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  • 特開-車両用の電動圧縮機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024309
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】車両用の電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/10 20060101AFI20240215BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240215BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G05F1/10 301A
H02J7/00 302A
H02J7/00 S
H02H7/18
G05F1/10 304G
G05F1/10 304H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127068
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石原 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大島 敦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 仁
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳史
(72)【発明者】
【氏名】佐川 拓也
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H410
【Fターム(参考)】
5G053AA09
5G053AA12
5G053BA04
5G053CA01
5G053EA01
5G053EB08
5G053EC02
5G053FA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503FA16
5H410BB02
5H410CC02
5H410CC10
5H410DD02
5H410EB21
5H410EB37
5H410FF03
5H410FF22
5H410GG07
5H410LL02
5H410LL04
5H410LL20
(57)【要約】
【課題】バッテリの消費電力の増加を抑制できる。
【解決手段】車両用の電動圧縮機20は、制御装置33と、検出回路51と、を備える。検出回路51は、AD変換回路61を備える。AD変換回路61は、イグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する。制御装置33は、デジタル信号によってイグニッション電圧の値を認識する。制御装置33は、イグニッション電圧の値が過電圧判定閾値より大きい場合には、バッテリ11が過電圧であると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータに交流電力を供給するインバータと、
前記インバータを制御する制御装置を含む高電圧回路と、
前記電動モータによって駆動する圧縮部と、
車両のイグニッションスイッチを介してバッテリから加わるイグニッション電圧を検出する検出回路を含む低電圧回路と、を備えた車両用の電動圧縮機であって、
前記検出回路は、
前記イグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路よりも前記イグニッション電圧の入力側に設けられたスイッチング素子と、
ウェイクアップ信号が入力されることによって前記スイッチング素子をオンする切替部と、を備え、
前記制御装置は、前記デジタル信号によって認識する前記イグニッション電圧の値が過電圧判定閾値より大きい場合に前記バッテリが過電圧であると判定し、前記車両用の電動圧縮機を停止させる、車両用の電動圧縮機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記デジタル信号によって認識する前記イグニッション電圧の値が低電圧判定閾値より小さい場合に前記バッテリが低電圧であると判定し、前記車両用の電動圧縮機を停止させる、請求項1に記載の車両用の電動圧縮機。
【請求項3】
電動モータと、
前記電動モータに交流電力を供給するインバータと、
前記インバータを制御する制御装置を含む高電圧回路と、
前記電動モータによって駆動する圧縮部と、
