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特開2024-24403電子機器、情報読取りシステム、印刷データ生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024403
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電子機器、情報読取りシステム、印刷データ生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 1/12 20060101AFI20240215BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20240215BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240215BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20240215BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20240215BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G06K1/12 H
A45D29/00
B41J3/407
G06K19/06 037
G06K19/06 093
G06K7/14 017
G06K7/14 034
H04N1/387 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127204
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 奈都美
【テーマコード(参考)】
5C076
【Fターム(参考)】
5C076AA14
5C076BA06
(57)【要約】
【課題】爪等の印刷対象に印刷された識別標識が一部破損しても情報の読取りを行うことができる。
【解決手段】印刷装置1等の電子機器が、爪T等の印刷対象に対して同一の識別標識Mを少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段として機能する制御部11を備え、データ生成手段として機能する制御部11は、識別標識Mが爪T等の印刷対象の端部領域を避けて配置される態様で印刷データを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記データ生成手段は、前記識別標識が前記印刷対象の端部領域を避けて配置される態様で前記印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記データ生成手段が生成した印刷データに基づいて、前記印刷対象に対して印刷を施す印刷手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記印刷対象の形状を読み取る読取り手段と、
前記読取り手段による読取り結果に基づいて前記印刷対象の形状を判断する形状判断手段と、
をさらに備え、
前記データ生成手段は、前記形状判断手段によって判断された前記印刷対象の形状に基づいて、前記印刷データにおける前記識別標識の印刷を施す位置を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記形状判断手段は、前記印刷対象のうち、撓みが小さい領域を平坦領域と判断し、
前記データ生成手段は、少なくとも2つ以上の同一の前記識別標識のうち1つの前記識別標識について、当該識別標識の読取りを行う為に必須である領域の印刷を施す位置を、前記形状判断手段により前記平坦領域と判断された領域を含む所定の領域内に決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記形状判断手段は、前記印刷対象のうち、撓みが小さい領域を平坦領域と判断し、
前記データ生成手段は、所定の情報とともに所定の重要度を示す重要度情報を前記識別標識に格納し、複数の前記識別標識を、前記重要度情報が示す重要度が高いものほど、前記形状判断手段によって前記平坦領域と判断された領域内の中央部により近い位置に印刷を施す態様の印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項7】
前記形状判断手段は、前記印刷対象のうち、撓みが小さい領域を平坦領域と判断し、
前記データ生成手段は、所定の情報とともに所定の重要度を示す重要度情報を前記識別標識に格納し、複数の前記識別標識の内、前記重要度情報が示す重要度が高いものほど前記印刷対象に対してより多く印刷を施す態様の印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項8】
