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特開2024-24282送信装置、通信装置、および通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024282
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】送信装置、通信装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20240215BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20240215BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127021
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA27
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH27
5K102AL23
5K102MA01
5K102MB20
5K102PB18
5K102PC11
5K102PH01
5K102PH31
5K102RB02
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】任意の方向に空間光信号を送信できる送信装置等を提供する。
【解決手段】複数の出射器を含む光源と、複数の変調領域が設定される変調部を有する空間光変調器と、複数の変調領域で変調された変調光を平行光に変換する集光器と、集光器の後段に配置され、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有する曲面ミラーと、曲面ミラーを回転可能に支持する回転機構とを有する反射ユニットを少なくとも一つ含む投射機構と、回転機構を制御することで曲面ミラーの反射方向を反射ユニットごとに調整し、空間光通信に用いられる位相画像を複数の変調領域に設定し、複数の変調領域の各々に光が照射されるように複数の出射器を制御する制御部と、を備える送信装置とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出射器を含む光源と、
複数の変調領域が設定される変調部を有する空間光変調器と、
複数の前記変調領域で変調された変調光を平行光に変換する集光器と、
前記集光器の後段に配置され、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率の反射面を有する曲面ミラーと、前記曲面ミラーを回転可能に支持する回転機構とを有する反射ユニットを少なくとも一つ含む投射機構と、
前記回転機構を制御することで前記曲面ミラーの反射方向を前記反射ユニットごとに調整し、空間光通信に用いられる位相画像を複数の前記変調領域に設定し、複数の前記変調領域の各々に光が照射されるように複数の前記出射器を制御する制御部と、を備える送信装置。
【請求項2】
複数の前記反射ユニットは、
前記集光器の光軸に対して垂直に延伸された支柱に支持され、
複数の前記反射ユニットに含まれる前記曲面ミラーは、
前記変調光に含まれる0次光および高次画像が投射される領域を避けた位置に配置される請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
複数の前記出射器のうち少なくとも一つから出射された光に由来する前記変調光が、複数の前記反射ユニットに含まれる前記曲面ミラーに向けて照射されるように、前記光源を制御する請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
複数の前記出射器のうち少なくとも二つから出射された光に由来する前記変調光が、複数の前記反射ユニットに含まれる同じ前記曲面ミラーに向けて照射されるように、前記光源を制御する請求項2に記載の送信装置。
【請求項5】
複数の前記曲面ミラーは、互いに異なる方向に前記反射面を向けて、配置される請求項2に記載の送信装置。
【請求項6】
前記制御部は、
複数の前記出射器のうち少なくとも二つから出射された異なる波長帯の光に由来する前記変調光が、同一の前記曲面ミラーの前記反射面に照射されるように、前記変調領域に前記位相画像を設定する請求項1に記載の送信装置。
【請求項7】
前記集光器は、
前記空間光変調器の前記変調部に凸面を向け、前記投射機構に平面を向けて配置された平凸レンズである請求項1に記載の送信装置。
【請求項8】
前記集光器によって集光された光のうち、前記投射機構によって反射されなかった光成分を吸収する光吸収体を備える請求項1に記載の送信装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の送信装置と、
空間光信号を受信する受信装置と、
前記受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得し、取得した前記信号に応じた処理を実行し、実行した前記処理に応じた空間光信号を前記送信装置に送信させる制御装置と、を備える通信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
空間光信号を互いに送受信し合うように配置された通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間を伝播する光信号を送信する送信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間光信号を広範囲に送信するためには、投射光の投射角ができるだけ大きい方が好ましい。例えば、位相変調型の空間光変調器を含む送光装置を用いれば、空間光変調器の変調部に設定されるパターンを制御することによって、投射角を広げることができる。送光装置を中心として多方向に空間光信号を送信できれば、空間光信号を用いた通信ネットワークを構築できる。
【0003】
特許文献1には、光スイッチ装置について開示されている。特許文献1の装置は、第1光偏向素子および第2光偏向素子を含む。第1光偏向素子には、入力側の複数の光ファイバが接続される。第2光偏向素子には、出力側の複数の光ファイバが接続される。特許文献1の装置は、第1光偏向素子の偏向角および第2光偏向素子の偏向角を制御して、入力側と出力側の光ファイバの接続を切り替える。
【0004】
特許文献2には、光学信号を切り替えるための光学装置について開示されている。特許文献2の装置は、2つの回転軸を有する矩形状のマイクロミラーのアレイを備える。特許文献2の装置は、第1の切り替え軸を中心に回転制御して、スペクトルチャネルを選択された出力ポートに切り替える。特許文献2の装置は、第2の減衰軸を中心にマイクロミラーを回転制御して、選択された出力ポートへのスペクトルチャネルの結合を変更することで、スペクトルチャネルの出力レベルを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-113752号公報
【特許文献2】特表2008-536168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、入力ポートと出力ポートの間に配置された第1光偏向素子および第2光偏向素子の偏向角を制御して、複数の光ファイバの間における接続を切り替える。特許文献1の手法は、装置の内部におけるレーザ光の方向制御には適用できる。しかし、特許文献1の手法を、多様な空間光信号を送信する用途に適用することは難しかった。
【0007】
特許文献2の装置は、2軸を中心としてマイクロミラーを回転制御することで、入力ポートから入力された光学信号の出力先の出力ポートを切り替える。特許文献2の手法では、マイクロミラーを駆動し続けることで、光学信号の進行方向を制御する。特許文献2の手法は、モジュールの内部における光学信号の切り替えには適用できる。しかし、特許文献2の手法を、多様な方向に空間光信号を送信する用途に適用することは難しかった。
【0008】
本開示の目的は、任意の方向に空間光信号を送信できる送信装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の送信装置は、複数の出射器を含む光源と、複数の変調領域が設定される変調部を有する空間光変調器と、複数の変調領域で変調された変調光を平行光に変換する集光器と、集光器の後段に配置され、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有する曲面ミラーと、曲面ミラーを回転可能に支持する回転機構とを有する反射ユニットを少なくとも一つ含む投射機構と、回転機構を制御することで曲面ミラーの反射方向を反射ユニットごとに調整し、空間光通信に用いられる位相画像を複数の変調領域に設定し、複数の変調領域の各々に光が照射されるように複数の出射器を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、任意の方向に空間光信号を送信できる送信装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
図2】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源の構成の一例を示す概念図である。
図3】第1の実施形態に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部に設定される変調領域の一例を示す概念図である。
