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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024288
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240215BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240215BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H01L21/52 C
H01L25/04 C
B22F7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127031
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】西澤 龍男
【テーマコード(参考)】
4K018
5F047
【Fターム(参考)】
4K018BA01
4K018BA02
4K018BB04
4K018BC29
4K018BD04
4K018DA11
4K018JA36
4K018KA22
4K018KA32
5F047AA17
5F047BA14
5F047BA15
5F047BB11
5F047BB16
(57)【要約】
【課題】本発明は、半導体モジュールの性能や信頼性の低下を防止することができる半導体モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体モジュールの製造方法は、下金型2Aの上に絶縁配線基板13を配置し、絶縁配線基板13の上の複数箇所に焼結材151a及び複数の焼結材151aのそれぞれの上に半導体チップ14aを配置し、複数の半導体チップ14aのそれぞれの周縁にはみ出した焼結材151aのはみ出し部151a-1の上に構造体5Aを配置し、はみ出し部151a-1には構造体5Aを介し、半導体チップ14aの接触部151a-2には半導体チップ14aを介して上金型3Aによって複数の焼結材151aを加圧及び加熱して焼結する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下金型の上に絶縁配線基板を配置し、
前記絶縁配線基板の上の複数箇所に焼結材及び複数の前記焼結材のそれぞれの上に半導体チップを配置し、
複数の前記半導体チップのそれぞれの周縁にはみ出した前記焼結材のはみ出し部の上に構造体を配置し、
前記焼結材の前記はみ出し部には前記構造体を介し、前記焼結材の前記半導体チップ下の部分には前記半導体チップを介して、上金型によって複数の前記焼結材を加圧及び加熱して焼結する
半導体モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記構造体は、複数の前記半導体チップのそれぞれと対応する箇所に前記半導体チップを挿入可能に形成された貫通孔を有するシート状を有し、前記半導体チップに対応させて前記貫通孔を配置した場合に前記はみ出し部の上に前記貫通孔の周縁部が配置される
請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記構造体の上に1つの緩衝材を配置し、
複数の前記焼結材、複数の前記半導体チップ、前記構造体及び前記緩衝材を前記上金型に形成された空間に内包した状態で、前記緩衝材と複数の前記半導体チップ及び前記構造体とを介して前記上金型によって複数の前記焼結材を加圧及び加熱して焼結する
請求項2に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記緩衝材は、250℃以上の耐熱性、0.2以下のポアソン比及びJIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さを有する
請求項3に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記構造体は、前記半導体チップを挿入可能に形成された環状を有し、前記半導体チップに対応させて前記構造体で囲まれる空間を配置した場合に前記はみ出し部の上に配置される
請求項1による半導体モジュールの製造方法。
【請求項6】
複数の前記半導体チップの上に前記構造体をそれぞれ個別に配置し、
複数の前記構造体の上に緩衝材をそれぞれ個別に配置し、
複数の前記半導体チップの配置位置に対応する箇所に凸部を有する前記上金型を、複数の前記半導体チップに複数の前記凸部を対応させて前記下金型の上方に配置し、
複数の前記緩衝材、複数の前記半導体チップ及び前記構造体を介して前記凸部によって複数の前記焼結材を加圧及び加熱して焼結する
請求項5に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記緩衝材は、250℃以上の耐熱性、0.2以下のポアソン比、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さ、及び1.5mm以上の厚さを有する
請求項6に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記緩衝材の側に向けられる複数の前記半導体チップの表面の高さが異なっている場合、前記高さの差を低減させるスペーサ部材を前記緩衝材の上に配置する
請求項6に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記高さの差が10μm以上の場合に複数の前記半導体チップのうちの前記高さが低い方に前記スペーサ部材を配置する
請求項8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項10】
複数の前記半導体チップを複数の前記焼結材の上に配置する前に、複数の前記半導体チップの配置位置に対応する箇所に開口部を有する位置決め治具を前記絶縁配線基板の上に配置する
請求項5に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記焼結材は、ペースト状又はシート状を有する
請求項1から10までのいずれか一項に記載の半導体モジュールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを備える半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体の技術分野では、半導体チップの絶縁基板への接合にはんだが用いられている。近年では、半導体チップとしてSiCチップを用いるために熱伝導と耐久性が高い焼結材を用いてSiCチップが絶縁基板に接合されるようになってきている。
【0003】
焼結材の形態には、ペースト状とシート状の2種類があるが、いずれの場合も焼結材接合をするには接合部に加圧と加熱を行う必要がある。絶縁基板の上に形成した焼結材の上に複数の半導体チップを置き、半導体チップの上面を押して加圧しながら加熱することにより、焼結反応を焼結材に発生させる。これにより、半導体チップと絶縁基板が接合される。
【0004】
特許文献1には、「放熱ベース、絶縁回路基板及び半導体チップを重ね合わせた接合対象部材を圧力容器の中に配置し、圧力容器内で接合対象部材の周囲に密に球状粉体層を充填し、圧力容器の上部から底面に向かって加圧板によって球状粉体層を加圧しながら、圧力容器の下部に設けた加熱機構により加熱することにより、半導体チップと絶縁回路基板の配線層とが焼結金属層によって接合される」ことが開示されている。
【0005】
特許文献2には、「開口部の中に弾性部材及び加圧ブロックが配置された上治具の上に上金型が、上治具の下に緩衝層が配置され、半導体チップが絶縁回路基板の上に焼結材を介して載置され、緩衝層が半導体チップ及び絶縁回路基板を覆うように設定される」ことが開示されている。
【0006】
特許文献3には、「絶縁回路基板の上に焼結材を介して半導体チップが配置され、半導体チップの上に加圧部が配置され、半導体チップの周囲及び間に枠材が配置され、加圧部及び半導体チップの間に半導体チップ及び枠材を覆うように緩衝層が配置され、緩衝層を介して加圧部によって半導体チップが加圧される」ことが開示されている。
【0007】
特許文献4には、「作動フラットガスケットを介して電子部品にプレスステムで押す」ことが開示されている。特許文献5には、「シール膜を介して電子部品をプレッサロッドで押す」ことが開示されている。特許文献6には、「半導体チップ(semiconductor die)よりも幅広に焼結材(sintering material)が配置される」ことが開示されている。
【0008】
特許文献7には、「ダイパッドと、ダイパッドに搭載されたSiCチップと、ダイパッドとSiCチップとを接合する多孔質の第1焼結Ag層と、第1焼結Ag層の表面を覆い、かつフィレット状に形成された補強樹脂部とを有している。さらにSiCチップのソース電極と電気的に接続するソースリードと、ゲート電極と電気的に接続するゲートリードと、ドレイン電極と電気的に接続するドレインリードと、SiCチップ、第1焼結Ag層およびダイパッドの一部を覆う封止体とを有しており、補強樹脂部は、SiCチップの側面の一部を覆っている。」ことが開示されている。
【0009】
特許文献8には、「金属導体の端面側から内部に向かって、金属導体を機械的に補強するポリイミドなどの補強樹脂が、金属導体の空孔に含浸されている」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-027288号公報
【特許文献2】特開2021-150548号公報
【特許文献3】特開2021-197447号公報
【特許文献4】国際公開第2020/008287号
【特許文献5】国際公開第2018/122795号
【特許文献6】米国特許第8835299号明細書
【特許文献7】特開2014-179541号公報
【特許文献8】特開2011-165871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
焼結材を用いて半導体チップと絶縁回路基板とを接合する場合、半導体チップが焼結材と接触する面積を広くするために、焼結材は、半導体チップよりも一回り大きく形成される。このため、焼結材には、半導体チップの周縁にはみ出す部分が生じる。
【0012】
焼結材を焼結させる従来の方法では、半導体チップを介して焼結材に圧力が加えられる。このため、半導体チップの下方に位置する焼結材の部分には所望の圧力を加えることができるが、半導体チップの周縁にはみ出した焼結材の部分には所望の圧力を加えることができない。焼結材が焼結されて形成された焼結金属層は、半導体チップの下方に位置する部分では所望の密度を有するが、半導体チップの周縁にはみ出した部分では所望の密度を有さない。その結果、当該焼結金属層は、当該はみ出した部分において所望の電気的特性、熱特性及び機械特性などが得られず、機械特性の低下が原因となって当該はみ出した部分がクラックの起点となる可能性がある。焼結金属層にクラックが発生すると、半導体チップと絶縁回路基板との接合部の電気特性や熱特性にむらが生じ、半導体チップ及び絶縁回路基板を有する半導体モジュールの性能や信頼性が低下するという問題が生じる。
【0013】
本発明の目的は、半導体モジュールの性能や信頼性の低下を防止することができる半導体モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による半導体モジュールの製造方法は、下金型の上に絶縁配線基板を配置し、前記絶縁配線基板の上の複数箇所に焼結材及び複数の前記焼結材のそれぞれの上に半導体チップを配置し、複数の前記半導体チップのそれぞれの周縁にはみ出した前記焼結材のはみ出し部の上に構造体を配置し、前記焼結材の前記はみ出し部には前記構造体を介し、前記焼結材の前記半導体チップ下の部分には前記半導体チップを介して、上金型によって複数の前記焼結材を加圧及び加熱して焼結する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、半導体モジュールの性能や信頼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールの概略構成の一例を示す断面模式図である。
図2】本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造方法における構造体の配置工程を模式的に示す図である。
図4】本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造方法における焼結材への加圧及び加熱工程を模式的に示す図である。