前記印刷対象は爪である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器と、読取り装置と、を備える情報読取りシステムであって、
前記読取り装置は、
前記識別標識を検出する検出部と、
前記検出部によって、同一の前記識別標識が所定の個数以上検出された場合に、当該識別標識に基づいた処理を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする情報読取りシステム。
【請求項10】
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成処理、
を含んでいることを特徴とする電子機器が実行する印刷データ生成方法。
【請求項11】
電子機器のコンピュータを、
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、情報読取りシステム、印刷データ生成方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置を用いて爪やネイルチップ、ネイルシール等に各種のデザインを印刷するネイル印刷が行われている。
爪やネイルチップ等に印刷される内容は、絵柄などから成るデザインに限られない。
例えば、特許文献1には、患者の身体の一部(例えば手の爪の表面)に、患者の登録番号情報等の患者識別情報を示すバーコード等の識別標識を形成し、これをバーコードリーダ等の機械的手段で読み取ることで患者を識別できるようにした患者識別方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-175791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば爪は様々な作業を行う際に擦れたりぶつけたりしやすい部位である。印刷対象が爪以外の場合でも印刷を施した対象の表面(印刷面)は、摩擦や衝撃によって傷つくことがある。印刷面が擦れたり欠けてしまったりすると、印刷されている識別標識(二次元コード)の一部又は全体が不鮮明となり、読取りができなくなって、必要な情報にアクセスできなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、爪等の印刷対象に識別標識を適切に印刷することができる電子機器、情報読取りシステム、印刷データ生成方法及びプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明にかかる電子機器は、
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、爪等の印刷対象に識別標識を適切に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における情報読取りシステムを構成する印刷装置及び読取り装置等の構成を示す図である。
図2】(a)は、印刷対象としての爪を上面視した場合の平面図であり、(b)は、(a)で示した爪に、端部領域を避けて3つの識別標識が印刷された場合の例を示す平面図であり、(c)は、(a)で示した爪に、3つの識別標識が印刷されたが、端部領域にかかって印刷された識別標識の一部が擦れて不鮮明となった場合の例を示す平面図である。
図3】印刷データ生成処理及び生成された印刷データを用いた印刷処理の一例を示すフローチャートである。
図4】情報読取り処理の一例を示すフローチャートである。
図5】印刷対象としての爪に、同一の識別標識の組を複数組み印刷した場合の例を示す平面図である。
図6図5に示す複数組みの識別標識から読み取られる特定の情報の例を示す表である。
図7】印刷対象としての爪に、識別標識がその重要度に応じて配置されるように印刷した場合の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る電子機器、情報読取りシステム、印刷データ生成方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
[情報読取りシステム]
図1は、本実施形態における情報読取りシステムの概略構成と、情報読取りシステムを構成する各装置の制御構成を示す要部ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の情報読取りシステム100は、情報の提供側の装置(電子機器としての印刷装置1)と情報の受け手側の装置(読取り装置3)とを含んで構成される。
