(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024274
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
B60L 9/00 20190101AFI20240215BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240215BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240215BHJP
B60L 13/00 20060101ALI20240215BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240215BHJP
【FI】
B60L9/00
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L13/00 E
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127000
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】滝本 裕貴
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105BA02
5H105BB07
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA11
5H125CD04
5H125FF16
(57)【要約】
【課題】移動体の移動経路に沿って配置された給電線から電力を受け取って移動体の電気的負荷に電力を供給すると共に、給電線から電力を受け取れない場合には外部電源から電気的負荷に適切に電力を供給できる電源装置を提供する。
【解決手段】移動体30に搭載された電源装置1は、移動体30の移動経路に沿って配置された給電線に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせるピックアップコイル40と、交流電力を直流電力に変換する受電回路4と、受電回路4の出力側に接続されたキャパシタ5と、受電回路4及びキャパシタ5と電気的負荷LDとの間に設けられたサーキットプロテクタCP1と、サーキットプロテクタCP1と電気的負荷LDとの間の第1ノードN1に直流の外部電源6を接続可能に設けられた外部電源コネクタ7とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、前記移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受け、前記移動体の電気的負荷に電力を供給する電源装置であって、
前記給電線に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせるピックアップコイルと、
前記ピックアップコイルで受電した交流電力を直流電力に変換する受電回路と、
前記受電回路の出力側の正負両極間に接続されたキャパシタと、
前記受電回路及び前記キャパシタと前記電気的負荷との間に設けられたサーキットプロテクタと、
前記サーキットプロテクタと前記電気的負荷との間の第1ノードに直流の外部電源を接続可能に設けられた外部電源コネクタと、を備えた電源装置。
【請求項2】
前記第1ノードと、前記外部電源の内部回路との間に前記サーキットプロテクタとは異なる第2のサーキットプロテクタをさらに備える、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1ノードと前記電気的負荷との間に、前記移動体の制御装置により制御され、前記第1ノードと前記電気的負荷との間の電気的接続を遮断可能な電磁スイッチが接続されている、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記移動経路は、建物の天井に吊り下げられたレールにより構成され、
前記移動体は、前記レールに沿って移動して物品を搬送する天井搬送車であり、
前記移動経路の特定箇所に、前記移動経路から前記移動体を取り外すための昇降装置が設けられ、
前記外部電源は、前記移動体が前記昇降装置から取り外された場合に、前記外部電源コネクタに接続される、請求項1又は2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載され、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受けて移動体の電気的負荷に電力を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6586939号公報には、上記のような移動体の一例である天井搬送車(5)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。この天井搬送車(5)は、建物の天井に吊り下げられたレールにより構成された移動経路に沿って物品を搬送する。