(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024294
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】逆止弁およびスリーブパイプ
(51)【国際特許分類】
F16K 15/14 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F16K15/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127045
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】四垂 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】月俣 馨介
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA03
3H058AA13
3H058BB28
3H058CA04
3H058CC07
3H058CD29
3H058EE01
(57)【要約】
【課題】スリーブパイプへの地下水等の流入を防止することができる逆止弁およびこの逆止弁を用いたスリーブパイプを提供する。
【解決手段】薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、注入口内に挿入される伸縮可能な軸部2と、前記軸部2の一端側に設けられた第1フランジ部3と、前記軸部2の他端側に設けられ、周縁部から前記軸部2に向けて切欠部41が形成された第2フランジ部4と、を備える逆止弁1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、
注入口内に挿入される伸縮可能な軸部と、
前記軸部の一端側に設けられた第1フランジ部と、
前記軸部の他端側に設けられ、周縁部から前記軸部に向けて切欠部が形成された第2フランジ部と、
を備える逆止弁。
【請求項2】
薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、
注入口内に挿入され、内部空間と、一端側の周壁に前記内部空間に連通する貫通孔を有する伸縮可能な軸部と、
前記軸部の前記一端側に設けられた第1フランジ部と、
前記軸部の他端側に設けられた第2フランジ部と、
を備える逆止弁。
【請求項3】
前記軸部内に補強リブが形成されている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記軸部に蛇腹部が形成されている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項5】
側壁に注入口が形成された管本体と、
前記注入口に取り付けられる逆止弁と、
を備えるスリーブパイプであって、前記逆止弁は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の逆止弁であるスリーブパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁およびこれを用いたスリーブパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
砂礫層や崩壊しやすい未固結層等の地盤を改良すべく、地盤改良工事が行われている。こうした地盤改良工事の一例として、二重管ダブルパッカー工法が挙げられる。二重管ダブルパッカー工法では、ケーシングパイプを用いて地盤を削孔した後、スリーブパイプをケーシングパイプの内部に建て込み、ケーシングパイプを引き抜き撤去した後、スリーブパイプの内部にダブルパッカーを備えたインジェクションパイプを挿入して、当該インジェクションパイプからスリーブパイプを経て地盤への薬液注入が行われる。
【0003】
この二重管ダブルパッカー工法で用いられるスリーブパイプは、側壁に注入口が形成された管本体と、注入口に開閉可能に貼り付けられた逆止弁としての可撓性のスリーブと、を備えている(例えば特許文献1参照)。さらに、スリーブパイプには、管本体およびスリーブを覆う熱収縮性のゴム層が形成され、当該ゴム層に薬液を吐出するための吐出スリットが形成されている場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のスリーブパイプの逆止弁は、管本体に接着剤等を用いて貼り付けられているものが多いが、スリーブパイプの使用を繰り返すことにより接着剤による接着効果が低下してしまうことがあった。