(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024349
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20240215BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240215BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240215BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240215BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W60/00
G08G1/16 C
G08G1/00 J
B60T7/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127122
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祐介
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA49
3D241BB01
3D241BB22
3D241BB52
3D241BB56
3D241BC01
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC11
3D241CD11
3D241CD12
3D241CE05
3D241DA12B
3D241DA39B
3D241DB02A
3D241DB02B
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB27Z
3D241DC02B
3D241DC02Z
3D241DC33B
3D241DC33Z
3D241DC45A
3D241DC45Z
3D241DC46A
3D241DC46Z
3D246DA01
3D246EA02
3D246GB30
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA13A
3D246HA26A
3D246HA64A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HA94A
3D246HA95A
3D246HB02B
3D246HB08B
3D246HB11A
3D246HB24A
3D246JA02
3D246JB04
3D246JB32
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE13
5H181FF04
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL16
(57)【要約】
【課題】車両を制動させることにより車両がスタックしてしまう事態を低減する。
【解決手段】車両制御装置は、一又は複数のプロセッサを備え、プロセッサは、車両前方の対象物を検出する対象物検出部と、車両前方の道路状況を検出する道路状況検出部と、対象物が検出され、車両前方の道路が上り勾配であり、かつ、路面が所定条件である場合に、車両前方の道路において車両がスタックしない非スタック速度を算出する速度算出部と、車両を非スタック速度まで制動させる制動制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
車両前方の対象物を検出する対象物検出部と、
車両前方の道路状況を検出する道路状況検出部と、
前記対象物が検出され、車両前方の道路が上り勾配であり、かつ、路面が所定条件である場合に、車両前方の道路において前記車両がスタックしない非スタック速度を算出する速度算出部と、
前記車両を前記非スタック速度まで制動させる制動制御部と
を備える車両制御装置。
【請求項2】
運転者の所定操作により前記車両を停止させることが可能な制動可能距離を算出する距離算出部を備え、
前記制動制御部は、前記車両と前記対象物との距離が前記制動可能距離となるまでには前記車両を前記非スタック速度まで制動させる
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両が前記非スタック速度を維持可能な駆動部の駆動トルクを算出するトルク算出部と、
前記車両が前記非スタック速度になると、前記駆動部から出力されるトルクを前記駆動トルクで維持させる駆動制御部と
を備える請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、運転者が所定操作を行った場合、前記駆動トルクの維持を終了する
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記所定条件は、車両前方の道路の路面状態が積雪状態又は凍結状態である
