IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 池上通信機株式会社の特許一覧

特開2024-2440装置起動後における時刻同期安定度の自動測定装置及び時刻同期安定度の自動測定方法
<>
  • 特開-装置起動後における時刻同期安定度の自動測定装置及び時刻同期安定度の自動測定方法 図1
  • 特開-装置起動後における時刻同期安定度の自動測定装置及び時刻同期安定度の自動測定方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002440
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】装置起動後における時刻同期安定度の自動測定装置及び時刻同期安定度の自動測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/08 20220101AFI20231228BHJP
   H04B 3/462 20150101ALI20231228BHJP
【FI】
H04L43/08
H04B3/462
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101608
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 広武
(72)【発明者】
【氏名】木澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 美穂
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 総一郎
(57)【要約】
【課題】PTPネットワークに接続された装置において、前記測定対象の装置起動後に装置自体が安定した時刻同期精度となっているかを自動的に測定し、その試行を継続的に実現することを可能にする自動測定装置及び方法を提供する。
【解決手段】時刻同期安定度自動測定装置10は、測定の制御及び監視を行う制御監視端末1と、制御監視端末1から伝送されるUSB信号を接点信号へと変換するUSB接点変換器2と、USB接点変換器2に接続されて接点信号により電源の入り切りを行う電源制御器3と、時刻同期安定度を測定するための測定器4と、PTPネットワークに接続され内部に発振器及びPLL回路を有する測定対象装置5と、時刻同期信号の受信及び測定器4が必要とする時刻同期信号に一致した基準信号の発生を行うリファレンス装置6と、時刻同期信号が伝送されるPTPネットワーク7とで構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻同期信号が伝送されるPTPネットワークに接続された測定対象の装置起動後における時刻同期安定度を自動で測定するための装置であって、
前記PTPネットワークに接続され内部に発振器及びPLL回路を有する測定対象装置と、
前記測定対象装置から出力される信号のジッター及び出力位相の測定を自動で行う測定器と、
前記PTPネットワークを通じて伝送される前記時刻同期信号の受信および前記測定器が必要とする前記時刻同期信号に一致した基準信号の発生を行うリファレンス装置と、
測定における制御及び監視を行う制御監視端末と、
前記測定対象装置の入り切りを行う電源制御器と、
が設けられることを特徴とする時刻同期安定度自動測定装置。
【請求項2】
時刻同期信号が伝送されるPTPネットワークに接続された測定対象の装置起動後における時刻同期安定度を自動で測定するための装置であって、
前記PTPネットワークに接続され内部に発振器及びPLL回路を有する測定対象装置と、
前記測定対象装置から出力される信号のジッター及び出力位相の測定を自動で行う測定器と、
前記PTPネットワークを通じて伝送される前記時刻同期信号の受信および前記測定器が必要とする前記時刻同期信号に一致した基準信号の発生を行うリファレンス装置と、
測定における制御及び監視を行う制御監視端末と、
前記測定対象装置の入り切りを行う電源制御器と、
が設けられることを特徴とする時刻同期安定度自動測定装置の測定方法であって、
第1のステップは設定された指定時間を待ち前記測定対象装置の電源を自動で投入するステップと、
第2のステップは設定された前記測定対象装置の安定に必要な指定時間を待つステップと、
第3のステップは前記測定器の監視データをリセットするステップと、
第4のステップは設定された前記測定器の安定に必要な指定時間を待つステップと、
第5のステップは設定された監視時間中に前記測定器にて不合格となるデータが存在するか、又は、前記測定対象装置自体の監視項目にエラーが発生していないかを確認し、不合格が存在又はエラーが発生した場合には前記測定器のデータを保持したまま前記測定対象装置の状態を維持し、不合格が存在せずエラーが発生していない場合には前記測定対象装置の電源を停止するステップと、
