(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024329
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】センサ装置及び補正係数を決定する方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/76 20230101AFI20240215BHJP
【FI】
H04N5/374
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127099
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 玄士朗
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 浩史
(72)【発明者】
【氏名】ロ ホウ
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ キクン
(72)【発明者】
【氏名】ゲ ゴウチ
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX27
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
5C024HX57
(57)【要約】
【課題】センサ装置における測定信号のノイズを効果的に低減する。
【解決手段】センサ装置は、複数の画素と、複数の画素による測定信号を補正する、制御装置とを含む。複数の画素の各画素は、フォトディテクタと、フォトディテクタからの信号を出力する画素回路とを含む。制御装置は、複数の画素の第1画素の未知の測定信号を取得する。制御装置は、複数の画素のうちの一つの画素の未知の測定信号を取得し、複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、複数の画素の測定信号の統計値と一つの画素の測定信号から得られる値との比、に基づく補正係数を使用して、一つの画素による未知の測定信号を補正する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置であって、
複数の画素と、
前記複数の画素による測定信号を補正する、制御装置と、
を含み、
前記複数の画素の各画素は、
フォトディテクタと、
前記フォトディテクタからの信号を出力する画素回路と、
を含み、
前記制御装置は、
前記複数の画素のうちの一つの画素の未知の測定信号を取得し、
複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の測定信号の統計値と前記一つの画素の測定信号から得られる値との比、に基づく補正係数を使用して、前記一つの画素による前記未知の測定信号を補正する、
センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
前記補正係数は、前記複数の異なる強度を持つ参照光のそれぞれに対して割り当てられている重みを係数とする、前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの比の線形結合で与えられる、
センサ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
前記複数の画素の測定信号の統計値は、前記複数の画素それぞれの測定信号から前記複数の画素それぞれの暗状態での測定信号を減算した値の平均値である、
センサ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
前記制御装置は、前記異なる強度を持つ参照光それぞれでの前記複数の画素の測定信号の統計値と、前記異なる強度を持つ参照光それぞれでの前記一つの画素の測定信号から得られる値と、に基づき前記補正係数を決定する、
センサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサ装置であって、
前記制御装置は、前記補正係数の決定において、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素それぞれの測定信号から前記複数の画素それぞれの暗状態での測定信号を減算した値から、前記統計値を算出し、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記一つの画素の測定信号から、暗状態での前記一つの画素の測定信号を減算して、第1減算値を取得し、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの前記統計値を前記第1減算値で除算した値と、前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれの重み係数と、の線形結合を算出し、
前記一つの画素による前記未知の測定信号の補正において、
前記一つの画素の前記未知の測定信号から、前記暗状態での前記一つの画素の測定信号を減算して第2減算値を算出し、
前記第2減算値と前記線形結合との積を計算する、
センサ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサ装置であって、
前記制御装置は、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの前記統計値と、前記一つの画素の前記未知の測定信号と、に基づいて、前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれについての前記重み係数を決定する、
センサ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
前記制御装置は、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの前記比と、前記一つの画素の前記未知の測定信号と、に基づき前記補正係数を決定する、
