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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024388
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ガス処理装置及びガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240215BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240215BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127183
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AB01
4D002BA02
4D002DA31
4D002DA70
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA03
4D002GB06
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA30
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020CC09
4D020CC12
(57)【要約】
【課題】酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させる。
【解決手段】ガス処理装置10は、酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液に吸収させる吸収器21と、酸性化合物を吸収した処理液を熱源流体の熱で加熱し、当該処理液から酸性化合物を分離する複数の再生器22と、処理液からの酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを再生器22に導入する導入手段52と、を備える。複数の再生器22のそれぞれには、熱源流体の熱で処理液を加熱する加熱器44が設けられ、各加熱器44が直列的に接続されて熱源流体が各加熱器44を順に流れるようになっている。導入手段52は、熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器が設けられた再生器22ほど多くの前記分離促進ガスを導入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、
前記酸性化合物を吸収した前記処理液を熱源流体の熱を利用して加熱し、当該処理液から前記酸性化合物を分離する複数の再生器と、
前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを前記複数の再生器に導入する導入手段と、
を備え、
前記複数の再生器のそれぞれには、前記熱源流体の熱で前記処理液を加熱する加熱器が設けられ、各加熱器が直列的に接続されて前記熱源流体が各加熱器を順に流れるようになっており、
前記導入手段は、前記熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器が設けられた再生器ほど多くの前記分離促進ガスを導入するように構成されている、
ガス処理装置。
【請求項2】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であり、
前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス又は水蒸気である、請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記被処理ガスは二酸化炭素ガスであり、前記分離促進ガスは水素ガスである、請求項1又は2に記載のガス処理装置。
【請求項4】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、
前記酸性化合物を吸収した前記処理液を複数の再生器に導入し、各再生器において、熱源流体の熱を利用して前記処理液を加熱し、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生工程と、を含み、
前記複数の再生器のそれぞれに加熱器が設けられて、各加熱器が直列的に接続されており、
前記再生工程には、
前記熱源流体を各加熱器に順に流して各再生器の処理液を加熱する加熱工程と、
前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを各再生器に導入する導入工程と、が含まれ、
前記導入工程では、前記熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器が設けられた再生器ほど多くの前記分離促進ガスを流入させる、ガス処理方法。
