(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024281
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】送信器、送信装置、通信装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20240215BHJP
H04B 10/50 20130101ALI20240215BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127020
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA26
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH27
5K102AL23
5K102PB01
5K102PC11
5K102PH01
5K102PH31
5K102RB02
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】雨などの外乱の影響を受けにくい指向性のある空間光信号を送信できる送信器等を提供する。
【解決手段】光源と、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定され、光源から出射された光が照射される変調部を有する空間光変調器と、空間光変調器の変調部で変調された変調光を拡散する光拡散器と、光拡散器によって拡散された変調光を拡大投射するボールレンズと、を備える送信器とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定され、前記光源から出射された光が照射される変調部を有する空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記変調部で変調された変調光を拡散する光拡散器と、
前記光拡散器によって拡散された前記変調光を拡大投射するボールレンズと、を備える送信器。
【請求項2】
前記光拡散器は、
前記空間光変調器の前記変調部で変調された前記変調光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズと前記ボールレンズとの間に配置され、前記集光レンズによって集光された前記変調光を拡散する透明拡散器と、を有する請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
前記光拡散器は、
前記空間光変調器の前記変調部で変調された前記変調光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズと前記ボールレンズとの間に配置され、前記集光レンズによって集光された前記変調光を複数の光束に分割する透過型の回折光学素子と、を有する請求項1に記載の送信器。
【請求項4】
前記空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有する反射鏡を備え、
前記反射鏡は、
前記空間光変調器の前記変調部と前記集光レンズの入射面とに、前記反射面を向けて配置される請求項2に記載の送信器。
【請求項5】
凹面状の拡散面を有し、前記空間光変調器の前記変調部と前記ボールレンズとに前記拡散面を向けて配置された反射型拡散器を備える請求項1に記載の送信器。
【請求項6】
前記空間光変調器の前記変調部で変調された前記変調光を複数の光束に分割する凹面状の回折反射面を有し、前記空間光変調器の前記変調部と前記ボールレンズとに前記回折反射面を向けて配置された反射型の回折光学素子を備える請求項1に記載の送信器。
【請求項7】
前記光拡散器は、
複数の光ファイバが束ねられたファイババンドルであり、
複数の前記光ファイバの入射端は、前記空間光変調器の前記変調部に向けて配置され、
複数の前記光ファイバの出射端は、前記ボールレンズに向けて配置される請求項1に記載の送信器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の送信器と、
前記送信器に含まれる空間光変調器の変調部に、空間光通信に用いられる位相画像を設定し、前記位相画像が設定された前記変調部に光が照射されるように前記送信器に含まれる光源を制御する制御手段と、を備える送信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の送信装置と、
空間光信号を受信する受信装置と、
前記受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得し、取得した前記信号に応じた処理を実行し、実行した前記処理に応じた空間光信号を前記送信装置に送信させる制御装置と、を備える通信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
空間光信号を互いに送受信し合うように配置された通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間を伝播する光信号を送信する送信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間光信号を広範囲に送信するためには、投射光の投射角ができるだけ大きい方が好ましい。例えば、位相変調型の空間光変調器を含む送信装置を用いれば、空間光変調器の変調部に設定されるパターンを制御することによって、投射角を広げることができる。送信装置を中心として多方向に空間光信号を送信できれば、空間光信号を用いた通信ネットワークを構築できる。
【0003】
特許文献1には、可視光通信用に構成された光源装置について開示されている。特許文献1の装置は、発光素子、経路、波長変換素子、ビーム整形機構、およびビームステアリング機構を備える。発光素子は、ドライバが供給する変調信号を用いて変調される第1ピーク波長の指向性電磁放射を出力する。波長変換素子は、指向性電磁放射を方向付ける経路に光学的に結合され、受光素子から指向性電磁放射を受け取る。波長変換素子は、第1ピーク波長を有する指向性電磁放射を、第1ピーク波長よりも長い第2ピーク波長に変換する。波長変換素子は、第2ピーク波長と部分的に第1ピーク波長とを含む白色スペクトルを出力する。ビーム整形機構は、白色スペクトルの角度分布を変更する。例えば、ビーム整形機構として、コリメートレンズや非球面レンズ、ボールレンズなどが用いられる。ビームステアリング機構は、目標物の周囲の空間的範囲内において白色スペクトルを走査し、第1ピーク波長の指向性電磁放射を目標物に指向させる。
【0004】
特許文献2には、レーザ光を変調した光を用いた画像投影装置について開示されている。特許文献2の装置は、光源、光変調器、フーリエ変換レンズ、スクリーン、および投影光学系を備える。光源は、レーザ光を出射する。光変調器は、光源から入射したレーザ光を、ホログラムデータに基づいて変調して出射する。フーリエ変換レンズは、光変調器からの出射光に対して、フーリエ変換を行う。光変調器から出射される0次光は、フーリエ変換レンズの後側焦点位置に集光する。1次回折光による像の結像位置は、ホログラムデータに基づいた変調により、フーリエ変換レンズの光軸上において、フーリエ変換レンズの後側焦点位置より後側の位置に設定される。スクリーンは、1次回折光による像の結像位置に配置される。投影光学系は、凹面鏡である。投影光学系は、スクリーンに結像した画像を、凹面状の反射面で反射することによって、投影画像を投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-536372号公報
【特許文献2】特開2016-176996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、第1ピーク波長および第2ピーク波長を含む白色スペクトルを用いて目標物を走査してから、その目標物に対して第1ピーク波長の指向性電磁放射を指向させる。特許文献1の装置は、ビーム整形機構を用いて、白色スペクトルの角度分布を変更する。特許文献1の装置は、屋内のような狭い空間において、画像を表示させる用途に用いることができる。しかし、屋外のような広い空間において、指向性のある空間光信号を通信対象に向けて送信する用途に、特許文献1の装置を適用することは難しかった。
【0007】
特許文献2の装置は、スクリーンに結像した画像を、凹面状の反射面で反射させて、拡大投影する。特許文献2の装置から投影された画像は、凹面状の反射面で拡大されて投影される。そのため、指向性のある空間光信号を通信対象に向けて送信する用途に、特許文献2の装置を適用することは難しかった。
【0008】
通信対象の位置が固定されている場合、空間光信号の光軸が一意に定まる。そのような場合、通信対象に向けて、ビーム径が太い空間光信号を送信できる。しかし、複数の通信装置や移動体との間における通信では、空間光信号の光軸が一意に定まらない。そのような場合、複数の通信対象に向けて空間光信号を放射するため、送信装置の付近において空間光信号のビーム径が細くなる。ビーム径の細い空間光信号は、雨などの外乱の影響によって、遠方の通信対象に届く前に減衰しやすい。
【0009】
本開示の目的は、雨などの外乱の影響を受けにくい指向性のある空間光信号を送信できる送信器等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の送信器は、光源と、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定され、光源から出射された光が照射される変調部を有する空間光変調器と、空間光変調器の変調部で変調された変調光を拡散する光拡散器と、光拡散器によって拡散された変調光を拡大投射するボールレンズと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、雨などの外乱の影響を受けにくい指向性のある空間光信号を送信できる送信器等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図2】第1の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図3】第1の実施形態の変形例1-1に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図4】第1の実施形態の変形例1-2に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例1-3に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例1-3に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図7】第2の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図8】第2の実施形態の変形例2-1に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図9】第3の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図10】第3の実施形態の変形例3-1に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図11】第4の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図12】第5の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図13】第5の実施形態に係る通信装置が備える受信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図14】第5の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図15】第5の実施形態の適用例1に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図16】第6の実施形態に係る送信器の構成の一例を示す概念図である。
【
図17】各実施形態における制御や処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0014】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。また、光の経路の一例を図示したり、構成が込み合ったりする等の理由により、断面にハッチングを施さない場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の送信装置は、空間を伝搬する光を送光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。なお、本実施形態の説明で用いられる図面は、概念的なものであり、実際の構造を正確に描写したものではない。