接着効果が低下すると、逆止弁による密閉力が低下し、薬液吐出後に注入口を密閉することができずに逆止弁と管本体との間に間隙が生じ、こうした間隙に砂礫等の異物が挟まることで注入口を密閉できなくなってしまうことがあった。そして、注入口を密閉できないと、薬液注入後に当該間隙を通じてスリーブパイプ内に地下水等が流入してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決することを課題とするものであって、繰り返し使用しても密閉力が低下せず、スリーブパイプへの地下水等の流入を防止することができる逆止弁およびこの逆止弁を用いたスリーブパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、注入口内に挿入される伸縮可能な軸部と、前記軸部の一端側に設けられた第1フランジ部と、前記軸部の他端側に設けられ、周縁部から前記軸部に向けて切欠部が形成された第2フランジ部と、を備える逆止弁であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、注入口内に挿入され、内部空間と、一端側の周壁に前記内部空間に連通する貫通孔を有する伸縮可能な軸部と、前記軸部の前記一端側に設けられた第1フランジ部と、前記軸部の他端側に設けられた第2フランジ部と、を備える逆止弁であることを特徴とする。
【0009】
上記発明において、前記軸部内に補強リブが形成されていることが好ましい。
【0010】
上記発明において、前記軸部に蛇腹部が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、側壁に注入口が形成された管本体と、前記注入口に取り付けられる逆止弁と、を備えるスリーブパイプであって、前記逆止弁は、上記何れかの逆止弁であるスリーブパイプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の逆止弁およびスリーブパイプによれば、繰り返し使用しても密閉力が低下せず、スリーブパイプへの地下水等の流入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る逆止弁を示す上方斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る逆止弁を示す下方斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る逆止弁をスリーブパイプの注入口に取り付けた状態を示す断面図であり、(a)は薬液の吐出が行われていない状態を示す断面図、(b)は薬液の吐出が行われている状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る逆止弁を示す上方斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る逆止弁を示す下方斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る逆止弁をスリーブパイプの注入口に取り付けた状態を示す断面図であり、(a)は薬液の吐出が行われていない状態を示す断面図、(b)は薬液の吐出が行われている状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る逆止弁を示す上方斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る逆止弁を示す下方斜視図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る逆止弁をスリーブパイプの注入口に取り付けた状態を示す断面図であり、(a)は薬液の吐出が行われていない状態を示す断面図、(b)は薬液の吐出が行われている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従う逆止弁およびこれを用いたスリーブパイプの実施形態について説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る逆止弁1を示す上方斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る逆止弁1を示す下方斜視図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る逆止弁1は、スリーブパイプ等に形成された薬液の注入口に取り付けられるものであり、軸部2と、軸部2の一端側に設けられた第1フランジ部3と、軸部2の他端側に設けられた第2フランジ部4を備えている。