【請求項5】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であり、
前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス又は水蒸気である、請求項4に記載のガス処理方法。
【請求項6】
前記被処理ガスは二酸化炭素ガスであり、前記分離促進ガスは水素ガスである、請求項4又は5に記載のガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性化合物を分離するためのガス処理装置及びガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液と接触させることによって、酸性化合物を分離するガス処理装置が知られている。例えば、下記特許文献1に開示されたガス処理装置は、吸収器と再生器とを備えており、吸入器において、被処理ガスと処理液とを接触させて、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させる。一方、再生器においては、酸性化合物を吸収した処理液を加熱することにより、処理液から酸性化合物を分離させる。この処理液の再生時には、酸性化合物の分離を促すための分離促進ガスが再生器に導入され、これによって処理液の再生促進がなされ、再生温度の低温化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6906766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたガス処理装置では、再生温度の低温化が図られており、ガス処理に必要なエネルギーの低減が図られているものの、より少ない消費エネルギーで酸性化合物を分離回収できる技術の開発が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係るガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を熱源流体の熱を利用して加熱し、当該処理液から前記酸性化合物を分離する複数の再生器と、前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを前記複数の再生器に導入する導入手段と、を備える。前記複数の再生器のそれぞれには、前記熱源流体の熱で前記処理液を加熱する加熱器が設けられ、各加熱器が直列的に接続されて前記熱源流体が各加熱器を順に流れるようになっている。前記導入手段は、前記熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器が設けられた再生器ほど多くの前記分離促進ガスを導入するように構成されている。
【0007】
本発明に係るガス処理装置では、複数の再生器にそれぞれ設けられた加熱器が熱源流体の流路に直列的に配置されており、各加熱器を熱源流体が順に流れる。このため、一の再生器(第1の再生器)に対応する加熱器(第1の加熱器)で処理液を加熱するのに利用されて温度が下がった熱源流体が、別の再生器(第2の再生器)に対応する加熱器(第2の加熱器)に導入される。したがって、第2の加熱器では、第1の加熱器に比べて、加熱された後の処理液の温度が低下する。一方で、この第2の加熱器に対応する第2の再生器には、第1の加熱器に対応する第1の再生器に比べて多くの分離促進ガスが導入されるため、比較的低い温度の処理液が存在する第2の再生器においても、第1の再生器と同等の量の酸性化合物を処理液から分離するといった運転も可能である。しかも、各加熱器を熱源流体が順に流れる構成であるため、複数の再生器で処理液の再生を行うとしても、熱源流体の流路を流れる熱源流体の量を再生器の数に比例させて増大させる必要はないため、結果として、投入熱量の増大を抑制できる。したがって、ガス処理装置全体として熱の利用効率を高めることができ、ガス処理に必要なエネルギーを減らすことができる。
【0008】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であってもよく、この場合、前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス又は水蒸気であってもよい。この態様では、再生器内において、処理液にほぼ溶解しないガス又は水蒸気である分離促進ガスを処理液に接触させるだけでなく、酸性化合物の含有率の低い相部分を介在させた状態で、処理液から酸性化合物を分離する。このため、酸性化合物を分離するときの再生温度をより低くすることができる。例えば、処理液を適切に選択することにより、100℃以下の温度でも処理液の再生が可能となる。このため、常圧の温水や加圧された温水を熱源流体として採用することも可能となる。温水の場合、蒸気と異なり、熱交換することによって温度が低下するが、処理液の温度も低くて良いため、相分離する処理液との相性が良く、低温まで熱を使い切れるという利点がある。
