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特開2024-24244水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム
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  • 特開-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図1
  • 特開-水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024244
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20240215BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240215BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240215BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20240215BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/60
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126926
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】原 啓城
(72)【発明者】
【氏名】吉本 俊純
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 光留
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC09
4K021CA15
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】水素製造装置の起動時間を短縮可能な水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムを提供する。
【解決手段】水素製造装置用の制御装置は、水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置のための制御装置であって、前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に一致するように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電圧制御部と、前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定するように構成された電圧設定部と、を備える。
【選択図】 図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置のための制御装置であって、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に一致するように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電圧制御部と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定するように構成された電圧設定部と、
を備える
水素製造装置用の制御装置。
【請求項2】
前記第1電圧は、前記電解槽の最大使用電圧である
請求項1に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項3】
前記電解槽を含む回路に流れる電流に基づき前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電流制御部と、
前記整流器の制御モードを、前記電圧制御部により前記整流器を制御する電圧制御モード、及び、前記電流制御部により前記整流器を制御する電流制御モードから選択するように構成された制御モード選択部と、
を備え、
前記制御モード選択部は、前記水素製造装置の起動中、前記電圧制御モードでの前記整流器の制御中に前記回路における電力が制限値に到達したら、前記整流器の制御を前記電圧制御モードから前記電流制御モードに切り替えるように構成され、
前記電流制御部は、前記水素製造装置の起動中、前記電力が前記制限値を超えない範囲で前記電流が増加するように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された
請求項1又は2に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項4】
前記電解槽を含む回路に流れる電流に基づき前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電流制御部と、
前記整流器の制御モードを、前記電圧制御部により前記整流器を制御する電圧制御モード、及び、前記電流制御部により前記整流器を制御する電流制御モードから選択するように構成された制御モード選択部と、
前記電解槽での水素の目標生成量に応じた前記回路の電流を示す電流目標値を取得するように構成された電流目標値取得部と、
を備え、
前記制御モード選択部は、前記水素製造装置の起動が完了したら、前記整流器の制御モードとして前記電流制御モードを選択し、
前記電流制御部は、前記水素製造装置の起動完了後、前記回路に流れる前記電流が前記電流目標値に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された
請求項1又は2に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項5】
前記制御モード選択部は、前記水素製造装置の起動中において前記電解槽内の水の温度が規定温度に達したら、前記水素製造装置の起動が完了したと判定するように構成された