【0017】
軸部2は、弾性変形可能な樹脂により形成されていて、長手方向に伸縮可能になっている。軸部2の径は注入口内に挿入可能な径になっている。軸部2の長さ(第1フランジ部3との連結部分(第1連結部分)22から第2フランジ部4との連結部分(第2連結部分)23までの長さ、
図3も参照)は、第1フランジ部3の接触面31から第1連結部分22までの高さに、注入口W1の長さを加えたものよりも短くなっている。軸部2の周囲には長手方向に沿い4つの溝部21が等間隔に設けられている。
【0018】
第1フランジ部3は、軸部2と同じ弾性変形可能な樹脂により形成されていて、注入口より大きな径を有し注入口を覆う傘状の構成部分であり、その中央部分において軸部2に連続している。第1フランジ部3は、上面(
図1と
図2の紙面上方)と下面(
図1と
図2の紙面下方)がアーチ形状の曲面になっているアーチ部32と、アーチ部32の周縁下部に形成され軸部2の軸線方向と垂直な平面である接触面31を備えている。接触面31が平面になっていることにより、スリーブパイプWの密閉時にスリーブパイプWと面で接触することができ、注入口W1の密閉性を高めることができる。
【0019】
第2フランジ部4は、軸部2と同じ弾性変形可能な樹脂により形成されていて、注入口よりも大きな径を有している。第2フランジ部4は、周縁部から軸部2に向けて形成された切欠部41を備えている。切欠部41は第2フランジ部4の周縁部分において等間隔に4つ、軸部2の溝部21にそれぞれ連続するように形成されている。第2フランジ部4の中心軸から切欠部41の最深部までの径は、逆止弁1が取り付けられる注入口の半径よりも短くなっている。
【0020】
逆止弁1を注入口に取り付けた状態において、注入口内部は切欠部41とこれに連続する溝部21を通じてスリーブパイプの内部と連通した状態になっていて、薬液の吐出時にはスリーブパイプ内から注入口内へと供給される薬液の流路になる。
【0021】
次に、スリーブパイプの注入口への逆止弁1の取り付けと、注入口に取り付けられた逆止弁1が動作する様子について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る逆止弁1をスリーブパイプWの注入口W1に取り付けた状態を示す断面図であり、(a)は薬液Sの吐出が行われていない状態を示す断面図、(b)は薬液Sの吐出が行われている状態を示す断面図である。なお、スリーブパイプWには、通常薬液Sの吐出用のスリットを有し、注入口W1および逆止弁1を覆う熱収縮ゴム層が形成されるが、
図3においては逆止弁1の動作を見やすくするため熱収縮ゴム層の図示を省略している。また、スリーブパイプWの形状は特に限定されず、断面形状が多角形状のものや円形状のもの等、種々のものを用いることができるが、本実施形態においては断面が六角形状のものを用いることにする。スリーブパイプWの断面が多角形状であり、逆止弁1の取付箇所が平面状の側面である場合には、断面が円形状のスリーブパイプWの曲面状の側面である場合と比較して、逆止弁1による密閉効果をより高めることができる。
【0022】
まず、スリーブパイプWの注入口W1への逆止弁1の取り付けについて説明する。
図3(a)に示すように、逆止弁1は軸部2がスリーブパイプWの注入口W1に挿入されることで、注入口W1に取り付けられている。
【0023】
逆止弁1の注入口W1への取付時には、逆止弁1はスリーブパイプWの外側から、第2フランジ部4をスリーブパイプWの内側に挿入するようにして取り付けられる。このとき、第2フランジ部4と軸部2は径方向内側に向けて弾性変形することで第2フランジ部4の径が縮まり、第2フランジ部4とこれに連続する軸部2を注入口W1内に挿入することが可能になる。
【0024】
ここで、軸部2の長さは、第1フランジ部3の接触面31から第1連結部分22までの高さに、注入口W1の長さを加えたものよりも短くなっているため、単に注入口W1に第2フランジ部4を挿入したとしても第2フランジ部4の全体を注入口W1を通過させてスリーブパイプWの内側に露出させることはできない。しかし、第1フランジ部3がアーチ状であり上方から押し込まれることで容易に変形可能であり、第1フランジ部3が下方に押し込まれ弾性変形することにより、これに連続する軸部2もさらに下方に押し込まれ、軸部2に連続する第2フランジ部4の全体が注入口W1を通過することが可能になる。
【0025】