情報読取りシステム100において、情報の提供側は、チケット等の発行や各種サービスの提供等を行う企業や店舗等であってもよいし、個人のSNS(Social Networking Service)等のアカウント情報等を発信したい個人ユーザ等であってもよい。情報の提供側が企業や店舗等である場合、情報の提供側の装置は、例えば企業や店舗等に設置された装置である。他方情報の提供側が個人ユーザである場合、情報の提供側の装置は、例えば個人所有の印刷装置1やスマートフォン等である。また情報の受け手側(読取り側)についても、企業や店舗等であってもよいし、個人ユーザであってもよい。情報の受け手側が企業や店舗等である場合、情報の受け手側の装置は、例えば企業や店舗等に設置された装置であり、個人ユーザが情報の受け手側である場合、情報の受け手側の装置は、個人が使用する装置(例えばスマートフォン等)である。
以下、各装置について説明する。
【0011】
[電子機器]
本実施形態の本実施形態の電子機器は、例えば手や足の指の爪等を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置1(ネイルプリント装置)であり、後述する印刷機構13、印刷データを生成するデータ生成手段としての制御部11等、を含んでいる。なお、印刷装置1の印刷対象は爪Tに限定されず、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪T以外のものを印刷対象としてもよい。
なお、電子機器は少なくともデータ生成手段を含んでいればよく、印刷装置に限定されない。例えばパーソナルコンピュータ(PC)や、タブレット端末、スマートフォン等の端末装置のように印刷機構13を備えない装置でもよい。この場合別途印刷機構を備える装置と連携して印刷データに基づく印刷を行わせる。
以下においては、電子機器を印刷装置1として説明する。
【0012】
電子機器としての印刷装置1は、例えば各種のイベント会場の入り口や各種店舗等に設置されているものであってもよいし、ユーザの自宅等で使用される装置であってもよい。
本実施形態において図1に示すように、印刷装置1は、印刷機構13、撮影部14、通信部15の他、装置各部を制御する制御装置10を有している。
【0013】
印刷機構13は、データ生成手段として機能する制御部11によって生成された印刷データに基づいて、印刷対象である爪T等に対して印刷を施す印刷手段である。
印刷機構13は、印刷装置1内の図示しない指配置部に配置された印刷対象である爪Tに印刷を施す。図示は省略するが、印刷機構13は、印刷動作を行う印刷ヘッド及び印刷ヘッドを移動させる移動機構等を備えている。
印刷ヘッドは、爪T等の印刷対象にデザイン(ネイルデザイン)を印刷するものであり、例えばシアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインクを吐出可能となっている。印刷ヘッドは、特に限定はされないが、微滴化したインク(液剤)をインク吐出面から爪表面に吹き付けて微細な印刷を行うことが可能なインクジェットヘッドである。なお、印刷ヘッドの種類や数は特に限定されず、例えば下地となる液剤を印刷する他の印刷ヘッドを含んでいてもよい。また具体的な印刷方式もインクジェット方式に限定されず、例えば熱転写式の印刷装置等でもよい。
移動機構は、その駆動により、指配置部に配置された指の爪表面に対して、印刷ヘッドを移動させる。
【0014】
撮影部14は、印刷装置1の内部であって指配置部の上方位置等に配置されている。撮影部14、図示しないカメラや光源を含み、爪T(爪を含む指)の表面を撮影して、その爪画像(爪Tを含む指の画像)を取得する。本実施形態では撮影部14のカメラで撮影された爪画像に基づいて、後述する形状判断手段としての制御部11で印刷対象である爪Tの形状が判断されるようになっており、撮影部14は印刷対象(本実施形態では爪T)の形状を読み取る読取り手段として機能する。撮影部14による読取り結果である爪画像は後述の制御部11に送られる。
【0015】
通信部15は、ネットワークN等を通じた無線又は有線でのデータ通信を行うものであり、情報提供装置2等の外部装置との間でデータの送受信を行う。通信部15は、情報提供装置2等の外部装置とのデータ通信が可能であれば、具体的な通信方式等は特に限定されず、外部装置の通信規格と合致するものが適用される。
【0016】
ここで、本実施形態において印刷装置1に情報を提供する情報提供装置2について説明する。
情報提供装置2は、例えば企業等のデータ提供サーバであり、希望者に各種の情報やサービス等を提供する。情報提供装置2は、クラウド上のサーバ等であってもよい。
図1に示すように、情報提供装置2は、制御装置20と通信部25等を備えている。
制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部21と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有する記憶部22とを備えるコンピュータである。
【0017】
制御部21は情報提供装置2の各部の動作を統括的に制御する。制御部21は、記憶部22に記憶されたプログラム等との協働により、情報提供装置2を動作させるための各種機能を実現する。
