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  • 特開-アンモニア貯蔵供給基地 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024254
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】アンモニア貯蔵供給基地
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F17C13/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126952
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】内田 優幸
(72)【発明者】
【氏名】中原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】須藤 聖朗
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172BD07
3E172DA15
3E172EB02
3E172EB19
3E172EB20
3E172HA02
3E172HA04
3E172JA08
(57)【要約】
【課題】外部からパイロットバーナー用の燃料ガス、アシストガスを調達する頻度を低減または殆ど調達することなく余剰のアンモニアガスをフレア設備で焼却処分できるアンモニア貯蔵供給基地を提供する。
【解決手段】アンモニア貯蔵供給基地1は、液体アンモニア100を貯蔵する低温貯蔵タンク2と、少なくとも低温貯蔵タンク2から排出される余剰のアンモニアガスを焼却可能なフレア設備3と、低温貯蔵タンク2で生じたボイルオフガスを分解して水素または水素を含む混合ガスを生成し、フレア設備3に供給する燃料ガス供給設備4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体アンモニアを貯蔵する低温貯蔵タンクと、
少なくとも前記低温貯蔵タンクから排出される余剰のアンモニアガスを焼却可能なフレア設備と、
前記低温貯蔵タンクで生じたボイルオフガスを分解して水素または水素を含む混合ガスを生成し、前記フレア設備に供給する燃料ガス供給設備と、を備える、アンモニア貯蔵供給基地。
【請求項2】
前記燃料ガス供給設備は、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの少なくとも一部を、前記フレア設備のパイロットバーナーに供給する、請求項1に記載のアンモニア貯蔵供給基地。
【請求項3】
前記燃料ガス供給設備は、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの少なくとも一部を、前記フレア設備のフレアバーナーに供給する、請求項1または2に記載のアンモニア貯蔵供給基地。
【請求項4】
前記燃料ガス供給設備は、前記フレア設備におけるアンモニアガスの焼却量に応じて、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの、前記フレア設備のパイロットバーナーまたはフレアバーナーへの分配供給量を調整する、請求項1に記載のアンモニア貯蔵供給基地。
【請求項5】
前記燃料ガス供給設備は、前記ボイルオフガスを触媒により分解して水素または水素を含む混合ガスを生成するアンモニア分解処理槽を備える、請求項1に記載のアンモニア貯蔵供給基地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア貯蔵供給基地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、火力発電所に天然ガスを供給するLNG基地が開示されている。このLNG基地は、LNGタンクに低温貯蔵されたLNG(液体燃料)を複数の気化器を用いて気化させて天然ガス(気体燃料)を生成し、該天然ガスを火力発電所の消費量に応じて送出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-178098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気化LNGの発生量は、火力発電所の消費量を満足するように設計されるが、火力発電所側の運転状況次第では、気化LNGの発生量に対して火力発電所の消費量が下回り余剰分が生じる場合がある。その場合、燃料供給系統の圧力上昇に対する機械的保護の観点から余剰分の気化LNGは、フレア設備で焼却処分しているのが一般的である。LNG基地では、フレア設備のパイロットバーナーの燃料ガスとして、LNGタンクで発生するボイルオフガスを利用している。
