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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024268
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】非再生中継通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20240215BHJP
   H04L 5/02 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H04B7/15
H04L5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126990
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072AA04
5K072AA13
5K072BB02
5K072BB25
5K072EE04
5K072GG01
5K072GG10
5K072GG14
5K072GG25
5K072GG26
5K072GG27
(57)【要約】
【課題】全二重通信を用いた非再生中継通信が可能な非再生中継通信システムを提供する。
【解決手段】非再生中継通信システムは、中継局を介して、第1通信局と第2通信局との間の非再生中継通信を行う非再生中継通信システムにおいて、信号に基づいて、前記第1通信局と前記中継局との間の通信における第1信号対雑音比と、前記第1通信局と前記中継局との間の通信における遅延を示す第1伝搬遅延とを算出する第1遅延算出手段と、信号に基づいて、前記第2通信局と前記中継局との間の通信における第2信号対雑音比と、前記第2通信局と前記中継局との間の通信における遅延を示す第2伝搬遅延とを算出する第2遅延算出手段と、第1信号対雑音比と第1伝搬遅延と、第2信号対雑音比と第2伝搬遅延とに基づいて、前記非再生中継通信を行う通信判断手段と備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継局を介して、第1通信局と第2通信局との間の非再生中継通信を行う非再生中継通信システムにおいて、
前記中継局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、前記第1通信局と前記中継局との間の通信における第1信号対雑音比と、前記第1通信局と前記中継局との間の通信における遅延を示す第1伝搬遅延とを算出する第1遅延算出手段と、
前記中継局と前記第2通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、前記第2通信局と前記中継局との間の通信における第2信号対雑音比と、前記第2通信局と前記中継局との間の通信における遅延を示す第2伝搬遅延とを算出する第2遅延算出手段と、
前記第1遅延算出手段により算出された第1信号対雑音比と第1伝搬遅延と、前記第2遅延算出手段により算出された第2信号対雑音比と第2伝搬遅延とに基づいて、前記非再生中継通信を行う通信判断手段と備えること
を特徴とする非再生中継通信システム。
【請求項2】
2以上の前記中継局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、2以上の前記中継局と前記第1通信局との間の各通信路による通信信号の変化を示す第1通信路行列を算出する第1行列算出手段と、
2以上の前記第2通信局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、2以上の前記第2通信局と前記第1通信局との間の各通信路による通信信号の変化を示す第2通信路行列を算出する第2行列算出手段と、
前記第1行列算出手段により算出された第1通信路行列から前記第1通信局と2以上の前記中継局との間の通信におけるそれぞれの第3信号対雑音比と、前記第2行列算出手段により算出された第2通信路行列から前記第1通信局と2以上の前記第2通信局との間の通信におけるそれぞれの第4信号対雑音比とを算出する雑音比算出手段と、
前記雑音比算出手段により算出されたそれぞれの第3信号対雑音比とそれぞれの第4信号対雑音比とに基づいて、2以上の前記中継局及び2以上の前記第2通信局のうちから、前記非再生中継通信を行う前記第2通信局と前記中継局とを選択する選択手段とをさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の非再生中継通信システム。
【請求項3】
前記中継局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、通信における自己干渉を処理するための遅延を示す処理遅延を算出する処理遅延算出手段をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の非再生中継通信システム。
【請求項4】
前記通信判断手段は、前記第1遅延算出手段により算出された第1伝搬遅延と、前記処理遅延算出手段により算出された処理遅延とに基づいて、前記中継局と前記第2通信局との間の通信における遅延の許容量を示す許容遅延を算出し、算出した前記許容遅延と、前記第1信号対雑音比と前記第2信号対雑音比と前記第2伝搬遅延とに基づいて、前記非再生中継通信を行うこと
を特徴とする請求項3に記載の非再生中継通信システム。
【請求項5】
前記通信判断手段は、算出した前記許容遅延が前記第2伝搬遅延以上であり、前記第1信号対雑音比と前記第2信号対雑音比とが閾値以上である場合、前記非再生中継通信を行うことを特徴とする請求項4に記載の非再生中継通信システム。
【請求項6】
前記選択手段は、前記雑音比算出手段により算出された第3信号対雑音比が閾値よりも大きい前記中継局を選択し、前記雑音比算出手段により算出された第4信号対雑音比が閾値よりも小さい前記第2通信局を選択すること
を特徴とする請求項2に記載の非再生中継通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非再生中継通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、5G通信を用いて、サブミリ秒以下の遅延で通信をする超低遅延通信を実現することが必要とされている。この超低遅延通信は、例えば自動運転車を含むモビリティ端末の遠隔制御やxR(クロスリアリティ)等の技術を実現するために期待されている。
【0003】
一方、この超低遅延通信の通信エリアのカバレッジを拡大するためには中継局を用いた中継通信が不可欠である。このため、中継局で復調及び復号を行った後、再度、符号化及び変調を行う再生中継を用いた中継通信がサイドリンク等で標準化されている。
【0004】
しかしながら、再生中継を用いた中継通信を行う場合、中継処理でミリ秒以上の遅延が生じるため、超低遅延通信のカバレッジ拡大ができないことが問題とされている。この問題の解決に向けて、中継器において復調及び復号は行わず、簡易な処理と増幅のみを実施する非再生中継への期待が高まっている。このため、例えば非特許文献1及び非特許文献2に記載されているような非再生中継通信システムが注目されている。
【0005】
非特許文献1の開示技術では、半二重通信での非再生中継通信について開示されている。また、非特許文献2の開示技術では、非再生中継通信において送信と受信とで同一時間スロットの使用し、自己干渉をFIRフィルタで抑圧する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Chen. A. B. Gershman, and S. Shahbazpanahi, "Filter-and-Forward Distributed Beamforming in Relay Networks with Frequency Selective Fading," IEEE Trans. On Signal Processing, vol. 58, no. 3, March 2010.
【非特許文献2】能口、林、金子、酒井、“周波数領域等化システムのための単一周波数全二重無線中継,” 電子情報通信学会技術報告, vol. SIP2011-109, 2012年1月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1の開示技術では、半二重通信での非再生中継通信を前提としており、送信と受信とで同一の時間のスロットの使用することを想定していない。このため、全二重通信を用いた非再生中継通信を行うことができないことが問題とされている。また、非特許文献2の開示技術では、中継局はアレーアンテナ等の複数アンテナを持ち、送信と受信とのアンテナがそれぞれ別々であることを前提としている。このため、例えば全二重通信を用いた非再生中継通信を行う場合、自己干渉を軽減するためには、送信と受信とのアンテナがそれぞれ別々のチャネル推定が必要であることが問題とされている。