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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024272
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ブレーキスイッチ故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20240215BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
B60T7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126994
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】栗田 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 平
【テーマコード(参考)】
3D049
3D124
【Fターム(参考)】
3D049BB02
3D049HH39
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049RR01
3D049RR05
3D124AA32
3D124BB01
3D124CC15
3D124CC19
3D124DD44
3D124DD54
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブレーキスイッチの故障判定を高精度に行うこと。
【解決手段】ブレーキスイッチ故障診断装置1は、車両の減速度が所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、ブレーキスイッチON状態であると推定するON状態推定部101と、ブレーキスイッチON状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づき、ブレーキスイッチ51,52の故障判定を行う第1判定部102と、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速がそれぞれ所定値よりも大きい場合に、ブレーキスイッチOFF状態であると推定するOFF状態推定部103と、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づき、ブレーキスイッチ51,52の故障判定を行う第2判定部104と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速に基づき、車両の減速度が所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、正常時ではブレーキスイッチがON状態となるブレーキスイッチON状態であると推定する第1推定部と、
前記ブレーキスイッチON状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチの状態に基づき、ブレーキスイッチの故障判定を行う第1判定部と、
前記ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速がそれぞれ所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、正常時ではブレーキスイッチがOFF状態となるブレーキスイッチOFF状態であると推定する第2推定部と、
前記ブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチの状態に基づき、ブレーキスイッチの故障判定を行う第2判定部と、を備えるブレーキスイッチ故障診断装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記2つのブレーキスイッチがいずれもOFFである場合に、前記2つのブレーキスイッチがいずれも故障していると判定し、
前記第2判定部は、前記2つのブレーキスイッチがいずれもONである場合に、前記2つのブレーキスイッチがいずれも故障していると判定する、請求項1記載のブレーキスイッチ故障診断装置。
【請求項3】
前記第1判定部は、前記2つのブレーキスイッチに含まれるいずれかのブレーキスイッチがOFFである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定し、
前記第2判定部は、前記2つのブレーキスイッチに含まれるいずれかのブレーキスイッチがONである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定する、請求項2記載のブレーキスイッチ故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、ブレーキスイッチ故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのブレーキスイッチの出力信号の不一致検出を行い、不一致が検出された場合に、ブレーキスイッチが故障していると判定するブレーキスイッチ故障診断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-137432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ブレーキスイッチの故障を判定する場合においては、各種パラメータから推定されるブレーキの状態と、ブレーキスイッチの状態とが一致しているか否かを考慮して、ブレーキスイッチが故障しているか否かを判定することが考えられる。しかしながら、このような判定を実施する場合において、例えば、ドライバが減速する意図なくブレーキに足を置いた状態(足置き状態)や、坂道発進にてドライバがブレーキとアクセルとを同時に踏んだ状態では、誤判定が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、ブレーキスイッチの故障判定を高精度に行うことができるブレーキスイッチ故障診断装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るブレーキスイッチ故障診断装置は、車速に基づき、車両の減速度が所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、正常時ではブレーキスイッチがON状態となるブレーキスイッチON状態であると推定する第1推定部と、ブレーキスイッチON状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチの状態に基づき、ブレーキスイッチの故障判定を行う第1判定部と、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速がそれぞれ所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、正常時ではブレーキスイッチがOFF状態となるブレーキスイッチOFF状態であると推定する第2推定部と、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチの状態に基づき、ブレーキスイッチの故障判定を行う第2判定部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係るブレーキスイッチ故障診断装置では、ブレーキスイッチON状態であると推定された場合、及び、ブレーキスイッチOFF状態であると推定された場合のそれぞれにおいて、2つのブレーキスイッチの状態に基づきブレーキスイッチの故障判定が行われる。