センサ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のセンサ装置であって、
前記補正係数fは、以下の数式で表すことが可能であり、
f=Σkm*<Rm>/Rm
mは、前記複数の異なる強度を持つ参照光の識別子を示し、
kmは、参照光mに割り当てられている重みを示し、
Rmは、参照光mでの、前記一つの画素の測定信号から得られる値を示し、
<Rm>は、参照光mでの前記統計値を示す、
センサ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のセンサ装置であって、
前記未知の測定信号を補正した値So^は、以下の数式で表すことが可能であり、
So^=(Sx-Rd)*f
Sxは、前記未知の測定信号であり、
Rdは、暗状態での前記一つの画素の測定信号であり、
前記参照光mでの前記一つの画素の測定信号から得られる値Rmは、以下の数式で表すことが可能であり、
Rm=Rlm-Rd
Rlmは、前記参照光mでの前記一つの画素の測定信号であり、
前記参照光mでの前記統計値<Rm>は、前記複数の画素についての、前記参照光mでの測定信号から暗状態での測定信号を減算した値、の平均値である、
センサ装置。
【請求項10】
センサ装置の制御装置による画素の測定信号の補正で使用される、補正係数を決定する方法であって、
前記センサ装置の複数の画素の各画素は、
フォトディテクタと、
前記フォトディテクタからの信号を出力する画素回路と、
を含み、
前記方法は、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の各画素の測定信号を取得し、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の測定信号の統計値を決定し、
前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の測定信号の統計値と前記複数の画素の各画素の測定信号とに基づいて、前記複数の画素の各画素の補正係数を決定する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォトディテクタからの信号のノイズ低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光撮像素子からの出力信号に含まれるノイズは、時間的に変動するライダムノイズと、時間変動しない固定パタンノイズ(FPN)に分類される。さらに、FPNは、光入射が無い状態で観測される暗時FPNと、入射光強度に依存して大きさが変化する明時FPNの2種類が存在する。暗時FPNは、撮像素子の画素回路や読み出し回路の入出力特性のばらつきに起因する。一方、明時FPNは光電変換素子の特性のばらつきに起因し、入射光強度(フォトン数)の増大とともにノイズ強度は増大することが知られている。
【0003】
FPNは、時間的には変動せず、撮像画素毎の特性ばらつきとして空間的に固定されているため、適切な信号処理によって抑制することができる。例えば、暗状態での信号をメモリに格納しておき、フォトディテクタの検出信号から減算することで暗時FPNを低減する方法が知られている。
【0004】
明時FPNの抑制手法としては、例えば、1ないし2の均一参照光照射状態での参照信号を用意し、それらを検出信号から減算する方法が知られている。さらに、特許文献1は、検出信号を均一参照光照射状態の参照信号で除算することで、明時FPNを抑制する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の手法では、明時FPNを十分に低減することができなかった。したがって、フォトディテクタの明時FPNをより効果的に低減することができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様のセンサ装置は、複数の画素と、前記複数の画素による測定信号を補正する、制御装置と、を含む。前記複数の画素の各画素は、フォトディテクタと、前記フォトディテクタからの信号を出力する画素回路とを含む。前記制御装置は、前記複数の画素のうちの一つの画素の未知の測定信号を取得し、複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の測定信号の統計値と前記一つの画素の測定信号から得られる値との比、に基づく補正係数を使用して、前記一つの画素による前記未知の測定信号を補正する。
【0008】
本開示の一態様は、センサ装置の制御装置による画素の測定信号の補正で使用される、補正係数を決定する方法である。前記センサ装置の複数の画素の各画素は、フォトディテクタと、前記フォトディテクタからの信号を出力する画素回路とを含む。前記方法は、前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の各画素の測定信号を取得し、前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の測定信号の統計値を決定し、前記複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、前記複数の画素の測定信号の統計値と前記複数の画素の各画素の測定信号とに基づいて、前記複数の画素の各画素の補正係数を決定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、フォトディテクタからの信号に含まれるノイズを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に関わるイメージセンサの構成例を示したブロック図である。
【
図4】関連技術によるノイズ低減処理の演算方法を示す信号フローチャートである。
【
図5】測定信号に対する関連技術によるノイズ低減処理の実験結果を示す。
【