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するために導出されたものであり、全二重通信を用いた非再生中継通信が可能な非再生中継通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る非再生中継通信システムは、中継局を介して、第1通信局と第2通信局との間の非再生中継通信を行う非再生中継通信システムにおいて、前記中継局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、前記第1通信局と前記中継局との間の通信における第1信号対雑音比と、前記第1通信局と前記中継局との間の通信における遅延を示す第1伝搬遅延とを算出する第1遅延算出手段と、前記中継局と前記第2通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、前記第2通信局と前記中継局との間の通信における第2信号対雑音比と、前記第2通信局と前記中継局との間の通信における遅延を示す第2伝搬遅延とを算出する第2遅延算出手段と、前記第1遅延算出手段により算出された第1信号対雑音比と第1伝搬遅延と、前記第2遅延算出手段により算出された第2信号対雑音比と第2伝搬遅延とに基づいて、前記非再生中継通信を行う通信判断手段と備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る非再生中継通信システムは、第1発明において、2以上の前記中継局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、2以上の前記中継局と前記第1通信局との間の各通信路による通信信号の変化を示す第1通信路行列を算出する第1行列算出手段と、2以上の前記第2通信局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、2以上の前記第2通信局と前記第1通信局との間の各通信路による通信信号の変化を示す第2通信路行列を算出する第2行列算出手段と、前記第1行列算出手段により算出された第1通信路行列から前記第1通信局と2以上の前記中継局との間の通信におけるそれぞれの第3信号対雑音比と、前記第2行列算出手段により算出された第2通信路行列から前記第1通信局と2以上の前記第2通信局との間の通信におけるそれぞれの第4信号対雑音比とを算出する雑音比算出手段と、前記雑音比算出手段により算出されたそれぞれの第3信号対雑音比とそれぞれの第4信号対雑音比とに基づいて、2以上の前記中継局及び2以上の前記第2通信局のうちから、前記非再生中継通信を行う前記第2通信局と前記中継局とを選択する選択手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る非再生中継通信システムは、第1発明において、前記中継局と前記第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、通信における自己干渉を処理するための遅延を示す処理遅延を算出する処理遅延算出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る非再生中継通信システムは、第3発明において、前記通信判断手段は、前記第1遅延算出手段により算出された第1伝搬遅延と、前記処理遅延算出手段により算出された処理遅延とに基づいて、前記中継局と前記第2通信局との間の通信における遅延の許容量を示す許容遅延を算出し、算出した前記許容遅延と、前記第1信号対雑音比と前記第2信号対雑音比と前記第2伝搬遅延とに基づいて、前記非再生中継通信を行うことを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る非再生中継通信システムは、第4発明において、前記通信判断手段は、算出した前記許容遅延が前記第2伝搬遅延以上であり、前記第1信号対雑音比と前記第2信号対雑音比とが閾値以上である場合、前記非再生中継通信を行うことを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る非再生中継通信システムは、第2発明において、前記選択手段は、前記雑音比算出手段により算出された第3信号対雑音比が閾値よりも大きい前記中継局を選択し、前記雑音比算出手段により算出された第4信号対雑音比が閾値よりも小さい前記第2通信局を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明~第6発明によれば、通信判断手段は、第1信号対雑音比と第1伝搬遅延と、第2信号対雑音比と第2伝搬遅延とに基づいて、非再生中継通信を行う。これにより、例えば非再生中継通信を行うための通知用信号に基づいて、第1信号対雑音比と第1伝搬遅延と、第2信号対雑音比と第2伝搬遅延とを算出することができる。このため、全二重通信を用いた場合でも、中継信号が第2通信局で受信される際にサイクリックプレックス長を超えないように、かつ効率的な非再生中継通信が可能となる。
【0016】
特に、第2発明によれば、選択手段は、それぞれの第3信号対雑音比とそれぞれの第4信号対雑音比とに基づいて、2以上の中継局及び2以上の第2通信局のうちから、非再生中継通信を行う第2通信局と中継局とを選択する。これにより、リファレンス信号に基づいて各回線における信号対雑音比を算出し、通信対象となる中継局及び第2通信局を選択することが可能となる。このため、より効率的な非再生中継通信が可能となる。
