(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024395
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】簡易構築物の引き抜き抵抗杭
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
E02D5/80 102
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127193
(22)【出願日】2022-08-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】502036996
【氏名又は名称】佐藤 隆生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆生
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GA03
2D041GB03
2D041GC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、簡易構造物等の引き抜き抵抗杭として、圧縮され高密度化した耕盤層や小石まじりの耕作地等にあって、二次的人力作業を必要とせずにアンカーを打撃挿入する事で、地中内にて抵抗体が拡開し、完結する引き抜き抵抗杭を提供する。
【解決手段】略三角形状のアンカー側板(21)二枚を支柱棒(1)の先端(11)で矢じり形状(3)に対面配置し、側板(21)底辺部を支柱棒の反対方向に折り曲げて後端部(22)を形成すると共に、折り曲げ部(23)から先端方向近傍の支柱棒側(内側)角度において、支柱棒(1)と抵抗板(4)の地上方向面角度(α)が鈍角となる様に配置し、折り曲げ部(23)に対し抵抗板(4)が平行に略垂直配置され、ニ枚の側板(21)に孔(24)を設け、当該孔を利用した抵抗部を具備する、角度維持部材(5)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱棒(1)の先端に矢じり形状のアンカー(2)を固定して取り付け、アンカー材の弾性変形を利用した引き抜き抵抗杭であって、
前記アンカー(2)は、略三角形状の側板(21)二枚を矢じり形状となるように対面配置し、前記側板(21)の底辺部を前記支柱棒(1)側と反対方向(外側)に折り曲げて後端部(22)を形成するとともに、
前記側板(21)二枚の折り曲げ部(23)の前記支柱棒(1)方向(内側)の先端方向近傍に、抵抗板(4)を該抵抗板平面軸と支柱棒打撃側方向軸との成す角度(α)が鈍角となるように、前記折り曲げ部(23)に対し平行に略垂直配置したことを特徴とする引き抜き抵抗杭。
【請求項2】
前記側板(21)に孔(24)を設け、前記孔(24)を利用して前記側板(21)の拡開を一定角度に保持する角度維持部材(5)を通して、前記角度維持部材(5)の両端に孔(24)の径より大きなナット等の抵抗部材を具備したことを特徴とする請求項1記載の引き抜き抵抗杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウスなどの簡易構造物の風壊を防止するための引き抜き抵抗杭に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウス栽培では、プラウなどの耕うん機を用いた長年の耕作により、作土層(A)の下部に非常に固い地層(耕盤層B)が形成される。このような耕盤層(B)を有する耕作地や小石混じりの土壌耕作地においては、一般の円盤杭では挿入が難しい為、先端を鋭利にカットした鉄筋の丸棒をコイル状にした抵抗の少ないねじり形状の杭が使用されている。しかし、このねじり形状の杭は人力による回転力で多大な労力を必要とするため、安価で簡易な作業で挿入可能な引き抜き抵抗杭が求められていた。
【0003】
