(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024263
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】振動測定システム及び振動測定方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240215BHJP
G06T 7/215 20170101ALI20240215BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G06T7/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126976
(22)【出願日】2022-08-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
【テーマコード(参考)】
2G064
5L096
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
5L096AA06
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA14
5L096FA23
5L096GA19
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】画像内に背景や測定対象外の動体が入った場合であっても、素早い振動測定が可能な振動測定システムと振動測定方法を提供する。
【解決手段】入力装置とコンピュータとを備える振動測定システムであって、入力装置は、連続画像を撮影可能な撮像部を備え、コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、通信部は、撮像部で撮影された画像情報を受信可能に構成され、記憶部は、撮像部から受信した画像情報を記憶し、制御部で処理した画像情報を記憶可能に構成され、制御部は、輝度値解析部と、判定部と、抽出部と、振動解析部とを備え、輝度値解析部は、画像の各画素に輝度値の変化を解析可能に構成され、判定部は、輝度値の変化及び輝度値の変化の規則性を判定可能に構成され、抽出部は、判定部の結果から対象物のみを抽出可能に構成され、振動解析部は、抽出部の結果から振動を解析可能に構成される、振動測定システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置とコンピュータとを備える振動測定システムであって、
前記入力装置は、連続画像を撮影可能な撮像部を備え、
前記コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、
前記通信部は、前記撮像部で撮影された画像情報を受信可能に構成され、
前記記憶部は、前記撮像部から受信した画像情報を記憶し、制御部で処理した画像情報を記憶可能に構成され、
前記制御部は、輝度値解析部と、判定部と、抽出部と、振動解析部とを備え、
前記輝度値解析部は、画像の各画素に輝度値の変化を解析可能に構成され、
前記判定部は、輝度値の変化及び輝度値の変化の規則性を判定可能に構成され、
前記抽出部は、前記判定部の結果から対象物のみを抽出可能に構成され、
前記振動解析部は、前記抽出部の結果から振動を解析可能に構成される、
振動測定システム。
【請求項2】
振動測定方法であって、
画像における各画素の輝度値を時系列で抽出し、
その輝度値をデータ処理し、
輝度値の変化を判定する工程aと、
輝度値の変化の規則性を判定する工程bと、
前記2つの工程a,bの判定結果から、対象物のみを抽出し、
それによって、対象物の振動を素早く解析可能な、
振動測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動測定システム及び振動測定方法に関し、特に非接触で機械振動を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を解析することで、非接触で機械振動を測定する装置が提案されている。
特許文献1には、振動測定対象物の測定対象部の画像を拡大または縮小する光学部と、前記光学部を介して時系列的に測定対象部の画像を撮影する撮像部と、前記撮像部で撮影した測定対象部の時系列画像を入力する画像入力部と、前記画像入力部で入力した測定対象部の時系列画像に基づいて前記測定対象部の振動分析を行うデータ処理部とを備える、振動計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、撮影した画像内に測定対象以外に背景が含まれる場合、又は測定対象近傍に、人や動物等の動体が一時的に入った場合、振動の測定精度が落ちるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、画像内に背景や測定対象外の動体が入った場合であっても、素早い振動測定が可能な振動測定システムと振動測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、入力装置とコンピュータとを備える振動測定システムであって、入力装置は、連続画像を撮影可能な撮像部を備え、コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、通信部は、撮像部で撮影された画像情報を受信可能に構成され、記憶部は、撮像部から受信した画像情報を記憶し、制御部で処理した画像情報を記憶可能に構成され、制御部は、輝度値解析部と、判定部と、抽出部と、振動解析部とを備え、輝度値解析部は、画像の各画素に輝度値の変化を解析可能に構成され、判定部は、輝度値の変化及び輝度値の変化の規則性を判定可能に構成され、抽出部は、判定部の結果から対象物のみを抽出可能に構成され、振動解析部は、抽出部の結果から振動を解析可能に構成される、振動測定システム。
【0007】
かかる態様によれば、画像内に背景や測定対象外の動体が入った場合であっても、素早い振動測定が可能な振動測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る振動測定システムの構成概要を示す図である。
【
図2】コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る振動測定システムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】撮影画像に、対象物と背景が存在する模式図である。
【
図5】撮影画像に、対象物、背景、及び動体が存在する模式図である。
【
図6】時間と輝度値の関係を表したグラフである。(a)は
図5における画素A、(b)は
図5における画素B、(c)は
図5における画素C、をそれぞれ示す。
【
図7】周波数特性と強度の関係を表したグラフである。(a)は
図5における画素A、(b)は
図5における画素B、(c)は
図5における画素C、をそれぞれ示す。
【
図8】撮影画像から対象物のみを抽出した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.全体構成
振動測定システム1の全体構成について説明する。
図1は、本発明に係る振動測定システム1の構成概要を示す図である。
図2は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0014】
振動測定システム1は、振動測定対象物W(以下、単に対象物Wという場合がある)を含んだ測定対象領域R(以下、単に領域Rという場合がある)を撮像し、且つデータ転送する入力装置2と、得られた画像情報に対して画像処理等を行うコンピュータ3と、を備え、これらが電気的に接続されたシステムである。
【0015】
1.1 入力装置
入力装置2は、対象物Wを含んだ領域Rを撮像する適当な位置に配置され、その領域Rを一定時間(例えば5秒間)、高速で連続撮像するものである。本実施形態における振動測定においては、フレームレートは、100fpsであり、好ましくは1,000fpsで、さらに好ましくは2,000fpsである。
本実施形態に係る振動測定システム1において、入力装置2の形態は特に限定されるものではないが、例えば
図1に示される三脚付きカメラセットが採用されうる。カメラの性能としては、フレームレート:210フレーム/秒以上、空間解像度:1280ピクセル×1024ピクセル以上、ピクセルフォーマット:モノクロが好ましい。具体的には、入力装置2は、撮像部21と光学部22と三脚23とを備えている。換言すると、入力装置2は、三脚23の頂部に撮像部21が設けられ、この撮像部21に光学部22が取り付けられている。なお、対象物Wを含んだ領域Rが安定して撮影できるのであれば、三脚23に限らず、ジャイロ、3軸ステージ、又は光学微動ステージ等でもよい。
【0016】
(撮像部)
撮像部21は、例えばイメージセンサであり、対象物Wを含んだ領域Rを撮影した画像情報をデータ転送可能に構成されている。具体的には、光学部22から入射した光を検出し、搭載された光量センサが電気信号に変換し、後述の通信部31(コンピュータ3の一部の構成)へデータ転送するものである。
【0017】
(光学部)
光学部22は、例えば、光を集中、発散、反射、又は屈折させるレンズであり、対象物Wを含む領域Rの画像を拡大又は縮小するものである。
【0018】
1.2 コンピュータ
続いて、コンピュータ3について説明する。
図2は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態では、
図1に示すように、入力装置2で対象物Wを含んだ領域Rを撮像し、その画像情報のデータ転送先として、コンピュータ3が使用される。
コンピュータ3は、好ましくは、入力装置2の近傍に設置され、得られた画像情報に対して画像処理等を行うように構成されている。また、コンピュータ3は、例えば、振動の画像処理等を行う専用の制御装置であり、
