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特開2024-2438高架道路用コンクリート床版の架け替え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002438
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】高架道路用コンクリート床版の架け替え方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20231228BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20231228BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101603
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】堀内 達斗
(72)【発明者】
【氏名】桐川 潔
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059CC27
2D059GG39
2D059GG40
2D059GG41
2D059GG55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】道路幅員方向で3分割以上の区分に分割し、交通量の多い重交通区間での常時複数車線の供用を維持しつつ作業を行うことができる高架道路用コンクリート床版の架け替え方法の提供。
【解決手段】高架道路用コンクリート床版の架け替え方法は、コンクリート床版を道路幅員方向に少なくとも3以上に分割した作業区画毎に他の複数の作業区画を道路として供用した状態で幅員方向接合面部に凹穴又は凹溝状のせん断力伝達部形成用凹部が形成されてなる新設プレキャストコンクリート版22,22…を設置し、接合面部間にせん断力伝達部形成用目地空隙部を形成し、せん断力伝達部形成用目地空隙部に膨張性又は無収縮性の充填材を充填し、新設プレキャストコンクリート版22,22間にせん断力伝達部26を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の橋桁に支持されるコンクリート床版を架け替える高架道路用コンクリート床版の架け替え方法において、
前記コンクリート床版を道路幅員方向に少なくとも3以上に分割した作業区画を設定し、
該作業区画毎に他の複数の作業区画を道路として供用した状態で撤去した既設コンクリート床版に替えて幅員方向接合面部にせん断力伝達部形成用凹部が道路長さ方向に連続して形成されてなる新設プレキャストコンクリート版を設置し、
幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版の接合面部間に所定幅の縦目地部と、該縦目地部を挟んで対向する前記せん断力伝達部形成用凹部とからなるせん断力伝達部形成用目地空隙部を形成し、
該せん断力伝達部形成用目地空隙部に膨張性又は無収縮性の充填材を充填し、幅員方向で隣り合う前記新設プレキャストコンクリート版間にせん断力伝達部を形成し、該隣り合う前記新設プレキャストコンクリート版を接合することを特徴としてなる高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【請求項2】
前記新設プレキャストコンクリート版は、プレテンション方式によりプレストレスが付与されている請求項1に記載の高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【請求項3】
前記各新設プレキャストコンクリート版は、一端が前記せん断力伝達部形成用凹部と連通し、他端が他方の幅員方向端面又はコンクリート版の裏面部に開口したPC緊張材挿通孔を備え、
該PC緊張材挿通孔を通して隣り合う新設プレキャストコンクリート版間に跨って挿通させたPC鋼材を緊張して隣り合う新設プレキャストコンクリート版間にポストテンション方式のプレストレスを付与する請求項1又は2に記載の高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【請求項4】
前記新設プレキャストコンクリート版の幅員方向接合端部には、前記PC緊張材挿通孔の位置よりコンクリート版表面に向けた作業用凹溝が形成され、
互いに対向する作業用凹溝間の間隙を用いて、隣り合う前記新設プレキャストコンクリート版の前記PC緊張材挿通孔同士をシース材で連結する請求項3に記載の高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鋼桁とコンクリート床版とからなる鋼桁橋におけるコンクリート床版部分を架け替えるための高架道路用コンクリート床版の架け替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼桁橋におけるコンクリート床版は、車両を直接支持する構造部材であり、経年劣化に加え、車両交通量の増大と車両の大型化の影響を直接受け、架け替えが必要な損傷事例が多発している。また、寒冷地における凍結防止剤の散布、海洋からの飛来塩分の影響を受け、コンクリート内の鋼材が腐食することによる塩害劣化事例も多発している。