【0018】
記憶部22は、情報提供装置1の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が記憶されるプログラム記憶領域221、コード変換情報データベース(図面及び以下の説明においてコード変換情報DBとする)222等を有している。
【0019】
コード変換情報DB222は、「特定の情報」を「識別標識」(図2(b)等において「識別標識M」とする。)に変換するための所定のルール等を予め規定したデータベースである。
「識別標識」は、例えばQRコード(登録商標)やバーコード等の各種二次元コードである。本実施形態の図示例(図2(b)等参照)では、「識別標識M」がQRコードである場合を例示するが、「識別標識」は広く二次元コード等を含む概念であり、QRコードに限定されない。「識別標識」は、対応する読取り装置3(後述)によって機械的にデコード処理が可能なものであればよく、例えば二次元コードが所定のルール付けにしたがって図案化された絵柄や模様等であってもよい。
【0020】
QRコード等の「識別標識」には、指定した文字列等が、「特定の情報」として格納される。本実施形態では、「特定の情報」として、例えば各種イベント(コンサートやスポーツ観戦等)に参加するためのチケットの有効日時情報、チケットの入場者情報(チケットを購入したユーザを特定するためのID情報等)、チケットの座席情報、のうち少なくともいずれか1つの情報が、QRコード等の「識別標識」に格納される。
制御部21は、QRコード等の「識別標識」に格納したい「特定の情報」を、コード変換情報DB222に記憶されている所定のルール付けにしたがって「識別標識」に格納(「識別標識」の状態に変換)する。
【0021】
なお、「識別標識」に格納される「特定の情報」は上記に例示したものに限定されず、例えば企業や各種店舗のWEBサイトのURL(Uniform Resource Locator)情報、各種SNS(Social Networking Service)のアカウント情報、メールアドレス、電話番号、カード番号やセキュリティーコードの情報、各種の会員番号等の個人を特定するためのユニークID、企業や店舗の会員登録ページや商品説明ページにアクセスするためのアドレス情報等でもよい。なお、1つの「識別標識」が複数の情報(例えばチケットの有効日時情報と座席番号の情報等)を含んでいてもよいし、各情報毎に1つの「識別標識」を生成してもよい。
【0022】
なお、「識別標識」には有効と判断される「所定の個数」が定められていてもよく、その場合は「所定の個数」についての情報も「識別標識」とともに印刷装置1に送られる。
本実施形態では同一の「識別標識」が複数印刷されるようになっており、複数の「識別標識」のうち1つでも正常に読み取ることができれば有効としていい場合には「所定の個数」は「1」に設定される。また2つ以上読み取ることができた場合に有効するとする場合には「所定の個数」は「2」に設定される。
「所定の個数」を「2」等、複数個に設定することで、「識別標識」にしたがって実現される処理のセキュリティレベルを向上させることができる。
【0023】
情報提供装置2によって生成された「識別標識」は、通信部25を介して、ネットワークN等に接続された印刷装置1等に適宜送信される。
なお、情報提供装置2からの「識別標識」の送信先は印刷装置1に限定されない。例えば印刷装置1の操作、制御を行う操作端末(例えば印刷装置1と連携するスマートフォンや各種PC)等でもよい。
【0024】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備え、印刷装置1を制御するコンピュータである。
【0025】
記憶部12には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部12のROM等には、例えば各種の印刷制御処理を行うための印刷制御プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムを制御部11がRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部が統括制御される。
【0026】
本実施形態の制御部11は、印刷機構13の動作を制御する印刷制御手段、撮影部14の動作を制御する撮影制御手段、通信部15を制御する通信制御手段として機能する他、形状判断手段、データ生成手段等として機能する。これらの各機能は、制御部11のCPUと記憶部12のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0027】
印刷制御手段として機能する制御部11は、印刷機構13の印刷ヘッドやヘッド移動機構を構成する各種モータ等の動作を制御する。