【0016】
(構成)
図1~
図2は、本実施形態に係る送信装置10の構成の一例を示す概念図である。送信装置10は、光源11、空間光変調器12、集光レンズ14、拡散器15、ボールレンズ16、および制御部17を備える。光源11、空間光変調器12、集光レンズ14、拡散器15、およびボールレンズ16は、送信器100を構成する。集光レンズ14および拡散器15は、光拡散器を構成する。
図1は、送信器100の内部構成を上方から見た平面図である。
図2は、送信器100の内部構成を側方から見た側面図である。
図1~
図2には、拡散器15の断面を示す。
図1~
図2は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。
【0017】
光源11は、制御部17の制御に応じて、光101を出射する。例えば、光源11は、コリメートレンズを含む。コリメートレンズを通せば、光101は、略平行光になる。略平行光は、平行光線ではない光線を含みうる。すなわち、略平行光は、平行光線のみならず、発散する光線や集光する光線を含みうる。光源11の光軸は、空間光変調器12の変調部120の面に対して、斜めに設定される。光源11は、制御部17の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。光源11から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、光源11は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~1000ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、可視光と比べてレーザクラスをあげられるので、可視光よりも感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、800~1000nmの近赤外線よりも、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線を出射するレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0018】
空間光変調器12は、光源11から出射された光101の光路に配置される。空間光変調器12は、変調部120を有する。変調部120には、変調領域が設定される。変調部120の変調領域には、制御部17の制御に応じて、投射光106によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部120には、光源11から出射された光101が照射される。変調部120に入射した光101は、変調部120に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。変調部120で変調された変調光102は、集光レンズ14の入射面に向けて進行する。
【0019】
例えば、空間光変調器12は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器12は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器12は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器12では、投射光106を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器12を用いる場合、光源11の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0020】
変調部120の変調領域は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調部120の変調領域は、所望のアスペクト比の矩形領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。変調部120の変調領域に設定された複数のタイルには、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。複数のタイルの各々に設定される位相画像は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
変調部120の変調領域に割り当てられた複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部120に光101が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光102が出射される。変調部120に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部120の変調領域に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0022】
集光レンズ14は、空間光変調器12と拡散器15の間に配置される。集光レンズ14の入射面は、空間光変調器12に向けられる。集光レンズ14の入射面には、空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102が入射する。集光レンズ14の出射面は、拡散器15に向けられる。集光レンズ14に入射した変調光102は、集光レンズ14の屈折率に応じて屈折されて、出射面から出射する。集光レンズ14から出射した変調光102は、拡散器15に向けて集光される。
【0023】
例えば、集光レンズ14は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、集光レンズ14は、可視領域の光を透過/屈折する材料によって実現できる。例えば、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスが、集光レンズ14に適用できる。例えば、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスが、集光レンズ14に適用できる。例えば、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスが、集光レンズ14に適用できる。例えば、石英ガラスが、集光レンズ14に適用できる。例えば、サファイア等の結晶が、集光レンズ14に適用できる。例えば、アクリル等の透明樹脂が、集光レンズ14に適用できる。
【0024】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、集光レンズ14には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、集光レンズ14には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、集光レンズ14には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、集光レンズ14には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、集光レンズ14の材質には限定を加えない。集光レンズ14の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0025】
拡散器15は、球冠状の形状を有する透過型の拡散器(透明拡散器とも呼ぶ)である。拡散器15の入射面(凸面)には、ランダムに配列された微小な凹レンズが、アレイ状に形成される。拡散器15には、集光レンズ14によって集光された変調光102が入射する。拡散器15は、アレイ状に形成された微小レンズによって、入射した変調光102を拡散する。拡散器15によって拡散された変調光102は、ボールレンズ16に向けて進行する。変調光102は、微小レンズが形成された位置において、拡散される。そのため、ボールレンズ16に入射させる変調光102の範囲は、微小レンズが形成される範囲に応じて、整形できる。
【0026】
拡散器15は、空間光信号が透過しやすい材質が好ましい。例えば、拡散器15は、ポリカーボネートやポリエステル、アクリル、ガラスなどの透明な基板を用いて形成できる。拡散器15の拡散角は、微小レンズの状態によって調整できる。拡散器15を通過後の変調光102の拡散角は、入射光の発散角の2乗と、拡散器15の拡散角の2乗との和の平方根の値に相当する。微小レンズのサイズが小さく、密度が大きいほど、拡散器15の拡散角が大きい。拡散器15を通過後の変調光102の拡散角は、ボールレンズ16の直径や、拡散器15とボールレンズ16との距離などに応じて、調整されればよい。
【0027】
ボールレンズ16は、球形のレンズである。ボールレンズ16は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ16には、拡散器15によって拡散された変調光102が入射する。ボールレンズ16は、入射した変調光102を、略平行光の投射光106に変換して出射する。ボールレンズ16から出射された投射光106は、通信対象(図示しない)に向けて進行する。投射光106は、進行に応じて、発散する光線や集束する光線を含む。投射光106は、送信装置10から送信された段階で、ボールレンズ16によってビーム径が拡大される。そのため、送信装置10と通信対象との間に、天候の影響で雨粒などが介在する場合であっても、投射光106は減衰しにくい。
【0028】
例えば、ボールレンズ16は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ16は、可視領域の光を透過/屈折する材料によって実現できる。例えば、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスが、ボールレンズ16に適用できる。例えば、BKなどのクラウンガラスが、ボールレンズ16に適用できる。例えば、LaSFなどのフリントガラスが、ボールレンズ16に適用できる。例えば、石英ガラスが、ボールレンズ16に適用できる。例えば、サファイア等の結晶が、ボールレンズ16に適用できる。例えば、アクリル等の透明樹脂が、ボールレンズ16に適用できる。
【0029】
空間光信号が近赤外線である場合、ボールレンズ16には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5μm程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ16には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ16には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ16には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ16の材質には限定を加えない。ボールレンズ16の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0030】
制御部17は、光源11および空間光変調器12を制御する。例えば、制御部17は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御部17は、空間光変調器12の変調部120に設定されたタイリングのアスペクト比に合わせて、投射される画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。制御部17は、空間光変調器12の変調部120に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。例えば、制御部17は、画像表示や通信、測距など、用途に応じた画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0031】
制御部17は、変調部120に照射される光101の位相と、その変調部120で反射される変調光102の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように、空間光変調器12を制御する。例えば、パラメータは、屈折率や光路長などの光学的特性に関する値である。例えば、制御部17は、空間光変調器12の変調部120に印加する電圧を変化させることによって、変調部120の屈折率を調節する。位相変調型の空間光変調器12の変調部120に照射された光101の位相分布は、変調部120の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部17による空間光変調器12の駆動方法は、空間光変調器12の変調方式に応じて決定される。
