(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002432
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】等級判定システム、撮像ボックス、等級判定サーバ及び等級判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20231228BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20231228BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231228BHJP
G06V 10/764 20220101ALI20231228BHJP
G06V 20/68 20220101ALI20231228BHJP
G01N 33/12 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G06Q50/02
G06T7/00 350B
G06V10/764
G06V20/68
G01N33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101593
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】518059912
【氏名又は名称】株式会社ima
(74)【代理人】
【識別番号】100158850
【弁理士】
【氏名又は名称】明坂 正博
(72)【発明者】
【氏名】三浦 亜美
(72)【発明者】
【氏名】内田 康隆
【テーマコード(参考)】
2G059
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB11
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM05
2G059MM10
2G059PP06
5L049CC01
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA02
5L096FA69
5L096GA02
5L096GA03
5L096GA38
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】水産物の等級を客観的に評価できる等級判定システム、撮像ボックス、等級判定サーバ及び等級判定方法を提供すること。
【解決手段】本発明の等級判定システムは、内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体と、筐体内に設けられ、水産物を照らすための発光装置と、筐体内に設けられ、水産物を撮像可能な撮像装置と、を備える撮像ボックスと、撮像ボックスから出力された画像データを受信する受信部と、水産物を含む学習用の画像データと、学習用の画像データにかかる水産物の等級と、を教師データとして機械学習させた識別器を用いて、受信部が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する判定部と、を備える等級判定サーバと、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記水産物を照らすための発光装置と、
前記筐体内に設けられ、前記水産物を撮像可能な撮像装置と、
を備える撮像ボックスと、
前記撮像ボックスから出力された画像データを受信する受信部と、
水産物を含む学習用の画像データと前記学習用の画像データにかかる前記水産物の等級とを教師データとして機械学習させた識別器を用いて、前記受信部が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する判定部と、を備える等級判定サーバと、
を具備することを特徴とする等級判定システム。
【請求項2】
前記撮像ボックスの撮像装置は、
前記筐体内の天井面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の等級判定システム。
【請求項3】
前記撮像ボックスの前記発光装置は、
前記筐体の内面に配列された複数の光源を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の等級判定システム。
【請求項4】
前記等級判定サーバの前記判定部は、
時期に応じて、前記受信部が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する基準を変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の等級判定システム。
【請求項5】
前記等級判定サーバの前記識別器は、
前記水産物の形状、サイズ、目の色、透明度又は色、水温及び気温の少なくとも1以上を特徴量として前記水産物の等級を学習する、
ことを特徴とする請求項1に記載の等級判定システム。
