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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024248
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】蒸発装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240215BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20240215BHJP
【FI】
C23C14/24 B
C23C14/24 G
H01G13/00 391C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126933
(22)【出願日】2022-08-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】309024907
【氏名又は名称】マシン・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】加瀬部 強
(72)【発明者】
【氏名】三宅 徹
【テーマコード(参考)】
4K029
5E082
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA18
4K029BA21
4K029BD00
4K029CA01
4K029DB03
4K029DB04
4K029DB12
4K029DB18
4K029JA10
4K029KA03
5E082AB04
5E082BC09
5E082BC36
5E082BC40
5E082EE23
5E082EE24
5E082EE25
5E082EE37
5E082FG34
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】フィルムコンデンサ用フィルムに亜鉛細線を形成する蒸発装置を提供すること。
【解決手段】クーリングローラ20上のフィルムに亜鉛を蒸着させるための蒸発装置において、電熱棒160を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体である下面板120、二枚の側面板130、厚み方向を連通する長手の窓111が形成された上面板110と、これらの四枚により形成される角筒の両端をそれぞれ塞ぐ二枚の端面板140と、上面板110に接合させる0.5mm以上2.0mm以下の所定幅のスリット151が形成されたマスク板150と、を具備し、クーリングローラ20とスリット151との距離を1.5mm以内に近接させて使用可能としたことを特徴とする亜鉛蒸発装置100。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーリングローラに当接させ連続的に供給していく帯状のフィルムコンデンサ用フィルムに対し亜鉛または亜鉛合金を蒸着させるための蒸発装置に関し、ルツボを内部に収容し、外形が角柱様であって真空槽の中に長手を水平にして配置する蒸発装置において、
発熱用抵抗棒を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体である底面用平板体と、
発熱用抵抗棒を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体である二枚の側面用平板体と、
発熱用抵抗棒を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体であって、厚み方向を連通する前記長手方向に長手の孔が形成された上面用平板体と、
前記四枚の金属平板体により形成される角筒の両端をそれぞれ塞ぐ所定厚みの金属平板体である二枚の端用平板体と、
上面用平板体に上面から接合させる金属平板体であって、0.1mm以上2.0mm以下の所定幅のスリットが形成されたマスク体と、
を具備し、クーリングローラとスリットとの距離を5.0mm以内に近接させて使用可能としたことを特徴とする蒸発装置。
【請求項2】
底面用平板体、側面用平板体、上面用平板体、端用平板体、および、マスク体は、同組成のSUS板により形成され、
底面用平板体、側面用平板体、および、上面用平板体は、複数のネジによる締結により角筒を形成し、
マスク体も複数のネジによる締結により上面用平板体に合着させることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
