(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024314
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】障子用フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20240215BHJP
E06B 3/70 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08J9/00 Z CER
C08J9/00 CEZ
E06B3/70 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127074
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(72)【発明者】
【氏名】北口 雅章
【テーマコード(参考)】
2E016
4F074
【Fターム(参考)】
2E016HA03
2E016HA05
2E016JA08
2E016KA05
2E016LA01
2E016LB05
4F074AA65
4F074CA10
4F074CC08X
4F074DA24
4F074DA57
(57)【要約】
【課題】
本発明は、通気性と光拡散性、目隠し性、防音性(音のこもり)に優れるとともに耐擦傷性も高い障子用フィルム、その障子用フィルムを張った障子等を提供することを目的とする。
【解決手段】
この目的を達成するために、本発明の障子用フィルムは、基材10の少なくとも一方の面に粗面20を有する障子用フィルムであって、前記障子用フィルムは貫通孔30を有し、前記障子用フィルムの面積における前記貫通孔の開口率が0.05%以上7.00%以下であることを特徴とする。
また、本発明の障子用フィルムは、好適には前記貫通孔の表面にバリ40があることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に粗面を有する障子用フィルムであって、前記障子用フィルムは貫通孔を有し、前記粗面を有する面の面積における前記貫通孔の開口率が0.05%以上7.00%以下であることを特徴とする障子用フィルム。
【請求項2】
前記貫通孔の面積が0.07mm2以上3.20mm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の障子用フィルム。
【請求項3】
前記粗面がブラスト加工により形成されることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の障子用フィルム。
【請求項4】
前記貫通孔の表面にバリがあることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の障子用フィルム。
【請求項5】
前記バリの高さが10μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項4記載の障子用フィルム。
【請求項6】
前記貫通孔が熱針にて形成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の障子用フィルム。
【請求項7】
全光線透過率が70%以上99%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の障子用フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の障子用フィルムを張ったことを特徴とする障子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の少なくとも一方の面が粗面化されている障子用フィルム、またその障子用フィルムを張った障子等に関し、詳しくは通気性、光拡散性、目隠し性、防音性(音のこもり)、耐擦傷性をもつ障子用フィルム、その障子用フィルムを張った障子等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
障子に張る障子紙について、近年、従来の障子紙の欠点である破れやすく施工しにくいという点を改善するため、合成樹脂製のフィルムを使用し、様々な形態に加工した障子用フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、障子用フィルムには通気性がなく、湿度調整ができないという問題があった。
このような場合、特許文献1に示されるように、障子用フィルムに貫通孔を開け通気性を確保するということが行われる場合があるが、貫通孔を開けた結果、障子紙として必要な目隠し性を損ったり、従来の障子用フィルムでは通気性は確保できるが、貫通孔の開口率が小さすぎるため、防音性(音のこもり)までは改善されていなかった。
【0005】
また、障子用フィルムは破れにくくはあるが、素材自体は柔らかいため、硬いものが接触した場合に容易に傷が入るという問題があった。