【0005】
近年、地球温暖化対策として、燃焼時に二酸化炭素を発生しないアンモニアが注目されており、火力発電所のボイラの新規代替燃料として、液体アンモニアを大量に利用することが考えられている。このような背景のもと、LNGと同様に、余剰のアンモニアガスが発生した場合、フレア設備で焼却処分することが考えられるが、アンモニアガスを完全燃焼させるためにはアシストガスが必要となる。アシストガスとしては、例えばプロパンガスが考えられるが、外部からプロパンボンベ等を定期的に調達する必要がある。また、アシストガスとしてアンモニアガスは対応しているが、大量に必要となり基地内のボイルオフガスで賄えないため、フレア先端の口径を太くせざるをえずパイロットバーナーの燃料消費量を増加させていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、外部からパイロットバーナー用の燃料ガス、アシストガスを調達する頻度を低減または殆ど調達することなく余剰のアンモニアガスをフレア設備で焼却処分できるアンモニア貯蔵供給基地を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るアンモニア貯蔵供給基地は、液体アンモニアを貯蔵する低温貯蔵タンクと、少なくとも前記低温貯蔵タンクから排出される余剰のアンモニアガスを焼却可能なフレア設備と、前記低温貯蔵タンクで生じたボイルオフガスを分解して水素または水素を含む混合ガスを生成し、前記フレア設備に供給する燃料ガス供給設備と、を備える。
【0008】
また、本発明の第2の態様では、第1の態様のアンモニア貯蔵供給基地において、前記燃料ガス供給設備は、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの少なくとも一部を、前記フレア設備のパイロットバーナーに供給してもよい。
【0009】
また、本発明の第3の態様では、第1または第2の態様のアンモニア貯蔵供給基地において、前記燃料ガス供給設備は、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの少なくとも一部を、前記フレア設備のフレアバーナーに供給してもよい。
【0010】
また、本発明の第4の態様では、第1から第3態様のいずれか一つのアンモニア貯蔵供給基地において、前記燃料ガス供給設備は、前記フレア設備におけるアンモニアガスの焼却量に応じて、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの、前記フレア設備のパイロットバーナーまたはフレアバーナーへの分配供給量を調整してもよい。
【0011】
また、本発明の第5の態様では、第1から第4態様のいずれか一つのアンモニア貯蔵供給基地において、前記燃料ガス供給設備は、前記ボイルオフガスを触媒により分解して水素または水素を含む混合ガスを生成するアンモニア分解処理槽を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の一態様によれば、外部からパイロットバーナー用の燃料ガス、アシストガスを調達する頻度を低減または殆ど調達することなく余剰のアンモニアガスをフレア設備で焼却処分できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地の構成図である。
図2】一実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地の通常時のBOGの処理の流れを示す図である。
図3】一実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地のフレア稼働時のBOGの処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地1の構成図である。
図1に示すアンモニア貯蔵供給基地1は、図示しないタンカーから液体アンモニア100を受け入れ、貯蔵及び気化などを行い、気化後の気体アンモニアを図示しない火力発電所のボイラに供給する。このアンモニア貯蔵供給基地1は、低温貯蔵タンク2と、フレア設備3と、燃料ガス供給設備4と、再液化装置5と、ボイルオフガス圧縮機(以下、BOG圧縮機6と称する)と、を備えている。
【0016】
