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特開2024-24318ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物およびそれを用いた有機薄膜、有機半導体素子
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  • 特開-ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物およびそれを用いた有機薄膜、有機半導体素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024318
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物およびそれを用いた有機薄膜、有機半導体素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20240215BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240215BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240215BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240215BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240215BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240215BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240215BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20240215BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240215BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240215BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
C07D519/00 311
C07D519/00 CSP
H05B33/14 A
H05B33/22 B
H01L27/32
C09K11/06 690
H01L31/04 154C
H01L31/04 154B
H01L31/04 154D
H01L29/78 618B
H01L29/28 100A
H01L29/28 250G
G09F9/30 365
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127079
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】大嶌 和幸
(72)【発明者】
【氏名】塩▲崎▼ 桜子
【テーマコード(参考)】
3K107
4C072
4H039
5C094
5F110
5F151
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC21
3K107CC24
3K107DD74
3K107DD78
4C072MM02
4C072UU10
4H039CA42
4H039CD10
4H039CD20
5C094AA31
5C094BA27
5C094HA08
5F110EE07
5F110GG05
5F110HK07
5F110NN71
5F151AA11
(57)【要約】
【課題】
従来の電子注入層を含む有機電界発光素子では、電子注入性、電子輸送性をより一層向上させることが要求されていた。
【解決手段】
下記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物。
(一般式(1)において、Xは互いに独立して、NまたはCRを表し、Xのうち少なくとも1つはNであり、Xのうち少なくとも2つはCRであり;Rは、互いに独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を表し、R同士が結合した縮環構造を形成してもよく、Rのうち少なくとも1つは、ヘキサヒドロピリミドピリミジン構造を有する。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物。
(一般式(1)において、Xは互いに独立して、NまたはCRを表し、Xのうち少なくとも1つはNであり、Xのうち少なくとも2つはCRであり;
は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を表し、R同士が結合した縮環構造を形成してもよく、Rのうち少なくとも1つは、ヘキサヒドロピリミドピリミジン構造を有し、Rのうち少なくとも1つは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヘキサヒドロピリミドピリミジン以外のジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。)
【請求項2】
請求項1記載のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む有機薄膜。
【請求項3】
請求項1記載のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む有機半導体素子材料。
【請求項4】
前記有機半導体素子が、有機電界発光素子、有機トランジスタ、光電変換素子、有機太陽電池のいずれかである請求項3に記載の有機半導体素子材料。
【請求項5】
請求項1記載のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む有機半導体素子。
【請求項6】
前記有機半導体素子が、有機電界発光素子、有機トランジスタ、光電変換素子、有機太陽電池のいずれかである請求項5に記載の有機半導体素子。
【請求項7】
前記有機電界発光素子を有する請求項6記載の画像表示装置または照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物およびそれを用いた有機薄膜に関する。より詳しくは、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を用いた有機電界発光素子、有機薄膜太陽電池等の有機半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、薄く、柔軟でフレキシブルな表示装置とすることが可能である。また、有機電界発光素子を用いた表示装置は、現在主流となっている液晶表示装置およびプラズマ表示装置と比べて、高輝度、高精細な表示が可能である。また、有機電界発光素子を用いた表示装置は、液晶表示装置に比べて視野角が広い。このため、有機電界発光素子を用いた表示装置は、今後、テレビや携帯電話のディスプレイ等としての利用の拡大が期待されている。
また、有機電界発光素子は、照明装置としての利用も期待されている。
【0003】
有機電界発光素子は、陰極と発光層と陽極とが積層されたものである。有機電界発光素子では、陽極の仕事関数と発光層の最高占有軌道(HOMO)エネルギー差は、陰極の仕事関数と発光層の最低非占有軌道(LUMO)エネルギー差と比較して小さい。したがって、発光層に、陽極から正孔を注入することと比較して、陰極から電子を注入することは困難である。このため、従来の有機電界発光素子では、陰極と発光層との間に、電子注入層を配置して、陰極から発光層への電子の注入を促進している。
【0004】
特許文献1には電極と有機層の界面にヘキサヒドロピリミドピリミジン誘導体からなる有機薄膜を形成した有機電界発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/045178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電子注入層を含む有機電界発光素子では、電子注入性、電子輸送性をより一層向上させることが要求されていた。さらに、上記ヘキサヒドロピリミジン誘導体は耐熱性、および耐水性をより一層向上させることが要求されていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機電界発光素子の電子注入層に用いた場合に、優れた電子注入性、電子輸送性、耐熱性、および耐水性が得られるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物およびその有機薄膜を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を用いた有機薄膜を含む有機半導体素子、有機電界発光素子、この有機電界発光素子を備えた表示装置および照明装置、有機薄膜太陽電池および有機薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第1の形態は、下記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物である。
【0010】
【化1】
【0011】
(一般式(1)において、Xは互いに独立して、NまたはCRを表し、Xのうち少なくとも1つはNであり、Xのうち少なくとも2つはCRであり;Rは、互いに独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を表し、R同士が結合した縮環構造を形成してもよく、Rのうち少なくとも1つは、ヘキサヒドロピリミドピリミジン構造を有し、Rのうち少なくとも1つは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヘキサヒドロピリミドピリミジン以外のジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。)
本発明の第2の形態は、上記一般式(1)からなるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物から形成される有機薄膜およびそれを含む有機半導体素子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物は、耐熱性に優れることから、有機電界発光素子や有機薄膜太陽電池として使用した際の耐久性に優れ、有機半導体素子材料として好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の有機EL素子の一例を説明するための概略断面図である。
図2】本発明の有機EL素子の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0015】