図4】第1の実施形態に係る送信装置が備える反射ユニットの構成の一例を示す概念図である。
図5】第1の実施形態に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部で変調された変調光に含まれる不要光について説明するための概念図である。
図6】第1の実施形態に係る送信装置が備える反射ユニットに含まれる曲面ミラーの配置例について説明するための概念図である。
図7】第1の実施形態に係る送信装置が備える反射ユニットに含まれる曲面ミラーによって反射された投射光の投射範囲の一例について説明するための概念図である。
図8】第1の実施形態に係る送信装置が備える反射ユニットに含まれる曲面ミラーによって反射された投射光の投射例について説明するための概念図である。
図9】第1の実施形態に係る送信装置が備える反射ユニットに含まれる曲面ミラーの反射面への変調光の照射例について説明するための概念図である。
図10】第1の実施形態に係る送信装置が備える反射ユニットに含まれる曲面ミラーの反射面への変調光の照射例について説明するための概念図である。
図11】第1の実施形態の変形例1に係る送信装置が備える光源の構成の一例を示す概念図である。
図12】第1の実施形態の変形例1に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部に設定される変調領域の一例を示す概念図である。
図13】第1の実施形態の変形例1に係る送信装置が備える反射ユニットに含まれる曲面ミラーの配置例について説明するための概念図である。
図14】第1の実施形態の変形例2に係る送信装置における波長多重化の一例について説明するための概念図である。
図15】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図16】第2の実施形態に係る通信装置が備える受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図17】第2の実施形態に係る通信装置が備える受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図18】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図19】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置の配置例を示す概念図である。
図20】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図21】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置の配置例を示す概念図である。
図22】第3の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
図23】各実施形態に係る処理や制御を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。また、光の経路の一例を図示したり、構成が込み合ったりする等の理由により、断面にハッチングを施さない場合がある。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の送信装置は、空間を伝播する光を送光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。なお、本実施形態の説明で用いられる図面は、概念的なものであり、実際の構造を正確に描写したものではない。
【0015】
(構成)
図1は、本実施形態に係る送信装置10の構成の一例を示す概念図である。送信装置10は、光源11、空間光変調器12、平凸レンズ13、投射機構15、光吸収体16、および制御部17を備える。光源11、空間光変調器12、平凸レンズ13、投射機構15、および光吸収体16は、送信器100を構成する。投射機構15は、複数の反射ユニット150を含む。複数の反射ユニット150は、支柱151に固定される。反射ユニット150は、支持棒152、回転機構153、回転軸154、および曲面ミラー155によって構成される。図1は、送信装置10の内部構成を横方向から見た側面図である。図1は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。
【0016】
図2は、光源11の構成の一例を示す概念図である。図2は、光源11の内部の透視図である。光源11は、複数の出射器111(出射器111-1~4)と、複数のコリメータ112とを含む。複数の出射器111の各々は、複数のコリメータ112のいずれかと対応付けられる。出射器111は、制御部17の制御に応じて、平行光101を出射する。複数の出射器111の各々は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域のうち1つに、対応付けられる。複数の出射器111の出射面は、対応付けられた変調領域に向けられる。本実施形態においては、複数の出射器111の出射面と、空間光変調器12の変調部120とは、互いに対面するように配置される。複数の出射器111の各々は、対応付けられた変調領域に向けて、平行光101を出射する。なお、光源11に含まれる出射器111の数は、4個に限定されない。出射器111の数は、4個未満であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0017】
光源11に含まれる出射器111は、制御部17の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。出射器111から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、出射器111は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~1000ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、可視光と比べてレーザクラスをあげられるので、可視光よりも感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、800~1000nmの近赤外線よりも、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線を出射するレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0018】
コリメータ112は、複数の出射器111の各々に配置される。コリメータ112は、出射器111から出射されたレーザ光を、平行光101に変換する。変換後の平行光101は、光源11から出射される。光源11から出射された平行光101は、空間光変調器12の変調部120に向けて進行する。なお、光源11と空間光変調器12との距離などに応じて、コリメータが省略されてもよい。
【0019】
空間光変調器12は、位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器12は、変調部120を有する。変調部120には、複数の変調領域が設定される。変調部120に設定される変調領域の数は、光源11に含まれる出射器111の数に合わせて設定される。
【0020】
図3は、変調部120に設定される複数の変調領域Mの一例を示す概念図である。図3の例では、4個の変調領域M-1~4が設定される。隣接し合う変調領域Mの間には、不感帯Zが設定される。不感帯Zには、黒いストライプ状の位相画像が設定される。複数の変調領域M-1~4の各々は、光源11に含まれる複数の出射器111-1~4の各々に、対応付けられる。複数の出射器111-1~4と、複数の変調領域M-1~4とは、互いに正面の位置関係にあるものが対応付けられる。複数の変調領域M-1~4の各々には、対応付けられた出射器111-1~4の各々から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。
【0021】
変調領域M-1には、出射器111-1から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-2には、出射器111-2から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-3には、出射器111-3から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-4には、出射器111-4から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。出射器111から出射されたレーザ光に由来する平行光101が、変調領域Mの変調面に対して入射されれば、変調領域Mと出射器111との対応関係は、上記の対応関係に限定されない。
【0022】
複数の変調領域M-1~4の各々には、制御部17の制御に応じて、投射光105によって表示される像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部120に設定された複数の変調領域M-1~4の各々に入射した平行光101は、複数の変調領域M-1~4の各々に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域M-1~4の各々で変調された変調光102は、平凸レンズ13を介して、それらの変調領域M-1~4の各々に対応付けられた反射ユニット150に含まれる曲面ミラー155の反射面に向けて進行する。