請求項4に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、前記水素製造装置の起動完了後、前記回路における電力が制限値を超えない範囲で前記電流が前記電流目標値に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された
請求項4に記載の水素製造装置用の制御装置。
【請求項7】
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置と、
前記水素製造装置を制御するように構成された請求項1又は2に記載の制御装置と、
を備える水素製造設備。
【請求項8】
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置の制御方法であって、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するステップと、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定するステップと、
を備える
水素製造装置の制御方法。
【請求項9】
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置のための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節する手順と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定する手順と、
を実行させるための
水素製造装置用の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素を製造するための装置として、水電解装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、固体電解質膜を含む電解セルを有する水電解装置で水を電気分解することで水素を製造するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-129372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水素製造装置の起動時(即ち、水素製造装置を停止状態から水素製造/供給運転状態に移行するとき)には、電解槽内の水(電解質溶液等)の温度を、水素製造に適した温度に上げる必要がある。電解槽内の水を昇温させるためにはある程度の時間が必要であり、当該昇温過程が水素製造装置の運転準備時間(即ち起動時間)の律速要因となっている。昨今、設備消費電力を再生可能エネルギーの余剰電力で賄うニーズが高まっており、余剰電力で効率良く運転する等のためにプラント起動時間の短縮が求められる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、水素製造装置の起動時間を短縮可能な水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御装置は、
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置のための制御装置であって、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に一致するように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電圧制御部と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定するように構成された電圧設定部と、
を備える。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備は、
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置と、
前記水素製造装置を制御するように構成された上述の制御装置と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置の制御方法は、
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置の制御方法であって、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するステップと、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定するステップと、
を備える。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御プログラムは、
水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器と、を含む水素製造装置のための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節する手順と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定する手順と、
を実行させるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、水素製造装置の起動時間を短縮可能な水素製造装置用の制御装置、水素製造設備、水素製造装置の制御方法及び水素製造装置用の制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る制御装置が適用される水素製造設備の概略図である
図2】一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。
図3】一実施形態に係る水素製造装置の制御方法のフローチャートである。
図4】一実施形態に係る水素製造装置の起動時における出力電圧、電流、電力及び電解槽内の水の温度の時間変化の一例を示すグラフである。
図5】一実施形態に係る水素製造装置の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
(水素製造設備の構成)
図1は、一実施形態に係る制御装置が適用される水素製造設備の概略図である。図1に示すように、水素製造設備100は、水素製造装置10と、水素製造装置10の運転を制御するための制御装置20と、を備える。水素製造設備100は、水素製造装置10で生成された水素を貯留するための貯留部4を備えていてもよい。