発熱用抵抗棒は金属平板体の長手方向の中心線に対し対称に2本または端で曲げ返した対称配置の1本として、厚み方向を二分割した金属平板体に設けた嵌合溝に嵌めて挟み、三者を一体化して底面用平板体、側面用平板体、および、上面用平板体をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項4】
底面用平板体と二枚の側面用平板体の発熱用抵抗棒を連結した第一加熱系統と、
第一加熱系統とは独立した上面用平板体の発熱用抵抗棒からなる第二加熱系統と、
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ用フィルムに亜鉛系の蒸着膜を形成する蒸発装置に関し、特に、いわゆるヘビーエッジ等を細線として形成可能な蒸発装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クーリングローラに当接させ連続的に供給していく帯状のフィルムに、アルミを蒸着してパターンを形成するフィルムコンデンサは、生産性が高く、耐電圧、温度特性、周波数特性にも優れる。
【0003】
また、セルフヒーリング性(自己回復性)を備えさせることも可能であり、ヘビーエッジとしてアルミとは別に亜鉛蒸着層をフィルムの片端に形成したものも広く製造されてきている。
【0004】
ここで、近年では、コンデンサの性能向上その他種々の要求物性を満たすべく、亜鉛蒸着膜の幅を極力狭くすることが求められる場合がある。
しかしながら、亜鉛を蒸発させるルツボを収容して加熱する金属製の蒸発装置は、外形が、横倒しの円筒の側周上面側に所定高さの長手の角筒が取り付けられるなど、形状が複雑である。このため、600度~700度程度に加熱される環境下では歪みが生じ、また、ヒートサイクル等によっても歪みが生じやすく、クーリングローラから5mm以上離間させる必要があった。
したがって、たとえ、蒸発装置の亜鉛放散用スリットを1mmとしても、たとえば、フィルム上では3mm幅にまで広がってしまう部分ができてしまうなど、亜鉛系の細線形成が困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-109845
【特許文献2】特開2016-79430
【特許文献3】特開2021-134387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、フィルムコンデンサ用フィルムに亜鉛細線を形成可能な蒸発装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の蒸発装置は、クーリングローラに当接させ連続的に供給していく帯状のフィルムコンデンサ用フィルムに対し亜鉛または亜鉛合金を蒸着させるための蒸発装置に関し、ルツボを内部に収容し、外形が角柱様であって真空槽の中に長手を水平にして配置する蒸発装置において、発熱用抵抗棒を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体である底面用平板体と、発熱用抵抗棒を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体である二枚の側面用平板体と、発熱用抵抗棒を埋め混んだ所定厚みの長手の金属平板体であって、厚み方向を連通する前記長手方向に長手の孔が形成された上面用平板体と、前記四枚の金属平板体により形成される角筒の両端をそれぞれ塞ぐ所定厚みの金属平板体である二枚の端用平板体と、上面用平板体に上面から接合させる金属平板体であって、0.1mm以上2.0mm以下の所定幅のスリットが形成されたマスク体と、を具備し、クーリングローラとスリットとの距離を5.0mm以内に近接させて使用可能としたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、厚みを持たせた単純形状の金属平板を組み上げることにより、それぞれが熱により伸縮したとしても、ねじれや波うちのような歪みは角柱様の筐体全体構造として生じにくくし、クーリングローラとの距離を近接させることができる。これにより、フィルムに亜鉛細線の蒸着膜を形成可能となる。
蒸着される亜鉛はスリット幅とクーリングローラ間との間隔に応じた細線とすることが可能となる。すなわち、間隔が3mmであれば、スリット幅0.5mmにて1.0mm程度の細線形成、スリット幅2.0mmにて4.0mm程度の細線形成が可能である。