【0023】
変調領域Mは、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調領域Mは、所望のアスペクト比の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。変調領域Mに設定された複数のタイルの各々には、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。変調領域Mに割り当てられた複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調領域Mに平行光101が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光102が出射される。変調領域Mに設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調領域Mに設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0024】
例えば、空間光変調器12は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器12は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器12は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器12では、投射光105を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器12を用いる場合、光源11の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0025】
平凸レンズ13(集光器ともよぶ)は、空間光変調器12と投射機構15との間に配置される。平凸レンズ13は、曲面状の入射面と、平面状の出射面とを有する。平凸レンズ13の入射面(曲面)は、空間光変調器12に向けられる。平凸レンズ13の出射面(平面)は、投射機構15に向けられる。平凸レンズ13には、空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102が入射する。平凸レンズ13は、入射した変調光102を平行光に変換する。平行光に変換された変調光102は、投射機構15に向けて出射される。本実施形態においては、複数の変調領域M-1~4の各々で変調された変調光102が、それらの変調領域M-1~4の各々に対応付けられた反射ユニット150の曲面ミラー155の反射面1550に向けて出射される。
【0026】
例えば、平凸レンズ13は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料が、平凸レンズ13に適用できる。例えば、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスが、平凸レンズ13に適用できる。例えば、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスが、平凸レンズ13に適用できる。例えば、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスが、平凸レンズ13に適用できる。例えば、石英ガラスが、平凸レンズ13に適用できる。例えば、サファイア等の結晶が、平凸レンズ13に適用できる。例えば、アクリル等の透明樹脂が、平凸レンズ13に適用できる。
【0027】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、平凸レンズ13には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、平凸レンズ13には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、平凸レンズ13には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、平凸レンズ13には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、平凸レンズ13の材質には限定を加えない。平凸レンズ13の材質は、求められる屈折率に応じて、適宜選択されればよい。
【0028】
投射機構15は、複数の反射ユニット150を含む。反射ユニット150は、支持棒152、回転機構153、回転軸154、および曲面ミラー155によって構成される。複数の反射ユニット150は、支柱151に固定される。支柱151は、複数の反射ユニット150が固定される柱である。支柱151は、送信装置10の筐体に固定される。支柱151は、平凸レンズ13の出射面(平面)に対して、垂直な方向に延伸された棒状の部材である。すなわち、支柱151は、平凸レンズ13の光軸に対して、垂直な方向に延伸される。
【0029】
図4は、投射機構15に含まれる反射ユニット150の構成の一例を示す概念図である。反射ユニット150には、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mのうちいずれかで変調された変調光102が照射される。本実施形態では、4個の変調領域Mのうちいずれかで変調された変調光102が、4個の反射ユニット150のうちいずれかに照射される。複数の変調領域Mの各々で変調された変調光102が照射される反射ユニット150は、投射光105の投射方向などの都合に合わせて、任意に入れ替えることができる。反射ユニット150は、曲面ミラー155、回転機構153、回転軸154、および支持棒152によって構成される。反射ユニット150は、支持棒152によって、支柱151に固定される。
【0030】
支持棒152は、回転機構153を支柱151に固定する部材である。本実施形態において、支持棒152の軸方向は、支柱151の延伸方向に対して垂直である。支持棒152の軸方向は、支柱151の延伸方向に対して非垂直であってもよい。
【0031】
回転機構153は、支持棒152によって、支柱151に支持される電動機である。回転機構153は、曲面ミラー155を回転可能に支持する。本実施形態において、回転機構153の回転面は、支柱151の延伸方向に対して垂直である。回転機構153の回転面は、支柱151の延伸方向に対して非垂直であってもよい。回転機構153には、回転軸154が設置される。回転機構153は、制御部17の制御に応じて、回転軸154を回転させる。例えば、回転機構153は、回転角の回転制御が可能なステッピングモーターなどのモーターによって実現される。ステッピングモーターであれば、駆動部(図示しない)に入力されるパルス信号のパルス数に応じて、回転角を制御できる。
【0032】
回転軸154は、回転機構153に回転可能に支持される。回転軸154は、曲面ミラー155を、回転機構153に回転可能に支持する。本実施形態において、回転軸154の軸方向は、支柱151の延伸方向に対して垂直である。すなわち、平凸レンズ13の光軸と、回転軸154の軸方向とは、一致する。平行光に変換後の変調光102の光軸と、回転軸154の軸方向とが一致すれば、曲面ミラー155の反射面1550を回転することによって、360度の方向に空間光信号を送信できる。空間光信号の送信方向が限定されてもよい場合、回転軸154の軸方向は、支柱151の延伸方向に対して非垂直であってもよい。回転軸154は、回転機構153の駆動に応じて、回転する。回転軸154の回転に応じて、曲面ミラー155の反射面1550の向きが変わる。
【0033】
曲面ミラー155は、回転軸154によって、回転機構153に回転可能に支持される。曲面ミラー155は、曲面状の反射面1550を有する反射鏡である。曲面ミラー155の反射面1550は、投射光105の投射方向に応じた角度に調整される。曲面ミラー155の反射面1550は、投射光105の投射角に応じた曲率を有する。例えば、曲面ミラー155の反射面1550の曲率は、投射光105の投射角が6度程度になるように、調整される。曲面ミラー155の反射面1550は、曲面状の部分を含めば、その形状に限定を加えない。例えば、曲面ミラー155の反射面1550は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー155の反射面1550は、自由曲面や球面でもよい。例えば、曲面ミラー155の反射面1550は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー155の反射面1550は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0034】