[本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物]
本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物は、下記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物である。
【0016】
【化2】
【0017】
(一般式(1)において、Xは互いに独立して、NまたはCRを表し、Xのうち少なくとも1つはNであり、Xのうち少なくとも2つはCRであり;Rは、互いに独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を表し、R同士が結合した縮環構造を形成してもよく、Rのうち少なくとも1つは、ヘキサヒドロピリミドピリミジン構造を有し、Rのうち少なくとも1つは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヘキサヒドロピリミドピリミジン以外のジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。)
上記Rの芳香族炭化水素基としては、ベンゼン等の1つの芳香環のみからなる化合物;ビフェニル、ジフェニルベンゼン等の複数の芳香環が1つの炭素原子同士で直接結合した化合物;ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の縮合環式芳香族炭化水素化合物のいずれかの芳香環から水素原子を1個除いてできる基が挙げられる。
【0018】
芳香族複素環基としては、チオフェン、フラン、ピロール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等の1つの芳香族複素環のみからなる化合物;これらの1つの芳香族複素環のみからなる化合物が1つの炭素原子同士で複数直接結合した化合物(ビピリジン、ターピリジン等);キノリン、キノキサリン、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、インドール、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アクリジン、フェナントロリン等の縮合環式複素芳香族炭化水素化合物のいずれかの芳香族複素環から水素原子を1個除いてできる基が挙げられる。
【0019】
上記芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、1価の置換基を1つ又は2つ以上有していてもよい。1価の置換基としては、フッ素原子;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1~10のアルキル基を有するアルキルアミノ基;ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等の環状アミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;スチリル基等の炭素数2~30のアルケニル基;フッ素原子等のハロゲン原子や炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等で置換されていてもよい炭素数5~20のアリール基(アリール基の具体例は、上記芳香族炭化水素基と同様);フッ素原子等のハロゲン原子や炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等で置換されていてもよい炭素数4~20の窒素原子、硫黄原子、酸素原子のいずれか1つ以上を含む複素環基(複素環基は、1つの環のみからなるものであってもよく、1つの芳香族複素環のみからなる化合物が1つの炭素原子同士で複数直接結合した化合物であってもよく、縮合複素環基であってもよい。複素環基の具体例には、上記芳香族複素環基の具体例が含まれる。);エステル基、チオエーテル基等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やヘテロ元素、アルキル基、芳香環等で置換されていてもよい。
【0020】
上記一般式上記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、下記一般式(1-1)~(1-36)の化合物が挙げられる。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
【化13】
【0032】
【化14】
【0033】
[本発明の有機薄膜]
本発明の有機薄膜は、上記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む。有機薄膜中にヘキサヒドロピリミドピリミジン構造を有していることから、電子を輸送する材料に電子与えるn型ドーパントとして機能する。このため本発明の有機薄膜は良好な電子注入・輸送性を有する。
【0034】
本発明の有機薄膜は、構成する第2材料として、さらに電子を輸送する材料を含んでいてもよく、第2材料としては有機材料であることが好ましい。より好ましくは、最低非占有軌道(LUMO)準位が2.0eV~4.0eVまでの有機材料、その中でも、LUMO準位が2.5eV~3.5eVのn型有機半導体材料である。例えば、有機EL素子の電子輸送層の材料として、下記に示す従来公知のいずれの材料を用いてもよいが、これらの中でも、上記LUMO準位の要件を満たす材料が好ましい。
【0035】
第2材料としては、具体的には、フェニル-ジピレニルホスフィンオキサイド(POPy2)のようなホスフィンオキサイド誘導体、トリス-1,3,5-(3’-(ピリジン-3’’-イル)フェニル)ベンゼン(TmPhPyB)や1,3,5-トリス(6-(3-(ピリジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)ベンゼン、8,9-ジフェニル-7,10-(3-(ピリジン-3-イル))フルオランテンのようなピリジン誘導体、(2-(3-(9-カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2-フェニル-4,6-ビス(3,5-ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)や2-メチル-4,6-ビス(3,5-ジピリジルフェニル)ピリミジン、9-(4-(4,6-ジフェニルピリミジン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾールのようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)や2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)のようなフェナントロリン誘導体、2,4-ビス(4-ビフェニル)-6-(4’-(2-ピリジニル)-4-ビフェニル)-[1,3,5]トリアジン(MPT)、トリス-1,3,5-(3’-(ピリジン-3’’-イル)フェニル)トリアジン(TmPhPyTz)、トリス-1,3,5-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)トリアジン、2-(3-(4,6-ジ(ピリジン-3-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、9-(4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)-9H-3,9’-ビカルバゾール、9-(4-(4,6-ジフェニル―1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール、11-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-12-フェニル-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、12-(2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)-12H-ベンゾフロ[2,3,a]-カルバゾール、9-((4-(4,6-ジピリジン-3-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾールのようなトリアジン誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’-(1,3,5-ベントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物等の芳香環カルボン酸無水物、N,N’-ジメチル-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボンサンジイミドのような芳香環イミド化合物、イソインジゴ誘導体や2,5-ジヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-1,4-ジオン誘導体(ジケトピロロピロール)、トルキセノンのようなカルボニル基を有する化合物、ナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾールのような1,2,5-チアジアゾール誘導体、後述する式(30)で示す化合物のようなカルボニル基を含む複素環を有する化合物、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5-ビス(6’-(2’,2’’-ビピリジル))-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体、トリス(2,4,6-トリメチル-3-(ピリジン-3-イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)や特開2013-239691号公報、特開2016-199507号公報、特開2016-199508号公報、国際公開WO2014/133141号パンフレットに記載に記載のホウ素含有化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、後述する発光層の材料も第2材料として用いることができる。これらの第2材料の中でも、POPyのようなホスフィンオキサイド誘導体、Alqのような金属錯体、TmPhPyBのようなピリジン誘導体、TmPhPyTzのようなトリアジン誘導体を用いることがより好ましい。
【0036】
また、第2材料は、分子内にアルカリ金属へ配位する構造を有しない化合物を含んでもよい。この第2材料としては、構造中に炭素-窒素二重結合を有しない芳香族複素環を有する化合物や、分子中にπ電子不足系芳香族複素環を有しない化合物が好ましい。また、前記第2材料としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0037】