【0017】
特に、第3発明によれば、処理遅延算出手段は、中継局と第1通信局との間の通信において送信又は受信される信号に基づいて、処理遅延を算出する。これにより、例えばリファレンス信号に基づいて、処理遅延を算出することができる。このため、全二重通信を用いた場合においても自己干渉の抑制が可能となる。
【0018】
特に、第4発明によれば、通信判断手段は、受算出した許容遅延と、第1信号対雑音比と第2信号対雑音比と第2伝搬遅延とに基づいて、非再生中継通信を行う。これにより、許容遅延と第2伝搬遅延とを比較して、非再生中継通信を行うかを判断できるため、より効率的な非再生中継通信が可能となる。
【0019】
特に、第5発明によれば、通信判断手段は、算出した許容遅延が第2伝搬遅延以上であり、第1信号対雑音比と第2信号対雑音比とが閾値以上である場合、非再生中継通信を行う。このため、全二重通信を用いた場合でも、中継信号が第2通信局で受信される際にサイクリックプレックス長を超えないように、かつ効率的な非再生中継通信が可能となる。
【0020】
特に、第6発明によれば、前記選択手段は、第3信号対雑音比が閾値よりも大きい中継局を選択し、第4信号対雑音比が閾値よりも小さい第2通信局を選択する。これにより、より効率的な非再生中継通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)は、一つの基地局を用いた場合の非再生中継通信システムの全体概略図である。図1(b)は、中央基地局と分散基地局とを用いた場合の非再生中継通信システムの全体概略図である。
図2図2(a)は、本実施形態における制御装置の構成の一例を示す模式図であり、図2(b)は、本実施形態における制御装置の機能の一例を示す模式図である。
図3図3(a)は、本実施形態におけるアンテナが1つの場合の中継局の構成の一例を示す模式図であり、図3(b)は、本実施形態におけるアンテナが2つの場合の中継局の構成の一例を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態におけるベースバンド信号処理回路の構成の一例を示す模式図である。
図5図5は、非再生中継通信システムの処理のフローを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した非再生中継通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0023】
図1(a)は、一つの基地局2を用いた場合の非再生中継通信システム100の全体概略図である。図1(a)に示すように、非再生中継通信システム100は、制御装置1と、制御装置1に接続される基地局2と、基地局2と通信を行う中継局3と、基地局2及び中継局3と通信を行う端末局4とを備える。また、非再生中継通信システム100は、2以上の中継局3及び2以上の端末局4を備えていてもよい。
【0024】
図1(b)は、中央基地局5と分散基地局6とを用いた場合の非再生中継通信システム100の全体概略図である。図1(b)に示すように、非再生中継通信システム100は、制御装置1と、制御装置1に接続される中央基地局5と、中央基地局5と通信を行う分散基地局6と、分散基地局6と通信を行う中継局3と、分散基地局6及び中継局3と通信を行う端末局4とを備える。また、非再生中継通信システム100は、2以上の分散基地局6、2以上の中継局3及び2以上の端末局4を備えていてもよい。
【0025】
制御装置1は、非再生中継通信を制御する。制御装置1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器が用いられるほか、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、IoT(Internet of Things)デバイス等の電子機器、シングルボードコンピュータ等が用いられてもよい。
【0026】
基地局2は、端末局4と通信を行う通信局である。基地局2は、端末局4に信号を送信する第1通信局BSであってもよいが、端末局4から送信される信号を受信する第2通信局UEであってもよい。また、基地局2は、中継局3を介して、端末局4と非再生中継通信を行ってもよい。基地局2は、通信信号を処理するための無線機21と、無線機21と接続される通信を制御するための制御回路22と、無線機21と接続される信号を送受信するためのアンテナ23とを備える。基地局2は、アレイアンテナ等のように2以上のアンテナ23を備えてもよい。
【0027】