曲面ミラー155は、空間光変調器12の変調部120に反射面1550を向けて、配置される。曲面ミラー155は、対応付けられた変調領域Mで変調された変調光102の光路上に配置される。曲面ミラー155は、対応付けられた変調領域Mで変調された変調光102のうち、不要な光成分(不要光とも呼ぶ)が照射されない位置に配置される。反射面1550には、変調部120で変調された変調光102のうち、投射対象の光成分(所望光とも呼ぶ)が照射される。反射面1550に照射された変調光102は、その反射面1550で反射される。反射面1550で反射された光(投射光105)は、その反射面1550の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。反射面1550が曲率を有するため、曲面ミラー155が配置された範囲内に照射された変調光102に応じた投射光105の投射角度の調整範囲が広がる。曲面ミラー155の替わりに、平面ミラーも適用できる。しかし、曲面ミラー155と比べて、平面ミラーでは、投射光105の投射角度の調整範囲が狭い。また、曲面ミラー155の後段に、投射光105の広がりを制限するために、レンズ(図示しない)が配置されてもよい。
【0035】
複数の反射ユニット150の各々に含まれる曲面ミラー155の反射面1550は、空間光変調器12の変調部120に向けられる。曲面ミラー155の反射面1550で反射された光(投射光105)は、その反射面1550における変調光102の照射範囲の曲率に応じて拡大される。また、投射光105は、送信装置10から離れるにつれて、拡がっていく。
【0036】
複数の反射ユニット150の各々に含まれる曲面ミラー155は、互いに異なる方向に反射面1550を向けて配置される。複数の反射ユニット150の各々に含まれる曲面ミラー155は、互いに同じ方向に反射面1550を向けるように調整されてもよい。図1においては、支柱151の延伸方向に対して垂直な方向に、投射光105が投射される。投射光105は、送信装置10の筐体に開けられたスリット(図示しない)を介して、空間光信号として送信される。
【0037】
光吸収体16は、光を吸収する部材である。光吸収体16は、平凸レンズ13によって集光された変調光102のうち、投射光105として投射されなかった光成分の光路に配置される。例えば、光吸収体16は、筐体の内部に配置される。例えば、光吸収体16は、カーボンなどの黒体である。光の吸収率が高い素材であれば、光吸収体16の材質については、限定を加えない。光吸収体16と同様に、支柱151や支持棒152、回転機構153、回転軸154の表面に、光を吸収する部材が設けられてもよい。
【0038】
図5は、空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102によって形成される画像について説明するための概念図である。図5は、平凸レンズ13の後段の投射機構15における画像形成範囲を示す。位相変調型の空間光変調器12を用いる場合、回折現象を利用して画像を結像させるため、回折格子と同じように高次画像が発生する。図5の例では、画像形成範囲において、投射対象の0次画像(所望画像PE)が表示される。画像形成範囲には、0次光が表示される。また、画像形成範囲において、0次光を中心として所望画像PEの点対称の位置や、0次光から等間隔Iだけ離れた位置に、高次画像(ゴースト像GE)が表示される。1次画像以上の次数の画像が高次画像である。高次画像は、次数の増加に応じて電力が低くなるため、次数が大きくなるほど視認しづらくなる。しかし、高次画像は、完全に視認できなくなるわけではない。0次光や高次画像は、不要な光成分(不要光)である。本実施形態においては、0次光や高次画像などの不要光が投射される位置を避けて、曲面ミラー155が配置される。そのため、本実施形態においては、不要光を含まない所望画像が形成される投射光105が投射される。
【0039】
図6は、曲面ミラー155が配置される位置について説明するための概念図である。図6は、平凸レンズ13の後段の投射機構15における画像形成範囲を示す。中心点の位置には0次光が表示される。複数の曲面ミラー155は、0次光の位置を中心とする円弧上に配置される。ハッチングで塗りつぶされた円内の領域(領域A、領域B、領域C、領域D)に、曲面ミラー155が配置される。破線で囲われた円内の領域(領域a、領域b、領域c、領域d)には、曲面ミラー155が配置される領域に表示される所望画像PEのゴースト像GEが表示される。領域a~dは、0次光の位置を中心として、領域A~Dに対して点対称の領域である。図6のように、領域aには、領域Aに表示された所望画像PEのゴースト像GEが表示される。同様に、領域b~dには、領域B~Dに表示された所望画像のゴースト像が表示される(図示しない)。また、領域Aの近傍に、領域Aに表示された所望画像PEのゴースト像GEが表示される。同様に、領域B~Dの近傍に、領域B~Dに表示された所望画像のゴースト像が表示される(図示しない)。曲面ミラー155は、0次光の位置に対して同一方向の高次光(1次光)が入射しない大きさに設定される。
【0040】
制御部17は、光源11、空間光変調器12、および回転機構153を制御する。例えば、制御部17は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御部17は、送信装置10の管理者等によって設定された送信方向に曲面ミラー155の反射面1550が向くように、回転機構153を制御する。回転機構153を制御するタイミングは、予め設定しておけばよい。制御部17は、空間光変調器12の変調部120に設定されたタイリングのアスペクト比に合わせて、投射される画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。制御部17は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mの各々に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。例えば、制御部17は、画像表示や通信、測距など、用途に応じた画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0041】
制御部17は、変調部120に照射される平行光101の位相と、その変調部120で反射される変調光102の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように、空間光変調器12を制御する。例えば、パラメータは、屈折率や光路長などの光学的特性に関する値である。例えば、制御部17は、空間光変調器12の変調部120に印加する電圧を変化させることによって、変調部120の屈折率を調節する。位相変調型の空間光変調器12の変調部120に照射された平行光101の位相分布は、変調部120の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部17による空間光変調器12の駆動方法は、空間光変調器12の変調方式に応じて決定される。
【0042】
制御部17は、表示される画像に対応する位相画像が変調部120に設定された状態で、光源11を駆動させる。その結果、空間光変調器12の変調部120に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源11から出射された平行光101が空間光変調器12の変調部120に照射される。空間光変調器12の変調部120に照射された平行光101は、空間光変調器12の変調部120において変調される。空間光変調器12の変調部120において変調された変調光102は、曲面ミラー155の反射面1550に向けて出射される。
【0043】
また、制御部17は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源11から出射される平行光101を変調させる。通信において、制御部17は、通信用の位相画像を空間光変調器12の変調部120に設定した状態で、光源11から平行光101を出射させるタイミングを制御することで、平行光101を変調させる。通信における平行光101の変調パターンは、任意に設定される。例えば、制御部17とは別に、通信用の構成(通信部)が追加されてもよい。その場合、制御部17は、通信部によって設定された条件に応じて、光源11および空間光変調器12を制御するように構成されればよい。
【0044】
例えば、送信装置10に含まれる曲面ミラー155の反射面1550の曲率と、空間光変調器12と曲面ミラー155の距離とを調整すれば、投射光105の投射角を任意の角度に設定できる。また、送信装置10の内部において、変調光102の光路上に平面鏡が配置されれば、投射光105の投射角を多様に設定できる。例えば、360度の向きに投射光を投射するように構成された送信装置10と、360度の方向から到来する空間光信号を受光するように構成された受信装置とを組み合わせた構成とする。このような構成とすれば、360度の向きに空間光信号を送信し、360度の方向から到来する空間光信号を受光する通信装置を実現できる。
【0045】
図7は、曲面ミラー155によって反射された投射光105(空間光信号)の送信範囲について説明するための概念図である。図7は、平凸レンズ13の後段の投射機構15における画像形成範囲を示す。0次光が表示される位置に、支柱151が配置される。また、図7には、制御部17と基板(図示しない)を接続する配線等を配置するための支柱158の位置を図示する。図7には、領域A~Dに配置された曲面ミラー155によって反射された投射光105の投射範囲を示す。領域Aに配置された曲面ミラー155の投射範囲RAは、点線の範囲内である。領域Bに配置された曲面ミラー155の投射範囲Rは、破線の範囲内である。領域Cに配置された曲面ミラー155の投射範囲Rは、一点鎖線の範囲内である。領域Dに配置された曲面ミラー155の投射範囲Rは、二点鎖線の範囲内である。投射範囲R、投射範囲R、投射範囲R、および投射範囲Rは、支柱151および支柱158を避けた範囲に設定される。