図6】測定信号に対する関連技術によるノイズ低減処理の実験結果を示す。
【
図7】本明細書の一実施形態に係る、ノイズ低減処理の演算方法を示す信号フローチャートである。
【
図8】本明細書の一実施形態に係る、重み係数の決定方法を示す信号フローチャートである。
【
図9】ノイズ除去前の画素の実測データの例を示す。
【
図10】
図4を参照して説明した関連技術による補正処理の結果を示す。
【
図11】
図7及び8を参照して説明した本明細書の一実施形態による補正処理の結果を示す。
【
図12】
図10における破線矩形で囲まれた部分と、
図11において破線矩形で囲まれた部分の、照射光強度とノイズ実行電圧との関係を示す。
【
図13】実施形態2において、照射光強度とノイズ実行電圧との関係を示す。
【
図14】フォトダイオードを含む画素の光電変換特性の例を示す。
【
図16】センサ付OLEDパネルの断面構造を模式的に示す。
【
図17】光センサアレイの断面構造例を模式的に示す。
【
図18】X線センサパネルの断面構造を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本開示のイメージセンサについて図面を参照して詳細に説明する。各図面における各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するために適宜変更して記載している。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものであり、必ずしも切断面を意味するものではない。また、スイッチング素子あるいは増幅素子として用いられる非線形素子についてトランジスタという呼称を用いるが、トランジスタはThin Film Transistor(TFT)を含む。
【0012】
本明細書においては、特に言及がない場合、光という語は、可視光及び可視光より波長の短い又は長い電磁波を含む。例えば、赤外線や紫外線の他、より波長の短い電磁波であるX線が含まれる。つまり、フォトディテクタ又は光電変換素子は、特に言及がない場合、任意の波長の電磁波を電気信号に変換する素子である。
【0013】
<実施形態1>
図1は実施形態1に関わるイメージセンサの構成例を示したブロック図である。本開示のイメージセンサ10は、センサ基板11と制御システムを含む。制御システムは、駆動回路14、信号検出回路16、及び主制御装置18を含む。
【0014】
センサ基板11は、絶縁性基板(たとえばガラス基板)と、絶縁性基板上に画素13が縦横のマトリクス状に配置された画素領域12を含む。画素領域12には、検出光である放射線を受けて蛍光を発するシンチレータが配置されている場合がある。駆動回路14は、画素13による光検出のため、画素13を駆動する。信号検出回路16は、信号線それぞれからの信号を検出する。主制御装置18は、駆動回路14及び信号検出回路16を制御する。
【0015】
本実施形態において、駆動回路14及び信号検出回路16は、センサ基板11とは別の部品として形成されている。これら回路は、それぞれ異なるICチップに実装されていてもよく、これら回路の一部又はすべてが同一のICチップに実装されていてもよく、一つの回路が複数のICチップに実装されてもよい。
【0016】
主制御装置18は、例えば、計算機構成を有することができる。
図2は、主制御装置18の構成例を模式的に示す。
図2の構成例において、主制御装置18は、プロセッサ201、メモリ(主記憶装置)202、補助記憶装置203、出力装置204、入力装置205、及び通信インタフェース(I/F)207、及びAD変換インタフェース(ADC)208を含む。上記構成要素は、バスによって互いに接続されている。メモリ202、補助記憶装置203又はこれらの組み合わせは記憶装置であり、プロセッサ201が使用するプログラム及びデータを格納している。
【0017】
メモリ202は、例えば半導体メモリから構成され、主に実行中のプログラムやデータを保持するために利用される。プロセッサ201は、メモリ202に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。これにより、様々な機能部が実現される。
【0018】
補助記憶装置203は、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの大容量の記憶装置から構成され、プログラムやデータを長期間保持するために利用される。
【0019】
プロセッサ201は、単一の処理ユニットまたは複数の処理ユニットで構成することができ、単一もしくは複数の演算ユニット、又は複数の処理コアを含むことができる。プロセッサ201は、1又は複数の中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロ計算機、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ステートマシン、ロジック回路、グラフィック処理装置、チップオンシステム、及び/又は制御指示に基づき信号を操作する任意の装置として実装することができる。
【0020】
補助記憶装置203に格納されたプログラム及びデータが起動時又は必要時にメモリ202にロードされ、プログラムをプロセッサ201が実行することにより主制御装置18の各種処理が実行される。したがって、以下においてプログラムにより実行される処理は、プロセッサ201又は主制御装置18による処理である。
【0021】
入力装置205は、ユーザが主制御装置18に指示や情報などを入力するためのハードウェアデバイスである。出力装置204は、入出力用の各種画像を提示するハードウェアデバイスであり、例えば、表示デバイス又は印刷デバイスである。AD変換インタフェース208は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するインタフェースである。通信I/F207は、ネットワークとの接続のためのインタフェースである。入力装置205及び出力装置204は省略されてもよく、主制御装置18は、ネットワークを介して、端末からアクセスされてもよい。