図2に示すように、通信部31と、記憶部32と、制御部33等で構成され、これらの構成要素が通信バス30を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0020】
(通信部)
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。これらは一例であり、専用の通信規格を採用してもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。
【0021】
通信部31は、コンピュータ3から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成
されている。また、通信部31は、外部の構成要素からの種々の電気信号をコンピュータ3へ受信可能に構成されている。例えば、通信部31は、入力装置2(外部の構成要素の一例)の一部に設けられたイメージセンサ(撮像部21の一例)から、連続して撮像した画像情報(電気信号)を受信可能に構成される。
【0022】
(記憶部)
記憶部32は、上述の記載により定義される様々な情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。さらに、ストレージデバイスは、SSDに限らずハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)でもよく、そのHDDは、外部接続されていてもよい。
【0023】
記憶部32は、制御部33によって実行される画像処理に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。特に記憶部32は、入力装置2から通信部31を介して受信した画像情報を記憶している。また、制御部33(後述の輝度値解析部33a、判定部33b、抽出部33c、及び振動解析部33d)で処理した画像情報を記憶している。
【0024】
(制御部)
制御部33は、受信した画像情報を処理、又は制御可能に構成されている。制御部33は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された画像情報や所定のプログラムを読み出すことによって、画像処理に係る種々の機能を実現する。具体的には、記憶部32に記憶された画像情報から輝度値を抽出し解析するための輝度値解析機能、輝度値の変化の有無および規則性の有無を判定するための判定機能、判定部33bの判定結果に基づいて画像情報から対象物Wを抽出するための抽出機能、及び抽出部33cから出力された画像情報から振動を解析するための振動解析機能が該当する。すなわち、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されることで、輝度値解析部33a、判定部33b、抽出部33c、及び振動解析部33dとして実行されうる。なお、制御部33は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。また、それらの組合せであってもよい。さらに、制御部33は、CPUに限らず、グラフィックス・プロセシング・ユニット(Graphics Processing Unit:GPU)でもよく、そのGPUは、外部から実施するように構成されてもよい。
以下、輝度値解析部33a、判定部33b、抽出部33c、及び振動解析部33dについて、詳述する。
【0025】
〈輝度値解析部〉
輝度値解析部33aは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。輝度値解析部33aは、画像情報から輝度値を抽出し解析可能に構成される。より具体的には、輝度値解析部24は、時系列画像情報(記憶部32に記憶されている)から、画像情報における各画素の輝度値を時系列で抽出し、それらを好ましくは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)を施し、各輝度値の時間変化を周波数特性にデータ処理して、記憶部32に記憶させる。
【0026】
〈判定部〉
判定部33bは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。判定部33bは、輝度値の変化および輝度値の変化の規則性を判定可能に構成される。より具体的には、判定部33bは、輝度値解析部33aで解析された時系列画像情報(記憶部32に記憶されている)から、各画素に輝度値の変化の有無および規則性の有無を判定し、その判定結果を記憶部32に記憶させる。
【0027】
〈抽出部〉
抽出部33cは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。抽出部33cは、判定結果に基づいて画像情報から対象物Wを抽出可能に構成される。より具体的には、抽出部33cは、判定部33bの判定結果(記憶部32に記憶されている)から、輝度値の変化が無い画素および規則性の無い画素の輝度値をゼロとすることで、対象物Wのみの画像情報を作成し、記憶部32に記憶させる。