【請求項6】
等級判定システムは、
前記等級判定サーバの前記判定部による等級判定結果及び前記等級判定結果に対応付けされた識別子を提示する提示装置を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の等級判定システム。
【請求項7】
前記撮像ボックスの筐体は、
一側面に前記水産物が載置された容器を出し入れ可能な開口と、前記開口を開閉可能に閉塞する扉とを備え、
前記扉により前記開口を閉塞することで前記筐体内が暗室となる、
ことを特徴とする請求項1に記載の等級判定システム。
【請求項8】
内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記水産物を照らすための発光装置と、
前記筐体内に設けられ、前記水産物を撮像可能な撮像装置と、
を備えることを特徴とする撮像ボックス。
【請求項9】
内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記水産物を照らすための発光装置と、
前記筐体内に設けられ、前記水産物を撮像可能な撮像装置と、
水産物を含む学習用の画像データと、前記学習用の画像データにかかる前記水産物の等級と、を教師データとして機械学習させた識別器を用いて、前記撮像装置が撮像した画像データにかかる水産物の等級を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする撮像ボックス。
【請求項10】
前記撮像ボックスの撮像装置は、
前記筐体内の天井面に設けられている、
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の撮像ボックス。
【請求項11】
前記撮像ボックスの前記発光装置は、
前記筐体の内面に配列された複数の光源を有する、
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の撮像ボックス。
【請求項12】
前記撮像ボックスの筐体は、
一側面に前記水産物が載置された容器を出し入れ可能な開口と、前記開口を開閉可能に閉塞する扉とを備え、
前記扉により前記開口を閉塞することで前記筐体内が暗室となる、
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の撮像ボックス。
【請求項13】
前記判定部は、
時期に応じて、前記画像データにかかる水産物の等級を判定する基準を変更する、
ことを特徴とする請求項9に記載の撮像ボックス。
【請求項14】
前記識別器は、
前記水産物の形状、サイズ、目の色、透明度又は色、水温及び気温の少なくとも1以上を特徴量として前記水産物の等級を学習する、
ことを特徴とする請求項9又は請求項13に記載の撮像ボックス。
【請求項15】
前記撮像ボックスは、
前記等級判定結果及び前記等級判定結果に対応付けされた識別子を提示する提示装置を備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の撮像ボックス。
【請求項16】
水産物を含む画像データを受信する受信部と、
水産物を含む学習用の画像データと、前記学習用の画像データにかかる前記水産物の等級と、を教師データとして機械学習させた識別器を用いて、前記受信部が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する判定部と、を備え、
前記識別器は、
前記水産物の形状、サイズ、目の色、透明度又は色、水温及び気温の少なくとも1以上を特徴量として前記水産物の等級を学習する、
ことを特徴とする等級判定サーバ。
【請求項17】
前記判定部は、
時期に応じて、前記受信部が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する基準を変更する、
ことを特徴とする請求項16に記載の等級判定サーバ。
【請求項18】
発光装置が、筐体内の水産物を照らす工程と、
撮像装置が、前記筐体内の水産物を撮像する工程と、
判定部が、水産物を含む学習用の画像データと、前記学習用の画像データにかかる前記水産物の等級と、を教師データとして機械学習させた識別器を用いて、前記撮像装置が撮像した画像データにかかる水産物の等級を判定する工程と、
を有することを特徴とする等級判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物の等級を判定できる等級判定システム、撮像ボックス、等級判定サーバ及び等級判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水産物の鮮度を評価する場合、熟練者の五感により判断する評価が従来から行われている。しかしながら、このような熟練者の五感による評価では、各熟練者のそれぞれの経験から主観的に水産物の鮮度の評価が行われるため、定量化した客観的な評価結果が得られないという問題がある。また、熟練者がいない場合に水産物の鮮度を評価することができないという問題がある。