車両のイグニッションスイッチを介してバッテリから加わるイグニッション電圧を検出する検出回路を含む低電圧回路と、を備えた車両用の電動圧縮機であって、
前記検出回路は、
前記イグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路よりも前記イグニッション電圧の入力側に設けられたスイッチング素子と、
ウェイクアップ信号が入力されることによって前記スイッチング素子をオンする切替部と、を備え、
前記制御装置は、前記デジタル信号によって認識する前記イグニッション電圧の値が低電圧判定閾値より小さい場合に、前記バッテリが低電圧であると判定し、前記車両用の電動圧縮機を停止させる、車両用の電動圧縮機。
【請求項4】
前記AD変換回路は、前記アナログ信号をビット情報に変換する、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用の電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電源制御装置は、制御装置と、2つの分圧抵抗と、を備える。2つの分圧抵抗には、イグニッション電圧が加わる。イグニッション電圧は、イグニッションスイッチを介してバッテリから加わる電圧である。イグニッションスイッチがオンされると、バッテリと2つの分圧抵抗が電気的に接続されることによって2つの分圧抵抗にイグニッション電圧が加わる。制御装置には、2つの分圧抵抗によって分圧された電圧が加わる。制御装置は、2つの分圧抵抗によって分圧された電圧からイグニッション電圧が閾値より大きいか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-341595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の電源制御装置では、イグニッションスイッチがオンしている間は分圧抵抗に常に電流が流れる。これにより、バッテリの消費電力が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用の電動圧縮機は、電動モータと、前記電動モータに交流電力を供給するインバータと、前記インバータを制御する制御装置を含む高電圧回路と、前記電動モータによって駆動する圧縮部と、車両のイグニッションスイッチを介してバッテリから加わるイグニッション電圧を検出する検出回路を含む低電圧回路と、を備えた車両用の電動圧縮機であって、前記検出回路は、前記イグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記AD変換回路よりも前記イグニッション電圧の入力側に設けられたスイッチング素子と、ウェイクアップ信号が入力されることによって前記スイッチング素子をオンする切替部と、を備え、前記制御装置は、前記デジタル信号によって認識する前記イグニッション電圧の値が過電圧判定閾値より大きい場合に前記バッテリが過電圧であると判定し、前記車両用の電動圧縮機を停止させる。
【0006】
AD変換回路は、イグニッション電圧をデジタル信号に変換する。制御装置は、デジタル信号からイグニッション電圧の値を認識できる。制御装置は、イグニッション電圧の値から、過電圧の判定を行うことができる。分圧抵抗を用いることなく、過電圧の判定を行うことができるため、分圧抵抗に電流が流れることを原因とするバッテリの消費電力の増加を抑制できる。
【0007】
上記車両用の電動圧縮機について、前記制御装置は、前記デジタル信号によって認識する前記イグニッション電圧の値が低電圧判定閾値より小さい場合に前記バッテリが低電圧であると判定し、前記車両用の電動圧縮機を停止させてもよい。
【0008】
上記課題を解決する車両用の電動圧縮機は、電動モータと、前記電動モータに交流電力を供給するインバータと、前記インバータを制御する制御装置を含む高電圧回路と、前記電動モータによって駆動する圧縮部と、車両のイグニッションスイッチを介してバッテリから加わるイグニッション電圧を検出する検出回路を含む低電圧回路と、を備えた車両用の電動圧縮機であって、前記検出回路は、前記イグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記AD変換回路よりも前記イグニッション電圧の入力側に設けられたスイッチング素子と、ウェイクアップ信号が入力されることによって前記スイッチング素子をオンする切替部と、を備え、前記制御装置は、前記デジタル信号によって認識する前記イグニッション電圧の値が低電圧判定閾値より小さい場合に、前記バッテリが低電圧であると判定し、前記車両用の電動圧縮機を停止させる。
【0009】