【0032】
制御部17は、表示される画像に対応する位相画像が変調部120に設定された状態で、光源11を駆動させる。その結果、空間光変調器12の変調部120に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源11から出射された光101が空間光変調器12の変調部120に照射される。空間光変調器12の変調部120に照射された光101は、空間光変調器12の変調部120において変調される。空間光変調器12の変調部120において変調された変調光102は、集光レンズ14の入射面に向けて出射される。
【0033】
また、制御部17は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源11から出射される光101を変調させる。通信において、制御部17は、通信用の位相画像を空間光変調器12の変調部120に設定した状態で、光源11から光101を出射させるタイミングを制御することで、光101を変調させる。通信における光101の変調パターンは、任意に設定される。例えば、制御部17とは別に、通信用の構成(通信部)が追加されてもよい。その場合、制御部17は、通信部によって設定された条件に応じて、光源11および空間光変調器12を制御するように構成されればよい。
【0034】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下においては、本実施形態に係る3つの変形例をあげる。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の変形例を限定するものではない。
【0035】
〔変形例1-1〕
変形例1-1は、複数の方向に向けて空間光信号が送信される例である。
図3は、変形例1-1に係る送信装置10-1の構成の一例を示す概念図である。送信装置10-1は、光源11-1、光源11-2、空間光変調器12、集光レンズ14、拡散器15、ボールレンズ16、および制御部17を備える。光源11-1、光源11-2、空間光変調器12、集光レンズ14、拡散器15、およびボールレンズ16は、送信器100-1を構成する。集光レンズ14および拡散器15は、光拡散器を構成する。
図3は、送信器100-1の内部構成を上方から見た平面図である。
図3には、拡散器15の断面を示す。
図3は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。光源11-1と光源11-2は、
図1~
図2の構成(光源11)と同様の構成である。空間光変調器12、集光レンズ14、拡散器15、ボールレンズ16、および制御部17は、
図1~
図2の構成と同様である。
【0036】
光源11-1は、制御部17の制御に応じて、光101-1を出射する。例えば、光源11-1は、コリメートレンズを含む。コリメートレンズを通せば、光101-1は、略平行光になる。
図2の例と同様に、光源11-1の光軸は、空間光変調器12の変調部120の面に対して、斜めに設定される。光源11-1から出射された光101-1は、空間光変調器12の変調部120に設定された第1変調領域に照射される。制御部17の制御に応じて、第1変調領域には、第1位相画像が設定される。光101-1は、第1変調領域に設定された第1位相画像に応じて、変調される。第1変調領域で変調された変調光102-1は、集光レンズ14で集光されて、拡散器15の凸面に入射する。拡散器15に入射した変調光102-1は、拡散器15で拡散されて、ボールレンズ16に入射する。ボールレンズ16に入射した変調光102-1は、ボールレンズ16で略平行光の投射光106-1に変換されて、空間光信号として送信される。
【0037】
光源11-2は、制御部17の制御に応じて、光101-2を出射する。例えば、光源11-2は、コリメートレンズを含む。コリメートレンズを通せば、光101-2は、略平行光になる。光源11-2は、光源11-1と同じ波長の光を出射するように構成されてもよいし、光源11-1とは異なる波長の光を出射するように構成されてもよい。
図2の例と同様に、光源11-2の光軸は、空間光変調器12の変調部120の面に対して、斜めに設定される。光源11-2から出射された光101-2は、空間光変調器12の変調部に設定された第2変調領域に照射される。第1変調領域と第2変調領域は、異なる領域である。例えば、第1変調領域と第2変調領域の間には、光が反射されない領域が設定される。制御部17の制御に応じて、第2変調領域には、第2位相画像が設定される。第2位相画像は、第1位相画像と同じでもよいし、第1位相画像とは異なっていてもよい。光101-2は、第1変調領域に設定された第2位相画像に応じて、変調される。第2変調領域で変調された変調光102-2は、集光レンズ14で集光されて、拡散器15に入射する。拡散器15に入射した変調光102-2は、拡散器15で拡散されて、ボールレンズ16に入射する。ボールレンズ16に入射した変調光102-2は、ボールレンズ16で略平行光の投射光106-2に変換されて、空間光信号として送信される。投射光106-2は、投射光106-1とは異なる方向に向けて、送信される。また、投射光106-2は、投射光106-1と同じ方向に向けて、送信されてもよい。
【0038】
本変形例では、複数の光源に由来する複数の空間光信号が、異なる方向に送信される。そのため、本変形例によれば、空間光信号の投射範囲において、複数の通信対象と通信できる。また、本変形例によれば、異なる波長の空間光信号を同じ方向に送信することによって、空間光信号の波長を多重化できる。
【0039】
〔変形例1-2〕
変形例1-2は、拡散器15の替わりに、回折光学素子18が配置される例である。
図4は、変形例1-2に係る送信装置10-2の構成の一例を示す概念図である。送信装置10-2は、光源11、空間光変調器12、集光レンズ14、回折光学素子18、ボールレンズ16、および制御部17を備える。光源11、空間光変調器12、集光レンズ14、回折光学素子18、およびボールレンズ16は、送信器100-2を構成する。集光レンズ14および回折光学素子18は、光拡散器を構成する。
図4は、送信器100-2の内部構成を上方から見た平面図である。
図4には、回折光学素子18の断面を示す。
図4は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。光源11、空間光変調器12、集光レンズ14、ボールレンズ16、および制御部17は、
図1~
図2の構成と同様である。
【0040】
回折光学素子18は、球冠状の形状を有する透過型の回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)である。回折光学素子18の表面には、サブミクロンオーダーの凹凸が形成される。回折光学素子18の表面の凹凸は、専用の金型を用いた立体的なナノインプリントによって形成できる。回折光学素子18の凸面は、集光レンズ14の出射面に向けられる。回折光学素子18の凹面は、ボールレンズ16に向けられる。
【0041】
回折光学素子18の凸面には、集光レンズ14によって集光された変調光102が入射する。回折光学素子18は、入射した変調光102を、複数の光束に分岐する。複数の光束に分岐した変調光102は、回折光学素子18の凹面からボールレンズ16に向けて、出射される。
【0042】
光源11は、制御部17の制御に応じて、光101を出射する。
図2の例と同様に、光源11の光軸は、空間光変調器12の変調部120の面に対して、斜めに設定される。光源11から出射された光101は、空間光変調器12の変調部120に照射される。制御部17の制御に応じて、変調部120には、位相画像が設定される。光101は、変調部120に設定された位相画像に応じて、変調される。変調部120で変調された変調光102は、集光レンズ14で集光されて、回折光学素子18の凸面に入射する。回折光学素子18に入射した変調光102は、回折光学素子18で複数の光束に分岐されて、回折光学素子18の凹面から出射される。回折光学素子18から出射された複数の光束は、ボールレンズ16に入射する。ボールレンズ16に入射した複数の光束は、ボールレンズ16で略平行光の投射光105に変換されて、複数の光束からなる空間光信号として送信される。
【0043】
本変形例では、複数の光束からなる空間光信号が、同じ方向に送信される。単一の光束と比べて、複数の光束の各々は、エネルギーが大きい。また、複数の光束の間には隙間が空いている。そのため、本変形例によれば、雨などの天候の影響によって減衰しにくく、ロバスト性の高い空間光信号を送信できる。例えば、複数の光束のうちいずれかが一時的に遮断されても、残りの光束が通信対象に届けば、その通信対象との通信を継続できる。
【0044】
〔変形例1-3〕
変形例1-3は、空間光変調器12と集光レンズ14との間に遮光器19が配置される例である。
図5は、変形例1-3に係る送信装置10-3の構成の一例を示す概念図である。送信装置10-3は、光源11、空間光変調器12、遮光器19、集光レンズ14、拡散器15、ボールレンズ16、および制御部17を備える。光源11、空間光変調器12、遮光器19、集光レンズ14、拡散器15、およびボールレンズ16は、送信器100-3を構成する。集光レンズ14および拡散器15は、光拡散器を構成する。
図5は、送信器100-3の内部構成を上方から見た平面図である。
図5は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。光源11、空間光変調器12、集光レンズ14、ボールレンズ16、および制御部17は、
図1~
図2の構成と同様である。
【0045】
遮光器19は、空間光変調器12と集光レンズ14との間に配置される。遮光器19には、投射光106として投射される変調光102を通過させる、開口が形成される。遮光器19は、変調光102に含まれる0次光を遮蔽する。また、遮光器19は、変調光102に含まれる高次画像を遮蔽する。すなわち、遮光器19は、変調光に含まれる0次光および高次画像を形成する光成分(不要光とも呼ぶ)を遮蔽する。
【0046】
図6は、送信器100-3の構成の一例を示す概念図である。
図6は、送信器100-3を空間光変調器の裏側から見下ろした図である。遮光器19における変調光102の照射範囲は、破線で示す領域R1の範囲内である。変調光102に含まれる0次光は、遮光器19のスポットS
0の位置に照射される。また、遮光器19の開口は、投射対象である0次画像に合わせて、形成される。そのため、変調光102に含まれる高次画像は、遮光器19の位置に照射される。そのため、遮光器19の開口を通過した変調光102には、0次光および高次画像を形成する不要項が含まれない。集光レンズ14における変調光102の照射範囲は、一点鎖線で示す領域R2の範囲内である。
【0047】
光源11は、制御部17の制御に応じて、光101を出射する。光源11の光軸は、空間光変調器12の変調部120の面に対して、斜めに設定される。光源11から出射された光101は、空間光変調器12の変調部120に照射される。制御部17の制御に応じて、変調部120には、位相画像が設定される。光101は、変調部120に設定された位相画像に応じて、変調される。変調部120で変調された変調光102のうち、遮光器19の開口を通過した変調光102は、集光レンズ14で集光されて、拡散器15の凸面に入射する。拡散器15に入射した変調光102-1は、拡散器15で拡散されて、ボールレンズ16に入射する。ボールレンズ16に入射した変調光102-1は、ボールレンズ16で略平行光の投射光106-3に変換されて、空間光信号として送信される。
【0048】
本変形例では、遮光器19によって、0次光や高次画像などの不要光が除去される。そのため、本変形例によれば、空間光信号に含まれうる雑音成分を除去することによって、高品質な空間光信号を送信できる。
【0049】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、集光レンズ、透明拡散器、ボールレンズ、および制御部を備える。光源、空間光変調器、集光レンズ、透明拡散器、およびボールレンズは、送信器を構成する。集光レンズおよび透明拡散器は、光拡散器を構成する。光源は、レーザ光を出射する出射器を含む。光源は、出射器から出射されたレーザ光に由来する光を出射する。空間光変調器は、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定される変調部を有する。変調部には、光源から出射された光が照射される。集光レンズは、空間光変調器の変調部で変調された変調光を集光する。透明拡散器は、集光レンズとボールレンズとの間に配置される。透明拡散器は、集光レンズによって集光された変調光を拡散する。ボールレンズは、透明拡散器によって拡散された変調光を拡大投射する。ボールレンズから拡大投射された変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)である。制御部は、送信器に含まれる空間光変調器の変調部に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、位相画像が設定された変調部に光が照射されるように、送信器に含まれる光源を制御する。