このため、魚眼を紫外光にて撮影し、撮影した魚眼画像の輝度を用いて決定した魚の品質情報を提示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、魚眼を利用して品質を判定するため小さな魚には利用することができないなど未だ向上の余地がある。
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、水産物の等級を客観的に評価できる等級判定システム、撮像ボックス、等級判定サーバ及び等級判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決すべく、本発明の等級判定システムは、内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体と、筐体内に設けられ、水産物を照らすための発光装置と、筐体内に設けられ、水産物を撮像可能な撮像装置と、を備える撮像ボックスと、撮像ボックスから出力された画像データを受信する受信部と、水産物を含む学習用の画像データと、学習用の画像データにかかる水産物の等級と、を教師データとして機械学習させた識別器を用いて、受信部が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する判定部と、を備える等級判定サーバと、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水産物の等級を客観的に評価できる等級判定システム、撮像ボックス、等級判定サーバ及び等級判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る等級判定システムの構成図である。
【
図2】本実施形態に係る撮像ボックスの構成を示す模式斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る撮像ボックスの構成を示す模式断面図である。
【
図4】本実施形態に係る撮像ボックスの機能を示す模式構成図である。
【
図5】本実施形態に係る等級判定サーバの機能を示す模式構成図である。
【
図6】本実施形態に係る等級判定システムの利用方法を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る撮像ボックスでの処理を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る等級判定サーバでの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、水産物として死後、時間の経過とともに色が透明もしくは半透明から白色へ変化する水産物、換言すると鮮度の低下とともに透明度が低下する水産物、例えば、白魚(シラウオ)を例に実施形態について説明するが、白魚以外の水産物(例えば、素魚(シロウオ)、シラスなど鮮度の低下とともに透明度が低下する水産物)を除外するものではない。
【0009】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る等級判定システムの構成図である。本実施形態に係る等級判定システムは、撮像ボックス1と、等級判定サーバ2とを備える。撮像ボックス1と、等級判定サーバ2とは、ネットワーク3により互いに通信可能に構成されている。なお、ネットワーク3には他のサーバや機器、装置などが撮像ボックス1及び等級判定サーバ2の少なくとも一方と通信可能に接続されていてもよい。また、等級判定システムが備える撮像ボックス1及び等級判定サーバ2の数は任意であり、例えば、複数の撮像ボックス1が1の等級判定サーバにネットワーク3により互いに通信可能に接続されていてもよいし、複数の撮像ボックス1が複数の等級判定サーバにネットワーク3により互いに通信可能に接続されていてもよい。
【0010】
(撮像ボックス1)
図2は、撮像ボックス1の構成を示す模式斜視図である。
図3は、撮像ボックス1の構成を示す模式断面図である。
図4は、撮像ボックス1の機能を示す模式構成図である。
【0011】
撮像ボックス1は、内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体11を備え、筐体11は、一側面である前面に水産物(本実施形態では、白魚)が載置されたトレイ(容器)を出し入れ可能な開口11aと、開口11aを開閉可能に閉塞する扉13とを備える。扉13には取手13aが設けられている。撮像ボックス1は、扉13により開口11aを閉塞することで筐体11内が暗室となるように構成されている。
なお、本実施形態では、水産物の等級判定の特徴量(説明変数)として透明度を測定するため撮像ボックス1の筐体11の筐体内は可視光(波長がおおよそ360nmから400nm)に対して黒色であることが好ましい。
また、水産物を載置するトレイについても例えば可視光領域で透明である材料(例えば、アクリル樹脂など)で構成されているか、可視光領域で黒色であることが好ましい。