図5】本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造方法における緩衝材の除去工程及び上金型の退避工程を模式的に示す図である。
図6】本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造方法における構造体及び保護シートの除去工程並びに絶縁回路基板の取り外し工程を模式的に示す図である。
図7】比較例1による半導体モジュールの製造方法における焼結材の加圧及び加熱を行う機構部の配置工程を模式的に示す図である。
図8】比較例1による半導体モジュールの製造方法における焼結材の加圧及び加熱工程を模式的に示す図である。
図9】比較例1による半導体モジュールの製造方法における問題点を説明するための図である。
図10】比較例2による半導体モジュールの製造方法における焼結材の加圧及び加熱を行う機構部の配置工程を模式的に示す図である。
図11】比較例2による半導体モジュールの製造方法における焼結材の加圧及び加熱工程を模式的に示す図である。
図12】本発明の第2実施形態による半導体モジュールの製造方法における構造体の配置工程を模式的に示す図である。
図13】本発明の第2実施形態による半導体モジュールの製造方法における焼結材への加圧及び加熱工程を模式的に示す図である。
図14】本発明の第3実施形態による半導体モジュールの製造方法における構造体の配置工程及びスペーサ部材の配置工程を模式的に示す図である。
図15】本発明の第3実施形態による半導体モジュールの製造方法における焼結材への加圧及び加熱工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態による半導体モジュールの製造について図1から図11を用いて説明する。
【0019】
(半導体モジュールの構成)
本実施形態による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュール1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は、半導体モジュール1に備えられた絶縁配線基板13が配置された所定箇所で切断された半導体モジュール1の断面を模式的に示す図である。図1では、理解を容易にするため、封止樹脂18は、ハッチングが付されずに図示されている。
【0020】
図1に示すように、半導体モジュール1は、空間111を画定するケース11を備えている。ケース11は、例えば絶縁性の熱可塑性樹脂で形成されている。
【0021】
半導体モジュール1は、空間111に配置された絶縁配線基板13を備えている。絶縁配線基板13は、例えば矩形平板状を有する絶縁基板131を有している。絶縁配線基板13は、例えばDCB(Direct Copper Bonding)基板又はAMB(Active Matal Brazing)基板である。絶縁配線基板13は、絶縁基板131の上面(封止樹脂18(詳細は後述)側)に形成された複数の導電パターン133a,133b,133cと、絶縁基板131の下面(冷却器19(詳細は後述)側)に形成された矩形平板状の伝熱部材135とを有している。絶縁基板131は、例えばアルミナ(Al)や窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックスで形成されている。導電パターン133a,133b,133c及び伝熱部材135は、例えば銅で形成されている。
【0022】
半導体モジュール1は、導電パターン133a,133b,133cの上に形成された複数の焼結金属層15a,15b,15cと、複数の焼結金属層15a,15b,15cの上に配置された複数の半導体チップ14a,14b,14cとを備えている。焼結金属層15a,15b,15cは焼結材151a,151b,151c(図1では不図示、図3及び図4参照)が焼結されて形成される。このため、半導体チップ14aは焼結金属層15aによって導電パターン133aと接合され、半導体チップ14bは焼結金属層15bによって導電パターン133bと接合され、半導体チップ14cは焼結金属層15cによって導電パターン133cと接合されている。
【0023】
詳細は後述するが、本実施形態では、半導体チップ14a,14b,14cの配置位置に対応する箇所に凸部を有する上金型3A(図1では不図示、図3及び図4参照)を用いて、焼結材151a,151b,151cに対して個別に加圧及び加熱し、焼結材151a,151b,151cを焼結する。これにより、半導体チップ14a,14b,14cと絶縁配線基板13とを接合するための焼結材151a,151b,151cに均一に加圧及び加熱することができる。
【0024】
焼結材151a,151b,151cは、周囲を有機物でコーティングされた微細な金属粒子を有機溶媒に混合したものである。焼結材151a,151b,151cを接合対象物の間に配置した状態で加圧及び加熱することによって有機溶媒とコーティングしている有機物が気化し、露出した微細な金属粒子同士が融合して多孔質の焼結金属層15a,15b,15cが形成される。金属粒子としては、例えば粒径数マイクロメートルから数十マイクロメートルの銀(Ag)や銅(Cu)が用いられる。焼結金属層15a,15b,15cは、例えば銀系焼結材又は銅系焼結材によって形成される。焼結材151a,151b,151cは例えば、約200W/mK以上300W/mK以下(純銀は約400W/mK)の熱伝導率、約20×10-6/℃の熱膨張係数及び約960℃の融点を有している。このため、焼結材151a,151b,151cを焼結して形成された焼結金属層15a,15b,15cは、半導体モジュール1の使用温度(例えば150℃以上170℃以下)で安定した強度を有する。
【0025】
半導体チップ14aは、ケース11に設けられた端子16aとボンディングワイヤ17aによって接続されている。半導体チップ14bは、ケース11に設けられた端子(不図示)とボンディングワイヤ17bによって接続されている。半導体チップ14cは、ケース11に設けられた端子(不図示)とボンディングワイヤ17cによって接続されている。導電パターン133aは、ケース11に設けられた端子16bとボンディングワイヤ17dによって接続されている。導電パターン133bは、ケース11に設けられた端子(不図示)とボンディングワイヤ17eによって接続されている。導電パターン133cは、ケース11に設けられた端子(不図示)とボンディングワイヤ17fによって接続されている。
【0026】
半導体チップ14a,14b,14cには例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)やパワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)などのパワー半導体素子が形成されている。このため、半導体チップ14a,14b,14cに形成されたパワー半導体素子には、端子16a及びその他の端子並びにゲート制御用ボンディングワイヤ(不図示)を介して、半導体モジュール1に備えられた制御装置(不図示)から制御信号が入力される。これにより、当該パワー半導体素子は、所定のタイミングでオン/オフ制御され、外部から入力される例えば直流電力を交流電力に変換し、導電パターン133a,133b,133cに出力する。半導体モジュール1は、半導体チップ14a,14b,14cから焼結金属層15a,15b,15cを介して導電パターン133a,133b,133cに入力される交流電力をボンディングワイヤ17d,17e,17f並びに端子16b及びその他の端子を介して不図示の負荷(例えばモータ)に出力する。これにより、半導体モジュール1は、半導体チップ14a,14b,14cにおいて生成した交流電力によって負荷を駆動することができる。
【0027】
半導体モジュール1は、ケース11に取り付けられた冷却器19を備えている。伝熱部材135は、例えば焼結材によって形成された接合層12によって冷却器19に接続されている。なお、伝熱部材135は、はんだ材によって冷却器19に接続されていてもよい。半導体チップ14a,14b,14cに形成されたパワー半導体素子が動作する際に発生する熱は、伝熱部材135及び冷却器19を介して外部に放熱される。これにより、半導体モジュール1は、半導体チップ14a,14b,14cに形成されたパワー半導体素子が熱暴走することを防止できる。
【0028】
半導体モジュール1は、絶縁配線基板13、焼結金属層15a,15b,15c、半導体チップ14a,14b,14c及びボンディングワイヤ17a,17b,17c,17d,17e,17fを覆って空間111に形成された封止樹脂18を備えている。封止樹脂18は、ケース11と絶縁基板131との間を通って、ケース11、絶縁配線基板13及び伝熱部材19によって囲まれる領域にも形成される。封止樹脂18は、例えばエポキシ樹脂などのケース11とは異なる材料で形成されている。封止樹脂18は、空間111に設けられた半導体チップ14a,14b,14cや絶縁配線基板13などの構成要素を封止する封止部材である。封止樹脂18は、絶縁配線基板13を封止することによって、絶縁配線基板13に形成された導電パターン133a,133b,133cの間の絶縁性の向上を図ることができる。これにより、封止樹脂18は、半導体モジュール1の信頼性の向上を図ることができる。
【0029】
図1では、絶縁配線基板13には、3個の半導体チップ14a,14b,14cが並んで配置されているが、絶縁配線基板13に配置される半導体チップの個数及び絶縁配線基板13に形成される導電パターン133a,133b,133cの個数や形状は、図1に示す個数などに限られない。また、図1では、1個の絶縁配線基板13がケース11に配置されているが、絶縁配線基板13の個数は1個に限られず、複数の絶縁配線基板がケース11に配置されていてもよい。
【0030】
(半導体モジュールの製造方法)
次に、本実施形態による半導体モジュールの製造方法について、図2から図6を用いて説明する。本実施形態による半導体モジュールの製造方法の説明について、図1に示す半導体モジュール1の製造方法を例にとって説明する。図2は、本実施形態による半導体モジュールの製造方法のうちの半導体チップ14a,14b,14cを絶縁配線基板13に接合する工程の流れの一例を示している。
【0031】
図2に示すように、本実施形態による半導体モジュール1の製造方法におけるステップS11では絶縁配線基板13の配置工程が実行される。具体的には、ステップS11において、図3に示すように、下金型2Aの上に絶縁配線基板13が配置される。下金型2は、例えば金型用金属材料またはセラミック材料(例えば窒化ケイ素など)で形成されている。下金型2Aは、絶縁配線基板13に設けられた絶縁基板131及び伝熱部材135が配置される凹部21を有している。このため、絶縁配線基板13が下金型2Aに配置されると、絶縁配線基板13に設けられた導電パターン133a,133b,133cが下金型2Aから飛び出した状態となる。下金型2Aは、半導体モジュールの製造装置に取り付けられている。下金型2Aは、後の工程で焼結材に熱を加えるために絶縁配線基板13が配置される前に加熱され、例えば250℃以上の温度を有している。下金型2Aは、加熱された後に当該製造装置に取り付けられてもよいし、当該製造装置によって加熱されてもよい。
【0032】
ステップS11の次のステップS13では、焼結材及び半導体チップの配置工程が実行される。具体的には、ステップS13において、図3に示すように、絶縁配線基板13の上の複数箇所に焼結材151a,151b,151c及び複数の焼結材151a,151b,151cのそれぞれの上に半導体チップ14a,14b,14cを配置する。本実施形態では、焼結材151a,151b,151cを絶縁配線基板13の上に配置した後に、半導体チップ14a,14b,14cが焼結材151a,151b,151cの上に配置される。
【0033】
絶縁配線基板13の上に配置される焼結材151a,151b,151cは、ペースト状又はシート状を有している。本実施形態では、焼結材151a,151b,151cは、例えばペースト状を有している。焼結材151a,151b,151cは、スキージ又は塗布によって導電パターン133a,133b,133cの所定箇所に所望の接合形態で形成される。
【0034】
焼結材151a,151b,151cを絶縁配線基板13の上に配置した後に、図3に示すように、焼結材151a,151b,151cの上に半導体チップ14a,14b,14cがそれぞれ配置される。半導体チップ14aは焼結材151aの上に配置され、半導体チップ14bは焼結材151bの上に配置され、半導体チップ14cは焼結材151cの上に配置される。