を有する時刻同期安定度自動測定装置の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にPTPネットワークに接続された装置において、前記測定対象の装置起動後に装置自体が安定した時刻同期精度となっているかを自動的に測定し、その試行を継続的に実現することを可能にする自動測定装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PTPネットワークに接続された装置において、前記測定対象の装置起動後に装置自体が安定した時刻同期精度となっているかを測定する必要があるが、従来の方法では、人間の目によって合否判別し、その作業自体を人力で実施していた。
【0003】
信号測定装置とそのクロック同期方法としては、特許文献1のように、受信した信号の特性や状態を測定する信号測定装置であって、受信信号に含まれる所定の信号のパターンから信号送信元と前記信号測定装置とのクロック周波数の誤差を算出する周波数誤差算出部と、前記クロック周波数の誤差に基づいて内部クロックのクロック周波数を変更するクロック周波数変更部と、を備える信号測定装置が公開され、この構成により、受信信号に含まれる所定の信号のパターンから信号送信元と信号測定装置とのクロック周波数の誤差が算出され、このクロック周波数の誤差に基づいて内部クロックのクロック周波数が変更される。このため、コストアップや消費電力の増加を招くことなく正確な測定結果を得るものとなっている。
【0004】
また、PTPネットワークに接続された各機器の検証を行うためのネットワーク試験器としては特許文献2のように、ユーザー入力に応じて変更可能な固有値を保持するフラグフィールドデータ保持部と、生成された各PTPパケットのヘッダから所定のフラグフィールドの位置を特定するフィールド抽出部と、自身がマスタとして機能している場合に、各PTPパケットの前記フラグフィールドの内容を前記フラグフィールドデータ保持部が保持している固有値に置き換えるフラグ更新部と、前記フラグフィールドの内容が更新された各PTPパケットをネットワークに送出するPTPパケット送出部と、を備えたネットワーク試験器が公開され、このネットワーク試験器によれば、PTPネットワークに接続された各機器のそれぞれの条件における動作を、試験するユーザーが必要に応じて検証可能になる。また、ネットワーク全体の状態が変化するのを待つ必要がないので、様々な条件の検証に必要な時間を短縮できるものとなっている。
【0005】
また、特許文献3の発明のように、電子回路で形成される電子機器の検査、評価、または診断のための方法で、機器の起動の際における起動不良を自動検出して障害対策に用立てるため、電子機器の電源「オフ」から再起動する「オン」までのオフ時間間隔を、例えばタイマの時限値により、順次変化させて繰返し試験することを主要な特徴とするものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-5781号公報
【特許文献2】特開2021-164056号公報
【特許文献3】特許第4778251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来の測定器・測定方法では、測定器によっては人力による監視および電源起動の作業が発生することによって人が装置に付きっきりになり作業時間が増える問題がある。また、電源起動の自動化は容易に可能だが不合格の事象が発生した場合の状態の保持ができないため不合格時の状態を保持できないと、発生時の原因解析ができない問題がある。また、性能を担保するためには、数千数万回の試行を必要とするが人力で実施するには限界があるという問題もある。
【0008】
また、時刻同期したクロックを基に映像信号を生成する機能を持っている装置では、時刻同期精度の良し悪しによってこの映像信号の品質に影響を与えるものである。また、クロックを生成するにあたり、装置内部の発振器を基準としているためその性能次第で映像信号の品質が左右される。電源起動時においては、その発振器の電圧および温度変化によって周波数出力精度の変動が顕著にみられることから、時刻同期精度の測定方法を必要とする。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みなされたものであり、本願の発明は、測定対象となる装置の電源起動時における時刻同期安定度を評価する自動測定方法である。測定対象となる装置は放送用途で利用されているIPゲートウェイなどが想定され、SMPTE ST2059-2 に準拠したPTPパケットを受信し、装置の内部に存在する物理的な発振器を基準として、時刻同期を実現している。この時刻同期によって得た高精度の映像クロックを基準として測定対象となる装置はその送り先となる受像機や映像切替器にSDI映像信号を出力する。
【0010】
SDI映像信号を出力する際、重要となる指標としてSMPTEによって規定されているタイミングジッタ(Timing Jitter)の値を満足する必要がある。また装置のSDI映像出力の相手として、放送システムで使用される映像切替器を利用する場合は、SDI映像信号の出力位相の変動値も重要な指標となる。