端末局4は、例えばノート型のパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等の無線通信可能な端末装置で構成されている。端末局4は、基地局2に信号を送信する第1通信局BSであってもよいが、基地局2から送信された信号を受信する第2通信局UEであってもよい。端末局4は、通信信号を処理するための無線機41と、無線機41と接続される通信を制御するための制御回路42と、無線機41と接続される信号を送受信するためのアンテナ43とを備える。端末局4は、アレイアンテナ等のように2以上のアンテナ43を備えてもよい。
【0028】
中継局3は、基地局2と端末局4との間において、いわゆるリピータとしての役割を果たし、インターネット等を始めとした公衆通信網との間において、インタフェースとしての役割を果たすものである。即ち、中継局3は、これを介して、基地局2と端末局4とがインターネット等を始めとした公衆通信網との間でデータの送受信を行うことを可能とするための中継手段を担うものである。
【0029】
次に図2を参照して、本実施形態における制御装置1の一例を説明する。図2(a)は、本実施形態における制御装置1の構成の一例を示す模式図であり、図2(b)は、本実施形態における制御装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0030】
制御装置1は、例えば図2(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。CPU101と、ROM102と、RAM103と、保存部104と、I/F105~107とは、内部バス110により接続される。
【0031】
CPU101は、制御装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、各種情報が保存される。保存部104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(Solid State Drive)やSDカード、miniSDカード等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば制御装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0032】
I/F105は、通信網を介して各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、制御装置1を利用するユーザ等は、入力部108を介して、各種情報又は制御装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された特定結果等の各種情報、または制御装置1の処理状況等を出力する。表示部109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0033】
表示部109は、各種情報を表示する。表示部109は、例えば非再生中継通信を行う中継局3の情報等を表示する。
【0034】
図2(b)は、制御装置1の機能の一例を示す模式図である。制御装置1は、取得部11と、算出部12と、選択部13と、記憶部14と、出力部15と、判断部16とを備える。なお、図2(b)に示した、取得部11と、算出部12と、選択部13と、記憶部14と、出力部15と、判断部16とは、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に保存されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能により制御されてもよい。
【0035】
取得部11は、各種情報を取得する。取得部11は、例えば中継局3から送信され、基地局2が受信したリファレンス信号等の情報を取得する。なお、取得部11が各種情報を取得する頻度、及び周期は、任意である。
【0036】
算出部12は、取得部11により取得された情報を処理する。算出部12は、例えば取得部11により取得したリファレンス信号の情報に基づいて、信号対雑音比、又は伝搬遅延を算出する。算出部12は、中継局3と第1通信局BSとの間の通信において送信又は受信された信号に基づいて、第1通信局BSと中継局3との間の通信における第1信号対雑音比ΓBSRiと、第1通信局BSと中継局3との間の通信における遅延を示す第1伝搬遅延τBSRiとを算出する。算出部12は、中継局3と第2通信局UEとの間の通信において送信又は受信された信号に基づいて、第2通信局UEと中継局3との間の通信における第2信号対雑音比ΓUERiと、第2通信局UEと中継局3との間の通信における遅延を示す第2伝搬遅延τUERiとを算出する。算出部12は、2以上の中継局3と第1通信局BSとの間の通信において送信又は受信された信号に基づいて、2以上の中継局3と第1通信局BSとの間の各通信路による通信信号の変化を示す第1通信路行列HRBSを算出する。算出部12は、2以上の第2通信局UEと第1通信局BSとの間の通信において送信又は受信された信号に基づいて、2以上の第2通信局UEと第1通信局BSとの間の各通信路による通信信号の変化を示す第2通信路行列を算出する。