そして、第2フランジ部4がスリーブパイプWの外側から内側に向けて注入口W1を通過すると、第2フランジ部4と軸部2が弾性復元力により径方向外側に広がり元の形状に戻ることにより、逆止弁1が注入口W1に係止した状態になる。
【0026】
さらに、押し込まれていた第1フランジ部3の押し込みが解除されると、第1フランジ部3は弾性復元力により元の形状に戻るが、その際軸部2を引っ張り上げるため、軸部2は伸びた状態になる。この伸ばされた軸部2が元の長さに戻ろうとする弾性復元力により、第1フランジ部3と第2フランジ部4は引っ張られた状態になり、スリーブパイプWの内外において周壁に密着した状態になる。これにより薬液が吐出されていない状態において第1フランジ部3とスリーブパイプWとが密着し、これらの間に間隙が生じて砂礫等の異物が挟まってしまうことを防止することができる。
【0027】
次に、このようにして逆止弁1が取り付けられた注入口W1から薬液が吐出される様子について説明する。
図3(b)に示すように、スリーブパイプWの内側(
図3(b)の紙面下方)に加圧された薬液Sが流入すると、薬液Sは第2フランジ部4の切欠部41と軸部2の溝部21を経てスリーブパイプWの外面と第1フランジ部3により規定される空間内に到達し、さらに軸部2の弾性復元力に抗して第1フランジ部3を押し上げる。
【0028】
こうして第1フランジ部3が押し上げられてスリーブパイプWの上面との間に間隙が形成されると、薬液Sはこの間隙を通りスリーブパイプWの外部へと吐出される。
【0029】
そして、スリーブパイプW内への薬液Sの供給が停止されると、スリーブパイプW内の薬液Sの圧力が低下し、軸部2の弾性復元力により第1フランジ部3が引っ張られ、
図3(a)に示すようにスリーブパイプWの上面に密着し、再び注入口W1が閉鎖される。
【0030】
こうして逆止弁1により注入口W1が閉鎖されると、スリーブパイプWの外部から内部への地下水等の流入が防止される。
【0031】
このように、本実施形態に係る逆止弁1によると、逆止弁1の閉鎖を軸部2の弾性復元力により行っているため、繰り返し使用しても密閉力は低下せず、スリーブパイプWへの地下水等の流入を防止することができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る逆止弁50について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る逆止弁50を示す上方斜視図である。
図5は、本発明の第2実施形態に係る逆止弁50を示す下方斜視図である。
【0033】
図4および
図5に示すように、第2実施形態に係る逆止弁50は、スリーブパイプ等に形成された薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、軸部52と、軸部52の一端側に設けられた第1フランジ部53と、軸部52の他端側に設けられた第2フランジ部54を備えている。
【0034】
軸部52は、弾性変形可能な樹脂により形成されていて、長手方向に伸縮可能になっている。軸部2の径は注入口W1内に挿入可能な径になっている。軸部2の長さ(第1連結部分526から第2連結部分527までの長さ、
図6も参照)は、第1フランジ部53の接触面531から第1連結部分526までの高さに、注入口W1の長さを加えたものよりも短くなっている。軸部52の内部には内部空間521が形成されている。軸部52の第1フランジ部53側の端部には、周壁を貫通して内部空間521に連通する貫通孔522が4つ、等間隔に設けられている。
【0035】
軸部52の内部空間521内には、第1フランジ部53および軸部52の周壁に連続する補強リブ523が形成されている。補強リブ523は軸部52の軸線方向に垂直な断面において十字形状をしていて、上端部分は第1フランジ部53に連続し、周辺部分において軸部52の周壁に連続し、下端部分は軸部52の内部空間521内であって第2フランジ部54の開口部542よりも上方に位置している。補強リブ523が形成されていることにより、軸部52の、径方向内側に向けて作用する力に対する機械的強度を高めることができる。これにより、薬液Sの注入時に軸部52の外側から加わる薬液Sの水圧に加えて内部空間521内を流れる薬液Sにより生じる内部空間521の内壁を吸引する力が合わさることで生じる、軸部52が径方向内側に潰れる変形を防止することができ、薬液Sの流路を安定して確保することが可能になる。
【0036】