これらの指標を満足するためにさまざまな時刻同期回路を有する装置が存在する訳であるが、これらは一概に電源起動時直後の時刻同期精度やその安定時間を担保しているものはない。
【0011】
本測定方法はこれらの性能を担保するためにSDI映像信号のタイミングジッタや出力位相の変動値をユーザーが設定した基準を合格値として連続的に実施する装測定置及び測定方法を提供するものである。また、不合格値が取得された場合は、その試行を停止し発生時の状態保持をするとともに、装置からも必要なパラメータを取得する。それらの状態保持を作ることで不合格値が発生した際の装置の不具合の原因を特定する一助にもなりうるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題に対応するため、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
時刻同期信号が伝送されるPTPネットワークに接続された測定対象の装置起動後における時刻同期安定度を自動で測定するための装置であって、前記PTPネットワークに接続され内部に発振器及びPLL回路を有する測定対象装置と、前記測定対象装置から出力される信号のジッター及び出力位相の測定を自動で行う測定器と、前記PTPネットワークを通じて伝送される前記時刻同期信号の受信および前記測定器が必要とする前記時刻同期信号に一致した基準信号の発生を行うリファレンス装置と、測定における制御及び監視を行う制御監視端末と、前記測定対象装置の入り切りを行う電源制御器と、が設けられることを特徴とする時刻同期安定度自動測定装置である。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、時刻同期信号が伝送されるPTPネットワークに接続された測定対象の装置起動後における時刻同期安定度を自動で測定するための装置であって、前記PTPネットワークに接続され内部に発振器及びPLL回路を有する測定対象装置と、前記測定対象装置から出力される信号のジッター及び出力位相の測定を自動で行う測定器と、前記PTPネットワークを通じて伝送される前記時刻同期信号の受信および前記測定器が必要とする前記時刻同期信号に一致した基準信号の発生を行うリファレンス装置と、測定における制御及び監視を行う制御監視端末と、前記測定対象装置の入り切りを行う電源制御器と、が設けられることを特徴とする時刻同期安定度自動測定装置の測定方法であって、第1のステップは設定された指定時間を待ち前記測定対象装置の電源を自動で投入するステップと、第2のステップは設定された前記測定対象装置の安定に必要な指定時間を待つステップと、第3のステップは前記測定器の監視データをリセットするステップと、第4のステップは設定された前記測定器の安定に必要な指定時間を待つステップと、第5のステップは設定された監視時間中に前記測定器にて不合格となるデータが存在するか、又は、前記測定対象装置自体の監視項目にエラーが発生していないかを確認し、不合格が存在又はエラーが発生した場合には前記測定器のデータを保持したまま前記測定対象装置の状態を維持し、不合格が存在せずエラーが発生していない場合には前記測定対象装置の電源を停止するステップと、を有する時刻同期安定度自動測定装置の測定方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の時刻同期安定度自動測定装置の効果としては、第1に人が介在せずに測定を自動化し、作業工数を削減できる。第2に結果的に試行回数が増えることで製品の性能が担保できる。第3に不合格の装置が発生した場合もその状態を保持し、原因を解析できることが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の時刻同期安定度自動測定装置のシステム構成概略図である。
図2】本発明の時刻同期安定度自動測定装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る時刻同期安定度自動測定装置のシステム構成の第1の実施形態について、図1を参照しながら説明する。時刻同期安定度自動測定装置10は、測定における制御及び監視を行う制御監視端末1と、制御監視端末1から伝送されるUSB信号を接点信号へと変換するUSB接点変換器2と、USB接点変換器2に接続されて接点信号により電源の入り切りを行う電源制御器3と、時刻同期安定度を測定するための測定器4と、PTPネットワーク7に接続され内部に発振器A及びPLL回路Bを有する測定対象装置5と、PTPネットワークを通じて伝送される時刻同期信号の受信および測定器4が必要とする時刻同期信号に一致した基準信号の発生を行うリファレンス装置6と、時刻同期信号が伝送されるPTPネットワーク7とで構成されている。
【0017】