【0015】
水素製造装置10は、水の電気分解により水素を生成するように構成された水電解装置であり、水を電気分解するための電解槽2と、電解槽2に直流電力を供給するための整流器8と、を含む。水電解装置のタイプは限定されない。水電解装置は、例えば、アルカリ型水電解装置、固体高分子膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)型水電解装置、アニオン交換膜(Anion Exchange Membrane:AEM)型水電解装置、又は、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)水電解装置であってもよい。
【0016】
整流器8は、電解槽2に直流電力を供給するように構成される。整流器8には、送電線92を介して電源90から電力(典型的には交流電力)が供給されるようになっている。電源90は電力系統であってもよいし、他の電源(例えば発電装置や電池等の電力貯蔵装置)であってもよい。整流器8は、電源90からの電力を、必要に応じて交流電力から直流電力に変換し、直流電圧として電解槽2に出力する。以下、整流器8から電解槽2に出力される直流電圧(電解槽2への印加電圧)を出力電圧ともいう。
【0017】
電解槽2は水が供給されるようになっている。上述したように、電解槽2には、整流器8を介して直流電力が供給される。整流器8を介して電解槽2に設けられた一対の電極間に直流電圧をかけることで電解槽2内の水が電気分解され、陰極側で水素が発生し、陽極側で酸素が発生する。電解槽2内には、電解質が溶解した水(電解質溶液)が供給されており、該水(電解質溶液を構成する水)が電気分解されるようになっていてもよい。電解質は、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ性物質であってもよい。
【0018】
電解槽2の陰極側で発生した水素ガスは、気液分離器及び/又は除湿器に導かれて水分が除去された後、貯留部4に導かれる。電解槽2の陽極側で発生した酸素ガスは、気液分離器及び/又は除湿器に導かれて水分が除去された後、酸素消費設備に供給されるようになっていてもよく、あるいは、外部に放出されるようになっていてもよい。
【0019】
貯留部4には、ガス状の水素が貯留されるようになっている。貯留部4に貯留された水素は、水素消費設備6に供給されるようになっていてもよい。貯留部4は、水素消費設備6への水素の供給に適した特性を有していてもよい。貯留部4は、例えば貯蔵ヘッダ(ヘッダタンク)を含んでもよい。
【0020】
水素消費設備6は、例えば、水素を燃焼するように構成された水素燃焼設備(例えばガスタービン設備又は製鉄設備等)、水素を液化するように構成された水素液化設備、水素を燃料として化学反応により電気を生成する設備(例えばSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)等の燃料電池を含む発電設備等)、水素を原料として燃料を製造する設備(例えば燃料合成設備等)又は、水素を機器に供給するように構成された水素ガスステーションを含んでもよい。
【0021】
水素製造設備100は、電解槽2の水(電解質溶液等)の温度を計測するための温度センサ12を備えていてもよい。温度センサ12は、電解槽2内の水の温度を計測するように構成されてもよく、あるいは、電解槽2からの水素ガス又は酸素ガスを気液分離器に導くためのラインにおける水の温度を計測するように構成されてもよく、あるいは、気液分離器にて水素ガス又は酸素ガスから分離された水を電解槽2に戻すためのラインにおける水の温度を計測するように構成されてもよい。
【0022】
水素製造設備100は、電解槽2において水が電気分解されるときに電解槽2を含む回路を流れる直流電流を計測するための電流センサ14を備えていてもよい。該回路は、整流器8の直流電圧の一対の出力端子と電解槽2の一対の電極間をそれぞれ接続する電線を含む。電流センサ14は、整流器8上述の一対の出力端子の何れかと、電解槽2の一対の電極の何れかとの間に流れる電流を計測するように構成されてもよい。
【0023】
水素製造設備100は、水素消費設備6における水素の消費流量を計測するための流量センサ16を備えていてもよい。流量センサ16は、図1に示すように、貯留部4からの水素を水素消費設備6に導くためのラインに設けられていてもよい。
【0024】
温度センサ12、電流センサ14及び/又は流量センサ16は制御装置20に電気的に接続され、温度センサ12、電流センサ14及び/又は流量センサ16による計測結果を示す信号が制御装置20に送られるようになっていてもよい。
【0025】
図2は、一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。制御装置20は、温度センサ12、電流センサ14及び/又は流量センサ16による計測結果等に基づいて、水素製造装置10の運転を制御するように構成される。
【0026】
図2に示すように、制御装置20は、電圧制御部24と、電圧設定部25と、を備えている。また、制御装置20は、制御モード選択部22と、電流制御部26と、電流目標値取得部28と、記憶部30と、を備えていてもよい。
【0027】
制御モード選択部22は、整流器8の制御モードを、電圧制御部24により整流器8を制御する電圧制御モード、及び、電流制御部26により整流器8を制御する電流制御モードから選択するように構成される。
【0028】
電圧制御部24は、整流器8から電解槽2に出力される出力電圧が設定電圧に一致するように、整流器8の出力電圧を調節するように構成される。設定電圧は、後述する電圧設定部25により設定されたものであってもよく、あるいは、オペレータが手動で設定したものであってもよい。
【0029】
電圧設定部25は、水素製造装置10の起動中の少なくとも一部の期間において、上述の設定電圧を、電解槽2の定格電圧よりも大きい第1電圧Vに設定するように構成される。第1電圧Vは、後述する記憶部30に予め記憶されていてもよい。
【0030】