【0022】
主制御装置18の機能は、1以上のプロセッサ及び非一過性の記憶媒体を含む1以上の記憶装置を含む1以上の計算機からなる計算機システムに実装することができる。複数の計算機はネットワークを介して通信する。例えば、主制御装置18の複数の機能の一部が一つの計算機に実装され、他の一部が他の計算機に実装されてもよい。
【0023】
図3は一つの画素13の回路構成例を示した回路図である。なお、
図3は画素回路の一例を示すものであって、他の回路構成が利用されてよい。本開示のイメージセンサの一つの画素13は、4つのトランジスタTR1、TR2、TR3、TR4とフォトダイオードPDとを含んでいる。
【0024】
フォトダイオードPDは、フォトディテクタ(光源変換素子とも呼ぶ)の例である。ここで示した例では、フォトダイオードPDのアノード端子がトランジスタTR1のゲート端子とトランジスタTR3のドレイン端子とに接続され、カソード端子が電源線PAに接続されている。トランジスタTR1のドレイン端子は電源線PPに接続され、ソース端子はトランジスタTR2のドレイン端子に接続されている。
【0025】
トランジスタTR2のゲート端子は制御線Gnに接続され、ソース端子は信号線Dmに接続されている。トランジスタTR3のゲート端子は制御線Rnに接続され、ソース端子は電源線PBに接続されている。トランジスタTR4のゲート端子はバイアス線BIに接続され、ドレイン端子は信号線Dmに接続され、ソース端子は電源線VEに接続されている。電源線VEの電源電位は、電源線PPの電源電位より低い。バイアス線BIは、一定のバイアス電位をトランジスタTR4のゲート端子に与える。
【0026】
フォトダイオードPDは光を電荷に変換する機能を実現する。トランジスタTR1(増幅トランジスタ)は、フォトダイオードPDの一端の電位を増幅する機能を実現する。トランジスタTR2は、出力を制御する機能を実現する。トランジスタTR3はフォトダイオードPDの電位をリセットする機能を実現する。トランジスタTR4は、抵抗として機能する。信号線Dmは、フォトダイオードPDによる光の検出信号Voutを信号検出回路16に伝送する。駆動回路14は、
図3に示す制御線及び電源線に、制御信号及び電源電位を供給する。
【0027】
以下において、主制御装置18により実行される処理を説明する。主制御装置18は、センサ基板11の各画素13による検出光の測定信号を補正し、そのノイズを低減する。画素13からの測定信号(出力信号)に含まれるノイズは、時間的に変動するライダムノイズと、時間変動しない固定パタンノイズ(FPN)に分類される。
【0028】
FPNは、光入射が無い状態で観測される暗時FPNと、入射光強度に依存して大きさが変化する明時FPNの2種類が存在する。暗時FPNは、画素回路や読み出し回路の入出力特性のばらつきに起因する。一方、明時FPNは、フォトダイオードの特性のばらつきに起因し、入射光強度(フォトン数)の増大とともにノイズ強度は増大することが知られている。FPNは、時間的には変動せず、画素毎の特性ばらつきとして空間的に固定されている。以下に説明する処理は、暗時FPN及び明時FPNを低減する。なお、以降、暗時FPNを加算性FPN、明時FPNを乗算性FPNとも呼ぶ。
【0029】
本明細書の一実施形態は、フォトダイオードによる測定信号において下記のノイズモデルを仮定する。
Sx=So+A*So+Rd (1)
【0030】
Sxは、ノイズを含む画素による測定信号である。Rdは、暗状態での測定信号である。これは、(加算性FPN)である。Soは、ノイズを含まない真の光検出信号である。Aは、乗算性FPN係数である。主制御装置18は、画素13から受け取った測定信号Sxから、加算性FPN及び乗算性FPNを除去して、真の光検出信号Soを得るために、測定信号Sxを補正する。
【0031】
本明細書に実施形態のノイズ低減のための信号処理を説明する前に、関連技術のノイズ低減のための信号処理を説明する。関連技術は、3つの測定データを準備する。それらは、暗状態での測定信号Rd、均一光照射時の測定信号Rl、そして、実利用時の真の光検出信号Soを抽出すべき測定信号Sxである。
【0032】
図4は、関連技術によるノイズ低減処理の演算方法を示す信号フローチャートである。関連技術は、全画素13の暗状態の測定信号Rdを取得し、その後、対象の一つの画素13の補正対称の測定信号Sxを取得する。測定における暗状態は、理想的には、画素13の検出限界未満の光が存在する状態であるが、設計に応じた閾値未満の強度の光が存在する状態でよい。
【0033】
関連技術は、対象画素13の測定信号Sxから、対象画素13の暗状態の測定信号Rdを減算して、信号S1を得る(301)。
S1=Sx-Rd (2)
これにより、対象画素13の測定信号Sxから、加算性FPNが除去される。
【0034】
関連技術は、さらに、均一光(参照光)照射時(明状態)の全画素13それぞれの測定信号Rlから、それら画素13の暗状態での測定信号Rdを減算して、全画素13それぞれの信号R1を得る(302)。均一光強度は、画素13の検出可能範囲内にあり、暗状態で存在する光の強度よりずっと高い。
R1=Rl-Rd (3)
これにより、均一光照射時の測定信号Rlから、加算性FPNが除去される。
【0035】
関連技術は、対象画素13の信号S1を、対象画素13の信号R1で除算する(303)。関連技術は、さらに、全画素13の信号R1の平均値<R1>を算出する(304)。さらに、関連技術は、次の演算により、信号S1に含まれる乗算性FPNを除去する(305)
So^=(S1/R1)*<R1> (4)
So^は、ノイズを含まない真の光検出信号Soの推定値である。
【0036】
関連技術が、S1^を真の光検出信号Soと推定する理由を説明する。上記ノイズモデルに従えば、次の関係が成立する。
S1=So*(1+A) (5)
同様に、次の関係が成立する。