請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、車両の前方に存在する物体との相対速度が0となるように車両を制動させる衝突被害軽減ブレーキ制御(AEB:Autonomous Emergency Braking)を行う車両制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両制御装置では、車両の前方に存在する物体が静止物である場合、速度が0となるように車両を制動させることになる。そして、このような車両制御装置によって積雪状態又は凍結状態の上り勾配の道路において車両を停止させてしまうと、車両の発進時に車輪がスリップして車両がスタックしてしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明では、車両を制動させることにより車両がスタックしてしまう事態を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る車両制御装置は、一又は複数のプロセッサを備え、前記プロセッサは、車両前方の対象物を検出する対象物検出部と、車両前方の道路状況を検出する道路状況検出部と、前記対象物が検出され、車両前方の道路が上り勾配であり、かつ、路面が所定条件である場合に、車両前方の道路において前記車両がスタックしない非スタック速度を算出する速度算出部と、前記車両を前記非スタック速度まで制動させる制動制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両を制動させることにより車両がスタックしてしまう事態を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、車両制御装置1の構成を示した図である。
【
図3】
図3は、車両制動制御時の時間と速度との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態における車両制動制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.車両制御装置1の構成>
図1は、車両制御装置1の構成を示した図である。
図1に示すように、車両100は、車両制御装置1を備えている。車両制御装置1は、車両100に搭載されており、車両100の制御を行う。
【0010】
車両制御装置1は、撮像部2、画像処理部3、メモリ4、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10、表示部11、エンジン12、トランスミッション13、ブレーキ14、操舵機構15、センサ16、バス17、通信部18を備える。
【0011】
運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10は、バス17を介して相互に接続されている。
【0012】
画像処理部3、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0013】
撮像部2は、例えばステレオカメラでなり、略同方向を撮像する二つのカメラが設けられている。各カメラは、いわゆるステレオ撮像法による測距が可能となるように設置されている。
【0014】
各カメラは、それぞれカメラ光学系とCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子とを備える。各カメラでは、カメラ光学系を介して撮像素子の撮像面に被写体像が結像され、撮像素子の各画素において受光光量に応じた電気信号が得られる。そして、各カメラで得られた電気信号は、A/D変換や所定の補正処理が施され、画素単位で所定階調による輝度値を表すデジタル画像信号(画像データ)として画像処理部3に供給される。
【0015】
なお、撮像部2は、測距可能な撮像素子を備える一つのカメラによって構成されていてもよい。また、撮像部2は、車両100の前方を撮像するカメラや車両100の後方を撮像するカメラや車両100の側方を撮像するカメラなどを備えていてもよい。
【0016】
画像処理部3は、撮像部2で得られた画像データに基づき、車外環境の認識に係る所定の画像処理を実行する。画像処理部3による画像処理は、例えば不揮発性メモリ等でなるメモリ4を用いて行われる。
【0017】
画像処理部3は、ステレオ撮像により得られた画像データに基づく各種の画像処理を実行し、車両100の前方の立体物や区画線(センターラインや車線境界線など)等を認識する。また、画像処理部3は、認識した立体物等に基づいて車両100が走行している道路や車線(自車両走行路)を認識する。さらに、画像処理部3は、認識した立体物等に基づいて追従対象となる先行車両の認識を行う。
【0018】
具体的には、画像処理部3は、画像データとしての撮像画像対に対し、対応する位置のずれ量(視差)から三角測量の原理によって画素ごとの距離情報を生成する。そして、画像処理部3は、距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理を行った距離情報を予め記憶しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較する。これにより、画像処理部3は、白線、ガードレール、縁石等の側壁、車両等の立体物、一時停止線、交通信号機、踏切、横断歩道、レーン等を認識する。
【0019】