このような場合、傷付きを防止するために、耐擦傷性の高い層、例えばハードコート層等を積層することも考えられるが、新しい工程が入ることにより生産性が悪くなるとともに、硬い膜を塗工するため施工時に塗膜の割れが発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、通気性と光拡散性、目隠し性、防音性(音のこもり)に優れるとともに耐擦傷性も高い障子用フィルム、その障子用フィルムを張った障子等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の障子用フィルムは、基材の少なくとも一方の面に粗面を有する障子用フィルムであって、前記障子用フィルムは貫通孔を有し、前記障子用フィルムの面積における前記貫通孔の開口率が0.05%以上7.00%以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の障子用フィルムは、好適には前記貫通孔の面積が0.07mm2以上3.20mm2以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の障子用フィルムは、好適には前記粗面がブラスト加工により形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の障子用フィルムは、好適には前記貫通孔の表面にバリがあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の障子用フィルムは、好適には前記バリの高さが10μm以上300μm以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の障子用フィルムは、好適には貫通孔が熱針にて形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の障子用フィルムは、好適には全光線透過率が70%以上99%以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の障子用フィルムを張った障子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば障子等に好適に使用可能な、通気性、光拡散性、目隠し性、防音性(音のこもり)、耐擦傷性に優れた障子用フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の障子用フィルムにおいて、基材の一方に粗面が形成され、その反対の面に機能層が施された形態
【
図3】本発明の障子用フィルムの垂直方向からのレーザー顕微鏡画像
【
図4】本発明の障子用フィルムの貫通孔のバリのレーザー顕微鏡の3D解析画像
【
図6】本発明の障子用フィルムの貫通孔のバリの高さ示唆画像
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明である障子用フィルムの実施形態について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0018】
本発明において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、例えば、「基板」や「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む場合もあり、「シート」や「フィルム」を基板や基材として使用する場合も考えられる。
【0019】
本発明において「基材の少なくとも一方の面に粗面を有する」という記載は、基材を物理的化学的に処理し粗面を形成する場合、基材に塗工等により粗面となる膜を積層する場合、基材に塗工等により膜を積層した後にその膜を物理的化学的に処理し粗面を形成する場合の全ての場合を含むものである。
【0020】
本発明の障子用フィルムは、基本的な構成として
図1に示すように基材10、粗面20及び貫通孔30を有するものである。粗面20は
図1のように片面に有してもよいし、両面に有してもよい。機能性部材は、
図1に示すものだけでなく、粗面20が形成されている面の反対側の面に機能層50(
図2)を備えていてもよい。この機能層は帯電防止効果を持つものや、紫外線カット、熱線カットの効果を持つもの等が考えられるが、これらに限定するものではない。機能層50は
図2のように粗面とは反対の面に有する場合の他に、粗面20に機能層50を積層する形、あるいは機能層50の上に粗面20を積層したり、または機能層50に表面処理にて粗面20を形成する形もとり得る。
図1、
図2もしくはその他の構成であっても貫通孔30にはバリ40が残されている構成をとることがより好ましい。
【0021】
まず基材10について説明する。基材10としては、プラスチックフィルムが好適に使用される。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリノルボルネン、ポリイミド化合物等が使用でき、例えば透明性、耐熱性、機械的強度、寸法安定性、色味等の用途に応じて基材を選択できる。中でも延伸加工、特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れているために好適に使用される。
【0022】
基材10の厚みは、特に限定されず適用される材料に対して適宜選択できるが、取扱い性を考慮すると一般に1μm以上250μm以下であり、好ましくは10μm以上200μm以下、さらに好ましくは23μm以上125μm以下である。
【0023】
基材10は、場合によりプラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理等の表面処理が施される場合がある。これらの表面処理が施されることで、基材10へ機能層を形成しようとする場合、機能層への濡れ性が良くなり密着性を向上させる。