AD変換回路は、イグニッション電圧をデジタル信号に変換する。制御装置は、デジタル信号からイグニッション電圧の値を認識できる。制御装置は、イグニッション電圧の値から、低電圧の判定を行うことができる。分圧抵抗を用いることなく、低電圧の判定を行うことができるため、分圧抵抗に電流が流れることを原因とするバッテリの消費電力の増加を抑制できる。
【0010】
上記車両用の電動圧縮機について、前記AD変換回路は、前記アナログ信号をビット情報に変換してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリの消費電力の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両用の電動圧縮機を示す概略構成図である。
図2】比較例の低電圧回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、車両用の電動圧縮機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両10は、バッテリ11と、イグニッションスイッチ12と、高電圧バッテリ13と、車両用の電動圧縮機20と、を備える。
【0014】
バッテリ11は、充放電可能であれば、どのようなものであってもよい。バッテリ11としては、例えば、鉛蓄電池を用いることができる。
イグニッションスイッチ12は、バッテリ11に接続されている。イグニッションスイッチ12は、車両10の起動時にオンされるスイッチである。イグニッションスイッチ12は、スタートスイッチと称される場合もある。
【0015】
高電圧バッテリ13は、充放電可能であれば、どのようなものであってもよい。高電圧バッテリ13としては、例えば、リチウムイオン二次電池を用いることができる。高電圧バッテリ13の出力電圧の定格値は、バッテリ11の出力電圧の定格値よりも高い。
【0016】
<車両用の電動圧縮機>
車両用の電動圧縮機20は、圧縮部21と、高電圧回路30と、低電圧回路40と、絶縁素子71と、を備える。車両用の電動圧縮機20は、例えば、車内の冷暖房を行うために設けられた外部冷媒回路への冷媒の供給に用いられる。
【0017】
圧縮部21は、吸入した流体を圧縮して吐出する。流体は、例えば、冷媒である。圧縮部21は、例えば、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等の構成により実現される。
【0018】
高電圧回路30は、インバータ31と、電動モータ32と、制御装置33と、を備える。高電圧回路30は、高電圧バッテリ13からの電力供給によって動作する。
インバータ31は、高電圧バッテリ13から供給される直流電力を交流電力に変換して出力する3相インバータである。インバータ31は、例えば、スイッチング素子のスイッチング動作によって直流電力を交流電力に変換する。
【0019】
電動モータ32は、3相モータである。インバータ31と電動モータ32とは、電気的に接続されている。電動モータ32は、インバータ31から供給される交流電力によって駆動する。電動モータ32の駆動によって圧縮部21が駆動する。
【0020】
制御装置33は、インバータ31の制御を行う。例えば、制御装置33は、インバータ31のスイッチング素子を制御することによって、インバータ31に直流電力を交流電力に変換させる。制御装置33は、例えば、ハードウェア構成としてプロセッサと、メモリと、を備える。
【0021】
低電圧回路40は、接続線41と、電源回路42と、フィルタ回路43と、ダイオード47と、コンデンサ48と、検出回路51と、を備える。低電圧回路40は、バッテリ11からの電力供給によって動作する。
【0022】
接続線41は、イグニッションスイッチ12に接続されている。イグニッションスイッチ12がオンされている場合、接続線41にはバッテリ11の電圧が加わる。イグニッションスイッチ12を介してバッテリ11から加わる電圧をイグニッション電圧と称する。
【0023】
電源回路42は、接続線41に接続されている。電源回路42には、接続線41を介してイグニッション電圧が加わる。電源回路42は、バッテリ11から供給された電圧を変圧して出力する。電源回路42は、例えば、トランスと、スイッチング素子と、を備える。
【0024】
フィルタ回路43は、イグニッションスイッチ12と電源回路42との間に設けられている。フィルタ回路43は、1つのインダクタ44と、2つのコンデンサ45,46と、を備える。インダクタ44は、接続線41に設けられている。2つのコンデンサ45,46は、インダクタ44を挟んで設けられている。2つのコンデンサ45,46は、接続線41とグランドとを接続している。
【0025】