天井搬送車(5)の保守や修理等のメンテナンスの際には、メンテナンス用のリフタ(2)を使って、天井搬送車(5)が地上側に下ろされる。この時、天井搬送車(5)は、移動経路であるレール(4)から離間する。給電線は、レール(4)に沿って配置されているため、メンテナンスのために天井搬送車(5)が移動経路から離間した場合、給電線からも離間することになり、給電線からの電力の供給を受けることができなくなる。つまり、多くの場合、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受ける移動体は、メンテナンス時には、移動体が移動経路から離間させられるため、給電線を介して電力の供給を受けることが困難となる。
【0003】
特開2022-3858号公報には、給電線から非接触で電力の供給を受ける受電部(4)の一例が開示されている。この受電部(4)は、交流電力が伝送される給電線(11)から電磁誘導によって電力を受け取るピックアップコイル(40)と、ピックアップコイル(40)に誘導された交流を整流する全波整流回路(43)とを備えている。また、全波整流回路(43)により整流された直流に残留する脈動成分を平滑化すること、モータ(14)等の電気的負荷を動作させた場合の負荷変動により生じる変動を抑制すること、などを目的として、受電部(4)と電気的負荷との間には出力キャパシタ(8)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6586939号公報
【特許文献2】特開2022-3858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような移動体のメンテナンス時において、給電線を介して電力の供給を受けられなくなった場合には、例えば外部電源から移動体に電力が供給される。外部電源を移動体に接続する際には、移動体の出力キャパシタの残存電荷が多いと接点となるコネクタ等に急激に大きな電流が流れるおそれがある。このため、外部電源の接続をする前に、出力キャパシタの残存電荷を予め放電させることが好ましい。しかし、メンテナンスの都度、そのような放電処理を行うと、メンテナンス作業の効率が低下する。
【0006】
上記背景に鑑みて、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から電力を受け取って移動体の電気的負荷に電力を供給すると共に、給電線から電力を受け取れない場合には外部電源から電気的負荷に適切に電力を供給できる電源装置の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みた電源装置は、移動体に搭載され、前記移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受け、前記移動体の電気的負荷に電力を供給する電源装置であって、前記給電線に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせるピックアップコイルと、前記ピックアップコイルで受電した交流電力を直流電力に変換する受電回路と、前記受電回路の出力側の正負両極間に接続されたキャパシタと、前記受電回路及び前記キャパシタと前記電気的負荷との間に設けられたサーキットプロテクタと、前記サーキットプロテクタと前記電気的負荷との間の第1ノードに直流の外部電源を接続可能に設けられた外部電源コネクタとを備える。
【0008】
本構成によれば、外部電源コネクタがキャパシタに対してサーキットプロテクタを挟んで電気的負荷の側に設けられているため、例えばサーキットプロテクタにより受電回路と電気的負荷との間の電気的接続を遮断してからであれば、キャパシタの残留電荷を放電することなく、外部電源コネクタに外部電源を接続しても、キャパシタから外部電源に大きな電流が流れ込むことを抑制することができる。保守や修理等のために移動体に外部電源を接続する際に、キャパシタの残存電荷を放電させる放電処理を行わなくとも、移動体に外部電源を接続する作業の安全性を保つことができるため、作業効率を高めることができる。このように、本構成によれば、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から電力を受け取って移動体の電気的負荷に電力を供給すると共に、給電線から電力を受け取れない場合には外部電源から電気的負荷に適切に電力を供給できる電源装置を提供することができる。
【0009】
電源装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】受電回路の一例を模式的に示す回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、移動体に搭載され、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受けて移動体の電気的負荷に電力を供給する電源装置の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、