【0035】
半導体チップ14a,14b,14cが焼結材151a,151b,151cと接触する面には、半導体チップ14a,14b,14cに形成されたパワー半導体素子の端子が露出している。本実施形態では、この端子の全体を焼結材151a,151b,151cに接触させるために、焼結材151a,151b,151cは、半導体チップ14a,14b,14cよりも一回り大きく形成されている。このため、図3に示すように、焼結材151a,151b,151cは、半導体チップ14aの周縁にはみ出したはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1と、半導体チップ14a,14b,14cの下面に接触する接触部151a-2,151b-2,151c-2とを有している。はみ出し部151a-1,151b-1,151c-1及び接触部151a-2,151b-2,151c-2は一体に形成されて境界はないが、図3及び図4以降の図面では、理解を容易にするため、点線によって両者の境界が図示されている。
【0036】
ステップS13の次のステップS15では、第一保護シートの配置工程が実行される。具体的には、ステップS15において、図3に示すように、半導体チップ14a,14b,14cの上に第一保護シート4Aを配置する。第一保護シート4Aは、例えば絶縁配線基板13に配置された複数の半導体チップ(本実施形態では半導体チップ14a,14b,14c)の全体を覆うことが可能な1枚の膜状を有している。第一保護シート4Aは、例えば0.1mm以上0.5mm以下の厚さを有している。第一保護シート4Aは、例えばフッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE))またはポリイミド樹脂(PI)で形成されている。第一保護シート4Aは、半導体モジュール1の製造時に焼結材151a,151b,151cや半導体チップ14a,14b,14cの側壁などが構造体5A(詳細は後述)によって汚されないために必要に応じて設けられる。
【0037】
ステップS15の次のステップS17では、構造体の配置工程が実行される。具体的には、複数の半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれの周縁にはみ出した焼結材151a,151b,151cのはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1の上に構造体5Aを配置する。構造体5Aは、複数の半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれと対応する箇所に半導体チップ14a,14b,14cを挿入可能に形成された貫通孔51a,51b,51cを有するシート状を有し、半導体チップ14a,14b,14cに対応させて貫通孔51a,51b,51cを配置した場合にはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1の上に貫通孔51a,51b,51cの周縁部が配置される。貫通孔51aは半導体チップ14aに対応し、貫通孔51bは半導体チップ14bに対応し、貫通孔51cは半導体チップ14cに対応するように形成されている。構造体5Aは、はみ出し部151a-1,151b-1,151c-1を完全に覆うことが可能な形状を有している。構造体5Aは、例えばカーボンシートで形成されている。構造体5Aは、例えばJIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さを有している。
【0038】
ステップS17の次のステップS19では、第二保護シートの配置工程が実行される。具体的には、ステップS19において、図3に示すように、構造体5Aの上に第二保護シート6Aを配置する。第二保護シート6Aは、例えば構造体5Aの全体を覆うことが可能な1枚の膜状を有している。第二保護シート6Aは、例えばフッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE))またはポリイミド(PI)で形成され、例えば0.1mm以上0.5mm以下の厚さを有している。
【0039】
ステップS19の次のステップS21では、緩衝材の配置工程が実行される。具体的には、ステップS21において、構造体5Aの上に1つの緩衝材7Aを配置する。緩衝材7Aは、構造体5Aに形成された貫通孔51a,51b,51c及びこれらの周縁部を覆って配置される。緩衝材7Aは、焼結材151a,151b,151cの焼結時でも低弾性率を有する例えばカーボン製シートなどで構成されている。緩衝材7Aは、250℃以上の耐熱性、0.2以下のポアソン比及びJIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さを有している。緩衝材7AがJIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さを有することにより、焼結材151a,151b,151cの焼結時に緩衝材7Aが第二保護シート6Aを突き破って半導体チップ14a,14b,14cに傷をつけてしまうことが防止される。また、緩衝材7Aは、250℃の温度で9MPaの圧縮弾性率を有している。緩衝材7Aは、構造体5Aよりも硬く、半導体チップ14a,14b,14cよりも柔らかい硬さを有している。さらに、緩衝材7Aは、緩衝材7Aの側に向けられる半導体チップ14a,14b,14cの表面の高さの差(例えば10μmより小さい差)を吸収して焼結材151a,151b,151cにほぼ均一な圧力を加えることができる厚さを有している。
【0040】
ステップS21の次のステップS23では、上金型の配置工程が実行される。具体的には、ステップS23において、図3に示すように、空間31を有する上金型3Aを空間31が下金型2A側に向けられた状態で緩衝材7Aの上方に配置する。上金型3Aは、下金型2Aが取り付けられた半導体モジュールの製造装置に取り付けられている。
【0041】
上金型3Aに形成された空間31は、導電パターン133a,133b,133c、焼結材151a,151b,151c、半導体チップ14a,14b,14c、第一保護シート4A、構造体5A、第二保護シート6A及び緩衝材7Aを挿入できる大きさの開口を有している。空間31は、構造体5Aの貫通孔51a,51b,51cに半導体チップ14a,14b,14cが挿入され且つ焼結材151a,151b,151cへの圧力を加える前における下金型2Aから緩衝材7Aまでの長さよりも、浅い深さを有している。ここで、下金型2Aから緩衝材7Aまでの長さは、凹部21の開口端を含む下金型2Aの表面から上金型3Aに対向する緩衝材7Aの表面までの長さである。これにより、上金型3Aを下金型2Aに接触させた状態で焼結材151a,151b,151cを焼結することにより、焼結材151a,151b,151cに所望の圧力を加えることができる(詳細は後述)。
【0042】
上金型3Aは、例えば下金型2Aと同じ金型用金属材料またはセラミック材料(例えば窒化ケイ素など)で形成されている。上金型3Aは、下金型2Aと異なる金属材料で形成されていてもよい。上金型3Aは、後の工程で焼結材151a,151b,151cに熱を加えるために下金型2Aの上方に配置される前に加熱され、例えば250℃以上の温度を有している。上金型3Aは、加熱された後に半導体モジュールの製造装置に取り付けられてもよいし、当該製造装置によって加熱されてもよい。
【0043】
ステップS23の次のステップS25では、焼結材への加圧及び加熱工程が実行される。具体的には、ステップS25において、図4に示すように、焼結材のはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1には構造体5Aを介し、焼結材の半導体チップ14a,14b,14c下の接触部151a-2,151b-2,151c-2には半導体チップ14a,14b,14cを介して、上金型3Aによって複数の焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱して焼結する。つまり、複数の焼結材151a,151b,151c、複数の半導体チップ14a,14b,14c、構造体5A及び緩衝材7Aを上金型3Aに形成された空間31に内包した状態で、緩衝材7Aと複数の半導体チップ14a,14b,14c及び構造体5Aとを介して上金型3Aによって複数の焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱して焼結する。本実施形態では、半導体チップ14a,14b,14c及び構造体5Aの間に第一保護シート4Aが配置され、構造体5A及び緩衝材7Aの間に第二保護シート6Aが配置されている。このため、上金型3Aは、複数の焼結材151a,151b,151c、複数の半導体チップ14a,14b,14c、第一保護シート4A、構造体5A、第二保護シート6A及び緩衝材7Aを空間31に内包した状態で焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱する。
【0044】
下金型2Aは、焼結材への加圧及び加熱工程において、絶縁配線基板13を固定した状態で伝熱部材135側から絶縁配線基板13を支える。さらに、下金型2Aは、例えば250℃以上の温度を有している。このため、下金型2Aは、焼結材への加圧及び加熱工程において、絶縁配線基板13を介して焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱する。このように、焼結材151a,151b,151cは、上金型3A及び下金型2Aによって、例えば10MPa以上50MPa以下の圧力及び200℃以上300℃以下の温度が加えられて焼結する。
【0045】
緩衝材7Aは、半導体チップ14a,14b,14cよりも柔らかく、かつ構造体5Aよりも硬い硬さを有している。このため、図4に示すように、下金型2Aが上金型3Aの空間31の開口を塞いだ状態で下金型2A及び上金型3Aが互いに接触すると、緩衝材7Aは、半導体チップ14a,14b,14cによって上金型3A側に押し上げられ、構造体5Aを下金型2A側に押し下げる。これにより、緩衝材7Aの下金型2A側の表面は、導電パターン133a,133b,133c、焼結材151a,151b,151c及び半導体チップ14a,14b,14cによって形成される段差形状に倣う形状になる。緩衝材7Aは、焼結材151a,151b,151cの焼結時に下金型2A側の表面をこのように変形させた状態で圧縮される。
【0046】
緩衝材7Aは、当該焼結時でも低弾性率を有するため、焼結材への加圧及び加熱工程において圧縮されることによって、緩衝材7Aの側に向けられる半導体チップ14a,14b,14cの表面のそれぞれの高さ公差を吸収することができる。ここで、緩衝材7Aの側に向けられる半導体チップ14a,14b,14cの表面は、第一保護シート4Aに接触する半導体チップ14a,14b,14cの表面である。また、半導体チップ14a,14b,14cの表面のそれぞれの高さは、例えば複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面からの距離に相当する。
【0047】
また、緩衝材7Aには、焼結材への加圧及び加熱工程において、絶縁配線基板13、半導体チップ14a,14b,14c、第一保護シート4A、構造体5A、第二保護シート6A及び緩衝材7Aが積層された方向(縦方向)に力が加えられる。このため、緩衝材7Aは、当該力と同じ力で絶縁配線基板13の面内に平行な方向(横方向)に力を加える。緩衝材7Aの周囲には、上金型3Aの側壁が配置されている。したがって、緩衝材7Aは、焼結材への加圧及び加熱工程において、上金型3Aを押し広げる方向に上金型3Aの側壁に力を加える。このため、半導体チップ14a,14b,14c及び構造体5Aのそれぞれへの接合加圧が不均一となり、半導体チップ14a,14b,14cと導電パターン133a,133b,133cとの接合品質が低下する可能性がある。
【0048】
上述のとおり、緩衝材7Aは、0.2以下のポアソン比を有している。このため、緩衝材7Aは、横方向に広がりにくい特性を有している。このため、緩衝材7Aは、横方向に広がることに起因する半導体チップ14a,14b,14c及び構造体5Aのそれぞれへの接合加圧が不均一となることを防止できる。さらに、緩衝材7Aは、例えば0.2よりも大きいポアソン比を有する材料によって形成された緩衝材よりも、縦方向に加圧された場合に上金型3Aの側壁に対して弱い力を加える。このため、上金型3Aは、硬度の低い安価な材料で作製されることができるので、半導体モジュール1の製造費用の低価格化を図ることができる。