【化15】
【0038】
(一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、π電子過剰芳香族複素環、ケイ素及び/又はホウ素を構成元素として含むπ共役系環状構造を表す。Wは、連結基又は直接結合を表す。Zは、構造中に炭素-窒素二重結合を含まないアリール基を表す。rは1~6の整数である。sは1~6の整数である。)
一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、π電子過剰芳香族複素環、ケイ素及び/又はホウ素を構成元素として含むπ共役系環状構造を表す。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環、クリセン環、ジベンゾクリセン環、等が挙げられる。π電子過剰芳香族複素環としては、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、等が挙げられる。ケイ素及び/又はホウ素を構成元素として含むπ共役系環状構造としては、シロール環、ジベンゾ[g,p]クリセン環の一部を窒素-ホウ素置換した環状構造、スピロ-ビフルオレン環の一部を窒素-ホウ素置換した環状構造、等が挙げられる。
【0039】
前記芳香族炭化水素環、π電子過剰芳香族複素環、ケイ素及び/又はホウ素を構成元素として含むπ共役系環状構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の一般式(1)中のR~Rの1価の置換基と同様の基が挙げられる。
【0040】
一般式(2)中、Wは、連結基又は直接結合を表す。なお、Wが連結基の場合、Wは、(r+1)価の連結基となる。ここで、連結基としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エテニレン基、エチニレン基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、等が挙げられる。これらの連結基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の一般式(1)中のR~Rの1価の置換基と同様の基が挙げられる。
【0041】
一般式(2)中、Zは、構造中に炭素-窒素二重結合を含まないアリール基を表す。
ここで、構造中に炭素-窒素二重結合を含まないアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾリル基、等が挙げられる。前記アリール基は、構造中に炭素-窒素二重結合を含まない限り、置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記一般式(1)中のR~Rの1価の置換基と同様の基が挙げられる。
【0042】
一般式(2)中、rは1~6の整数であり、sは1~6の整数である。ここで、rが2~6の整数の場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも、異なってもよい。また、sが2~6の整数の場合、複数存在するWは、それぞれ同一でも、異なってもよく、複数存在するZは、それぞれ同一でも、異なってもよい。
【0043】
本発明の有機薄膜は、上記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物の金属への配位反応により、陰極と有機層間の電子のやりとりがスムーズに行われる。このことから、本発明において、第2材料は、これまで有機電界発光素子や有機薄膜太陽電池において発光層や光電変換層と陰極との間に用いられてきた、アルカリ金属との相互作用で電子を注入できる材料である必要はない。
【0044】
本発明の有機薄膜に含まれるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料との比率は、特に限定されるものではない。ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物及び第2材料のそれぞれに使用する化合物の種類に応じて適宜決定できる。
【0045】
本発明において、第2材料を含む有機薄膜は、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む単一の膜であってもよく、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を少なくとも含む膜と、第2材料を少なくとも含む膜との積層膜であってもよい。積層膜である場合、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物のみを含む膜と、第2材料のみを含む膜との積層膜であってもよく、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜と、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料のいずれか一方のみを含む膜との積層膜であってもよい。ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜と、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料のいずれか一方のみを含む膜との積層膜である場合、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料のいずれか一方のみを含む膜は、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、第2材料のいずれを含むものであってもよいが、第2材料を含むものであることが好ましい。
【0046】
また、有機電界発光素子を構成する層として、このような有機薄膜を使用する場合、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜と、ヘキサヒドロピリミドピリミジン合物と第2材料のいずれか一方のみを含む膜のいずれが陰極側にあってもよいが、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む膜が陰極側にある方が好ましい。
【0047】
本発明における有機薄膜が、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜と、第1材料のみを含む膜との積層膜である場合、積層された2つの膜の両方にヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物が含まれることになるが、2つの膜に含まれるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
同様に、本発明における有機薄膜が、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜と、第2材料のみを含む膜との積層膜である場合、積層された2つの膜の両方に第2材料が含まれることになるが、2つの膜に含まれる第2材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
[有機薄膜の製造方法]
次に、本発明の有機薄膜の製造方法について、例を挙げて説明する。
本発明の有機薄膜は、上記一般式(1)で表される構造を有する電子供与性の化合物からなるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含むものである。本発明の有機薄膜は、塗布だけでなく、蒸着によっても形成することが可能である。このため、本発明の有機薄膜を含む有機電界発光素子を製造する場合のプロセス上の制約が少なく、有機電界発光素子を構成する層の材料として使用し易いものである。
【0050】
第2材料を有する有機薄膜を蒸着により製造する場合、有機電界発光素子を構成する他の層を蒸着により製造する場合と同様の方法により行うことができ、例えば、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料を同時に蒸着してもよく、順に蒸着してもよい。順に蒸着する場合、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、第2材料のいずれを先に蒸着してもよい。また、いずれか一方を先に蒸着した後に、これら両方を共蒸着してもよく、両方を共蒸着した後に、いずれか一方を蒸着してもよい。このような、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物であるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と、分子内にアルカリ金属へ配位する構造を有しない化合物である第2材料とを、同時に有機薄膜の被形成面上に蒸着する工程を含む有機薄膜の製造方法は、本発明の有機薄膜の製造方法の好適な実施形態の1つである。
【0051】
また、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物又は第2材料のいずれかを先に有機薄膜の被形成面上に蒸着する工程と、その後にもう一方又は両方の材料を蒸着する工程とを含む有機薄膜の製造方法、又は、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを同時に有機薄膜の被形成面上に蒸着する工程と、その後にヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物又は第2材料のいずれかを有機薄膜の被形成面上に蒸着する工程とを含む有機薄膜の製造方法もまた、本発明の有機薄膜の製造方法の好適な実施形態の1つである。
【0052】
また、本発明の有機薄膜は、塗布により製造することも可能であり、この場合も、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む塗料組成物を作製して、該塗料組成物を塗布することで有機薄膜を製造することができる。また、有機薄膜が第2材料を有する場合、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料を含む塗料組成物を作製して、該塗料組成物を塗布してもよいし、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む塗料組成物と第2材料を含む塗料組成物をそれぞれ作製して、これらを順に塗布する順に塗布してもよい。順に塗布する場合、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む塗料組成物、第2材料を含む塗料組成物のいずれを先に塗布してもよい。また、いずれか一方の材料のみを含む塗料組成物を塗布した後に、これら両方の材料を含む塗料組成物を塗布してもよく、これら両方の材料を含む塗料組成物を塗布した後に、いずれか一方の材料のみを含む塗料組成物を塗布してもよい。このような、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物であるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と、分子内にアルカリ金属へ配位する構造を有しない化合物である第2材料と、を含む塗料組成物を有機薄膜の被形成面上に塗布する工程を含む有機薄膜の製造方法は、本発明の有機薄膜の製造方法の好適な実施形態の1つである。