なお、測定対象装置5は時刻同期したクロックを基に映像信号を生成する機能を持っている。映像信号の同期精度は測定対象装置5の内部の発振器Aを基準としており、電源起動時においては、発振器Aの動作電圧および周囲温度変化によって周波数出力精度の変動も顕著に現れる。これらの条件下においても時刻同期精度の測定方法を可能とするシステム構成となっている。
【0018】
時刻同期安定度自動測定装置10のシステムの役割は、以下のようになる。
制御監視端末1より制御された信号がUSB信号としてUSB接点変換器2に伝送され、USB接点変換器2にて接点信号へと変換され電源制御器3に伝送されることで、商用電源の入り切りを実現する。
【0019】
測定対象装置5は内部に発振器AとPLL回路B(位相同期回路)を有しており電源制御器3の動作によって電源起動し、装置内の発振器Aに電源を供給する。また、PTPネットワーク7を経由して時刻同期信号を受信して精度の高い同期をしたSDI映像信号を出力する。
【0020】
発振器Aは電源起動時に電圧や温度変化の影響を受け、微小な周波数変化やノイズを発生させる。この現象により、PLL回路Bで出力されるクロック信号の品質に影響を与える。結果、測定対象装置5のSDI映像信号出力の性能に影響を与えてしまう。言い換えると、発振器Aの微小な周波数変化やノイズに影響を受けないPLL回路Bの回路構築が装置設計として重要となる。
【0021】
測定器4は測定対象装置5から出力されるSDI映像信号の性能を評価する機器である。測定器4はリファレンス装置6から性能を評価するうえで重要な基準信号を受信し、測定対象装置5から出力されるSDI映像信号の評価基準として用いる。なお、リファレンス装置6は測定対象装置5と同様にPTPネットワーク7を経由して時刻同期信号を受信し、高精度の基準信号を発生する。
【0022】
測定器4は波形モニタCによるジッター測定及び出力位相測定の測定機能を持ちSDI映像信号の重要な性能評価指標であるタイミングジッタや映像出力位相を測定し、制御監視端末1にその結果を伝える。なお、測定器4からはEthernetや接点信号を利用して制御監視端末1(接点信号はUSB接点変換器2経由)に伝送される。
【0023】
制御監視端末1は測定器4から伝送された測定結果および測定対象装置5が持つ独自の情報を基に合否を判定し、測定を継続するかを決定する。試験不合格の場合は、電源制御器3での電源の入り切りを実施せず状態保持する。これにより不合格の装置が発生した場合もその状態を保持し、原因を解析できる利点がある。
【0024】
測定方法のフローは図2のようになる。
第1のステップは設定された指定時間Tを待ち測定対象装置5の電源を自動で投入するステップである。
第2のステップは設定された測定対象装置5の安定に必要な指定時間Tを待つステップである。
第3のステップは測定器4の監視データをリセットするステップである。
第4のステップは設定された測定器4の安定に必要な指定時間Tを待つステップである。
第5のステップは設定された監視時間中Tに測定器4にて不合格となるデータが存在するか、又は、測定対象装置5自体の監視項目にエラーが発生していないかを確認し、不合格が存在又はエラーが発生した場合には測定器4のデータを保持したまま測定対象装置5の状態を維持し、不合格が存在せずエラーが発生していない場合には測定対象装置5の電源を停止し設定によっては測定対象装置5からも必要なパラメータを取得するステップである。
【0025】
測定に用いるパラメータは表1のようになる。測定対象装置5の合否判定基準となるパラメータは、制御監視端末1において管理されている。このパラメータは装置の性能を計るうえで重要な指標となる。
【表1】
【0026】
この合否基準を標準値として、測定対象装置5ごとに合否判定基準値を変更することで自由度のある測定が実現可能となる。また、前述の通りこの合格基準を満たす場合は測定対象装置5の電源の入り切りを反復試行することで、装置の合否基準に対する信頼度が向上することになる。
【0027】
他方で合否判定基準を満たさない測定対象装置5の試行があった場合は、その試行を停止し、現状の動作を維持することで、簡単に原因の究明ができる様にする。その際、測定対象装置5側から出力されている表2の様なパラメータを制御監視端末1に取り込んでおくことでさらに解析を安易に実現できる様にする。
【表2】
【0028】
本発明の構成による測定により、第1に人が介在せずに測定を自動化し、作業工数を削減できる。第2に結果的に試行回数が増えることで製品の性能が担保できる。第3に不合格の装置が発生した場合もその状態を保持し、原因を解析できることが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、特に映像信号の測定対象装置の時刻同期安定度自動測定に適しており、各種測定パラメータを設定することで様々な装置の測定を可能としている。
【符号の説明】
【0030】
A 発振器
B PLL回路
C 波形モニタ
10 時刻同期安定度自動測定装置
1 制御監視端末
2 USB接点変換器
3 電源制御器
4 測定器
5 測定対象装置
6 リファレンス装置
7 PTPネットワーク
図1
図2