ダイオード47は、イグニッションスイッチ12とフィルタ回路43との間に設けられている。ダイオード47のアノードは、イグニッションスイッチ12に接続されている。ダイオード47のカソードは、フィルタ回路43に接続されている。
【0026】
コンデンサ48は、フィルタ回路43と電源回路42との間に設けられている。コンデンサ48は、接続線41とグランドとを接続している。
<検出回路>
検出回路51は、電源端子52と、信号入力端子53と、入力端子54と、出力端子55と、スイッチング素子56と、切替部57と、他回路58と、イグニッション電圧検出回路60と、を備える。検出回路51は、イグニッション電圧を検出するための回路である。
【0027】
電源端子52には、接続線41のうちフィルタ回路43とコンデンサ48との間の部位が接続されている。信号入力端子53には、上位制御装置から送信されたウェイクアップ信号Siが入力される。入力端子54には、接続線41のうちフィルタ回路43とコンデンサ48との間の部位が接続されている。出力端子55には、絶縁素子71が接続されている。
【0028】
スイッチング素子56は、電源端子52とイグニッション電圧検出回路60との間に設けられている。スイッチング素子56がオンすることによって接続線41からイグニッション電圧検出回路60にイグニッション電圧が加わる。これにより、イグニッション電圧検出回路60が動作する。スイッチング素子56がオフすることによって接続線41からイグニッション電圧検出回路60にイグニッション電圧が加わらなくなる。スイッチング素子56としては、任意のものを用いることができる。本実施形態では、スイッチング素子56としてトランジスタが用いられている。スイッチング素子56のコレクタは、電源端子52に接続されている。スイッチング素子56のエミッタは、イグニッション電圧検出回路60に接続されている。
【0029】
切替部57は、信号入力端子53に接続されている。切替部57は、ウェイクアップ信号Siの入力に応じてスイッチング素子56のオンとオフとを切り替える。切替部57は、信号入力端子53を介してウェイクアップ信号Siが入力されると、スイッチング素子56をオンする。切替部57は、例えば、上位制御装置からスリープ信号が入力されると、スイッチング素子56をオフする。切替部57は、例えば、ハードウェア構成としてプロセッサと、メモリと、を備える。
【0030】
他回路58は、スイッチング素子56のエミッタに接続されている。スイッチング素子56がオンすることによって接続線41から他回路58にイグニッション電圧が加わる。他回路58は、駆動回路を含む。駆動回路は、電源回路42が備えるスイッチング素子を動作させることによって電源回路42を駆動する。
【0031】
イグニッション電圧検出回路60は、AD変換回路61と、変換部62と、を備える。電源端子52とイグニッション電圧検出回路60との間に設けられたスイッチング素子56は、AD変換回路61よりもイグニッション電圧の入力側に設けられている。
【0032】
AD変換回路61は、入力端子54に接続されている。AD変換回路61には、入力端子54からイグニッション電圧が入力される。AD変換回路61は、入力端子54から入力されたイグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する。AD変換回路61は、イグニッション電圧を2値で表されるビット情報に変換する。AD変換回路61は、ビット情報に応じたデジタル信号を出力する。例えば、デジタル信号は、2値のうち0をローレベルとし、1をハイレベルとするパルス波である。
【0033】
変換部62は、第1スイッチング素子63と、第2スイッチング素子64と、を備える。第1スイッチング素子63は、pチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。第2スイッチング素子64は、nチャネル型のMOSFETである。第1スイッチング素子63と第2スイッチング素子64とは互いに直列接続されている。第1スイッチング素子63のドレインは、電源に接続されている。第1スイッチング素子63のソースは、第2スイッチング素子64のドレインに接続されている。第2スイッチング素子64のソースは、グランドに接続されている。第1スイッチング素子63のゲートは、AD変換回路61に接続されている。第2スイッチング素子64のゲートは、AD変換回路61に接続されている。第1スイッチング素子63と第2スイッチング素子64の接続点は、出力端子55に接続されている。
【0034】