R1=Ro*(1+A) (6)
Roは、測定信号Rlの真の光検出信号である。
【0037】
関連技術は、信号R1の全画素の平均値<R1>を、信号R1の真の信号値Roと推定する。
Ro=<R1>*(1+A) (7)
関連技術は、数式(7)から、乗算性FPN係数Aを算出し、式(5)に代入することで、測定信号Sxの信の光検出信号Soの推定値So^を算出する。
【0038】
図5及び
図6は、測定信号Sxに対する関連技術によるノイズ低減処理の実験結果を示す。
図5は、4つの異なる強度の均一光の露光条件で測定された、測定信号(Raw Data)を示す。
図5のグラフにおいて、横軸は行又は列方向における画素位置を示し、縦軸は画素の出力電圧を示す。
【0039】
測定信号Sa、Sb、Sc、Sdの照射光強度は、これらの順で、増加する。信号Sdが最も光強度が大きいときの測定信号であり、信号Saが最も光強度が小さいときの測定信号である。
図5に示すように、各測定信号は、大きなノイズを示す。
【0040】
図6は、測定信号Saを参照信号Rlとし、式(4)を用いて、測定信号Sa、Sb、Sc、Sdのノイズを低減した結果Soa^、Sob^、Soc^、Sod^を示す。信号Sa^に示すように、測定信号Saのノイズは、完全に除去される。これは、式(4)において、S1=R1であるからである。
【0041】
しかし、光照射レベルが測定信号Saの光照射レベルから外れるにしたがって、測定信号Sb、Sc、SdのFPNが増大する。そのため、例えば、信号Sd^が示すように、参照光信号Saから大きく外れた露光条件では、式(4)により処理した信号において、乗算性FPNが除去しきれない。
【0042】
次に、本明細書の一実施形態に係る、フォトダイオードの測定信号のノイズ低減のための信号処理を説明する。本明細書の一実施形態は、強度が異なる複数の参照光信号(参照光の測定信号)に基づく補正係数を使用して、測定信号を補正する。これにより、効果的に測定信号からノイズを除去することができる。複数の参照光の波長成分は例えば同一でよい。参照光の強度及び波長成分は、イメージセンサ10が検出することを目的とする光に特性に応じて適切に決定される。
【0043】
主制御装置18は、異なる強度の複数参照光に基づく補正係数を使用して、各画素13からの光測定信号Sxの補正処理を実行する。これにより、各画素13の測定信号Sxのノイズ成分を効果的に低減し、真の光信号Soを推定することができる。式(1)のノイズモデルが示すように、測定信号Sxは、加算性FPN及び乗算性FPNを有する。
【0044】
以下に説明する例は、加算性FPN及び乗算性FPNを低減する。ここでは、複数参照光に基づく係数は、乗算性ノイズを低減するため使用される。加算性FPNが小さい場合、加算性FPNを低減するための演算は省略されてもよい。主制御装置18は、次の式によって、各画素13の測定信号Sxを補正して、真の信号の推定値So^を得ることができる。
So^=(Sx-Rd)*f (8)
【0045】
Rdは、暗状態での各画素13の測定信号Rdであり、加算性FPNを低減するための補正係数である。fは乗算性FPNを低減するための補正係数であり、強度が異なる複数参照光での測定結果に基づき決定される。本明細書の一実施形態において、特定の画素の補正係数は、複数の異なる強度を持つ参照光それぞれでの、複数の画素の測定信号の統計値と、上記特定の画素の測定信号から得られる値との比、に基づく。本明細書の一実施形態において、補正係数は、複数の異なる強度を持つ参照光での上記比と重み係数の線形結合で表すことができる。
【0046】
実利用時、主制御装置18は、各画素13の補正係数Rd及びfを予め保持しており、各画素13の測定信号Sxを補正係数Rd及びfを使用して補正し、真の光検出信号の推定値So^を取得する。なお、主制御装置18は、fを計算するための他の係数を保持していてもよい。
【0047】
以下において、補正係数fの決定方法を説明する。例えば、主制御装置18又はイメージセンサ10の製造装置が、補正係数fを決定することができる。
図7は、本明細書の一実施形態に係る、ノイズ低減処理の演算方法を示す信号フローチャートである。
【0048】
図7のフローチャートは、各対象画素13について、補正係数fの計算方法及び補正係数Rd、fを使用した測定信号Sxの補正方法を示す。以下においては、主制御装置18が、
図7が示す処理を実行するものとする。
図4を参照した一つの参照信号についての説明は、
図7における各参照光についての処理に適用し得る。
【0049】
主制御装置18は、暗状態の全画素13の測定信号Rd、及び異なる強度の第1~第n参照光(均一光)それぞれでの、全画素13それぞれの測定信号Rl1~Rlnを取得する。nは、2以上の整数である。測定信号Rd、Rl1~Rlnは一部の複数画素13からのみ取得されてもよい。
【0050】
主制御装置18は、全画素13の各画素13について、その測定信号Rl1からその測定信号Rdを減算して、R1を得る(351)。これにより、均一光照射時の測定信号Rl1から、加算性FPNが除去される。
R1=Rl1-Rd (9)
【0051】
さらに、主制御装置18は、全画素13のR1の平均値<R1>を算出する(352)。そして、主制御装置18は、平均値<R1>を、補正対象画素13の信号R1で除算する(353)。なお、平均値と異なる統計値、例えば、中央値が使用されてもよい。
<R1>/R1 (10)
【0052】
主制御装置18は、信号R1について実行した処理を、他の参照光の信号R2~Rnに対しても実行する。例えば、主制御装置18は、測定信号R2について、処理354、355及び356を実行する。また、主制御装置18は、測定信号Rnについて、処理357、358及び359を実行する。
【0053】
次に、主制御装置18は、予め算出して保持している重み係数k1~knを使用して、<R1>/R1~<Rn>/Rnの加重平均を算出する(360)。重み係数k1~knは正規化されており、それらの総計は1であるとする。