第1フランジ部53は、軸部52と同じ弾性変形可能な樹脂により形成されていて、注入口より大きな径を有し注入口を覆う傘状の構成要素であり、その中央部分において軸部52に連続している。第1フランジ部53は、上面と下面がアーチ形状の曲面になっているアーチ部532と、アーチ部532の周縁下部に形成され軸部52の軸線方向と垂直な平面である接触面531を備えている。接触面531があることにより、スリーブパイプWと面で接触することができ、注入口W1の密閉性を高めることができる。
【0037】
第2フランジ部54は、軸部52と同じ弾性変形可能な樹脂により形成されていて、注入口W1よりも大きな径を有している。第2フランジ部54の中央部分には軸部52の内部空間521に通じる開口部542が形成されている。第2フランジ部54の下面541は傾斜面になっていて、第2フランジ部54の注入口W1への挿入をスムーズに行うことを可能にしている。
【0038】
次に、スリーブパイプWの注入口への逆止弁50の取り付けと、注入口に取り付けられた逆止弁50が動作する様子について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る逆止弁50をスリーブパイプWの注入口W1に取り付けた状態を示す断面図であり、(a)は薬液Sの吐出が行われていない状態を示す断面図、(b)は薬液Sの吐出が行われている状態を示す断面図である。なお、スリーブパイプWには、通常薬液Sの吐出用のスリットを有し、注入口W1および逆止弁1を覆う熱収縮ゴム層が形成されるが、
図6においては逆止弁50の動作を見やすくするため熱収縮ゴム層の図示を省略している。また、スリーブパイプWの形状についても、第1実施形態と同様に、断面が六角形状のものを例にして説明をする。
【0039】
まず、スリーブパイプWの注入口W1への逆止弁50の取り付けについて説明する。
図6(a)に示すように、逆止弁50は軸部52がスリーブパイプWの注入口W1に挿入されることで、注入口W1に取り付けられている。
【0040】
逆止弁50の注入口W1への取付時には、逆止弁50はスリーブパイプWの外側から、第2フランジ部54をスリーブパイプWの内側に挿入するようにして取り付けられる。このとき、第2フランジ部54と軸部52の補強リブ523が形成されていない先端部分が径方向内側に向けて弾性変形することで、第2フランジ部54の径が縮まり、第2フランジ部54とこれに連続する軸部52を注入口W1内に挿入することが可能になる。
【0041】
ここで、軸部52の長さは、第1フランジ部53の接触面531から第1連結部分526までの高さに、注入口W1の長さを加えたものよりも短くなっているため、単に注入口W1に第2フランジ部54を挿入したとしても第2フランジ部54の全体を注入口W1を通過させてスリーブパイプWの内側に露出させることはできない。しかし、第1フランジ部53がアーチ状であり上方から押し込まれることで容易に変形可能であり、第1フランジ部53が下方に押し込まれ弾性変形することにより、これに連続する軸部52もさらに下方に押し込まれ、これにより軸部52に連続する第2フランジ部54の全体が注入口W1を通過することが可能になる。
【0042】
そして、第2フランジ部54がスリーブパイプWの外側から内側に向けて注入口W1を通過すると、第2フランジ部54と軸部52の先端部分が弾性復元力により径方向外側に広がり元の形状に戻ることにより、逆止弁50が注入口W1に係止した状態になる。
【0043】
さらに、押し込まれていた第1フランジ部53の押し込みが解除されると、第1フランジ部53は弾性復元力により元の形状に戻るが、その際軸部52を引っ張り上げるため、軸部52は伸びた状態になる。この軸部52が元の長さに戻ろうとする弾性復元力により、第1フランジ部53と第2フランジ部54は引っ張られた状態になり、スリーブパイプWの内外においてスリーブパイプWの周壁に密着した状態になる。これにより薬液Sが吐出されていない状態において第1フランジ部53とスリーブパイプWとの間に間隙が生じ砂礫等の異物が挟まってしまうことを防止することができる。
【0044】
次に、このようにして逆止弁50が取り付けられた注入口W1から薬液が吐出される様子について説明する。
図6(b)に示すように、スリーブパイプWの内側(
図6(b)の紙面下方)に加圧された薬液Sが流入すると、薬液Sは第2フランジ部54の開口部542、軸部52の内部空間521および貫通孔522を経てスリーブパイプWの外面と第1フランジ部53により規定される空間内に到達し、さらに軸部52の弾性復元力に抗して第1フランジ部53を押し上げる。
【0045】
こうして第1フランジ部53が押し上げられてスリーブパイプWの上面との間に間隙が形成されると、薬液Sはこの間隙を通りスリーブパイプWの外部へと吐出される。
【0046】