また、撮像ボックス1の筐体11の前面には、スイッチ12が設けられている。スイッチ12が押されると後述する発光装置105の光源105aが発光するとともに、撮像装置104による撮像が行われる。
また、撮像ボックス1の筐体11内の底面には、トレイの位置決め用のマークがされており、トレイの角を筐体11内の底面のマークに合わせることで、トレイを位置決め可能に構成されている。なお、マークの代わりに位置決めピンなどを利用してもよい。
【0012】
また、撮像ボックス1は、受信部101、送信部102(出力部)、記憶装置103、撮像装置104、発光装置105、印刷装置106、制御部107などを備える。
【0013】
受信部101は、例えば、等級判定サーバ2から送信されるロット番号(識別子として利用される)、等級判定結果及び判定日時を受信する。なお、本実施形態では、ロット番号は、等級判定サーバ2が自動で付与する構成になっているが、ユーザ又は撮像ボックス1が付与するようにしてもよい。
【0014】
送信部102は、例えば、撮像装置104が撮像した画像データを等級判定サーバ2へ送信(出力)する。
【0015】
記憶装置103は、例えば、Hard Disk DriveやSolid State Driveなどであり、撮像ボックス1の識別番号、撮像した画像データ、該画像データのロット番号、等級判定結果及び判定日時などを関連付けて記憶する。これにより、水産物の出荷後にロット番号によるトレース(追跡)が可能となる。
【0016】
撮像装置104は、筐体11内の天井面11bに設けられ、筐体11の前面に設けられたスイッチ12が押されることで、筐体11の底面に載置されたトレイに入った水産物を撮影する。
【0017】
発光装置105は、筐体11内に設けられ、筐体内に載置されたトレイ内の水産物を照らす。発光装置105は、例えば、筐体11の内面に水平方向に配列された複数の光源105a(例えば、 Light-Emitting Diodeなど)を有し、筐体11の前面に設けられたスイッチ12が押されることで複数の光源105aが発光する。なお、発光装置105は、水産物が載置されるトレイの長手方向の2/3以上の長さ(距離)にわたって複数の光源105aが筐体11の一内面に設けられていることが好ましい。光源105aが設けられる長さが、水産物が載置されるトレイの長手方向の2/3未満である場合、トレイに載置された水産物全体に光を当てることが難しい恐れがある。また、光源105aが発する光は、可視光(波長がおおよそ360nmから400nm)を含むことが好ましい。これは、後述するように、学習用の画像データにかかる水産物の等級(目的変数)を経験者が回答する(答えを与える)ためである。
【0018】
印刷装置106は、等級判定サーバ2から送信される等級判定の結果を提示する提示装置であり、等級判定サーバ2から送信される等級判定の結果を印刷する。なお、等級判定サーバ2から送信される等級判定の結果を表示する表示装置(例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなど)を提示装置として備えるようにしてもよい。また、提示装置として印刷装置106と表示装置の両方を備えるようにしてもよい。
【0019】
制御部107は、例えば、 Central Processing UnitやMicro-processing unitなどであり、撮像ボックス1を制御する。
【0020】
(等級判定サーバ2)
図5は、等級判定サーバ2の機能を示す模式構成図である。等級判定サーバ2は、受信部201、送信部202、識別器203、判定部204、制御部205などを備える。
【0021】
受信部201は、撮像ボックス1から送信(出力)された画像データを受信する。
【0022】
送信部202は、ロット番号、等級判定結果及び判定日時を撮像ボックス1へ送信する。
【0023】
識別器203は、水産物を含む学習用の画像データと学習用の画像データにかかる水産物の等級(目的変数)とを教師データとして機械学習させたものである。なお、本実施形態では、学習用の画像データにかかる水産物の等級は経験者が回答する(答えを与える)。また、学習用の画像データにかかる水産物の等級は、水産物の形状、目の色(黒目)、サイズ及び透明度(又は色)の少なくとも1以上に応じて付与されている。換言すると、識別器203は、画像データにかかる水産物の形状、目の色(黒目)、サイズ及び透明度(又は色)の少なくとも1以上を特徴量(説明変数)として水産物の等級を学習する。以下、各特徴量について説明する。
【0024】
(形状)
画像データから水産物の形状を検出する場合、例えば、次の手法により検出することができる。なお、本実施形態では、画像データから水産物の形状を検出することができればよく、画像データから水産物の形状を検出する手法は、次に示す手法に限られない。
画像データを1次微分し、輝度値が極大又は極小となる領域、又は画像データを2次微分し、輝度値のゼロクロッシング点(マイナスからプラス、又はプラスからマイナスに変わる位置)となる領域を境界、すなわち白魚の形状として検出する。なお、白魚の形状を認識するために、予め白魚の形状を学習させた識別器を利用してもよい。