ここで、本ブレーキスイッチ故障診断装置では、車両の減速度に基づきブレーキスイッチON状態が推定される。このような構成によれば、例えば車両がリターダー等の補助ブレーキ作動時よりも強い減速度が発生しており、確実にブレーキスイッチがONになっていると想定される場合に、ブレーキスイッチON状態であると推定することができる。これにより、ブレーキスイッチON状態でのブレーキスイッチの故障判定を適切に行うことができる。また、本ブレーキスイッチ故障診断装置では、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速に基づきブレーキスイッチOFF状態が推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定された時点からすぐには、ドライバが減速する意図なくブレーキに足を置いた状態(足置き状態)とされることはないと考えられる。このため、ブレーキスイッチOFF状態とされ得る時間帯を、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内に限定することにより、足置き状態等の影響を受けることなく、ブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定を適切に行うことができる。そして、アクセル開度及び車速に基づきブレーキスイッチOFF状態が推定されることにより、アクセル開度及び車速が十分に大きく確実にブレーキスイッチがOFFになっていると想定される場合にブレーキスイッチOFF状態であると推定することができる。これにより、例えば坂道発進のようにドライバがブレーキとアクセルとを同時に踏んでいるような場合にブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定が行われることがなく、ブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定を適切に行うことができる。以上のように、本発明の一態様に係るブレーキスイッチ故障診断装置によれば、ブレーキスイッチON状態及びブレーキスイッチOFF状態のそれぞれにおいて、誤判定となることを防止しながら、ブレーキスイッチの故障判定を高精度に行うことができる。また、このような故障診断装置においては、例えばブレーキスイッチのストローク差が異なっていても、故障判定を実施できるロバスト性があり、ハードウェアスイッチの精度に依存することなく故障判定を実施することができる。すなわち、コストアップすることなく故障判定を実施することができる。
【0008】
第1判定部は、2つのブレーキスイッチがいずれもOFFである場合に、2つのブレーキスイッチがいずれも故障していると判定し、第2判定部は、2つのブレーキスイッチがいずれもONである場合に、2つのブレーキスイッチがいずれも故障していると判定してもよい。例えば、2つのブレーキスイッチの出力信号の不一致を検出することによって、ブレーキスイッチの片側の故障を判定することができるが、このような方法では2つのブレーキスイッチが両方とも故障している場合に、故障を判定できない(誤判定が生じる)。この点、ブレーキスイッチON状態であると推定されているのに2つのブレーキスイッチがいずれもOFFである場合や、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されているのに2つのブレーキスイッチがいずれもONである場合に、2つのブレーキスイッチが両方とも故障していると判定されることにより、2つのブレーキスイッチが両方とも故障している場合においても適切に故障判定を行うことができる。
【0009】
第1判定部は、2つのブレーキスイッチに含まれるいずれかのブレーキスイッチがOFFである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定し、第2判定部は、2つのブレーキスイッチに含まれるいずれかのブレーキスイッチがONである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定してもよい。これにより、片側のブレーキスイッチが故障している場合に、適切に故障判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ブレーキスイッチの故障判定を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るブレーキスイッチ故障診断装置の機能を示すブロック図である。
図2】ブレーキスイッチの正常時及び異常時の状態を示す表である。
図3】正常時のブレーキスイッチの状態を示すグラフである。
図4】異常時のブレーキスイッチの状態を示すグラフである。
図5】ブレーキスイッチ故障診断装置により実行される処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るブレーキスイッチ故障診断装置1の機能を示すブロック図である。ブレーキスイッチ故障診断装置1は、車両ブレーキ装置に含まれる2つのブレーキスイッチ51,52の故障診断(故障判定)を行う装置である。2つのブレーキスイッチ51,52は、ドライバによるブレーキペダルの踏み込みに応じて、ON信号又はOFF信号を出力する構成である。ブレーキスイッチ51,52は、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出可能な位置(すなわちブレーキペダルの近傍)に設けられている。ブレーキスイッチ51,52の出力信号は、ECU10に入力される。
【0014】