Σkm*<Rm>/Rm (11)
【0054】
mは、1~nのいずれかである。この加重平均が、補正係数fとして使用される。このように、強度が異なる参照光の測定信号を使用することで、様々な強度を取り得る測定信号Sxをより適切に補正することができる。また、参照光それぞれに対して重み係数を与えることで、測定信号Sxをより適切に補正することができる。重み係数の値は、イメージセンサ10に依存するが、通常、少なくとも一部の重み係数は異なる値である。
【0055】
主制御装置18は、対象の画素13の測定信号Sxから、暗状態での当該画素13の測定信号Rdを減算して、信号S1を得る(365)。
S1=Sx-Rd (12)
これにより、対象の測定信号Sxから、加算性FPNが除去される。
【0056】
次に、主制御装置18は、係数fと信号S1の積算を行い、対象画素13の真の光検出信号の推定値So^を算出する(366)。
So^=S1*f (13)
【0057】
上述のように、本明細書の一実施形態は、強度の異なる複数の均一光照射参照測定信号から、画素毎に固有の乗算性ノイズ因子を導出し、その因子を用いて、画素毎の未知の測定信号を補正する。これにより、広い照射強度範囲でノイズを効果的に低減することができる。
【0058】
以下において、重み係数k1~knの決定方法を説明する。本明細書の一実施形態は、均一参照光照射時の全画素信号のノイズ実効電圧が最小となるように、重み係数k1~knを決定する。なお、重み係数は、イメージセンサ10の設計に応じて適切に設定し得る。主制御装置18又はイメージセンサ10の製造装置が、重み係数k1~knを決定し得る。以下において、主制御装置18が重み係数k1~knを決定するものとする。
【0059】
図8は、本明細書の一実施形態に係る、重み係数の決定方法を示す信号フローチャートである。主制御装置18は、全画素13の各画素13について、その測定信号Rl1からその測定信号Rdを減算して、R1を得る(401)。
R1=Rl1-Rd (14)
【0060】
次に、主制御装置18は、全画素13のR1の平均値<R1>を算出する(402)。さらに、主制御装置18は、各画素13の信号R1から、平均値<R1>を減算する(403)。そして、主制御装置18は、全画素の各画素13について、信号R1と平均値<R1>との間の差の二乗値(R1-<R1>)2を算出する(404)。
【0061】
主制御装置18は、信号R1について実行した処理を、他の参照光の信号R2~Rnに対しても実行する。例えば、主制御装置18は、信号R2について、処理405から408を実行する。また、主制御装置18は、信号Rnについて、処理409から412を実行する。
【0062】
次に、主制御装置18は、全画素、全参照光レベルの信号R1~Rnについて、全画素平均からの偏差の二乗の加重平均を計算する(415)。より具体的には、主制御装置18は、各画素13について、(Rm-<Rm>)2と重み係数kmの積和(線形結合)を計算し、さらに、全画素13の計算した値の和を計算する。ここで、mは1からnの任意の整数であり、重み係数は、正規化されている。
ΣΣkm*(Rm-<Rm>)2 (15)
【0063】
式(15)において、一つ目のΣは、全画素についてのSUMを示す。2つ目のΣは各画素13におけるn個の全参照光についてSUMを示す。主制御装置18は、式(15)で求めた値を最小化する最適化ループによって、重み係数k1~knを決定する(416)。
【0064】
以下において、本明細書の一実施形態の画素13の測定信号の補正書処理の効果を説明する。
図9は、ノイズ除去前の画素13の実測データの例を示す。
図9のグラフにおいて、横軸は画素位置を示し、縦軸は画素13からの出力電圧(V)を示す。
図9は、4つの照射光の測定信号Rl1~Rl4を示す。それら照射光の光源強度(a.u.)は、120、160、200、240である。
【0065】
測定は、1層又は2層の透明PETフィルムで構成された光学変調フィルムによって形成した疑似光信号を、画素アレイに照射した。
図9において、鋭いピークは、フィルム側面の影響で光強度が低下していることを示す。出力電圧が小さいほど、光照度は大きいことを意味する。
【0066】
図10は、
図4を参照して説明した関連技術による補正処理の結果を示す。参照光は、Rl1であり、その光強度は120である。
図11は、
図7及び8を参照して説明した本明細書の一実施形態による補正処理の結果を示す。4つの照射光Rl1~Rl4の全てが、補正係数を決定するための参照光である。
【0067】
図12は、
図10における破線矩形501で囲まれた部分と、
図11において破線矩形502で囲まれた部分の、照射光強度とノイズ実行電圧との関係を示す。
図12のグラフにおいて、横軸は参照光の照射光強度を示し、縦軸はノイズの実効電圧(V)を示す。破線511は、関連技術の補正処理後のノイズを示し、実線512は本明細書の一実施形態の補正処理後のノイズを示す。照射光Rl1~Rl4の強度は、上述のように、それぞれ、120、160、200及び240である。
【0068】
図12に示すように、関連技術の補正処理結果は、参照光Rl1より照射光強度が離れるにしたがって増加するノイズの実効電圧を示す。一方、本明細書の実施形態の補正処理結果は、広い照射光強度において大きなノイズ低減効果を示している。このように、本明細書の実施形態に係る補正処理は、広い照射強度範囲でノイズを効果的に低減することができる。
【0069】
<実施形態2>
以下において、本明細書の一実施形態に係る、フォトダイオードの測定信号のノイズ低減のための信号処理を説明する。以下に説明するノイズ低減処理は、乗算性FPNを低減する補正係数を、測定信号の大きさに基づいて、適応的に決定する。これにより、広い照射強度範囲でノイズを効果的に低減することができる。
【0070】
本実施形態の主制御装置18は、実施形態1と同様に、各画素13の測定信号Sxを補正して、真の信号の推定値So^を得ることができる。