図1、
図2等に示すように、建物の天井に吊り下げられたレール20を移動経路10とし、当該レール20に沿って移動して物品を搬送する天井搬送車30を移動体の一例として説明する。移動体としての物品搬送車は、このような天井搬送車に限らず、床面に設置されたレールを移動経路とし、当該レールに沿って移動して物品を搬送する床上搬送車やスタッカークレーンなどの他の物品搬送車であってもよい。また、移動体は、複数段の物品収納棚の各段において、物品収納棚の前面に水平に配置されたレールを走行して物品を搬送する物品搬送車であってもよい。また、当然ながら、移動体は、物品搬送車に限定されるものでもなく、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受けて移動体の電気的負荷に電力を供給する電源装置を備えていればよい。
【0012】
図1は、天井搬送車30が用いられる物品搬送設備100の一例を示している。物品搬送設備100は、天井搬送車30と、その走行経路である移動経路10に沿って配置されたレール20とを備えている。天井搬送車30は、レール20に案内されて移動経路10に沿って走行する。天井搬送車30による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。物品搬送設備100には、半導体基板を収容する不図示の収容庫や、半導体基板に回路等を形成するための種々の処理を施す物品処理部Pも備えられている。
【0013】
図2に示すように、天井搬送車30は、移動経路10に沿って天井から吊り下げ支持されて配置された一対のレール20に案内されて移動経路10に沿って走行する走行部12と、レール20の下方に位置して走行部12に吊り下げ支持された本体部13と、移動経路10に沿って配設された給電線3から非接触で駆動用電力を受電する受電回路4を含む受電装置とを備えている。詳細な説明は省略するが、本体部13には、把持部により物品を把持する把持部を備え、物品を吊り下げ状態で支持して、本体部13に対して昇降自在に構成された物品支持部が備えられている。天井搬送車30は、例えば、物品処理部Pの物品載置台に載置された物品を把持部により把持して吊り上げ、当該物品を吊り下げ支持した状態で走行して当該物品を搬送し、別の物品処理部Pの物品載置台に当該物品を載置する。
【0014】
走行部12には、
図2に示すように、電動式の駆動モータ14にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行輪15は、レール20のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、走行部12には、上下方向Vに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪16が、一対のレール20における内側面に当接する状態で備えられている。また、走行部12は、走行用の駆動モータ14やその駆動回路等を備えて構成されており、天井搬送車30をレール20に沿って走行させる。本体部13には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている(何れも不図示)。これらの駆動モータ14や、アクチュエータ、駆動回路等は、天井搬送車30における電気的負荷である。尚、駆動回路等は、制御装置31(
図5参照)により制御される。
【0015】
これらの駆動モータ14や、種々のアクチュエータ、これらを駆動する駆動回路等への電力は、給電線3から非接触で受電回路4(
図3参照)に供給される。上述したように、受電回路4を介して天井搬送車30に駆動用電力を供給する給電線3は、移動経路10に沿って配設されている。物品搬送設備100には、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いた非接触給電設備が備えられ、天井搬送車30の電気的負荷に駆動用電力を供給する。非接触給電設備は、給電線3と、給電線3に接続されて給電線3に交流電流を供給する電源装置(不図示)とを備えている。
【0016】
図3に示すように、受電回路4は、給電線3に対向するように天井搬送車30に配置されたピックアップコイル40(
図2参照)と、天井搬送車30の内部において配線基板上に形成された整流回路43等の電源回路とを備えている。上述したように、給電装置は、誘導線である給電線3に高周波電流を流し、給電線3の周囲に磁界を発生させる。ピックアップコイル40は、給電線3に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせる。
図3に示すように、このピックアップコイル40に対して受電回路4が電気的に接続されており、受電回路4に消費電力が変動する電気的負荷LDが電気的に接続されている。
【0017】