【0046】
図7には、支柱151および支柱158の方向に投射された投射光105の投射方向の一例を矢印で示す。図7の例では、領域Bに配置された曲面ミラー155によって反射された投射光105は、矢印の方向にある支柱151および支柱158によって妨げられる。しかし、領域A、領域C、および領域Dに配置された3つの曲面ミラー155は、支柱151および支柱158の方向に、投射光105(空間光信号)を投射できる。すなわち、図7の例では、領域Bに配置された曲面ミラー155ではカバーできない投射範囲を、領域A、領域C、および領域Dに配置された3つの曲面ミラー155によってカバーできる。そのため、本実施形態の手法によれば、360度の方向に向けて、空間光信号を送信できる。
【0047】
図8は、送信装置10による空間光信号の送信方向の一例について説明するための概念図である。図8は、平凸レンズ13の後段の投射機構15における画像形成範囲を示す。図8の例では、30度程度の狭い送信方向に向けて、4つの曲面ミラー155によって空間光信号(投射光105)を送信する。例えば、複数の通信対象が狭い投射範囲内にある場合、それぞれの通信対象に対して異なる空間光信号を送信する必要がある。そのような場合、複数の曲面ミラー155を用いて、図8のような狭範囲に複数の空間光信号を送信すれば、それぞれの通信対象と個別に通信できる。
【0048】
図9図10は、光源11に含まれる複数の出射器111-1~4から出射されたレーザ光に由来する変調光102の照射パターンの自由度について説明するための概念図である。図9図10は、平凸レンズ13の後段の投射機構15における画像形成範囲を示す。図9図10には、複数の領域に照射されたビーム(ビームL1、ビームL2、ビームL3、ビームL4)の位置の目安を、ハッチングで示す。
【0049】
図9は、単一の出射器111-1から出射されたレーザ光に由来するビームL1が、複数の領域に照射される例である。図9の例では、出射器111-1からのビームL1が、複数の領域(A、B、C、D)に照射される。単一の出射器111から出射されたレーザ光に由来する変調光102を、複数の曲面ミラー155で反射させれば、複数の通信対象に対して同じ空間光信号を同時に送信できる。
【0050】
図10は、複数の出射器111-1から出射されたレーザ光に由来する変調光102が、同じ領域に照射される例である。出射器111-1からのビームL1は、領域Aおよび領域Cに照射される。出射器111-2からのビームL2は、領域Aおよび領域Bに照射される。出射器111-3からのビームL3は、領域Bおよび領域Dに照射される。出射器111-4からのビームL4は、領域Cおよび領域Dに照射される。複数の出射器111からレーザ光に由来する変調光102を、複数の曲面ミラー155で反射させれば、空間光信号を空間多重化できる。空間多重化された空間光信号を用いれば、同一の通信対象に対して、異なるチャネルで受信される空間光信号を送信できる。複数の通信対象が互いに近接している場合、空間多重化された空間光信号を用いれば、それぞれの通信対象に向けた空間光信号を個別に送信できる。
【0051】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下においては、光源11の数を増やした変形例(変形例1)と、空間光信号の波長を多重化させた変形例(変形例2)とをあげる。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の変形例を限定するものではない。
【0052】
〔変形例1〕
図11は、変形例1について説明するための概念図である。図11は、本変形例の光源11-1が配置された送信装置の内部を斜め後方から見た図である。光源11-1は、6個の出射器111と6個のコリメータ112とを含む。複数の出射器111の各々は、いずれかのコリメータ112に対応付けられる。6個の出射器111および6個のコリメータ112は、2行×3列で格子状に配列される。格子状に配列された複数の出射器111から出射されたレーザ光に由来する平行光101は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mのいずれかに照射される。
【0053】
図12は、変調部120に設定される複数の変調領域Mの一例を示す概念図である。図12の例では、2行×3列の格子状に配列された6個の変調領域M-1~6が設定される。隣接し合う変調領域Mの間には、不感帯Zが設定される。不感帯Zには、黒いストライプ状の位相画像が設定される。複数の変調領域M-1~6の各々は、光源11に含まれる複数の出射器111の各々に、対応付けられる。複数の出射器111と複数の変調領域M-1~6とは、互いに正面の位置関係にあるものが対応付けられる。複数の変調領域M-1~6の各々には、対応付けられた出射器111から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。出射器111から出射されたレーザ光に由来する平行光101が、変調領域Mの変調面に対して入射されれば、変調領域Mと出射器111との対応関係には限定を加えない。
【0054】
複数の変調領域M-1~6の各々には、制御部17の制御に応じて、投射光105によって表示される像に応じたパターン(位相画像)が設定される。変調部120に設定された複数の変調領域M-1~6の各々に入射した平行光101は、複数の変調領域M-1~6の各々に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域M-1~6の各々で変調された変調光102は、平凸レンズ13を介して、それらの変調領域M-1~6の各々に対応付けられた反射ユニット150に含まれる曲面ミラー155の反射面に向けて進行する。
【0055】
図13は、曲面ミラー155が配置される位置について説明するための概念図である。図13は、平凸レンズ13の後段の投射機構15における画像形成範囲を示す。中心点に配置された支柱151の位置には、0次光が表示される。複数の曲面ミラー155は、支柱151を中心とする円弧上に配置される。ハッチングで塗りつぶされた円内の領域(領域A、領域B、領域C、領域D、領域E、領域F)に、曲面ミラー155が配置される。破線で囲われた円内の領域(領域a、領域b、領域c、領域d、領域e、領域f)には、曲面ミラー155が配置される領域に表示される所望画像のゴースト像が表示される。領域a~fは、0次光の位置を中心として、領域A~Fに対して点対称の領域である。領域a~fには、領域A~Fに表示された所望画像のゴースト像が表示される(図示しない)。また、領域A~Fの近傍に、領域A~Fに表示された所望画像のゴースト像が表示される(図示しない)。曲面ミラー155は、0次光の位置に対して同一方向の高次光(1次光)が入射しない大きさに設定される。
【0056】
本変形例においては、6個の出射器111が含まれる光源11-1の例をあげた。出射器111の数は、用途に応じて設定できる。例えば、複数の出射器111は、3行以上重ねられて配置されてもよい。空間光変調器12の変調部120には、出射器の数に応じた変調領域Mが設定される。また、図9図10のような例に対応させるために、出射器111と変調領域Mの数が異なっていてもよい。出射器111の数が増えるほど、曲面ミラー155は、大きさが小さくなり、曲率が大きくなる。そのため、ゴースト像を避けるように、曲面ミラー155を配置しやすくなる。出射器111の数が増えても、形成される画像に変化はない。
【0057】
〔変形例2〕
図14は、変形例2について説明するための概念図である。図14は、側方の視座から見た図である。本変形例は、同一の反射ユニット150を用いて、異なる波長の空間光信号を波長多重化させる。
【0058】
図14の例では、波長W1と波長W2の空間光信号を送信する。空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102によって形成される画像形成範囲の画角は、出射器111から出射されるレーザ光の波長に依存する。レーザ光の波長が大きいほど、画角が広がる。図14の例の場合、波長W1(一点鎖線)と比べて、波長W2(二点鎖線)の方が大きい。異なる波長の出射器111から出射されたレーザ光(平行光101)を、波長に応じて変調部120の異なる位置に照射することで、同じ点を通過する変調光102を形成できる。そのようにすれば、波長の異なる光成分を含む空間光信号(投射光105-2)を、同じ方向に多重化して送信できる。すなわち、本変形例の手法によれば、波長多重化された空間光信号を、同一の通信対象に対して送信できる。多重化させる波長の数は、出射器111の数に応じて、3つ以上にも設定できる。
【0059】
本変形例の手法を用いる場合、通信対象(図示しない)は、複数の波長帯の光を受光する受光素子を備えればよい。通信対象に到達した光信号は、波長帯に応じた受光素子によって、受光される。