このように画像処理部3は、画像データに基づいて周囲の物体を認識するとともに、その挙動を認識することもできる。例えば、画像処理部3は、先行車両の車両100を基準とした位置、速度、加速度(加速又は減速による正負の加速度)、進行方向の変化、ウインカー点滅等を認識することも可能である。
【0020】
画像処理部3は、上記のような各種の外部環境の情報を例えば画像データのフレームごとに認識し、認識した情報を逐次、メモリ4に記憶(保持)させる。
メモリ4には、画像処理部3による画像処理の結果の他に、道路勾配の情報が含まれる地図データ等も記憶されている。
【0021】
運転支援制御部5は、メモリ4に保持された画像処理部3による画像処理の結果や、センサ16で得られる検出信号、操作入力情報等、さらには通信部18による通信情報などに基づき、運転支援のための各種の運転支援制御を実行する。
運転支援制御部5は、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10のうち必要な制御部に対して指示を行って運転支援に係る動作を実行させる。
【0022】
運転支援制御部5が実行する運転支援制御としては、例えばレーンキープ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御(AEB:Autonomous Emergency Braking)、車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)、先行車両追従操舵制御などが想定される。なお、レーンキープ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御、車間距離制御付クルーズコントロール、先行車両追従操舵制御は、既知の手法により実現可能であるため、その説明を省略する。
【0023】
表示制御部6は、センサ16からの検出信号、操作子による操作入力情報、又は、運転支援制御部5からの指示等に基づき、表示部11による表示動作を制御する。例えば、表示制御部6は、運転支援制御部5からの指示に基づき、運転支援の一環として表示部11に所定の注意喚起メッセージを表示させることが可能とされている。
【0024】
表示部11は、運転者の前方に設置されているメータパネル内に設けられたスピードメータやタコメータ等の各種メータやMFD、及び、運転者に情報提示を行うための表示デバイスを包括的に表している。MFDには、自車両の総走行距離や外気温、瞬間燃費等といった各種の情報を同時又は切り換えて表示可能とされる。
【0025】
エンジン制御部7は、センサ16からの検出信号、操作子による操作入力情報、又は、運転支援制御部5からの指示等に基づき、エンジン12を制御する。
例えば、エンジン制御部7は、イグニッションスイッチの操作に応じてエンジン12の始動、停止制御を行う。また、エンジン制御部7は、後述するエンジン回転数センサ16cやアクセル開度センサ16d等の所定のセンサからの検出信号に基づき、燃料噴射タイミング、燃料噴射量、スロットル開度等の制御を行う。
【0026】
トランスミッション制御部8は、センサ16からの検出信号、操作子による操作入力情報、又は、運転支援制御部5からの指示等に基づき、トランスミッション13を制御する。
例えば、トランスミッション制御部8は、所定の変速信号をトランスミッション13に出力して変速制御を行う。
【0027】
ブレーキ制御部9は、センサ16からの検出信号、操作子による操作入力情報、又は、運転支援制御部5からの指示等に基づき、ブレーキ14を制御する。
例えば、ブレーキ制御部9は、運転支援制御部5から出力された指示情報に基づき、ブレーキ14の液圧を制御して車両100を制動させる。また、ブレーキ制御部9は、所定のセンサ(例えば車軸の回転速度センサや車速センサ16a)の検出信号に基づいて車輪のスリップ率を計算し、スリップ率に応じてブレーキ14の液圧を加減圧させることで、所謂ABS(Antilock Brake System)制御を実現する。
【0028】
操舵制御部10は、センサ16からの検出信号、操作子による操作入力情報、又は、運転支援制御部5からの指示等に基づき、操舵機構15を制御する。
例えば、操舵制御部10は、後述する舵角センサ16fで検出される操舵角に基づいて操舵機構15を制御することで操舵輪を転舵させる。また、操舵制御部10は、運転支援制御部5から与えられる指示情報に基づいて操舵機構15を制御することで自動操舵を実現する。
【0029】
センサ16は、車両100に設けられた各種のセンサを包括的に表している。センサ16としては、車速センサ16a、車輪速センサ16b、エンジン回転数センサ16c、アクセル開度センサ16d、ブレーキセンサ16e、舵角センサ16f、ヨーレートセンサ16g、Gセンサ16h、ミリ波レーダ16i、位置情報受信器16jが設けられている。なお、これらは例示に過ぎず、これら以外にも各種のセンサが設けられる。
【0030】
車速センサ16aは、車両100の速度(車速)を検出する。
車輪速センサ16bは、車輪の回転速度を検出する。
エンジン回転数センサ16cは、エンジン12の回転数を検出する。
アクセル開度センサ16dは、アクセルペダルの踏込み量からアクセル開度を検出する。
ブレーキセンサ16eは、ブレーキペダルの踏込み量からブレーキ操作量を検出する。
舵角センサ16fは、ステアリングホイールの操舵角を検出する。