算出部12は、例えば算出された第1通信路行列HRBSから第1通信局BSと2以上の中継局3との間の通信におけるそれぞれの第3信号対雑音比と、算出された第2通信路行列から第1通信局BSと2以上の第2通信局UEとの間の通信におけるそれぞれの第4信号対雑音比とを算出する。算出部12は、例えば中継局3と第1通信局BSとの間の通信において送信又は受信された信号に基づいて、通信における自己干渉を処理するための遅延を示す処理遅延τR,iを算出する。算出部12は、例えば算出された第1伝搬遅延τBSRiと、算出された処理遅延τR,iとに基づいて、中継局3と第2通信局UEとの間の通信における遅延の許容量を示す許容遅延τUER,maxを算出する。
【0037】
選択部13は、算出部12により算出された信号雑音比に基づいて、非再生中継通信を行う中継局3を選択する。選択部13は、例えば、算出部12により算出されたそれぞれの第3信号対雑音比とそれぞれの第4信号対雑音比とに基づいて、2以上の中継局及び2以上の第2通信局UEのうちから、非再生中継通信を行う第2通信局UEと中継局3とを選択する。
【0038】
判断部16は、算出部12により算出された伝搬遅延と信号雑音比とに基づいて、非再生中継通信を行うかを判断する。判断部16は、例えば算出部12により算出された第1信号対雑音比ΓBSRiと第1伝搬遅延τBSRiと第2信号対雑音比ΓUERiと第2伝搬遅延τUERiとに基づいて、非再生中継通信を行うかを判断する。
【0039】
記憶部14は、保存部104に保存された各種情報を必要に応じて取り出す。記憶部14は、取得部11と、算出部12と、選択部13と、判断部16とにより取得又は出力された各種情報を、保存部104に保存する。
【0040】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、例えばI/F105を介して、基地局2に非再生中継通信の制御命令を送信する。
【0041】
図3(a)は、本実施形態におけるアンテナが1つの場合の中継局3の構成の一例を示す模式図である。中継局3は、通信信号を処理するための無線機31と、無線機31と接続される通信を制御するための制御回路32と、無線機31と接続される信号を送受信するためのアンテナ33とを備える。
【0042】
無線機31は、アンテナ33に接続されるサーキュレータ311と、サーキュレータ311と接続される受信機313と、受信機313と接続されるADC(Analog Digital Converter)314と、ADC314と接続されるベースバンド信号処理回路315と、ベースバンド信号処理回路315に接続される制御回路32と、ベースバンド信号処理回路315と接続されるDAC(Digital Analog Converter)316と、DAC316と接続される送信機317と、送信機317と受信機313とに接続される干渉除去回路312とを備える。
【0043】
サーキュレータ311は、受信機313に信号を出力する。サーキュレータ311のアイソレーションは約30dBであるが。この限りではなく、任意のアイソレーションの値であってもよい。
【0044】
受信機313は、信号を受信する装置である。受信機313は、受信した信号をADC314に出力する。
【0045】
ADC314は、出力されたアナログ信号デジタル信号に変換する。ADC314は、変換したデジタル信号をベースバンド信号処理回路315に出力する。
【0046】
ベースバンド信号処理回路315は、出力されたデジタル信号をフィルタリングするFIR(Finite Impulse Response)フィルタである。ベースバンド信号処理回路315は、フィルタリングした信号を制御回路32に出力する。また、ベースバンド信号処理回路315は、制御回路32から出力された自己干渉を抑制するための信号をDAC316に出力してもよい。
【0047】
DAC316は、出力された信号をアナログ信号に変換する。DAC316は、変換したアナログ信号を送信機317に出力する。
【0048】
送信機317は、ベースバンド信号のアナログ信号をアップコンバートし、アンテナ33を介して、信号を送信する。また、送信機317は、自己干渉を抑制するための信号を干渉除去回路312に出力してもよい。
【0049】
干渉除去回路312は、IS(Interference suppression)である。干渉除去回路312は、自己干渉を抑制するための信号を受信機313が受信する信号と合成し、自己干渉を抑制する。
【0050】
図3(b)は、本実施形態におけるアンテナが2つの場合の中継局3の構成の一例を示す模式図である。中継局3は、無線機31と、無線機31と接続される制御回路32と、無線機31と接続される複数のアンテナ33とを備える。また、中継局3は、例えばアンテナ33としてアレイアンテナを用いてもよい。