【0053】
また、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物のみを含む塗料組成物又は第2材料のみを含む塗料組成物のいずれかを先に有機薄膜の被形成面上に塗布する工程と、該工程によって形成された塗膜の上にもう一方又は両方の材料を含む塗料組成物を塗布する工程と、を含む有機薄膜の製造方法、又は、ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料の両方の材料を含む塗料組成物を塗布する工程と、該工程によって形成された塗膜の上にヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物又は第2材料のいずれか一方のみを含む塗料組成物を塗布する工程とを含む有機薄膜の製造方法もまた、本発明の有機薄膜の製造方法の好適な実施形態の1つである。
【0054】
以下においては、一般式(1)で表される構造を有する化合物からなるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と、分子内にアルカリ金属へ配位する構造を有しない化合物である第2材料とを含む塗料組成物を作製して、該塗料組成物を塗布することで有機薄膜を製造する方法について説明する。
【0055】
塗料組成物は、例えば、容器に入れた溶媒中にヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料をそれぞれ所定量供給して撹拌し、溶解させる方法により得られる。
【0056】
ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物及び第2材料を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、無機溶媒や有機溶媒、又はこれらを含む混合溶媒等を用いることができる。
【0057】
無機溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素等が挙げられる。
【0058】
有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン、3,5,5-トリメチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、エチレンカーボネート等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒等が挙げられ、これらの中でもメチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン、3,5,5-トリメチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン等のケトン系溶媒が好ましい。
【0059】
ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物及び第2材料を含む塗料組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。
【0060】
このようにして塗料組成物を塗布した後、アニール処理を施すことが好ましい。アニール処理の条件は、70~200℃で0.1~5時間、窒素雰囲気又は大気下で行うことが好ましい。このようなアニール処理を施すことにより、溶媒を気化させて有機薄膜を成膜できる。
【0061】
[有機電界発光素子]
本発明は、また、陰極と陽極との間に発光層を有し、更に本発明の有機薄膜の層、該有機薄膜の層と金属酸化物層との積層膜の層、又は、本発明の有機電界発光素子用材料を含む層のいずれかを含む有機電界発光素子(有機EL素子)でもある。
【0062】
上記有機薄膜の層、該有機薄膜の層と金属酸化物層との積層膜の層、本発明の有機電界発光素子用材料を含む層は、いずれも本発明の有機電界発光素子中において、陰極と発光層との間にあってもよく、陽極と発光層との間にあってもよいが、陰極と発光層との間にあることが好ましい。
【0063】
また、本発明の有機電界発光素子用材料を含む層は、前記一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む限り、前記第2材料やその他の成分を含んでいてもよいが、一般式(1)で表されるヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物のみからなる層であることが好ましい。
【0064】
次に、本発明の有機電界発光素子について、例を挙げて詳細に説明する。
【0065】
図1は、本発明の有機電界発光素子の一例を説明するための概略断面図である。図1に示す本実施形態の有機電界発光素子1は、陽極3と陰極9との間に発光層6を有する。図1に示す有機電界発光素子1では、陰極9と発光層6との間に、本発明の有機薄膜又は本発明の有機電界発光素子用材料からなる電子注入層8を有している。
【0066】
本実施形態の有機電界発光素子1は、基板2上に、陽極3と、正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、陰極9と、がこの順に形成された積層構造を有する。
【0067】
図1に示す有機電界発光素子1は、基板2側に陽極3を有する典型的な有機電界発光素子であるが、図2に示すように、基板2と発光層6との間に、陰極9が配置された逆構造の有機電界発光素子1も、本発明の有機電界発光素子の好適な実施形態の1つである。
【0068】
また、陰極9と、本発明の有機薄膜又は本発明の有機電界発光素子用材料からなる電子注入層8との間に、無機の酸化物層10を有する態様も、本発明の有機電界発光素子の好適な実施形態の1つである。
【0069】
図1及び図2に示す有機電界発光素子1は、基板2と反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよいし、基板2側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
【0070】
<基板>
基板2の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。
基板2に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板2の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機電界発光素子1が得られるため好ましい。
基板2に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
【0071】
有機電界発光素子1がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板を用いる。
【0072】
有機電界発光素子1がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0073】
基板2の平均厚さは、基板2の材料等に応じて決定でき、0.02~30mmであることが好ましく、0.05~10mmであることがより好ましい。基板2の平均厚さは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定できる。
【0074】
<陽極>
図1に示す陽極3は、基板2上に直接接触して形成されているが、図2に示すような逆構造の有機電界発光素子の場合は、基板2上に直接接触して形成されていなくてもよい。
【0075】
陽極3の材料としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物の導電材料が挙げられる。この中でも、陽極3の材料として、ITO、IZO、FTOを用いることが好ましい。
【0076】
陽極3の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましく、100~200nmであることがより好ましい。
陽極3の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0077】
<正孔注入層>
正孔注入層4は、無機材料からなるものであってもよいし、有機材料からなるものであってもよい。
【0078】
無機材料としては、特に制限されないが、例えば、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化ルテニウム(RuO)等の金属酸化物を1種又は2種以上を用いることができる。
【0079】
有機材料としては、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)や2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタン(F4-TCNQ)等の低分子材料や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)等を用いることができる。
【0080】
正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、5~50nmであることがより好ましい。
正孔注入層4の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0081】
<正孔輸送層>
正孔輸送層5に用いる正孔輸送性有機材料としては、各種p型の高分子材料(有機ポリマー)、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0082】
具体的には、正孔輸送層5の材料として、例えば、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、N4,N4’-ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-N4,N4’-ジフェニルビフェニル-4,4’-ジアミン(DBTPB)、ポリアリールアミン、フルオレン-アリールアミン共重合体、フルオレン-ビチオフェン共重合体、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送層5の材料は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、正孔輸送層5の材料として用いられるポリチオフェンを含有する混合物として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0083】