撮影制御手段として機能する制御部11は、撮影部14のカメラ及び光源の動作を制御して、爪画像(爪Tを含む指の画像)等を撮影させ、撮影によって得られた画像データ(爪画像等のデータ)を取得する。
通信制御手段として機能する制御部11は、通信部15を制御して各種外部機器とデータの送受信を可能とする。
【0028】
前述のように本実施形態では、読取り手段としての撮影部14によって印刷対象(爪T)の形状が読み取られるようになっており、形状判断手段として機能する制御部11は、読取り手段としての撮影部14の読取り結果である爪画像に基づいて印刷対象(爪T)の形状を判断する。
印刷対象が爪Tである場合、ここにいう形状は、周囲の指等の部分から爪Tの領域(爪領域)を画する爪輪郭や爪Tの幅方向(図2(a)等において横方向W)や幅方向に交わる長さ方向(図2(a)等において縦方向H)における曲率(湾曲度合い、曲がり具合)等である。爪輪郭や爪Tの曲率等は、爪画像について各種画像処理を行い、その輝度情報や色彩情報等を得ることで読み取ることができる。爪Tの形状を判断するための爪画像は、少なくとも爪Tを上方から平面視した画像を含み、その他、爪Tの先端側や側面側からの画像、斜め上方向からの画像等の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0029】
なお、読取り手段は撮影部14に限定されない。例えば撮影部14に代えて、又は撮影部14とともに印刷対象(爪T)の形状を読み取る各種センサ(3Dセンサ等)を含んでいてもよい。この場合も、各種センサによって取得された読取り結果は制御部11に送られて、形状判断手段として機能する制御部11が読取り結果に基づいて印刷対象(爪T)の形状を判断する。
【0030】
また、本実施形態においてデータ生成手段として機能する制御部11は、情報提供装置2等から「識別標識」(すなわち、「特定の情報」が格納されたQRコード等の二次元コード)が提供された場合に、印刷対象(本実施形態では爪T)に対して同一の「識別標識」を少なくとも2つ以上含むような態様で、印刷を施すための印刷データを生成する。生成された印刷データは、印刷機構13に出力される。
【0031】
同一の「識別標識」をいくつ印刷するか、どのように配置するか等のデータ構成の情報は、情報提供装置2から送られてもよいし、データ生成手段としての制御部11が印刷対象である爪Tの大きさや形状(爪領域や爪Tの曲率)に基づいて決めてもよい。制御部11がデータ構成を決める場合には、形状判断手段としての制御部11によって判断された印刷対象(爪T)の形状に基づいて「識別標識」の数や配置を決定する。例えば大きな面積の印刷対象(爪T)であれば同一の「識別標識」が4つ印刷されるように「識別標識」を配置し、小さな面積の印刷対象(爪T)であれば同一の「識別標識」が2つ印刷されるように「識別標識」を配置するといった印刷する個数の調整を行ってもよい。
また、幅方向に広い印刷対象(爪T)の場合には、同一の「識別標識M」を幅方向(図2(a)等において横方向W)に3つ並べて配置し、長さ方向に広い印刷対象(爪T)の場合には、同一の「識別標識M」を長さ方向(図2(a)等において縦方向H)に3つ並べて配置する、といった配置の仕方を調整してもよい。また、横方向W及び縦方向Hともに余裕がある場合には斜めに3つ並べて配置してもよい(例えば図2(b)参照)。
なお、印刷対象として印刷装置1にセットされた爪Tが面積の小さな爪T(例えば小指の爪等)であり、複数の「識別標識M」を印刷することが困難であると判断されるような場合には、他の指の爪を配置するようユーザに促すメッセージを図示しない表示部に表示させたり、音声で案内する等を行ってもよい。
【0032】
また、データ生成手段としての制御部11は、「識別標識」が印刷対象の端部領域を避けて配置される態様で印刷データを生成する。
図2(a)は、印刷対象としての爪を上面視した場合の平面図である。図2(a)中において、爪Tの領域のうち、端部領域ArEgを斜線網掛けで示している。また、爪Tの領域のうち、端部領域ArEgよりも内側の領域は端部領域ArEgと比べて比較的傷等がつきにくい領域であり「識別標識」を印刷する候補となる領域(これを候補領域ArSという。)である。
図2(b)は、図2(a)で示した爪に、端部領域を避けて3つの「識別標識」が印刷された場合の例を示す平面図であり、図2(c)は、図2(a)で示した爪に、3つの「識別標識」が印刷されたが、端部領域にかかって印刷された「識別標識」の一部が擦れて不鮮明となった場合の例を示す平面図である。
【0033】
印刷対象(爪T等)の端部は、無意識に周りのものにぶつけて擦れたり、傷が付いたりしやすい。このような箇所(図2(a)等において端部領域ArEg)に「識別標識M」が印刷されると、せっかく印刷した「識別標識M」の一部が消えたり、擦れて不鮮明になってしまう(例えば図2(c)参照)。このため図2(b)に示すように、端部領域ArEgを避けて「識別標識M」を配置されるように印刷データを生成することで、安定して「識別標識M」から特定の情報を読み取ることが可能となる。