【0049】
上金型3A及び下金型2Aによって焼結材151a,151b,151cに圧力及び熱が加えられることにより、焼結材151a,151b,151cにおいて焼結反応が促進される。当該焼結反応が促進される過程において、焼結材151aの接触部151a-2には半導体チップ14aを介して圧力が加わり、焼結材151aのはみ出し部151a-1には構造体5Aから圧力が加わる。第一保護シート4Aに接触する半導体チップ14aの表面と、第二保護シート6Aに接触し且つはみ出し部151a-1の上方における構造体5Aの表面とは、第一保護シート4Aの厚さ分の差があるものの、複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面を基準とする高さはほぼ同じである。このため、焼結材151aの接触部151a-2が半導体チップ14aを介して上金型3Aから加えられる圧力と、焼結材151aのはみ出し部151a-1が構造体5Aを介して上金型3Aから加えられる圧力とは、ほぼ同じ強さになる。これにより、焼結材151aの接触部151a-2及びはみ出し部151a-1は、焼結材への加圧及び加熱工程において、同程度に焼結反応が促進される。
【0050】
同様に、当該焼結反応が促進される過程において、焼結材151bの接触部151b-2には半導体チップ14bを介して圧力が加わり、焼結材151bのはみ出し部151b-1には構造体5Aから圧力が加わる。第一保護シート4Aに接触する半導体チップ14bの表面と、第二保護シート6Aに接触し且つはみ出し部151b-1の上方における構造体5Aの表面とは、第一保護シート4Aの厚さ分の差があるものの、複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面を基準とする高さはほぼ同じである。このため、焼結材151bの接触部151b-2が半導体チップ14bを介して上金型3Aから加えられる圧力と、焼結材151bのはみ出し部151b-1が構造体5Aを介して上金型3Aから加えられる圧力とは、ほぼ同じ強さになる。これにより、焼結材151bの接触部151b-2及びはみ出し部151b-1は、焼結材への加圧及び加熱工程において、同程度に焼結反応が促進される。
【0051】
同様に、当該焼結反応が促進される過程において、焼結材151cの接触部151c-2には半導体チップ14cを介して圧力が加わり、焼結材151cのはみ出し部151c-1には構造体5Aから圧力が加わる。第一保護シート4Aに接触する半導体チップ14cの表面と、第二保護シート6Aに接触し且つはみ出し部151c-1の上方における構造体5Aの表面とは、第一保護シート4Aの厚さ分の差があるものの、複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面を基準とする高さはほぼ同じである。このため、焼結材151cの接触部151c-2が半導体チップ14aを介して上金型3Aから加えられる圧力と、焼結材151aのはみ出し部151c-1が構造体5Aを介して上金型3Aから加えられる圧力とは、ほぼ同じ強さになる。これにより、焼結材151cの接触部151a-2及びはみ出し部151c-1は、焼結材への加圧及び加熱工程において、同程度に焼結反応が促進される。
【0052】
焼結材151aのはみ出し部151a-1及び接触部151a-2が半導体チップ14a及び構造体5Aを介して上金型3Aから加えられる圧力と、焼結材151bのはみ出し部151b-1及び接触部151b-2が半導体チップ14b及び構造体5Aを介して上金型3Aから加えられる圧力と、焼結材151cのはみ出し部151c-1及び接触部151c-2が半導体チップ14a及び構造体5Aを介して上金型3Aから加えられる圧力は、ほぼ同じである。このため、焼結材151aのはみ出し部151a-1及び接触部151a-2、焼結材151bのはみ出し部151b-1及び接触部151b-2並びに焼結材151cのはみ出し部151c-1及び接触部151c-2は、同程度かつ所望の焼結反応が促進される。これにより、ペースト状又はシート状の焼結材151a,151b,151cに含まれていた銀粒子又は銅粒子が結合して構成された焼結体を有し、導電性を有する焼結金属層15a,15b,15cが形成される。
【0053】
焼結材151a,151b,151cを焼結する際に、第一保護シート4Aは、半導体チップ14a,14b,14cの上面及び側面、焼結材151a,151b,151cの表面、導電パターン133a,133b,133cの表面、絶縁基板132の表面を覆っている。このため、第一保護シート4Aは、焼結材151a,151b,151cを焼結する際に、半導体チップ14a,14b,14cの上面及び側面、焼結材151a,151b,151cの表面、導電パターン133a,133b,133cの表面、絶縁基板132の表面が構造体5Aによって汚されることを防止できる。
【0054】
ステップS25の次のステップS27では、上金型の退避工程が実行される。具体的には、ステップS27において、図5に示すように、上金型3Aが例えば下金型2Aの上方に退避され、空間31に内包されていた緩衝材7Aなどが外部に露出される。
【0055】
ステップS27の次のステップS29では、緩衝材の除去工程が実行される。具体的には、ステップS29において、図5に示すように、緩衝材7Aが第二保護シート6Aから除去される。下金型2A側の緩衝材7Aの表面には、半導体チップ14a,14b,14cなどに倣う形状が残存する。このため、緩衝材7Aは、半導体モジュール1を製造するごとに取り替えられる使い捨ての部材である。
【0056】
ステップS29の次のステップS31では、第二保護シート、構造体及び第一保護シートの除去工程が実行される。具体的には、ステップS31において、図6に示すように、第二保護シート6A、構造体5A及び第一保護シート4Aが除去される。これにより、絶縁配線基板13には、焼結金属層15a,15b,15cによって導電パターン133a,133b,133cに接合された半導体チップ14a,14b,14cが残存する。第二保護シート6A、構造体5A及び第一保護シート4Aには、半導体チップ14a,14b,14cなどに倣う形状が残存する。このため、第二保護シート6A、構造体5A及び第一保護シート4Aは、半導体モジュール1を製造するごとに取り替えられる使い捨ての部材である。
【0057】
ステップS31の次のステップS33では、絶縁配線基板の取り外し工程が実行される。具体的には、ステップS33において、図6に示すように、焼結金属層15a,15b,15cによって導電パターン133a,133b,133cに接合された半導体チップ14a,14b,14cを有する絶縁配線基板13が下金型2Aから取り外される。これにより、半導体チップ14a,14b,14cを絶縁配線基板13に接合する工程が終了する。
【0058】
図示は省略するが、図1に示すように、冷却器19が取り付けられたケース11の空間111に、半導体チップ14a,14b,14cが接合された絶縁配線基板13を配置する。次に、半導体チップ14a,14b,14cとケース11に配置された端子16aなどとをボンディングワイヤ17a,17b,17cによって接続し、導電パターン133a,133b,133cとケース11に配置された端子16bなどをボンディングワイヤ17d,17e,17fによって接続する。次に、半導体チップ14a,14b,14c、ボンディングワイヤ17a,17b,17c,17d,17e,17f及び導電パターン133a,133b,133cを覆って空間111に封止樹脂18を注型する。これにより、半導体モジュール1が完成する。
【0059】
(半導体モジュールの製造方法の効果)
次に、本実施形態による半導体モジュールの製造方法の効果について、図3及び図4を参照しつつ図7から図11を用いて説明する。
【0060】
(比較例1)
図7及び図8は、比較例1による半導体モジュールの製造方法における焼結材の加圧及び加熱工程を説明するための図である。
【0061】
図7に示すように、比較例1による半導体モジュールの製造方法では、平板形状の下金型2Xの上に絶縁配線基板13Xが配置される。絶縁配線基板13Xは、本実施形態における絶縁配線基板13と同様に、絶縁基板132と、絶縁基板132の一方の表面に形成された導電パターン134a,134b,134cと、絶縁基板132の他方の表面に形成された伝熱部材136とを有している。絶縁基板132は、本実施形態における絶縁基板131と同様の作用・機能を有している。導電パターン134a,134b,134cは、本実施形態における導電パターン133a,133b,133cと同様の作用・機能を有している。伝熱部材136は、本実施形態における伝熱部材135と同様の作用・機能を有している。絶縁配線基板13Xは、伝熱部材136を下金型2X側に向けて下金型2Xの上に配置される。
【0062】
次に、図7に示すように、導電パターン134a,134b,134cの所定箇所に焼結材152a,152b,152cが形成される。焼結材152a,152b,152cは、本実施形態における焼結材151a,151b,151cと同様の作用・機能を有している。
【0063】
次に、図7に示すように、焼結材152a,152b,152cの上に半導体チップ141a,141b,141cを配置する。半導体チップ141a,141b,141cは、本実施形態における半導体チップ14a,14b,14cと同様の作用・機能を有している。
【0064】
次に、図7に示すように、半導体チップ141a,141b,141cの上に、絶縁配線基板13Xの上方の全面を覆うことが可能な大きさの1枚の保護シート6Xを配置する。保護シート6Xは、半導体チップ141a,141b,141cの上面に接触させて配置される。
【0065】
次に、図7に示すように、絶縁配線基板13Xなどを挟んで下金型2Xの上方に、上金型9Aを対向して配置する。比較例1による上金型9Aは、内部に加圧機構部91を有している。加圧機構部91は、本実施形態における緩衝材7Aと同様に低弾性率を有している。上金型9Aは、一方の端部が加圧機構部91に接触し他方の端部が上金型9Aから突出する個別加圧部92a,92b,92cを有している。個別加圧部92a,92b,92cは、上金型9Aを下金型2Xに対向して配置した場合に、下金型2X側に向かって突出する。個別加圧部92a,92b,92cは、半導体チップ141a,141b,141cの配置位置に対応させて配置されている。このため、上金型9Aが絶縁配線基板13Xを挟んで下金型2Xに対向して配置されると、個別加圧部92aは、保護シート6Xを挟んで半導体チップ141aに対向して配置され、個別加圧部92bは、保護シート6Xを挟んで半導体チップ141bに対向して配置され、個別加圧部92cは、保護シート6Xを挟んで半導体チップ141cに対向して配置される。
【0066】
次に、図8に示すように、上金型9A及び下金型2Xによって焼結材151a,152b,152cを加圧する。上金型9Aが下金型2Xに向かって下降すると、まず、個別加圧部92a,92b,92cの端部が保護シート6Xに接触する。加圧機構部91は、個別加圧部92a,92b,92c、半導体チップ141a,141b,141c及び絶縁配線基板13Xよりも柔らかい。このため、個別加圧部92a,92b,92cの端部が保護シート6Xに接触した後も上金型9Aの下降が継続すると、図8に示すように、個別加圧部92a,92b,92cは、上金型9Aが下降する前に上金型9Aから突出していた部分と同じ長さ分だけ加圧機構部91に食い込む。上金型9Aは、下金型2Xに対向する表面がほぼ面一になった状態で、保護シート6X及び半導体チップ141a,141b,141cを介して焼結材152a,152b,152cを加圧する。
【0067】
上金型9A及び下金型2Xは、本実施形態における上金型3A及び下金型2Aと同様に、加熱されて例えば250℃程度の温度を有している。このため、上金型9A及び下金型2Xは、焼結材152a,152b,152cに圧力とともに熱を加えることができる。これにより、焼結材152a,152b,152cが焼結して半導体チップ141a,141b,141cと絶縁配線基板13X(具体的には導電パターン134a,134b,134c)が接合される。
【0068】
