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  • 特開-空調機及び制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024350
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】空調機及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0011 20190101AFI20240215BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240215BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240215BHJP
【FI】
F24F1/0011
F24F11/74
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127123
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石塚 浩史
【テーマコード(参考)】
3L049
3L260
【Fターム(参考)】
3L049BB20
3L260AB03
3L260BA38
3L260CA12
(57)【要約】
【課題】暖房運転のサーモOFF時にファンを運転せずに室内温度を検出することができる空調機を提供する。
【解決手段】空調機は、ファンと、室内熱交換器と、空気を吸入する第1開口部と、空気を放出する第2開口部と、温度センサとを有する室内機と、室外機と、を有し、第1開口部は、室内熱交換器の高さ方向の中央よりも下方に設けられ、第2開口部は、室内熱交換器よりも上方に設けられ、暖房運転時の第1開口部の空気温度と、第2開口部の空気温度と、室内熱交換器の高さ方向の中央と第2開口部の高さ方向の高低差と、第2開口部の面積の各パラメータを含む条件式を満たすように、暖房運転時に室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFF状態となった場合にファンを停止しても、第1開口部から空気が吸入され、第2開口部から空気が放出される空気の流れが生じるように、上記パラメータが設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、室内熱交換器と、空気を吸入する第1開口部と、空気を放出する第2開口部と、温度センサと、を有する室内機と、室外機と、を有し、
前記第1開口部は、前記室内熱交換器の高さ方向の中央よりも下方に設けられ、
前記第2開口部は、前記室内熱交換器よりも上方に設けられ、
暖房運転時の前記第1開口部の空気温度および前記第2開口部の空気温度と、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差と、前記第2開口部の面積と、を含む所定の条件式を満たすように、暖房運転時に前記室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなった場合に前記ファンを停止しても、前記第1開口部から空気が吸入され、前記第2開口部から空気が放出される空気の流れが生じるように、前記第1開口部の空気温度と、前記第2開口部の空気温度と、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差と、前記第1開口部の面積と、前記第2開口部の面積とが設定された、
空調機。
【請求項2】
前記条件式は、
前記第1開口部の空気温度をTi、前記第2開口部の空気温度をTo、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差をh、前記第1開口部の面積をAi、前記第2開口部の面積をAo、gを重力加速度、C2を前記室内熱交換器の圧損係数としたときに以下の式である、
【数1】
請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
前記条件式は、
前記第1開口部の空気温度をTi、前記第2開口部の空気温度をTo、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差をh、前記第2開口部の面積をAo、C2を前記室内熱交換器の圧損係数、gを重力加速度、Cpを空気の比熱としたときに以下の式である、
【数2】
請求項1又は請求項2に記載の空調機。
【請求項4】
複数の前記室内機と前記室外機を有し、複数の前記室内機と前記室外機とが冷媒配管で接続され、前記室内熱交換器には、当該室内熱交換器を有する前記室内機の暖房運転が前記サーモOFFのときにも冷媒が流れる、
