(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024291
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】制振金物及びこれを用いた制振構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/98 20060101AFI20240215BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
E04B1/98 P
E04B1/82 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127038
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】516223632
【氏名又は名称】金井 建二
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】金井 建二
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF07
2E001DG01
2E001FA01
2E001GA12
2E001HE01
(57)【要約】
【課題】下階の天井の制振を行うことができる制振金物を提供すること。
【解決手段】天井梁に根太を連結する、制振金物であって、前記天井梁の側面に固定する第一固定部材と、前記根太の側面に固定する第二固定部材と、前記第一固定部材と前記第二固定部材に接着する粘弾性体と、を有し、前記第一固定部材は、対向する側板と、前記側板の下端を連結する底板と、前記対向する側板の側辺から外方向に直角に立設し、前記天井梁の側面に当接する第一固定部と、を有し、前記第二固定部材は、前記根太の側面に当接する第二固定部と、前記第一固定部材の前記側板の外側の面に対向して配置する接合部と、前記第二固定部と前記接合部との間に位置する段差部と、を有し、前記粘弾性体は、前記第一固定部材の前記側板の外側の面と、前記第二固定部材の前記接合部の内側の面とを接着することを特徴とする、制振金物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築において直交する第一の構造材と第二の構造材とを連結する、制振金物であって、
前記第一の構造材の側面に固定する第一固定部材と、
前記第二の構造材の側面に固定する第二固定部材と、
前記第一固定部材と前記第二固定部材に接着する粘弾性体と、を有し、
前記第一固定部材は、対向する側板と、前記側板の下端を連結する底板と、前記対向する側板の側辺から外方向に直角に立設し、前記第一の構造材の側面に当接する第一固定部と、を有し、
前記第二固定部材は、前記第二の構造材の側面に当接する第二固定部と、前記第一固定部材の前記側板に対向して配置する接合部と、を有し、
前記粘弾性体は、前記第一固定部材の前記側板と、前記第二固定部材の前記接合部とを接着することを特徴とする、
制振金物。
【請求項2】
前記第一固定部材の底板の上面に、前記第二の構造材の底面との間に設ける制振部材を有することを特徴とする、
請求項1に記載の制振金物。
【請求項3】
前記第一固定部材の前記側板は、前記第一固定部側の端部の下端に矩形の切り欠きを有することを特徴とする、
請求項2に記載の制振金物。
【請求項4】
前記第二固定部材は、前記第二固定部と前記接合部との間に位置する段差部と、を有し、
前記第二固定部材の前記接合部は、前記第一固定部材の前記側板の外側の面に対向して配置することを特徴とする、
請求項3に記載の制振金物。
【請求項5】
前記第二固定部材の前記接合部は、前記第二の構造材の側面に当接し、前記第一固定部材の前記側板の内側の面に対向して配置することを特徴とする、
請求項3に記載の制振金物。
【請求項6】
前記第一固定部材の前記第一固定部を前記第一の構造材の側面に固定し、
前記制振金物の前記第一固定部材の対向する前記側板間に前記第二の構造材を収容し、
前記第二固定部材の前記第二固定部を前記第二の構造材の側面に固定することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制振金物を用いた制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築において直交する構造材を連結するとともに制振を行う制振金物及びこれを用いた制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
枠組壁工法による住宅の床構造において、例えば特許文献1のように、遮音対策として上階の床根太から独立した天井根太を設けるものが知られている。
この構造は、下階の天井面材が天井根太に取り付けるものであり、天井根太が床根太から独立しているので、床根太から下階の天井面材への衝撃音による振動の伝搬を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-25690
【特許文献2】実用新案登録第3193710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、木造住宅向けには特許文献2に記載されているような粘弾性体を用いた制振ダンパーが知られている。
出願人は今回、粘弾性体を用いた制振金物であって、天井面材を取り付ける天井根太を制振することで上階の衝撃音による振動の伝搬を抑制することができる、制振金物を開発した。
【0005】
本発明は、下階の天井の制振を行うことができる制振金物及びこれを用いた制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の制振金物は、木造建築において直交する第一の構造材と第二の構造材とを連結する、制振金物であって、前記第一の構造材の側面に固定する第一固定部材と、前記第二の構造材の側面に固定する第二固定部材と、前記第一固定部材と前記第二固定部材に接着する粘弾性体と、を有し、前記第一固定部材は、対向する側板と、前記側板の下端を連結する底板と、前記対向する側板の側辺から外方向に直角に立設し、前記第一の構造材の側面に当接する第一固定部と、を有し、前記第二固定部材は、前記第二の構造材の側面に当接する第二固定部と、前記第一固定部材の前記側板に対向して配置する接合部と、を有し、前記粘弾性体は、前記第一固定部材の前記側板と、前記第二固定部材の前記接合部とを接着することを特徴とする。
前記第一固定部材の底板の上面に、前記第二の構造材の底面との間に設ける制振部材を有してもよい。
前記第一固定部材の前記側板は、前記第一固定部側の端部の下端に矩形の切り欠きを有してもよい。
前記第二固定部材は、前記第二固定部と前記接合部との間に位置する段差部と、を有し、前記第二固定部材の前記接合部は、前記第一固定部材の前記側板の外側の面に対向して配置してもよい。
前記第二固定部材の前記接合部は、前記第二の構造材の側面に当接し、前記第一固定部材の前記側板の内側の面に対向して配置してもよい。
また、前記第一固定部材の前記第一固定部を前記第一の構造材の側面に固定し、前記制振金物の前記第一固定部材の対向する前記側板間に前記第二の構造材を収容し、前記第二固定部材の前記第二固定部を前記第二の構造材の側面に固定することを特徴とする、上述の制振金物を用いた制振構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)粘弾性体が変形し、制振部材とともに制振を行うことができる。
(2)制振金物は、天井梁と根太の連結機能と制振機能の二つを有するため、安価に制振構造を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】第二実施例にかかる本発明の制振構造の斜視図
【
図9】第二実施例にかかる本発明の制振金物の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0010】
[実施例1]
<1>制振金物の概要
本実施例における本発明の制振金物1は、天井梁2に根太3を連結するものである(
図1)。
制振金物1は、天井梁2の側面に固定する第一固定部材11と、根太3の両側面に固定する2枚の第二固定部材12と、第一固定部材11と第二固定部材12に接着する粘弾性体13からなる(
図2)。第一固定部材11と第二固定部材12は、それぞれを貫通する釘4により天井梁2及び根太3に固定する。なお、釘4に限らずビス等の従来の固定具を用いてもよい。
【0011】
<2>第一固定部材
第一固定部材11は、対向する側板111と、側板111の下端を連結する底板112と、側板111の側辺から外方向に直角に立設する第一固定部113とを有する(
図3)。
側板111は、第一固定部113側の端部の下端に矩形の切り欠き114を設けてもよい。切り欠き114を設けることで、第一固定部113に対して底板112の位置を低くすることができる。
第一固定部113は天井梁2に固定するための釘4を貫通する貫通孔115を有する。
【0012】
<3>第二固定部材
第二固定部材12は、平板状の第二固定部121及び接合部122と、第二固定部121と接合部122との間に位置する段差部123と、を有する(