ECU10は、マイクロコンピュータを有すると共に、RAMやROM等の記憶素子を有する電子制御ユニットである。図1に示されるように、ECU10は、その機能的構成要素として、ON状態推定部101(第1推定部)と、第1判定部102と、OFF状態推定部103(第2推定部)と、第2判定部104と、を備えている。
【0015】
ON状態推定部101は、車速センサ60から取得される車速に基づき、車両の減速度が所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、「ブレーキスイッチON状態」であると推定する。ON状態推定部101は、車速センサ60より車速を取得する。ここでの「ブレーキスイッチON状態」とは、ブレーキスイッチ51,52が故障していない正常時においてブレーキスイッチ51,52がON状態となっている(すなわち、ブレーキスイッチ51,52がON信号を出力する)状態である。ブレーキスイッチ51,52がON信号を出力する状態とは、ドライバによってブレーキペダルが踏み込まれている状態である。ここでの減速度の所定値は、例えばリターダー等の補助ブレーキ作動時よりも強い減速度(すなわち、ブレーキペダルが十分に踏み込まれていると想定される場合の減速度)の値とされる。このように減速度の所定値が設定されることにより、正常時であれば確実にブレーキスイッチ51,52がON状態になっていると想定される場合に「ブレーキスイッチON状態」と判定することができる。
【0016】
第1判定部102は、ON状態推定部101によってブレーキスイッチON状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づき、ブレーキスイッチ51,52の故障判定を行う。第1判定部102は、ブレーキスイッチON状態であると推定されている場合において、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもOFF信号を出力している場合、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれも故障していると判定する。また、第1判定部102は、ブレーキスイッチON状態であると推定されている場合において、2つのブレーキスイッチ51,52の一方がON信号を出力し他方がOFF信号を出力している場合、OFF信号を出力しているブレーキスイッチが故障していると判定する。
【0017】
OFF状態推定部103は、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速がそれぞれ所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、「ブレーキスイッチOFF状態」であると推定する。OFF状態推定部103は、アクセル開度センサ70よりアクセル開度を取得する。OFF状態推定部103は、車速センサ60より車速を取得する。ここでの「ブレーキスイッチOFF状態」とは、ブレーキスイッチ51,52が故障していない正常時においてブレーキスイッチ51,52がOFF状態となっている(すなわち、ブレーキスイッチ51,52がOFF信号を出力する)状態である。ブレーキスイッチ51,52がOFF信号を出力する状態とは、ドライバによってブレーキペダルが踏み込まれていない状態である。ここでの所定時間は、ブレーキスイッチON状態となった後においてドライバが減速する意図なくブレーキペダルに足を置いた状態(足置き状態)とされることはないと考えられる程度の短い時間とされる。また、ここでのアクセル開度及び車速の所定値は、例えば坂道発進等の際とは異なり十分に加速している場合の値とされる。このようにアクセル開度及び車速の所定値が設定されることにより、正常時であれば確実にブレーキスイッチ51,52がOFF状態になっていると想定される場合に「ブレーキスイッチOFF状態」と判定することができる。
【0018】
第2判定部104は、OFF状態推定部103によってブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づき、ブレーキスイッチ51,52の故障判定を行う。第2判定部104は、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合において、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもON信号を出力している場合、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれも故障していると判定する。また、第2判定部104は、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合において、2つのブレーキスイッチ51,52の一方がON信号を出力し他方がOFF信号を出力している場合、ON信号を出力しているブレーキスイッチが故障していると判定する。
【0019】
図2は、ブレーキスイッチの正常時及び異常時の状態を示す表である。図2において「Actual」と記載した行は、ブレーキスイッチON状態と推定された状況であるか、ブレーキスイッチOFF状態と推定された状況であるかを示している。「Actual」と記載した行における「1」は、ブレーキスイッチON状態と推定された状況であることを示している。また、「Actual」と記載した行における「0」は、ブレーキスイッチOFF状態と推定された状況であることを示している。「ブレーキスイッチI」と記載した行は、ブレーキスイッチ51の実際の状態を示している。「ブレーキスイッチII」と記載した行は、ブレーキスイッチ52の実際の状態を示している。「ブレーキスイッチI」と記載した行及び「ブレーキスイッチII」と記載した行における「1」は対応するブレーキスイッチがON信号を出力していることを示しており、「0」は対応するブレーキスイッチがOFF信号を出力していることを示している。
【0020】
図2における「Normal」と記載した列は、正常時のブレーキスイッチ51,52の状態を示している。「Normal」と記載した列に示されるように、正常時においては、ブレーキスイッチON状態と推定される場合にはブレーキスイッチ51,52共に「1」(ON信号が出力)となり、ブレーキスイッチOFF状態と推定される場合にはブレーキスイッチ51,52共に「0」(OFF信号が出力)となる。
【0021】
図3は、正常時のブレーキスイッチ51,52等の状態を示すグラフである。図4は、異常時(故障時)のブレーキスイッチ51,52等の状態を示すグラフである。図3及び図4では、横軸に時間、縦軸に車速、アクセル開度、ブレーキ踏力、ブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI)、及びブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)のそれぞれの状態が示されている。