請求項1又は請求項2に記載の空調機。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の空調機において、前記室内機の暖房運転が前記サーモOFFとなると、前記ファンを停止する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に例示するように1台の室外機10に対して複数台の室内機20,21,22,23を備えるマルチ型の空調機100が提供されている。マルチ型の空調機100では、室外機10が送り出した冷媒を室内機20~23で共有するため、冷媒が、例えば、室内機20の室内熱交換器に溜りすぎると、室内機21~23へ供給される冷媒の量が減少し、室内機21~23の空調能力が低下する。例えば、室内機20の暖房運転中にサーモOFF(サーモOFFとは、室内温度が設定温度に達し、室内機20の室内熱交換器を流れる冷媒と室内空気の熱交換が不要な運転状態になることである。)となると、室内熱交換器に供給されたガス冷媒が凝縮して液化し、室内機20の室内熱交換器に冷媒が溜る。これは、マルチ型の空調機100では、サーモOFFとなっても、冷媒が当該室内熱交換器へ供給され、ファンの運転等により、冷媒が凝縮するためである。室内熱交換器での冷媒凝縮を防ぐ対策として、膨張弁を開くことで冷媒を流し続ける方法が考えられるが、サーモOFF時でも正確な室内温度を検出するためにはファンを運転する必要があるため、サーモOFF時でも実際には暖房運転をすることになってしまう。関連する技術として、特許文献1には、サーモOFF時にファンを運転しなくても室内温度を正確に計測できるように温度センサを設置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-97742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
暖房運転のサーモOFF時であっても、ファンを運転せずに室内温度を計測できるような空調機が求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる空調機及び制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、空調機は、ファンと、室内熱交換器と、空気を吸入する第1開口部と、空気を放出する第2開口部と、温度センサと、を有する室内機と、室外機と、を有し、前記第1開口部は、前記室内熱交換器の高さ方向の中央よりも下方に設けられ、前記第2開口部は、前記室内熱交換器よりも上方に設けられ、暖房運転時の前記第1開口部の空気温度と、前記第2開口部の空気温度と、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差と、前記第2開口部の面積と、を含む所定の条件式に基づいて、暖房運転時に前記室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなった場合に、前記ファンを停止しても、前記第1開口部から空気が吸入され、前記第2開口部から空気が放出される空気の流れが生じるように、前記第1開口部の空気温度と、前記第2開口部の空気温度と、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差と、前記第1開口部の面積と、前記第2開口部の面積とが設定されている。
【0007】
本開示の一態様によれば、制御方法は、上記の空調機において、前記室内機の暖房運転が前記サーモOFFとなると、前記ファンを停止する、制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の空調機及び制御方法によれば、暖房運転のサーモOFF時にファンを運転せずに室内温度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るマルチ型の空調機の概略図である。
図2】実施形態に係るマルチ型の空調機の冷媒回路の一例を示す概略図である。
図3】実施形態に係る室内機の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態による空調機及び制御方法について図1図3を参照して説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係るマルチ型の空調機の一例を示す概略図である。マルチ型の空調機とは、1つの室外機に複数の室内機が接続される空調機である。図1の空調機100は、室外機10と、複数の室内機20、21、22、23とを備えるマルチ型の空調システムである。室外機10と室内機20~23の各々は、それぞれ冷媒配管30によって接続されている。室外機10および室内機20等の数は図1に示す台数に限定されない。例えば、室内機20等は2~3台でも良いし、5台以上でもよい。また、室外機10は2台以上であってもよい。
【0011】
図2に室外機10が1台、室内機20等が2台(20、21)の場合のマルチ型の空調機100の冷媒回路の概略を示す。図2に示すように室外機10は、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、制御装置14を備える。圧縮機11の吐出側と四方弁12は配管34で接続され、四方弁12と室外熱交換器13は配管32で接続され、四方弁12と圧縮機11の吸入側は配管33で接続される。四方弁12と継手3Aは配管35で接続される。室外熱交換器13と継手3Bは配管31で接続される。制御装置14は、圧縮機11の制御などを行う。
【0012】