水素製造装置10の起動中とは、水素製造装置10を停止状態から水素製造/供給運転状態に移行するまでの準備期間のことをいう。水素製造装置10の起動中において、整流器8から電解槽2に直流電圧を印加して電解槽2での水の電気分解を開始し、これにより電解槽2を含む回路に電流を流すことで電解槽2内の水の温度を上昇させる。水素製造装置10の起動の完了は、例えば、電解槽2内の水が昇温して規定温度に達したことにより判定することができる。
【0031】
また、電解槽2の定格電圧とは、該電解槽2における定格負荷運転(100%負荷(水素生成量が100%)での運転)時における電解槽2への印加電圧である。電解槽2の定格電圧は、電解槽2の型式に応じて仕様として定められているものである。
【0032】
電流制御部26は、電解槽2を含む上述の回路に流れる電流に基づき整流器8の出力電流を調節するように構成される。
【0033】
電流目標値取得部28は、主として水素製造装置10の起動完了後に、電解槽2での(即ち水素製造装置10での)水素の目標生成量に応じた回路の電流を示す電流目標値を取得するように構成される。
【0034】
電流目標値取得部28は、例えば、貯留部4から水素が供給される水素消費設備6での水素の消費流量を取得し、該消費流量に基づいて、電流目標値を算出するようにしてもよい。水素消費設備6での水素の消費流量として、貯留部4から水素消費設備6に供給される水素の流量を取得してもよい。この場合、流量センサ16(図1参照)による水素流量の計測値を消費流量として取得してもよい。あるいは、水素消費設備6での水素の消費流量として、水素消費設備6に供給される燃料流量の指令値である燃料指令値に基づいて、水素の消費流量を算出してもよい。この場合、電流目標値取得部28は、燃料指令値と水素の流量との相関関係を示す関数を用いて、燃料指令値を水素の流量に変換するように構成されてもよい。
【0035】
記憶部30は、予め設定された数値等を記憶するように構成される。記憶部30に予め記憶される数値は、上述の第1電圧V、電解槽2を含む回路における電力の制限値、及び/又は、水素製造装置10の起動完了を判定するための電解槽2内の水の温度(規定温度)を含んでもよい。
【0036】
制御装置20は、プロセッサ(CPU等)、主記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶装置及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御装置20は、インターフェースを介して、温度センサ12、電流センサ14及び/又は流量センサ16からの信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、主記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の制御モード選択部22、電圧制御部24、電圧設定部25、電流制御部26及び電流目標値取得部28の機能が実現される。なお、上述の記憶部30は、制御装置20を構成する計算機の主記憶装置又は補助記憶装置を含んでもよい。
【0037】
制御装置20での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、例えば補助記憶装置に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは主記憶装置に展開される。プロセッサは、主記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0038】
(水素製造装置の制御フロー)
次に、幾つかの実施形態に係る水素製造装置の制御方法について説明する。なお、以下において、上述の制御装置20を用いて上述の水素製造装置10を制御する場合について説明するが、幾つかの実施形態では、他の装置を用いて水素製造装置の制御方法を実行するようにしてもよく、あるいは、以下に説明する手順の一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0039】
図3は、一実施形態に係る水素製造装置10の起動時における水素製造装置の制御方法のフローチャートである。図4は、一実施形態に係る水素製造装置10の起動時における整流器8の出力電圧V、電解槽2を含む回路を流れる電流I、該回路における電力P及び電解槽2内の水(電解質溶液等)の温度Tの時間変化の一例を示すグラフである。なお、電力Pは、出力電圧Vと電流Iとの積(P=V×I)である。
【0040】
一実施形態では、水素製造装置10の起動を開始した時刻(図4のt0)以後、制御装置20による整流器8の制御モードとして電圧制御モードを選択し(図3のS2)、時刻t1(図4)にて、整流器8の設定電圧が電解槽2の定格電圧V_ratedよりも大きい第1電圧Vに設定される(図3のS4)。これにより、時刻t1以後、整流器8の出力電圧Vが第1電圧Vに一致するように調節される。
【0041】
上述の第1電圧Vは、電解槽2の最大使用電圧であってもよい。
【0042】
このように、水素製造装置10の起動中の少なくとも一部の期間(時刻t1以後の期間)において、整流器8から電解槽2に出力される出力電圧V(即ち電解槽2への印加電圧)が、電解槽2の定格電圧V_ratedよりも大きい第1電圧Vに設定されるので、該出力電圧Vが電解槽2の定格電圧V_ratedと同等以下の電圧に設定される場合に比べて、電解槽2内の水の電気分解により電解槽2を含む回路を流れる電流が大きくなる。したがって、電解槽2内の水において生じるジュール熱が大きくなり、電解槽2内の水の昇温速度が大きくなる。なお、電解槽2内の水が昇温するのに従い、電解槽2内の水に電流が流れやすくなるため(即ち水の電気抵抗が小さくなるため)、電解槽2内の水の温度の上昇とともに、電解槽2を含む回路を流れる電流が増加し、電解槽2内の水の温度もより一層上昇しやすくなる。このようにして、電解槽2内の水の昇温に要する時間を短縮することができる。これにより、水素製造装置10の起動時間を短縮することができる。
【0043】