変換部62では、AD変換回路61から出力されるデジタル信号によって第1スイッチング素子63及び第2スイッチング素子64のスイッチング動作が行われる。これにより、変換部62は、デジタル信号の電圧を絶縁素子71が認識できる電圧になるように変換する。AD変換回路61がローレベルの信号を出力している場合、第1スイッチング素子63がオフになり、第2スイッチング素子64がオンになる。この場合、グランドと出力端子55とが導通することで変換部62はローレベルの信号を出力する。AD変換回路61がハイレベルの信号を出力している場合、第1スイッチング素子63がオンになり、第2スイッチング素子64がオフになる。この場合、電源と出力端子55とが導通することで変換部62はハイレベルの信号を出力する。
【0035】
絶縁素子71は、制御装置33に接続されている。絶縁素子71は、変換部62を介してAD変換回路61と制御装置33とを接続している。絶縁素子71は、低電圧回路40と高電圧回路30との絶縁を保ちつつ制御装置33にデジタル信号を伝達する。絶縁素子71には、AD変換回路61から出力されたデジタル信号が変換部62を介して入力される。絶縁素子71は、デジタル信号を制御装置33に出力する。絶縁素子71としては、例えば、アイソレータ、又はフォトカプラを用いることができる。
【0036】
制御装置33には、絶縁素子71からデジタル信号が入力される。制御装置33は、デジタル信号からイグニッション電圧の値[V]を認識することができる。制御装置33は、イグニッション電圧の値が過電圧判定閾値より大きい場合にはバッテリ11が過電圧であると判定する。過電圧判定閾値は、予め定められた値である。過電圧判定閾値は、制御装置33のメモリに記憶されている。制御装置33は、イグニッション電圧の値が低電圧判定閾値より小さい場合にはバッテリ11が低電圧であると判定する。低電圧判定閾値は、予め定められた値である。低電圧判定閾値は、制御装置33のメモリに記憶されている。制御装置33は、バッテリ11が過電圧か否かの判定と、バッテリ11が低電圧か否かの判定の両方を行っているが、いずれかの判定のみを行うようにしてもよい。
【0037】
制御装置33は、バッテリ11が過電圧であると判定すると、車両用の電動圧縮機20を停止させる。例えば、制御装置33は、インバータ31を停止させる。制御装置33は、バッテリ11が低電圧であると判定すると、車両用の電動圧縮機20を停止させる。
【0038】
[本実施形態の作用]
比較例の低電圧回路について説明する。比較例の低電圧回路において、実施形態の低電圧回路40と同様の部材については同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0039】
図2に示すように、比較例の低電圧回路80は、接続線41と、電源回路42と、コンデンサ48と、検出回路81と、ロードスイッチ91と、抵抗素子92,93と、ツェナーダイオード94,95と、分圧抵抗96と、を備える。
【0040】
検出回路81は、電源端子52と、信号入力端子53と、切替端子82と、第1入力端子83と、第2入力端子84と、スイッチング素子56と、切替部57と、他回路58と、イグニッション電圧検出回路85と、を備える。切替端子82は、スイッチング素子56のコレクタに接続されている。第1入力端子83及び第2入力端子84は、イグニッション電圧検出回路85に接続されている。
【0041】
ロードスイッチ91は、フィルタ回路43と電源回路42との間に設けられている。ロードスイッチ91としては、任意のスイッチング素子を用いることができる。本実施形態では、ロードスイッチ91としてpチャネル型のMOSFETが用いられている。ロードスイッチ91のゲートは、抵抗素子92を介して切替端子82に接続されている。抵抗素子93は、ロードスイッチ91のソースとゲートとの間に接続されている。ツェナーダイオード94は、ロードスイッチ91のソースとゲートとの間に接続されている。
【0042】
ツェナーダイオード95は、ロードスイッチ91とフィルタ回路43との間に設けられている。ツェナーダイオード95は、接続線41とグランドとを接続している。
分圧抵抗96は、ロードスイッチ91と電源回路42との間に設けられている。分圧抵抗96は、第1分圧抵抗素子97と、第2分圧抵抗素子98と、第3分圧抵抗素子99と、を備える。第1分圧抵抗素子97、第2分圧抵抗素子98、及び第3分圧抵抗素子99は、接続線41とグランドとの間で互いに直列接続されている。
【0043】
第1分圧抵抗素子97と第2分圧抵抗素子98との接続点は、第1入力端子83に接続されている。第2分圧抵抗素子98と第3分圧抵抗素子99との接続点は、第2入力端子84に接続されている。
【0044】