【0024】
次に粗面20について説明する。本発明での粗面とは、表面が粗面化された面をさす。粗面20は、基材10の表面をバインダー樹脂にマット剤を添加した塗料をコーティングするマット加工、ブラスト加工、エンボス加工等を行うことで形成される。マット加工のように表面に新たな層として粗面を塗工等により形成しても良いし、ブラスト加工やエンボス加工のように基材等の表面に表面処理により形成しても良い。ブラスト加工とは研磨剤をフィルム表面に打ち付けて、フィルム表面を物理的に削り取る技術で、打ちつける物質は材質も形も様々である。主な研磨剤としては砂(サンド)、ガラス、金属、セラミック、樹脂などがあげられる。打ち付ける研磨剤により加工面の風合いが変わってくるが、なかでもサンドブラスト加工は簡易で環境にも優しく、複雑な表面形状を形成することができるので障子紙の風合を再現しやすく、障子用フィルムに好適である。
【0025】
ブラスト加工で粗面化された面の形状は、ショット材の種類(硬さ)、大きさ、噴射量、基材フィルムにたたきつける速度、時間、装置と基材フィルムまでの距離などの条件を変更することによって変えることができる。一例として、サンドブラスト加工でポリエチレンテレフタレートの表面を算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)が0.5μm程度に処理する場合の条件としては、ショット材の種類:珪砂、ショット材の大きさ:平均粒径200μm、噴射量:2.0~2.5l/sec、周速:40~50m/sec、処理時間:30~60sec、装置とフィルムの距離:430mmである。
【0026】
粗面20の算術平均粗さRaは、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは0.4~0.8μmになるように処理することが望ましい。このような範囲にすることで好適な光拡散性や目隠し性といった光学物性や障子の風合の再現が得られやすくなる。
【0027】
次に貫通孔30について説明する。本発明での貫通孔とは基材10を厚み方向に突き抜ける穴のことである。貫通孔30は大きいと外観を損ない、小さいと十分な通気性を持てなかったり、内部の音が反響して不快な振動を起こす要因となる。貫通孔の開口率は0.05%以上7.00%以下が好ましく、より好ましくは0.10%以上6.00%以下、さらに好ましくは0.50%以上4.00%以下である。上記範囲の場合、外観を損なわず、十分な通気性を得られるとともに、音の反響等もない障子用フィルムを作成することができる。
本発明において、開口率とは障子用フィルムの一方の面において、その面の面積に占める全ての貫通孔の穴の面積を合わせた総面積の割合である。この時、前記障子用フィルムの一方の面および貫通孔は平面と仮定し、深さ方向または高さ方向の面積は考慮しないものとする。従って粗面等の凹凸による変化も考慮しない。また、後述するバリにより貫通孔が一部ふさがれているような場合は、バリを除外した貫通孔の面積で計算するものとする。
開口率は、輸送時の形態(ロールやシート等)又は施工後の形態のどちらで満たしていてもよい。
障子用フィルムの貫通孔の配置に偏りがあるような場合には、障子用フィルムまたは障子全体としての開口率で判断をする。
【0028】
貫通孔30の面積は0.07mm
2以上3.20mm
2以下が好ましく、より好ましくは0.12mm
2以上2.00mm
2以下、さらに好ましくは0.20mm以上1.40mm
2以下である。
面積をこの範囲にすることで、外観、通気性、音のこもりの全てにおいて優れた障子用フィルムを作成しやすくなる。
本発明において貫通孔の面積および後述するバリの高さは、例えば、共焦点レーザー顕微鏡(VK-9710、キーエンス社製)を使用して撮影した貫通孔の表面形状および断面形状から求めることができる。
本発明では、貫通孔の面積はレーザー光量モードで撮影したレーザー顕微鏡画像から、貫通孔にあたる部分の領域が過不足なく入るように明暗のしきい値を操作、設定して領域を指定し、その領域の面積を算出して貫通孔の面積とした(
図4、
図5参照)。なお、前述もしたが、バリによって貫通孔が覆われているような場合はバリを除去して貫通孔が露出した状態の面積を貫通孔の面積とする。バリの除去は、例えばマイクロマニピュレーター等を使用し、貫通孔が変形しないように画像撮影に影響が出ない程度まで切除を行う。
【0029】
貫通孔30の作成は、パンチング加工、レーザー加工等、従来公知な方法を取りえるが中でも後述する熱針を使用して貫通孔を作成した場合はバリを効果的に作成することができるため好適である。
【0030】
貫通孔のパターンには、障子用フィルムの性能を阻害しない限り特に決まりはなく格子状や千鳥状、デザイン性を重視して特定部分に多く貫通孔を施したりなど様々な形態をとりうるが、防音性(音のこもり)の観点から全面に均一に貫通孔を施すことが好ましい。例えば、20cm2の正方形サンプルを障子用フィルムのどの位置から切り出しても本発明の開口率を満たすようにすれば、十分な防音性(音のこもり)を得られやすい。
また、貫通孔の穴形状も丸以外に四角や三角、もしくはさらに複雑な形状をとりうる。
貫通孔のピッチは求める開口率によって選択することができる。例えば、面積0.33mm2の円形の貫通孔を格子状に縦ピッチ7mm、横ピッチ7mmで障子用フィルム全面に施した場合、開口率は0.5%前後となる。