上述のようにステップS4で整流器8の設定電圧を第1電圧Vに設定した後、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達しているか否かを判定するとともに(図3のS6)、温度Tが規定温度Tに達していない場合には(S6でNo)、電力Pが制限値P未満であるか否かを確認する(図3のS10)。なお、制限値Pは、電解槽2の仕様によって決定される値であってもよい。
【0044】
電力Pが制限値Pに到達する前に(S10でYes)、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達したら(図3のS6でYes)、制御装置20は、水素製造装置10の起動が完了したと判定し(図3のS8)、水素製造装置10による水素の供給を開始する。
【0045】
一方、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達していない状態で電力Pが制限値Pに到達した場合(図3のS6でNoかつS10でNo、図4の時刻t2)、制御装置20による整流器8の制御モードが電流制御モードに切り替わり(図3のS12)、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達するまで、電力Pが制限値Pを超えない範囲で電流Iが増加するように、整流器8の出力電圧Vが調節される(図3のS14~S18、図4の時刻t2~t3)。
【0046】
図3に示す例示的な実施形態では、ステップS12で整流器8の制御モードが電流制御モードに切り替わった後、電流Iを保持する(S14)。そして、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達しているか否かを判定する(S16)。
【0047】
電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達したら(S16でYes)、制御装置20は、水素製造装置10の起動が完了したと判定し(図3のS8)、水素製造装置10による水素の供給を開始する。
【0048】
一方、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達していない間(S16でNo)、ステップS18に移行する。このとき電解槽2内の水の温度が上昇傾向であるため、電解槽2内の水の電気抵抗が小さくなり、その分だけ電圧Vが低下し、電力Pも低下する。そこで、電力Pが制限値Pを超えない範囲で電流を増加させる(S18、S20のYes)。電力Pが制限値Pを超えた場合(S20のNo)、ステップS14に戻り、電流Iを保持する。このように、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達するまで、ステップS14~S18を繰り替えし行うことにより、電力Pが制限値Pを超えない範囲で電流Iを増加させながら、電解槽2内の水の温度Tを規定温度Tに到達させることができる。なお、図4に示す例では、電力Pが制限値Pに到達した時刻t2から、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達する時刻t3まで、ステップS14~S18が繰り返し行われている。
【0049】
あるいは、一実施形態では、上述のステップS12で整流器8の制御モードが電流制御モードに切り替わったら、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tに達するまで、電力Pが制限値Pで維持されるように出力電圧Vが調節される。整流器8の制御モードが電流制御モードに切り替わる時点(図4の時刻t2)において、電解槽2内の水の温度は上昇傾向であるので、電流Iも上昇傾向である。したがって、この時点(時刻t2)から電力Pが制限値Pに維持されるように出力電圧Vを調節することで、電力Pが制限値Pを超えない範囲で電流Iを増加させることができる。
【0050】
このように、幾つかの実施形態では、水素製造装置10の起動中に、整流器8の出力電圧Vを電解槽2の定格電圧V_ratedよりも大きくすることで、電解槽2を含む回路を流れる電流Iが増大し、当該回路における電力Pが制限値Pに到達した場合に、整流器8の制御を電流制御モードに切り替え、当該回路における電力Pが制限値Pを超えない範囲で電流Iを増加させる。これにより、当該回路における過電力又は過電流を予防して電解槽2を保護しながら、電解槽2内の水の昇温を促進して水素製造装置10の起動時間を短縮することができる。
【0051】
図5は、一実施形態に係る水素製造装置10の起動完了後における水素製造装置の制御方法のフローチャートである。
【0052】
上述したように、電解槽2内の水の温度Tが規定温度Tまで上昇したら(上述のS6又はS16でYes、図4の時刻t3)、制御装置20は、水素製造装置10の起動が完了したと判定する(上述のS8)。一実施形態では、水素製造装置10の起動が完了したら(図4の時刻t3)、制御装置20による整流器8の制御モードとして電流制御モードを選択し、電解槽2を含む回路に流れる電流Iが電流目標値に近づくように、整流器8の出力電圧Vが調節される(図5のS22)。電流目標値は、水素製造装置10での水素の目標生成量に応じた電流の目標値であり、例えば上述した電流目標値取得部28によって取得される。これにより、水素製造装置10にて目標生成量の水素を製造及び供給することができる。
【0053】
ステップS22では、上述の電流目標値と、電流Iの実測値(電流センサ14による計測値)との偏差に基づくフィードバック制御により、整流器8の出力電圧Vを調節してもよい。
【0054】
図4に示す例において、時刻t3以降は、このように、電流目標値に基づいて整流器8の制御が行われている。また、時刻t4において定格負荷(100%の水素生成量)での運転となっており、この時刻t4以降、出力電圧V、電流I、及び電解槽2内の水の温度Tがほぼ一定の状態となっている。なお、図4において、定格負荷運転時における電解槽2の印加電圧(即ち整流器8の出力電圧)が定格電圧V_ratedであり、定格負荷運転時における電力PがP_ratedである。
【0055】
幾つかの実施形態では、水素製造装置10の起動完了後の運転中(即ち、ステップS22での運転中)、電解槽2を含む回路における電力Pが制限値Pを超えない範囲で電流Iが電流目標値に近づくように、整流器8の出力電圧Vを調節するようにしてもよい(図5のS23~S24)。