このように、比較例1における上金型9Aは、焼結材152a,152b,152cを加圧及び加熱することができる。しかしながら、上金型9Aは、加圧機構部91を配置する空間及び個別加圧部92a,92b,92cを配置する開口を有する必要があるため、複雑な構造を有している。また、上金型9Aの空間に加圧機構部91を設けたり、上金型9Aの開口に個別加圧部92a,92b,92cを設けたりする必要があるため、上金型9Aの構造や製造が複雑になる。また、半導体チップ141a,141b,141cの配置位置や個数は半導体モジュールの品種ごとに異なる。このため、上金型9Aは、半導体モジュールの品種ごとに作製する必要がある。
【0069】
また、上金型9Aを繰り返し使用していると、加圧機構部91は同じ箇所を個別加圧部92a,92b,92cに押し上げられる。このため、加圧機構部91の当該箇所における弾性力の経時変化によって、焼結材152a,152b,152cに必要な力を加えることができなくなる可能性がある。このため、加圧機構部91には使用回数に制限がある。
【0070】
このように、比較例1による半導体モジュールの製造方法では、半導体モジュールの製造に用いる上金型9Aの作製費用、加圧機構部91の交換費用などで、半導体モジュールの製造コストが高くなる。
【0071】
これに対し、本実施形態による半導体モジュールの製造方法では、空間31を有する一方が開口された箱状の単純な構造を有する上金型3Aが使用される。このため、上金型3Aは、上金型9Xと比較して低コストで作製することができる。したがって、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、比較例1による半導体モジュールの製造方法よりも半導体モジュールの製造費用の低コスト化を図ることができる。
【0072】
さらに、比較例1による半導体モジュールの製造方法は、焼結材152a,152b,152cを十分に焼結できない可能性があるという問題を有している。図9は、焼結材152aを焼結している過程を模式的に示す図である。
【0073】
図9に示すように、焼結材152aの接触部152a-2には、半導体チップ141aが接触して配置されている。一方、焼結材152aのはみ出し部152a-1には、上金型3X(図8参照)側に接触する部材が配置されていない。このため、図9中に下向きの太矢印で示すように、個別加圧部92aによって上金型3Xから下金型2X側に向かって圧力が加えられると、半導体チップ141aの直下に配置された焼結材152aの接触部152a-2には、個別加圧部92aからの圧力とほぼ同じ強さの圧力が加わる。一方、半導体チップ141aの周縁の焼結材152aのはみ出し部152a-1に対し、個別加圧部92aからの圧力が逃げてしまう。
【0074】
これにより、個別加圧部92aからの圧力とほぼ同じ強さで加圧される接触部152a-2では、焼結材152aに含まれる金属粒子が密な状態(空気率が低い状態)の焼結体SC1となり、個別加圧部92aからの圧力が逃げてしまうはみ出し部152a-1では、焼結材152aに含まれる金属粒子が疎な状態(空気率が高い状態)の焼結体SC3となる。このため、図9中に横方向の太矢印で示すように、半導体チップ141aの中央側から周縁側に向かって、焼結材152aに含まれる金属粒子が高密度から低密度に変化する。また、接触部152a-2においても半導体チップ141aの中心側に近い領域の焼結体SC1の方が半導体チップ141aの周縁側に近い領域の焼結体SC2よりも金属粒子が密の状態になる。焼結材152aが焼結されて形成された焼結金属層は、金属粒子が高密度の部分において所望の機械特性、電気特性及び熱特性を有するが、金属粒子が低密度の部分において所望の機械特性、電気特性及び熱特性を有さない可能性がある。その結果、当該焼結金属層において、はみ出し部152a-1が焼結されて形成された部分がクラックの起点となる場合がある。焼結材152b,152cについても、焼結材152aと同様に、はみ出し部が焼結されて形成された部分がクラックの起点となる場合がある。このため、比較例1による半導体モジュールの製造方法によって製造された半導体モジュールは、信頼性が低下するという問題を有している。
【0075】
これに対し、本実施形態による半導体モジュールの製造方法では、半導体チップ14a,14b,14cを介して焼結材151a,151b,151cの接触部151a-2,151b-2,151c-2に印加される圧力とほぼ同じ圧力を、構造体5Aを介して焼結材151a,151b,151cのはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1に対して印加することができる。これにより、焼結材151a,151b,151cが焼結されて形成された焼結金属層15a,15b,15c(図1参照)は、全体の領域において均一の密度の焼結体を有することができる。その結果、焼結金属層15a,15b,15cは、全体の領域において所望の機械特性、電気特性及び熱特性を有することができるので、クラックの発生が防止されるので、半導体モジュール1の性能や信頼性の低下を防止することができる。
【0076】
(比較例2)
図10及び図11は、比較例2による半導体モジュールの製造方法における焼結材の加圧及び加熱工程を説明するための図である。比較例2による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールに用いられる絶縁配線基板、焼結材及び半導体チップについては、比較例1における絶縁配線基板13X、焼結材152a,152b,152c及び半導体チップ141a,141b,141cと同様の符号を用いて説明する。
【0077】
図10に示すように、比較例2による半導体モジュールの製造方法では、本実施形態置ける下金型2Aと同様の構成を有する下金型2Yの上に絶縁配線基板13Xが配置される。このため、絶縁配線基板13Xが下金型2Yに配置されると、絶縁配線基板13Xに設けられた導電パターン134a,134b,134cが下金型2Yから飛び出した状態となる。
【0078】
次に、図10に示すように、導電パターン134a,134b,134cの所定箇所に焼結材152a,152b,152cを形成し、焼結材152a,152b,152cの上に半導体チップ141a,141b,141cを配置する。
【0079】
次に、図10に示すように、絶縁配線基板13Xなどを挟んで下金型2Yの上方に、上金型9Bを対向して配置する。比較例2による上金型9Bは、内部に形成された空間に流動性の高い弾性体94と、当該空間の開口を塞いで配置されて弾性体94を当該空間に密閉する密閉シート95とを有している。上金型9Bは、密閉シート95を下金型2Bに向かい合わせて配置される。
【0080】
次に、図11に示すように、上金型9B及び下金型2Yによって焼結材151a,152b,152cを加圧する。上金型9Bが下金型2Yに向かって下降すると、密閉シート95が半導体チップ141a,141b,141c、焼結材151a,151b,151c及び絶縁配線基板13Xを含む全面に密着する。密閉シート95及び弾性体94は、半導体チップ141a,141b,141c及び絶縁配線基板13Xよりも柔軟性を有している。このため、上金型9Bが下金型2Yに接触した状態で配置されると、密閉シート95及び密閉シート95近傍の弾性体94は、弾性力を有しているので、絶縁配線基板13Xなどを含む当該全面の形状に倣った形状に変形する。これにより、弾性体94は、密閉シート95を介して焼結材152a,152b,152cを加圧する。
【0081】
上金型9B及び下金型2Yは、本実施形態における上金型3A及び下金型2Aと同様に、加熱されて例えば250℃程度の温度を有している。このため、上金型9B及び下金型2Yは、焼結材152a,152b,152cに圧力とともに熱を加えることができる。これにより、焼結材152a,152b,152cが焼結して半導体チップ141a,141b,141cと絶縁配線基板13X(具体的には導電パターン134a,134b,134c)が接合される。
【0082】
このように、比較例2における上金型9Bは、焼結材152a,152b,152cを加圧及び加熱することができる。比較例2による半導体モジュールの製造方法では、焼結材152a,152b,152cの加圧及び加熱時に、導電パターン134a,134b,134c及び半導体チップ141a,141b,141cが弾性体94に食い込む。これにより、弾性体94は、導電パターン134a,134b,134c及び半導体チップ141a,141b,141cの大きさに基づいて外側に広がろうとする。このため、上金型9Bは、弾性体94が外側に広がろうとする内圧に耐える大きさや強度が必要になる。このため、上金型9Bの作製費用が高額になるので、半導体モジュールの製造コストが高くなる。
【0083】
これに対し、本実施形態による半導体モジュールの製造方法では、緩衝材7Aは、上述のとおり、0.2以下のポアソン比を有している。このため、緩衝材7Aは、弾性体94と比較して、焼結材151a,151b,151cの加圧及び加熱時における外側への広がりが小さい。これにより、上金型3Aは、上金型9Bよりも低い強度を有することができるので、安価な材料で形成されてもよい。このように、本実施形態による半導体モジュールの製造方法では、安価な上金型3Aを用いることができるので、比較例2による半導体モジュールの製造方法よりも半導体モジュールの製造設備や製造費用の低コスト化を図ることができる。
【0084】
さらに、比較例2による半導体モジュールの製造方法では、焼結材152a,152b,152cのそれぞれのはみ出し部には弾性体94を介して圧力が印加される。このため、比較例2による半導体モジュールの製造方法では、比較例1による半導体モジュールの製造方法と同様に、当該はみ出し部に十分な圧力が加わらない。このため、比較例2による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールは、信頼性が低下するという問題を有している。
【0085】
これに対し、本実施形態による半導体モジュールの製造方法では、焼結金属層15a,15b,15cが全体の領域において均一の密度の焼結体を有することができる。その結果、焼結金属層15a,15b,15cは、全体の領域において所望の機械特性、電気特性及び熱特性を有することができるので、半導体モジュール1の性能や信頼性の低下を防止することができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、下金型2Aの上に絶縁配線基板13を配置し、絶縁配線基板13の上の複数箇所に焼結材151a,151b,151c及び複数の焼結材151a,151b,151cのそれぞれの上に半導体チップ14a,14b,14cを配置し、複数の半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれの周縁にはみ出した焼結材151a,151b,151cのはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1の上に構造体5Aを配置し、はみ出し部151a-1,151b-1,151c-1には構造体5Aを介し、半導体チップ14a,14b,14cの接触部151a-2,151b-2,151c-2には半導体チップ14a,14b,14cを介して上金型3Aによって複数の焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱して焼結する。
【0087】
本実施形態による半導体モジュールの製造方法によれば、半導体モジュール1の性能や信頼性の低下を防止することができる。
【0088】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態による半導体モジュールの製造方法について図12及び図13を用いて説明する。本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、複数の半導体チップの配置位置に対応する箇所に凸部を有する上金型を用いる点に特徴を有している。本実施形態による半導体モジュールの製造方法の説明に当たって、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法に用いられる部材と同一の作用・機能を奏する部材については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0089】
(半導体モジュールの構成)
本実施形態による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールは、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールと同様の構成を有し、同様の機能を発揮するため、説明は省略する。
【0090】
(半導体モジュールの製造方法)