【0028】
〈振動解析部〉
振動解析部33dは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。振動解析部33dは、画像情報から振動を解析可能に構成される。より具体的には、振動解析部33dは、抽出部33cで作成された画像情報(記憶部32に記憶されている)から、画像を格子状にエリア分けして、エリア毎に振動を解析する。そして、その解析結果は表示部および保存部へ出力する。
【0029】
2.画像処理方法
素早い振動測定をするための振動測定システム1における画像処理方法について説明する。
図3は、本発明に係る振動測定システムの動作を示すフローチャートである。
以下、
図3における各ステップに沿って説明する。
【0030】
[開始]
(ステップS1)
まず入力装置2及びコンピュータ3を設置する。対象物Wが撮影できる画角に入力装置2の位置を調整する。好ましくは、対象物Wの振動を測定可能な必要最低限の画素分解能を確保しながら、出来るだけ広い画角になるように入力装置2を調整する。コンピュータ3の設置は、特に限定しないが、入力装置2の近傍(有線ケーブルが届く範囲)が好ましいが、遠隔地に設置して無線通信を行っても構わない。(ステップS2に続く)。
【0031】
(ステップS2)
続いて、調整された位置で連続画像を撮影する。この時、広範囲を撮影すると、一般的に領域R内には背景が含まれる(
図4参照)。また、背景に限らず、撮影中に人や動物等の動体が一時的に通過、又は留まる可能性もある(
図5参照)。そこで本願発明者等は、対象物Wを撮影した画像に背景、及び/又は動体が含まれた場合であっても、素早く画像処理できるシステムを鋭意検討した。
連続撮影における枚数は、後工程で行われる振動解析に必要な枚数でよい。例えば、振動解析をFFTにより行う場合、画像枚数は、入力装置2のフレームレートと要求する周波数分解能とから、以下の公知式で求めるとよい。尚、フレームレートと周波数分解能は、対象物Wに応じて予め決めるとよい。画像枚数=フレームレート/周波数分解能(ステップS3に続く)。
【0032】
(ステップS3)
続いて、ステップS2で連続して撮影された画像情報から各画素の輝度値を抽出する。換言すると、輝度値解析部33aにて、画像情報における各画素の輝度値を時系列で抽出する。(ステップS4に続く)。
【0033】
(ステップS4)
続いて、ステップS3で抽出した輝度値からデータ処理を行う。データ処理は、好ましくは、輝度値解析部33aにて、抽出した輝度値の時間変化をFFT解析して周波数特性を求めるのがよい。この時、FFT解析に使用する画像枚数は、撮影画像全部、又は一部でも構わない。(ステップS5に続く)。
【0034】
(ステップS5):輝度値の変化における判定工程
続いて、ステップS4のデータ処理から、判定部33bにて輝度値に変化があるか否かを判定する。周波数特性の場合、ピークの有無で判定できる。例えば、ピーク「無し」の場合、「輝度値に変化がない」といえる。また、ピーク「有り」の場合、「輝度値に変化がある」といえる。すなわち、ピークの有無は、周波数特性における「強度」に閾値を設けることで判定できる。これにより、輝度値に変化があるか否かの判定ができる。したがって、「強度」の閾値が所定値以上であれば、輝度値に変化があると判定される(ステップS6に続く)。一方、「強度」の閾値が所定値より小さければ、輝度値に変化がない(背景画素)と判定される(ステップS8)。
【0035】
(ステップS6):輝度値の変化の規則性における判定工程
続いて、ステップS5にて輝度値に変化があると判定されたら、判定部33bにて輝度値の変化に規則性があるか否かを判定する。輝度値はある特定のタイミングのみ変化し、その他の時間では一定の値をとる。このような場合、周波数特性は低周波数帯にピークが現れる。ここで、一般的に機械振動は一定以上の周波数を持ち、このような低周波数帯とは帯域が異なる。すなわち、「周波数」に閾値を設けることで規則性の有無を区別することができる。これにより、輝度値の変化に規則性があるか否かの判定ができる。したがって、「周波数」の閾値が所定値以上であれば、輝度値の変化に規則性がある(対象物含有画素)と判定される(ステップS7)。一方、「周波数」の閾値が所定値より小さければ、輝度値の変化に規則性がない(動体含有背景画素)と判定される(ステップS9)。ここで、作業者が一時的に侵入した場合、または留まる場合でも、人の動く速度は機械振動よりもはるかに遅く、また動きの規則性も機械振動と比べて少ないため、周波数帯域で機械振動と区別可能である。
【0036】
(ステップS10)
続いて、ステップS7-ステップS9の判定より、抽出部33cにて背景画素、及び/又は動体含有背景画素の輝度値を256階調のうちの“0”とすることで、“0”以外を対象物Wとして抽出し、その画像を作成する(ステップS11に続く)。