【0051】
無線機31は、それぞれのアンテナ33に独立して接続される複数のサーキュレータ311と、それぞれのサーキュレータ311に独立して接続される複数の受信機313と、それぞれの受信機313に独立して接続される複数のADC(Analog Digital Converter)314と、各ADC314と接続されるベースバンド信号処理回路315と、ベースバンド信号処理回路315に接続される制御回路32と、ベースバンド信号処理回路315と接続される複数のDAC(Digital Analog Converter)316と、それぞれのDAC316に独立して接続される複数の送信機317と、それぞれの送信機317とそれぞれの受信機313と独立して接続される複数の干渉除去回路312とを備える。
【0052】
図4は、本実施形態におけるベースバンド信号処理回路315の構成の一例を示す模式図である。図4において、wk,nDは、k番目(k=1~Nant)のアンテナ33に対するデジタルフィルタの係数(複素数)を示し、wRX,kとwTX,kとは、それぞれ受信時、送信時のアンテナ33の重みを示す。また、Dは遅延器320を示す。ベースバンド信号処理回路315は、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタであり、有限インパルス応答を利用したフィルタである。中継局3のk番目のアンテナに対するベースバンド信号処理回路315は、ND,k段の遅延器320と複素数の重みベクトルwk={wk,0,・・・,wk,ND,k-1]によって構成される。遅延器320の段数ND,kと重みwkとは、制御回路32において求める。タップ数に拘束条件を設けた最適化を行うことにより、処理遅延τR,iをコントロールすることが可能となる。また、ベースバンド信号処理回路315は、与えられた遅延時間Δiを満たすよう、FIRフィルタの遅延器320を増やしてもよい。
【0053】
次に、非再生中継通信システム100の処理の動作について図5を用いて説明する。まずステップS1において、非再生中継通信を行うための中継として候補となる2以上の中継局3及び低遅延の非再生中継通信を求める2以上の第2通信局UEは、上り回線リファレンス信号を第1通信局BSへ送信する。かかる場合、第1通信局BSは、基地局2であってもよいし、端末局4であってもよい。また、第2通信局UEは、基地局2であってもよいし、端末局4であってもよい。ステップS1において、第1通信局BSは、上り回線リファレンス信号を受信し、2以上の中継局3と第1通信局BSとの間の各通信路による通信信号の変化を示す第1通信路行列HRBSと、第1通信局BSと2以上の第2通信局UEとの間の各通信路による通信信号の変化を示す第2通信路行列HUEBSと、を計測する。第1通信局BSは、第1通信路行列HRBSと第2通信路行列HUEBSとを制御装置1へ通知する。通信路行列Hは、複素数の伝搬路応答であり、例えば受信信号をYRBSとし、送信信号をXRBSとして、YRBS=HRBSRBSで示すことができる。
【0054】
また、ステップS1において、中継局3は、全二重通信を用いる場合、リファレンス信号を送信する際に、アンテナから送信された信号が受信機に回り込み、自己干渉が発生する。ステップS1において、中継局3は、リファレンス信号に基づいて、通信における自己干渉を処理するための遅延を示す処理遅延τR,iを算出する。中継局3は、リファレンス信号から自己干渉を計測し、干渉抑圧のためのRF及びデジタルの各フィルタを設定し、処理遅延τR,iを算出する。中継局3は、例えばベースバンド信号処理回路315を用いて、処理遅延τR,iを算出する。このため、全二重通信を用いた場合においても自己干渉の抑制が可能となる。
【0055】
次に、ステップS2において、制御装置1は、ステップS1により通知された第1通信路行列HRBSから、第1通信局BSと2以上の中継局3との間の通信におけるそれぞれの第3信号対雑音比を算出する。ステップS2において、制御装置1は、ステップS1により通知された第2通信路行列HUEBSから、第1通信局BSと2以上の第2通信局UEとの間の通信におけるそれぞれの第4信号対雑音比を算出する。ステップS2において、制御装置1は、それぞれの第3信号対雑音比とそれぞれの第4信号対雑音比とに基づいて、2以上の中継局3及び2以上の第2通信局UEのうちから、非再生中継通信を行う第2通信局UEと中継局3とを選択する。かかる場合、制御装置1は、それぞれの第3信号対雑音比が閾値よりも大きい中継局3を選択し、第4信号対雑音比が閾値よりも小さい第2通信局UEを選択する。例えば制御装置1は、算出した第4信号対雑音比が低遅延の非再生中継通信を行うための所望値ΓLよりも低い場合、♯j(j=0~NUE-1)の第2通信局UEを中継対象とする。制御装置1は、算出した第3信号対雑音比が所望値ΓR=ΓL+MRより大きい場合、♯i(i=0~NR-1)の中継局3を中継対象とする。かかる場合、♯は番号を示す。ここで、MRは第3信号対雑音比が所望値に付加するマージンを示す。信号対雑音比は、信号に対する雑音の量を示す比である。信号雑音比は、例えば信号雑音電力比、信号雑音振幅比等であってもよい。