イグニッション電圧検出回路85は、コンパレータである。イグニッション電圧検出回路85は、第1入力端子83及び第2入力端子84から入力される信号を比較することによってイグニッション電圧が過電圧判定閾値より大きいか否かを判定する。イグニッション電圧検出回路85は、イグニッション電圧が過電圧判定閾値以下の場合、ローレベルの信号を出力する。イグニッション電圧検出回路85は、イグニッション電圧が過電圧判定閾値より大きい場合、ハイレベルの信号を出力する。イグニッション電圧検出回路85は、実施形態と同様に絶縁素子を介して制御装置33に接続されている。制御装置33は、イグニッション電圧検出回路85からハイレベルの信号が入力されると、バッテリ11が過電圧であると判定する。図示は省略するが、低電圧回路80は、低電圧判定用の分圧抵抗、低電圧判定用のイグニッション電圧検出回路、及び低電圧判定用の絶縁素子を備える。低電圧判定用のイグニッション電圧検出回路は、イグニッション電圧が低電圧判定閾値以上の場合、ローレベルの信号を出力する。低電圧判定用のイグニッション電圧検出回路は、イグニッション電圧が低電圧判定閾値より小さい場合、ハイレベルの信号を出力する。制御装置33は、低電圧判定用のイグニッション電圧検出回路からハイレベルの信号が入力されると、バッテリ11が低電圧であると判定する。
【0045】
ウェイクアップ信号Siが切替部57に入力されることでスイッチング素子56がオンすると、ロードスイッチ91がオンする。イグニッション電圧検出回路85、他回路58、及び分圧抵抗96にイグニッション電圧が加わる。これにより、イグニッション電圧検出回路85、及び他回路58が動作する。
【0046】
比較例の低電圧回路80では、過電圧判定閾値及び低電圧判定閾値を設定するために分圧抵抗96を設ける必要がある。ウェイクアップ信号Siが入力されていない場合、ロードスイッチ91がオンしないため、分圧抵抗96に電流が流れることによるバッテリ11の電力消費が抑制されている。しかしながら、比較例の低電圧回路80では、ウェイクアップ信号Siが入力されていない場合に分圧抵抗96に電流が流れないようにするため、ロードスイッチ91を設ける必要がある。
【0047】
これに対し、実施形態では、イグニッション電圧をAD変換回路61によってデジタル信号に変換している。そして、デジタル信号を制御装置33に出力することによって制御装置33に過電圧と低電圧の判定を行わせている。低電圧回路40が分圧抵抗96を備えていなくてもよいため、ロードスイッチ91を設ける必要がない。
【0048】
[本実施形態の効果]
(1)AD変換回路61は、イグニッション電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する。制御装置33は、デジタル信号からイグニッション電圧の値を認識できる。制御装置33は、イグニッション電圧の値から、過電圧の判定を行うことができる。比較例のように、イグニッション電圧検出回路85としてコンパレータを用いる場合、分圧抵抗96によって分圧した電圧をコンパレータに入力する必要がある。これに対し、AD変換回路61を用いることで分圧抵抗96を用いることなく、過電圧の判定を行うことができる。分圧抵抗96に電流が流れることを原因とするバッテリ11の消費電力の増加を抑制できる。
【0049】
また、スイッチング素子56がオンの場合に、イグニッション電圧検出回路60及び他回路58にイグニッション電圧が加わる。スイッチング素子56がオフの場合、イグニッション電圧検出回路60及び他回路58にイグニッション電圧が加わらないため、バッテリ11の消費電力の増加を抑制できる。
【0050】
(2)制御装置33は、イグニッション電圧の値から、低電圧の判定を行うことができる。AD変換回路61を用いることで分圧抵抗96を用いることなく、低電圧の判定を行うことができる。分圧抵抗96に電流が流れることを原因とするバッテリ11の消費電力の増加を抑制できる。
【0051】
(3)AD変換回路61は、アナログ信号をビット情報に変換する。AD変換回路61としてPFM変換を行うものや、PWM変換を行うものに比べてイグニッション電圧の測定精度を高くできる。
【0052】
(4)比較例の低電圧回路80を用いる場合、過電圧判定閾値及び低電圧判定閾値を変更する際には分圧抵抗素子97~99の抵抗値を変更する必要がある。これに対し、低電圧回路40を用いる場合、メモリに記憶された過電圧判定閾値及び低電圧閾値を書き換えればよいため、過電圧判定閾値及び低電圧判定閾値を容易に変更することができる。
【0053】