本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、絶縁配線基板の配置工程と焼結材及び半導体チップの配置工程(図2参照)の間に位置決め治具の配置工程を有し、上金型の退避工程と第二保護シートの除去工程との間に位置決め治具の退避工程を有する点を除いて、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法と同様であるため、位置決め治具の配置工程から焼結材への加圧及び加熱工程(図2参照)について説明し、その他の工程の説明は省略する。
【0091】
図12は、位置決め治具の配置工程から緩衝材の配置工程までを説明するための図である。図13は、焼結材への加圧及び加熱工程を説明するための図である。
【0092】
本実施形態による半導体モジュールの製造方法における位置決め治具の配置工程では、図12に示すように、複数の半導体チップ14a,14b,14cを複数の焼結材151a,151b,151cの上に配置する前に、複数の半導体チップ14a,14b,14cの配置位置に対応する箇所に開口部81a,81b,81cを有する位置決め治具8を絶縁配線基板13の上に配置する。これにより、絶縁配線基板13は、位置決め治具8によって、平板状を有する下金型2Bの所定箇所に固定される。位置決め治具8は、焼結材151a,151b,151cの焼結時に加えられる温度によって変形しないように、高耐熱で熱膨張係数の小さい例えばカーボン製又はセラミック製の治具である。
【0093】
本実施形態における焼結材及び半導体チップの配置工程において、図12に示すように、絶縁配線基板13の上の複数箇所に焼結材151a,151b,151c及び複数の焼結材151a,151b,151cの上に半導体チップ14a,14b,14cを配置する。焼結材151aは位置決め治具8に形成された開口部81aに配置され、焼結材151bは位置決め治具8に形成された開口部81bに配置され、焼結材151cは位置決め治具8に形成された開口部81cに配置される。絶縁配線基板13の上に配置される焼結材151a,151b,151cは、ペースト状又はシート状を有している。本実施形態では、焼結材151a,151b,151cは、例えば開口部81a,81b,81cに配置可能な大きさのシート状を有している。
【0094】
さらに、焼結材及び半導体チップの配置工程において、焼結材151aの上に半導体チップ14aが配置され、焼結材151bの上に半導体チップ14bが配置され、焼結材151cの上に半導体チップ14cが配置される。本実施形態では、焼結材151a、151b,151cを絶縁配線基板13に配置した後に半導体チップ14a,14b,14cを焼結材151a,151b,151cに配置するようになっているが、焼結材151a,151b,151cが設けられた半導体チップ14a,14b,14cが、焼結材151a,151b,151c側を絶縁配線基板13に向けた状態で、絶縁配線基板13の上に配置されてもよい。この場合、1枚の焼結材シートを半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれによって打ち抜くことによって、半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれに焼結材151a,151b,151cが設けられる。
【0095】
また、焼結材151a,151b,151cは、例えばペースト状を有していてもよい。この場合、ペースト状の焼結材が開口部81a,81b,81cのそれぞれに塗布されて、ペースト状の焼結材151a,151b,151cが開口部81a,81b,81cに配置される。
【0096】
本実施形態における第一保護シートの配置工程において、図12に示すように、半導体チップ14a,14b,14cの上に第一保護シート4Ba,4Bb,4Bcをそれぞれ配置する。第一保護シート4Baは開口部81aにおいて半導体チップ14aの上に配置され、第一保護シート4Bbは開口部81bにおいて半導体チップ14bの上に配置され、第一保護シート4Bcは開口部81cにおいて半導体チップ14cの上に配置される。第一保護シート4Ba,4Bb,4Bcは、例えば第1実施形態における第一保護シート4Aと同様の材料で形成され、かつ同様の厚さを有している。なお、第一保護シート4Ba,4Bb,4Bcは、第1実施形態における第一保護シート4Aと異なる材料で形成されていてもよいし、第一保護シート4Aと異なる厚さを有していてもよい。
【0097】
本実施形態における構造体の配置工程において、図12に示すように、複数の半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれの周縁にはみ出した焼結材151a,151b,151cのはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1の上に構造体5Ba,5Bb,5Bcを配置する。構造体5Ba,5Bb,5Bcは、半導体チップ14a,14b,14cを挿入可能に形成された環状を有し、半導体チップ14a,14b,14cに対応させて構造体5Ba,5Bb,5Bcで囲まれる空間52a,52b,52cを配置した場合にはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1の上に配置される。構造体5Baは、空間52aを半導体チップ14aに対応させて焼結材151aのはみ出し部151a-1の上に配置される。構造体5Bbは、空間52bを半導体チップ14bに対応させて焼結材151bのはみ出し部151b-1の上に配置される。構造体5Bcは、空間52cを半導体チップ14cに対応させて焼結材151cのはみ出し部151c-1の上に配置される。このように、複数の半導体チップ14a,14b,14cの上に構造体5Ba,5Bb,5Bcをそれぞれ個別に配置する。構造体5Ba,5Bb,5Bcは、例えば第1実施形態における構造体5Aと同様の材料で形成されている。なお、構造体5Ba,5Bb,5Bcは、第1実施形態における構造体5Aと異なる材料で形成されていてもよい。
【0098】
本実施形態における第二保護シートの配置工程において、図12に示すように、構造体5Ba,5Bb,5Bcの上に第二保護シート6Ba,6Bb,6Bcを配置する。第二保護シート6Baは、例えば構造体5Baの全体を覆うことが可能な膜状を有している。第二保護シート6Bbは、例えば構造体5Bbの全体を覆うことが可能な膜状を有している。第二保護シート6Bcは、例えば構造体5Bcの全体を覆うことが可能な膜状を有している。第二保護シート6Ba,6Bb,6Bcは、例えば上記第1実施形態における第二保護シート6Aと同じ材料で形成され、第二保護シート6Aと同じ厚さを有している。なお、第二保護シート6Ba,6Bb,6Bcは、第二保護シート6Aと異なる材料で形成され、第二保護シート6Aと異なる厚さを有していてもよい。
【0099】
本実施形態における緩衝材の配置工程において、図12に示すように、複数の構造体5Ba,5Bb,5Bcの上に緩衝材7Ba,7Bb,7Bcをそれぞれ個別に配置する。緩衝材7Baは、第二保護シート6Baに接触させた状態で第二保護シート6Baの上方に配置される。緩衝材7Bbは、第二保護シート6Bbに接触させた状態で、第二保護シート6Bbの上方に配置される。緩衝材7Bcは、第二保護シート6Bcに接触させた状態で第二保護シート6Bcの上方に配置される。このため、緩衝材7Baは第二保護シート6Baを介して半導体チップ14aの上に配置され、緩衝材7Bbは第二保護シート6Bbを介して半導体チップ14bの上に配置され、緩衝材7Bcは第二保護シート6Bcを介して半導体チップ14cの上に配置されている。このように、本実施形態では、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、互いに分離されている。
【0100】
緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、例えば上記第1実施形態における緩衝材7Aと同様の材料で形成されている。緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、250℃以上の耐熱性、0.2以下のポアソン比、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さ、及び1.5mm以上3.0mm以下の厚さを有している。緩衝材7Ba,7Bb,7BcがJIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで80ポイント±5%の硬さを有することにより、焼結材151a,151b,151cの焼結時に緩衝材7Ba,7Bb,7Bcが第二保護シート5Ba,5Bb,5Bcを突き破って半導体チップ14a,14b,14cに傷をつけてしまうことが防止される。緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、1.5mm以上3.0mm以下の厚さを有することにより、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcの側に向けられる半導体チップ14a,14b,14cの表面の高さの差(例えば10μmより小さい差)を吸収して焼結材151a,151b,151cにほぼ均一な圧力を加えることができる。また、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、250℃の温度で9MPaの圧縮弾性率を有している。緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、ポアソン比、ビッカース硬さ及び厚さが上述の値を有していれば、緩衝材7Aと異なる材料で形成されていてもよい。
【0101】
本実施形態における上金型の配置工程において、図12に示すように、複数の半導体チップ14a,14b,14cの配置位置に対応する箇所に凸部32a,32b,32cを有する上金型3Bを、複数の半導体チップ14a,14b,14cに複数の凸部32a,32b,32cを対応させて下金型2Bの上方に配置する。半導体チップ14a,14b,14cの上方には、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcが配置されているので、上金型3Bは、凸部32aを緩衝材7Baに対向させ、凸部32bを緩衝材7Bbに対向させ、凸部32cを緩衝材7Bcに対向させた状態で下金型2Bの上方に配置される。上金型3Bは、下金型2Bが取り付けられた半導体モジュールの製造装置に取り付けられている。
【0102】
凸部32aは、位置決め治具8の開口部81aに挿入可能な大きさを有している。凸部32bは、位置決め治具8の開口部81bに挿入可能な大きさを有している。凸部32cは、位置決め治具8の開口部81cに挿入可能な大きさを有している。このため、上金型3Bは、焼結材151a,151b,151cの焼結時に、凸部32a,32b,32cを開口部81a,81b,81cに挿入させた状態で焼結材151a,151b,151cを加圧することができる。
【0103】
上金型3Bは、例えば下金型2Bと同じ金属材料で形成されている。上金型3Bは、下金型2Bと異なる金属材料で形成されていてもよい。上金型3Bは、後の工程で焼結材151a,151b,151cに熱を加えるために下金型2Bの上方に配置される前に加熱され、例えば250℃以上の温度を有している。このため、凸部32a,32b,32cも例えば250℃以上の温度を有している。上金型3Bは、加熱された後に半導体モジュールの製造装置に取り付けられてもよいし、当該製造装置によって加熱されてもよい。
【0104】
本実施形態における焼結材への加圧及び加熱工程において、図12に示すように、焼結材のはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1には構造体5Ba,5Bb,5Bcを介し、焼結材の半導体チップ14a,14b,14c下の接触部151a-2,151b-2,151c-2には半導体チップ14a,14b,14cを介して、上金型3Bによって複数の焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱して焼結する。つまり、複数の緩衝材7Ba,7Bb,7Bc、複数の半導体チップ14a,14b,14c及び構造体5Ba,5Bb,5Bcを介して凸部32a,32b,32cによって複数の焼結材151a、151b,151cを加圧及び加熱して焼結する。本実施形態では、半導体チップ14a,14b,14c及び構造体5Ba,5Bb,5Bcの間に第一保護シート4Ba,4Bb,4Bcが配置され、構造体5Ba,5Bb,5Bc及び緩衝材7Ba,7Bb,7Bcの間に第二保護シート6Ba,6Bb,6Bcが配置されている。このため、上金型3Bは、複数の焼結材151a,151b,151c、複数の半導体チップ14a,14b,14c、第一保護シート4Ba,4Bb,4Bc、構造体5Ba,5Bb,5Bc、第二保護シート6Ba,6Bb,6Bc及び緩衝材7Ba,7Bb,7Bcを介して凸部32a,32b,32cによって焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱する。