【0003】
従来、上記のようなコンクリート床版の損傷に対する対策として補修工法が多く開発されているが、根本的な対策として、既設コンクリート床版を除去してそこに新たに高架道路用コンクリート床版を構築して架け替えを行う工法がある。
【0004】
この種のコンクリート床版の架け替え方法としては、交通規制や交通渋滞等による社会的利益の損失を抑制するため、図13図14に示すように、高架道路用コンクリート床版の道路幅員方向を一次施工部と二次施工部とに2分割し、二次施工部の既設コンクリート床版を道路として供用可能に残した状態で一次施工部の架け替え工事を施工し、一次施工部の架け替え工事の完了後、これを道路として供用させた状態で残りの二次施工部の架け替え工事を施工する方法が主流となりつつある(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
この方法では、先ず、図13(a)に示すように、既設コンクリート床版1の全幅員を道路として供用している状態で切断位置の下面に鋼桁に支持させた仮支持桁3を仮設するとともに、所望の切断位置2で複数の鋼桁に架設されたコンクリート床版を分割する。
【0006】
次いで、図13(b)に示すように二次施工部7を道路として供用させた状態で、一次施工部6の既設コンクリート床版を解体した後、その既設コンクリート床版をトラッククレーン等で吊り上げて除去し、図13(c)に示すように、その一次施工部6の既設床版を除去した部分に床版1を半割状にしたプレキャストコンクリート版8をトラッククレーン等により運び入れて道路方向に連設する。
【0007】
そして、図14(d)に示すように鋼桁4,4間に架設された新たなプレキャストコンクリート版8からなる床版上を道路として供用させ、未取り換えの残りの二次施工部7の既設床版をトラッククレーン等のクレーン装置で除去し、然る後、図14(e)に示すように二次施工部7の既設床版が除去された部分に、プレキャストコンクリート版8と互いに突き合わせ配置に半割状のプレキャストコンクリート版9を設置する。
【0008】
そして、プレキャストコンクリート版8,9を一体化して床版10を構成させ、図14(f)に示すように全幅員に亘って供用させる。
【0009】
従来、この道路幅員方向で隣接する両プレキャストコンクリート版8,9間を一体化させるには、各プレキャストコンクリート版8,9の接合端面より直線状又はループ状の鉄筋を突出させておき、プレキャストコンクリート版8,9の接合端面間に形成される空間に各プレキャストコンクリート版8,9から突出した直線状又はループ状の鉄筋を互いに重複して配置し、その状態で空間内に現場打ちコンクリートを打設することにより連結する方法が一般的である(例えば、特許文献2及び3を参照)。
【0010】
しかしながら、近年では、両プレキャストコンクリート版8,9間にPC緊張材を挿通させ、このPC緊張材を緊張させた状態でその端部をプレキャストコンクリート版8,9に定着させ、プレキャストコンクリート版8,9を一体化するとともにコンクリート床版の全幅員にポストテンション方式でプレストレスを付与する方法も開発されている。
【0011】
また、道路幅員方向で隣接する両プレキャストコンクリート版8,9間を一体化させる方法としては、道路幅員方向で互いに突き合わされる何れか一方のプレキャストコンクリート版の接合端部に突出させた接合凸部と、他方のプレキャストコンクリート版の接合端部に形成された凹溝状の接合凹部とを設け、両プレキャストコンクリート版を接合させる際に、接合凸部と接合凹部とを嵌合させることによって、接合部の剛性強化とともに、プレキャストコンクリート版の設置高さ位置の管理を容易に行えるようにしたものも開発されている。
【0012】
一方、コンクリート床版の架け替え工事に際し、交通量の多い重交通区間では、施工時の安全確保の観点から常時複数車線の供用が求められている。
【0013】
しかしながら、上述の如き床版を道路幅員方向に2分割して実施する従来の工法では、交通規制車線を細かく設定することが難しく、重交通区間に対応するためには、床版を幅員方向に3以上の複数に分割して作業を行うことが望まれている。
【0014】
例えば、片側3車線道路を架け替える場合、床版を幅員方向に2分割とすると、区画1の1車線分の床版を架け替える際、区画2に2車線分を供用とすることができるが、区画2の床版を架け替える際は区画1に1車線分しか供用させることができない。
【0015】
一方、片側3車線道路を幅員方向に3分割すると、区画1~3の何れか2車線を供用しつつ、他の1区画の床版の架け替え作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007-239365号公報
【特許文献2】特開2009-264040号公報
【特許文献3】特開2000-328704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、高架道路用コンクリート床版を幅員方向に3分割以上に分割し、少なくとも2車線を供用しつつ床版の架け替えを行う場合、中央側区画のコンクリート床版を架け替える際、当該中央側区画を挟んで両外側区画の車線が供用されているため、以下のような問題があった。