正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。
正孔輸送層5の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0084】
<発光層>
発光層6を形成する材料としては、発光層6の材料として通常用いることのできるいずれの材料を用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。具体的には、例えば、発光層6として、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(Zn(BTZ))と、トリス[1-フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq))とを含むものとすることができる。
【0085】
また、発光層6を形成する材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0086】
発光層6を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ-フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキルフェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ-フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレンビニレン)(RO-PPV)、シアノ-置換-ポリ(パラ-フェニレンビニレン)(CN-PPV)、ポリ(2-ジメチルオクチルシリル-パラ-フェニレンビニレン)(DMOS-PPV)、ポリ(2-メトキシ,5-(2’-エチルヘキソキシ)-パラ-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン-アルト-ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω-ビス[N,N’-ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]-ポリ[9,9-ビス(2-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニル-オルト-コ(アントラセン-9,10-ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ-フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレン)(RO-PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特開2011-184430号公報、特開2012-151148号公報に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0087】
発光層6を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、トリス(4-メチル-8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)、(1,10-フェナントロリン)-トリス-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-ブタン-1,3-ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィンプラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6-ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’-ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレン-ジ-カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4-(ジ-シアノメチレン)-2-メチル-6-(パラ-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5-ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’-(パラ-フェニレンジビニレン)-ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’-テトラフェニル-9,9’-スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009-155325号公報、特開2011-184430号公報及び特開2012-151149号公報に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。
【0088】
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。
発光層6の平均厚さは、触針式段差計により測定してもよいし、水晶振動子膜厚計により発光層6の成膜時に測定してもよい。
【0089】
<電子輸送層>
電子輸送層7としては、電子注入層8において第2材料として用いる、これまで電子輸送層の材料として通常用いられてきた材料を用いることができる。
【0090】
一方、有機電界発光素子の作製に必要な材料の数は増えるものの、例えば、発光層6と電子輸送層7の間に正孔阻止層として、これまで電子輸送層の材料として通常用いられてきたアルカリ金属からの電子注入が可能な化合物を用いてもよい。
【0091】
電子輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることが、より好ましい。
電子輸送層7の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0092】
一方、後述するが、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料を混合した有機薄膜を電子注入層8兼電子輸送層7として取り扱う場合、電子輸送層はなくても良い。
【0093】
<電子注入層>
電子注入層8は、陰極9から発光層6への電子の注入の速度・電子輸送性を改善するものである。電子注入層8は、前記の本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む有機薄膜からなる。
【0094】
電子注入層8の平均厚さは、0.5~100nmであることが好ましく、1~50nmであることがより好ましい。本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む塗料組成物を塗布する方法、もしくは、真空蒸着法を用いることで本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を含む有機薄膜らなる電子注入層8が得られる。また、電子注入層8の平均厚さが100nm以下である場合、電子注入層8を設けることによる有機電界発光素子1の駆動電圧の上昇を十分に抑制できる。なお、上記本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜を電子注入層8とする場合、以下に示すいずれの構成であってもよい。例えば、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料の混合膜を電子注入層8とし、第2材料からなる膜を電子輸送層7とする構成であってもよく、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物のみからなる膜を電子注入層8とし、第2材料のみからなる膜を電子輸送層7とする構成であってもよく、第2材料と本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物との積層膜を電子注入層8とし、第2材料のみからなる膜を電子輸送層7とする構成であってもよく、陰極9側に第2材料からなる膜を有し、これと本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料の混合膜との積層膜を電子注入層8とし、第2材料のみからなる膜を電子輸送層7とする構成であってもよく、上述の通り、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料との混合膜を電子注入層8兼電子輸送層7としてもよい。なお、隣接する2つの膜の両方に第2材料が含まれる場合、これら2つの膜に含まれる第2材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
電子注入層8の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0095】
有機薄膜に金属を蒸着した場合、また、陰極上に有機薄膜を蒸着した場合のどちらにおいても、有機薄膜側へ金属が数ナノメートルの距離拡散することが報告されている(Lee,J.H.ら, Direct evidence of Al diffusion into tris-(8-hydroquinoline) aluminum layer: medium energy ion scattering analysis. Applied Physics Letters 93, doi:10.1063/1.3002290 (2008).及びFukagawa,H.et al. Long-Lived Flexible Displays Employing Efficient and Stable Inverted Organic Light-Emitting Diodes. Adv Mater 30, e1706768, doi:10.1002/adma.201706768 (2018).参照)。従って、陰極9側に第2材料が存在するような積層構造であっても、金属の拡散により本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物との配位反応による電子注入の効果を得ることができる。つまり、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を陰極9上に直接形成しなくても、本発明の効果を得ることができる。有機電界発光素子が積層構造中に陰極と、陰極下に形成された本発明の有機薄膜の層とを含む場合、該有機電界発光素子は、本発明の積層膜を含んで構成されているということができる。このような本発明の積層膜を含んで構成される有機電界発光素子もまた、本発明の1つである。
【0096】