【0022】
図3を参照して、正常時におけるブレーキスイッチ51,52等の状態について説明する。図3に示される例では、時刻t1においてアクセル開度が大きくなり、その後車速が徐々に大きくなっている。そして、時刻t2においてアクセル開度が小さくされると共に、ドライバがブレーキペダルに足を置いた足置き状態とされてブレーキ踏力が大きくなっている。そのため、その後にブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI)からON信号が出力されている。本ブレーキスイッチ故障診断装置1では、このような足置き状態においてブレーキスイッチの故障判定が実施されることを回避するために、ブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定を行う期間が、「ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内」に限定されている。いま、ブレーキスイッチON状態(車両の減速度が所定値よりも大きい)と推定され時点から所定時間内ではないため、時刻t2の後における足置き状態ではブレーキスイッチの故障判定が行われない。
【0023】
その後、車両の減速が開始され、時刻t3において、車速に基づき車両の減速度が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチON状態であると推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定されると、2つのブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI),ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)の故障判定が行われる。いま、ブレーキスイッチON状態において、いずれのブレーキスイッチ51,52からもON信号が出力されているので、この時点でブレーキスイッチ51,52が故障しているとは判定されない(判定保留とされる)。なお、この時点ではブレーキスイッチON状態でのブレーキスイッチ51,52の状態しか判明していないため、判定保留とされている。
【0024】
そして、ブレーキスイッチON状態であると推定されてから所定時間内である時刻t4において、アクセル開度及び車速が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチOFF状態であると推定される。ブレーキスイッチOFF状態であると推定されると、2つのブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI),ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)の故障判定が行われる。いま、ブレーキスイッチOFF状態において、いずれのブレーキスイッチ51,52からもOFF信号が出力されているので、ブレーキスイッチOFF状態においてもブレーキスイッチ51,52が正常であると判定される。そして、ブレーキスイッチON状態及びブレーキスイッチOFF状態の双方でブレーキスイッチ51,52が正常であることが確認されて、正常判定がなされる。
【0025】
つづいて、図4を参照して、異常時におけるブレーキスイッチ51,52等の状態について説明する。
【0026】
図4(a)は、ブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI)がOFFの状態で固定されてしまっている故障(ブレーキスイッチIOFF固着)が生じている場合のブレーキスイッチ51,52等の状態を示している。なお、ブレーキスイッチIOFF固着の場合においてブレーキスイッチ51,52から出力される信号がON信号(「1」)であるかOFF信号(「0」)であるかについては、図2の「ブレーキスイッチI failure」「Stuck off」列に示されている。
【0027】
図4(a)に示される例では、時刻t5において、車速に基づき車両の減速度が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチON状態であると推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定されると、2つのブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI),ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)の故障判定が行われる。いま、ブレーキスイッチON状態において、ブレーキスイッチ52からは正常にON信号が出力されているが、ブレーキスイッチ51からはOFF信号(「0」)が出力されている。この場合、ブレーキスイッチ51がOFFの状態で固定されており、ブレーキスイッチ51が故障しているとして、異常判定がなされる。なお、ブレーキスイッチIOFF固着の場合においては、時刻t6以降においてブレーキスイッチOFF状態での故障判定が行われても、ブレーキスイッチ51,52の異常が検出されない。
【0028】
図4(b)は、ブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI)がONの状態で固定されてしまっている故障(ブレーキスイッチION固着)が生じている場合のブレーキスイッチ51,52等の状態を示している。なお、ブレーキスイッチION固着の場合においてブレーキスイッチ51,52から出力される信号がON信号(「1」)であるかOFF信号(「0」)であるかについては、図2の「ブレーキスイッチI failure」「Stuck on」列に示されている。
【0029】
図4(b)に示される例では、時刻t7において、車速に基づき車両の減速度が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチON状態であると推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定されると、2つのブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI),ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)の故障判定が行われる。いま、ブレーキスイッチON状態において、いずれのブレーキスイッチ51,52からもON信号が出力されているので、この時点でブレーキスイッチ51,52が故障しているとは判定されない(判定保留とされる)。そして、ブレーキスイッチON状態であると推定されてから所定時間内である時刻t8において、アクセル開度及び車速が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチOFF状態であると推定される。いま、ブレーキスイッチOFF状態において、ブレーキスイッチ52からは正常にOFF信号が出力されているが、ブレーキスイッチ51からはON信号(「1」)が出力されている。この場合、ブレーキスイッチ51がONの状態で固定されており、ブレーキスイッチ51が故障しているとして、異常判定がなされる。