【0025】
(目の色(黒目))
画像データから水産物の目の色を検出する場合、例えば、次の手法により検出することができる。なお、本実施形態では、画像データから水産物の目の色を検出することができればよく、画像データから水産物の目の色を検出する手法は、次に示す手法に限られない。
上記検出した白魚の形状から目の位置を検出する。例えば、検出した白魚の形状から黒色部分を検出し、該検出した黒色の輝度(輝度が小さいほど黒い)を検出する。なお、白魚の目を認識するために、予め白魚の形状と該形状に対する目の位置とを学習させた識別器を利用してもよい。
【0026】
(サイズ)
画像データから水産物のサイズを検出する場合、例えば、次の手法により検出することができる。なお、本実施形態では、画像データから水産物のサイズを検出することができればよく、画像データから水産物のサイズを検出する手法は、次に示す手法に限られない。
形状と同様に画像データを1次微分し、輝度値が極大又は極小となる領域、又は画像データを2次微分し、輝度値のゼロクロッシング点(マイナスからプラス、又はプラスからマイナスに変わる位置)となる領域を境界として検出する。次いで、検出した境界のうち白魚の形状をしているものを抽出し、抽出した境界により囲繞される画素の数を白魚のサイズとする。
【0027】
(透明度)
本実施形態では、画像データから水産物の透明度を検出するため撮像ボックス1の筐体11内は黒色であり、水産物を載置するトレイは、可視光領域で透明である材料で構成されている(なお、トレイは黒色であってもよい)。
白魚は、鮮度の低下とともに透明度が低下し、色が透明から白へと変化するが(透明度が高いほど鮮度がよい)、白魚の透明度が高いと白魚が載置された容器からの反射光は弱くなり、白魚の透明度が低い(白い)と白魚が載置された容器からの反射光は強くなる。つまり、本実施形態では、反射光の強度(輝度)を水産物の透明度を示すパラメータとして検出している。なお、ここで、撮像ボックス1の筐体11内を黒色、水産物を載置するトレイを透明材料で構成又は黒色としているので、筐体11内(内表面)からの反射光の影響を受けにくく、トレイに載置された白魚の透明度をより精度よく測定することができる。
【0028】
なお、透明度に代えて、色(例えば、白色)を特徴量(説明変数)としてもよい。この場合、透明度を特徴量(説明変数)とする場合とは異なり、白色度が高いほど鮮度が低くなる。また、反射光の強度(輝度)を特徴量(説明変数)としてもよいのはもちろんである。
【0029】
判定部204は、識別器203を用いて、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する。なお、上述したように学習用の画像データにかかる水産物の等級は、水産物の形状、目の色(黒目)、サイズ及び透明度(又は色)に応じて付与されているため、判定部204は、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の形状、目の色(黒目)、サイズ及び透明度(又は色)に応じて水産物の等級を判定する。また、白魚のサイズは時期に応じて異なるため、判定部204は、時期(例えば、春(4月乃至6月)夏(7月乃至9月)秋(10月乃至12月)冬(1月乃至3月)など)に応じて、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する基準をサイズの特徴量について変更する。なお、時期は画像データのタイムスタンプ(日時)に基づいて判定される。また、時期(例えば、春夏秋冬など)は、ユーザが設定により変更可能であることが好ましい。
【0030】
制御部205は、例えば、 Central Processing UnitやMicro-processing unitなどであり、等級判定サーバ2を制御する。
【0031】
(等級判定システムの利用方法 )
図6は、等級判定システムの利用方法を示すフローチャートである。
(ステップS101)
計量器等を用いて水産物である白魚を計量し、1Kg程度の白魚をトレイにいれる。
【0032】
(ステップS102)
トレイ上の白魚の厚みが均一となるように均す。
【0033】
(ステップS103)
撮像ボックス1の扉13を開ける。
【0034】
(ステップS104)
撮像ボックス1内に白魚を入れたトレイを入れる。この際、トレイの角を筐体11内の底面のマークに合わせてトレイを位置決めする。
【0035】
(ステップS105)
撮像ボックス1の扉13を閉める。
【0036】
(ステップS106)
撮像ボックス1の筐体11の前面に設けられたスイッチ12を押して、トレイ上の白魚を撮像装置104で撮像する。
【0037】
(ステップS107)
撮像ボックス1の扉13を開ける。
【0038】
(ステップS108)
撮像ボックス1内から白魚を入れたトレイを取り出す。
【0039】
(ステップS109)