【0009】
前記被処理ガスは二酸化炭素ガスであり、前記分離促進ガスは水素ガスであってもよい。
【0010】
本発明に係るガス処理方法は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を複数の再生器に導入し、各再生器において、熱源流体の熱を利用して前記処理液を加熱し、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生工程と、を含む。前記複数の再生器のそれぞれに加熱器が設けられて、各加熱器が直列的に接続されている。前記再生工程には、前記熱源流体を各加熱器に順に流して各再生器の処理液を加熱する加熱工程と、前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを各再生器に導入する導入工程と、が含まれる。前記導入工程では、前記熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器が設けられた再生器ほど多くの前記分離促進ガスを流入させる。
【0011】
本発明に係るガス処理方法では、複数の再生器にそれぞれ設けられた加熱器が熱源流体の流路に直列的に配置されており、加熱工程において、熱源流体を各加熱器に順に流す。このため、一の再生器(第1の再生器)に対応する加熱器(第1の加熱器)で処理液を加熱するのに利用されて温度が下がった熱源流体が、別の再生器(第2の再生器)に対応する加熱器(第2の加熱器)に導入される。したがって、第2の加熱器では、第1の加熱器に比べて、加熱された後の処理液の温度が低下する。一方で、導入工程において、この第2の加熱器に対応する第2の再生器には、第1の加熱器に対応する第1の再生器に比べて多くの分離促進ガスが導入されるため、比較的低い温度の処理液が存在する第2の再生器においても、第1の再生器と同等の量の酸性化合物を処理液から分離するといった運転も可能である。しかも、加熱工程において、熱源流体を各加熱器に順に流すため、複数の再生器で処理液の再生を行うとしても、熱源流体の流量を再生器の数に比例させて増大させる必要はないため、結果として、投入熱量の増大を抑制でき、ガス処理に必要なエネルギーを減らすことができる。
【0012】
前記ガス処理方法において、前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であってもよく、この場合、前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス又は水蒸気であってもよい。この態様では、再生工程において、処理液にほぼ溶解しないガス又は水蒸気である分離促進ガスを処理液に接触させるだけでなく、酸性化合物の含有率の低い相部分を介在させた状態で、処理液から酸性化合物を分離する。このため、酸性化合物を分離するときの再生温度をより低くすることができる。例えば、処理液を適切に選択することにより、100℃以下の温度でも処理液の再生が可能となる。このため、常圧の温水や加圧された温水を熱源流体として採用することも可能となる。温水の場合、蒸気と異なり、熱交換することによって温度が低下するが、処理液の温度も低くて良いため、相分離する処理液との相性が良く、低温まで熱を使い切れるという利点がある。
【0013】
前記ガス処理方法において、前記被処理ガスは二酸化炭素ガスであり、前記分離促進ガスは水素ガスであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るガス処理装置の構成を概略的に示す図である。
図2】水素ガスのモル数に対する二酸化炭素のモル数の比と再生温度との関係を示す図である。
図3】比較例としてのガス処理装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、実施形態に係るガス処理装置10は、処理液を用いて酸性化合物を含む被処理ガスから酸性化合物を分離するために利用される。本実施形態のガス処理装置10は、酸性化合物としての二酸化炭素を処理対象としている。ただし、ガス分離装置12が分離する酸性化合物としては、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されず、例えば二酸化炭素、硫黄化合物等が挙げられる。酸性化合物を含む被処理ガスとしては、例えば産業排ガス、精製時に生ずるプロセスガス、天然ガス等が挙げられる。
【0018】
ガス処理装置10は、吸収器21と、複数の再生器22と、送り流路25と、戻し流路26と、熱交換器28とを備えている。送り流路25は、吸収器21から処理液(リッチ液)を抜き出して複数の再生器22に導入させる。送り流路25は、吸収器21に接続された主流路25aと、主流路25aから分岐するように主流路25aに接続されるとともに、それぞれが再生器22に接続された複数の分岐流路25bと、を含む。すなわち、吸収器21に対して複数の再生器22が互いに並列になるように接続されている。戻し流路26は、各再生器22から処理液(リーン液)を抜き出して吸収器21に還流させる。戻し流路26は、再生器22にそれぞれ接続された複数の支流路26aと、複数の支流路26aが合流するともに吸収器21に接続された合流流路26bと、を含む。