【0060】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、集光器、投射機構、光吸収体、および制御部を備える。光源は、複数の出射器を含む。例えば、複数の出射器は、レーザ光を出射する。空間光変調器は、複数の変調領域が設定される変調部を有する。集光器は、複数の変調領域で変調された変調光を平行光に変換する。例えば、集光器は、空間光変調器の変調部に凸面を向け、投射機構に平面を向けて配置された平凸レンズである。投射機構は、集光器の後段に配置される。投射機構は、反射ユニットを少なくとも一つ含む。少なくとも一つの反射ユニットは、集光器の光軸に対して垂直に延伸された支柱に支持される。反射ユニットは、回転機構と曲面ミラーを含む。曲面ミラーは、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有する。曲面ミラーは、変調光に含まれる0次光および高次画像が投射される領域を避けた位置に配置される。回転機構は、曲面ミラーを回転可能に支持する。制御部は、回転機構を制御することで、曲面ミラーの反射方向を反射ユニットごとに調整する。制御部は、空間光通信に用いられる位相画像を複数の変調領域に設定する。制御部は、複数の変調領域の各々に光が照射されるように、複数の出射器を制御する。光吸収体は、集光器によって集光された光のうち、投射機構によって反射されなかった光成分を吸収する。
【0061】
本実施形態においては、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光が、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域に照射される。複数の変調領域で変調された変調光のうち空間光信号として送信される光成分は、複数の変調領域の各々に対応付けられたいずれかの曲面ミラーによって、空間光信号として送信される。曲面ミラーの反射面の向きは、制御部によって、反射ユニットごとに調整される。そのため、本実施形態の送信装置によれば、曲面ミラーの反射面の向きを反射ユニットごとに調整することによって、任意の方向に空間光信号を送信できる。
【0062】
本実施形態の一態様において、制御部は、複数の出射器のうち少なくとも一つから出射された光に由来する変調光が、複数の反射ユニットに含まれる曲面ミラーに向けて照射されるように、光源を制御する。本態様によれば、単一の出射器から出射された光に由来する変調光を、複数の曲面ミラーで反射させることによって、複数の通信対象に対して同じ空間光信号を同時に送信できる。
【0063】
本実施形態の一態様において、制御部は、複数の出射器のうち少なくとも二つから出射された光に由来する変調光が、複数の反射ユニットに含まれる同じ曲面ミラーに向けて照射されるように、光源を制御する。本態様によれば、出射された光に由来する変調光を、複数の曲面ミラーで反射させることによって、空間光信号を空間多重化できる。
【0064】
本実施形態の一態様において、複数の曲面ミラーは、互いに異なる方向に反射面を向けて、配置される。本態様によれば、互いに異なる投射方向に反射面を向けて配置された複数の曲面ミラーによって、多様な方向の通信対象に向けて、空間光信号を送信できる。例えば、本態様によれば、複数の曲面ミラーが備える反射面の向きや曲率を調整することによって、同一の基準面(例えば、水平面内)における360度の方向に空間光信号を送信できる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、受信装置と送信装置とを組み合わせた構成である。送信装置は、第1の実施形態の構成である。受信装置は、空間光信号を受信する。以下においては、ボールレンズを含む受光機能を備えた受信装置の例をあげる。なお、本実施形態の通信装置は、ボールレンズを含まない受光機能を含む受信装置を備えてもよい。
【0066】
図15は、本実施形態に係る通信装置20の構成の一例を示す概念図である。通信装置20は、送信装置21、制御装置25、および受信装置27を備える。通信装置20は、外部の通信対象と空間光信号を送受信し合う。そのため、通信装置20には、空間光信号を送受信するための開口や窓が形成される。
【0067】
送信装置21は、第1の実施形態の送信装置である。送信装置21は、制御装置25から制御信号を取得する。送信装置21は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送信装置21から投射された空間光信号は、その空間光信号の送信先の通信対象(図示しない)によって受光される。
【0068】
制御装置25は、受信装置27から出力された信号を取得する。制御装置25は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置25が実行する処理については、特に限定を加えない。制御装置25は、実行した処理に応じた光信号を送信するための制御信号を、送信装置21に出力する。例えば、制御装置25は、受信装置27が受信した信号に含まれる情報に応じて、予め決められた条件に基づく処理を実行する。例えば、制御装置25は、受信装置27が受信した信号に含まれる情報に応じて、通信装置20の管理者によって指定された処理を実行する。
【0069】
受信装置27は、通信対象(図示しない)から送信された空間光信号を受信する。受信装置27は、受信した空間光信号を電気信号に変換する。受信装置27は、変換後の電気信号を制御装置25に出力する。例えば、受信装置27は、ボールレンズを含む受光機能を備える。また、受信装置27は、ボールレンズを含まない受光機能を有してもよい。
【0070】
〔受信装置〕
次に、受信装置27の構成について図面を参照しながら説明する。図16は、受信装置27の構成の一例について説明するための概念図である。受信装置27は、ボールレンズ271、受光素子273、および受信回路275を備える。図16は、受信装置27の内部構成を横方向から見た側面図である。受信回路275の位置については、特に限定を加えない。受信回路275は、受信装置27の内部に配置されてもよいし、受信装置27の外部に配置されてもよい。また、受信回路275の機能を制御装置25に含めてもよい。
【0071】
ボールレンズ271は、球形のレンズである。ボールレンズ271は、通信対象から送信された空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ271は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ271の一部は、受信装置27の筐体に開けられた開口から突出する。ボールレンズ271は、入射された空間光信号を集光する。開口から突出したボールレンズ271に入射した空間光信号が集光される。空間光信号を集光できさえすれば、ボールレンズ271の一部は、開口から突出していなくてもよい。
【0072】
ボールレンズ271によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、そのボールレンズ271の集光領域に向けて集光される。ボールレンズ271は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ271は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。ボールレンズ271に入射した光は、ボールレンズ271の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ271の内部を進行する光は、ボールレンズ271の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ271から出射される光の大部分は、集光領域に集光される。
【0073】
例えば、ボールレンズ271は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ271は、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料によって実現できる。例えば、ボールレンズ271は、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ271は、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ271は、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ271には、石英ガラスが適用できる。例えば、ボールレンズ271には、サファイア等の結晶が適用できる。例えば、ボールレンズ271には、アクリル等の透明樹脂が適用できる。
【0074】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ271には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ271には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ271には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ271には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ271の材質には限定を加えない。ボールレンズ271の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0075】
ボールレンズ271は、受光素子273の配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その他の集光器によって代替されてもよい。例えば、ボールレンズ271は、入射した空間光信号を、受光素子273の受光部に向けて導光する光線制御素子であってもよい。例えば、ボールレンズ271は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成であってもよい。例えば、ボールレンズ271によって集光される光信号を、受光素子273の受光部に向けて導光する機構が、追加されてもよい。