【0050】
本実施形態においては、光源から出射された光が、空間光変調器の変調部に照射される。変調部で変調された変調光は、集光レンズで一度集光された後に、透明拡散器で拡散されて、ビーム径が広がった状態でボールレンズに入射する。ボールレンズに入射した変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)として投射される。そのため、本実施形態の送信器から送信された空間光信号は、ビーム径が広げられずに送信された場合と比較して、送信直後のビーム径が大きく、雨などの外乱の影響を受けにくい。また、本実施形態の送信器から送信された空間光信号は、略平行光であるため、送信装置から離れても広がりにくく、指向性が高い。すなわち、本実施形態の送信器によれば、雨などの外乱の影響を受けにくい指向性のある空間光信号を送信できる。
【0051】
本実施形態の一態様の送信装置は、複数の光源を有する。空間光変調器の変調部には、光源ごとの位相画像が設定される変調領域が割り当てられる。例えば、隣接し合う変調領域の間には、複数の光源から出射された光が変調されない不感帯が設定される。複数の光源から出射された光は、個別に変調/拡散されて、異なる空間光信号として送信される。本態様によれば、複数の光源から出射された光に由来する空間光信号を、異なる通信対象に向けて送信できる。本態様によれば、複数の光源から出射された光に由来する空間光信号を、空間多重化させて、同じ通信対象に向けて送信できる。本態様によれば、複数の光源から出射された異なる波長帯の光に由来する空間光信号を、送信できる。複数の光源から出射された異なる波長帯の光に由来する空間光信号を、同じ通信対象に向けて送信すれば、空間光信号を波長多重化できる。
【0052】
本実施形態の一態様において、光拡散器は、集光レンズと透過型の回折光学素子を有する。集光レンズは、空間光変調器の変調部で変調された変調光を集光する。透過型の回折光学素子は、集光レンズとボールレンズとの間に配置される。透過型の回折光学素子は、集光レンズによって集光された変調光を複数の光束に分割する。本態様によれば、複数の光束からなる空間光信号が、同じ方向に送信される。単一の光束と比べて、複数の光束の各々は、エネルギーが大きい。また、複数の光束の間には隙間が空いている。そのため、本変形例によれば、雨などの天候の影響によって減衰しにくく、ロバスト性の高い空間光信号を送信できる。
【0053】
本実施形態の一態様の送信装置は、遮光器を備える。遮光器は、空間光変調器と集光レンズとの間に配置される。遮光器には、空間光信号として送信される変調光を通過させる開口が形成される。遮光器は、空間光変調器の変調部で変調された変調光のうち、0次光と高次画像を含む不要光を遮蔽する。遮光器を通過した変調光には、不要光が含まれない。本変形例によれば、空間光信号に含まれうる雑音成分を除去することによって、高品質な空間光信号を送信できる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、空間光変調器で変調された変調光を、反射鏡で拡大反射させて集光レンズに導光する点において、第1の実施形態の送信装置とは異なる。
【0055】
(構成)
図7は、本実施形態に係る送信装置20の構成の一例を示す概念図である。送信装置20は、光源21、空間光変調器22、反射鏡23、集光レンズ24、拡散器25、ボールレンズ26、および制御部27を備える。光源21、空間光変調器22、反射鏡23、集光レンズ24、拡散器25、およびボールレンズ26は、送信器200を構成する。集光レンズ24および拡散器25は、光拡散器を構成する。
図7は、送信器200の内部構成を側方から見た側面図である。
図7には、拡散器25の断面を示す。
図7は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。
【0056】
光源21は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。光源21は、制御部27の制御に応じて、光201を出射する。光源21の光軸は、空間光変調器22の変調部220の面に対して、斜めに設定される。光源21は、制御部27の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。
【0057】
空間光変調器22は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。空間光変調器22は、光源21から出射された光201の光路に配置される。空間光変調器22は、変調部220を有する。変調部220には、変調領域が設定される。変調部220の変調領域には、制御部27の制御に応じて、投射光206によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部220には、光源21から出射された光201が照射される。変調部220に入射した光201は、変調部220に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。変調部220で変調された変調光202は、反射鏡23の反射面230に向けて進行する。
【0058】
反射鏡23は、曲面状の反射面230を有する反射鏡である。反射鏡23は、集光レンズ24に入射する変調光202のビーム径を拡大する。反射鏡23は、平面鏡であってもよい。反射面230は、空間光変調器22の変調部220と、集光レンズ24の入射面とに向けられる。例えば、反射面230は、円柱の側面の形状を有する。例えば、反射面230は、自由曲面や球面でもよい。例えば、反射面230は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば反射面230は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0059】
反射鏡23は、空間光変調器22の変調部220に反射面230を向けて、配置される。反射鏡23は、変調部220で変調された変調光202の光路上に配置される。反射面230には、変調部220で変調された変調光202が照射される。反射面230に照射された変調光202は、その反射面230で反射される。反射面230で反射された変調光202は、その反射面230の曲率に応じた拡大率で拡大されながら、集光レンズ24の入射面に向けて進行する。
【0060】
集光レンズ24は、第1の実施形態の集光レンズ14と同様の構成である。集光レンズ24は、反射鏡23と拡散器25の間に配置される。集光レンズ24の入射面は、反射鏡23の反射面230に向けられる。集光レンズ24の入射面には、反射鏡23の反射面230で反射された変調光202が入射する。集光レンズ24の出射面は、拡散器25に向けられる。集光レンズ24に入射した変調光202は、集光レンズ24の屈折率に応じて屈折されて、出射面から出射する。集光レンズ24から出射した変調光202は、拡散器25に向けて集光される。
【0061】
拡散器25は、第1の実施形態の拡散器15と同様の構成である。拡散器25は、球冠状の形状を有する透過型の光拡散器(透明拡散器)である。拡散器25には、集光レンズ24によって集光された変調光202が入射する。拡散器25は、アレイ状に形成された微小レンズによって、入射した変調光202を拡散する。拡散器25によって拡散された変調光202は、ボールレンズ26に向けて進行する。変調光202は、微小レンズが形成された位置において、拡散される。そのため、ボールレンズ26に入射させる変調光202の範囲は、微小レンズが形成される範囲に応じて、整形できる。
【0062】
ボールレンズ26は、第1の実施形態のボールレンズ16と同様の構成である。ボールレンズ26は、球形のレンズである。ボールレンズ26に入射する変調光202のビーム径は、反射鏡23の反射面230の曲率に応じて拡大されている。そのため、第1の実施形態のボールレンズ16と比べて、ボールレンズ26の径を拡大できる。ボールレンズ26には、拡散器25によって拡散された変調光202が入射する。ボールレンズ26は、入射した変調光202を、略平行光の投射光206に変換して出射する。ボールレンズ26から出射された投射光206は、通信対象(図示しない)に向けて進行する。投射光206は、送信装置20から送信された段階で、ボールレンズ26によってビーム径が拡大される。そのため、送信装置20と通信対象との間に、天候の影響で雨粒などが介在する場合であっても、投射光206は減衰しにくい。
【0063】
制御部27は、第1の実施形態の制御部17と同様の構成である。制御部27は、光源21および空間光変調器22を制御する。制御部27は、空間光変調器22の変調部220に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。制御部27は、投射画像に対応する位相画像が変調部220に設定された状態で、光源21を駆動させる。その結果、空間光変調器22の変調部220に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源21から出射された光201が空間光変調器22の変調部220に照射される。空間光変調器22の変調部220に照射された光201は、その変調部220において変調される。変調部220において変調された変調光202は、集光レンズ24の入射面に向けて出射される。また、制御部27は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源21から出射される光201を変調させる。通信において、制御部27は、通信用の位相画像を空間光変調器22の変調部220に設定した状態で、光源21から光201を出射させるタイミングを制御することで、光201を変調させる。
【0064】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下においては、複数の方向に向けて空間光信号を送信する構成を有する変形例をあげる。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の変形例を限定するものではない。
【0065】
〔変形例2-1〕
変形例2-1は、複数の方向に向けて空間光信号が送信される例である。
図8は、変形例2-1に係る送信器200-1の構成の一例を示す概念図である。送信器200-1は、複数の光源21-1~3、空間光変調器22、集光レンズ24-1~3、複数の拡散器25-1~3、および複数のボールレンズ26-1~3を備える。
図8には、光源21、集光レンズ24、拡散器25、およびボールレンズ26によって構成される投射ユニットを、3つ含む送信器200-1の例を示す。集光レンズ24および拡散器25は、光拡散器を構成する。複数の光源21-1~3および空間光変調器22は、制御部(図示しない)によって制御される。
【0066】
図8は、送信器200-1の内部構成を上方から見た平面図である。
図8には、拡散器25の断面を示す。
図8は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。光源21-1~3、空間光変調器22、集光レンズ24-1~3、拡散器25-1~3、ボールレンズ26-1~3、および制御部は、
図7の構成と同様である。
【0067】
光源21-1は、制御部の制御に応じて、光を出射する。光源21-1の光軸は、空間光変調器22の変調部220の面に対して、斜めに設定される。光源21-1から出射された光は、空間光変調器22の変調部220に設定された第1変調領域に照射される。制御部の制御に応じて、第1変調領域には、第1位相画像が設定される。光は、第1変調領域に設定された第1位相画像に応じて、変調される。第1変調領域で変調された変調光は、反射鏡23の反射面230の第1反射領域に向けて進行する。反射鏡23に到達した変調光は、反射面230の第1反射領域で反射されて、集光レンズ24-1に向けて進行する。集光レンズ24-1に到達した変調光は、その集光レンズ24-1で集光されて、拡散器25-1の凸面に入射する。拡散器25-1に入射した変調光は、拡散器25-1で拡散されて、ボールレンズ26-1に入射する。ボールレンズ26-1に入射した変調光は、そのボールレンズ26-1で略平行光(投射光)に変換されて、空間光信号として送信される。
【0068】