【0018】
上述の特許文献に示す従来の工法は、接合凸部と接合凹部とを嵌合する構造のため、高架道路用コンクリート床版を幅員方向に3分割以上に分割し、少なくとも2車線を供用しつつ床版の架け替えを行う場合、両外側区画のプレキャストコンクリート版間に中央側区画に設置されるプレキャストコンクリート版を降下させる場合、接合凸部を接合凹部に嵌合させるためにプレキャストコンクリート版を水平移動させる空間を確保できず、且つ、一方のプレキャストコンクリート版に突設された接合凸部が他方のプレキャストコンクリート版と干渉するため適用できないという問題があった。
【0019】
さらに、各プレキャストコンクリート版8,9の接合端面より直線状又はループ状の鉄筋を突出させておき、プレキャストコンクリート版8,9の接合端面間に形成される空間に各プレキャストコンクリート版8,9から突出した直線状又はループ状の鉄筋を互いに重複して配置し、その状態で空間内に現場打ちコンクリートを打設することにより連結する従来の方法では、直線状又はループ状の鉄筋の継手長を確保するために一般的に40cm程度の目地幅が必要なところ、施工時の幅員と交通規制幅との関係から、このような広めの目地幅を確保できないおそれがあった。
【0020】
また、コンクリート床版の架け替え工事では、早急に交通規制を解除することが望まれ、型枠組立て、鉄筋組立て、コンクリート打設、養生及び型枠解体等の一連の工程を必要とする場所打ちコンクリートの打設では、工程上問題があった。
【0021】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、道路幅員方向で3分割以上の区分に分割し、交通量の多い重交通区間での常時複数車線の供用を維持しつつ作業を行うことができる高架道路用コンクリート床版の架け替え方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、複数の橋桁に支持されるコンクリート床版を架け替える高架道路用コンクリート床版の架け替え方法において、前記コンクリート床版を道路幅員方向に少なくとも3以上に分割した作業区画を設定し、該作業区画毎に他の複数の作業区画を道路として供用した状態で撤去した既設コンクリート床版に替えて幅員方向接合面部にせん断力伝達部形成用凹部が道路長さ方向に連続して形成されてなる新設プレキャストコンクリート版を設置し、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版の接合面部間に所定幅の縦目地部と、該縦目地部を挟んで対向する前記せん断力伝達部形成用凹部とからなるせん断力伝達部形成用目地空隙部を形成し、該せん断力伝達部形成用目地空隙部に膨張性又は無収縮性の充填材を充填し、幅員方向で隣り合う前記新設プレキャストコンクリート版間にせん断力伝達部を形成し、該隣り合う前記新設プレキャストコンクリート版を接合することにある。
【0023】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記新設プレキャストコンクリート版は、プレテンション方式によりプレストレスが付与されていることにある。
【0024】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記各新設プレキャストコンクリート版は、一端が前記せん断力伝達部形成用凹部と連通し、他端が他方の幅員方向端面又はコンクリート版の裏面部に開口したPC緊張材挿通孔を備え、該PC緊張材挿通孔を通して隣り合う新設プレキャストコンクリート版間に跨って挿通させたPC鋼材を緊張して隣り合う新設プレキャストコンクリート版間にポストテンション方式のプレストレスを付与することにある。
【0025】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記新設プレキャストコンクリート版の幅員方向接合端部には、前記PC緊張材挿通孔の位置よりコンクリート版表面に向けた作業用凹溝が形成され、互いに対向する作業用凹溝間の間隙を用いて、隣り合う前記新設プレキャストコンクリート版の前記PC緊張材挿通孔同士をシース材で連結することにある。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る高架道路用コンクリート床版の架け替え方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、また、両側の作業区画が道路として供用された状態であってもその間に真上から新設プレキャストコンクリート版を落とし込むことができ、且つ、隣り合うコンクリート版間にせん断力を伝達する構造を形成することができ、3分割以上の作業区画毎に作業を行えるため、重交通区画等において常に複数区画を道路として供用しつつ床版の架け替え工事を行うことができる。
【0027】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、架け替え工事中の新設プレキャストコンクリート版を道路として供用した際の耐久性を確保できるとともに、工期短縮を図ることができる。