【0019】
熱交換器28は、送り流路25及び戻し流路26に接続され、送り流路25を流れる処理液と戻し流路26を流れる処理液との間で熱交換させる。なお、熱交換器28は省略することが可能である。
【0020】
吸収器21には、被処理ガスを取り込む流入路31と、処理後のガスを排出するガス排出路32と、送り流路25と、戻し流路26と、が接続されている。流入路31は、吸収器21の下端部に接続され、ガス排出路32は、吸収器21の上端部に接続されている。送り流路25の主流路25aは、吸収器21の下端部又は下端部近傍に接続されている。すなわち、送り流路25は、吸収器21内に溜まった処理液を抜き出すことができる位置に接続されている。戻し流路26の合流流路26bは、吸収器21の上端部又は上端部近傍に接続されている。すなわち、戻し流路26は、再生器22から還流された処理液を上から流下させることができる位置に接続されている。
【0021】
吸収器21は、被処理ガスと処理液とを接触させることにより、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去されたガスを排出する。なお、吸収器21における酸性化合物の吸収は発熱反応である。吸収器21において発生するこの反応熱は、被処理ガス及び処理液の温度を上昇させる。
【0022】
各再生器22には、送り流路25の分岐流路25bと、戻し流路26の支流路26aとが接続されている。送り流路25の分岐流路25bは、再生器22の上部から中央付近の範囲に接続されている。戻し流路26の支流路26aは、再生器22の下端部又は下端部近傍に接続されている。戻し流路26の合流流路26bには、ポンプ36が設けられている。
【0023】
各再生器22は、酸性化合物を吸収した処理液が貯留され、この貯留された処理液を加熱することによって、酸性化合物を処理液から脱離させる。この処理液からの酸性化合物の脱離は、吸熱反応である。各再生器22では、処理液が加熱されると、酸性化合物が脱離するだけでなく、処理液中の水が蒸発する。
【0024】
各再生器22には、加熱流路40と供給路42とがそれぞれ接続されている。加熱流路40は、再生器22の下部から流出させた処理液を加熱するための加熱器44が設けられており、加熱された処理液を再生器22内における下部に戻す。加熱器44は、再生器22から流出された処理液を熱源流体の熱によって加熱するように構成されている。熱源流体は、例えば100℃以下の温水であるが、熱媒や水蒸気を用いてもよい。
【0025】
熱源流体は、流体流路46を通して加熱器44に供給される。流体流路46は、各加熱器44を直列的に接続するように各加熱器44に接続されている。流体流路46は、図外の供給源から供給される熱源流体をまず図中の右側の加熱器44に供給し、この加熱器44を通過した熱源流体を図中の左側の加熱器44に供給する。図1においては、右側の再生器22(第1の再生器22A)に設けられた加熱器44が第1の加熱器44Aとして機能し、左側の再生器22(第2の再生器22B)に設けられた加熱器44が第2の加熱器44Bとして機能する。したがって、第1の加熱器44Aを通過する熱源流体の温度に比べ、第2の加熱器44Bを通過する熱源流体の温度が低くなる。
【0026】
供給路42は、再生器22内で得られた酸性化合物を含むガスを需要側に供給する。供給路42には、処理液から蒸発した酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を冷却するためのコンデンサ50が設けられている。混合気体は冷却されると、水蒸気が凝縮するので、コンデンサ50によって水蒸気を分離することができる。分離された水蒸気は再生器22に還流される。コンデンサ50としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。なお、供給路42は、各再生器22から流出したガスを合流させた上で需要側に供給するように構成されているが、これに代えて、各再生器22から流出したガスを別個に需要側に供給するように構成されていてもよい。この場合、各再生器22で再生されたガスの組成比が異なる場合に有効である。
【0027】
ガス処理装置10には、酸性化合物の分離を促進するためのガス(以下、分離促進ガスと称する)を各再生器22に供給する導入手段52が設けられている。導入手段52は、分離促進ガスを複数の再生器22に送り込むための複数の導入路52aと、各導入路52aを通して供給される分離促進ガスの流量を異ならせる流量調整部52bと、を有する。各導入路52aの下流端は、再生器22の下端部、下端部近傍又は加熱流路に接続されている。なお、複数の導入路52aは、1つのガス供給源から分岐するように構成された流路であるが、異なるガス供給源に接続された別個の流路によって構成されていてもよい。