光源21-2は、制御部の制御に応じて、光を出射する。光源21-2の光軸は、空間光変調器22の変調部220の面に対して、斜めに設定される。光源21-2から出射された光は、空間光変調器22の変調部220に設定された第2変調領域に照射される。制御部の制御に応じて、第2変調領域には、第2位相画像が設定される。光は、第2変調領域に設定された第2位相画像に応じて、変調される。第2変調領域で変調された変調光は、反射鏡23の反射面230の第2反射領域に向けて進行する。反射鏡23に到達した変調光は、反射面230の第2反射領域で反射されて、集光レンズ24-2に向けて進行する。集光レンズ24-2に到達した変調光は、その集光レンズ24-2で集光されて、拡散器25-2の凸面に入射する。拡散器25-2に入射した変調光は、拡散器25-2で拡散されて、ボールレンズ26-2に入射する。ボールレンズ26-2に入射した変調光は、そのボールレンズ26-2で略平行光の投射光に変換されて、空間光信号として送信される。
【0069】
光源21-3は、制御部の制御に応じて、光を出射する。
図2の例と同様に、光源21-3の光軸は、空間光変調器22の変調部220の面に対して、斜めに設定される。光源21-3から出射された光は、空間光変調器22の変調部220に設定された第3変調領域に照射される。制御部の制御に応じて、第3変調領域には、第3位相画像が設定される。光は、第3変調領域に設定された第3位相画像に応じて、変調される。第3変調領域で変調された変調光は、反射鏡23の反射面230の第3反射領域に向けて進行する。反射鏡23に到達した変調光は、反射面230の第3反射領域で反射されて、集光レンズ24-3に向けて進行する。集光レンズ24-3に到達した変調光は、その集光レンズ24-3で集光されて、拡散器25-3の凸面に入射する。拡散器25-3に入射した変調光は、拡散器25-3で拡散されて、ボールレンズ26-3に入射する。ボールレンズ26-3に入射した変調光は、そのボールレンズ26-3で略平行光の投射光に変換されて、空間光信号として送信される。
【0070】
光源21-1~3は、同じ波長の光を出射するように構成されてもよいし、異なる波長の光を出射するように構成されてもよい。第1変調領域、第2変調領域、および第3変調領域は、異なる領域である。例えば、第1変調領域、第2変調領域、および第3変調領域の間には、光が反射されない領域が設定される。第1位相画像、第2位相画像、および第3位相画像は、同じでもよいし、異なっていてもよい。ボールレンズ26-1~3から投射された投射光(空間光信号)は、異なる方向に向けて送信される。
図8の例の場合、同一面内において、180度の方向に向けて空間光信号を送信できる。
【0071】
本変形例では、複数の光源に由来する複数の空間光信号が、異なる方向に送信される。そのため、本変形例によれば、空間光信号の投射範囲に配置された、複数の通信対象と通信できる。
【0072】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、反射鏡、集光レンズ、透明拡散器、ボールレンズ、および制御部を備える。光源、空間光変調器、反射鏡、集光レンズ、透明拡散器、およびボールレンズは、送信器を構成する。集光レンズおよび透明拡散器は、光拡散器を構成する。光源は、レーザ光を出射する出射器を含む。光源は、出射器から出射されたレーザ光に由来する光を出射する。空間光変調器は、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定される変調部を有する。変調部には、光源から出射された光が照射される。反射鏡は、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有する。反射鏡は、空間光変調器の変調部と集光レンズの入射面とに、反射面を向けて配置される。集光レンズは、反射鏡の反射面で反射された変調光を集光する。透明拡散器は、集光レンズとボールレンズとの間に配置される。透明拡散器は、集光レンズによって集光された変調光を拡散する。ボールレンズは、透明拡散器によって拡散された変調光を拡大投射する。ボールレンズから拡大投射された変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)である。制御部は、送信器に含まれる空間光変調器の変調部に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、位相画像が設定された変調部に光が照射されるように、送信器に含まれる光源を制御する。
【0073】
本実施形態においては、光源から出射された光が、空間光変調器の変調部に照射される。変調部で変調された変調光は、反射鏡の反射面で反射されて、集光レンズの入射面に進行する。反射鏡の反射面で反射された変調光のビーム径は、その反射鏡の曲率に応じて拡大する。変調光は、集光レンズで一度集光された後に、透明拡散器で拡散されて、ビーム径が広がった状態でボールレンズに入射する。ボールレンズに入射した変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)として投射される。本実施形態によれば、第1の実施形態と比べて、ボールレンズに入射する変調光のビーム径を拡大できる。そのため、本実施形態によれば、第1の実施形態の構成と比べて、集光レンズの入射面におけるビーム径を拡大することで、空間光信号のビーム径を拡大できる。また、本実施形態によれば、第1の実施形態と比べて、大きなボールレンズを使用できる。そのため、本実施形態によれば、第1の実施形態と比べて、より太いビーム径の投射光を投射できる。
【0074】
本実施形態の一態様の送信装置は、光源、透明拡散器、およびボールレンズによって構成される投射ユニットを複数含む。各投射ユニットの光源から出射された光は、空間光変調器の変調部に設定された異なる変調領域に照射される。各投射ユニットに対応付けられた変調領域で変調された変調光は、反射鏡の反射面に割り当てられた異なる反射領域で反射される。各投射ユニットの集光レンズは、反射鏡の反射面で反射された、その投射ユニットの光源から出射された光に由来する変調光を集光する。各投射ユニットの透明拡散器は、その投射ユニットの集光レンズによって集光された変調光を拡散する。各投射ユニットのボールレンズは、その投射ユニットの透明拡散器によって拡散された変調光を拡大投射する。複数の投射ユニットのボールレンズから拡大投射された変調光は、異なる方向に向けて、空間光信号として送信される。本態様によれば、複数の光源に由来する複数の空間光信号が、異なる方向に送信される。そのため、本対応によれば、空間光信号の投射範囲に配置された、複数の通信対象と通信できる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、空間光変調器で変調された変調光を、反射型の拡散器で拡散させてボールレンズに導光する点において、第1の実施形態の送信装置とは異なる。本実施形態の構成は、第2の実施形態の構成と組み合わされてもよい。
【0076】
(構成)
図9は、本実施形態に係る送信装置30の構成の一例を示す概念図である。送信装置30は、光源31、空間光変調器32、拡散器35、ボールレンズ36、および制御部37を備える。光源31、空間光変調器32、拡散器35、およびボールレンズ36は、送信器300を構成する。拡散器35は、光拡散器の一形態である。
図9は、送信器300の内部構成を側方から見た側面図である。
図9には、拡散器35の断面を示す。
図9は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。
【0077】
光源31は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。光源31は、制御部37の制御に応じて、光301を出射する。光源31の光軸は、空間光変調器32の変調部320の面に対して、斜めに設定される。光源31は、制御部37の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。
【0078】
空間光変調器32は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。空間光変調器32は、光源31から出射された光301の光路に配置される。空間光変調器32は、変調部320を有する。変調部320には、変調領域が設定される。変調部320の変調領域には、制御部37の制御に応じて、投射光306によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部320には、光源31から出射された光301が照射される。変調部320に入射した光301は、変調部320に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。変調部320で変調された変調光302は、拡散器35の拡散面350に向けて進行する。
【0079】
拡散器35は、球冠状の形状を有する反射型の光拡散器(反射型拡散器とも呼ぶ)である。拡散器35の拡散面350(凹面)には、ランダムに配列された微小な凹レンズがアレイ状に形成される。拡散器35には、空間光変調器32の変調部320で変調された変調光302が入射する。拡散器35は、アレイ状に形成された微小レンズによって、入射した変調光302を拡散する。拡散器35によって拡散された変調光302は、ボールレンズ36に向けて進行する。変調光302は、微小レンズが形成された位置において、拡散される。そのため、ボールレンズ36に入射させる変調光302の範囲は、微小レンズが形成される範囲に応じて、整形できる。
【0080】
拡散器35の基材の材質は、拡散面350(凹面)に、光を拡散する拡散層が形成されていれば、限定しない。例えば、拡散面350に形成される微小レンズは、ポリカーボネートやポリエステル、アクリル、ガラスなどの透明な材料を用いて形成できる。拡散面350の拡散角は、微小レンズの状態によって調整できる。微小レンズのサイズが小さく、密度が大きいほど、拡散器35の拡散角が大きい。拡散面350で反射された変調光302の拡散角は、ボールレンズ36の直径や、拡散器35とボールレンズ36との距離などに応じて、調整されればよい。
【0081】
ボールレンズ36は、第1の実施形態のボールレンズ16と同様の構成である。ボールレンズ36は、球形のレンズである。ボールレンズ36には、拡散器35によって拡散された変調光302が入射する。ボールレンズ36は、入射した変調光302を、略平行光の投射光306に変換して出射する。ボールレンズ36から出射された投射光306は、通信対象(図示しない)に向けて進行する。投射光306は、送信装置30から送信された段階で、ボールレンズ36によってビーム径が拡大される。そのため、送信装置30と通信対象との間に、天候の影響で雨粒などが介在する場合であっても、投射光306は減衰しにくい。
【0082】
制御部37は、第1の実施形態の制御部17と同様の構成である。制御部37は、光源31および空間光変調器32を制御する。制御部37は、空間光変調器32の変調部320に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。制御部37は、投射画像に対応する位相画像が変調部320に設定された状態で、光源31を駆動させる。その結果、空間光変調器32の変調部320に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源31から出射された光301が空間光変調器32の変調部320に照射される。空間光変調器32の変調部320に照射された光301は、その変調部320において変調される。変調部320において変調された変調光302は、拡散器35の拡散面350に向けて出射される。また、制御部37は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源31から出射される光301を変調させる。通信において、制御部37は、通信用の位相画像を空間光変調器32の変調部320に設定した状態で、光源31から光301を出射させるタイミングを制御することで、光301を変調させる。
【0083】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下においては、拡散器の替わりに、回折光学素子が配置される変形例をあげる。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の変形例を限定するものではない。
【0084】
〔変形例3-1〕
変形例3-1は、拡散器35の替わりに、回折光学素子38が配置される例である。
図10は、変形例3-1に係る送信装置30-1の構成の一例を示す概念図である。送信装置30-1は、光源31、空間光変調器32、回折光学素子38、ボールレンズ36、および制御部37を備える。光源31、空間光変調器32、回折光学素子38、ボールレンズ36、および制御部37は、送信器300-1を構成する。回折光学素子38は、光拡散器の一形態である。
図10は、送信器300-1の内部構成を上方から見た平面図である。
