動端の若干下方の初期位置で停止した状態で保持される。この待機状態では、逃がし部22dの直前の最終係合部24bは、打ち込み方向側から数えて1番目(最下端)のドライバ凸部16の底部と係合する。
【0046】
図1に示すコンタクトアーム3が被打ち込み材Wに押されて上動しかつトリガ5が引かれることにより、トリガスイッチ5aがオン状態になって電動モータ26が起動する。電動モータ26を起動させると、ホイール22が図3において反時計回り方向に回転する。最終係合部24bは、最下端のドライバ凸部16を上動させる。これによりピストン14とドライバ30が初期位置から上動端まで上動する。ドライバ30が上動端に移動した際、打ち込み具Nがマガジン9から打ち込み通路2a内の幅中心線M上に供給される。上動端の打ち込み直前状態に至ると、最終係合部24bがドライバ凸部16の底部から離脱する。これによりピストン14とドライバ30が蓄圧室13のガス圧により下動する。ドライバ本体15は、幅中心線Kが幅中心線M上に位置する状態で下動し、先端面15aで1本の打ち込み具Nを打撃する。
【0047】
ドライバ30が下動する際、打ち込み通路2a内には、ホイール22の逃がし部22dが位置する。そのため全ての係合部24は、打ち込み通路2a内から退避した状態になる。これによりドライバ凸部16に対する係合部24の干渉が回避されて、スムーズな打ち込み動作がなされる。
【0048】
図4に示すように打ち込み具Nの打撃後、ドライバ30が下動端に至った状態においてホイール22が引き続き反時計回り方向に回転する。逃がし部22dの直後の第1係合部24aは、最上端のドライバ凸部16の底部と係合する。これによりピストン14とドライバ30を反打ち込み方向に上動させる戻し動作が開始される。戻し動作の開始時、ホイール22は圧縮ばね23によって初期位置である左方のドライバ30側に向けて付勢されている。そのためホイール22の中心22cは、モータ軸線J上に位置する。
【0049】
ホイール22は、図4に示すドライバ30が下動端に位置する状態から、図3に示すドライバ30が初期位置に位置する状態まで回転し続ける。各係合部24は、上方に設けられたドライバ凸部16の底部と順次係合する。そのためドライバ30とピストン14は、蓄圧室13のガス圧に抗して上動する。この際、係合部24がドライバ凸部16によって右方へ押されることで、ホイール22が軸部材21に対して径方向に右方へ移動する場合がある。最終係合部24bが最下端のドライバ凸部16の底部と係合すると、ピストン14とドライバ30が初期位置に至る。例えば電動モータ26(図1参照)の起動からの時間が適切に制御されることで、ドライバ30とピストン14が初期位置に至った段階で電動モータ26が停止される。以上で一連の打ち込み動作が終了する。ピストン14とドライバ30の初期位置は、上動端より下方に設定されている。1回の打ち込み動作では、ドライバ30が初期位置から一旦上動端まで上動された後にガス圧により下動して打ち込み動作がなされる。
【0050】
上述するように打ち込み工具1は、図3,4に示すようにシリンダ12と、シリンダ12内をガス圧で移動するピストン14を有する。打ち込み工具1は、ピストン14とともに移動して打ち込み具Nを打撃するドライバ本体15を有する。打ち込み工具1は、ドライバ本体15の側縁に沿ってドライバ本体15から幅方向に突出する複数のドライバ凸部16を有する。打ち込み工具1は、複数のドライバ凸部16と係合する複数の係合部24を備えかつ回転することでドライバ本体15を初期位置へ戻すリフト機構20を有する。打ち込み工具1は、ドライバ本体15が挿通される貫通孔18aを具備しかつピストン14の衝撃を受ける筒状のクッション18を有する。ドライバ本体15の幅中心線Kがピストン14の幅中心線Lよりもリフト機構20から離れる方向(左方)にオフセットするようにドライバ本体15が配置される。
【0051】
したがってドライバ凸部16の先端からピストン14の幅中心線Lまでの距離を、ドライバ本体15の幅中心線Kとピストン14の幅中心線Lが相互にオフセットしている長さ分短くすることができる。そのためドライバ本体15とドライバ凸部16を挿通させるクッション18の貫通孔18aの開口面積を小さくすることができる。そのためピストン14のクッション受け面14dに当接するクッション18のボリュームを増やすことができる。これによりクッション18の衝撃吸収性を高めることができる。また、相互に接触するクッション18とピストン14の耐久性を高めることができる。