【0056】
次に、ステップS3において、制御装置1は、第1通信局BSから中継局3に対して、非再生中継通信の許可と中継対象とする第2通信局UEの所望信号対雑音比ΓL,jを通知する。
【0057】
次に、ステップS4において、中継局3は、ステップS3により通知された通知用信号から第1通信局BSと中継局3との間の通信における第1信号対雑音比ΓBSRiと、第1通信局BSと中継局3との間の通信における遅延を示す第1伝搬遅延τBSRiとを算出する。また、ステップS4において、中継局3は、第1伝搬遅延τBSRiと、ステップS1により算出された処理遅延τR,iとに基づいて、中継局3と第2通信局UEとの間の通信における遅延の許容量を示す許容遅延τUER,maxを算出してもよい。かかる場合、式(1)を用いて、許容遅延τUER,maxを算出してもよい。
【数1】
【0058】
かかる場合、TCPは、サイクリックプレフィックス長、δは、計測偏差マージンを示す。
【0059】
また、ステップS4において、中継局3として複数のアンテナ33を備える中継局3を用いる場合、ステップS3により通知された通知用信号から、第1通信局BSと中継局3との間におけるアンテナ重みwRBS=(wRBS,0,wRBS,1,・・・,wRBS,Nant1)を最適化し、第1信号対雑音比ΓBSRiと、第1伝搬遅延τBSRiとを算出する。
【0060】
次に、ステップS5において、中継局3は、リファレンス信号に基づいて、第2通信局UEと中継局3との間の通信における第2信号対雑音比ΓUERiと、第2通信局UEと中継局3との間の通信における遅延を示す第2伝搬遅延τUERiとを算出する。かかる場合、i番目の中継局3は、j番目の第2通信局UEからの上り回線リファレンス信号を受信し、上り回線リファレンス信号に基づいて、第2信号対雑音比ΓUERiと第2伝搬遅延τUERiを算出する。
【0061】
また、ステップS5において、中継局3として複数のアンテナ33を備える中継局3を用いる場合、中継局3は、リファレンス信号に基づいて、第2通信局UEと中継局3との間におけるアンテナ重みwRUEを最適化し、第2信号対雑音比ΓUERiと、第2伝搬遅延τUERiとを算出する。
【0062】
次に、ステップS6において、ステップS4により算出された第1信号対雑音比ΓBSRiと第1伝搬遅延τBSRiと、ステップS5により算出された第2信号対雑音比ΓUERiと第2伝搬遅延τUERiとに基づいて、非再生中継通信を行うかを判断する。また、ステップS6において、算出した許容遅延τUER,maxと、第1信号対雑音比ΓBSRiと第2信号対雑音比ΓUERiと第2伝搬遅延τUERiとに基づいて、非再生中継通信を行うかを判断する。かかる場合、中継局3は、算出した許容遅延τUER,maxが第2伝搬遅延τUERi以上であり、第1信号対雑音比ΓBSRiと第2信号対雑音比ΓUERiとが閾値以上である場合、非再生中継通信を行ってもよい。例えば中継局3は、式(2)を満たす場合、非再生中継通信を実行すると判断してもよい。
【数2】
【0063】
ステップS7において、ステップS6により非再生中継通信を実行すると判断された場合、中継局3を介して、第1通信局BSと第2通信局UEとの間の非再生中継通信を行う。また、ステップS7において、非再生中継通信を行う際、中継先の第2通信局UEが信号を受信する際、サイクリックプレックス長TCPの時間内に収まるよう、付加的な遅延時間?iを中継局♯iで加えて送信してもよい。
【0064】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 制御装置
2 基地局
3 中継局
4 端末局
5 中央基地局
6 分散基地局
10 筐体
11 取得部
12 算出部
13 選択部
14 記憶部
15 出力部
16 判断部
21 無線機
22 制御回路
23 アンテナ
31 無線機
32 制御回路
33 アンテナ
41 無線機
42 制御回路
43 アンテナ
100 非再生中継通信システム
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 保存部
105 I/F
106 I/F
107 I/F
108 入力部
109 表示部
110 内部バス
311 サーキュレータ
312 干渉除去回路
313 受信機
314 ADC
315 ベースバンド信号処理回路
316 DAC
317 送信機
320 遅延器
BS 第1通信局
UE 第2通信局
図1
図2
図3
図4
図5