【0028】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、隣り合う新規プレキャストコンクリート版間にプレストレスを導入し、目地部の耐久性を高めることができる。
【0029】
さらにまた、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、PC緊張材挿通孔を繋ぐジョイント用シースの接続作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る高架道路用コンクリート床版の架け替え方法により架け替えられた高架道路の部分拡大平面図である。
図2】同上のA-A線矢視断面図である。
図3図2中の新規プレキャストコンクリート版間の接合部分を示す拡大断面図である。
図4】同上のB-B線矢視断面図である。
図5図4中の新規プレキャストコンクリート版間の接合部分を示す拡大断面図である。
図6】(a)は同上の両側部に設置される新設プレキャストコンクリート版を示す平面図、(b)は同上の内側部に設置される新設プレキャストコンクリート版を示す平面図、(c)は同上の接合端面部を示す側面図である。
図7】(a)~(c)は本発明に係る高架道路用コンクリート床版の架け替え方法における第1作業区画の架け替え作業の状態を示す断面図である。
図8】(d)~(f)は同上の第3作業区画の架け替え作業の状態を示す断面図である。
図9】(g)~(i)は同上の第2作業区画の架け替え作業の状態を示す断面図である。
図10】同上のPC緊張材挿通孔の連結作業の状態を示す断面図である。
図11】本発明に係る高架道路用コンクリート床版の架け替え方法により架け替えられた高架道路の他の実施例を示す断面図である。
図12】同上のさらに他の実施例を示す断面図である。
図13】(a)~(c)は従来の2分割による高架道路用コンクリート床版の架け替え方法における第1作業区画の架け替え作業の状態を示す断面図である。
図14】(d)~(f)は同上の第2作業区画の架け替え作業の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明に係る高架道路用コンクリート床版の架け替え方法の実施態様を図1図10に示した実施例に基づいて説明する。
【0032】
図1図5は本発明方法により構築された高架道路用コンクリート床版(以下、PC床版20という)を示し、このPC床版20は、コンクリート床版の道路幅員方向を少なくとも3分割以上の複数の作業区画A1~A3を設定し、各作業区画A1~A3に既設コンクリート床版21に替えて設置した新設プレキャストコンクリート版22,22…を互いに道路幅員方向で接合させ、幅員方向に隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間にPC緊張材23を挿通させ、PC緊張材23を緊張することにより新設プレキャストコンクリート版間にポストテンション方式によりプレストレスが付与されて構成され、そのPC床版20全体が複数の鋼桁24,24…に支持されている。
【0033】
各作業区画A1~A3には、それぞれプレテンション方式によって道路幅員方向にプレストレスが付与された新設プレキャストコンクリート版22,22…を鋼桁24,24…の長さ方向に多数並べて支持させることによって構成されている。
【0034】
新設プレキャストコンクリート版22,22…は、図6に示すように、構築するPC床版20を設定された作業区画A1~A3数に応じて分割した形状の平面視矩形状に形成され、道路幅員方向の他の作業区画側の端部、即ち、他の作業区画に設置された新設プレキャストコンクリート版22,22…との接合端部に道路軸方向に連続した凹溝状のせん断力伝達部形成用凹部25が形成されている。
【0035】
せん断力伝達部形成用凹部25は、道路長さ方向に連続する凹溝状に形成され、上下側縁が互いに接合側から中央側に向かって傾斜するテーパ状を成している。
【0036】
そして、新設プレキャストコンクリート版22,22…の接合端部にせん断力伝達部形成用凹部25を設けたことにより、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22…の接合面部間には、所定幅の縦目地部と、縦目地部を挟んで対向するせん断力伝達部形成用凹部25とからなるせん断力伝達部形成用目地空隙部が形成される。
【0037】
尚、新設プレキャストコンクリート版22,22…の道路幅員方向の幅は、設置した際に隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間に所定幅、即ち、20~30mmの目地幅が形成されるように設定され、接合面が互いに当該目地幅を挟んで突き合わされた状態になるようにしている。
【0038】
このせん断力伝達部形成用目地空隙部には、膨張性又は無収縮性のモルタル等の充填材が充填され、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間にせん断力伝達部形成用凹部25と嵌合するキー形状の凸部26a,26aを有するせん断力伝達部26が形成され、隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22…でせん断力を伝達できるようになっている。