そして、スリーブパイプWへの薬液Sの供給が停止されると、スリーブパイプW内の薬液Sの圧力が低下し、軸部52の弾性復元力により第1フランジ部53が引っ張られ、スリーブパイプWの上面に密着し、
図6(a)に示すように、再び注入口W1が閉鎖される。
【0047】
こうして逆止弁50により注入口W1が閉鎖されると、スリーブパイプWの外部から内部への地下水等の流入が防止される。
【0048】
このように、本実施形態に係る逆止弁50によっても、逆止弁50の閉鎖を軸部52の弾性復元力により行っているため、繰り返し使用しても密閉力は低下せず、スリーブパイプWへの地下水等の流入を防止することができる。
【0049】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る逆止弁70について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係る逆止弁70を示す上方斜視図である。
図8は、本発明の第3実施形態に係る逆止弁70を示す下方斜視図である。
【0050】
図7および
図8に示すように、第3実施形態に係る逆止弁70は、スリーブパイプ等に形成された薬液の注入口に取り付けられる逆止弁であって、軸部72と、軸部72の一端側に設けられた第1フランジ部73と、軸部72の他端側に設けられた第2フランジ部74を備えている。
【0051】
軸部72は、弾性変形可能な樹脂により形成されている。軸部72には、伸縮可能な蛇腹部721が形成されている。本実施形態に係る逆止弁70の軸部72は、軸部72自体の弾性変形に加えて、蛇腹部721の伸縮が加わることにより、上述した第1実施形態に係る逆止弁1の軸部2や、第2実施形態に係る逆止弁50の軸部52と比較して、より容易に伸縮可能になっている。軸部72の径は注入口W1内に挿入可能な径になっている。軸部72の長さ(第1連結部分726から第2連結部分727までの長さ、
図9も参照)は、第1フランジ部73の周縁部から第1連結部分726までの高さに、注入口W1の長さを加えたものよりも短くなっている。軸部72の内部には内部空間722が形成されている。軸部72の第1フランジ部73側の端部には、周壁を貫通して内部空間722に連通する貫通孔723が4つ、等間隔に設けられている。
【0052】
第1フランジ部73は、軸部72と同じ弾性変形可能な樹脂により形成されていて、注入口より大きな径を有し注入口を覆う傘状の構成要素であり、その中央部分において軸部72に連続している。第1フランジ部73は、上面と下面がアーチ形状の曲面になっている。
【0053】
第2フランジ部74は、軸部72と同じ弾性変形可能な樹脂により形成されていて、注入口W1よりも大きな径を有している。第2フランジ部74の中央部分には、軸部72の内部空間722に通じる開口部742が形成されている。第2フランジ部74の下面741は傾斜面になっていて、第2フランジ部74の注入口W1への挿入をスムーズに行うことを可能にしている。
【0054】
次に、スリーブパイプWの注入口W1への逆止弁70の取り付けと、注入口W1に取り付けられた逆止弁70が動作する様子について説明する。
図9は、本発明の第3実施形態に係る逆止弁70をスリーブパイプWの注入口W1に取り付けた状態を示す断面図であり、(a)は薬液Sの吐出が行われていない状態を示す断面図、(b)は薬液Sの吐出が行われている状態を示す断面図である。なお、スリーブパイプWには、通常薬液Sの吐出用のスリットを有し、注入口W1および逆止弁1を覆う熱収縮ゴム層が形成されるが、
図9においては逆止弁70の動作を見やすくするため熱収縮ゴム層の図示を省略している。また、スリーブパイプWの形状についても、第1実施形態と同様に、断面が六角形状のものを例にして説明をする。
【0055】
まず、スリーブパイプWの注入口W1への逆止弁70の取り付けについて説明する。
図9(a)に示すように、逆止弁70は軸部72がスリーブパイプWの注入口W1に挿入されることで、注入口W1に取り付けられている。
【0056】
逆止弁70の注入口W1への取付時には、逆止弁70はスリーブパイプWの外側から、第2フランジ部74をスリーブパイプWの内側に挿入するようにして取り付けられる。このとき、第2フランジ部74と軸部72は径方向内側に向けて弾性変形することで、第2フランジ部74の径が縮まり、第2フランジ部74とこれに連続する軸部72を注入口W1内に挿入することが可能になる。
【0057】