受電回路4には、ピックアップコイル40と共に構成される共振回路42の一部と、整流回路43とが形成されている。詳細な構成については説明を省略するが、受電回路4には、さらに、整流後の直流電圧を一定の規定電圧に安定化させるためのレギュレーション回路や、電圧を昇圧する昇圧回路、電圧を降圧する降圧回路などの電圧調整回路45が含まれていてもよい。1つの態様として、電圧調整回路45は、例えばチョッパ回路などにより構成することができる。共振回路42は、ピックアップコイル40と共振コンデンサ41との並列回路として形成されており、共振コンデンサ41が配線基板上に実装されている。ここでは、共振回路として並列共振回路を例示しているが、共振回路は、直列共振回路によって構成されていてもよい。
【0018】
整流回路43は、この共振回路42(共振コンデンサ41)に対して並列に接続されている。整流回路43は、ピックアップコイル40に接続されて(共振回路42に接続されて)、ピックアップコイル40に誘導された交流電流及び交流電圧を、直流電流及び直流電圧に整流する。本実施形態では、整流回路43は全波整流回路である形態を例示している。当業者であれば容易に理解可能であるため、図示及び詳細な説明は省略するが、整流回路43は、半波整流回路であってもよい。また、受電回路4に共振回路が構成されることなく、ピックアップコイル40に誘導された交流が整流回路43によって整流される形態であってもよい。
【0019】
図3に示すように、受電回路4の出力側の正負両極間にはキャパシタ5が接続されている。キャパシタ5は、受電回路4により生成される直流電圧の変動や電気的負荷LDの負荷変動の影響により受電回路4から出力される直流電圧の変動を抑制するために設けられている。天井搬送車30は、レール20上を走行するため、天井搬送車30に搭載されたピックアップコイル40とレール20に沿って配設された給電線3との距離は変動する。また、
図1に示すように移動経路10は直線経路のみではなく曲線経路も含む。天井搬送車30が曲線経路を走行する場合と、直線経路を走行する場合とにおいても、給電線3とピックアップコイル40との間の距離が異なる可能性がある。ピックアップコイル40に誘導される電圧は、給電線3とピックアップコイル40との距離によっても異なる。従って、受電回路4によって生成される直流電圧も変動する場合がある。キャパシタ5は、このような場合に、受電回路4により生成される直流電圧の変動を抑制して一定の電圧に保つように機能する。
【0020】
また、上述したように、電気的負荷LDは、消費電力が変動する。特に、消費電力が一時的に大きくなり、電気的負荷LDに流れる電流が増加すると、受電回路4から出力される直流電圧が低下するおそれがある。このような場合に、キャパシタ5に蓄えられた電荷により電気的負荷LDが一時的に消費する電流を補い、直流電圧の低下が抑制される。つまり、キャパシタ5は、電気的負荷LDの消費電力が変動した場合に、受電回路4から出力される直流電圧の変動を抑制して一定の電圧に保つようにも機能する。
【0021】
ところで、天井搬送車30には定期的な保守や、故障の修理等のメンテナンスが必要な場合がある。そして、メンテナンスが実施される際には、
図4に例示するように、天井搬送車30を昇降させることのできる昇降機構83を備えたメンテナンス用のリフタであるメンテナンスリフタ8を使って、天井搬送車30が地上側に下ろされる。メンテナンスリフタ8は、移動経路10から移動体としての天井搬送車30を取り外すための昇降装置であり、移動経路10の特定箇所に設けられている。メンテナンス対象の天井搬送車30は、当該特定箇所まで移動し、特定箇所に設置されたメンテナンスリフタ8によって移動経路10から取り外されて地上側に下ろされる。
【0022】
この時、天井搬送車30は、移動経路であるレール20から離間し、メンテナンスリフタ8に支持されて昇降する昇降レール22に走行輪15が載置支持された状態で地上側に下ろされる。地上側に下ろされた天井搬送車30は、天井搬送車30を支持した状態で床面上を移動可能なメンテナンス台車9に移動されることで任意の作業場所への移動が可能である。地上に降りた天井搬送車30の走行輪15が、昇降レール22、メンテナンスリフタ8の支柱81に設けられた乗継レール24、メンテナンス台車9に設けられた台車レール26の上を順に転動することによって、メンテナンスリフタ8からメンテナンス台車9へ天井搬送車30が移動する。メンテナンス台車9は、作業者による手動により天井搬送車30を載置支持して移動可能である。当然ながら、メンテナンス台車9は、人力のみではなくモータによる補助も使って移動可能であってもよい。
【0023】
ここで、給電線3は、レール20に沿って配置されているため、メンテナンスのために天井搬送車30がレール20から離間した場合、給電線3からも離間することになり、給電線3からの電力の供給を受けることができなくなる。つまり、移動経路10に沿って配置された給電線3から非接触で電力の供給を受ける天井搬送車30は、メンテナンス時には、天井搬送車30が移動経路10としてのレール20から離間させられるため、給電線3を介して電力の供給を受けることが困難となる。
【0024】