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層8として積層膜を有するものであってもよい。すなわち、陰極9と前記発光層6との間に、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜と、前記第2材料を含む膜との積層膜を有することは、本発明の有機電界発光素子の好適な実施形態の1つである。
【0097】
この場合、発光層6と、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料とを含む膜との間に、第2材料を含む層を有する有機電界発光素子、及び、陰極9と、第1材料と第2材料とを含む膜との間に、第2材料を含む層を有する有機電界発光素子のいずれも本発明の有機電界発光素子の好適な実施形態の1つである。
【0098】
<陰極>
陰極9に用いられる材料としては、ITO、IZO、Au、Pt、Ag、Cu、Al、Mg、又はこれらを含む合金等が挙げられる。この中でも、陰極9の材料として、ITO、IZO、Au、Ag、Alを用いることが好ましい。
【0099】
陰極9の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましく、30~150nmであることがより好ましい。また、陰極9の材料として不透過な材料を用いる場合でも、例えば、平均厚さを10~30nm程度にすることで、トップエミッション型の有機電界発光素子における透明な陰極として使用できる。
陰極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により陰極9の成膜時に測定できる。
【0100】
<電子注入用酸化物層>
図2に示す逆構造有機電界発光素子に本発明の有機薄膜を適用する場合、陰極9上に無機の酸化物層10を有することが好ましい。この酸化物層10は、電子注入層8としての機能及び/又は陰極9としての機能を備えている。発光層6と陰極9の間に用いる電子注入層8は、逆構造有機電界発光素子にも適用可能であるが、陰極9と有機層の間に酸化物層10を挿入することとなる。
【0101】
酸化物層10は、半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。具体的には、酸化物層10は、単体の金属酸化物からなる層、二種類以上の金属酸化物を混合した層と単体の金属酸化物からなる層のいずれか一方または両方を積層した層、二種類以上の金属酸化物を混合した層のいずれであってもよい。
【0102】
酸化物層10を形成する金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素が挙げられる。
【0103】
酸化物層10が、二種類以上の金属酸化物を混合した層を含む場合、金属酸化物を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましい。
【0104】
酸化物層10が、単体の金属酸化物からなる層である場合、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物からなる層であることが好ましい。
【0105】
酸化物層10が、二種類以上の金属酸化物を混合した層と単体の金属酸化物からなる層のいずれか一方又は両方を積層した層、または二種類以上の金属酸化物を混合した層である場合、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウム、から選ばれる二種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛、から選ばれる三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの等が挙げられる。
【0106】
酸化物層10は、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)及び/又はエレクトライドである12CaO・7Alを含むものであってもよい。
【0107】
酸化物層10の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましい。
酸化物層10の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0108】
<封止>
図1及び図2に示す有機電界発光素子1は、必要に応じて、封止されていてもよい。
例えば、図1及び図2に示す有機電界発光素子1は、有機電界発光素子1を収容する凹状の空間を有する封止容器(不図示)と、封止容器の縁部と基板2とを接着する接着剤とによって封止されていてもよい。また、封止容器に有機電界発光素子1を収容し、紫外線(UV)硬化樹脂等からなるシール材を充填することにより封止してもよい。
【0109】
また、例えば、図1に示す有機電界発光素子1は、陰極9上に配置された板部材(不図示)と、板部材の陰極9と対向する側の縁部に沿って配置された枠部材(不図示)とからなる封止部材と、板部材と枠部材との間及び枠部材と基板2との間とを接着する接着剤とを用いて封止されていてもよい。
【0110】
また、図2に示す有機電界発光素子1は、陽極3上に配置された板部材(不図示)と、板部材の陽極3と対向する側の縁部に沿って配置された枠部材(不図示)とからなる封止部材と、板部材と枠部材との間及び枠部材と基板2との間とを接着する接着剤とを用いて封止されていてもよい。
【0111】
封止容器又は封止部材を用いて有機電界発光素子1を封止する場合、封止容器内又は封止部材の内側に、水分を吸収する乾燥材を配置してもよい。また、封止容器又は封止部材として、水分を吸収する材料を用いてもよい。また、封止された封止容器内又は封止部材の内側には、空間が形成されていてもよい。
【0112】
図1及び図2に示す有機電界発光素子1を封止する場合に用いる封止容器又は封止部材の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等を用いることができる。封止容器又は封止部材に用いられる樹脂材料及びガラス材料としては、基板2に用いる材料と同様のものが挙げられる。
【0113】
本実施形態の有機電界発光素子1において、有機薄膜として、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と、分子内にアルカリ金属へ配位する構造を有しない化合物である第2材料と、からなるものを用いて電子注入層8を形成した場合には、例えば、電子注入層8として大気中で不安定な材料であるアルカリ金属を用いた場合と比較して、優れた耐久性が得られる。このため、封止容器又は封止部材の水蒸気透過率が10-3~10-4g/m/day程度であれば、有機電界発光素子1の劣化を十分に抑制できる。従って、封止容器又は封止部材の材料として、水蒸気透過率が10-4g/m/day程度を超える樹脂材料を用いることが可能であり、柔軟性に優れた有機電界発光素子1を実現できる。
【0114】
[有機電界発光素子の製造方法]
次に、本発明の有機電界発光素子の製造方法の一例として、図1に示す有機電界発光素子1の製造方法を説明する。
【0115】
図1に示す有機電界発光素子1を製造するには、まず、基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陽極3の形成には、金属箔を接合する方法を用いてもよい。
【0116】
次に、陽極3上に正孔注入層4を形成する。
正孔注入層4は、上述した有機薄膜の製造方法により形成できる。
【0117】
次に、正孔注入層4上に、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、をこの順で形成する。
【0118】
正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8の形成方法は、特に限定されず、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8のそれぞれに用いられる材料の特性に合わせて、従来公知の種々の形成方法を適宜用いることができる。
【0119】
具体的には、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8の各層を形成する方法として、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8となる有機化合物を含む有機化合物溶液を塗布する塗布法、真空蒸着法、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution)法等が挙げられる。
【0120】
塗布法を用いて正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8を形成する場合には、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8となる有機化合物をそれぞれ溶媒に溶解することにより、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8となる有機化合物をそれぞれ含む有機化合物溶液を形成する。
【0121】
正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8となる有機化合物を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が好ましく、これらを単独または混合して用いることができる。
【0122】
正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8となる有機化合物を含む有機化合物溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。これらの塗布法の中でも、膜厚をより制御し易いという点で、スピンコート法やスリットコート法を用いることが好ましい。
【0123】
次に、陰極9を形成する。
陰極9は、例えば、陽極3と同様にして形成できる。
以上の工程により、図1に示す有機電界発光素子1が得られる。
【0124】
[封止方法]
図1に示す有機電界発光素子1を封止する場合には、有機電界発光素子の封止に用いられる通常の方法を使用して封止できる。
【0125】
本実施形態の有機電界発光素子1は、前記ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と隣接する陰極材料とが配位結合を形成することにより、マイナス電荷が生じ、優れた電子注入性が得られる。従って、陰極9から発光層6への電子注入・電子輸送の速度が速く、駆動電圧の低い有機電界発光素子1となる。
【0126】
また、上述したように、前記ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料と、を含む有機薄膜が積層膜であって、第2材料によって形成される層が第1材料によって形成される電子注入層とは異なる層である有機電界発光素子1も、本発明の有機電界発光素子の別の実施形態である。このような実施形態の有機電界発光素子においても、陰極9から発光層6への電子注入・電子輸送の速度が速く、駆動電圧の低い有機電界発光素子1となる。