【0076】
受光素子273は、ボールレンズ271の後段に配置される。受光素子273は、ボールレンズ271の集光領域に配置される。受光素子273は、ボールレンズ271によって集光された光信号を受光する受光部を有する。ボールレンズ271によって集光された光信号は、受光素子273の受光部で受光される。受光素子273は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。受光素子273は、変換後の信号を、受信回路275に出力する。図16には、受光素子273が単一の例を示す。例えば、ボールレンズ271の集光領域に、複数の受光素子273が配置されてもよい。例えば、ボールレンズ271の集光領域に、複数の受光素子273がアレイ化された受光素子アレイが配置されてもよい。
【0077】
図17は、ボールレンズ271の集光領域に2つの受光素子273-1~2が配置された受信装置27の一例(受信装置27-1)を示す概念図である。受光素子273-1と受光素子273-2は、異なる波長帯の光を受光する。受光素子273-1および受光素子273-2によって受光された光信号は、受信回路275によって、個別に処理される。異なる波長帯の光を個別に処理できれば、それらの波長帯で波長多重化された光信号を処理できる。ボールレンズ271の集光領域に配置できれば、受光素子273の数には限定を加えない。
【0078】
受光素子273は、受信対象である空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子273は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子273は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子273は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子273が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子273が受光する光の波長帯は、受信対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子273が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子273が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子273は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子273よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0079】
例えば、受光素子273は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子273は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子273は、高速通信に対応できる。なお、受光素子273は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子273の受光部は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子273の受光部は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子273の受光部は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子273の受光部の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0080】
例えば、受光素子273の前段に、偏光フィルタ(図示しない)が配置されてもよい。偏光フィルタは、受光素子273の受光部に対応付けて配置される。例えば、偏光フィルタは、受光素子273の受光部に、重ねて配置される。例えば、偏光フィルタは、受信対象の空間光信号の偏光状態に応じて選択されてもよい。例えば、受信対象の空間光信号が直線偏光の場合、偏光フィルタは1/2波長板を含む。例えば、受信対象の空間光信号が円偏光の場合、偏光フィルタは1/4波長板を含む。偏光フィルタの偏光特性に応じて、その偏光フィルタを通過した光信号の偏光状態が変換される。
【0081】
受信回路275は、受光素子273から出力された信号を取得する。受信回路275は、受光素子273からの信号を増幅する。受信回路275は、増幅された信号をデコードする。受信回路275によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路275によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0082】
〔通信装置〕
図18は、通信装置20の一例(通信装置201)を示す概念図である。通信装置201は、送信器210、受信器270、および制御装置(図示しない)を備える。図18では、受信回路や制御装置を省略する。通信装置201は、円筒状の外形を有する送信器210および受信器270を組み合わせた構成を有する。
【0083】
受信器270は、ボールレンズ271、受光器272、カラーフィルタ276、支持部材277、および導線278を含む。ボールレンズ271は、上下に配置された一対の支持部材277によって、上下の部分を挟持される。ボールレンズ271の上下は、空間光信号の送受信に用いられないため、支持部材277で挟持されやすいように、平面状に加工されてもよい。受光器272は、受信対象の空間光信号を受信できるように、ボールレンズ271の集光領域に合わせて配置される。受光器272は、複数の受光素子が環状に配列された受光素子アレイを有する。複数の受光素子は、ボールレンズ271の集光領域に配置される。複数の受光素子は、ボールレンズ271に受光部を向けて配置される。複数の受光素子は、導線278によって、制御装置(図示しない)や送信器210に接続される。
【0084】
円筒状の受信器270の側面には、カラーフィルタ276が配置される。カラーフィルタ276は、不要な光を除去し、通信に用いられる空間光信号を選択的に透過する。円筒状の受信器270の上下面には、一対の支持部材277が配置される。一対の支持部材277は、ボールレンズ271の上下を挟持する。ボールレンズ271の出射側には、環状に形成された受光器272が配置される。カラーフィルタ276を介してボールレンズ271に入射した空間光信号は、ボールレンズ271によって、受光器272に向けて集光される。受光器272に集光された光信号は、いずれかの受光素子の受光部に向けて導光される。受光素子の受光部に到達した光信号は、その受光素子によって受光される。制御装置(図示しない)は、受光器272に含まれる受光素子よって受光された光信号に応じて、送信器210から空間光信号を送信させる。
【0085】
送信器210は、第1の実施形態の送信装置10によって構成される。送信器210は、円筒状の筐体の内部に収納される。円筒状の筐体には、送信器210による空間光信号の送信方向に合わせて開口されたスリットが形成される。例えば、送信器210が360度の方向に空間光信号を送信できる場合、送信器210の筐体の側面には、空間光信号の送信方向に合わせて、スリットが形成される。
【0086】
〔適用例〕
次に、本実施形態の通信装置20の適用例について図面を参照しながら説明する。以下においては、2つの適用例(適用例1~2)をあげる。以下の適用例では、複数の通信装置が、空間光信号を送受信する例をあげる。いずれの通信装置も、第2の実施形態に係る通信装置の構成を有する。
【0087】
<適用例1>
図19は、適用例1について説明するための概念図である。本適用例では、街中に配置された電柱や街灯などの柱の上部(柱上空間とも呼ぶ)に、複数の通信装置201が配置された通信ネットワークの一例(通信システムとも呼ぶ)をあげる。
【0088】
柱上空間には障害物が少ない。そのため、柱上空間は、通信装置201を設置するのに適している。また、同程度の高さに通信装置201を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定される。そのため、受信器270を構成する受光器の受光面積を小さくして、装置を簡略化できる。空間光信号を送受信し合う通信装置201のペアは、少なくとも一方の通信装置201が、他方の通信装置201から送信された空間光信号を受光するように配置される。通信装置201のペアは、空間光信号を互いに送受信するように配置されてもよい。複数の通信装置201で空間光信号の通信ネットワークが構成される場合、中間に位置する通信装置201は、他の通信装置201から送信された空間光信号を、別の通信装置201に中継するように配置されてもよい。
【0089】
本適用例によれば、柱上空間に配置された複数の通信装置201の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、通信装置201の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置や基地局と通信装置201との間で、無線通信による通信が行われてもよい。例えば、柱に設置された通信ケーブル等を介して、通信装置201がインターネットに接続されてもよい。