低温貯蔵タンク2は、例えば、全高が50メートル程ある大型の二重殻地上低温タンクであって、図示しない内槽と外槽との間に粒状のパーライト等の保冷材が充填されている。なお、低温貯蔵タンク2は、地下式低温タンクであっても構わない。低温貯蔵タンク2は、アンモニアタンカーから受け入れ配管(図示省略)を介して移送された液体アンモニア100を貯蔵する。液体アンモニア100の貯蔵温度は、例えば、-33℃~-34℃程である。
【0017】
フレア設備3は、低温貯蔵タンク2から排出される余剰のアンモニアガスを焼却処分する。フレア設備3は、例えば、全高が50メートル程ある大型のフレアバーナー3a(フレアスタック)と、フレアバーナー3aのフレア先端において常時着火しているパイロットバーナー3bと、を備えている。なお、図1図3において、パイロットバーナー3bは便宜上、1台で表示しているが、一基のフレアバーナー3aに対して複数台設置されている。
【0018】
再液化装置5は、入熱などによって低温貯蔵タンク2で生じたボイルオフガス(以下、BOGと称する)を再液化し、低温貯蔵タンク2に戻す。低温貯蔵タンク2で生じたBOG(気体アンモニア)は、BOG排出ライン10を介してBOG圧縮機6に供給される。BOG排出ライン10は、低温貯蔵タンク2の頂部とBOG圧縮機6とを接続する移送用配管である。
【0019】
BOG圧縮機6に供給されたBOGは、BOG圧縮機で所定の圧力まで昇圧され、BOG再液化ライン11を介して再液化装置5に供給される。BOG再液化ライン11は、BOG圧縮機6と再液化装置5とを接続する移送用配管である。再液化装置5に供給されたBOGは、冷却水により液化される。
【0020】
液化したアンモニアは、エコノマイザーで一部冷却後、膨張弁を介し、BOG返送ライン12を通り、低温貯蔵タンク2へ返送される。BOG返送ライン12は、再液化装置5と低温貯蔵タンク2とを接続する移送用配管である。このように、再液化装置5は、低温貯蔵タンク2から発生するBOGを処理(再液化)し、低温貯蔵タンク2の圧力を一定に保つ。
【0021】
BOG再液化ライン11には、BOG圧縮機6から再液化装置5に供給されるBOGの一部を燃料ガス供給設備4に供給するBOG供給ライン21が接続されている。BOG供給ライン21は、BOG再液化ライン11から分岐し、BOG圧縮機6で昇圧されたBOGを、燃料ガス供給設備4のアンモニア分解処理槽20に供給する移送用配管である。BOG供給ライン21には、制御弁21aが設けられている。制御弁21aは、制御装置30から入力される弁開度制御信号に応じてその弁開度が制御される。
【0022】
アンモニア分解処理槽20は、BOG供給ライン21を介して供給されるBOGを、触媒により分解して水素または水素を含む混合ガスを生成する。アンモニア分解処理槽20の触媒としては、例えば、アンモニアの分解反応を効率的に促進するルテニウムや白金等の貴金属系触媒、ニッケルや鉄等のその他の遷移金属系触媒等を使用することができる。
【0023】
燃料ガス供給設備4は、BOGを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの少なくとも一部を、フレア設備3のパイロットバーナー3bに供給する燃料ガス供給ライン22を備えている。燃料ガス供給ライン22は、アンモニア分解処理槽20とパイロットバーナー3bとを接続する移送用配管である。燃料ガス供給ライン22には、制御弁22aが設けられている。制御弁22aは、制御装置30から入力される弁開度制御信号に応じてその弁開度が制御される。
【0024】
また、燃料ガス供給設備4は、BOGを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの少なくとも一部を、フレア設備3のフレアバーナー3aに供給するアシストガス供給ライン23を備えている。アシストガス供給ライン23は、燃料ガス供給ライン22から分岐し、フレアバーナー3aに処理ガスを供給する処理ガス供給ライン13に接続される移送用配管である。なお、処理ガスは、低温貯蔵タンク2から排出される余剰のアンモニアガスを含むが、基地内で発生したその他の余剰アンモニアガス(低温貯蔵タンク2以外の他機器からのガスなどを含む)や、余剰アンモニアガスではないその他のガスが含まれてもよい。アシストガス供給ライン23には、制御弁23aが設けられている。制御弁23aは、制御装置30から入力される弁開度制御信号に応じてその弁開度が制御される。
【0025】