また、接触が生じないのであれば、クーリングローラ(正確にはクーリングローラに当接しているフィルム)表面とスリットとの距離は0.1mmとすることもできる。安全率をみて0.2mm間隔としてもよい。
【0009】
底面用平板体、側面用平板体、上面用平板体は、厚み方向にみて、長手の長方形であり、(使用時に)横倒しの角筒を形成するため、概ね同形とし、厚みは同一とするのが好ましい。端用平板体も上記の平板体と同厚とするのが好ましい。マスク体の厚みはこれらと異なっても良いが、これら総ての平板体の金属組成は、同一であることを原則とする。
発熱用抵抗棒は、いわゆる電熱線であり、ニクロムの丸棒の表面に絶縁層を設けたものを用いることができる。
また、底面用平板体と側面用平板体、また、場合により端用平板体も加えた「槽」の内面には、亜鉛の付着ないし固着を避けるため、別途薄手の金属製インナーカバーを介在させるようにしてもよい。
また、上面用平板体を側面用平板体に(場合により端用平板体にも)接合させる場合には、熱伝導性や気密性を確保するため、金属シートやカーボンファイバーシートといったガスケットを挟み込むようにしても良い。
スリットは長手方向に等間隔に多数設け、個々のスリット自体は当該長手方向に垂直な方向(平面視における長方形の短手方向)に伸び、厚み方向に連通させる例を挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の蒸発装置は、請求項1に記載の蒸発装置において、底面用平板体、側面用平板体、上面用平板体、端用平板体、および、マスク体は、同組成のSUS板により形成され、底面用平板体、側面用平板体、および、上面用平板体は、複数のネジによる締結により角筒を形成し、マスク体も複数のネジによる締結により上面用平板体に合着させることを特徴とする。
【0011】
請求項2にかかる発明は、同一素材として狂いを生じにくくし、調達および加工も用意であって個別に交換も可能な蒸発装置を提供することができる。また、角柱という構造ないし形状自体に加えて、複数ネジによる締結によっても歪みが抑制される。
【0012】
なお、ネジは熱による固着が起こらないように、炭素鋼を用いるなど平板体とは異なる素材とするのが好ましい。
【0013】
請求項3に記載の蒸発装置は、請求項1に記載の蒸発装置において、発熱用抵抗棒は金属平板体の長手方向の中心線に対し対称に2本または端で曲げ返した対称配置の1本として、厚み方向を二分割した金属平板体に設けた嵌合溝に嵌めて挟み、三者を一体化して底面用平板体、側面用平板体、および、上面用平板体をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項3にかかる発明は、サンドイッチ構造にすることで熱効率を高め、対称配置とすることでルツボへの均等加熱も実現する。また、ユニット化しているので平板体を個別に交換する作業も容易となる。
【0015】
なお、曲げ返しは、抵抗棒がいったん平板体の外にでてから戻ってくる態様であっても、平板体の中でU字に戻ってくる態様であってもよい。曲げ返しは1回でなく奇数回であれば対象配置が実現される。
【0016】
請求項4に記載の蒸発装置は、請求項1に記載の蒸発装置において、底面用平板体と二枚の側面用平板体の発熱用抵抗棒を連結した第一加熱系統と、第一加熱系統とは独立した上面用平板体の発熱用抵抗棒からなる第二加熱系統と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項4にかかる発明は、亜鉛の蒸発器への再付着を予防する加熱コントロールを簡便に実現し、蒸着品質を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルムコンデンサ用フィルムに亜鉛細線を形成する蒸発装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の亜鉛蒸発装置を備えた真空蒸着装置の構成概念図である。
図2】本発明の亜鉛蒸発装置の外観斜視図である。
図3】本発明の亜鉛蒸発装置について、マスク板と上面板とを外した様子を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、フィルムコンデンサ用の蒸着フィルムを製造する真空蒸着装置について説明する。図1は、本発明の亜鉛蒸発装置を備えた真空蒸着装置の構成概念図である。図2は、本発明の亜鉛蒸発装置の外観斜視図である。図3は、本発明の亜鉛蒸発装置について、マスク板と上面板とを外した様子を示した平面図である。なお、各図において説明の便宜上縮尺は必ずしも揃えていない。
【0022】