【0039】
また、各新設プレキャストコンクリート版22,22…には、一端がせん断力伝達部形成用凹部25と連通し、他端が裏面に突出させた緊張支圧部27に連通開口するPC緊張材挿通孔28,28が道路長さ方向に間隔をおいて形成され、このPC緊張材挿通孔28,28を通して隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間に跨るようにPC緊張材23を挿通させ、せん断力伝達部26が形成された後、PC緊張材23を緊張させてポストテンション方式によりプレストレスを導入することによって、目地部の耐久性及びひび割れ発生を抑止できるようになっている。
【0040】
尚、新設プレキャストコンクリート版22,22…の幅員方向接合端部には、PC緊張材挿通孔28,28の位置よりコンクリート版表面に向けた作業用凹溝29が形成され、互いに対向する作業用凹溝29,29間の間隙を用いて、隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22…のPC緊張材挿通孔28,28同士をジョイントシース30で連結できるようになっている。尚、作業用凹溝29は、作業が円滑に行えるように作業用凹溝29,29間の間隙が90mm程度となるようにすることが好ましい。
【0041】
更にまた、この新設プレキャストコンクリート版22,22…には、特に図示しないが、プレテンション用PC緊張材が所望の緊張力で緊張した状態で埋設され、このプレテンション用PC緊張材の戻り力によってプレテンション方式により道路幅員方向に向けたプレストレスが導入されている。
【0042】
更に、新設プレキャストコンクリート版22,22…には、短手方向両端部、即ち、道路長さ方向両端面よりループ筋等からなる鉄筋連結部31,31…が突設されており、道路長さ方向で隣り合う各新設プレキャストコンクリート版22,22…を突き合わせた際、道路長さ方向に隣り合う各新設プレキャストコンクリート版の鉄筋連結部31,31…同士を重複させ、道路長さ方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間に場所打ちコンクリート36を打設することによって道路長さ方向で隣り合う各新設プレキャストコンクリート版22,22…が接合される。
【0043】
次に、本発明方法を用いた高架道路用コンクリート床版の架け替えの一例について説明する。
【0044】
この方法は、図7に示す既設コンクリート床版21を道路幅員方向に3分割した第1~第3の作業区画A1~A3とし、作業区画A1~A3毎に他の作業区画を道路として供用している状態で、第1、第3、第2の作業区画の順に床版の架け替え作業を行い、しかる後、隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間を互いに接合させ、床版全体を一体化させて架け替え工事を完了するものである。
【0045】
尚、本実施例では、第1、第3、第2の作業区画の順に床版の架け替え作業を行うが、作業の順番はこれに限定されず、作業の順番は任意に決定することができる。
【0046】
次に本例の架け替え工程を順に説明する。
【0047】
a.既設コンクリート床版切断部下面の仮設支持材32の設置
図7(a)に示すように、架け替えようとする既設コンクリート床版21を供用している状態で、これが幅員方向に3分割された第1~第3の作業区画A1~A3とする。尚、本実施例では、図中左側よりそれぞれ第1~第3作業区画A3と規定して説明する。
【0048】
尚、各作業区画A1~A3の境界部が最も近い鋼桁24,24…から張り出した部分が片持ち支持された状態となる場合、必要に応じてその片持ち部の先端下面を仮設支持材32によって下側から支持し、道路表面からの下向き荷重を受け持たせる。
【0049】
仮設支持材32は、例えば、床版下面と鋼桁24,24…との間に取り付けた斜材によって構成する。尚、仮設支持材32としては、斜材の他に、仮設の鋼桁を使用してもよい。
【0050】
b.既設コンクリート床版の切断、第1作業区画A1の既設コンクリート床版撤去
図7(b)に示すように、第2作業区画A2の第1作業区画A1側の縁部に上面にガードレール33を設置し、このガードレール33を堺に第2及び第3の作業区画A2、A3のみを道路として供用させ、第1作業区画A1上の通行を遮断状態で、既設コンクリート床版21の第1作業区画A1と第2作業区画A2との境界部分を切断し、第1作業区画A1部分の既設コンクリート床版21aを撤去する。
【0051】
この撤去は一例としてクレーンを使用し、既設コンクリート床版21の道路進行方向側の1区画ずつ吊り上げて地上に降ろし、地上にて必要な大きさに破砕し、鋼材とコンクリートとを分別するようにしてもよく、鋼桁24,24…上に架設された状態で破砕し、コンクリートと鋼材とを分別するようにしてもよい。
【0052】
c.第1作業区画A1への新設プレキャストコンクリート版22の架設