ヨーレートセンサ16gは、車両100に加えられるヨーレート(Yaw Rate)を検出する。
Gセンサ16hは、車両100の進行方向、車幅方向、鉛直方向に作用する加速度を検出する。
ミリ波レーダ16iは、外部に向かってミリ波を照射してセンシングを行うことにより、周囲状況を検出する。
位置情報受信器16jは、例えば全地球衛星航法システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)用の受信器や路側機からの情報を受信する受信器などとされ、現在位置情報を取得する。
【0031】
センサ16からの各種の検出信号は、画像処理部3、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9、操舵制御部10の必要各部に供給される。
【0032】
通信部18は,車車間通信や、ネットワーク通信を行う。運転支援制御部5は、通信部18によって受信した他車両の情報を取得することができる。また、通信部18は、インターネット等のネットワーク通信により各種情報、例えば現在地の周辺環境情報、道路情報等を取得することもできる。
【0033】
<2.車両制動制御>
本実施形態における車両制動制御を説明する。車両制動制御では、車両100の前方(走行車線上)に障害物があり、積雪状態又は凍結状態の上り勾配の道路を車両100が走行している場合に、車両100がスタックしない速度に制動させる。なお、車両制動制御は、上記の衝突被害軽減ブレーキ制御の一例であるとも言える。
【0034】
運転支援制御部5は、車両制動制御を行う際、対象物検出部21、道路状況検出部22、速度算出部23、トルク算出部24及び距離算出部25として機能する。また、エンジン制御部7及びトランスミッション制御部8は、車両制動制御を行う際、駆動制御部26として機能する。
【0035】
図2は、車両制動制御を説明する図である。
図3は、車両制動制御時の時間と速度との関係を示す図である。
【0036】
図2に示すように、対象物検出部21は、車両制動制御において制御対象となる物体を対象物31として検出する。例えば、対象物検出部21は、画像処理部3によって認識された立体物のうち、車両100の走行車線上にある静止物を対象物31として検出する。
なお、対象物検出部21は、ミリ波レーダ16iによる検出結果に基づいて対象物31を検出するようにしてもよい。
【0037】
道路状況検出部22は、車両100の前方(車両前方)の道路状況を検出する。ここでは、道路状況検出部22は、車両前方の道路状況として、道路勾配及び路面状態を検出(算出)する。
【0038】
例えば、道路状況検出部22は、Gセンサ16hによって検出される加速度に基づく車両100の傾きと、画像処理部3によって検出された車両前方の道路(走行車線)の距離情報とに基づいて、車両前方の道路勾配を算出する。
また、道路状況検出部22は、位置情報受信器16jによって取得された現在位置と、車両100から対象物31までの距離とに基づいて、地図データを参照して、地図上における車両前方の位置を特定する。そして、道路状況検出部22は、特定した位置における道路勾配を地図データから読み出すようにしてもよい。
なお、道路状況検出部22は、他の方法により道路勾配を検出するようにしてもよい。
【0039】
また、道路状況検出部22は、画像データに基づく撮像画像に写し出される車両前方の道路の色、又は、通信部18から取得される道路情報に基づいて、車両100が走行している道路の路面状態を検出する。ここでは、路面状態が積雪状態又は凍結状態であるかが検出される。例えば撮像画像に写し出される車両前方の道路の色が白色である場合、路面状態が積雪状態であると検出される。
また、道路状況検出部22は、ブレーキ制御部9によって算出されるスリップ率に基づいて路面状態を検出するようにしてもよい。
なお、道路状況検出部22は、他の方法により路面状態を検出するようにしてもよい。
【0040】
そして、車両前方に対象物31があり、車両前方の道路が上り勾配であり、かつ、路面状態が積雪状態又は凍結状態である場合、運転支援制御部5は、車両100が停止すると再発進時にスタックするおそれがあると判断する。
【0041】
この場合、速度算出部23は、車両前方の道路において車両100が発進(加速)してもスタックしない非スタック速度V1を、車両前方の道路勾配及び道路状態に基づいて速度マップを参照して算出する。速度マップは、路面勾配及び道路状態に対して非スタック速度V1が関連付けられた2次元マップである。なお、非スタック速度V1は、車両100が発進(加速)する際に必ずスタックしないというものではなく、スタックする可能性が低い場合を含むものである。
【0042】
トルク算出部24は、算出された道路勾配において車両100が非スタック速度V1を維持するためにエンジン12及びトランスミッション13(これらを纏めて駆動部と表記する)から出力しなければならないトルクを駆動トルクTqとして算出する。例えば、トルク算出部24は、非スタック速度V1及び道路勾配に基づいて駆動トルクTqを算出する。
【0043】
距離算出部25は、車両100が非スタック速度V1で走行した際に運転者がブレーキペダルを操作することで車両100を対象物31に衝突させることなく停止させることができる対象物31までの距離を制動可能距離D1として算出する。ここで、運転者が対象物31を発見してからブレーキペダルを操作するまでに必要な時間が操作必要時間として予め設定されている。