【0028】
流量調整部52bは、加熱流路40における熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器44(第2の加熱器44B)が設けられた再生器22(第2の再生器22B)ほど多くの分離促進ガスが導入されるように、各導入路52aの流量を調整可能である。流量調整部52bは、各導入路52aに配置された流量調整弁によって構成されてもよい。
【0029】
図1に示すガス処理装置10では、左側の加熱器44(第2の加熱器44B)の温度が右側の加熱器44(第1の加熱器44A)の温度よりも低くなるため、流量調整部52bは、左側の再生器22(第2の再生器22B)に供給される分離促進ガスの流量が、右側の再生器22(第1の再生器22A)に供給される分離促進ガスの流量よりも多くなるように、各導入路52aの流量を調整する。つまり、温度が比較的低くなる第2の再生器22Bには、温度が比較的高くなる第1の再生器22Aに比べて、より多くの分離促進ガスが供給される。
【0030】
導入手段52によって再生器22に供給される分離促進ガスは、処理液にほぼ溶解しないガスである。つまり、分離促進ガスは処理液にほぼ吸収されない。したがって、分離促進ガスが再生器22に導入されることによって、再生器22内の二酸化炭素分圧を下げることができるため、処理液から二酸化炭素の分離が促進される。分離促進ガスとして、水素ガス、酸素ガス、メタンガス等の炭化水素ガスを挙げることができるが、本実施形態では水素ガスが用いられる。なお、分離促進ガスとして、水蒸気が用いられてもよい。水蒸気は、処理液に溶解し得るが、二酸化炭素分圧を下げることができる。
【0031】
分離促進ガスが処理液にほぼ溶解しない場合、ここでいう「処理液にほぼ溶解しない」は、処理液への溶解度が所定値以下であることを表していてもよい。分離促進ガスは、例えば、ヘンリーの法則に従うガスであって、0℃、100kPaの条件下において、処理液100gに対する溶解度が1mol以下の溶解度であるガスであればよい。なお、水に対する酸素の溶解度は、1.3×10-4mol/100g、水に対するメタンの溶解度は、8×10-4mol/100g、水に対する水素の溶解度は、9.5×10-5mol/100gである。これに対し、水に対するアンモニアの溶解度は、6mol/100gであるので、アンモニアは分離促進ガスに該当しない。
【0032】
本実施形態においては、ガス処理装置10に用いる処理液(吸収剤)として、酸性化合物を可逆的に吸収脱離することが可能な吸収剤が用いられている。処理液は、例えば、水、アミン化合物及び有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤である。アミン化合物は30wt%、有機溶剤は60wt%、水は10wt%としてもよい。処理液は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物の吸収により相分離するのが好ましいが、これに限られるものではない。例えば、有機溶剤を用いないで、アミン化合物の水溶液とした処理液であってもよい。また、処理液は、アミン化合物、有機溶媒、イオン液体やそれらの混合物、水溶液などであってもよい。
【0033】
アミン化合物としては、例えば、2-アミノエタノール(MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm1/2)、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm1/2)等の1級アミン、例えば2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミンなどが挙げられる。
【0034】
有機溶剤としては、例えば1-ブタノール(溶解度パラメータ=11.3(cal/cm1/2)、1-ペンタノール(溶解度パラメータ=11.0(cal/cm1/2)、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、複数種を混合して用いてもよい。
【0035】
アミン化合物及び有機溶剤のそれぞれの溶解度パラメータが所定範囲に収まっている場合、処理液は、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに二相分離される。ここで、溶解度パラメータは、以下の式(1)で示される。
【0036】
【数1】
ΔHはモル蒸発潜熱、Rはガス定数、Tは絶対温度、Vはモル体積である。
【0037】
【表1】