図10は、回折光学素子38の断面を示す。
図10は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。光源31、空間光変調器32、ボールレンズ36、および制御部37は、
図9の構成と同様である。
【0085】
回折光学素子38は、球冠状の形状を有する反射型の回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)である。回折光学素子38の回折反射面380(凹面)には、サブミクロンオーダーの凹凸が形成される。回折光学素子38の回折反射面380の凹凸は、専用の金型を用いた立体的なナノインプリントによって形成できる。回折光学素子38の回折反射面380は、ボールレンズ36に向けられる。
【0086】
回折光学素子38の回折反射面380には、空間光変調器32の変調部320で変調された変調光302が入射する。回折光学素子38は、入射した変調光302を、複数の光束に分岐する。複数の光束に分岐した変調光302は、回折光学素子38の回折反射面380からボールレンズ36に向けて、出射される。
【0087】
光源31は、制御部37の制御に応じて、光301を出射する。光源31の光軸は、空間光変調器32の変調部320の面に対して、斜めに設定される。光源31から出射された光301は、空間光変調器32の変調部320に照射される。制御部37の制御に応じて、変調部320には、位相画像が設定される。光301は、変調部320に設定された位相画像に応じて、変調される。変調部320で変調された変調光302は、回折光学素子38の回折反射面380に入射する。回折反射面380に入射した変調光302は、その回折反射面380で拡散されて、複数の光束に分岐する。回折反射面380で拡散された複数の光束は、ボールレンズ36に入射する。ボールレンズ36に入射した複数の光束は、ボールレンズ36で略平行光の投射光305に変換されて、複数の光束からなる空間光信号として送信される。
【0088】
本変形例では、複数の光束からなる空間光信号が、同じ方向に送信される。単一の光束と比べて、複数の光束の各々は、エネルギーが大きい。また、複数の光束の間には隙間が空いている。そのため、本変形例によれば、雨などの天候の影響によって減衰しにくく、ロバスト性の高い空間光信号を送信できる。例えば、複数の光束のうちいずれかが一時的に遮断されても、残りの光束が通信対象に届けば、その通信対象との通信を継続できる。
【0089】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、反射型拡散器、ボールレンズ、および制御部を備える。光源、空間光変調器、反射型拡散器、およびボールレンズは、送信器を構成する。集光レンズおよび反射型拡散器は、光拡散器を構成する。光源は、レーザ光を出射する出射器を含む。光源は、出射器から出射されたレーザ光に由来する光を出射する。空間光変調器は、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定される変調部を有する。変調部には、光源から出射された光が照射される。反射型拡散器は、凹面状の拡散面を有する。反射型拡散器は、空間光変調器の変調部とボールレンズとに拡散面を向けて配置される。反射型拡散器は、変調部で変調された変調光を、ボールレンズに向けて拡散する。ボールレンズは、反射型拡散器によって拡散された変調光を拡大投射する。ボールレンズから拡大投射された変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)である。制御部は、送信器に含まれる空間光変調器の変調部に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、位相画像が設定された変調部に光が照射されるように、送信器に含まれる光源を制御する。
【0090】
本実施形態においては、光源から出射された光が、空間光変調器の変調部に照射される。変調部で変調された変調光は、反射型拡散器の拡散面で拡散されて、ボールレンズに入射する。ボールレンズに入射した変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)として投射される。本実施形態では、第1の実施形態と比べて、空間光変調器から透明拡散器までの距離が長く設定されたままで、集光レンズを省略できる。そのため、本実施形態によれば、第1の実施形態の構成と比べて、送信装置の大きさを小型化できる。
【0091】
本実施形態の一態様の送信装置は、反射型の回折光学素子を備える。反射型の回折光学素子は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を、複数の光束に分割する凹面状の回折反射面を有する。反射型の回折光学素子は、空間光変調器の変調部とボールレンズとに、回折反射面を向けて配置される。反射型の回折光学素子は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を複数の光束に分割する。本態様によれば、複数の光束からなる空間光信号が、同じ方向に送信される。単一の光束と比べて、複数の光束の各々は、エネルギーが大きい。複数の光束の間には隙間が空いている。また、本実施形態によれば、第1の実施形態の構成と比べて、送信装置の大きさを小型化できる。そのため、本変形例によれば、雨などの天候の影響によって減衰しにくく、ロバスト性の高い空間光信号を送信できる送信装置を小型化できる。
【0092】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、空間光変調器で変調された変調光を、光ファイバの束(ファイババンドルとも呼ぶ)を介してボールレンズに導光する点において、第1~第3の実施形態の送信装置とは異なる。本実施形態の構成は、第2~第3の実施形態の構成と組み合わされてもよい。
【0093】
(構成)
図11は、本実施形態に係る送信装置40の構成の一例を示す概念図である。送信装置40は、光源41、空間光変調器42、ファイババンドル45、ボールレンズ46、および制御部47を備える。光源41、空間光変調器42、ファイババンドル45、およびボールレンズ46は、送信器400を構成する。ファイババンドル45は、光拡散器の一形態である。
図11は、送信器400の内部構成を上方から見た側面図である。
図11には、ファイババンドル45の断面を示す。ファイババンドル45を構成する複数の光ファイバの出射端は、ボールレンズ46の球面の一部(球冠)に向けて、球面上に配置される。
図11は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。
【0094】
光源41は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。光源41は、制御部47の制御に応じて、光401を出射する。光源41の光軸は、空間光変調器42の変調部420の面に対して、斜めに設定される。光源41は、制御部47の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。
【0095】
空間光変調器42は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。空間光変調器42は、光源41から出射された光401の光路に配置される。空間光変調器42は、変調部420を有する。変調部420には、変調領域が設定される。変調部420の変調領域には、制御部47の制御に応じて、投射光406によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部420には、光源41から出射された光401が照射される。変調部420に入射した光401は、変調部420に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。変調部420で変調された変調光402は、ファイババンドル45を構成する複数の光ファイバのうち、いずれかの光ファイバの入射端に向けて進行する。
【0096】
ファイババンドル45は、複数の光ファイバの束である。ファイババンドル45を構成する光ファイバは、一端(入射端)が空間光変調器42の変調部420に向けられ、他端(出射端)がボールレンズ46の中心部分に向けられる。複数の光ファイバの入射端は、変調部420の中心部分を中心とする球面上に配列される。複数の光ファイバの出射端は、ボールレンズ46の中心部分を中心とする球面上に配列される。複数の光ファイバの本体は、入射端から出射端に向けて、滑らかな曲線を描くように曲げられる。入射端から入射した変調光402(画像)は、本体を通じて出射端まで伝送される。出射端から出射した変調光402は、その出射端で拡散されて、ボールレンズ46に向けて進行する。
【0097】
例えば、ファイババンドル45は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ファイババンドル45は、可視領域の光を透過/屈折する材料によって実現できる。例えば、ファイババンドル45は、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスによって実現できる。例えば、ファイババンドル45は、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスによって実現できる。例えば、ファイババンドル45は、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスによって実現できる。例えば、ファイババンドル45には、石英ガラスが適用できる。例えば、ファイババンドル45には、サファイア等の結晶が適用できる。例えば、ファイババンドル45には、アクリル等の透明樹脂が適用できる。
【0098】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ファイババンドル45には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ファイババンドル45には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ファイババンドル45には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ファイババンドル45には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ファイババンドル45の材質には限定を加えない。ファイババンドル45の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0099】
ボールレンズ46は、第1の実施形態のボールレンズ16と同様の構成である。ボールレンズ46は、球形のレンズである。ボールレンズ46には、ファイババンドル45によって拡散された変調光402が入射する。ボールレンズ46は、入射した変調光402を、略平行光の投射光406に変換して出射する。ボールレンズ46から出射された投射光406は、通信対象(図示しない)に向けて進行する。投射光406は、送信装置40から送信された段階で、ボールレンズ46によってビーム径が拡大される。そのため、送信装置40と通信対象との間に、天候の影響で雨粒などが介在する場合であっても、投射光406は減衰しにくい。
【0100】
制御部47は、第1の実施形態の制御部17と同様の構成である。制御部47は、光源41および空間光変調器42を制御する。制御部47は、空間光変調器42の変調部420に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。制御部47は、投射画像に対応する位相画像が変調部420に設定された状態で、光源41を駆動させる。その結果、空間光変調器42の変調部420に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源41から出射された光401が空間光変調器42の変調部420に照射される。空間光変調器42の変調部420に照射された光401は、その変調部420において変調される。変調部420において変調された変調光402は、ファイババンドル45を構成するいずれかの光ファイバの入射端に向けて出射される。また、制御部47は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源41から出射される光401を変調させる。通信において、制御部47は、通信用の位相画像を空間光変調器42の変調部420に設定した状態で、光源41から光401を出射させるタイミングを制御することで、光401を変調させる。