図4)。
段差部123は粘弾性体13の高さだけ立ち上げる。
第二固定部121は根太3に固定するための釘4を貫通する貫通孔124を有する。
【0013】
<4>粘弾性体
粘弾性体13は高減衰ゴム、アクリルゴム等からなる。
粘弾性体13は、一方の面を第一固定部材11の側板111の外側の面に接着し、他方の面を第二固定部材12の接合部122の内側の面を接着して、第一固定部材11と第二固定部材12が一体となり、制振金物1となる(
図5)。
粘弾性体13の両面に第一固定部材11と第二固定部材12を接着することにより、粘弾性体13は、第一固定部材11と第二固定部材12の相対的な変位に合わせて変形し、制振を行う。
【0014】
<5>制振部材
第一固定部材11の底板112の上面には、ウレタンや樹脂等からなる所定の厚さの制振部材14を配置する(
図2、
図5)。
制振部材14の上部には根太3が位置する。このとき、根太3には切り欠き31を設け、切り欠き31に制振部材14が収まることで、根太3の位置を天井梁2に対して低い位置とすることで、天井材を直接、根太3に貼りつけることができる。なお、天井の構造により、根太3に天井材を貼りつけない場合には、切り欠き31を設けなくてもよい。
制振部材14はウレタンや樹脂等からなるため、根太3の自重により圧縮される。このため、予め根太3の自重による圧縮量を計算して、制振部材14の厚さを決定する。
【0015】
<6>制振金物を用いた天井梁と根太の制振構造
次に、上述の制振金物1を用いた天井梁と根太の制振構造について説明する。
【0016】
<6.1>制振構造
制振金物1は、第一固定部材11の第一固定部113を釘4により天井梁2の側面に固定する。側板111の下端に切り欠き114を有する場合には、第一固定部113の下端と天井梁2の下端を合わせることで、底板112が天井梁2よりも下方に位置する。
天井梁2と直交する根太3は、第一固定部材11の対向する側板111間に収容し、底板112とその上面に配置した制振部材14により根太3を受ける。根太3に切り欠き31を設けることで、根太3の位置を天井梁2に対して低い位置とすることができる。
そして、第二固定部材12の第二固定部121を釘4により根太3の側面に固定する。
本発明の制振金物1は、天井梁2と根太3の連結機能と制振機能の二つを有するため、安価に制振構造を構築することができる。
【0017】
<6.2>制振構造の作用
(i)下方向への変位(
図6)
制振構造に振動が作用し、根太3に下方への力が作用すると、制振部材14が圧縮されて、根太3が沈み込み、根太3に固定された第二固定部材12が下方に変位し、天井梁2に固定された第一固定部材11との間に相対的な変位が生じる。これにより、粘弾性体13が変形し、制振部材14とともに制振を行う。
【0018】
(ii)上方向への変位(
図7)
制振構造に振動が作用し、根太3に上方への力が作用すると、根太3が浮き上がり、根太3に固定された第二固定部材12が上方に変位し、天井梁2に固定された第一固定部材11との間に相対的な変位が生じる。これにより粘弾性体13が変形し、制振部材14とともに制振を行う。
【0019】
[実施例2]
上述の実施例1では、第二固定部材12は段差部123により接合部122を粘弾性体13の高さ立ち上げることで、接合部122は第一固定部材11の側板111の外側に対向して配置したが、実施例2においては、第二固定部材12に段差部123を設けずに、第二固定部121と接合部122を一平面とし、第二固定部材12を根太3に当接して接合部122を第一固定部材11の側板111の内側に対向して配置してもよい(
図8、9)
粘弾性体13は、一方の面を第一固定部材11の側板111の内側の面に接着し、他方の面を第二固定部材12の接合部122の外側の面を接着する。
【0020】
[その他の実施例]
上述の実施例1、2では、制振金物1により天井梁2と根太3を連結して構成したが、天井梁と天井根太の組み合わせに限らず、天井梁と床根太や、軸組工法における梁どうし等、木造建築においてT字状に直交する構造材どうしの組み合わせであれば、本発明の制振金物1を適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 制振金物
11 第一固定部材、111 側板、112 底板、113 第一固定部、114 切り欠き、115 貫通孔
12 第二固定部材、121 第二固定部、122 接合部、123 段差部、124 貫通孔
13 粘弾性体
14 制振部材
2 天井梁
3 根太、31 切り欠き
4 釘