【0056】
図5に示す実施形態では、電流目標値に基づく制御により水素製造装置10を運転しているときに(上述のステップS22)、電力Pが制限値P未満であるか否かを確認する(S23)。電力Pが制限値Pに到達していない間は(ステップS23でYes)、ステップS22での制御を続行する。一方、電力Pが制限値Pに到達したら(ステップS23でNo)、電力Pが制限値P未満になるまで電流Iが保持されるようにする(S24)。これにより、電力Pが制限値Pを超過するのが抑制される。
【0057】
このように、水素製造装置10の起動完了後の運転中、電解槽2を含む回路における電力Pが制限値Pを超えない範囲で該回路を流れる電流Iを制御することにより、当該回路における過電力又は過電流を予防して電解槽2を保護しながら、目標生成量の水素を製造及び供給することができる。
【0058】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0059】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置(10)用の制御装置(20)は、
水を電気分解するための電解槽(2)と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器(8)と、を含む水素製造装置のための制御装置であって、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧(V)が設定電圧に一致するように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電圧制御部(24)と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧(V)に設定するように構成された電圧設定部(25)と、
を備える。
【0060】
上記(1)の構成では、水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、整流器から電解槽に出力される出力電圧(即ち電解槽への印加電圧)が、電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定されるので、電解槽内の水の電気分解により電解槽を含む回路を流れる電流を大きくして電解槽内の水の昇温速度を大きくすることができる。よって、上記(1)の構成によれば、水素製造装置の起動中において電解槽内の水の昇温に要する時間を短縮することができ、これにより、水素製造装置の起動時間を短縮することができる。
【0061】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第1電圧は、前記電解槽の最大使用電圧である。
【0062】
上記(2)の構成では、水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、整流器の出力電圧が電解槽の最大使用電圧に設定されるので、電解槽内の水の電気分解により電解槽を含む回路を流れる電流をより大きくして電解槽内の水の昇温速度をより大きくすることができる。よって、上記(2)の構成によれば、水素製造装置の起動中において電解槽内の水の昇温に要する時間をより短縮することができ、これにより、水素製造装置の起動時間をより短縮することができる。
【0063】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記電解槽を含む回路に流れる電流(I)に基づき前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電流制御部(26)と、
前記整流器の制御モードを、前記電圧制御部により前記整流器を制御する電圧制御モード、及び、前記電流制御部により前記整流器を制御する電流制御モードから選択するように構成された制御モード選択部(22)と、
を備え、
前記制御モード選択部は、前記水素製造装置の起動中、前記電圧制御モードでの前記整流器の制御中に前記回路における電力(P)が制限値(P)に到達したら、前記整流器の制御を前記電圧制御モードから前記電流制御モードに切り替えるように構成され、
前記電流制御部は、前記水素製造装置の起動中、前記電力が前記制限値を超えない範囲で前記電流が増加するように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成される。
【0064】
上記(3)の構成によれば、水素製造装置の起動中に、上記(1)のように整流器の出力電圧を電解槽の定格電圧よりも大きくすることで、電解槽を含む回路を流れる電流が増大し、当該回路における電力が制限値に到達した場合に、整流器の制御を電流制御モードに切り替え、当該回路における電力が制限値を超えない範囲で電流を増加させる。これにより、当該回路における過電力又は過電流を予防して電解槽を保護しながら、電解槽内の水の昇温を促進して水素製造装置の起動時間を短縮することができる。
【0065】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記電解槽を含む回路に流れる電流に基づき前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成された電流制御部(26)と、
前記整流器の制御モードを、前記電圧制御部により前記整流器を制御する電圧制御モード、及び、前記電流制御部により前記整流器を制御する電流制御モードから選択するように構成された制御モード選択部(22)と、
前記電解槽での水素の目標生成量に応じた前記回路の電流を示す電流目標値を取得するように構成された電流目標値取得部(28)と、
を備え、
前記制御モード選択部は、前記水素製造装置の起動が完了したら、前記整流器の制御モードとして前記電流制御モードを選択し、
前記電流制御部は、前記水素製造装置の起動完了後、前記回路に流れる前記電流が前記電流目標値に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成される。
【0066】