【0034】
特に「識別標識M」がQRコードである場合、コード内に、少なくとも1つの「切り出しシンボルfm」(ファインダパターン)を有している。「切り出しシンボルfm」は一般にQRコードの角部等に3つ(マイクロQRコードでは通常1つ)配置されており、後述の読取り装置3で読み取る際には、この「切り出しシンボルfm」が認識されることで、それが「QRコード」であると認識されるようになっている。このため、QRコードにおいて、この「切り出しシンボルfm」の部分は、「識別標識M」の読取りを(正常に)行うために必須である領域といえる。
また、QRコードは、一般に歪み補正等の機能を担う「アライメントパターン」(図示せず)を備えており、「汚れ」等によってコードの一部が読み取れない場合でも、周囲のドットから情報を補完することで読み取れなかった部分をコード自身が復元・補正し、正しく読み取ることができるようにする機能(補正機能)を備えている。しかし、「汚れ」等によって読み取れない範囲が大きい場合や、「切り出しシンボルfm」、「アライメントパターン」が読めない場合には、正しく情報を読み出すことができなくなる。
【0035】
このため、本実施形態において制御部11は、「識別標識M」の中でも少なくとも「識別標識M」の読取りを正常に行うために必須である領域(QRコードの場合、「切り出しシンボルfm」の部分等)については、印刷対象(爪T)の端部領域ArEgを避けて配置される態様で印刷データを生成する。すなわち、図2(b)に示すように、「識別標識M」(特に「識別標識M」のうち「切り出しシンボルfm」の部分等)が爪Tの領域のうち、端部領域ArEgを除いた候補領域ArS内に配置されるようにする。
ただ、本実施形態では、同一の「識別標識M」を印刷対象(爪T等)に複数印刷する。このため、1つでも正常に読み取ることができれば、特定の情報を読み出すことができる。したがって、制御部11は、少なくとも1つの「識別標識M」について端部領域ArEgを避けて配置されるように印刷データを生成する。
【0036】
例えば印刷対象(爪T等)に3つの「識別標識M」を印刷した場合、図2(c)に示す例では、左上の「識別標識M」の一部が端部領域ArEgにかかっており、「切り出しシンボルfm」の部分を含むコードの一部が擦れたり剥がれたりして消えてしまっている。しかし、他の「識別標識M」には損傷がないため、読取り装置3によって2つの「識別標識M」を正常に読み取ることができる。これにより「識別標識M」に格納された「特定の情報」を読み出すことができる。
【0037】
さらに、データ生成手段としての制御部11は、形状判断手段によって判断された印刷対象の形状に基づいて、印刷データにおける「識別標識M」の印刷を施す位置を決定する。
特にデータ生成手段としての制御部11は、複数印刷される同一の「識別標識M」のうち少なくとも1つの「識別標識M」(特に少なくとも1つの「識別標識M」のうち「切り出しシンボルfm」の部分のように「識別標識M」の読取りを正常に行うために必須である領域)を、形状判定手段として、印刷対象(爪T等)において最も撓みが小さいと判断した領域(図2(a)から図2(c)において平坦領域ArF)に印刷されるように印刷データを生成する。
【0038】
なお、最も撓みが小さい平坦領域ArFとは、例えば曲率の小さい平坦な領域等である。例えば爪Tの場合、図2(a)から図2(c)に示すように、横方向W(幅方向)の中央部は比較的平坦な部分であり、曲率が小さい。制御部11は、このような平坦な部分を平坦領域ArFとして、少なくとも1つの「識別標識M」(特に少なくとも1つの「識別標識M」のうち「切り出しシンボルfm」の部分)をこの平坦領域ArF内に配置するように印刷データを生成する。なお、読取り手段として3Dセンサ等を備え、曲率のみならず、表面の凹凸状況を読み取ることのできる場合には、こうした凹凸状況も加味して平坦な部分を平坦領域ArFと判断してもよい。凹凸の少ない部分の方が歪みや乱れのない良好な印刷結果を得られるため、読取り装置3によって認識しやすい「識別標識M」を印刷することができ、好ましい。
【0039】
また、撓みが小さい領域とは、曲率が所定の閾値よりも小さい領域であってもよいし、印刷対象を単位面積当たりの曲率が最も小さい領域を含む所定の大きさの領域であってもよい。
爪Tの曲率(湾曲度合い、曲がり具合)等は、前述のように爪画像について各種画像処理を行い、その輝度情報や色彩情報等を得ることで読み取られる。爪画像として爪Tを上方から平面視した画像の他、爪Tの先端側や側面側からの画像、斜め上方向からの画像等を得ておくことにより、爪Tの曲がり具合等を判断することができる。
【0040】