ねじり形状の杭に代わる抵抗杭として、打撃挿入による引き抜き抵抗杭がいくつか考案されている。例えば、拡開するアンカー(抵抗体)を支柱棒の先端付近に回転可能に取り付けた引き抜き抵抗杭(特許文献1)、支柱棒の先端付近にリング部を設けてアンカー本体(抵抗体)を直交に回転させる引き抜き抵抗杭(特許文献2)、および専用のハンマーと打撃工具を用いて埋設する支柱棒を持たない円盤状アンカー(特許文献3)などが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す引き抜き抵抗杭は、打撃後にアンカー(抵抗体)を回転させて支柱棒に対し直角に拡開させているが、そのためには軸金具(支柱軸)を用いてアンカーを支柱棒に接続し、専用の引き抜き治具を用いて支柱棒をスライドさせる必要があるなど、構造が複雑で製作も面倒でコスト高となる。
【0005】
また、特許文献2に示す引き抜き抵抗杭は、打撃後に支柱棒を土中から引き抜く際、拡開する抵抗部は連結支柱(支柱軸)を用いて支柱棒にリング部が構成されており、特許文献1の引き抜き抵抗杭と同様、構造が複雑で製作工程も多くコスト高である。
【0006】
さらに、特許文献3に示す引き抜き抵抗杭(地中アンカー)は、支柱棒を持たない円盤状アンカーで、これにワイヤーを取り付け、専用の打撃付与工具やスライドハンマーを用いて地中に挿入するものである。この円盤状アンカーは簡単な形状で安価であるが、十分なワイヤー張力を得るには円盤状アンカーを適正な方位・角度で地面に打ち込む必要があり、また、打ち込み後に打撃付与工具を地中から引き抜く必要があり、打撃付与工具及びスライドハンマーも地中での作業である為、不確実な面があり構造が複雑でコスト高である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-306935号公報
【特許文献2】特開平09-13371号公報
【特許文献3】特開2016-98530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、汎用の杭打ち具やハンマーを使って簡単に挿入が可能な、構造が単純で強靭、引き抜き強度が大きく、安価で施工性に優れた購入者目線に合致する、打撃挿入のみで完結する引き抜き抵抗杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の引き抜き抵抗杭は、前記特許文献1や前記特許文献2の引き抜き抵抗杭のような抵抗体の回転機能は用いず、支柱棒(1)とアンカー(2)を先端で固定化し、土中(主に耕盤層)への、打撃挿入時及び挿入後の引き抜き時に、前記アンカー(2)が土中から受ける反発力(D)(
図3参照)により弾性変形することを利用した引き抜き抵抗杭であって、前記アンカー(2)は、略三角形状の側板(21)二枚を矢じり形状となるように対面配置し、前記側板(21)の底辺部を前記支柱棒(1)側と反対方向(外側)に折り曲げて後端部(22)を形成するとともに、前記側板(21)二枚の折り曲げ部(23)の前記支柱棒(1)方向(内側)の先端方向近傍に、抵抗板(24)を該抵抗板平面軸と支柱棒打撃側方向軸との成す角度(α)が鈍角となるように、前記折り曲げ部(23)に対し平行に略垂直配置している。
【0010】
また、本発明の引き抜き抵抗杭は、前記側板(21)に孔(24)を設け、前記孔(24)を利用して前記側板(21)の拡開を一定角度に保持する様に、前記角度維持部材(5)の両端に孔(24)の径より大きなナット等の抵抗部材を具備した角度維持部材(5)を設けている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の引き抜き抵抗杭は、支柱棒とアンカーを固定化し、汎用の杭打ち具やハンマーを使って簡単に挿入可能なアンカー材の弾性変形を利用した引き抜き抵抗杭であり、
図1~
図5の状態図等を用いて、効果、特徴について以下に説明する。
【0012】
本発明の引き抜き抵抗杭の頭部は、
図2に示すように、一般の打撃杭と同様な形状で、ビニールハウス接続用接手金具(I)が設けられている。汎用の杭打ち具あるいはハンマーを用いて杭の頭部を垂直に、打撃し杭を地表面(G)から作土層(A)に挿入すると、矢じり形状の前記側板(21)は周囲の作土層(A)から内側(軸棒側)方向に反発力を受けるが、その力は側板が変形するまでに強くなく、側板(22)は形状を保持したまま下方の耕盤層(B)に挿入することになる。
【0013】
打撃挿入時の耕盤層(B)においては、
図3に示すように、先端の矢じり形状の前記側板(21)は周囲の固い地層の耕盤層(B)から強い反発力(D)を受けて内側に反る(弾性変形する)ため、より尖鋭化し挿入し易くなるとともに、前記支柱棒(1)近傍に位置する前記抵抗板(4)の端辺が前記支柱軸(1)と接し、さらにその接点は、抵抗板(4)平面軸と支柱棒打撃側方向軸との成す角度(α)が鈍角となっているため、前記側板(21)の弾性変形に従って支柱棒外周を抵抗板(4)が上方向に徐々に移動するとともに、前記後端部(22)は外側下方向へと拡開する。