真空蒸着装置1は、フィルム巻出ローラ10と、クーリングローラ20と、フィルム巻取ローラ30と、マスキング部40と、アルミ蒸発装置50と、亜鉛蒸発装置100と、を主要な構成として備える。なお、図示は省略するが、適宜、電子ビーム照射部やプラズマ照射部等を備え、改質、硬化、固化等をおこなう。また、仕様の態様によっては、その他の金属を蒸着したり、別途誘電層を形成したりする構成が含まれる。
なお、真空蒸着装置1は、脱気装置(図示せず)により所定の真空度まで室内の脱気しながら蒸着をおこなう。
【0023】
フィルム巻出ローラ10は、所定の誘電率を有するフィルムコンデンサ用の幅広フィルムを巻き付けてあり、一定の供給速度でフィルムを連続的に繰り出す。フィルムの例としては、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムを挙げることができる。フィルム幅は特に限定されないが、概ね300mm~900mmであり、ここでは500mm幅の例を説明する。フィルム厚は1.0μm~10μm、巻き長さは5,000m~100,000mが代表的な範囲である。
【0024】
フィルム巻取ローラ30は、アルミパターンと亜鉛細線のヘビーエッジが形成されたフィルムを連続的に巻き取る。巻取速度はフィルム供給速度と同速とするが、蒸着フィルムにたわみが発生しないように一定のテンションがかかるようにしている。なお、蒸着終了後、蒸着フィルムは後工程でコンデンサに適宜加工される。
巻取/巻出速度は、0.5m/分~500m/分で調整でき、蒸着するアルミや亜鉛の厚みやクーリングローラ20の径、表面温度により適宜決定される。
【0025】
クーリングローラ20は、ここでは軸長600mm、直径800mmの円柱としており、フィルム巻出ローラ10から繰り出されたフィルムをフィルム幅方向が軸方向となるようにして所定の中心角分巻き付ける。表面は鉄メッキが施され、内側から表面を冷却する(冷却機構図示せず)。フィルム表面に金属蒸気が吹きあたり、クーリングローラ20の裏あてによりフィルムが冷やされてアルミや亜鉛が凝結し(蒸着し)、所望のパターンが形成される。
【0026】
マスキング部40は、軸方向に長手(約600mm)である柱状の筐体の一面にノズル板が取り付けられた構成である。このノズル板は、クーリングローラ20に近接対峙しており、表面には等間隔かつ軸方向一直線上に配された噴出孔があり、内部で加熱されたオイルを噴出する。マスキング部40は軸方向に適宜往復等して、所定のパターンをフィルム表面に形成する。マスキングされた部分は保護層となり最終的にはこの部分が露出することとなる。
【0027】
アルミ蒸発装置50は、アルミニウムインゴットの入ったルツボ51を収容した長手の蒸発装置であって、クーリングローラ20に対峙した開口側からアルミニウムを放散してフィルムにアルミを蒸着させる。このとき、先のパターン部分にはアルミが蒸着されずマージン部を形成する。
【0028】
次に亜鉛蒸発装置100を説明する。
亜鉛蒸発装置100は、外形が角柱様であって、内部に亜鉛を溶融する開口したルツボ101を収容し、クーリングローラ20に間隔1mmまで近接させ、その長手方向はクーリングローラ20の軸方向と一致するように水平に配置している。そして、この近接面(マスク板)のスリットから亜鉛蒸気を放出し、フィルムに亜鉛細線からなるヘビーエッジを形成する。
【0029】
具体的には、亜鉛蒸発装置100は、6パーツの、上面板110と、下面板120と、二枚の側面板130と、二枚の端面板140と、により中空角柱を形成し、上面板110にマスク板150が接合されて形成されている。
【0030】
これらはいずれもSUS板により形成され、厚みが15mmの平板である。このうち、上面板110、下面板120、側面板130は、厚み方向に見た場合、長手の長方形であって、長さは600mmで共通しており、幅は、上面板110と下面板120は100mm、二枚の側面板130は70mmである。また、二枚の端面板140の大きさは、70mm×70mm(×厚み15mm)である。すなわち、6パーツにより100mm×100mm×600mmの中空角柱が形成され、この中にルツボ101が収容される。なお、上面板110については、厚み方向に開放された550×30mmの窓111があけられている。
これらの6面は、炭素鋼の六角穴付ボルトにより合着されている。なお、ネジ孔は対称配置として、歪みやネジレの原因となる不要なストレスがかからないようにしている。
【0031】