【0101】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、ファイババンドル、ボールレンズ、および制御部を備える。光源、空間光変調器、ファイババンドル、およびボールレンズは、送信器を構成する。光源は、レーザ光を出射する出射器を含む。光源は、出射器から出射されたレーザ光に由来する光を出射する。空間光変調器は、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定される変調部を有する。変調部には、光源から出射された光が照射される。ファイババンドルは、複数の光ファイバが束ねられた構造を有する。複数の光ファイバの入射端は、空間光変調器の変調部に向けて配置される。複数の光ファイバの出射端は、ボールレンズに向けて配置される。ボールレンズは、ファイババンドルによって拡散された変調光を拡大投射する。ボールレンズから拡大投射された変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)である。制御部は、送信器に含まれる空間光変調器の変調部に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、位相画像が設定された変調部に光が照射されるように、送信器に含まれる光源を制御する。
【0102】
本実施形態においては、光源から出射された光が、空間光変調器の変調部に照射される。変調部で変調された変調光は、ファイババンドルを構成する光ファイバで導光されて、出射端からボールレンズに向けて出射される。ボールレンズに入射した変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)として投射される。本実施形態では、第1の実施形態のようにレンズ系を用いる場合と比べて、ボールレンズに対する変調光の照射面積を拡大できる。そのため、本実施形態によれば、第1の実施形態の構成と比べて、空間光信号のビーム径を拡大できる。
【0103】
本実施形態の送信装置では、ファイババンドルの出射端が、ボールレンズの球面に沿って配置される。本実施形態によれば、第1~第3の実施形態と比べて、ボールレンズに正対する部分(出射端)の面積が大きいため、投射光(空間光信号)の幅を拡大できる。そのため、本実施形態によれば、第1~第3の実施形態と比べて、雨などの外乱の影響をより受けにくい空間光信号を送信できる。
【0104】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、受信装置と送信装置とを組み合わせた構成である。送信装置は、第1~第4の実施形態の構成である。受信装置は、空間光信号を受信する。以下においては、ボールレンズを含む受光機能を備えた受信装置の例をあげる。なお、本実施形態の通信装置は、ボールレンズを含まない受光機能を含む受信装置を備えてもよい。
【0105】
図12は、本実施形態に係る通信装置50の構成の一例を示す概念図である。通信装置50は、送信装置51、制御装置55、および受信装置57を備える。通信装置50は、外部の通信対象と空間光信号を送受信し合う。そのため、通信装置50には、空間光信号を送受信するための開口や窓が形成される。
【0106】
送信装置51は、第1の実施形態の送信装置である。送信装置51は、制御装置55から制御信号を取得する。送信装置51は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送信装置51から投射された空間光信号は、その空間光信号の送信先の通信対象(図示しない)によって受光される。
【0107】
制御装置55は、受信装置57から出力された信号を取得する。制御装置55は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置55が実行する処理については、特に限定を加えない。制御装置55は、実行した処理に応じた光信号を送信するための制御信号を、送信装置51に出力する。例えば、制御装置55は、受信装置57が受信した信号に含まれる情報に応じて、予め決められた条件に基づく処理を実行する。例えば、制御装置55は、受信装置57が受信した信号に含まれる情報に応じて、通信装置50の管理者によって指定された処理を実行する。
【0108】
受信装置57は、通信対象(図示しない)から送信された空間光信号を受信する。受信装置57は、受信した空間光信号を電気信号に変換する。受信装置57は、変換後の電気信号を制御装置55に出力する。例えば、受信装置57は、ボールレンズを含む受光機能を備える。また、受信装置57は、ボールレンズを含まない受光機能を有してもよい。
【0109】
〔受信装置〕
次に、受信装置57の構成について図面を参照しながら説明する。
図13は、受信装置57の構成の一例について説明するための概念図である。受信装置57は、ボールレンズ571、受光素子573、および受信回路575を備える。
図13は、受信装置57の内部構成を横方向から見た側面図である。受信回路575の位置については、特に限定を加えない。受信回路575は、受信装置57の内部に配置されてもよいし、受信装置57の外部に配置されてもよい。また、受信回路575の機能を制御装置55に含めてもよい。
【0110】
ボールレンズ571は、球形のレンズである。ボールレンズ571は、通信対象から送信された空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ571は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ571の一部は、受信装置57の筐体に開けられた開口から突出する。ボールレンズ571は、入射された空間光信号を集光する。開口から突出したボールレンズ571に入射した空間光信号が集光される。空間光信号を集光できさえすれば、ボールレンズ571の一部は、開口から突出していなくてもよい。
【0111】
ボールレンズ571によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、そのボールレンズ571の集光領域に向けて集光される。ボールレンズ571は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ571は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。ボールレンズ571に入射した光は、ボールレンズ571の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ571の内部を進行する光は、ボールレンズ571の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ571から出射される光の大部分は、集光領域に集光される。
【0112】
例えば、ボールレンズ571は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ571は、可視領域の光を透過/屈折する材料によって実現できる。例えば、ボールレンズ571は、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ571は、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ571は、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ571には、石英ガラスが適用できる。例えば、ボールレンズ571には、サファイア等の結晶が適用できる。例えば、ボールレンズ571には、アクリル等の透明樹脂が適用できる。
【0113】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ571には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ571には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ571には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ571には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ571の材質には限定を加えない。ボールレンズ571の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0114】
ボールレンズ571は、受光素子573の配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その他の集光器によって代替されてもよい。例えば、ボールレンズ571は、入射した空間光信号を、受光素子573の受光部に向けて導光する光線制御素子であってもよい。例えば、ボールレンズ571は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成であってもよい。例えば、ボールレンズ571によって集光される光信号を、受光素子573の受光部に向けて導光する機構が、追加されてもよい。
【0115】
受光素子573は、ボールレンズ571の後段に配置される。受光素子573は、ボールレンズ571の集光領域に配置される。受光素子573は、ボールレンズ571によって集光された光信号を受光する受光部を有する。ボールレンズ571によって集光された光信号は、受光素子573の受光部で受光される。受光素子573は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。受光素子573は、変換後の信号を、受信回路575に出力する。
図13には、受光素子573が単一の例を示す。例えば、ボールレンズ571の集光領域に、複数の受光素子573が配置されてもよい。例えば、ボールレンズ571の集光領域に、複数の受光素子573がアレイ化された受光素子アレイが配置されてもよい。
【0116】
受光素子573は、受信対象である空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子573は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子573は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子573は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子573が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子573が受光する光の波長帯は、受信対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子573が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子573が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子573は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子573よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0117】
例えば、受光素子573は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子573は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子573は、高速通信に対応できる。なお、受光素子573は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子573の受光部は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子573の受光部は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子573の受光部は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子573の受光部の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0118】
例えば、受光素子573の前段に、偏光フィルタ(図示しない)が配置されてもよい。偏光フィルタは、受光素子573の受光部に対応付けて配置される。例えば、偏光フィルタは、受光素子573の受光部に、重ねて配置される。例えば、偏光フィルタは、受信対象の空間光信号の偏光状態に応じて選択されてもよい。例えば、受信対象の空間光信号が直線偏光の場合、偏光フィルタは1/2波長板を含む。例えば、受信対象の空間光信号が円偏光の場合、偏光フィルタは1/4波長板を含む。偏光フィルタの偏光特性に応じて、その偏光フィルタを通過した光信号の偏光状態が変換される。