【0014】
耕盤層(B)に挿入後、接続金具(I)にビニールハウス固定具のワイヤー(パイプ等)を接続し、杭に張力を与えると、
図4に示すように、前記後端部(22)、前記抵抗板(4)及び前記側板(21)は、上部の耕盤層(B)から引張張力(F)に抗する反発力(H)を受け、前記後端部(22)と前記側板(21)は外側方向に拡開する。ここで、突風などにより過大な引張張力(F)が加わった場合でも、前記側板(21)の孔(24)を通して角度維持部材(5)が一定幅に固定化し、孔(24)の径より大きなナット等の抜け止め部材を角度維持部材(5)の両端に具備している為、前記側板(21)は下方に折れ曲がること無く、側板(21)の拡開は一定角度に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の引き抜き抵抗杭の実施形態の一例について説明する。
本発明の引き抜き抵抗杭は、支柱棒(1)とその先端に形成された矢じり形状アンカー(2)から構成され、支柱棒(1)に直径13mm、長さ700mm程度の丸鋼を使用し、アンカー(2)は、板厚1.2mm鋼板を底辺60mm、高さ115mmの略三角形状にレーザーカットした2枚の側板(21)を、支柱棒(1)の先端で、2枚の側板(21)の頂点が合致するように矢じり形状に対面配置し、溶接で固定している。このため、打撃挿入時における周囲の土中から受ける反発力に抗するアンカー(2)の強度確保と地中への侵入を容易にしている。
【0017】
次に、側板(21)二枚の底辺部を、60mm幅、20mmの角度で反支柱棒側(外側)に折り曲げ、後端部(22)を形成することで、杭を地中から引き抜く際の面積、反発力を増加させ、さらに、後端部(22)の折り曲げ部近傍の支柱棒側(内側)に、板厚1.2mm、長さ10mm、幅20mmの略長方形の鋼板製抵抗板(4)の幅部を、抵抗板平面軸と支柱棒打撃側方向軸との成す角度が鈍角(α)となるように配置して溶接固定することで、杭が固い地層(耕盤層)から強い反発力を受けると、抵抗板(4)と支柱棒(1)との接点が、支柱棒(1)外周の打撃側(上方向)に移行し、側板(2)が支柱棒側(内側)に弾性変形することを助長する。このため、先端の矢じり形状は尖鋭化し、後端部(22)は外側に広がる(拡開する)ため、さらに後端部(22)の抵抗面積が広がり、反発力も増大する。
【0018】
また、抵抗体(4)の中央付近直下の側板(21)二枚に5.5mm程度の孔(24)を設け、孔(24)の間に支柱棒(1)の外周に沿った半円弧状の部材、又はワイヤー等の拡開角度維持部材(5)を通し、孔(24)の径より大きなナットで止めることで、両側板(21)に架かる拡開の抵抗力を超えるような力が働いた場合でも、拡開角度維持部材(5)の最大引張力までは、側板(21)の破損を防止することができる。
【0019】
なお、上記実施例では、材料に鋼板を使用し、溶接で固定しているが、カーボンなど弾性変形する素材を使用してもよいし、同一素材で構成する必要はなく、固定方法もボルト・ナット以外の挿入抵抗の小さい他の固定手段であってもよい。また、支柱棒についても角棒など丸棒以外の形状でもよく、長さも汎用のものであれば構わない。
【0020】
本発明は、これまでの硬く圧縮された高密度の耕盤層(B)や小石まじりの土壌での杭の挿入において、最も簡単に、しかも二次的人力を必要とすること無く拡開する為、突風などの引張力(F)に対しても更に拡開作用する杭であり、尚且つ、その角度を維持する為、あらゆる土壌に対して、抵抗力が高く、汎用性を有した引き抜き抵抗杭である。
【符号の説明】
【0021】
1 支柱棒
11 支柱先端部
2 アンカー
21 側板
22 後端部
23 折り曲げ部
24 孔
3 矢じり形状部
4 抵抗板
5 角度維持部材
A 作土層
B 耕盤層
C 心土層
D 挿入時の土中から受ける反発力
E 打撃力
F 引張張力
G 地表面
H 引き抜き時の土中から受ける反発力
I 接手金具
【手続補正書】
【提出日】2022-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】