なお、印刷対象の候補として複数の爪Tがある場合、データ生成手段としての制御部11は、形状判断手段としてより面積が広いと判断した爪Tや、より撓みが小さいと判断した爪Tに、少なくとも2つ以上の同一の「識別標識M」のうち1つの「識別標識M」(少なくとも当該「識別標識M」のうち、「識別標識M」の読取りを正常に行う為に必須である「切り出しシンボルfm」等の領域)の印刷が施されるよう印刷データを生成することが好ましい。
また「識別標識M」の読取りを正常に行うために必須である領域(QRコードの場合、「切り出しシンボルfm」の部分等)の印刷を施す位置が、形状判断手段としての制御部11により平坦領域ArFと判断された領域を含む所定の領域(すなわち、端部領域ArEgを避けた候補領域ArS内等)に決定される「識別標識M」は、複数の「識別標識M」のうち少なくとも1つあればよい。
【0041】
[情報取得側の構成]
図1に示すように、情報読取りシステム100は、情報取得側(受け手側)の装置として読取り装置3を含んでいる。
読取り装置3は、「識別標識M」を検出して、同一の「識別標識M」が所定の個数以上検出された場合に、当該「識別標識M」に基づいた処理を行うものである。
なお本実施形態では、読取り装置3が、例えば店舗やイベント会場等の入場ゲート等に設けられることが想定される装置(爪に印刷された印刷結果を読み取る読取り専用の装置)である場合を例示する。
図1に示すように、読取り装置3は、制御装置30、通信部35、読取り部36等を備えている。
【0042】
通信部35は、「識別標識M」に対応する「特定の情報」にしたがった動作をする装置(例えば入場ゲート)等の外部装置との間でデータ通信が可能であればよく、通信部35の通信方式は特に限定されない。通信部35としては、データの送受信が必要とされる外部装置の通信規格と合致するものが適用される。
なお、読取り装置3が、例えば会場の入場ゲート等、「識別標識M」に対応する「特定の情報」にしたがった動作をする装置と一体的に構成されていてもよく、この場合には読取り装置3は通信部35を備えなくてもよい。
【0043】
読取り部36は、「特定の情報」が格納された「識別標識M」が含まれた印刷データに基づいて印刷対象(本実施形態では爪T)に印刷された印刷結果の画像を取得するものである。
具体的には、読取り部36は図示しないカメラ等を備え、図示しない読取り画面等にかざされた爪Tを撮影して画像を取得する。なお、読取り装置3では、例えば読取り画面等にメッセージを表示させたり、音声による案内等を行うことによって、爪Tをかざす位置等をユーザに指示してもよい。
読取り部36のカメラによって取得された画像は、制御装置30の制御部31に送られる。
【0044】
読取り装置3の制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有する記憶部32とを備えるコンピュータである。
【0045】
制御部31は読取り装置3の各部の動作を統括的に制御する。制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラム等との協働により、読取り装置3を動作させるための各種機能を実現する。
【0046】
記憶部32は、読取り装置3の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が記憶されるプログラム記憶領域、デコード情報データベース(図面及び以下の説明においてデコード情報DB322とする)等を有している。
【0047】
デコード情報DB322は、「識別標識M」について所定のデコード処理を行い、「識別標識M」に格納(変換)された「特定の情報」を読み取るために必要な情報を有している。デコード情報DB322に格納されている情報は、「特定の情報」を「識別標識M」に格納(変換)した情報提供装置2の記憶部22に記憶されているコード変換情報DB222に格納されている情報に対応する情報を有している。
なお、「識別標識M」がQRコードではなく、情報提供装置2において独自のルールでコード化されたものであるような場合には、読取り装置3のデコード情報DB322に、情報提供装置2のコード変換情報DB222に格納されている情報に対応する独自のルール付けが格納される。この場合、情報提供装置2のコード変換情報DB222が更新される等により内容に変更があった場合には、読取り装置3のデコード情報DB322も同様に更新されるように、情報提供装置2と読取り装置3との間でのコード・デコード情報の送受信を可能とし、情報提供装置2のコード変換情報DB222と読取り装置3のデコード情報DB322とがともに最新の情報を共有できるようにする。
【0048】
制御部31は、読取り部36によって「識別標識M」を含む画像(「識別標識M」が印刷された爪Tの画像)が取得されると、当該画像から「識別標識M」を検出する検出部として機能する。