【0052】
図3,4に示すようにドライバ本体15は、ピストン14に対して幅方向に回転可能に連結される。したがってドライバ本体15は、ピストン14との連結部分を中心にして所定の角度範囲で幅方向に回転できる。そのため、例えばドライバ本体15を案内する打ち込みノーズ部2とドライバ本体15とが摺動し得る場合でも、ドライバ本体15が幅方向に回転することで打ち込みノーズ部2との摺動を速やかに回避できる。これによりドライバ本体15に不用意な力が加わることを抑制でき、ドライバ本体15の摩耗を抑制できる。
【0053】
図3,4に示すようにドライバ本体15のピストン14に対する回転中心15cがピストン14の幅中心線L上に位置する。したがってドライバ本体15は、ピストン14の幅中心線Lに対する振れ幅が幅方向(左右方向)に略均等である。クッション18は、ピストン14のクッション受け面14dと均等に当接するためにピストン14の幅中心線Lを中心にして略均等に配置される。そのためドライバ本体15は、クッション18の幅方向の中心に対して幅方向に略均等に回転可能である。これによりドライバ本体15が幅方向に回転する際、ドライバ本体15またはドライバ凸部16がクッション18の貫通孔18aの内周面に不用意に接触することを抑制できる。
【0054】
図3,4に示すように打ち込み工具1は、打ち込み方向の端部においてドライバ本体15を案内する打ち込みノーズ部2を有する。打ち込みノーズ部2の幅中心線Mがピストン14の幅中心線Lよりもリフト機構20から離れる方向にオフセットするように打ち込みノーズ部2が配置される。したがってドライバ本体15は、ドライバ本体15の幅中心線Kが打ち込みノーズ部2の幅中心線M上に位置するように打ち込み方向に移動する。打ち込み具Nは、打ち込みノーズ部2の幅中心線M上に供給される。そのためドライバ本体15は、打ち込み具Nの幅方向の略中心を打撃できる。これにより打ち込み具Nを打ち込み方向に真っ直ぐに射出できる。
【0055】
図1~4に示すようにクッション18の貫通孔18aの内周面は、ドライバ本体15の移動方向から見て円形状である。したがってピストン14とクッション18は、周方向において略均等に当接する。そのためクッション18は、ピストン14の衝撃を受ける際に周方向において略均等に変形する。これによりクッション18の特定の箇所が摩耗することを抑制でき、クッション18の耐久性を向上させることができる。また、ピストン14がクッション18に当接する際に不用意に傾斜することを抑制できる。これによりピストン14とシリンダ12の摩耗を抑制できる。
【0056】
図3,4に示すようにリフト機構20は、工具本体10に回転可能に支持されたホイール22と、ホイール22の周方向に沿って並ぶ複数の係合部24を有する。複数の係合部24の少なくとも1つは、ホイール22に対してホイール22の径方向に移動可能である。
【0057】
したがってドライバ凸部16の幅方向の突出長さを、ホイール22の径方向に移動可能な係合部24の移動分だけ長く設ける必要がある。ドライバ本体15の幅中心線Kをピストン14の幅中心線Lよりもリフト機構20から離れる左方へオフセットするように配置することで、ドライバ凸部16の突出長さを長く設ける場合でもクッション18のボリュームの減少を抑制できる。また、ドライバ本体15の幅中心線Kとピストン14の幅中心線Lが相互にオフセットしている長さ分だけ、係合部24をピストン14の幅中心線Lに近づけることができる。そのため係合部24がドライバ凸部16の底部を上方へ押す力がピストン14の幅中心線Lの近くで作用する。これによりドライバ30とピストン14を上方へ真っ直ぐ移動させることができる。
【0058】
図6~8に示すようにドライバ本体15は、幅方向の両側においてドライバ本体15の移動方向および幅方向と交差する高さ方向に突出する第1凸部15eを有する。したがってドライバ本体15は、幅方向の両側に設けられる第1凸部15eに案内されて打ち込み方向に真っ直ぐに移動する。そのためドライバ本体15が打ち込み具N(図3,4参照)を打ち込み方向に打撃する安定性を高めることができる。
【0059】
図6~8に示すようにドライバ本体15は、幅方向の中央において高さ方向に突出する第2凸部15gを有し、第2凸部15gは、第1凸部15eよりも突出高さが低い。したがって第2凸部15gの突出高さを抑えることでドライバ本体15を軽量に設けることができる。また、ドライバ本体15は、第2凸部15gの下端の先端面15aで打ち込み具N(図3,4参照)を打撃する。そのため所定の突出高さの第2凸部15gを設けることで、ドライバ本体15に打撃された打ち込み具Nを良好な安定性で射出することができる。