表1に示すように、水、アミン化合物及び有機溶剤を含む吸収剤において、アミン化合物の溶解度パラメータから有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値が1.1(cal/cm1/2以上4.2(cal/cm1/2以下となるように、アミン化合物及び有機溶剤の組合せを選択することによって、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに二相分離される。溶解度パラメータの差分の値が前記下限値に満たない場合、処理液が酸性化合物を吸収しても二相に分離しないおそれがある。一方、溶解度パラメータの差分の値が前記上限値を超える場合、処理液が酸性化合物を吸収する前から二相に分離し、処理液を酸性化合物を含む被処理ガスに接触させる工程において、処理液と被処理ガスとの接触状態が不均一となり、吸収効率が低下するおそれがある。なお、表1における「良好」とは、二酸化炭素の吸収前は単一液相であり、二酸化炭素の吸収により二液相に分離したことを意味する。また、表1における「混和せず」とは、二酸化炭素の吸収前から二液相状態であり、単一液相を形成しなかったことを意味する。また、表1における「分離せず」とは、二酸化炭素の吸収後でも単一液相であったことを意味する。
【0038】
吸収器21における吸収条件を、処理液が二相に分離しながら二酸化炭素が多く溶解する領域に設定し、再生器22における再生条件を、処理液が二相分離せず二酸化炭素があまり溶解しない領域に設定することが望ましい。すなわち、二酸化炭素の分圧、吸収温度及び再生温度によって吸収条件及び再生条件を調整する。これにより、処理液が相分離し易くなるため、再生温度と吸収温度との温度差を低く抑えることが可能となる。すなわち、温度によって二酸化炭素の吸収度合いが変化して相分離し易さが変わることによって二酸化炭素吸収濃度の平衡がずれることを利用しているため、再生温度と吸収温度との温度差を低く抑えることが可能となる。加えて、再生器22に、分離促進ガスを供給するため、再生温度をより低く抑えることができる。
【0039】
ここで、第1実施形態に係るガス処理装置10を使用したガス処理方法について説明する。ガス処理方法は、吸収工程と再生工程とを含む。
【0040】
吸収工程は、吸収器21において被処理ガスと処理液とを接触させる工程である。吸収器21には、流入路31を通して少なくとも二酸化炭素を含む被処理ガスが供給される。また、吸収器21には、戻し流路26を通して処理液が導入される。処理液は、被処理ガスに含まれる二酸化炭素と接触して該二酸化炭素を吸収する。吸収器21内には、二酸化炭素を吸収した処理液が貯留される。相分離する処理液が用いられている場合には、二酸化炭素と接触した処理液は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分と二酸化炭素分離の含有率が低い第2相部分とに相分離する。
【0041】
吸収器21内に貯留された処理液は、送り流路25を通して再生器22に送られる。このとき、送り流路25を流れる処理液は、熱交換器28において、戻し流路26を流れる処理液によって加熱され、その上で分流されて各再生器22内に導入される。
【0042】
再生工程は、再生器22内に導入された処理液を加熱する一方で、再生器22に分離促進ガスを供給して、二酸化炭素の分離を促進させつつ処理液から二酸化炭素を分離する工程である。
【0043】
具体的に、再生工程では、流体流路46を通して各加熱器44に熱源流体が供給され、この熱源流体が各加熱器44に順に流れて各再生器22の処理液が加熱される(加熱工程)。熱源流体は、図外の供給源から供給されて第1の加熱器44Aを通過し、第1の加熱器44Aを通過した熱源流体は、第2の加熱器44Bを通過する。例えば100℃の熱源流体が供給源から供給される場合、第1の加熱器44Aにおいて処理液を加熱することによって100℃から90℃に温度が低下し、第2の加熱器44Bにおいて処理液を加熱することによって、90℃から80℃に温度が低下する。つまり、第1の加熱器44Aにおいて、10℃分の顕熱が処理液に供給され、第2の加熱器44Bにおいても10℃分の顕熱が処理液に供給されるため、合わせて20℃分の顕熱を用いて処理液を加熱することができる。この場合、第1の加熱器44Aから第1の再生器22Aに環流する処理液の温度は例えば80℃となり、第2の加熱器44Bから第2の再生器22Bに環流する処理液の温度は例えば70℃となる。つまり、各加熱器44において、流出する熱源流体の温度と流出する処理液の温度との温度差が10℃となる制約条件で運転されていることになる。
【0044】
各再生器22において、処理液からの二酸化炭素の分離を促進させる分離促進ガスが導入される(導入工程)。このとき、第2の再生器22Bに供給される分離促進ガスの流量が、第1の再生器22Aに供給される分離促進ガスの流量よりも多くなるように、各導入路52aの流量が調整されている。このため、第2の再生器22Bの設定温度が第1の再生器22Aの設定温度に比べて低くなっているとしても、第2の再生器22Bにおいて、第1の再生器22Aと同等量の二酸化炭素ガスを得ることができる。つまり、再生器22内に処理液にほぼ溶解しない分離促進ガスがより多く存在していると、再生器22内における二酸化炭素ガスの分圧が低くなるため、処理液から二酸化炭素を追い出し易くなる。このため、図2に示すように、水素ガスのモル数に対する二酸化炭素のモル数の比が大きくなるにしたがって再生温度が低くなるため、処理液の温度が低い場合であっても、分離促進ガスの流量を多くすることにより、二酸化炭素ガスの生成量が低くならないようにすることができる。