(5)比較例の低電圧回路80を用いる場合、制御装置33は、イグニッション電圧が過電圧判定閾値より大きいか否か、及びイグニッション電圧が低電圧判定閾値より小さいか否かの判定を行うことができる。一方で、イグニッション電圧の値を認識することはできない。これに対し、実施形態の低電圧回路40を用いることで、制御装置33は、イグニッション電圧の値を認識できる。
【0054】
(6)比較例の低電圧回路80を用いる場合、イグニッション電圧検出回路85の出力がローレベルに維持されても、制御装置33がイグニッション電圧検出回路85の故障を判定することができない。これに対し、実施形態の低電圧回路40を用いる場合、デジタル信号がハイレベル、又はローレベルに維持された場合、イグニッション電圧検出回路60が故障しているといえる。制御装置33は、デジタル信号からイグニッション電圧検出回路60の故障を判定することができる。
【0055】
(7)比較例の低電圧回路80を用いる場合、車両用の電動圧縮機20は、過電圧判定用の絶縁素子と、低電圧判定用の絶縁素子とを個別に備える必要がある。これに対し、実施形態の低電圧回路40を用いる場合、デジタル信号を伝達する絶縁素子71を備えていればよく、絶縁素子71の個数を減らすことができる。絶縁素子71の機能確認を行う回数を減らすことができるため、管理負担を軽減できる。また、絶縁素子71としてアイソレータを用いている場合、アイソレータがノイズ源になるおそれがある。絶縁素子71の個数を減らすことで、ノイズを低減することができる。
【0056】
(8)比較例の低電圧回路80を用いる場合、ロードスイッチ91による電圧降下が生じる。これに対し、実施形態の低電圧回路40を用いる場合、ロードスイッチ91による電圧降下が生じないため、損失を低減することができる。
【0057】
(9)比較例の低電圧回路80を用いる場合、ロードスイッチ91をオンさせる際に突入電流が生じる。これに対し、低電圧回路40を用いる場合、突入電流を低減することができるため、車両10のヒューズを小さくできる。
【0058】
(10)比較例の低電圧回路80を用いる場合、ロードスイッチ91を保護するためのツェナーダイオード94を設ける必要がある。これに対し、実施形態の低電圧回路40を用いる場合、ツェナーダイオード94を設ける必要がない。ツェナーダイオード94を原因とするノイズを低減することができる。
【0059】
(11)比較例の低電圧回路80を用いる場合、ロードスイッチ91をオンする必要があるため、ウェイクアップ信号Siの入力から接続線41にイグニッション電圧が加わるまでの時間が長くなる。これに対し、実施形態の低電圧回路40を用いる場合、ロードスイッチ91をオンする処理がなくなるため、ウェイクアップ信号Siの入力から接続線41にイグニッション電圧が加わるまでの時間を短くできる。
【0060】
(12)フィルタ回路43が共振すると、イグニッション電圧が高くなる。実施形態の低電圧回路40では、ロードスイッチ91を設けなくてよく、コンデンサ48の容量を大きくすることができる。このため、フィルタ回路43が共振した際にイグニッション電圧が高くなることを抑制できる。
【0061】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
○AD変換回路61から出力されるデジタル信号の電圧が、絶縁素子71の認識できる電圧であれば、イグニッション電圧検出回路60は、変換部62を備えていなくてもよい。
【0063】
○検出回路51は、イグニッション電圧の値以外の情報を制御装置33に出力するようにしてもよい。例えば、温度測定対象の温度を制御装置33に出力するようにしてもよい。
【0064】
○制御装置33と検出回路51とが同一の電圧レベルの回路に設けられていれば、車両用の電動圧縮機20は、絶縁素子71を備えていなくてもよい。
○AD変換回路61は、PFM(Pulse Frequency Modulation)変換によってアナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。PFM変換は、アナログ信号を、電圧に比例した周波数のデジタル信号に変換する。
【0065】
○AD変換回路61は、PWM(Pulse Width Modulation)変換によってアナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。PWM変換は、アナログ信号を、電圧に比例したパルス幅のデジタル信号に変換する。
【符号の説明】
【0066】
Si…ウェイクアップ信号、11…バッテリ、12…イグニッションスイッチ、20…車両用の電動圧縮機、21…圧縮部、30…高電圧回路、31…インバータ、32…電動モータ、33…制御装置、40…低電圧回路、51…検出回路、56…スイッチング素子、57…切替部、61…AD変換回路。
図1
図2