尚、床面に設置されたレール上を走行する床上搬送車やスタッカークレーンの場合も移動経路10から外れた位置に移動させられた場合には、レールに沿って配設された給電線3からの電力供給は受けることができなくなる。また、複数段の物品収納棚の各段において水平に設置されたレール上を移動する物品搬送車も、当該レールから取り外された場合には、レールに沿って配設された給電線3からの電力供給は受けることができなくなる。それぞれの物品搬送車を移動経路から取り外すためのメンテナンス設備は、種々存在するため、ここではそれぞれについての詳細な説明は省略する。しかし、移動体が何れのような形態であっても、メンテナンス時に、移動経路10から離間させられると、給電線3を介して電力の供給を受けることが困難となることは同様である。
【0025】
そこで、このようなメンテナンス時において、給電線3を介して電力の供給を受けられなくなった場合には、
図5に示すように外部電源6から天井搬送車30に電力が供給される。このため、上述した受電回路4を含む、天井搬送車30の電源装置1は、
図5に示すように外部電源6を接続可能なように構成されている。即ち、電源装置1は、給電線3に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせるピックアップコイル40と、ピックアップコイル40で受電した交流電力を直流電力に変換する受電回路4と、受電回路4の出力側の正負両極間に接続されたキャパシタ5と、受電回路4及びキャパシタ5と電気的負荷LDとの間に設けられたサーキットプロテクタCP1と、サーキットプロテクタCP1と電気的負荷LDとの間の第1ノードN1に直流の外部電源6を接続可能に設けられた外部電源コネクタ7とを備えて構成されている。
【0026】
外部電源6は、例えば商用電源に接続されて、天井搬送車30の受電回路4が生成する電圧と同電圧の電圧を生成する電源回路60と、外部電源コネクタ7に接続される出力コネクタ67とを備えて構成されている。出力コネクタ67と外部電源コネクタ7とが接続されることにより、外部電源6から天井搬送車30に電力の供給が可能となる。外部電源6は、例えば、天井搬送車30がメンテナンスリフタ8から取り外された場合に、外部電源コネクタ7に接続される。
【0027】
図6は、比較例としての電源装置1を例示している。この比較例の電源装置1も、ピックアップコイル40と、受電回路4と、キャパシタ5と、サーキットプロテクタCP1と、外部電源コネクタ7とを備えて構成されている。但し、
図5に示す本実施形態の電源装置1とは異なり、外部電源コネクタ7は、サーキットプロテクタCP1と電気的負荷LDとの間の第1ノードN1ではなく、受電回路4とサーキットプロテクタCP1との間の第2ノードN2、つまり、キャパシタ5の正極側に直流の外部電源6を接続可能に設けられている。
【0028】
比較例の電源装置1のように、キャパシタ5の正極側に直流の外部電源6を接続する場合、キャパシタ5の残存電荷が多いと、外部電源コネクタ7に外部電源6を接続した際に、キャパシタ5から外部電源6に大きな電流が流れ込むおそれがある。このため、外部電源6の接続に際しては、予めキャパシタ5を放電させる放電処理を行っておくことが好ましい。また、目視で残存電荷の量を確認することはできないため、キャパシタ5の残存電荷が少ない場合であっても、放電処理を省略することは好ましくない。例えば、少なくともキャパシタ5の端子間電圧を測定するなどの確認作業は必要である。
【0029】
これに対して、本実施形態の電源装置1では、キャパシタ5の正極と、外部電源コネクタ7との間に、サーキットプロテクタCP1を備えている。このため、例えば、サーキットプロテクタCP1を作業者による手動操作によって開放状態にしておけば、キャパシタ5と外部電源6との電気的接続を予め遮断しておくことができる。従って、キャパシタ5の残存電荷に拘わらず、キャパシタ5から流れ込む電流の大きさを考慮することなく、外部電源6を外部電源コネクタ7に接続することができる。また、サーキットプロテクタCP1を開放状態にしていない場合であっても、キャパシタ5の残存電荷が多く、キャパシタ5から大きな電流が流れた場合には、サーキットプロテクタCP1が保護動作をすることによって、外部電源6の故障につながるような電流が外部電源6に流れ込むことは抑制される。
【0030】
即ち、本実施形態の電源装置1は、比較例の電源装置1と比べて、保守や修理等のために移動体に外部電源を接続する際に、キャパシタ5の残存電荷を放電させる放電処理を行わなくとも、天井搬送車30に外部電源6を接続する作業の安全性を保つことができるため、作業効率を高めることができる。
【0031】
尚、サーキットプロテクタCP1が保護動作に至らない程度の電流が外部電源6に流れ込む可能性はあるため、外部電源6は、サーキットプロテクタCP1が保護動作を開始する程度の突入電流に対する耐性を有するものであることが好ましい。
【0032】