室内機20は、室内熱交換器201、膨張弁202、ファン203、温度センサ204、温度センサ205、制御装置206を備える。配管36は継手3Aと室内熱交換器201を接続する。配管37は室内熱交換器201と継手3Bを接続し、膨張弁202は配管37に設けられる。ファン203は、室内機20の吸込口付近に設けられ、室内の空気を吸入し、室内熱交換器201へ送出する。温度センサ204は、室内機20の吸込口付近に設けられ、室内温度(吸い込んだ空気の温度)を計測する。温度センサ205は、室内熱交換器201の中央付近に設けられ、室内熱交換器201の冷媒温度を計測する。温度センサ205が計測する温度は、室内機20から室内へ吹き出される空調後の空気温度と同様の温度となる。制御装置206は、ファン203などを制御する。室内機20が暖房運転しているときにサーモOFFするかサーモONするかについては、室内機20の暖房の設定温度と、温度センサ204が計測する温度の温度差によって判断される。例えば、制御装置206は、温度センサ204が計測した温度が設定温度より所定値以上上昇すると、暖房運転をサーモOFFすると判断し、温度センサ204が計測した温度が暖房の設定温度より所定値以上低下すると、サーモONすると判断する。
【0013】
室内機21の構成は、室内機20と同様である。室内機21は、室内熱交換器211、膨張弁212、ファン213、温度センサ214、温度センサ215、制御装置216を備える。配管38は継手3Aと室内熱交換器211を接続する。配管39は室内熱交換器211と継手3Bを接続し、膨張弁212は配管39に設けられる。制御装置216は、ファン213などを制御する。
【0014】
マルチ型の空調機100にて暖房運転を行う場合、四方弁12は、暖房運転用に設定され、圧縮機11が吐出した高温高圧のガス冷媒は、配管34、四方弁12、配管35,36を通じて室内機20の室内熱交換器201へ供給され、配管34、35、38を通じて室内機21の室内熱交換器211へ供給される。室内熱交換器201へ供給された冷媒は、ファン203が送出する空気と熱交換して凝縮し、膨張弁202で減圧され、配管37、31を通じて室外熱交換器13へ供給される。同様に、室内機21では、室内熱交換器211へ供給された冷媒は、ファン213が送出する空気と熱交換して凝縮し、膨張弁212で減圧され、配管39、31を通じて室外熱交換器13へ供給される。室外熱交換器13に供給された冷媒は、外気との熱交換により気化し、気化した冷媒は、配管32、四方弁12、配管33を通じて、圧縮機11へ吸入される。
【0015】
図2を用いて説明したように、マルチ型の空調機100では、室外機10から供給された冷媒を室内機20、21で共有する。また、マルチ型の空調機100では、室内機20の暖房運転がサーモOFFとなっても、室内熱交換器201へ冷媒が供給される(膨張弁202の制御により供給量は少なくなる。)。そのため、室内熱交換器201に冷媒が溜りすぎると、室内機21へ供給される冷媒量が減少してしまう。室内熱交換器201へ冷媒が溜ることを防止するために、膨張弁202やファン203の様々な制御が実施されるが、温度センサ204が正確な室内温度を計測できるようにサーモOFF時であってもファン203を運転することが多い。サーモOFF時にファン203を運転すると、過暖房を招き、室内熱交換器201での冷媒凝縮を促進してしまうことになるため、サーモOFF時にはファン203を停止し、且つ、室内温度を正確に計測できるようにすることが望ましい。そこで、本実施形態では、サーモOFF時であっても室内熱交換器201に供給される冷媒によって温められた暖気が上昇する性質を利用して、ファン203の運転ではなく、自然対流によって室内空気を循環させ、これにより、室内空気を撹拌し、その結果均一化された室内の空気温度を、温度センサ204で計測するように、室内機20および室外機10を構成する。
【0016】
図3に、実施形態に係る室内機20の構成を模式的に示す。室内機20は、床置き型の室内機である。室内機20の下部には、室内空気の吸込口207が設けられ、上部には、空調後の空気の吹出口208が設けられている。吸込口207の近くには、ファン203や温度センサ204が設けられる。吸込口207は、室内熱交換器201の中心より下方に設けられ、吹出口208は、室内熱交換器201より上方に設けられている。このように下方から吸込口207、室内熱交換器201、吹出口208の順に配置することで、室内機20の暖房運転がサーモOFFしたときに、室内機20の内部の空気が室内熱交換器201により温められて上昇し、吹出口208から室内へ供給される。供給された空気は室内を上昇する。低圧となった室内熱交換器201には、吸込口207から室内空気が流入し、同様のプロセスを経て、室内機20上部の吹出口208から室内へ供給される。
【0017】
(自然対流が生じるような吸入速度を規定する場合)
このとき、自然対流が生じるためには、室内に既に存在する気流よりも強い流れが生じる必要がある。ここで、煙突効果に基づく、煙突に流入するガスの給気速度を計算する以下の計算式(1)を援用する。
【0018】
【数1】
【0019】
Qは給気速度(m/s)、Cは所定の流量係数(例えば、0.65~0.7の値)、Aは煙突の断面積(m)、gは重力加速度、hは煙突の高さ(m)、Tは外気温度(K)、Tは煙突内平均温度(K)である。