【0031】
次にバリ40について説明する。貫通孔30には、バリ40が存在していることが好ましい。バリ40とは貫通孔30を作成するときに穿った部材のあまり部分の全部または一部が隆起して部材に残ったものである。
通常このようなバリは、外観不良となり得るため除去してしまうことが多いが本発明ではある一定の高さのバリをあえて残し、このようなバリが面内に点在していることで、障子用フィルムの表面に硬いものがあたったときでも、バリが緩衝材の役割を果たし、基材全面にあたらないため、傷が入ることを防止できることを発見した。
そのため、特別な層、例えばハードコート層等で障子用フィルム表面を保護しなかったとしても、輸送時、加工時、施工時等の傷の発生を防止するとともに、施工後も傷の発生を防止することができる。
【0032】
前記バリの高さは10μm以上300μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは30μm以上100μm以下である。
バリの高さが10μm未満であると、十分に緩衝材としての役割が保てなくなるため傷が入りやすくなり、300μmを超えると、外観不良の原因となるとともに、バリ自体の強度を保つのが難しくなり、強い力が加わったときにバリが部材から剥離してしまう懸念がある。
またバリの高さは粗面の算術平均粗さRaよりも大きいことが好ましく、好ましくは算術平均粗さRaの5倍以上1000倍以下、より好ましくは20倍以上700倍以下、さらに好ましくは35倍以上500倍以下である。
バリの高さを算術平均粗さRaの5倍未満にすると、傷付き防止性が弱くなる場合があり、逆に算術平均粗さRaの1000倍を超えるような場合は、外観を損なう懸念があり好ましくない。
バリの高さは障子用フィルムのバリの無い平坦部の高さをゼロとして、そこからバリの最も高い部分までの高さを算出する(
図6参照)。バリは粗面に形成されることもあるため、バリの高さ計算では粗面であっても2.0μm以下の凹凸は平坦部として仮定しバリの高さを算出する。
バリは貫通孔の外周に沿って形成されるが、同じ貫通孔に属するバリであっても場所によってある程度の高低差が発生する(
図4参照)。
本発明では外周に沿って形成されるバリのもっとも高くなる部分を測定し、算出された値をそれぞれの貫通孔のバリの高さとし、障子用フィルムに開けられた任意の10点の貫通孔のバリの高さの平均(Ave.)を障子用フィルムの貫通孔のバリの高さと規定した。
なお本発明において「バリの高さ」とは、特別に限定する記載がない限り、上記のようにして算出したバリの高さのことを指す。
【0033】
後述する熱針を使用した場合など、貫通孔の両面にバリを作成する場合には
片面にバリを作成するよりも傷つき防止に大きな効果が得られやすい。
この場合のバリの高さの好ましい範囲は基本的には片面の場合と同じである。
【0034】
バリは貫通孔の様々な加工によって作成することができるが、中でもパンチング加工が簡便性および生産性の上で優れており、さらに熱針により貫通孔を作成すると、熱によりプラスチック部材が軟化するためバリが部材より剥離しにくいため好適である。
さらに、通常、熱をかけない針による加工の場合には針の出の部分にバリが発生するが、熱針の場合は針の出の部分だけではなく針を抜くときに針の入り部分にも軟化したプラスチック部材が引き抜く針に引っ張られてバリが発生するので、片面にしかバリがない場合よりも性能が向上するとともに、生産性の面でも有用である。
なお、熱針の温度は加工する素材の材質によって適宜設定するが、例えば素材がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は280~310℃程度で加工することが好ましい。
【0035】
次に機能層50について説明する。基材10には粗面の他に機能層を設けてもよい。機能層は基材の粗面20が形成された面上に設けても、粗面20とは逆の面に設けてもどちらの場合でもよく、また性能が得られるのならば粗面よりも基材側に配置してもよい。ただし、粗面20が形成された面上に設ける場合は粗面20の性能を阻害しないように注意する必要がある。
機能層としては様々な効果を付与できるが、例えば帯電防止効果を付与すると、加工時や輸送時、施工時の静電気による張り付きを防止し生産性を上げるとともに、施工後は埃の付着を防止することができる。紫外線カット効果を付与すれば、室内の畳や壁の退色や障子用フィルム自体の劣化を防ぎ、熱線カット効果を付与すれば、冷暖房の効率を良くすることができる。
その他、障子用フィルムの性能を阻害しない範囲で、機能層として反射防止や、加飾(絵や模様等)等の効果を設けてもよい。
【0036】
機能層は例えば、層を構成する材料を塗料化した塗布液を、スプレー方式、ロールコーター法、カーテンフロー法、ディップコーター法などの公知の塗布方法により塗布、乾燥、必要であれば熱硬化や紫外線硬化することにより形成することができる。
【0037】
本発明の障子用フィルムのHAZEは好み等により選択することができるが、75%以上99%以下が好ましい。より好ましくは80%以上97%以下、さらに好ましくは82%以上95%以下である。
上記範囲にすることで、目隠し性に優れた障子用フィルムとすることができる。
【0038】
本発明の障子用フィルムの全光線透過率は70%以上99%以下が好ましい。より好ましくは80%以上98%以下、さらに好ましくは90%以上97%以下である。