【0090】
<適用例2>
図20は、適用例2の通信装置202について説明するための概念図である。本適用例の通信装置202は、空間多重化された空間光信号の送受信に用いられる。通信装置202は、送信器210と2つの受信器270を備える。図20の例では、送信器210の上方に、2つの受信器270が重ねて配置される。送信器210は、2つの受信器270の間に配置されてもよいし、2つの受信器270の上方に配置されてもよい。2つの受信器270は、同じ波長帯の空間光信号を受光するように構成されてもよいし、異なる波長帯の空間光信号を受光するように構成されてもよい。
【0091】
図21は、複数の通信装置202が配置された通信ネットワークの一例(通信システム)の概念図である。複数の通信装置202の設置環境については、限定しない。例えば、適用例1のように、複数の通信装置202は、柱上空間に配置される。通信装置202は、送信器210に含まれる複数の反射ユニットのうち2つを多重化させることによって、他の通信装置20に対して空間多重化された空間光信号を送信する。通信装置202は、他の通信装置202から送信された、多重化された空間光信号を受光する。通信装置202は、受光した空間光信号を、通信対象ごとに処理する。すなわち、本適用例によれば、空間多重化された空間光信号を用いた通信が可能になる。
【0092】
以上のように、本実施形態の通信装置は、受信装置、送信装置、および制御装置を備える。送信装置は、光源、空間光変調器、集光器、投射機構、および制御部を備える。光源は、複数の出射器を含む。空間光変調器は、複数の変調領域が設定される変調部を有する。集光器は、複数の変調領域で変調された変調光を平行光に変換する。投射機構は、集光器の後段に配置される。投射機構は、反射ユニットを少なくとも一つ含む。少なくとも一つの反射ユニットは、集光器の光軸に対して垂直に延伸された支柱に支持される。反射ユニットは、回転機構と曲面ミラーを含む。曲面ミラーは、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率の反射面を有する。回転機構は、曲面ミラーを回転可能に支持する。制御部は、回転機構を制御することで、曲面ミラーの反射方向を反射ユニットごとに調整する。制御部は、空間光通信に用いられる位相画像を複数の変調領域に設定する。制御部は、複数の変調領域の各々に光が照射されるように、複数の出射器を制御する。受信装置は、空間光信号を受信する。制御装置は、受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得する。制御装置は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置は、実行した処理に応じた空間光信号を送信装置に送信させる。
【0093】
本実施形態の通信装置が備える送信装置においては、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光が、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域に照射される。複数の変調領域で変調された変調光のうち空間光信号として送信される光成分は、複数の変調領域の各々に対応付けられたいずれかの曲面ミラーによって、空間光信号として送信される。曲面ミラーの反射面の向きは、制御部によって、反射ユニットごとに調整される。そのため、本実施形態の通信装置によれば、曲面ミラーの反射面の向きを反射ユニットごとに調整することによって、任意の方向に送信可能な空間光信号を用いた空間光通信を実現できる。
【0094】
本実施形態の一態様の通信システムは、上記の通信装置を複数備える。通信システムにおいて、複数の通信装置は、空間光信号を互いに送受信し合うように配置される。本態様によれば、空間光信号を送受信する通信ネットワークを実現できる。
【0095】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、第1の実施形態の送信装置が簡略化された構成である。図22は、本実施形態に係る送信装置30の構成の一例を示す概念図である。図22は、送信装置30の内部構成を横方向から見た側面図である。送信装置30は、光源31、空間光変調器32、集光器33、および投射機構35を備える。光源31、空間光変調器32、集光器33、および投射機構35は、送信器300を構成する。
【0096】
光源31は、複数の出射器を含む。例えば、複数の出射器は、レーザ光を出射する。光源は、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光301を出射する。空間光変調器32は、複数の変調領域が設定される変調部320を有する。集光器33は、複数の変調領域で変調された変調光302を平行光に変換する。投射機構35は、集光器33の後段に配置される。投射機構35は、反射ユニット350を少なくとも一つ含む。反射ユニット350は、回転機構353と曲面ミラー355を含む。曲面ミラー355は、空間光信号として送信される投射光305の投射角に応じた曲率の反射面を有する。回転機構353は、曲面ミラー355を回転可能に支持する。制御部37は、回転機構353を制御することで、曲面ミラー355の反射方向を反射ユニット350ごとに調整する。制御部37は、空間光通信に用いられる位相画像を複数の変調領域に設定する。制御部37は、複数の変調領域の各々に光が照射されるように、複数の出射器を制御する。
【0097】
以上のように、本実施形態においては、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光が、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域に照射される。複数の変調領域で変調された変調光のうち空間光信号として送信される光成分は、複数の変調領域の各々に対応付けられたいずれかの曲面ミラーによって、空間光信号として送信される。曲面ミラーの反射面の向きは、制御部によって、反射ユニットごとに調整される。そのため、本実施形態の送信装置によれば、曲面ミラーの反射面の向きを反射ユニットごとに調整することによって、任意の方向に空間光信号を送信できる。
【0098】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図23の情報処理装置90(コンピュータ)を一例として挙げて説明する。なお、図23の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0099】
図23のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図23においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0100】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、各実施形態の制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0101】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0102】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0103】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0104】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0105】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0106】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0107】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。図23のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0108】
各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0109】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。各実施形態の構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0110】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0111】
10、30 送信装置
11、31 光源
12、32 空間光変調器
13 平凸レンズ
15、35 投射機構
16 光吸収体
17、37 制御部
20 通信装置
21 送信装置
25 制御装置
27 受信装置
33 集光器
111 出射器
112 コリメータ
150 反射ユニット
151 支柱
152 支持棒
153 回転機構
154 回転軸
155 曲面ミラー
201、202 通信装置
210 送信器
270 受信器
271 ボールレンズ
272 受光器
273 受光素子
275 受信回路
276 カラーフィルタ
277 支持部材
278 導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23