燃料ガス供給設備4は、フレア設備3におけるアンモニアガスの焼却量(フレア稼働率)に応じて、ボイルオフガスを分解して生成した水素または水素を含む混合ガスの、フレア設備3のパイロットバーナー3bまたはフレアバーナー3aへの分配供給量を調整する制御装置30を備えている。以下、制御装置30による制御について、図2及び図3を参照して説明する。
【0026】
図2は、一実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地1の通常時のBOGの処理の流れ示す図である。
制御装置30は、フレア設備3のフレアバーナー3aが稼働していない場合(通常時)には、BOGの必要量のみをアンモニア分解処理槽20に供給する。なお、フレアバーナー3aの稼働率は、処理ガス供給ライン13に設けられた図示しない流量計等から計測することができる。
【0027】
このとき、制御装置30は、制御弁21a及び制御弁22aを所定の弁開度まで開く。そうすると、BOG再液化ライン11を流通するBOGの少なくとも一部が、BOG供給ライン21を介してアンモニア分解処理槽20に供給され、アンモニア分解処理槽20にて分解され、水素または水素を含む混合ガスが生成される。生成された水素または水素を含む混合ガスは、燃料ガス供給ライン22を介してパイロットバーナー3bに供給される。なお、このとき、制御装置30は、アシストガス供給ライン23の制御弁23aを閉じている。
【0028】
図3は、一実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地1のフレア稼働時のBOGの処理の流れを示す図である。
制御装置30は、フレア設備3のフレアバーナー3aが稼働している場合(フレア稼働時)には、パイロットバーナー3b用に加えて、フレアバーナー3aのアシストガス用に必要な流量を追加したBOGをアンモニア分解処理槽20に供給する。
【0029】
このとき、制御装置30は、制御弁21aの弁開度を通常時より大きくする。なお、制御弁22aの弁開度は、通常時と同じでよいが、フレアバーナー3aの稼働率に応じて変更してもよい。また、制御装置30は、フレアバーナー3aの稼働率に応じて制御弁23aを開く。そうすると、アンモニア分解処理槽20にて生成された水素または水素を含む混合ガスが、アシストガス供給ライン23を介して処理ガス供給ライン13に供給される。
【0030】
処理ガス供給ライン13に供給されたアシストガスは、処理ガス(アンモニアガス)と混合され、フレアバーナー3aにて燃焼する。なお、アシストガスとして、フレアバーナー3aに供給されるガスは、水素または水素を含む混合ガスのいずれであってもよい。なお、燃料ガスとして、パイロットバーナー3bに供給されるガスは、100%水素だと失火の可能性があるため、水素を含む混合ガスが好ましい。
【0031】
このように、本実施形態のアンモニア貯蔵供給基地1では、アンモニア貯槽から発生するBOGを触媒によってクラッキング処理し、水素と窒素に分解する。そして、分解により生成された水素または水素を含む混合ガスを、パイロットバーナー3b用の燃料ガス、フレアバーナー3aのアシストガスとして、フレア設備3へ導く。これにより、基地内にパイロットバーナー3b用の燃料ガス、フレアバーナー3aのアシストガスに使用できる燃料ガスがない場合でも、低温貯蔵タンク2から発生するBOGを利用し、フレア設備3へ供給することで、外部からのプロパンボンベ等の調達および定期的な入替作業が不要となる。
【0032】
上述したように、本実施形態に係るアンモニア貯蔵供給基地1は、液体アンモニア100を貯蔵する低温貯蔵タンク2と、少なくとも低温貯蔵タンク2から排出される余剰のアンモニアガスを焼却可能なフレア設備3と、低温貯蔵タンク2で生じたボイルオフガスを分解して水素または水素を含む混合ガスを生成し、フレア設備3に供給する燃料ガス供給設備4と、を備える。この構成によれば、外部からパイロットバーナー3b用の燃料ガス、アシストガスを調達する頻度を低減または殆ど調達することなく余剰のアンモニアガスをフレア設備3で焼却処分できる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0034】
1…アンモニア貯蔵供給基地、2…低温貯蔵タンク、3…フレア設備、3a…フレアバーナー、3b…パイロットバーナー、5…再液化装置、6…BOG圧縮機、10…BOG排出ライン、11…BOG再液化ライン、12…BOG返送ライン、13…処理ガス供給ライン、20…アンモニア分解処理槽、21…BOG供給ライン、21a…制御弁、22…燃料ガス供給ライン、22a…制御弁、23…アシストガス供給ライン、23a…制御弁、30…制御装置、100…液体アンモニア
図1
図2
図3