【0127】
[他の例]
本発明の有機電界発光素子は、前記実施形態において説明した有機電界発光素子に限定されるものではない。
【0128】
具体的には、前記実施形態においては、有機薄膜が電子注入層として機能する場合を例に挙げて説明したが、本発明の有機電界発光素子は、陰極と発光層との間に有機薄膜を有していればよい。従って、有機薄膜は、電子注入層に限定されるものではなく、電子注入層と電子輸送層とを兼ねる層として設けられていてもよいし、電子輸送層として設けられていてもよい。
【0129】
また、図1に示す有機電界発光素子1においては、電子輸送層7、正孔輸送層5、正孔注入層4は、必要に応じて形成すればよく、設けられていなくてもよい。
【0130】
また、陽極3、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9の各層は、1層で形成されているものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
【0131】
また、図1に示す有機電界発光素子1においては、図1に示す各層の間に他の層を有するものであってもよい。具体的には、有機電界発光素子の特性を更に向上させる等の理由から、必要に応じて、正孔阻止層等を有していてもよい。
【0132】
上述した通り、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物は、電子注入性に極めて優れているため、電子注入層8に用いた場合には、発光層6に用いる材料に対しても直接電子を注入することが可能である。従って、発光層6に用いる材料を電子輸送層7に用いても、低い駆動電圧で動作することが可能となる。そのため、、発光層6に用いる材料を電子輸送層7に用いた単純構造の有機EL素子1であっても、低い駆動電圧で動作することが可能となる。この場合、典型的な有機EL素子に比べると、1つ使用する材料を減らすことが可能となる。
【0133】
従って、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を電子注入層8に用い、電子輸送層7に第2材料を用いた場合、発光層6にも第2材料を用いることができる。換言すれば、発光層6が、前記第2材料を含む態様も、本発明の有機EL素子の一好適態様である。
【0134】
更に、正孔注入層4から発光層6に用いる材料へは、比較的容易に正孔を注入できるため、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を電子注入層8に用いた場合には、発光層6に用いる材料を正孔輸送層5に用いても、低い駆動電圧で動作することが可能である。そのため、発光層6に用いる材料を電子輸送層7及び正孔輸送層5に用いた単純構造の有機EL素子1であっても、低い駆動電圧で動作することが可能となる。この場合、典型的な有機EL素子に比べると、2つ使用する材料を減らすことが可能となる。
【0135】
従って、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物を電子注入層8に用い、電子輸送層7に第2材料を用いた場合、発光層6及び正孔輸送層5にも第2材料を用いることができる。換言すれば、発光層6が、前記第2材料を含む態様も、本発明の有機EL素子の一好適態様である。また、陽極3と発光層6との間に、前記第2材料を含む層(例えば、正孔輸送層5)を有する態様も、本発明の有機EL素子の一好適態様である。
【0136】
また、前記実施形態では、基板2上に陽極3、発光層6、陰極9がこの順に配置された通常構造の有機EL素子を例に挙げて説明したが、基板2と発光層6との間に陰極9が配置された逆構造のもの(例えば、図2参照)であってもよい。
【0137】
また、図2に示す有機EL素子においては、無機の酸化物層10、電子輸送層7、正孔輸送層5、正孔注入層4は、必要に応じて形成すればよく、設けられていなくてもよい。
【0138】
[表示装置、照明装置]
本発明の有機電界発光素子は、発光層等の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。
【0139】
本発明の表示装置は、陰極と発光層との間に有機薄膜を有し、生産性に優れ、駆動電圧が低い本発明の有機電界発光素子を具える。このため、表示装置として好ましいものである。
また、本発明の照明装置は、生産性に優れ、駆動電圧が低い本発明の有機電界発光素子を具える。このため、照明装置として好ましいものである。
【0140】
[有機薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の有機薄膜は、例えば、有機薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ等のデバイスに用いることができる。
【0141】
本発明の有機薄膜太陽電池は、有機薄膜を含む。例えば、有機薄膜を有機薄膜太陽電池の電子注入層に用いた場合、本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物と第2材料の間で水素結合を形成することにより、マイナス電荷が生じるため、電子輸送の速度が速く、高い発電効率が得られる。従って、有機薄膜太陽電池として好ましいものである。
【0142】
また、本発明の薄膜トランジスタは、有機薄膜を含む。例えば、薄膜トランジスタのチャネル層を有機薄膜で形成した場合、電子移動度の高いチャネル層が得られる。
また、電極上に該有機薄膜を形成した場合、接触抵抗の低減が期待できる。
【実施例0143】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「モル質量%」を意味するものとする。
【0144】
[実施例1] 化合物(1-1)の合成
【0145】
【化16】
【0146】
アルゴン雰囲気下、500mLナスフラスコにrac-BINAP(0.91g)、脱水トルエン(245mL)を入れ、90℃に過熱し溶解させた。室温まで放冷後、酢酸パラジウム(0.26g)、2,6-ジブロモ-4-フェニルピリジン(3.52g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(3.21g)、カリウム-tert-ブトキシド(3.28g)を加え、90℃で22時間撹拌した。室温まで放冷した混合物にジエチルエーテル(700mL)を加えて、析出固体をセライトろ過、ろ液を濃縮した。ろ液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでカラム精製することにより、上記式(1―1)の化合物(1.63g、34%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.90(quin,J=5.87Hz,4H),2.02(quin,J=6.09Hz,4H),3.19-3.23(m,4H),3.26(brt,J=5.87z,4H),3.42(t,J=5.75Hz,4H),3.84-3.89(m,4H),7.33-7.37(m,3H),7.41(t,J=7.48Hz,2H),7.60-7.64(m,2H)。
[実施例2] 化合物(1-2)の合成
【0147】
【化17】
【0148】
200mLナスフラスコに、rac-BINAP(318mg)、脱水トルエン(25mL)を入れ、窒素雰囲気下90℃に過熱し溶解させた。放冷後、酢酸パラジウム(76.3mg)を入れ、室温で10分間撹拌した。これに2,6-ジクロロ-4-(ナフタレン-2-イル)ピリジン(4.66g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(5.21g)、カリウム-tert-ブトキシド(5.34g)を加え、90℃で3.5時間撹拌した。室温まで放冷した混合物をセライトろ過し、ろ液を濃縮した。濃縮した残渣にアセトンを加えて、析出した固体をろ取した。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、アセトンを加えて再結晶した。再結晶した固体を昇華精製することで、上記式(1―2)の化合物(1.65g、20%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.90(quin,J=5.87Hz,4H),2.03(quin,J=6.16Hz,4H),3.20(t,J=6.46Hz,4H)3.25(t,J=6.02Hz,4H),3.42(t,J=5.72Hz,4H),3.85-3.90(m,4H),7.45-7.51(m,4H),7.75(dd,J=8.51,1.76Hz,1H),7.83-7.92(m,3H),8.08(s,1H)。
[実施例3] 化合物(1-3)の合成
【0149】
【化18】
【0150】
アルゴン雰囲気下、300mL二口フラスコにrac-BINAP(1.24g)、脱水トルエン(60mL)を入れ、90℃に過熱し30分撹拌した。室温まで放冷後、酢酸パラジウム(303mg)を入れ、室温で30分間撹拌した。これに4-([1,1‘-ビフェニル]-4-イル)-2,6-ジクロロピリジン(4.01g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(3.87g)、カリウム-tert-ブトキシド(3.77g)を加え、90℃で1時間撹拌した。室温まで放冷した混合物にジエチルエーテル(120mL)を加えて、析出固体をセライトろ過、ジエチルエーテルで洗浄した。ろ液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでカラム精製することにより、灰色の粗生成物を得た。粗生成物をトルエン(150mL)に懸濁して、40℃で一時間撹拌した。固体をろ別し、溶媒を留去することによって上記式(1-3)の化合物(6.18g、91%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.91(quin,J=5.80Hz,4H),2.02(quin,J=6.09Hz,4H),3.21(brt,J=6.16Hz,4H),3.26(brt,J=5.72Hz,4H),3.44(t,J=5.72Hz,4H),3.87-3.92(m,4H),7.34-7.38(m,1H),7.42(s,2H),7.43-7.48(m,2H),7.62-7.66(m,4H),7.67-7.71(m,2H)。
[実施例4] 化合物(1-4)の合成
【0151】
【化19】
【0152】