従って、距離算出部25は、非スタック速度V1と操作必要時間とを乗算することにより制動可能距離D1を算出する。
【0044】
また、距離算出部25は、車速センサ16aによって検出される現在の車両100の速度V0と、速度算出部23によって算出された非スタック速度V1と、予め設定された減速度(マイナス加速度)とに基づいて、車両100を速度V0から非スタック速度V1まで減速させるために必要な制動開始距離D0を算出する。
【0045】
そして、ブレーキ制御部9は、車両100と対象物31との距離Dが、制動開始距離D0及び制動可能距離D1の和となったタイミングT0(
図2では、車両100を一点鎖線で示した位置)で、予め設定された減速度となるようにブレーキ14を制御して車両100を制動させる。
これにより、車両100は、車両100と対象物31との距離Dが制動可能距離D1となるタイミングT1(
図2では、車両100を破線で示した位置)で、車両100を非スタック速度V1まで減速させることができる。
【0046】
その後、駆動制御部26は、駆動部から出力されるトルクが駆動トルクTqで維持されるように、エンジン12及びトランスミッション13を適宜制御する。
これにより、車両100は、非スタック速度V1を維持しながら対象物31に近づくことになる。
【0047】
このように、車両100が非スタック速度V1まで減速されることになるので、車両100が非スタック速度V1で走行している間に運転者がアクセルペダルを操作して車両100を加速させた場合、車輪が空転してスタックするといった事態を低減することができる。
【0048】
ただし、車両100が非スタック速度V1で走行している間に運転者がいかなる操作(アクセルペダル又はブレーキペダルの操作)も行わないと、車両100が対象物31に衝突してしまう。
【0049】
そこで、車両100が非スタック速度V1まで減速すると、すなわち、車両100と対象物31との距離が制動可能距離D1になると、距離算出部25は、非スタック速度V1(現在の速度)と、予め設定された減速度とに基づいて、車両100が対象物31に衝突する前に速度を0にするために必要な制動開始距離D2を算出する。
【0050】
そして、ブレーキ制御部9は、車両100と対象物31との距離Dが、制動開始距離D2となったタイミングT2(
図2では、車両100を二点鎖線で示した位置)で、予め設定された減速度となるようにブレーキ14を制御して車両100を制動させる。
これにより、車両制御装置1は、車両100が対象物31に衝突する前に車両100を停止させることができる。
【0051】
なお、車両制動制御を行っている間に、運転者が所定操作(アクセルペダル又はブレーキペダルの操作)を行った場合、運転支援制御部5が車両制動制御を終了することで、運転者の所定操作に応じた車両100の制御に切り替える。
【0052】
図4は、実施形態における車両制動制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、車両制動制御を開始すると、ステップS1で運転支援制御部5は、車両前方の対象物31を検出する。また、運転支援制御部5は、車両前方の道路状況を検出する。
【0053】
ステップS2で運転支援制御部5は、車両前方の対象物31があるかを判定する。その結果、対象物31がある場合(ステップS2でYes)、ステップS3で運転支援制御部5は、車両前方が上り勾配で、かつ、路面状態が積雪状態又は凍結状態であるかを判定する。
【0054】
車両前方が上り勾配で、かつ、路面状態が積雪状態又は凍結状態である場合(ステップS3でYes)、ステップS4で運転支援制御部5は、非スタック速度V1、駆動トルクTq、制動可能距離D1及び制動開始距離D0を算出する。
【0055】
その後、ステップS5で運転支援制御部5は、車両100と対象物31との距離Dが、制動開始距離D0及び制動可能距離D1の和以下であるかを判定する。車両100と対象物31との距離Dが制動開始距離D0及び制動可能距離D1の和以下でない場合(ステップS5でNo)、運転支援制御部5はステップS5を繰り返す。
【0056】
一方、車両100と対象物31との距離Dが制動開始距離D0及び制動可能距離D1の和以下である場合(ステップS5でYes)、ステップS6でブレーキ制御部9は、車両100の速度が非スタック速度V1になるまで所定の減速度となるようにブレーキ14を制御して車両100を制動させる。
【0057】
その後、ステップS7で駆動制御部26は、出力されるトルクが駆動トルクTqとなるようにエンジン12及びトランスミッション13を制御する。
【0058】
また、ステップS8で運転支援制御部5は、車両100が対象物31に衝突する前に速度を0にするために必要な制動開始距離D2を算出する。ステップS9で運転支援制御部5は、車両100と対象物31との距離Dが制動開始距離D2以下であるかを判定する。車両100と対象物31との距離Dが制動開始距離D2以下でない場合(ステップS9でNo)、運転支援制御部5はステップS8を繰り返す。
【0059】