或いは、またはさらに、外部電源コネクタ7に外部電源6が接続された状態において、第1ノードN1と外部電源6の内部回路(例えば電源回路60)とを電気的に接続する経路上に、上述したサーキットプロテクタCP1とは異なる第2のサーキットプロテクタCP2が備えられていると好適である。サーキットプロテクタCP1は、天井搬送車30における受電回路4と電気的負荷LDとの間に設けられている。つまり、サーキットプロテクタCP1が保護動作を行う閾値電流の値は、受電回路4又は電気的負荷LDを保護するために、これらの電気的仕様に基づいて設定されている。このため、外部電源6には過電流ではあっても、受電回路4や電気的負荷LDにとっては許容可能な電流である場合には、サーキットプロテクタCP1において電気的接続が遮断されない場合もある。
【0033】
第1ノードN1と外部電源6の電源回路60とを電気的に接続する経路上に第2のサーキットプロテクタCP2を配置することによって、外部電源6の保護を対象として、外部電源6の仕様に応じた閾値電流の値を設定して、適切に保護動作を行うことが可能な保護回路を設けることができる。外部電源6を外部電源コネクタ7に接続した際に、キャパシタ5から過電流が流れたとしても、その過電流が外部電源6の内部回路に到達することを回避できる。従って、天井搬送車30に外部電源6を接続する際の作業の安全性を高めることができる。
【0034】
第2のサーキットプロテクタCP2は、
図5に示すように、外部電源6の側に設けても良いし、天井搬送車30の側に設けてもよい。つまり、外部電源6が、第1ノードN1と、外部電源6の内部回路との間にサーキットプロテクタCP1とは異なる第2のサーキットプロテクタCP2をさらに備えていてもよいし、移動体としての天井搬送車30が、第1ノードN1と、外部電源6の内部回路との間にサーキットプロテクタCP1とは異なる第2のサーキットプロテクタCP2をさらに備えていてもよい。外部電源6が、第2のサーキットプロテクタCP2を備える場合、出力コネクタ67と内部回路である電源回路60との間に第2のサーキットプロテクタCP2が配置されていると好適である。また、天井搬送車30が第2のサーキットプロテクタCP2を備える場合、第1ノードN1と外部電源コネクタ7との間に第2のサーキットプロテクタCP2が配置されていると好適である。何れの場合も、電源装置1は、第1ノードN1と、外部電源6の内部回路との間にサーキットプロテクタCP1とは異なる第2のサーキットプロテクタCP2を備えているということができる。
【0035】
尚、天井搬送車30に第2のサーキットプロテクタCP2を配置する場合には、全ての天井搬送車30に第2のサーキットプロテクタCP2を搭載することになる。一般的に物品搬送設備100において、メンテナンスの際にしか使用しない外部電源6は、天井搬送車30よりも台数が少ない。従って、外部電源6の側に第2のサーキットプロテクタCP2を配置する方が、コストを低減することができる。また、天井搬送車30の側に第2のサーキットプロテクタCP2が搭載されている場合、手動で電気的接続を遮断する際には、天井搬送車30のカバー等を外して操作を行う必要がある。しかし、外部電源6の側に第2のサーキットプロテクタCP2が搭載されている場合には、メンテナンス作業の際に作業者が容易に第2のサーキットプロテクタCP2を操作することができて好適である。
【0036】
尚、上述したように、第2のサーキットプロテクタCP2を備えていなくても、キャパシタ5の残留電荷を放電することなく、外部電源コネクタ7に外部電源6を接続しても、キャパシタ5から外部電源6に大きな電流が流れ込むことを抑制することができる。従って、当然ながら第2のサーキットプロテクタCP2を備えてない構成であってもよい。
【0037】
また、
図5に示すように、第1ノードN1と電気的負荷LDとの間には、天井搬送車30の制御装置31により制御され、第1ノードN1と電気的負荷LDとの間の電気的接続を遮断可能な電磁スイッチ(第1電磁スイッチMC1、第2電磁スイッチMC2)が接続されていると好適である。尚、制御装置31に対しても、受電回路4を介して電力が供給されるが、天井搬送車30は天井搬送車30への電力供給が遮断されても、一定時間は制御装置31に対して電力を供給可能なバックアップ電源(二次電池を含む蓄電装置や乾電池等の一次電池)等を備えていると好適である。このような制御装置31の動作電圧の定格値は、一般的に3.3ボルトから5ボルト程度である。また、消費電力も大きくはないから、小容量のバックアップ電源で充分である。
【0038】
電気的負荷LDへの電力供給を遮断したい場合、電磁スイッチが開状態となるように制御される。第1ノードN1と電気的負荷LDとの間に電磁スイッチが設けられていることにより、天井搬送車30が給電線3から電力の供給を受ける場合であっても、天井搬送車30が外部電源6から電力の供給を受ける場合であっても、電磁スイッチの制御によって電気的負荷LDへの電力供給を遮断することができる。即ち、天井搬送車30に外部電源6が接続された状態においても、通常時と同じ状態で天井搬送車30を動作させることができる。
【0039】