通常の紙の障子の全光線透過率は50%以下であり、本発明の障子用フィルムを使用した場合、光を効率的に取り込むことができるので部屋の明るさを調節しやすくなる。
【実施例0039】
以下、本発明の障子用フィルムの実施例及び比較例を説明する。
【0040】
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60:東レ社)の両面にサンドブラスト加工(ショット材の種類:珪砂、ショット材の大きさ:平均粒径200μm、噴射量:2.2/sec、周速:45m/sec、処理時間:45sec、装置とフィルムの距離:430mm)により、粗面を形成し、その後、熱針(円形、300℃)を使用した針パンチングマシンにより貫通孔を形成し実施例1、2を作成した。
各実施例の貫通孔の条件については表1に記載した。
なお、貫通孔の面積、開口率は、針パンチングマシンの針径、ピッチやパターンにより制御することができる。
この時、針パンチングマシンの針が入った面(入口側)と突出した面(出口側)において、バリの高さが変わるため以後、それぞれを「入口側」、「出口側」、表面を「入口側表面」、「出口側表面」と表記する。
【0041】
<条件>
<貫通孔の面積>
各障子用フィルムの貫通孔の中から任意の10箇所の貫通孔を選出し、共焦点レーザー顕微鏡(VK-9710、キーエンス社製)を使用し、対物レンズ:10倍の条件で撮影した画像から貫通孔の面積を算出し、最終的に算出値10点の平均(Ave.)を各障子用フィルムの貫通孔の面積とした。
【0042】
<開口率>
前述の貫通孔の面積とピッチ(孔間隔)より求められる全孔数より貫通孔の総面積を算出し、それを障子用フィルムの面積で割り、開口率とした。
貫通孔の総面積÷障子用フィルムの面積×100=開口率(%)
なお、測定対象の障子用フィルムがもし、穴の大きさが違うものや穴のピッチに偏りがあるような場合はそれも考慮して開口率の計算は行う必要がある。
【0043】
【0044】
また、針パンチング加工を行わなかった(貫通孔を形成しなかった)以外は、前記実施例1同様に粗面加工を行った厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを比較例として作成した。
【0045】
次に実施例1、2、比較例の各障子用フィルムについて、下記の評価を行い、結果を表2に記載した。
【0046】
<評価>
<バリの高さ>
各障子用フィルムの貫通孔の中から任意の10箇所の貫通孔を選出し、下記方法により各貫通孔のバリの高さを算出し、最終的に各貫通孔のバリの高さ10点の平均(Ave.)を各障子用フィルムの貫通孔のバリの高さとした。
各貫通孔のバリの高さの測定方法は、共焦点レーザー顕微鏡(VK-9710、キーエンス社製)を使用し、対物レンズ:10倍、高さ測定ピッチ:0.5μmの条件で撮影して得られたバリの凹凸形状の内、一方向(Y方向)に沿って切断した場合に断面の凹凸プロファイルからの凸部が最大になる部分を切り出し、その高さHを求める。これを任意の10箇所の部分について測定し、最終的に算出値10点の平均(Ave.)を各貫通孔のバリの高さとした。
【0047】
<全光線透過率>
全光線透過率(Tt)をJIS K7361-1:1997に準拠した測定方法で、ヘイズメーター「NDH4000」(製品名、日本電色工業株式会社製)により、全光線透過率(Tt)を測定した。なお、もし粗面と平滑面があるサンプルを測る場合は、粗面より入光を行う。
【0048】
<HAZE>
HAZEをJIS K7136:2000に準拠した測定方法で、ヘイズメーター「NDH4000」(製品名、日本電色工業株式会社製)により、HAZEを測定した。なお、もし粗面と平滑面があるサンプルを測る場合は、粗面より入光を行う。
【0049】
<算術平均粗さRa>
粗面の算術平均粗さRaをJIS B0601:2001に準拠し測定方法で測定した。測定時、貫通孔が開いているものは、貫通孔がない表面部分を選択して算術平均粗さRaを測定した。
【0050】
<耐擦傷性>
耐擦傷性の試験として、それぞれの障子用フィルムを2枚用意し、1枚を平滑な台の上に粗面を上方にして両面テープで固定し、もう1枚を先ほど固定した障子用フィルムの上に粗面を下方に向けて重ね合わせ、上から100g/cm2の力を加えた状態で10回擦り合わせて傷が入るかどうかを確認した。
この時、擦り合わせる際に10cm以上の距離を移動させる必要がある。
粗面と平滑面を有する場合は粗面同士を重ね合わせて行い、本実施例では出口側表面と出口側表面を重ね合わせて試験を行った。
試験後、平滑な台に固定した方の障子用フィルムを取り外し、目視にて傷を確認し、傷が入っていないものを〇、傷が入っているものを×と評価した。
【0051】
<防音性(音のこもり)>
出入口が1つしかない部屋の出入口部にそれぞれの障子用フィルムの施工された障子を設置し、その障子より1m離れた位置にスピーカーを障子の方向に向けて設置した。次に障子を閉めた状態でスピーカーより70dbの音を障子に向けて流し、スピーカーの後ろに配置した観察者がこもった音の反響がないかを聴音確認した。この時、窓等の開口部は全て塞ぎ密室状態にする。こもった音の反響がない場合は〇、こもった音の反響がある場合は×とした。
【0052】
【0053】
評価結果から明らかなように実施例の障子用フィルムは通気性、光拡散性、目隠し性、耐擦傷性、防音性(音のこもり)において、比較例に比べて優れるものであった。