(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002434
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】上肢機能測定器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20231228BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20231228BHJP
A63B 23/16 20060101ALI20231228BHJP
A63B 23/14 20060101ALI20231228BHJP
A63B 21/045 20060101ALI20231228BHJP
A61B 5/22 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61B5/11 230
G01L3/10 311
A63B23/16
A63B23/14
A63B21/045
A61B5/22 280
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101598
(22)【出願日】2022-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】515263989
【氏名又は名称】株式会社計測工業
(71)【出願人】
【識別番号】522254033
【氏名又は名称】今井 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】芝 雄大
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮太
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB11
4C038VB12
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】 上肢機能の変化を正しく評価することができる上肢機能測定器を提供する。
【解決手段】 本体10と、本体10に固定された固定軸20と、使用者の上肢による操作により回転自在となるように本体10に支持された回転軸30と、回転軸30のねじりトルクが所定の開封トルクに達するまで固定軸20と回転軸30とを相対回転不能に連結するトルククラッチ40と、固定軸20または回転軸30のねじりトルクを検出するトルクセンサ50とを備える上肢機能測定器1である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に固定された固定軸と、
使用者の上肢による操作により回転自在となるように前記本体に支持された回転軸と、
前記回転軸のねじりトルクが所定の開封トルクに達するまで前記固定軸と前記回転軸とを相対回転不能に連結するトルククラッチと、
前記固定軸または前記回転軸のねじりトルクを検出するトルクセンサとを備える上肢機能測定器。
【請求項2】
前記本体は、ボトル形状の容器からなり、内部に前記固定軸が収容されており、
前記回転軸は、一端側が前記トルククラッチを介して前記固定軸に連結され、前記本体の外部に配置されるボトルキャップ状の操作部が他端側に固定されている請求項1に記載の上肢機能測定器。
【請求項3】
前記トルクセンサは、ひずみゲージ式であり、前記固定軸の外周面に貼付されている請求項1または2に記載の上肢機能測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢機能測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
手や指などの機能回復を目的とした上肢用の訓練器具が従来から知られている。例えば、特許文献1には、基台に設けられた円筒部材にキャップ部材を螺合し、このときの回転動作により手首部分の障害を回復させる機能訓練装置が開示されている。この機能訓練装置は、キャップ部材の回転開始から停止までの所要時間を計測器により計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の機能訓練装置は、キャップ部材の回転動作の所要時間から機能回復の程度を把握できるとされているが、単なる所要時間の計測のみでは上肢機能の回復や向上を正しく評価することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上肢機能の変化を正しく評価することができる上肢機能測定器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、本体と、前記本体に固定された固定軸と、使用者の上肢による操作により回転自在となるように前記本体に支持された回転軸と、前記回転軸のねじりトルクが所定の開封トルクに達するまで前記固定軸と前記回転軸とを相対回転不能に連結するトルククラッチと、前記固定軸または前記回転軸のねじりトルクを検出するトルクセンサとを備える上肢機能測定器により達成される。
【0007】
この上肢機能測定器において、前記本体は、ボトル形状の容器からなり、内部に前記固定軸が収容されていることが好ましく、前記回転軸は、一端側が前記トルククラッチを介して前記固定軸に連結され、前記本体の外部に配置されるボトルキャップ状の操作部が他端側に固定されていることが好ましい。
【0008】
前記トルクセンサは、ひずみゲージ式であり、前記固定軸の外周面に貼付されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上肢機能測定器によれば、上肢機能の変化を正しく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る上肢機能測定器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、発明の一実施形態に係る上肢機能測定器の正面図であり、
図2は、
図1に示す上肢機能測定器の断面図である。
図1および
図2に示すように、上肢機能測定器1は、本体10、固定軸20、回転軸30、トルククラッチ40およびトルクセンサ50を、主な構成要素として備えている。
【0012】
本体10は、ボトル形状の容器からなり、上部に開口部12が形成されている。開口部12の上方には、平面視が円形のボトルキャップ状の操作部31が配置される。