図7(c)に示すように、既設コンクリート床版21aが除去された第1作業区画A1の鋼桁24,24…上に、予めプレコンクリート構造物製作ヤードで製作した所定の数の新設プレキャストコンクリート版22を鋼桁24,24…の長さ方向に並べて架設するとともに、道路長さ方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間を場所打ちコンクリート36で接合する。また、その新設プレキャストコンクリート版22の第2作業区画A2側縁部下を仮設支持材32にて支持させ、第1作業区画A1の新設プレキャストコンクリート版22を道路としての供用に耐え得る強度とする。
【0053】
新設プレキャストコンクリート版22の設置作業は、クレーン等により第1作業区画A1の直上から第2作業区画A2の端面と突き合わせ配置となるように吊り下ろす。その際、新設プレキャストコンクリート版22の幅員方向端部には突出部が存在しないため、直下に吊り下ろすことができる。
【0054】
d.第3作業区画A3の既設コンクリート床版の除去
図8(d)に示すように、第1作業区画A1に設置した新設プレキャストコンクリート版22上を供用可能な強度とするとともに表面に必要に応じて仮舗装34aを施し、しかる後、先に設置した第2作業区画A2の縁部上の仮設ガードレール33を第2作業区画A2の第3作業区画A3側縁部上に移動させ、第1作業区画A1及び第2作業区画A2を道路として供用させ、第3作業区画A3の供用を停止する。
【0055】
この状態で図8(e)に示すように、第3作業区画A3上の通行を遮断状態で、既設コンクリート床版21の第2作業区画A2と第3作業区画A3との境界部分を切断し、第3作業区画A3部分の既設コンクリート床版21cを撤去する。
【0056】
e.第3作業区画A3への新設プレキャストコンクリート版22の架設
図8(f)に示すように、既設コンクリート床版21cが除去された第3作業区画A3の鋼桁24,24…上に、予めプレコンクリート構造物製作ヤードで製作した所定の数の新設プレキャストコンクリート版22を鋼桁24,24…の長さ方向に並べて架設するとともに、道路長さ方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間を場所打ちコンクリート36で接合する。また、その新設プレキャストコンクリート版22の第2作業区画A2側縁部下を仮設支持材32にて支持させ、第3作業区画A3の新設プレキャストコンクリート版22を道路としての供用に耐え得る強度とする。
【0057】
新設プレキャストコンクリート版22の設置作業は、クレーン等により第3作業区画A3の直上から第2作業区画A2の端面と突き合わせ配置となるように吊り下ろす。その際、新設プレキャストコンクリート版22の幅員方向端部には突出部が存在しないため、直下に吊り下ろすことができる。
【0058】
f.第2作業区画A2の既設コンクリート床版の除去
図9(g)に示すように、第3作業区画A3に設置した新設プレキャストコンクリート版22上を供用可能な強度とするとともに表面に必要に応じて仮舗装34aを施し、しかる後、先に設置した第2作業区画A2の縁部上の仮設ガードレール33を第3作業区画A3の第2作業区画A2側縁部上に移動させるとともに、第1作業区画A1の第2作業区画A2側縁部上に新たなガードレール33を設置し、第1作業区画A1及び第3作業区画A3を道路として供用させ、第2作業区画A2の供用を停止する。
【0059】
この状態で図9(h)に示すように、既に第1作業区画A1及び第3作業区画A3とは縁切りされた状態にある第2作業区画A2の既設コンクリート床版21bを除去する。
【0060】
g. 第2作業区画A2への新設プレキャストコンクリート版22の架設
図9(i)に示すように、既設コンクリート床版21bが除去された第2作業区画A2の鋼桁24,24…上に、予めプレコンクリート構造物製作ヤードで製作した所定の数の新設プレキャストコンクリート版22,22…を鋼桁24,24…の長さ方向に並べて架設し、道路長さ方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間を場所打ちコンクリート36で接合する。
【0061】
第2作業区画A2の両側、即ち、第1作業区画A1及び第3作業区画A3には、既に新設プレキャストコンクリート版22,22…(作業順によっては既設コンクリート床版21a又は21c)が設置された状態にあるので、第2作業区画A2の新設プレキャストコンクリート版22を第2作業区画A2の直上よりクレーン等で吊り下ろし、幅員方向の両端部がそれぞれ第1・第3作業区画A1・A3に設置された新設プレキャストコンクリート版22,22…の端面と突き合わせ配置となるように吊り下ろす。その際、各作業区画A1~A3に設置される新設プレキャストコンクリートの幅員方向端部には、それぞれ突出部が存在しないため、隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間が互いに干渉することなく直下に吊り下ろすことができる。
【0062】
そして、第1~第3の作業区画A1~A3において、新設プレキャストコンクリート版22,22…が設置されると、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22の接合面部間には、所定幅の縦目地部と、縦目地部を挟んで対向するせん断力伝達部形成用凹部25とからなるせん断力伝達部形成用目地空隙部が形成される。