【0105】
下金型2Bは、焼結材への加圧及び加熱工程において、絶縁配線基板13を固定した状態で伝熱部材135側から絶縁基板131を支える。さらに、下金型2Bは、例えば250℃以上の温度を有している。このため、下金型2Bは、焼結材への加圧及び加熱工程において、絶縁配線基板13を介して焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱する。このように、焼結材151a,151b,151cは、上金型3B及び下金型2Bによって、例えば10MPa以上50MPa以下の圧力及び200℃以上300℃以下の温度が加えられて焼結する。
【0106】
緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、焼結材151a,151b,151cの加圧前では位置決め治具8から飛び出して配置されているが、図13に示すように、焼結材151a,151b,151cの加圧及び加熱時では位置決め治具8の開口部81a,81b,81cに全体が入り込むまで圧縮される。
【0107】
緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、当該焼結時でも低弾性率を有するため、焼結材151a,151b,151cへの加圧及び加熱工程において圧縮されることによって、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcの側に向けられる半導体チップ14a,14b,14cの表面のそれぞれの高さ公差を吸収することができる。
【0108】
また、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcには、焼結材への加圧及び加熱工程において、半導体チップ14a,14b,14c、第一保護シート4Ba,4Bb,4Bc、構造体5Ba,5Bb,5Bc、第二保護シート6Ba,6Bb,6Bc及び緩衝材7Ba,7Bb,7Bcが積層された方向(縦方向)に力が加えられる。このため、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、当該力と同じ力で絶縁配線基板13の面内に平行な方向(横方向)に力を加える。緩衝材7Ba,7Bb,7Bcの周囲には、位置決め治具8の開口部81a,81b,81cを構成する側壁が配置されている。したがって、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、焼結材への加圧及び加熱工程において、位置決め治具8の開口部81a,81b,81cを押し広げる方向に開口部81a,81b,81cを構成する側壁に力を加える。さらに、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcが開口部81a,81b,81cを押し広げる際に、位置決め治具8の開口部81a,81b,81cのうちの互いに隣り合う開口部を構成する側壁同士は、互いに力を及ぼし合う。このため、半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれへの接合加圧が不均一となり、半導体チップ14a,14b,14cと導電パターン133a,133b,133cとの接合品質が低下する可能性がある。
【0109】
上述のとおり、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、0.2以下のポアソン比を有している。このため、緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、横方向に広がりにくい特性を有している。緩衝材7Ba,7Bb,7Bcは、例えば0.2よりも大きいポアソン比を有する材料によって形成された緩衝材よりも、縦方向に加圧された場合に位置決め治具8の開口部81a,81b,81cを構成する側壁に対して弱い力を加える。このため、位置決め治具8は、硬度の低い安価な材料で作製されることができるので、半導体モジュール1の製造費用の低価格化を図ることができる。
【0110】
上金型3B及び下金型2Bによって焼結材151a,151b,151cに圧力及び熱が加えられることにより、焼結材151a,151b,151cにおいて焼結反応が促進される。当該焼結反応が促進される過程において、焼結材151aの接触部151a-2には半導体チップ14aを介して圧力が加わり、焼結材151aのはみ出し部151a-1には構造体5Baから圧力が加わる。第一保護シート4Baに接触する半導体チップ14aの表面と、第二保護シート6Baに接触し且つはみ出し部151a-1の上方における構造体5Baの表面とは、第一保護シート4Baの厚さ分の差があるものの、複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面を基準とする高さはほぼ同じである。このため、焼結材151aの接触部151a-2が半導体チップ14aを介して上金型3Bの凸部32aから加えられる圧力と、焼結材151aのはみ出し部151a-1が構造体5Bを介して凸部32aから加えられる圧力とは、ほぼ同じ強さになる。これにより、焼結材151aの接触部151a-2及びはみ出し部151a-1は、焼結材への加圧及び加熱工程において、同程度に焼結反応が促進される。
【0111】
同様に、当該焼結反応が促進される過程において、焼結材151bの接触部151b-2には半導体チップ14bを介して圧力が加わり、焼結材151bのはみ出し部151b-1には構造体5Bbから圧力が加わる。第一保護シート4Bbに接触する半導体チップ14bの表面と、第二保護シート6Bbに接触し且つはみ出し部151b-1の上方における構造体5Bbの表面とは、第一保護シート4Bbの厚さ分の差があるものの、複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面を基準とする高さはほぼ同じである。このため、焼結材151bの接触部151b-2が半導体チップ14bを介して上金型3Bの凸部32bから加えられる圧力と、焼結材151bのはみ出し部151b-1が構造体5Bbを介して凸部32bから加えられる圧力とは、ほぼ同じ強さになる。これにより、焼結材151bの接触部151b-2及びはみ出し部151b-1は、焼結材への加圧及び加熱工程において、同程度に焼結反応が促進される。
【0112】
同様に、当該焼結反応が促進される過程において、焼結材151cの接触部151c-2には半導体チップ14cを介して圧力が加わり、焼結材151cのはみ出し部151c-1には構造体5Bcから圧力が加わる。第一保護シート4Bcに接触する半導体チップ14cの表面と、第二保護シート6Bcに接触し且つはみ出し部151c-1の上方における構造体5Bcの表面とは、第一保護シート4Bcの厚さ分の差があるものの、複数の導電パターン133a,133b,133cが形成された絶縁基板131の表面を基準とする高さはほぼ同じである。このため、焼結材151cの接触部151c-2が半導体チップ14aを介して上金型3Bの凸部32cから加えられる圧力と、焼結材151aのはみ出し部151c-1が構造体5Bcを介して凸部32cから加えられる圧力とは、ほぼ同じ強さになる。これにより、焼結材151cの接触部151a-2及びはみ出し部151c-1は、焼結材への加圧及び加熱工程において、同程度に焼結反応が促進される。
【0113】
焼結材151aのはみ出し部151a-1及び接触部151a-2が半導体チップ14a及び構造体5Baを介して上金型3Bの凸部32aから加えられる圧力と、焼結材151bのはみ出し部151b-1及び接触部151b-2が半導体チップ14b及び構造体5Bbを介して上金型3Bの凸部32bから加えられる圧力と、焼結材151cのはみ出し部151c-1及び接触部151c-2が半導体チップ14c及び構造体5Bcを介して上金型3Bの凸部32cから加えられる圧力は、ほぼ同じである。このため、焼結材151aのはみ出し部151a-1及び接触部151a-2、焼結材151bのはみ出し部151b-1及び接触部151b-2並びに焼結材151cのはみ出し部151c-1及び接触部151c-2は、同程度かつ所望の焼結反応が促進される。これにより、シート状の焼結材151a,151b,151cに含まれていた銀粒子又は銅粒子が結合して構成された焼結体を有し、導電性を有する焼結金属層15a,15b,15cが形成される。
【0114】
焼結材151a,151b,151cを焼結する際に、第一保護シート4Ba,4Bb,4Bcは、半導体チップ14a,14b,14cの上面及び側面並びに焼結材151a,151b,151cの表面を覆っている。このため、第一保護シート4Ba,4Bb,4Bcは、焼結材151a,151b,151cを焼結する際に、半導体チップ14a,14b,14cの上面及び側面が構造体5Ba,5Bb,5Bcによって汚されることを防止できる。
【0115】
以上説明したように、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、下金型2Bの上に絶縁配線基板13を配置し、絶縁配線基板13の上の複数箇所に焼結材151a,151b,151c及び複数の焼結材151a,151b,151cのそれぞれの上に半導体チップ14a,14b,14cを配置し、複数の半導体チップ14a,14b,14cのそれぞれの周縁にはみ出した焼結材151a,151b,151cのはみ出し部151a-1,151b-1,151c-1の上に構造体5Ba,5Bb,5Bcを配置し、はみ出し部151a-1,151b-1,151c-1には構造体5Ba,5Bb,5Bcを介し、半導体チップ14a,14b,14cの接触部151a-2,151b-2,151c-2には半導体チップ14a,14b,14cを介して上金型3Bによって複数の焼結材151a,151b,151cを加圧及び加熱して焼結する。
【0116】
これにより、本実施形態による半導体モジュールの製造方法によれば、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法と同様の効果が得られる。
【0117】
また、本実施形態による半導体モジュールの製造方法では、複数の半導体チップごとに分離された個別の構造体及び緩衝材が用いられる。このため、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法と比較して、構造体及び緩衝材の費用が安価になる。これにより、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法よりも半導体モジュールの製造費用の低コスト化を図ることができる。
【0118】
また、複数の半導体チップごとに分離された個別の構造体及び緩衝材が用いられるため、構造体が半導体チップや絶縁配線基板と接触している面積が、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法における当該面積よりも小さくなる。これにより、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法よりも構造体などの除去工程が容易になる。
【0119】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態による半導体モジュールの製造方法について図14及び図15を用いて説明する。本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、複数の半導体チップの間の段差を抑制するスペーサ部材を用いる点と、焼結材の焼結時に絶縁配線基板に生じた反りを矯正することができる点に特徴を有している。本実施形態による半導体モジュールの製造方法の説明に当たって、上記第2実施形態による半導体モジュールの製造方法に用いられる部材と同一の作用・機能を奏する部材については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0120】