ロット番号、等級判定結果、判定日時などの情報(文字の他、バーコードやQRコード(登録商標)などの形式でもよい)が印字されたシールを、等級を測定した白魚の出荷用容器に張り付ける。なお、ロット番号、等級判定結果、判定日時などの情報へアクセスするための情報(例えば、URL(バーコードやQRコード(登録商標)などの形式でもよい))などが印字されたシールを、等級を測定した白魚の出荷用容器に張り付けるようにしてもよい。
【0040】
(等級判定システムの動作)
図7及び
図8は、等級判定システムの処理を示すフローチャートである。以下、
図7及び
図8を参照して等級判定システムの処理について説明するが、
図1~
図6を参照して説明した構成と同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
(撮像ボックス1での処理)
図7は、撮像ボックス1での処理を示すフローチャートである。
【0042】
(ステップS201)
撮像ボックス1の制御部107は、スイッチ12が押されたか否かを判定する。スイッチ12が押されている場合(YES)、制御部107は、ステップS202の処理を実行する。スイッチ12が押されていない場合(NO)、制御部107は、処理を終了する。
【0043】
(ステップS202)
撮像ボックス1の発光装置105は、光源105aを発光させ、撮像装置104は、白魚を撮像する。
【0044】
(ステップS203)
撮像ボックス1の送信部102は、撮像装置104が撮像した画像データを等級判定サーバ2へ送信する。
【0045】
(ステップS204)
撮像ボックス1の制御部107は、受信部201が等級判定サーバ2からロット番号、等級判定結果及び判定日時を受信したか否かを判定する。ロット番号、等級判定結果及び判定日時を受信している場合(YES)、制御部107は、ステップS205の処理を実行する。ロット番号、等級判定結果及び判定日時を受信していない場合(NO)、制御部107は、処理を終了する。
【0046】
(ステップS204)
撮像ボックス1の制御部107は、印刷装置106にロット番号、等級判定結果及び判定日時などの情報を印刷させる。
【0047】
(等級判定サーバ2での処理)
図8は、等級判定サーバ2での処理を示すフローチャートである。
【0048】
(ステップS301)
等級判定サーバ2の制御部205は、撮像ボックス1から画像データを受信したか否かを判定する。画像データを受信している場合(YES)、制御部205は、ステップS302の処理を実行する。画像データを受信していない場合(NO)、制御部205は、処理を終了する。
【0049】
(ステップS302)
等級判定サーバ2の判定部204は、識別器203を用いて、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する。ここで、判定部204は、時期に応じて、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する基準をサイズの特徴量について変更する。
【0050】
(ステップS303)
等級判定サーバ2の送信部202は、ロット番号、等級判定結果及び判定日時を撮像ボックス1へ送信する。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る等級判定システムは、内部に水産物が載置された容器を載置可能な筐体11と、筐体11内に設けられ、水産物を照らすための発光装置105と、筐体11内に設けられ、水産物を撮像可能な撮像装置104と、を備える撮像ボックス1と、撮像ボックス1から出力された画像データを受信する受信部201と、水産物を含む学習用の画像データと、学習用の画像データにかかる水産物の等級と、を教師データとして機械学習させた識別器203を用いて、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する判定部204とを備える等級判定サーバ2と、を具備する。このように、水産物を含む学習用の画像データと、学習用の画像データにかかる水産物の等級とを教師データとして機械学習させた識別器203を用いて画像データにかかる水産物の等級を判定することができる。このため、ベテランの目利きなどを必要とせずに水産物の等級を客観的に評価することができ利便性が高い。
【0052】
また、本実施形態に係る等級判定システムの撮像ボックス1の撮像装置104は、筐体11内の天井面11bに設けられている。このため、撮像装置104を筐体11内の内側面に設けた場合より水産物の透明度(反射光の強度(輝度))を精度よく認識できることが期待できる。
【0053】
また、本実施形態に係る等級判定システムの撮像ボックス1の発光装置105は、筐体11の内面11cに水平方向に配列された複数の光源105aを有する。このため、トレイ(容器)に載置された水産物全体に光を当てることができ光源が一つの場合より水産物の透明度(反射光の強度(輝度))を精度よく認識できることが期待できる。
【0054】