【0030】
図4(c)は、ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)がOFFの状態で固定されてしまっている故障(ブレーキスイッチIIOFF固着)が生じている場合のブレーキスイッチ51,52等の状態を示している。なお、ブレーキスイッチIIOFF固着の場合においてブレーキスイッチ51,52から出力される信号がON信号(「1」)であるかOFF信号(「0」)であるかについては、図2の「ブレーキスイッチII failure」「Stuck off」列に示されている。
【0031】
図4(c)に示される例では、時刻t9において、車速に基づき車両の減速度が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチON状態であると推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定されると、2つのブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI),ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)の故障判定が行われる。いま、ブレーキスイッチON状態において、ブレーキスイッチ51からは正常にON信号が出力されているが、ブレーキスイッチ52からはOFF信号(「0」)が出力されている。この場合、ブレーキスイッチ52がOFFの状態で固定されており、ブレーキスイッチ52が故障しているとして、異常判定がなされる。なお、ブレーキスイッチIIOFF固着の場合においては、時刻t10以降においてブレーキスイッチOFF状態での故障判定が行われても、ブレーキスイッチ51,52の異常が検出されない。
【0032】
図4(d)は、ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)がONの状態で固定されてしまっている故障(ブレーキスイッチIION固着)が生じている場合のブレーキスイッチ51,52等の状態を示している。なお、ブレーキスイッチIION固着の場合においてブレーキスイッチ51,52から出力される信号がON信号(「1」)であるかOFF信号(「0」)であるかについては、図2の「ブレーキスイッチII failure」「Stuck on」列に示されている。
【0033】
図4(d)に示される例では、時刻t11において、車速に基づき車両の減速度が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチON状態であると推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定されると、2つのブレーキスイッチ51(ブレーキスイッチI),ブレーキスイッチ52(ブレーキスイッチII)の故障判定が行われる。いま、ブレーキスイッチON状態において、いずれのブレーキスイッチ51,52からもON信号が出力されているので、この時点でブレーキスイッチ51,52が故障しているとは判定されない(判定保留とされる)。そして、ブレーキスイッチON状態であると推定されてから所定時間内である時刻t12において、アクセル開度及び車速が所定値よりも大きくなると、ブレーキスイッチOFF状態であると推定される。いま、ブレーキスイッチOFF状態において、ブレーキスイッチ51からは正常にOFF信号が出力されているが、ブレーキスイッチ52からはON信号(「1」)が出力されている。この場合、ブレーキスイッチ52がONの状態で固定されており、ブレーキスイッチ52が故障しているとして、異常判定がなされる。
【0034】
次に、図5を参照して、ブレーキスイッチ故障診断装置1により実行される処理の手順について説明する。
【0035】
図5に示されるように、最初に車速センサ60より車速が取得される(ステップS1)。つづいて、ブレーキスイッチON状態であるか否かが判定される(ステップS2)。具体的には、ブレーキスイッチ故障診断装置1は、車速の減速度が所定値よりも大きい場合に、ブレーキスイッチON状態であると判定する。ステップS2においてブレーキスイッチON状態ではないと判定された場合には、再度ステップS1の処理から実施される。
【0036】
一方で、ステップS2においてブレーキスイッチON状態であると判定された場合には、ブレーキスイッチON状態におけるブレーキスイッチ51,52の故障判定が実施される(ステップS3)。具体的には、ブレーキスイッチ故障診断装置1は、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもOFFである場合にブレーキスイッチ51,52がいずれも故障していると判定する。また、ブレーキスイッチ故障診断装置1は、2つのブレーキスイッチ51,52に含まれるいずれかのブレーキスイッチがOFFである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定する。
【0037】
つづいて、ブレーキスイッチON状態であると判定されてから所定時間経過前であるか否かが判定される(ステップS4)。ステップS4においてブレーキスイッチON状態であると判定されてから所定時間が経過していると判定された場合には、再度ステップS1の処理から実施される。一方で、ステップS4において所定時間経過前であると判定された場合には、アクセル開度センサ70よりアクセル開度が取得されると共に、車速センサ60より車速が取得される(ステップS5)。
【0038】
つづいて、ブレーキスイッチOFF状態であるか否かが判定される(ステップS6)。具体的には、ブレーキスイッチ故障診断装置1は、アクセル開度及び車速が所定値よりも大きい場合に、ブレーキスイッチOFF状態であると判定する。ステップS6においてブレーキスイッチOFF状態ではないと判定された場合には、再度ステップS4の処理から実施される。
【0039】