(半導体モジュールの構成)
本実施形態による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールは、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法によって製造される半導体モジュールと同様の構成を有し、同様の機能を発揮するため、説明は省略する。
【0121】
(半導体モジュールの製造方法)
本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、緩衝材の配置工程と上金型の配置工程(図2参照)の間にスペーサ部材の配置工程がある点を除いて、上記第2実施形態による半導体モジュールの製造方法と同様であるため、スペーサ部材の配置工程から焼結材への加圧及び加熱工程(図2参照)について説明し、その他の工程の説明は省略する。
【0122】
図14は、スペーサ部材の配置工程及び上金型の配置工程の一例を示す図である。図15は、焼結材への加圧及び加熱工程の一例を示す図である。本実施形態による半導体モジュールの製造方法について、例えば半導体チップ14aの高さが半導体チップ14bよりも低い高さを有し、半導体チップ14a,14bは配置されているが半導体チップ14cは配置されていない場合を例にとって説明する。
【0123】
本実施形態におけるスペーサ部材の配置工程では、半導体チップ14a,14bの第二保護シート6Ba,6Bbと接触する表面の高さが異なっているか否かを判定する。図14に示すように、緩衝材7Ba,7Bbの側に向けられる半導体チップ14a,14bの表面の高さが異なっている場合、当該高さの差を低減させるスペーサ部材10を緩衝材(本例では緩衝材7Ba)の上に配置する。本実施形態では、緩衝材7Ba,7Bbの側に向けられる半導体チップ14a,14bの表面の高さは、例えば導電パターン133a,133b,133cが形成される絶縁基板132の表面からの距離である。また、本実施形態では、緩衝材7Ba,7Bbの側に向けられる半導体チップ14a,14bの表面は、第二保護シート6Ba,6Bbが接触する面である。さらに、本実施形態では、緩衝材7Ba,7Bbの側に向けられる半導体チップ14a,14bの表面の高さの差は、例えば半導体モジュールの製造装置の制御装置(不図示)によって判定される。
【0124】
緩衝材7Ba,7Bbの側に向けられる半導体チップ14a,14bの表面の高さの差が10μm以上の場合に複数の半導体チップ14a,14bのうちの当該高さが低い方にスペーサ部材10を配置する。図14及び図15に示す例では、半導体チップ14aの高さが半導体チップ14bの高さよりも例えば10μm以上低いとする。このため、当該高さの差が低い方に相当する半導体チップ14aにスペーサ部材10が配置される。スペーサ部材10は、例えば緩衝材7Ba,7Bbよりも熱膨張係数が小さくかつ圧縮強度が高く、焼結材151a,151bに加える温度よりも高い温度に耐熱性を有する例えばセラミック製又は金属製の部材である。
【0125】
次に、本実施形態における上金型の配置工程において、図14に示すように、複数の半導体チップ14a,14bの配置位置に対応する箇所に凸部32a,32bを有し、導電パターン133cの配置位置に対応する箇所に凸部32dを有する上金型3Cを、半導体チップ14a,14b及び導電パターン133cに凸部32a,32b,32dを対応させて下金型B2の上方に配置する。凸部32a及び凸部32bは互いに同じ長さを有している。凸部32dは、半導体チップ14b及び焼結材151bを合わせた厚さ分だけ凸部32bよりも長く形成されている。このため、絶縁配線基板13などを挟んで上金型3Cを下金型2Bに対向して配置すると、凸部32dは、凸部32a,32bよりも絶縁配線基板13側に向かって突出する。
【0126】
本実施形態における焼結材への加圧及び加熱工程において、図15に示すように、焼結材のはみ出し部151a-1,151b-1には構造体5Ba,5Bbを介し、焼結材の半導体チップ14a,14b下の接触部151a-2,151b-2には半導体チップ14a,14bを介して、上金型3Cによって複数の焼結材151a,151bを加圧及び加熱して焼結する。つまり、緩衝材7Bb、半導体チップ14b及び構造体5Bbを介して凸部32bによって焼結材151bを加圧及び加熱して焼結する。
【0127】
スペーサ部材10は、例えば10μm以下の厚さを有している。これにより、スペーサ部材10が配置されることにより、半導体チップ14aの高さと、半導体チップ14bのそれぞれの高さとの差は、10μmよりも小さくなる(最小値は0となる)。このため、長さの同じ凸部32a,32bを有する上金型3Cであっても、凸部32aは、凸部32bが緩衝材7Bbに接触するタイミングとほぼ同じタイミングでスペーサ部材10と接触する。その結果、上金型3Cは、高さの低い半導体チップ14aを導電パターン133aに接合させる焼結材151aに、その他の焼結材151bとほぼ同じ力を加えることができる。緩衝材7Baは、半導体チップ14aの高さが半導体チップ14bの高さよりも低い分だけ緩衝材7Bbよりも圧縮されるが、0.2以下のポアソン比を有し、横方向に広がりにくい。このため、緩衝材7Baが半導体チップ14a及び構造体5Baに加える接合加圧と、緩衝材7Bbが半導体チップ14b及び構造体5Bbに加える接合加圧とは、ほぼ均一になる。
【0128】
また、本実施形態における焼結材への加圧及び加熱工程において、図15に示すように、緩衝材7Bc及び第二保護シート6Bcを介して凸部32dによって導電パターン133cを加圧する。凸部32dは、半導体チップ14b及び焼結材151bを合わせた厚さ分だけ凸部32bよりも長く形成されているので、凸部32bが緩衝材7Bbに接触するタイミングとほぼ同じタイミングで緩衝材7Bcと接触する。導電パターン133a側は、凸部32aによって加圧される。これにより、絶縁配線基板13の反りが矯正され平坦な状態になる。
【0129】
絶縁配線基板13の反りが矯正された状態で、上金型3C及び下金型2Bによって焼結材151a,151bに圧力及び熱が加えられることにより、焼結材151a,151bにおいて焼結反応が促進される。本実施形態における凸部32a,32bが焼結材151a,151bに奏する作用は、上記第2実施形態における凸部32a,32bが焼結材151a,151bに奏する作用と同様であるため、説明は省略する。
【0130】
このため、本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、凸部32aから印加される圧力は、半導体チップ14a及び構造体5Baを介して焼結材151aの接触部151a-2及びはみ出し部151a-1に加わり、凸部32bから印加される圧力は、半導体チップ14b及び構造体5Bbを介して焼結材151bの接触部151b-2及びはみ出し部151b-1に加わる。さらに、凸部32aから半導体チップ14a及び構造体5Baを介して焼結材151aに印加される圧力と、凸部32bから半導体チップ14b及び構造体5Bbを介して焼結材151bに印加される圧力は、ほぼ同じである。これにより、焼結材151aのはみ出し部151a-1及び接触部151a-2並びに焼結材151bのはみ出し部151b-1及び接触部151b-2は、同程度かつ所望の焼結反応が促進される。これにより、シート状の焼結材151a,151bに含まれていた銀粒子又は銅粒子が結合して構成された焼結体を有し、導電性を有する焼結金属層15a,15bが形成される。
【0131】
以上説明したように、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、下金型2Bの上に絶縁配線基板13を配置し、絶縁配線基板13の上の複数箇所に焼結材151a,151b及び複数の焼結材151a,151bのそれぞれの上に半導体チップ14a,14bを配置し、複数の半導体チップ14a,14bのそれぞれの周縁にはみ出した焼結材151a,151bのはみ出し部151a-1,151b-1の上に構造体5Ba,5Bbを配置し、はみ出し部151a-1,151b-1には構造体5Ba,5Bbを介し、半導体チップ14a,14bの接触部151a-2,151b-2には半導体チップ14a,14bを介して上金型3Cによって複数の焼結材151a,151bを加圧及び加熱して焼結する。
【0132】
これにより、本実施形態による半導体モジュールの製造方法によれば、上記第1実施形態による半導体モジュールの製造方法と同様の効果が得られる。
【0133】
また、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、緩衝材7Ba,7Bbの側に向けられる半導体チップ14a,14bの表面の高さが異なっている場合、当該高さの差を低減させるスペーサ部材10を緩衝材(本例では緩衝材7Ba)の上に配置する。これにより、半導体チップ14a及び半導体チップ14bの高さの違いを緩和して、上金型3Cからほぼ同じ圧力を焼結材151a,151bに加えることができる。これにより、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、厚さの異なる複数の半導体チップが混在していても半導体モジュールの性能や信頼性の低下を防止できる。
【0134】
さらに、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、絶縁配線基板に生じた反りを矯正した状態で焼結材を焼結できる。これにより、本実施形態による半導体モジュールの製造方法は、焼結材への加圧及び加熱工程において、変形した絶縁配線基板13を強制的に平坦な状態にするとともに焼結材を焼結させることができる。
【0135】
本発明は、上記第1実施形態から第3実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
上記第1実施形態から第3実施形態では、半導体モジュールは、半導体チップ及び導電パターンとケースに設けられた端子とがボンディングワイヤによって接続された個性を有しているが、本発明は、これに限られない。例えば、本発明による半導体モジュールの製造方法において製造される半導体モジュールは、半導体チップの主面上にピンを接合して電気配線とするインプラントピン基板を用いたインプラントピン構造を有していてもよい。また例えば、本発明による半導体モジュールの製造方法において製造される半導体モジュールは、リードフレームを用いた配線構造を有していてもよい。
【0136】
上記第2実施形態及び第3実施形態による半導体モジュールの製造方法では、位置決め治具が用いられているが、本発明はこれに限られない。緩衝材は、0.2以下のポアソン比を有し、焼結材を加圧及び加熱する際に横方向に広がりにくく、横方向の圧力分散が発生しにくい。このため、位置決め治具によって緩衝材の横方向の広がりを抑制する必要がないので、位置決め治具は用いられなくてもよい。
【0137】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0138】
1 半導体モジュール
2,2A,2B,2X,2Y 下金型
3A,3B,3C,3X 上金型
4A,4Ba,4Bb,4Bc 第一保護シート
5A,5B,5Ba,5Bb,5Bc 構造体
6A,6Ba,6Bb,6Bc 第二保護シート
6X 保護シート
7A,7Ba,7Bb,7Bc 緩衝材
8 位置決め治具
9A,9B,9X 上金型
10 スペーサ部材
11 ケース
13,13X 絶縁配線基板
14a,14b,14c,141a,141b,141c 半導体チップ
15a,15b,15c 焼結金属層
16a,16b 端子
17a,17b,17c,17d,17e,17f ボンディングワイヤ
18 封止樹脂
19 冷却器
21 凹部
31 空間
32a,32b,32c,32d 凸部
51a,51b,51c 貫通孔
52a,52b,52c,111 空間
81a,81b,81c 開口部
91 加圧機構部
92a,92b,92c 個別加圧部
94 弾性体
95 密閉シート
131,132 絶縁基板
133a,133b,133c,134a,134b,134c 導電パターン
135,136 伝熱部材
151a,151b,151c,152a,152b,152c 焼結材
151a-1,151b-1,151c-1,152a-1 はみ出し部
151a-2,151b-2,151c-2,152a-2 接触部
SC1,SC2,SC3 焼結体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15