また、本実施形態に係る等級判定システムの等級判定サーバ2の判定部204は、時期に応じて、受信部201が受信した画像データにかかる水産物の等級を判定する基準を変更する。このように、例えば漁の時期に応じて等級を判定する基準を変更するなど水産物の販売の実情にあった等級判定をすることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る等級判定システムの等級判定サーバ2の識別器203は、水産物の形状、目の色(黒目)、サイズ及び透明度(又は色)の少なくとも1以上を特徴量として水産物の等級を学習する。このように種々の特徴量に基づいて等級を学習するので等級判定の精度の向上が期待できる。また、透明度は、水産物の鮮度に直結するため、透明度を特徴量として学習することでより精度の高い等級判定ができることが期待できる。
【0056】
また、本実施形態に係る等級判定システムは、ロット番号、等級判定サーバ2の判定部204による等級判定及び判定日時の結果を提示する提示装置を備える。このため、ロット番号から等級の判定結果及び判定日時をトレース(追跡)することができる。また、提示装置を印刷装置とした場合、例えば、ロット番号、等級判定結果及び判定日時をシール等に印字することで、等級を判定した水産物の出荷容器に貼り付けるだけで出荷後もトレース(追跡)することができるので利便性が高い。
【0057】
また、本実施形態に係る等級判定システムの撮像ボックス1の筐体11は、一側面に水産物が載置された容器を出し入れ可能な開口11aと、開口11aを開閉可能に閉塞する扉13とを備え、扉13により開口11aを閉塞することで筐体11内が暗室となる。このように、筐体11内が暗室となることで外光の影響を排することができ、より精度よく等級判定を行うことが期待できる。
【0058】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態では、特徴量(説明変数)として水産物の形状、目の色(黒目)、サイズ及び透明度(又は色)を利用しているが、水産物を水揚げした際の水温、気温などを特徴量(説明変数)としてさらに利用してもよい。水温や気温は、他のサーバ(例えば、気象庁などのサーバ)から取得してもよいし、ユーザが測定した水温や気温を入力して利用するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、撮像ボックス1が水産物を撮像した画像データを等級判定サーバ2へ送信し、等級判定サーバ2が画像データにかかる水産物の等級を判定し、ロット番号、等級判定結果及び判定日時を撮像ボックス1へ送信しているが、撮像ボックス1に等級判定サーバ2の機能、例えば、識別器203及び判定部204を備え、撮像ボックス1が画像データにかかる水産物の等級を判定するように構成してもよい。また、この場合、画像データ、等級判定結果及び判定日時を等級判定サーバ2に送信して等級判定サーバ2に画像データ、等級判定結果及び判定日時を記憶させてもよいし、撮像ボックス1側で記憶してもよい。また、撮像ボックス1側及び等級判定サーバ2側の両方で記憶させてもよい。
また、判定日時に代えて、水産物の撮像日時、画像データの送信日時、等級判定結果の受信日時などを利用するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、撮像ボックス1が提示装置としての印刷装置106や表示装置を備える構成であるが、必ずしも撮像ボックス1が提示装置を備えている必要はなく、撮像ボックス1とは別に印刷装置106や表示装置などの提示装置を備えていてもよい。この場合、等級判定サーバ2は、撮像ボックス1を介さずにロット番号、等級判定結果及び判定日時を提示装置に送信するようにしても良いし、撮像ボックス1を介してロット番号、等級判定結果及び判定日時を提示装置に送信するようにしても良い。
【0061】
また、上記実施形態の撮像ボックス1に表示装置(例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなど)及び入力装置(例えば、キーボード、マウス、タッチパネルの他、音声入力装置など)を備えた操作端末(例えば、タブレット端末など)を具備し、この操作端末の入力装置から発光装置105の光源105aが発光するとともに撮像装置104による撮像が行われるように構成してもよい(スイッチ12としての機能)。また、操作端末の表示装置に撮像装置104が撮像した画像及び判定部204が判定した結果が表示されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :撮像ボックス
2 :等級判定サーバ
3 :ネットワーク
11 :筐体
11a :開口
11b :天井面
11c :内面
12 :スイッチ
13 :扉
13a :取手
101 :受信部
102 :送信部
103 :記憶装置
104 :撮像装置
105 :発光装置
105a :光源
106 :印刷装置
107 :制御部
201 :受信部
202 :送信部
203 :識別器
204 :判定部
205 :制御部