一方、車両100と対象物31との距離Dが制動開始距離D2以下である場合(ステップS9でYes)、ステップS10でブレーキ制御部9は、車両100が停止するまで所定の減速度となるようにブレーキ14を制御して車両100を制動させ、車両制動制御を終了する。
【0060】
また、対象物31がない場合(ステップS2でNo)、及び、車両前方が上り勾配でないか、路面状態が積雪状態及び凍結状態でない場合(ステップS3でNo)、車両制動制御を終了する。
【0061】
なお、ステップS3~ステップS10の処理を実行中に、運転者による所定操作があった場合、車両制動制御を中断させる。
【0062】
<3.変形例>
なお、以上の実施形態は本発明を実施する一例で有り、本発明の実施は以上の例に限定されず、各種の変形例が考えられる。
【0063】
例えば、上記した実施形態ではエンジン12を有する車両100について説明した。しかしながら、車両100は、エンジン12及びモータで駆動するハイブリッド自動車でもよく、モータのみで駆動する電気自動車であってもよい。
【0064】
また、上記した実施形態では、画像処理部3、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9及び操舵制御部10は、異なるはマイクロコンピュータで構成されるようにしたが、1つのマイクロコンピュータにより構成されるようにしてもよい。また、画像処理部3、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9及び操舵制御部10の一部が、1つのマイクロコンピュータにより構成されるようにしてもよい。
【0065】
また、画像処理部3、運転支援制御部5、表示制御部6、エンジン制御部7、トランスミッション制御部8、ブレーキ制御部9及び操舵制御部10のいずれか1又は複数が、運転支援制御部5が対象物検出部21、道路状況検出部22、速度算出部23、トルク算出部24、距離算出部25及び駆動制御部26として機能するようにしてもよい。
【0066】
また、上記した実施形態では、対象物31が、車両100と衝突のおそれがある立体物であるようにした。しかしながら、対象物31は、例えば赤色の交通信号機のように、車両100が停止する必要がある物体であればよい。
【0067】
<4.まとめ>
上記のように実施形態の車両制御装置1は、一又は複数のプロセッサを備え、プロセッサは、車両前方の対象物31を検出する対象物検出部21と、車両前方の道路状況を検出する道路状況検出部22と、対象物31が検出され、車両前方の道路が上り勾配であり、かつ、路面が所定条件である場合に、車両前方の道路において車両100がスタックしない非スタック速度V1を算出する速度算出部23と、車両100を非スタック速度V1まで制動させる制動制御部(ブレーキ制御部9)とを備える。
これにより、車両制御装置1は、積雪状態又は凍結状態である上り勾配の道路を走行中の車両100を非スタック速度V1で維持させることができる。
従って、車両制御装置1は、積雪状態又は凍結状態である上り勾配の道路を走行中の車両100が加速する際に車輪が空転してしまうことを低減することができる。
かくして、車両制御装置1は、対象物31との衝突を回避するために車両100を制動させる場合であっても、車両100を制動させることにより車両100がスタックしてしまう事態を低減することができる。
【0068】
また、運転者の所定操作により車両100を停止させることが可能な制動可能距離D1を算出する距離算出部25を備え、制動制御部(ブレーキ制御部9)は、車両100と対象物31との距離Dが制動可能距離D1となるまでには車両100を非スタック速度V1まで制動させる。
これにより、車両100がスタックしない非スタック速度V1になったときに、車両100が対象物31に衝突しそうなことに運転者が気づいた場合、運転者の所定操作によって車両100をスタックすることなく対象物31との衝突を回避させることができる。
【0069】
また、車両100が非スタック速度V1を維持可能な駆動部(エンジン12、トランスミッション13)の駆動トルクTqを算出するトルク算出部24と、車両100が非スタック速度V1になると、駆動部から出力されるトルクを駆動トルクTqで維持させる駆動制御部26とを備える。
これにより、車両100がスタックしない非スタック速度V1まで制動させた後に、非スタック速度V1を維持させることができる。
従って、車両100が非スタック速度V1まで減速した後であっても、スタックせずに車両100を加速させることができる。
【0070】
また、駆動制御部26は、運転者が所定操作を行った場合、駆動トルクTqの維持を終了する。
これにより、運転者の操作を優先して車両100を停止又は加速することができる。
【0071】
また、所定条件は、車両前方の道路の路面状態が積雪状態又は凍結状態である。
これにより、特に積雪状態又は凍結状態である路面でのスタックを低減することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 車両制御装置
5 運転支援制御部
7 エンジン制御部
8 トランスミッション制御部
9 ブレーキ制御部
21 対象物検出部
22 道路状況検出部
23 速度算出部
24 トルク算出部
25 距離算出部
26 駆動制御部