So^=(Sx-Rd)*f (16)
【0071】
式(16)において、測定信号Sx及び加算性FPNの補正係数Rdは、実施形態1の式(8)と同様である。つまり、Rdは、暗状態での各画素13の測定信号である。本実施形態の乗算性FPNの補正係数fの導出方法が、実施形態1の導出方法と異なる。他の点は、実施形態1と同様である。以下においては、補正係数fの導出方法を説明する。
【0072】
本実施形態のノイズ低減処理は、実施形態1と同様に、複数の強度が異なる参照光の照射により得られる複数の参照信号を使用して、補正係数を決定する。以下に説明する例は、2つの均一参照光の参照信号を使用する。3以上の強度が異なる参照光の測定信号を使用することも可能である。実施形態1と同様に、以下の信号が取得される。
【0073】
Sx :補正対象の一つの画素の測定信号
Rl1:各画素の参照光1における測定信号
Rl2:各画素の参照光2における測定信号
Rd :各画素の暗状態における測定信号
【0074】
主制御装置18は、対象の画素13の測定信号Sxから、暗状態での当該画素13の測定信号Rdを減算して、信号S1を得る。
S1=Sx-Rd (17)
これにより、対象の測定信号Sxから、加算性FPNが除去される。
【0075】
主制御装置18は、全画素13の各画素13について、その測定信号Rl1からその測定信号Rdを減算して、R1を得る。これにより、均一光照射時の測定信号Rl1から、加算性FPNが除去される。
R1=Rl1-Rd (18)
【0076】
さらに、主制御装置18は、全画素13の各画素13について、その測定信号Rl2からその測定信号Rdを減算して、R2を得る。これにより、均一光照射時の測定信号Rl2から、加算性FPNが除去される。
R2=Rl2-Rd (19)
【0077】
主制御装置18は、信号R1の全画素13の平均<R1>及び、信号R2の全画素13の平均<R2>を決定する。これらは、一部の画素の平均や中央値等でもよいことは、実施形態1と同様である。次に、主制御装置18は、各画素13について、未知の強度を有する信号S1に依存して変化する重み付け係数を次の式で計算する。下記式は、線型補間によって、係数を決定する。<R1>が<R2>より大きいとして、未知信号S1が<R1>に等しいとき、k1=KMAX、k2=KMINとなる。未知信号S1が<R2>に等しいとき、k1=KMIN、k2=KMAXとなる。<R1> >S1> <R2>のとき、k1、k2はKMAXとKMINの間の値を取る。
【0078】
k1=KMIN
+(S1-<R2>)*(KMAX-KMIN)/(<R1>-<R2>)
k2=KMAX
-(S1-<R2>)*(KMAX-KMIN)/(<R1>-<R2>)
(20)
KMAX及びKMINは定数であり、KMAX>KMINである。
【0079】
主制御装置18は、下記式に従って、積算性VPNに対する補正係数fを算出する。
f=(k1*<R1>/R1+k2*<R2>/R2)/(k1+k2) (21)
【0080】
主制御装置18は、係数fと信号S1の積算を行い、対象画素13の真の光検出信号の推定値So^を算出する。
So^=S1*f (22)
【0081】
例えば、最も簡単には、<R1>を最大露光量条件、<R2>を最小露光量条件と設定して、KMAX=1、KMIN=0とすることで、k1、k2は0と1の間の値となる。ただし、KMAX、KMINの値は、これらに限られない。KMAX=1、KMIN=0とした場合、<R2>として、最小露光条件より大きい値を設定した場合、S1が<R2>より小さい値となったときに、k1が負値となるケースが生じ得る。
【0082】
k1、k2は正値であることが必要なため、そのような場合には、例えば、KMIN=1、KMAX=2として、k1が負値とならないようにする。さらに、全体のノイズ実効電圧が最小となるように最適化した値をKMAX、KMINに使用してもよい。
【0083】
均一参照信号がn個(3以上)の場合でも、ラグランジュ補間法を用いて、n個の係数k1~knを定めればよい。一例として、n=3の場合を考える。<R3>を最大露光量条件、<R1>を最小露光量条件とする。<R3> > <R2> > <R1>を満たす第3の露光量条件<R2>を設定し、定数KMAX、KMINと、KMAX>KMID>KMINを満たす第3の定数KMIDを導入する。この時、信号強度S1に対するk1、k2、k3は2次のラグランジュ補間法により次のように決定すればよい。
【0084】
k1={(S1-R2)(S1-R3)/(R1-R2)/(R1-R3)}KMAX+
{(S1-R1)(S1-R3)/(R2-R1)/(R2-R3)}KMID+
{(S1-R1)(S1-R2)/(R3-R1)/(R3-R2)}KMIN
k2={(S1-R2)(S1-R3)/(R1-R2)/(R1-R3)}KMIN+
{(S1-R1)(S1-R3)/(R2-R1)/(R2-R3)}KMAX+
{(S1-R1)(S1-R2)/(R3-R1)(R3-R2)}KMIN
k3={(S1-R2)(S1-R3)/(R1-R2)/(R1-R3)}KMIN+
{(S1-R1)(S1-R3)/(R2-R1)/(R2-R3)}KMID+
{(S1-R1)(S1-R2)/(R3-R1)/(R3-R2)}KMAX
【0085】
例えば、主制御装置18は、<R1>、<R2>、R1、R2、Rd、KMAX、KMINを予め保持していてもよい。主制御装置18は、これらの値と、画素13による測定信号Sxから、重み係数k1及びk2を算出し、さらに、補正係数fを算出することができる。実施形態1において説明したように、主制御装置18が、参照光の測定を行い、各画素13のRl1、Rl2を取得してもよい。
【0086】
図13は、照射光強度とノイズ実効電圧との関係を示す。
図13のグラフにおいて、横軸は参照光の照射光強度を示し、縦軸はノイズの実効電圧(V)を示す。破線551は、関連技術の補正処理後のノイズを示す。実線552は実施形態1の補正処理後のノイズを示す。実線553は実施形態2の補正処理後のノイズを示す。当該補正処理におけるKMAXは1.52、KMINは0.24である。