ここで、軸部72の長さは、第1フランジ部73の周縁部から第1連結部分726までの高さに、注入口W1の長さを加えたものよりも短くなっているため、単に注入口W1に第2フランジ部74を挿入したとしても第2フランジ部74の全体を注入口W1を通過させてスリーブパイプWの内側に露出させることはできない。しかし、第1フランジ部73がアーチ状であり上方から押し込まれることで容易に変形可能であり、第1フランジ部73が下方に押し込まれ弾性変形することにより、これに連続する軸部72もさらに下方に押し込まれ、軸部72に連続する第2フランジ部74の全体が注入口W1を通過することが可能になる。
【0058】
そして、第2フランジ部74が注入口W1をスリーブパイプWの外側から内側に向けて通過すると、第2フランジ部74と軸部72が弾性復元力により径方向外側に広がり元の形状に戻ることにより、逆止弁70が注入口W1に係止した状態になる。
【0059】
さらに、押し込まれていた第1フランジ部73の押し込みが解除されると、第1フランジ部73は弾性復元力により元の形状に戻るが、その際軸部72を引っ張り上げるため、軸部72は伸びた状態になる。この軸部72が元の長さに戻ろうとする弾性復元力により、第1フランジ部73と第2フランジ部74は引っ張られた状態になり、スリーブパイプWの内外においてスリーブパイプWの周壁に密着した状態になる。これにより薬液Sが吐出されていない状態において第1フランジ部73とスリーブパイプWとの間に間隙が生じ砂礫等の異物が挟まってしまうことを防止することができる。
【0060】
次に、このようにして逆止弁70が取り付けられた注入口W1から薬液が吐出される様子について説明する。
図9(b)に示すように、スリーブパイプWの内側(
図9(b)の紙面下方)に加圧された薬液Sが流入すると、薬液Sは第2フランジ部74の開口部742、軸部72の内部空間722および貫通孔723を経てスリーブパイプWの外面と第1フランジ部73により規定される空間内に到達し、さらに軸部72の弾性復元力に抗して第1フランジ部73を押し上げる。
【0061】
こうして第1フランジ部73が押し上げられてスリーブパイプWの上面との間に間隙が形成されると、薬液Sはこの間隙を通りスリーブパイプWの外部へと吐出される。
【0062】
そして、スリーブパイプWへの薬液Sの供給が停止されると、スリーブパイプW内の薬液Sの圧力が低下し、軸部72の弾性復元力により第1フランジ部73が引っ張られ、スリーブパイプWの上面に密着し、
図9(a)に示すように、再び注入口W1が閉鎖される。
【0063】
こうして逆止弁70により注入口W1が閉鎖されると、スリーブパイプWの外部から内部への地下水等の流入が防止される。
【0064】
このように、本実施形態に係る逆止弁70によっても、逆止弁70の閉鎖を軸部72の弾性復元力により行っているため、繰り返し使用しても密閉力は低下せず、スリーブパイプWへの地下水等の流入を防止することができる。
【0065】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されず、種々の変形を採用することができる。例えば、上述した第2実施形態に係る逆止弁50に形成された貫通孔522や、第3実施形態に係る逆止弁70に形成された貫通孔723は、それぞれ4つずつ形成されていたが、本発明においてはこれに限らず任意の数に増減することが可能であり、1~3個、または5つ以上の貫通孔522、723を設けてもよい。
【0066】
また、上述した第1実施形態に係る逆止弁1では、第2フランジ部4に切欠部41が設けられるとともに、軸部2に切欠部41に連続する溝部21が設けられていたが、本発明においては切欠部41から注入口W1内に薬液Sが流入可能であればよいため、例えば軸部2と注入口W1の内周壁との間に十分な間隙が形成されている態様である場合には、溝部21を省略してもよい。
【0067】
また、上述した各実施形態に係る逆止弁1、50、70について、スリーブパイプWに用いる態様を例にして説明したが、本発明はこれに限らず、スリーブパイプW以外の他の機構に用いられてもよい。さらに、上述した各実施形態において挙げた薬液Sについては特に制限は無く、地盤固化材や水等、あらゆる液状物が含まれている。
【符号の説明】
【0068】
1、50、70:逆止弁
2、52、72:軸部
3、53、73:第1フランジ部
4、54、74:第2フランジ部
21:溝部
22、526、726:第1連結部分
23、527、727:第2連結部分
31、531:接触面
32:アーチ部
41:切欠部
521、722:内部空間
522、723:貫通孔
523:補強リブ
542:開口部
721:蛇腹部
742:開口部
S:薬液
W:スリーブパイプ
W1:注入口