【0063】
h.PC緊張材挿通孔28,28の連結
互いに幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22…の何れか一方には、図10(a)に示すように、PC緊張材挿通孔28内にジョイントシース30が引き込んだ状態で設けられている。
【0064】
ジョイントシース30は、外周面に雄ネジ部が螺設された管状に形成され、PC緊張材挿通孔28の凹部側端部に形成された雌ネジ部と螺合し、回転させることによりPC緊張材挿通孔28に対し出し入れできるようになっているとともに、相手方のPC緊張材挿通孔28の端部と螺合させることにより、PC緊張材挿通孔28,28同士を連結できるようになっている。
【0065】
そこで、第1~第3の作業区画A1~A3において、新設プレキャストコンクリート版22,22…が設置されたら、互いに対向する作業用凹溝29,29間の間隙から作業員が手を挿し込み、PC緊張材挿通孔28,28内に引き込まれた状態にあったジョイントシース30を回転させ、図10(b)に示すように、隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22…のPC緊張材挿通孔28,28同士をジョイントシース30で連結する。
【0066】
i.せん断力伝達部26の形成
PC緊張材挿通孔28,28の連結作業と併行して、目地部の下面及び道路長さ方向側端面に型枠を設置し、図3図5に示すように、せん断力伝達部形成用目地空隙部に膨張性又は無収縮性の充填材を充填し、充填材を養生・固化させることによって、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間にせん断力伝達部26を形成する。
【0067】
せん断力伝達部26は、モルタル等の充填材がせん断力伝達部形成用凹部25,25内に充填されることで、キー状の凸部26a、26aが形成され、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間にせん断力が伝達される構造が形成される。
【0068】
j.プレストレスの導入
充填材が固化し、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間にせん断力伝達部26が形成されたら、PC緊張材挿通孔28,28を通して幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間に跨るようにポストテンション用のPC緊張材23を挿通し、図10(c)に示すように、緊張した状態でその両端を新設プレキャストコンクリート版22,22…の裏面部に形成された緊張支圧部27にそれぞれ定着具35で定着させ、プレストレスを導入させる。
【0069】
このプレストレスは、定着具35,35間に導入されることとなり、幅員方向で隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22…の道路幅員方向にプレストレスが導入されるとともに、両新設プレキャストコンクリート版22,22…が一体化される。
【0070】
f.仮設ガードレール、仮設支持材32の撤去、全幅員供用開始
このようにして新たなPC床版20を構築した後、図2図5に示すように仮設ガードレール33,33及び仮設支持材32を撤去し、道路全体に新たな舗装34を敷設し、架け替えPC床版20の全幅員を道路として供用させて架け替えを完了する。
【0071】
尚、上述の実施例では、片側3車線の道路を3分割して作業を実施した場合について説明したが、4分割以上に分割して作業を実施してもよい。
【0072】
また、上述の実施例では、緊張した状態でポストテンション用のPC緊張材23の両端をそれぞれ新設プレキャストコンクリート版22,22…の裏面部に形成された緊張支圧部27に定着具35で定着させ、プレストレスを導入させる場合について説明したが、隣り合う新設プレキャストコンクリート版22,22間にプレストレスを導入する方法はこれに限定されず、PC緊張材23の定着位置も特に限定されるものではない。
【0073】
例えば、図11に示すように、PC緊張材23の何れか一方の端部を新設プレキャストコンクリート版22の裏面部に形成された緊張支圧部27に定着具35で定着させ、他方の端部を新設プレキャストコンクリート版22の側面(道路幅員側端面)に定着具35によって定着させてもよく、図12に示すように、道路幅員方向に連なる複数の新設プレキャストコンクリート版22,22…を幅員方向に一本のPC緊張材23を貫通させ、その両端部を道路の幅員方向両端面に定着具35によって定着させてもよい。
【符号の説明】
【0074】
20 PC床版
21 既設コンクリート床版
22 新設プレキャストコンクリート版
23 PC緊張材
24 鋼桁
25 せん断力伝達部形成用凹部
26 せん断力伝達部
27 緊張支圧部
28 PC緊張材挿通孔
29 作業用凹溝
30 ジョイントシース
31 鉄筋連結部
32 仮設支持材
33 ガードレール
34 舗装
35 定着具
図1
図2
図3
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