図1に示すように、上肢機能測定器1は、本体10および操作部31によって、全体として飲料用のペットボトルを模した形状を有している。
【0013】
図2に示すように、固定軸20は、本体10の内部に収容されており、下端部が本体10の底部11に設けられた固定部材21に挟持されて、本体10の底部11の中央から鉛直に起立するように固定されている。
【0014】
回転軸30は、固定軸20の上方に同軸状に配置されており、下端部がトルククラッチ40を介して固定軸20の上部に連結されている。回転軸30の上部は、本体10の開口部12を介して上方に突出しており、本体10の外部に配置される上記の操作部31が固定されている。回転軸30は、軸受13,14によって、本体10に回転自在に支持されている。
【0015】
操作部31は、本実施形態では親指と人差し指とで摘める程度の大きさとしているが、掌全体で掴める程度、あるいは、両手で把持できる程度の大きさ・形状であってもよく、上肢の運動機能を測定しようとする部位(指、手、腕など)に応じて適宜定めることができる。操作部31は、必ずしも回転軸30と別体である必要はなく、回転軸30の上部自体を操作部31とすることもできる。
【0016】
トルククラッチ40は、固定軸20が貫通する貫通孔がそれぞれ形成された受板41および第1クラッチ板42と、これら受板41および第1クラッチ板42の間に保持されるクラッチばね43とを備えている。受板41は、貫通孔の内周面に、固定軸20の外周面に形成された雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成されており、固定軸20に沿って上下動させることができる。第1クラッチ板42は、固定軸20に対して相対移動可能となるように、クラッチばね43により支持されている。
【0017】
トルククラッチ40は、回転軸30の下端に固定された第2クラッチ板44と、第1クラッチ42および第2クラッチ板44の間に介在されるボール45とを更に備えている。第1クラッチ42および第2クラッチ板44は、互いに対向する面に凹部42a,44aがそれぞれ形成されており、凹部42a,44a内にボール45が収容されることにより、固定軸20および回転軸30が相対回転不能に連結される。そして、操作部31の回転操作により、回転軸30のねじりトルクが所定の開封トルクに達すると、第2クラッチ板44がクラッチばね43の付勢力に抗してボール45を下方に押圧することで、第2クラッチ板44の凹部44aからボール45が押し出されて、回転軸30が回転可能となる。
【0018】
受板41は、複数の歯部が外周面に形成されており、
図1に示すように、本体10内に回転自在に支持されて一部が窓部から露出する位置調整用ギア46と噛合している。位置調整用ギア46は、正逆回転により受板41を回転させて、所望の高さ位置に保持されるように上下動させることができ、これによってクラッチばね43の付勢力を調整して、上記の開封トルクを所定の値に設定することができる。
【0019】
トルククラッチ40の構成は、必ずしも本実施形態のものには限定されず、例えば、ボールプランジャを利用した構成や、電磁クラッチなど、回転軸30のねじりトルクが所定の開封トルクに達するまで固定軸20と回転軸30とを相対回転不能に連結可能な公知の構成を採用することができる。
【0020】
トルクセンサ50は、ひずみゲージ式であり、固定軸20の外周面に貼付されて回転軸30から固定軸20に伝達されたトルクを検知し、トルクの大きさに応じた電気信号を出力する。トルクセンサ50からの出力信号は、アンプおよびA/D変換器を有する信号処理部51および取出部19を経て、本体10の外部に有線で出力され、例えば、演算装置等を備える表示装置(図示せず)に送信される。表示装置は、ねじりトルク値として数値やグラフ等で画面表示して記録することができる。表示装置は、本体10と別体であってもよく、あるいは、本体10の側面等に一体化させてもよい。信号処理部51を経た信号は、表示装置に送信する代わりに、使用者の携帯端末等に無線で送信することもできる。
【0021】
本実施形態においては、トルクセンサ50および信号処理部51を別体としているが、トルクセンサ50および信号処理部51が一体化されたものを使用してもよい。トルクセンサ50は、固定軸30に貼付する代わりに回転軸20に貼付してもよい。トルクセンサ50の種類は、固定軸20と回転軸30とが連結された状態で、固定軸20または回転軸30のねじりトルクを算出可能なものであればよく、ひずみゲージ式以外に、磁歪式、位相差式、機械式などを例示することができる。
【0022】
本実施形態の上肢機能測定器1は、使用者が一方の手で本体10を把持し、他方の手の親指と人差し指で操作部31を摘んで回転させようとすると、回転軸30には、固定軸20と相対回転不能に連結された状態で、操作部31の回転方向の力に応じたねじりトルクが発生する。回転軸30のねじりトルクが所定の開封トルクに達すると、トルククラッチ40の解放により固定軸20と回転軸30との連結状態が解除され、回転軸30のねじりトルクが低下する。このような操作部31の操作は、飲料用ペットボトルの開封操作と同様であり、使用者は、トルククラッチ40の解放により操作部31が開封(回転開始)された際のクリック感により、測定が終了したことを容易に把握することができる。
【0023】
操作部31の開封操作の開始から実際に開封されるまでのトルクセンサ50の検出信号は、ねじりトルク値の時系列データとして出力することができ、この測定データを表示・記録することができる。したがって、操作部31の開封に要した時間だけでなく、開封までに操作部31に作用した力やその時間変化を明らかにすることができ、更には、機能測定を行った回数等を把握することもできるので、このような測定データを定期的に取得することで、運動機能の向上や回復などの変化を正しく評価することが可能になる。また、使用者は、操作部31の開封をモチベーションとして力を加え続けることで、リハビリ効果を得ることもできる。
【0024】
測定が終了した後は、トルククラッチ40をリセットして、固定軸20と回転軸30とを相対回転不能に連結することで、繰り返し測定を行うことができる。開封トルクを変更する際には、受板41を固定軸20に沿って上下動させることで、リハビリの強度に合わせて開封トルク値を適宜調整することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 上肢機能測定器
10 本体
20 固定軸
30 回転軸
31 操作部
40 トルククラッチ
50 トルクセンサ