【0020】
室内機20の室内熱交換器201の高さ方向の中央Lから吹出口208までの空気の流路を煙突と見立てて、式(1)を図3の室内機20へ適用すると、次式(2)の右辺が得られる。式(2)の右辺により、室内機20へ吸入される室内空気の吸入速度が計算できる。
【0021】
【数2】
【0022】
Aoは吹出口208の面積(m)、Aiは吸込口207の面積(m)、C2は室内熱交換器201による圧損係数(熱交圧損による圧損減少率のこと、例えば、0.5)、gは重力加速度、hは室内熱交換器201の高さ方向の中央と吹出口208との高低差(m)(図3に示すh)、Toは吹出空気の温度(K)、Tiは吸込空気の温度(K)である。
【0023】
左辺の0.5m/sは、建築基準法で室内の気流を0.5m/s以下とすることが定められていることから、室内で0.5m/s以上の気流を発生させれば、自然対流が発生するはずであるとの考え方に基づく。左辺の値は、室内機20を設置する環境に応じて任意に設定することができる。Tiは温度センサ204が計測する温度であり、Toは温度センサ205が計測する温度と同様の温度である。温度センサ205が計測する温度は、室内熱交換器201の凝縮温度であり、凝縮温度に基づいて圧縮機11の吐出圧力が決まる。例えば、Tiを設定温度とすると、式(2)を満たすために必要なToや圧縮機11の吐出圧力が決まる。マルチ型の空調機100では、他の室内機21等の設定温度も考慮して圧縮機11の運転を決める必要があるが、それを考慮しても式(2)を満たすh、Ao、Ai、暖房時のToおよび圧縮機11の吐出圧力などを事前に設計することは可能である。室外機10の制御装置14は、室内熱交換器201の凝縮温度が式(2)を満たすToとなるように圧縮機11を運転するよう設計される。そして、室内機20の制御装置206は、室内機20が暖房中にサーモOFFとなると、ファン203を停止する。すると、室内機20では、式(2)の右辺で計算できる速度で、吸込口207から室内空気が吸入され、吹出口208から暖気を放出するという空気の流れが生じる。この空気の流れは、式(2)の条件を満たすから、室内の気流の影響を受けず、室内に自然対流が生じる。自然対流によって室内空気が循環すると、室内空気が混合して室内温度が均一化され、温度センサ204が計測する温度は、室内の正確な温度となる。これにより、ファン203を運転することなく、正確な室内温度を検出することができるようになる。
【0024】
(自然対流による風量による暖房能力を規定する場合)
また、従来制御のように暖房運転のサーモOFF時にファン203を運転すると、室内機20が空調対象とする部屋が過暖房となってしまうことに注目して、サーモOFF時の暖房能力の観点から、サーモOFF時の室内機20の暖房能力が適切(例えば、過暖房にならない)となるための条件を設定して、To等を算出するようにしてもよい。具体的には、上記の式(2)を応用した次式(3)を用いることができる。
【0025】
【数3】
【0026】
Cpは空気の比熱である。Ao、C2、g、h、Ti、Toについては式(2)と同様である。式(3)は、サーモOFF時にファン203を停止したときの室内機20の暖房能力を、室内機20の定格能力の50%以下とすることを規定している。式(3)の左辺の値は任意に設定することができる。暖房能力は、風量に吸込口207と吹出口208の温度差を乗じることで得られるため、吸入速度を規定した式(2)の右辺から式(3)の右辺を得ることができる。式(3)を満たすようなAi、Ao、hを有し、設定温度Ti、凝縮温度Toで運転されるような室内機20を設計する。これにより、サーモOFF時の暖房能力を定格能力の50%以下とすることができる。また、Toは暖房運転として成立する値(例えば、40℃以上)のため、式(3)を満たすようなTi、Toを設計すれば、式(2)右辺で計算できる吸込口207における吸入速度は、自然対流が発生するような速度となることが分かっている。従って、(3)に基づいて設計された室内機20について、室内熱交換器201の凝縮温度がToとなるよう圧縮機11を運転することで、室内機20の暖房運転のサーモOFF時にファン203を停止しても、自然対流による空気の流れが生じ、温度センサ204によって正確な室内温度を計測することができる。また、サーモOFFの暖房能力を所望の値以下に抑制することができる。
【0027】
以上説明したように、Tiは暖房運転時の設定温度、Toは暖房運転時の室内熱交換器の凝縮温度とみなせることから、Ti、Toの値についてはおおよその範囲が決まる。これを利用して、式(2)、式(3)を満たすようなh、Ao、Aiの値を設計し、図3に例示する、吸込口207、室内熱交換器201、吹出口208が下方からこの順で配置される室内機20を設計、製造する。そして、製造した室内機20を据え付けて、暖房運転中にサーモOFFとなると、ファン203を停止するよう制御する。すると、自然対流により、室内温度が均一化されるため、吸込口207付近に設けられた温度センサ204によって、正確な室温を計測することができるようになる。
【0028】