本実施形態では、何れか一方の電磁スイッチがいわゆるオン故障を生じて常時接続状態となって回路の開放ができなくなった場合でも、第1ノードN1と電気的負荷LDとの間の電気的接続を遮断できるように冗長性を持たせて、第1電磁スイッチMC1と第2電磁スイッチMC2とが直列に接続されている形態を例示している。しかし、第1ノードN1と電気的負荷LDとの間の電気的接続を遮断可能な電磁スイッチを備える場合に、必ず2つの電磁スイッチが直列に配置される必要はなく、1つの電磁スイッチのみを有する形態であってもよい。また、当然ながら3つ以上の電磁スイッチが直列に配置される形態を妨げるものでもない。
【0040】
また、当然ながら、電源装置1がこのような電磁スイッチを備えていない構成を妨げるものでもない。
【0041】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した電源装置の概要について簡単に説明する。
【0042】
1つの態様として、移動体に搭載され、前記移動体の移動経路に沿って配置された給電線から非接触で電力の供給を受け、前記移動体の電気的負荷に電力を供給する電源装置は、前記給電線に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせるピックアップコイルと、前記ピックアップコイルで受電した交流電力を直流電力に変換する受電回路と、前記受電回路の出力側の正負両極間に接続されたキャパシタと、前記受電回路及び前記キャパシタと前記電気的負荷との間に設けられたサーキットプロテクタと、前記サーキットプロテクタと前記電気的負荷との間の第1ノードに直流の外部電源を接続可能に設けられた外部電源コネクタとを備える。
【0043】
本構成によれば、外部電源コネクタがキャパシタに対してサーキットプロテクタを挟んで電気的負荷の側に設けられているため、例えばサーキットプロテクタにより受電回路と電気的負荷との間の電気的接続を遮断してからであれば、キャパシタの残留電荷を放電することなく、外部電源コネクタに外部電源を接続しても、キャパシタから外部電源に大きな電流が流れ込むことを抑制することができる。保守や修理等のために移動体に外部電源を接続する際に、キャパシタの残存電荷を放電させる放電処理を行わなくとも、移動体に外部電源を接続する作業の安全性を保つことができるため、作業効率を高めることができる。このように、本構成によれば、移動体の移動経路に沿って配置された給電線から電力を受け取って移動体の電気的負荷に電力を供給すると共に、給電線から電力を受け取れない場合には外部電源から電気的負荷に適切に電力を供給できる電源装置を提供することができる。
【0044】
また、前記第1ノードと、前記外部電源の内部回路との間に前記サーキットプロテクタとは異なる第2のサーキットプロテクタをさらに備えると好適である。
【0045】
本構成によれば、外部電源を外部電源コネクタに接続した際に、キャパシタから過電流が流れたとしても、その過電流が外部電源の内部回路に到達することを回避できる。従って、移動体に外部電源を接続する際の作業の安全性を高めることができる。
【0046】
また、前記第1ノードと前記電気的負荷との間に、前記移動体の制御装置により制御され、前記第1ノードと前記電気的負荷との間の電気的接続を遮断可能な電磁スイッチが接続されていると好適である。
【0047】
電気的負荷への電力供給を遮断したい場合、電磁スイッチが開状態となるように制御される。第1ノードと電気的負荷との間に電磁スイッチが設けられていることにより、移動体が給電線から電力の供給を受ける場合であっても、移動体が外部電源から電力の供給を受ける場合であっても、電磁スイッチの制御によって電気的負荷への電力供給を遮断することができる。即ち、この構成によれば、移動体に外部電源が接続された状態においても、通常時と同じ状態で移動体を動作させることができる。
【0048】
また、前記移動経路は、建物の天井に吊り下げられたレールにより構成され、前記移動体は、前記レールに沿って移動して物品を搬送する天井搬送車であり、前記移動経路の特定箇所に、前記移動経路から前記移動体を取り外すための昇降装置が設けられ、前記外部電源は、前記移動体が前記昇降装置から取り外された場合に、前記外部電源コネクタに接続されると好適である。
【0049】
本構成の電源装置は、移動体が天井搬送車である場合にも有用である。本構成によれば、保守や修理等のために、給電線が設けられたレールから天井搬送車を取り外した場合であっても、天井搬送車に電力を供給して各種の動作を行わせることができる。従って、保守や修理等の作業の効率を高め易い。
【符号の説明】
【0050】
1 :電源装置
3 :給電線
4 :受電回路
5 :キャパシタ
6 :外部電源
7 :外部電源コネクタ
8 :メンテナンスリフタ(昇降装置)
10 :移動経路
20 :レール
30 :天井搬送車(移動体)
31 :制御装置
40 :ピックアップコイル
60 :電源回路(外部電源の内部回路)
CP1 :サーキットプロテクタ
CP2 :第2のサーキットプロテクタ
LD :電気的負荷
MC1 :第1電磁スイッチ(電磁スイッチ)
MC2 :第2電磁スイッチ(電磁スイッチ)
N1 :第1ノード