【0045】
このとき、第1の再生器22Aでは、80℃設定となっているため、単位時間当たりに生成される水素ガスと二酸化炭素ガスのモル比が約1対2となり、第2の再生器22Bにおいては、70℃設定となっているため、単位時間当たりに生成される水素ガスと二酸化炭素ガスのモル比が約2対2となる。したがって、第1の再生器22Aと第2の再生器22Bとでは、得られるガスの組成比が異なる。この場合、第1の再生器22Aから供給される混合ガスと第2の再生器22Bから供給される混合ガスとが混合された混合ガスにおいては、単位時間当たりに生成される水素ガスと二酸化炭素ガスのモル比が約3対4となる。
【0046】
各再生器22内において、処理液が加熱されると処理液から蒸発した水蒸気が得られることがある。処理液から分離された二酸化炭素及び水蒸気は、供給路42を流れる。供給路42において、水蒸気はコンデンサ50で凝縮し、再生器22に戻される。再生器22内に貯留された処理液は、戻し流路26を流れて吸収器21に還流する。
【0047】
ここで、図3を参照しつつ、比較例として、1つの再生器22が設けられたガス処理装置について言及しておく。この比較例としてのガス処理装置では、図3に示すように、再生器22が1つ設けられた構成であるが、加熱器44に供給源から100℃の熱源流体が供給される場合において、図1のガス処理装置10と同様に単位時間当たりに生成される水素ガスと二酸化炭素ガスのモル比が約3対4となるようにするには、加熱器44で加熱された処理液の温度が約75℃に設定される必要がある。つまり、70℃設定では、水素ガスと二酸化炭素ガスのモル比が約2対2の混合ガスが得られ、80℃設定では、水素ガスと二酸化炭素ガスのモル比が約1対2の混合ガスが得られるため、モル比が約3対4の混合ガスを得るには、加熱器44の設定温度を約75℃にする必要がある。このとき、図1の加熱器44と同様の制約、すなわち、加熱器44において、流出する熱源流体の温度と流出する処理液の温度との温度差が10℃であるとする制約を考えると、加熱器44を通過した後の熱源流体の温度は、85℃に制御されることになる。つまり、加熱器44では、100℃-85℃=15℃の顕熱を利用することとなる。したがって、20℃分の顕熱が利用できる図1のガス処理装置10に比べ、図3のガス処理装置では、熱の利用効率が低くなってしまう。このことから、図1のガス処理装置10は、1つの再生器22が設けられた構成に比べ、熱効率が向上していることが分かる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、複数の再生器22にそれぞれ設けられた加熱器44が流体流路46に直列的に配置されており、各加熱器44を熱源流体が順に流れる。このため、第1の再生器22Aに対応する第1の加熱器44Aで処理液を加熱するのに利用されて温度が下がった熱源流体が、第2の再生器22Bに対応する第2の加熱器44Bに導入される。したがって、第2の加熱器44Bでは、第1の加熱器44Aに比べて、加熱された後の処理液の温度が低下する。一方で、この第2の加熱器44Bに対応する第2の再生器22Bには、第1の加熱器44Aに対応する第1の再生器22Aに比べて多くの分離促進ガスが導入されるため、比較的低い温度の処理液が存在する第2の再生器22Bにおいても、第1の再生器22Aと同等の量の酸性化合物を処理液から分離するといった運転も可能である。しかも、流体流路46に沿って各加熱器44を熱源流体が順に流れる構成であるため、複数の再生器22で処理液の再生を行うとしても、熱源流体の流路を流れる熱源流体の量を再生器22の数に比例させて増大させる必要はないため、結果として、投入熱量の増大を抑制できる。したがって、ガス処理装置10全体として熱の利用効率を高めることができ、ガス処理に必要なエネルギーを減らすことができる。
【0049】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態のガス処理装置10では、2つの再生器22が設けられているが、3つ以上の再生器が設けられていてもよい。この場合においても、熱源流体が流体流路46に沿って各加熱器44を順に流れるようになっていて、熱源流体の流れ方向において下流側に位置する加熱器44が設けられた再生器22ほど多くの分離促進ガスを導入するように導入手段52が構成されていればよい。
【符号の説明】
【0050】
10 :ガス処理装置
21 :吸収器
22 :再生器
22A :第1の再生器
22B :第2の再生器
44 :加熱器
44A :第1の加熱器
44B :第2の加熱器
46 :流体流路
52 :導入手段
52a :導入路
52b :流量調整部
図1
図2
図3