【0060】
以上説明した実施例には種々変更を加えることができる。例えば、リフト機構20がドライバ30に対して右方に配置される構成を例示した。これに代えて、例えばリフト機構20をドライバ30に対して左方へ配置しても良い。この場合、ドライバ本体15の幅中心線Kは、ピストン14の幅中心線Lに対して右方へオフセットする。
【0061】
10個の係合部24を有するホイール22と10個のドライバ凸部16を有するドライバ30を例示したが、係合部24とドライバ凸部16の個数は10個に限定されない。係合部24とドライバ凸部16の個数は、例えばドライバ30のストローク、工具本体10のサイズ等の要因により適切に設定される。各係合部24のホイール22の周方向における間隔や、各ドライバ凸部16の上下方向の間隔は例示したものに限らず適宜変更して良い。
【0062】
ピン形状の係合部24を例示した。これに代えて、例えば係合部24がホイール22の外周縁に沿って形成されるピニオン歯であっても良い。軸部材21に対してホイール22が径方向に移動するリフト機構20を例示した。これに代えて、ホイール22が軸部材21に対して径方向に移動しないリフト機構20を具備する打ち込み工具1に、本開示のドライバ30およびピストン14を適用しても良い。前後方向から見て略三角形であり突出長さが略同じである複数のドライバ凸部16を例示した。ドライバ凸部16の形状や突出長さは例示したものに限定されず適宜変更して良い。また、ドライバ凸部16毎に形状または突出長さを変更しても良い。
【0063】
略円筒状であり、貫通孔18aの内周面が上下方向から見て円形状であるクッション18を例示した。これに代えて、例えばクッション18を正多角形の筒状に設け、貫通孔18aの内周面も外周面に倣った正多角形状に形成しても良い。あるいは、外周面のみ正多角形状に設け、貫通孔18aの内周面は円形状に設ける構成としても良い。また、クッション18の貫通孔18aの内周面に、ドライバ凸部16が通過する領域にのみドライバ凸部16との干渉を避ける逃がし部を設けても良い。貫通孔18aの内周面の形状は、上下方向から見て概ね円形であるが、逃がし部においては円形部分よりも径方向外方に切欠かれた(延びた)形状である。逃がし部は、貫通孔18aの内周面の周方向においてドライバ凸部16の厚みよりもわずかに大きい幅で設けられる。このようにクッション18に逃がし部を設ける場合でも、ドライバ本体15の幅中心線Kをピストン14の幅中心線Lに対してドライバ凸部16の突出方向と反対方向にオフセットさせることで、クッション18の径方向における逃がし部の長さを短くすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…打ち込み工具
2…打ち込みノーズ部(ドライバガイド)、2a…打ち込み通路、2b…側壁
2c…射出口
3…コンタクトアーム
4…グリップ
5…トリガ、5a…トリガスイッチ
6…バッテリ取付部
7…バッテリパック
8…コントローラ
9…マガジン
10…工具本体
11…本体ハウジング、11a…駆動部ケース
12…シリンダ
13…蓄圧室
14…ピストン、14a…連結部、14b…貫通孔、14c…ドライバ挿通溝
14d…クッション受け面
15…ドライバ本体、15a…先端面、15b…連結部、15c…回転中心
15d…貫通孔、15e…第1凸部、15f…凹部、15g…第2凸部
16…ドライバ凸部
17…連結ピン
18…クッション、18a…貫通孔
19…ガイド部材
20…リフト機構
21…軸部材、21a…軸受、21b…連結部、21c…支持部、21d…支持平面
21e…ばね収容部、
22…ホイール、22a…前フランジ部、22b…後フランジ部、22c…中心
22d…逃がし部、22e…スライド面
23…圧縮ばね
24…係合部、24a…第1係合部、24b…最終係合部
25…機構ケース、25a…蓋部材、25b…窓部
26…電動モータ、26a…出力軸、26b…固定子、26c…回転子
26d,26e…軸受
27…減速ギヤ列、27a…(最終段の)キャリア、27b…軸受
28…ギヤ列ケース
30…ドライバ
N…打ち込み具
W…被打ち込み材
J…モータ軸線
K…(ドライバ本体の)幅中心線
L…(ピストンの)幅中心線
M…(ドライバガイドの)幅中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8