一方で、ステップS6においてブレーキスイッチOFF状態であると判定された場合には、ブレーキスイッチOFF状態におけるブレーキスイッチ51,52の故障判定が実施される(ステップS7)。具体的には、ブレーキスイッチ故障診断装置1は、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもONである場合にブレーキスイッチ51,52がいずれも故障していると判定する。また、ブレーキスイッチ故障診断装置1は、2つのブレーキスイッチ51,52に含まれるいずれかのブレーキスイッチがONである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定する。
【0040】
最後に、ステップS3及びステップS7の故障判定結果に基づき、故障判定結果が出力される(ステップS8)。
【0041】
次に、本実施形態に係るブレーキスイッチ故障診断装置1の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態に係るブレーキスイッチ故障診断装置1は、車速に基づき、車両の減速度が所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、正常時ではブレーキスイッチがON状態となるブレーキスイッチON状態であると推定するON状態推定部101と、ブレーキスイッチON状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づき、ブレーキスイッチ51,52の故障判定を行う第1判定部102と、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速がそれぞれ所定値よりも大きいか否かを判定し、大きい場合に、正常時ではブレーキスイッチがOFF状態となるブレーキスイッチOFF状態であると推定するOFF状態推定部103と、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されている場合に、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づき、ブレーキスイッチ51,52の故障判定を行う第2判定部104と、を備える。
【0043】
本実施形態に係るブレーキスイッチ故障診断装置1では、ブレーキスイッチON状態であると推定された場合、及び、ブレーキスイッチOFF状態であると推定された場合のそれぞれにおいて、2つのブレーキスイッチ51,52の状態に基づきブレーキスイッチ51,52の故障判定が行われる。ここで、本ブレーキスイッチ故障診断装置1では、車両の減速度に基づきブレーキスイッチON状態が推定される。このような構成によれば、例えば車両がリターダー等の補助ブレーキ作動時よりも強い減速度が発生しており、確実にブレーキスイッチがONになっていると想定される場合に、ブレーキスイッチON状態であると推定することができる。これにより、ブレーキスイッチON状態でのブレーキスイッチの故障判定を適切に行うことができる。また、本ブレーキスイッチ故障診断装置1では、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内におけるアクセル開度及び車速に基づきブレーキスイッチOFF状態が推定される。ブレーキスイッチON状態であると推定された時点からすぐには、ドライバが減速する意図なくブレーキに足を置いた状態(足置き状態)とされることはないと考えられる。このため、ブレーキスイッチOFF状態とされ得る時間帯を、ブレーキスイッチON状態であると推定された時点から所定時間内に限定することにより、足置き状態等の影響を受けることなく、ブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定を適切に行うことができる。そして、アクセル開度及び車速に基づきブレーキスイッチOFF状態が推定されることにより、アクセル開度及び車速が十分に大きく確実にブレーキスイッチがOFFになっていると想定される場合にブレーキスイッチOFF状態であると推定することができる。これにより、例えば坂道発進のようにドライバがブレーキとアクセルとを同時に踏んでいるような場合にブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定が行われることがなく、ブレーキスイッチOFF状態でのブレーキスイッチの故障判定を適切に行うことができる。以上のように、本実施形態に係るブレーキスイッチ故障診断装置1によれば、ブレーキスイッチON状態及びブレーキスイッチOFF状態のそれぞれにおいて、誤判定となることを防止しながら、ブレーキスイッチの故障判定を高精度に行うことができる。
【0044】
第1判定部102は、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもOFFである場合に、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれも故障していると判定し、第2判定部104は、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもONである場合に、2つのブレーキスイッチ51,52がいずれも故障していると判定してもよい。例えば、2つのブレーキスイッチ51,52の出力信号の不一致を検出することによって、ブレーキスイッチの片側の故障を判定することができるが、このような方法では2つのブレーキスイッチが両方とも故障している場合に、故障を判定できない(誤判定が生じる)。この点、ブレーキスイッチON状態であると推定されているのに2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもOFFである場合や、ブレーキスイッチOFF状態であると推定されているのに2つのブレーキスイッチ51,52がいずれもONである場合に、2つのブレーキスイッチ51,52が両方とも故障していると判定されることにより、2つのブレーキスイッチ51,52が両方とも故障している場合においても適切に故障判定を行うことができる。
【0045】
第1判定部102は、2つのブレーキスイッチ51,52に含まれるいずれかのブレーキスイッチがOFFである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定し、第2判定部104は、2つのブレーキスイッチ51,52に含まれるいずれかのブレーキスイッチがONである場合に、該ブレーキスイッチが故障していると判定してもよい。これにより、片側のブレーキスイッチが故障している場合に、適切に故障判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1…ブレーキスイッチ故障診断装置、51,52…ブレーキスイッチ、101…ON状態推定部(第1推定部)、102…第1判定部、103…OFF状態推定部(第2推定部)、104…第2判定部。
図1
図2
図3
図4
図5