【0119】
受信回路575は、受光素子573から出力された信号を取得する。受信回路575は、受光素子573からの信号を増幅する。受信回路575は、増幅された信号をデコードする。受信回路575によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路575によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0120】
〔通信装置〕
図14は、通信装置50の一例(通信装置500)を示す概念図である。通信装置500は、送信器510、受信器570、および制御装置(図示しない)を備える。
図14では、受信回路や制御装置を省略する。通信装置500は、円筒状の外形を有する送信器510および受信器570を組み合わせた構成を有する。
【0121】
受信器570は、ボールレンズ571、受光器572、カラーフィルタ576、支持部材577、および導線578を含む。ボールレンズ571は、上下に配置された一対の支持部材577によって、上下の部分を挟持される。ボールレンズ571の上下は、空間光信号の送受信に用いられないため、支持部材577で挟持されやすいように、平面状に加工されてもよい。受光器572は、受信対象の空間光信号を受信できるように、ボールレンズ571の集光領域に合わせて配置される。受光器572は、複数の受光素子が環状に配列された受光素子アレイを有する。複数の受光素子は、ボールレンズ571の集光領域に配置される。複数の受光素子は、ボールレンズ571に受光部を向けて配置される。複数の受光素子は、導線578によって、制御装置(図示しない)や送信器510に接続される。
【0122】
円筒状の受信器570の側面には、カラーフィルタ576が配置される。カラーフィルタ576は、不要な光を除去し、通信に用いられる空間光信号を選択的に透過する。円筒状の受信器570の上下面には、一対の支持部材577が配置される。一対の支持部材577は、ボールレンズ571の上下を挟持する。ボールレンズ571の出射側には、環状に形成された受光器572が配置される。カラーフィルタ576を介してボールレンズ571に入射した空間光信号は、ボールレンズ571によって、受光器572に向けて集光される。受光器572に集光された光信号は、いずれかの受光素子の受光部に向けて導光される。受光素子の受光部に到達した光信号は、その受光素子によって受光される。制御装置(図示しない)は、受光器572に含まれる受光素子よって受光された光信号に応じて、送信器510から空間光信号を送信させる。
【0123】
送信器510は、第1~第4に係る実施形態のいずれかの送信装置によって構成される。送信器510は、円筒状の筐体の内部に収納される。円筒状の筐体には、送信器510による空間光信号の送信方向に合わせて開口されたスリットが形成される。例えば、送信器510が360度の方向に空間光信号を送信できる場合、送信器510の筐体の側面には、空間光信号の送信方向に合わせて、スリットが形成される。
【0124】
〔適用例〕
次に、本実施形態の適用例について図面を参照しながら説明する。以下の適用例では、複数の通信装置が、空間光信号を送受信する例をあげる。いずれの通信装置も、第5の実施形態に係る通信装置500の構成を有する。
【0125】
図15は、本適用例について説明するための概念図である。本適用例では、街中に配置された電柱や街灯などの柱の上部(柱上空間とも呼ぶ)に、複数の通信装置500が配置された通信ネットワークの一例(通信システムとも呼ぶ)をあげる。
【0126】
柱上空間には障害物が少ない。そのため、柱上空間は、通信装置500を設置するのに適している。また、同程度の高さに通信装置500を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定される。そのため、受信器570を構成する受光器572の受光面積を小さくして、装置を簡略化できる。空間光信号を送受信し合う通信装置500のペアは、少なくとも一方の通信装置500が、他方の通信装置500から送信された空間光信号を受光するように配置される。通信装置500のペアは、空間光信号を互いに送受信するように配置されてもよい。複数の通信装置500で空間光信号の通信ネットワークが構成される場合、中間に位置する通信装置500は、他の通信装置500から送信された空間光信号を、別の通信装置500に中継するように配置されてもよい。
【0127】
本適用例によれば、柱上空間に配置された複数の通信装置500の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、通信装置500の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置や基地局と通信装置500との間で、無線通信による通信が行われてもよい。例えば、柱に設置された通信ケーブル等を介して、通信装置500がインターネットに接続されてもよい。
【0128】
以上のように、本実施形態の通信装置は、受信装置、送信装置、および制御装置を備える。送信装置は、光源、空間光変調器、光拡散器、ボールレンズ、および制御部を備える。光源、空間光変調器、光拡散器、およびボールレンズは、送信器を構成する。光源は、レーザ光を出射する出射器を含む。光源は、出射器から出射されたレーザ光に由来する光を出射する。空間光変調器は、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定される変調部を有する。変調部には、光源から出射された光が照射される。光拡散器は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を拡散する。ボールレンズは、光拡散器によって拡散された変調光を拡大投射する。ボールレンズから拡大投射された変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)である。制御部は、送信器に含まれる空間光変調器の変調部に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、位相画像が設定された変調部に光が照射されるように、送信器に含まれる光源を制御する。受信装置は、空間光信号を受信する。制御装置は、受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得する。制御装置は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置は、実行した処理に応じた空間光信号を送信装置に送信させる。
【0129】
本実施形態の通信装置が備える送信装置においては、光源から出射された光が、空間光変調器の変調部に照射される。変調部で変調された変調光は、拡散器で拡散されてビーム径が広がった状態で、ボールレンズに入射する。ボールレンズに入射した変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)として投射される。そのため、本実施形態の通信装置から送信された空間光信号は、ビーム径が広げられずに送信される場合と比較して、送信直後のビーム径が大きく、雨などの外乱の影響を受けにくい。また、本実施形態の通信装置から送信された空間光信号は、略平行光であるため、送信装置から離れても広がりにくく、指向性が高い。すなわち、本実施形態の通信装置によれば、雨などの外乱の影響を受けにくい指向性のある空間光信号を送信できる。
【0130】
本実施形態の一態様の通信システムは、上記の通信装置を複数備える。通信システムにおいて、複数の通信装置は、空間光信号を互いに送受信し合うように配置される。本態様によれば、空間光信号を送受信する通信ネットワークを実現できる。
【0131】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る送信器について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信器は、第1の実施形態の送信器が簡略化された構成である。
図16は、本実施形態に係る送信器600の構成の一例を示す概念図である。
図16は、送信器600の内部構成を上方向から見た平面図である。送信器600は、光源61、空間光変調器62、光拡散器65、およびボールレンズ66を備える。
【0132】
光源61は、レーザ光を出射する出射器を含む。光源61は、出射器から出射されたレーザ光に由来する光601を出射する。空間光変調器62は、送信対象である空間光信号に応じた位相画像が設定される変調部620を有する。変調部620には、光源61から出射された光601が照射される。光拡散器65は、空間光変調器62の変調部620で変調された変調光602を拡散する。ボールレンズ66は、光拡散器65によって拡散された変調光602を拡大投射する。ボールレンズ66から拡大投射された変調光602は、略平行光の投射光606(空間光信号)である。
【0133】
以上のように、本実施形態においては、光源から出射された光が、空間光変調器の変調部に照射される。変調部で変調された変調光は、拡散器で拡散されてビーム径が広がった状態で、ボールレンズに入射する。ボールレンズに入射した変調光は、略平行光の投射光(空間光信号)として投射される。そのため、本実施形態の送信器から送信された空間光信号は、ビーム径が広げられずに送信される場合と比較して、送信直後のビーム径が大きく、雨などの外乱の影響を受けにくい。また、本実施形態の送信器から送信された空間光信号は、略平行光であるため、送信装置から離れても広がりにくく、指向性が高い。すなわち、本実施形態の送信器によれば、雨などの外乱の影響を受けにくい指向性のある空間光信号を送信できる。
【0134】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、
図17の情報処理装置90(コンピュータ)を一例としてあげて説明する。なお、
図17の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0135】
図17のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図17においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0136】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、各実施形態の制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0137】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0138】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0139】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0140】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0141】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0142】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0143】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。
図17のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0144】
各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0145】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。各実施形態の構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0146】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0147】
10、20、30、40 送信装置
11、21、31、41、61 光源
12、22、32、42、62 空間光変調器
14、24 集光レンズ
15、25、35 拡散器
16、26、36、46、66 ボールレンズ
17、27、37、47 制御部
18、38 回折光学素子
19 遮光器
23 反射鏡
45 ファイババンドル
50 通信装置
51 送信装置
55 制御装置
57 受信装置
65 光拡散器
100、200、300、400、600 送信器
500 通信装置
510 送信器
570 受信器
571 ボールレンズ
572 受光器
573 受光素子
575 受信回路
576 カラーフィルタ
577 支持部材