【0087】
図13に示すように、実施形態2の補正処理結果は、実施形態1の補正処理結果と比較し、広い照射強度範囲でさらに安定したノイズ低減効果を示す。
【0088】
<他の実施形態>
図14は、フォトダイオードを含む画素の光電変換特性の例を示す。
図15は、画素のノイズ電圧特性の例を示す。
図14に示すように、出力電圧は、入射光強度の増大と共に減少する。
図15に示すように、ノイズ電圧は入射光強度の増大と共に増大する。つまり、乗算性ノイズが存在することが確認できる。上述のように、本明細書の実施形態の信号補正方法は、加算性ノイズに加えて、乗算性ノイズを効果的に抑制することができる。
【0089】
以下において、本明細書の実施形態に係る、測定信号の補正処理を適用可能ないくつかの装置を説明する。本明細書の実施形態に係る補正処理は、それぞれが光電変換素子を含む複数の画素を含む装置に適用することができる。画素レイアウトは、1次元又は2次元であってもよい。
【0090】
図16は、センサ付OLED(Organic Light Emitting Diode)パネルの断面構造を模式的に示す。センサ付OLEDパネルは、指615の指紋を検出することができる。センサ付OLEDパネルは、基板であるラミネートフィルム601上に、光センサアレイ602を含む。光センサアレイ602は、複数のPINダイオード603を含み、各PINダイオード603は、各画素に含まれる。上記実施形態のノイズ低減処理は、光センサアレイ602の測定信号に適用し得る。
【0091】
光センサアレイ602上に、OCA(Optical Clear Adhesive)604によって、ラミネートフィルム605が接着されている。ラミネートフィルム601上に、ピンホール606のアレイ、TFTアレイ607、そして複数の発光層608が積層されている。発光層608は、OLEDの発光層であり、TFTアレイ607が、発光層608の発光を制御する。
【0092】
発光層608は、薄膜封止層609で覆われ、その上に、偏光板610が積層されている。偏光板610上に、OCA611によって、カバーガラス612が接着されている。指615は、カバーガラス612の表面に押し当てられる。
【0093】
図17は、光センサアレイ602の断面構造例を模式的に示す。基板SUBは、
図16に示すラミネートフィルム601である。
図17は、2つのTFTと一つのPINダイオードを例として示す。
【0094】
基板SUB上に下地層UCが形成され、その上にボトムゲート電極BGが配置されている。
図17は、2つのTFTの一方のボトムゲート電極を例として符号BGで指示している。ボトムゲート電極BGはゲート絶縁層GI2で覆われている。半導体層OXがゲート絶縁層GI2上に形成されている。
図17の例において、半導体層OXは酸化物半導体で形成さている。なお、半導体材料は任意である。
図17は、2つのTFTの一方の半導体層を例として符号OXで指示している。
【0095】
ゲート絶縁層GI1は、半導体層OXを覆っている。ゲート絶縁層GI1に、トップゲート電極TGを含む金属層が形成されている。
図17は、2つのTFTの一方のトップゲート電極を例として符号TGで指示している。
【0096】
トップゲート電極TGを含む金属層は、層間絶縁層ILDで覆われている。層間絶縁層ILD上に、金属層M2が形成されている。金属層M2は、TFTのソース電極及びドレイン電極に加えて、絶縁層ILD又は絶縁層ILD、GI1を貫通するコンタクト部を含む。
【0097】
金属層M2は、パッシベーション層PV1で覆われている。パッシベーション層PV1上に、金属層M3が形成されている。金属層M3は、配線層に加えて、絶縁層PV1を貫通するコンタクト部を含む。
【0098】
金属層M3は、平坦化層PLNで覆われている。平坦化層PLN上に、金属層4が形成されている。金属層M4は、PINダイオードの下部電極に加えて、絶縁層PLNを貫通するコンタクト部を含む。
【0099】
金属層4の一部はパッシベーション層PV2及びその上のパッシベーション層PV3で覆われている。パッシベーション層PV2、PV3に形成されている開口内で、金属層4の下部電極上に半導体積層PINが形成されている。半導体積層は、P型半導体層、N型半導体層、及びそれらの間の真正半導体層で構成されている。
【0100】
上部電極ITOが、半導体積層PIN上に配置されている。上部電極ITOは、検出する光に対して透明である。共通電極COMが、PINダイオードの上部電極ITOに接続されている。共通電極COMは、全てのPINダイオードに接続されている。最上層のパッシベーション層PV4は、上部電極ITO及び共通電極COMを覆う。
【0101】
図18は、X線センサパネルの断面構造を模式的に示す。X線センサパネルは、医療、産業用非破壊検査分野における放射線撮影装置に利用可能である。X線センサパネルは、ガラス基板651上に、光センサアレイ652を含む。光センサアレイ652は、複数のPINダイオード653を含み、各PINダイオード603は、各画素に含まれる。上記実施形態のノイズ低減処理は、光センサアレイ602の測定信号に適用し得る。
【0102】
光センサアレイ652は、保護膜ム654で覆われている。保護膜上に、X線変換膜(シンチレータ)655が積層されている。X線変換膜655は、入射したX線671を、PINダイオード653により検出可能な可視光672に変換する。光センサアレイ652の各画素は、X線変換膜655により変換された可視光の強度を測定する。
【0103】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 イメージセンサ
11 センサ基板
13 画素
14 駆動回路
16 信号検出回路
18 主制御装置
201 プロセッサ
202 メモリ
203 補助記憶装置
204 出力装置
205 入力装置
207 通信インタフェース
208 AD変換インタフェース