上記(4)の構成によれば、水素製造装置の起動完了後、整流器の制御モードを電流制御モードとし、電解槽を含む回路の電流が水素の目標生成量に応じた電流目標値に近づくように整流器の出力電圧を調節する。これにより、水素製造装置の起動開始から短時間で、目標生成量の水素の製造及び供給を開始することができる。
【0067】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記制御モード選択部は、前記水素製造装置の起動中において前記電解槽内の水の温度が規定温度(T)に達したら、前記水素製造装置の起動が完了したと判定するように構成される。
【0068】
上記(5)の構成によれば、電解槽内の水の温度が規定温度に達したことをもって、水素製造装置の起動が完了したことを適切に判定し、目標生成量の水素の製造及び供給を速やかに開始することができる。
【0069】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の構成において、
前記電流制御部は、前記水素製造装置の起動完了後、前記回路における電力が制限値を超えない範囲で前記電流が前記電流目標値に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するように構成される。
【0070】
上記(6)の構成によれば、水素製造装置の起動完了後の運転中、電解槽を含む回路における電力が制限値を超えない範囲で該回路を流れる電流を制御するようにしたので、当該回路における過電力又は過電流を予防して電解槽を保護しながら、目標生成量の水素を製造及び供給することができる。
【0071】
(7)本発明の少なくとも一実施形態にかかる水素製造設備(100)は、
水を電気分解するための電解槽(2)と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器(8)と、を含む水素製造装置(10)と、
前記水素製造装置を制御するように構成された上記(1)乃至(6)の何れか一項に記載の制御装置(20)と、
を備える。
【0072】
上記(7)の構成では、水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、整流器から電解槽に出力される出力電圧(即ち電解槽への印加電圧)が、電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定されるので、電解槽内の水の電気分解により電解槽を含む回路を流れる電流を大きくして電解槽内の水の昇温速度を大きくすることができる。よって、上記(7)の構成によれば、水素製造装置の起動中において電解槽内の水の昇温に要する時間を短縮することができ、これにより、水素製造装置の起動時間を短縮することができる。
【0073】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置の制御方法は、
水を電気分解するための電解槽(2)と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器(8)と、を含む水素製造装置(10)の制御方法であって、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節するステップ(S2,S4)と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定するステップ(S4)と、
を備える。
【0074】
上記(8)の方法では、水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、整流器から電解槽に出力される出力電圧(即ち電解槽への印加電圧)が、電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定されるので、電解槽内の水の電気分解により電解槽を含む回路を流れる電流を大きくして電解槽内の水の昇温速度を大きくすることができる。よって、上記(8)の方法によれば、水素製造装置の起動中において電解槽内の水の昇温に要する時間を短縮することができ、これにより、水素製造装置の起動時間を短縮することができる。
【0075】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造装置用の制御プログラムは、
水を電気分解するための電解槽(2)と、前記電解槽に直流電力を供給するための整流器(8)と、を含む水素製造装置(10)のための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記整流器から前記電解槽に出力される出力電圧が設定電圧に近づくように、前記整流器の前記出力電圧を調節する手順と、
前記水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、前記設定電圧を前記電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定する手順と、
を実行させるように構成される。
【0076】
上記(9)のプログラムによれば、水素製造装置の起動中の少なくとも一部の期間において、整流器から電解槽に出力される出力電圧(即ち電解槽への印加電圧)が、電解槽の定格電圧よりも大きい第1電圧に設定されるので、電解槽内の水の電気分解により電解槽を含む回路を流れる電流を大きくして電解槽内の水の昇温速度を大きくすることができる。よって、上記(9)のプログラムによれば、水素製造装置の起動中において電解槽内の水の昇温に要する時間を短縮することができ、これにより、水素製造装置の起動時間を短縮することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0078】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0079】
2 電解槽
4 貯留部
6 水素消費設備
8 整流器
10 水素製造装置
12 温度センサ
14 電流センサ
16 流量センサ
20 制御装置
22 制御モード選択部
24 電圧制御部
25 電圧設定部
26 電流制御部
28 電流目標値取得部
30 記憶部
90 電源
92 送電線
100 水素製造設備
図1
図2
図3
図4
図5