1Lのナスフラスコに、2,6-ジクロロ-4-ヨードピリジン(11.8g)、9-フェナントレンボロン酸(10.0g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.48g)、炭酸カリウム(23.8g)、1,4-ジオキサン(270mL)、水(100mL)を加え、窒素雰囲気下80℃で終夜撹拌した。室温まで放冷後、混合物を分液漏斗に移し、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでカラム精製することにより、上記式(1-4-1)の化合物(12.6g、91%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 7.50(s,2H),7.63(ddd,J=8.00,6.97,1.17Hz,1H),7.66-7.70(m,2H),7.75(dddd,J=8.29,6.97,4.70,1.47Hz,2H),7.80(d,J=8.22Hz,1H),7.93(d,J=7.92Hz,1H),8.74(d,J=8.51Hz,1H),8.81(d,J=8.22Hz,1H)。
【0153】
【化20】
【0154】
アルゴン雰囲気下、500mL三口フラスコにrac-BINAP(1.22g)、脱水トルエン(350mL)を入れ、90℃に過熱し溶解させた。室温まで放冷後、酢酸パラジウム(371mg)を入れ、室温で10分間撹拌した。これに上記式(1-4-1)の化合物(5.01g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(4.47g)、カリウム-tert-ブトキシド(4.51g)を加え、90℃で2時間撹拌した。室温まで放冷した混合物にジエチルエーテル(1L)を加えて、析出固体をセライトろ過、ジエチルエーテルとジクロロメタンで順次洗浄した。ろ液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでカラム精製することにより、薄茶色の粗生成物を得た。粗生成物をジクロロメタン(15mL)に溶解後、THF(15mL)とジエチルエーテル(45mL)を加えて-20℃で30分冷却撹拌した。析出した固体をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄することによって下記式(1-4)の化合物(6.79g、83%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.85(quin,J=5.80Hz,4H),2.04(quin,J=6.24Hz,4H),3.19(t,J=6.46Hz,4H),3.22(t,J=6.02Hz,4H),3.39(t,J=5.72Hz,4H),3.91-3.96(m,4H),7.34(s,2H),7.56-7.63(m,2H),7.63-7.69(m,2H),7.81(s,1H),7,90-7.93(m,1H),8.30(d,J=8.22Hz,1H),8.71(d=,J=8.22Hz,1H),8.75(d,J=8.22Hz,1H)。
[実施例5] 化合物(1-5)の合成
【0155】
【化21】
【0156】
アルゴン雰囲気下、500mLナスフラスコにrac-BINAP(1.09g)、脱水トルエン(380mL)を入れ、90℃に過熱し溶解させた。室温まで放冷後、酢酸パラジウム(302mg)、2,6-ジブロモ-N,N-ジフェニルピリジン-4-アミン(5.43g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(3.83g)、カリウム-tert-ブトキシド(3.92g)を加え、90℃で18時間撹拌した。室温まで放冷した混合物にジエチルエーテル(1L)を加えて、析出固体をセライトろ過、ろ液を濃縮した。ろ液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでカラム精製することにより、上記式(1―5)の化合物(6.64g、95%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.76(quin,J=5.80Hz,4H),1.92(quin,J=6.16Hz,4H),3.08(brt,J=6.16Hz,4H),3.12(brt,J=5.58Hz,4H),3.25(t,J=5.58Hz,4H),3.77(t,J=6.02Hz,4H),6.63(s,2H),7.07(t,J=7.19Hz,2H)7.23-7.30(m,8H)。
[実施例6] 化合物(1-29)の合成
【0157】
【化22】
【0158】
アルゴン雰囲気下、100mL三口フラスコにrac-BINAP(469mg)、脱水トルエン(25mL)を入れ、90℃に過熱し溶解させた。室温まで放冷後、酢酸パラジウム(113mg)を入れ、室温で10分間撹拌した。これに4,4‘-ジtert-ブチル-6,6’-ジクロロ-2,2‘-ビピリジン(2.14g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(1.54g)、カリウム-tert-ブトキシド(1.58g)を加え、90℃で4時間撹拌した。室温まで放冷した混合物をセライトろ過しトルエンで順次洗浄した。ろ液を濃縮して得られた残渣にトルエンを加え、再度セライトろ過した。濃縮して得られた残差をジメトキシエタンを用いて再結晶することによって(1-29)の化合物(1.50g、55%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ=7.88(d,J=1.8Hz,1H),7.65(d,J=1.8Hz,1H),4.03-3.98(m,2H),3.43(t,J=5.6Hz,2H),3.27-3.19(m,4H),2.06(quin,J=6.2Hz,2H),1.90(quin,J=5.9Hz,2H),1.32(s,9H)。
[実施例7] 化合物(1-30)の合成
【0159】
【化23】
【0160】
100mLナスフラスコに、rac-BINAP(250mg)、脱水トルエン(15mL)を入れ、窒素雰囲気下90℃に過熱し溶解させた。放冷後、酢酸パラジウム(63.9mg)を入れ、室温で10分間撹拌した。これに6,6‘-ジクロロ-4,4’-ジフェニル-2,2‘-ビピリジン(2.20g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(1.70g)、カリウム-tert-ブトキシド(1.57g)を加え、90℃で3時間撹拌した。室温まで放冷した混合物をセライトろ過した後、ろ液を受けるフラスコを取り換え、セライト上の固体をクロロホルムで洗浄し、洗浄液を集めた。洗浄液を濃縮した残渣にアセトンを加えて、析出した固体をろ取した。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、アセトンを加えて再結晶した。再結晶した固体をろ取して、上記式(1-30)の化合物(3.10g、84%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.94(quin,J=5.80Hz,4H),2.11(quin,J=6.16Hz,4H),3.27(brt,J=6.31Hz,4H),3.30(t,J=6.02Hz,4H),3.47(t,J=5.72Hz,4H),4.05-4.12(m,4H),7.38-7.43(m,2H),7.45-7.51(m,4H),7.73(d,J=7.34Hz,4H),7.92(d,J=1.17Hz,2H),8.17(s,2H)。
[実施例8] 化合物(1-35)の合成
【0161】
【化24】
【0162】
200mLナスフラスコに、rac-BINAP(280mg)、脱水トルエン(20mL)を入れ、窒素雰囲気下90℃に過熱し溶解させた。放冷後、酢酸パラジウム(84.2mg)を入れ、室温で10分間撹拌した。これに2,9-ジクロロ-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(3.00g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(4.38g)を加え、90℃で終夜撹拌した。室温まで放冷した混合物を濃縮後、希水酸化ナトリウム水溶液を加え、分液漏斗を用いてクロロホルムで抽出した。有機層を水で洗浄した後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させて濃縮した。得られた残渣に酢酸エチルを加えて、析出した固体をろ取した。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、酢酸エチルを加えて再結晶した。再結晶した固体をろ取して、アセトンで洗浄することで、下記式(8)の化合物(3.10g、68%)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ 1.91(quin,J=5.87Hz,4H),2.15(quin,J=6.24Hz,4H),3.23-3.31(m,8H),3.44(t,J=5.72Hz,4H),4.39-4.44(m,4H),7.40-7.44m,2H),7.45-7.50(m,6H),7.53-7.58(m,4H),8.02(s,2H)。
[比較例1] 化合物(3-1)の合成
【0163】
【化25】
【0164】
国際公開第2021/045178号の合成例2と同様の方法により、上記式(3-2)の化合物を合成した。
【0165】
[比較例2] 化合物(3-2)の合成
【0166】
【化26】
【0167】
国際公開第2021/045178号の合成例5と同様の方法により、上記式(3-2)の化合物を合成した。
【0168】
表1に本発明のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物のガラス転位温度と融点を示す。
【0169】
【表1】
【0170】
[実施例8]ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物の耐水性の評価
ヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物の各試料について、耐水性の評価を行った。耐水性については、重水中で8時間または24時間静置した際のH-NMRスペクトルを測定し、試料ピークの積分値に基づいて残存量を算出した。これらの結果を以下表2に合わせて示す。
◎ :分解が確認されなかった
〇 :90%以上残存
△ :80%以上残存
△×:60%以上残存
× :残存量が60%未満
【0171】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の有機薄膜は、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、照明装置、有機薄膜太陽電池、光電変換素子、薄膜トランジスタ等に利用できる。
【符号の説明】
【0173】
1:有機EL素子
2:基板
3:陽極
4:正孔注入層
5:正孔輸送層
6:発光層
7:電子輸送層
8:電子注入層
9:陰極
10:酸化物層
図1
図2