マスク板150は、600mm×100mm×5mmの大きさであり、100mm幅方向すなわち短手方向に長さ25mm幅0.7mmのスリット151があけられている。スリット151はそれぞれ厚み方向を連通し、長手方向に45mm間隔で配されている。マスク板150も六角穴付ボルトにより上面板110に合着されている。
【0032】
なお、上面板110、下面板120、二枚の側面板130については、それぞれ、表面がセラミックスでコーティングされているカンタル製の電熱棒160(直径6mm)を挟み込んだ構成としている。
詳細には次のとおりである。
上面板110、下面板120、二枚の側面板130は、それぞれ、厚み方向に二つ割りされている(上面板110は上面板110aと110b、下面板120は下面板120aと120b、側面板130は側面板130aと130bにより構成されている)。各板面には長手方向の中心線に対し対称に2本の嵌合溝が掘られ、電熱棒160をくわえ込んでそれぞれ三者が一体化(ユニット化)している。なお一体化は特に限定されず、ネジ留めや溶接の例を挙げることができる。
電熱棒160は、上面板110、下面板120、側面板130の外でU字に曲げられて出入りしたものとなっている。また、下面板120と二枚の側面板130については、着脱可能なU字連結具165が取り付けられ一つの回路として連通した構成となっている。これを便宜上回路160Aとし、上面板のU字状の電熱棒160を回路160Bと称することとする。
【0033】
このように回路を分けることにより、回路160Aでは、加熱温度600℃とし、回路160Bでは、マスク板150の温度が650℃となるように電流電圧値を調整する様にする(制御部等の図示は省略する)。マスク体の温度を他の3面の温度より高くすることにより、筐体への亜鉛蒸気の再付着が抑制され品質の良いヘビーエッジ形成が実現される。
【0034】
なお、角柱内部に金属薄板を別途あてがい、亜鉛の平板内面への付着を抑制するようにしてもよい。
また、二枚の側面板130と二枚の端面板140とにより上面に形成される口部分と上面板110との接合部分(合着部分)には、カーボンファイバーシートを介在させ、気密性を高めると共に口部分の熱(もしくは槽部分の熱)を上面板110に効率的に伝えるようにしてもよい。前述の回路160Bの加温制御とともに、亜鉛蒸気の温度降下によるスリット151の目詰まり予防の観点から好適である。
【0035】
亜鉛蒸発装置100は以上の構成であって、厚みを持たせた単純形状のSUS板を用いるため、形状由来の歪みやねじれがそもそも生じにくい。6面およびマスク体を同素材とし、また、単純な形状である角柱として組み上げることにより、各構成が熱により伸縮したとしても、ねじれや波うちのような歪みが構造的に生じにくいようにしている。このため、従来の蒸発器ではクーリングローラに近づけてもせいぜい5mm間隔が限界であったところ、1.0mm以内はもちろんのこと、0.1mmに近接させても使用可能である。
従って、フィルム上の幅も若干の広がりは生じるものの同程度幅の細線として亜鉛蒸着膜を形成することができる。
【0036】
なお、本発明では、亜鉛蒸発装置の長さはクーリングローラの軸長と同長程度とすれば良いが、この長さが1000mmであれば、マスク体とクーリングローラの間隔は1.0mmはもちろんのこと、0.2mmでも接触なく使用できる。各種調整をおこなうことにより0.1mmに近接させることも可能である。すなわち、角柱の筐体長さに対する離間距離の比は、1/1000はもちろんのこと、2/10000でも実用上問題なく、1/10000とすることもできる。
【0037】
なお、本発明は、構成が簡素であって、上面板110、下面板120、側面板130、端面板140、マスク板150を部分的に交換することもできるため、ランニングコストを抑えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の亜鉛蒸着装置により生産されたフィルムを所定幅に切り出して捲回し、たとえば、DC-AC変換時の平滑回路用のコンデンサを製造できる。
なお、亜鉛にかえて亜鉛合金としてもよく、このほか、マグネシウムやマグネシウム合金の蒸着にも用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 真空蒸着装置
10 フィルム巻出ローラ
20 クーリングローラ
30 フィルム巻取ローラ
40 マスキング部
50 アルミ蒸発装置
100 亜鉛蒸発装置
101 ルツボ
110 上面板
111 窓
120 下面板
130 側面板
140 端面板
150 マスク板
151 スリット
160 電熱棒
160A 回路
160B 回路
165 U字連結具
図1
図2
図3