【0037】
(ステップS11)
続いて、ステップS10にて対象物Wのみを抽出した連続画像において、振動解析部33dにて各画像を格子状に複数のエリアに分割し、それに対して、例えば、デジタル画像相関法(DIC)等を用いることで、各領域の変位の時間変化を算出する。次に、算出した変位の時間変化に対してFFT解析することで、周波数特性を求め、変位及び周波数における振動データが求まる。
[終了]
【0038】
以上より、背景又は動体を除去した対象物Wのみの振動解析が行えるため、解析時間を短縮することができ、素早い振動測定が可能となる。
また、ステップS11以降においては、種々ステップが想定できるが、例えば、対象物Wのみを抽出した画像、変位の時間変化、周波数特性等の処理結果は、図示しないモニタなど表示部に表示させるのが好ましい。また、それら結果は、記憶部に保存するのが好ましい。
【0039】
(判定部33bのイメージ)
以下、判定部33bにて行われる処理(ステップS5-S9)を視覚的にイメージしやすいように、
図3‐
図8を用いて説明する。実際には、判定部33bの内部処理にて行われることに留意されたい。
図4は、撮影画像に、対象物と背景が存在する模式図、
図5は、撮影画像に、対象物、背景、及び動体が存在する模式図をそれぞれ示している。
図6は、時間と輝度値の関係を表したグラフであり、(a)は
図5における画素A、(b)は
図5における画素B、(c)は
図5における画素C、をそれぞれ示している。
図7は、周波数特性と強度の関係を表したグラフであり、(a)は
図5における画素A、(b)は
図5における画素B、(c)は
図5における画素C、をそれぞれ示している。
図8は、撮影画像から対象物のみを抽出した模式図である。
【0040】
ステップS4にて抽出された輝度値から、例えば、
図6に示すグラフをイメージされたい。以下、
図6のグラフを作成する上で、
図4及び
図5を参考にしながら説明する。便宜上、
図5は、
図4の状態から所定時間経過した際に、作業者Uが通り過ぎた図として説明する。
図4及び
図5には、画素A~Cを表している。画素Aは、対象物W以外の背景の一部である。画素Cは、画素Aとは異なる背景の一部である。画素Bは、対象物Wの振動部位を表している。
図6は、
図4の状態から連続で撮影した際の
図5の状態を含んだグラフである。
図6より、画素Aは、背景領域のため、輝度値に変化が無く一定値である。画素Bは、対象物Wがある領域のため、時間毎の機械振動に伴って輝度値も変化している。画素Cは、背景領域にあるが、作業者Uが通り過ぎているため、所定時間のところで一時的に輝度値に変化が生じている。また、輝度値の一定値に関しては、
図4における画素Aと画素Cは背景領域が異なるため、
図6(a)と
図6(c)では、一定値における輝度値の高低が異なっている。このように、時系列画像情報から時間と輝度値の関係を表したグラフが作成される。
【0041】
そして、
図6に示す輝度値と時間との関係データを、例えば、FFT解析することで、
図7に示すように、周波数特性と強度の関係を表したグラフを作成できる。
図7に示すように、画素Aでは輝度値の時間変化が無いため周波数特性にもピークが存在しない。一方、画素Bでは輝度値に規則的な変化があるため、周波数特性にピークが存在する。このようなピークの有無は、周波数特性における「強度」に閾値を設けることで判定できる。これにより、輝度値に変化があるか否かの判定ができる。すなわち、「強度」の閾値が所定値以上であれば、輝度値に変化があると判定できる。一方、「強度」の閾値が所定値より小さければ、輝度値に変化がない(背景画素)と判定できる。
【0042】
また、画素Cは背景領域だが、作業者が通り過ぎたため輝度値に変化が生じている。
図6(c)に示すように輝度値はある特定のタイミングのみ変化し、その他の時間では一定の値をとる。このような場合、周波数特性は
図7(c)に示すように低周波数帯にピークが現れる。ここで、一般的に機械振動は一定以上の周波数を持ち、このような低周波数帯とは帯域が異なるため、「周波数」に閾値を設けることで規則性の有無を区別することができる。これにより、輝度値の変化に規則性があるか否かの判定ができる。すなわち、「周波数」の閾値が所定値以上であれば、輝度値の変化に規則性がある(対象物含有画素)と判定される。
そして、背景画素及び対象物含有画素と判定された画素を“0”とし、
図8で示すように黒色に置き換える。なお、画素は“0”に限らず“255”の白色に置き換えても構わない。
【0043】
最後に、本発明に係る実施形態及び変形例を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1.振動測定システム、2.入力装置、3.コンピュータ、21.撮像部、22.光学部、23.三脚、30.通信バス、31.通信部、32.記憶部、33.制御部、33a.輝度値解析部、33b.判定部、33c.抽出部、33d.振動解析部、R.領域、U.作業者、W.対象物