以上、説明したように本実施形態によれば、式(2)および/又は式(3)に基づいて設計された室内機20の暖房運転のサーモOFF時にファン203を停止しても、温度センサ204によって、正確な室内の温度を計測することができる。ファン203を停止することにより、サーモOFF時の過暖房を防止することができる。ファン203を停止することにより、室内熱交換器201にて凝縮する冷媒量を減少することができ、室内熱交換器201への冷媒の溜り込みを抑制することができる。従って、他の室内機21等において、冷媒不足による暖房能力の低下が発生することを防ぐことができる。
【0029】
なお、上記の実施形態では、サーモOFF時の自然対流に用いる室内機20の開口部を、吸込口207と吹出口208としたが、吸込口207と吹出口208以外に開口部を設けてもよい。例えば、吸入用の開口部1、吹出用の開口部2を設け、下から順に、開口部1、室内熱交換器201、開口部2の順に配置してもよい。そして暖房運転のサーモOFF時には、吸込口207と開口部1の何れか又は両方を用いて室内空気を吸入し、吹出口208と開口部2の何れか又は両方を用いて暖気を放出するようにしてもよい。
【0030】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、式(2)と式(3)の両方を満たすように、Ti、To、h、Ai、Aoを設計してもよい。
【0031】
<付記>
各実施形態に記載の空調機及び制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0032】
(1)第1の態様の空調機100は、ファンと、室内熱交換器と、空気を吸入する第1開口部と、空気を放出する第2開口部と、温度センサと、を有する室内機と、室外機と、を有し、前記第1開口部は、前記室内熱交換器の高さ方向の中央よりも下方に設けられ、前記第2開口部は、前記室内熱交換器よりも上方に設けられ、暖房運転時の前記第1開口部の空気温度および前記第2開口部の空気温度と、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差と、前記第2開口部の面積と、を含む所定の条件式を満たすように、暖房運転時に前記室内熱交換器における熱交換が不要なサーモOFFとなった場合に前記ファンを停止しても、前記第1開口部から空気が吸入され、前記第2開口部から空気が放出される空気の流れが生じるように、前記第1開口部の空気温度と、前記第2開口部の空気温度と、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差と、前記第1開口部の面積と、前記第2開口部の面積とが設定されている。
空調機をこのような構成とすることにより、暖房運転のサーモOFF時にファンを停止しても、自然対流による室内温度の均一化により、正確な室内温度を計測することができる。
【0033】
(2)第2の態様に空調機100は、(1)の空調機100であって、前記条件式は、前記第1開口部の空気温度をTi、前記第2開口部の空気温度をTo、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差をh、前記第1開口部の面積をAi、前記第2開口部の面積をAo、C2を前記室内熱交換器の圧損係数としたときに以下の式である。
【数4】
例えば、左辺に室内に存在する気流の風速を設定することにより、既存の気流に負けない自然対流を生じさせる空調機を設計することができる。
【0034】
(3)第3の態様に係る空調機100は、(1)~(2)の空調機であって、前記条件式は、前記第1開口部の空気温度をTi、前記第2開口部の空気温度をTo、前記室内熱交換器の高さ方向の中央と前記第2開口部の高さ方向の高低差をh、前記第2開口部の面積をAo、C2を前記室内熱交換器の圧損係数、Cpを空気の比熱としたときに以下の式である。
【数5】
これにより、サーモオフ時の暖房能力を抑えた空調機を設計することができる。
【0035】
(4)第4の態様に係る空調機100は、(1)~(3)の空調機であって、複数の前記室内機と前記室外機を有し、複数の前記室内機と前記室外機とが冷媒配管で接続され、前記室内熱交換器には、当該室内熱交換器を有する前記室内機の暖房運転がサーモOFFのときにも冷媒が流れる。
本実施形態の条件式を満たす室内機は、マルチ型の空調機の室内機に好適である。
【0036】
(5)第5の態様に係る制御方法によれば、(1)~(4)の空調機において、前記室内機の暖房運転が前記サーモOFFとなると、前記ファンを停止する。
これにより、サーモOFFした室内機による過暖房、当該室内機の室内熱交換器への冷媒の溜り込み、他の室内機における暖房能力不足の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
10・・・室外機
11・・・圧縮機
12・・・四方弁
13・・・室外熱交換器
14・・・制御装置
20・・・室内機
201・・・室内熱交換器
202・・・膨張弁
203・・・ファン
204・・・温度センサ
205・・・温度センサ
206・・・制御装置
21・・・室内機
211・・・室内熱交換器
212・・・膨張弁
213・・・ファン
214・・・温度センサ
215・・・温度センサ
216・・・制御装置
22・・・室内機
23・・・室内機
30~39・・・配管
3A、3B・・・継手
図1
図2
図3