そして制御部31は、画像から検出された「識別標識M」に基づいた処理(すなわち、「識別標識M」に格納されていた「特定の情報」に基づく各種処理)を行う。
【0049】
本実施形態では、制御部31は、同一の「識別標識M」が「所定の個数」以上検出された場合に、当該「識別標識M」に基づいた処理を行うようになっている。具体的には、制御部31は、「所定の個数」の設定情報を取得し、読取り部36によって読み取られた「識別標識M」の数がこの「所定の個数」以上であるか否かを判断して、「所定の個数」以上である場合にのみ「識別標識M」に基づいた処理を行う。
【0050】
すなわち、「所定の個数」として「1」が設定されている場合には、読取り部36によって1つ以上の「識別標識M」が読み取られた場合に、当該「識別標識M」に基づいた処理を行う。例えば図2(c)に示すように、3つ印刷された「識別標識M」のうち1つ以上読み取ることができる場合には「識別標識M」に格納されていた「特定の情報」に基づく処理(例えば入場許可の表示を行う処理や入場ゲートを開扉する等の処理)を行う。
これに対して「所定の個数」として「3」が設定されている場合には、例えば図2(c)に示すように、3つ印刷された「識別標識M」のうち1つでも読取り不可能となり2つしか認識することができなかった場合、「識別標識M」に基づいた処理は行われない。
【0051】
なお、読取り装置3は、専用機(読取り専用機)に限定されない。例えばユーザのスマートフォン等の端末装置が読取り装置として機能してもよい。使用の場面としては、例えば爪Tに「識別標識M」の印刷を施した友人同士で相手の「識別標識M」を読み取り合い、互いのアカウント情報を交換する場合等が想定される。この場合には、端末装置に装備されているカメラ機能部が読取り部として機能する。またこの場合、爪T等に印刷された「識別標識M」を検出し、この「識別標識M」に対応付けられた「特定の情報」を取得するための専用のアプリケーションプログラム等が端末装置の記憶部等に記憶される。
そして専用のアプリケーションプログラムを立ち上げた状態で、爪Tに印刷された印刷結果を端末装置に備え付けられたカメラで撮影すると、端末装置内の制御部に画像データが送られ、当該画像から「所定の個数」以上の「識別標識M」が検出された場合には、制御部が「識別標識M」に基づいた処理(例えば「識別標識M」に変換されていた相手のアカウント情報等の「特定の情報」にアクセスする処理等)を行う。
【0052】
[印刷データ生成方法、電子機器等の作用]
次に、本実施形態における印刷データ生成方法、電子機器としての印刷装置及び印刷装置を含む情報読取りシステムの作用について説明する。なお以下の例ではイベントの入場チケットを「識別標識M」の形式で発行・提供し、イベント会場の入り口等で「識別標識M」の読み取りを行うような場合を想定する。
【0053】
情報提供装置2の制御部21は、「特定の情報」が格納された「識別標識」を作成するよう入力指示があると、コード変換情報DBを参照しつつ、所定のルールに基づいて当該情報を格納する「識別標識M」(本実施形態ではQRコード)を作成する。
「特定の情報」が格納された「識別標識M」の作成は、例えばイベントの入場チケットを「識別標識M」の形式で発行する対応となっている場合に、当該チケットの購入手続きがされたとき、情報提供装置2に対して指示される。
指示を受けた情報提供装置2の制御部21は、例えば入場チケットの有効日時等の「特定の情報」が格納された「識別標識M」を作成する。
【0054】
作成された「識別標識M」(QRコード等)は通信部25等を介して所定の電子機器である印刷装置1に出力される。例えばイベントの入場チケットを購入したユーザが購入時にメールアドレスを登録している場合、情報提供装置2は、ネットワークNに接続された印刷装置1のうち、登録されたメールアドレスに紐づけられた印刷装置1に、作成した「識別標識M」を送信する。これにより、図3に示すように、印刷装置1において「識別標識M」が取得される(ステップS1)。
【0055】
なお、印刷装置1が「識別標識M」を取得する手法はこれに限定されず、例えば情報提供装置2から登録されたユーザのメールアドレス宛に「識別標識M」が送信され、ユーザが自宅のPCやスマートフォン等の端末装置で「識別標識M」を受信して、当該「識別標識M」を印刷装置1に登録する等により印刷装置1において取得されてもよい。
例えば、イベント会場の入り口等に印刷装置1が設置され、「識別標識M」を受信したスマートフォン等の端末装置を有線又は無線で当該印刷装置1と接続することで、印刷装置1に「識別標識M」のデータを取得させてもよい。
【0056】
なお、「識別標識M」にしたがった処理を行うための条件として「所定の個数」以上の「識別標識M」が認識されることを要求してもよく、この場合には、「識別標識M」のデータとともに「所定の個数」の情報についても情報提供装置2から印刷装置1に出力する。
【0057】
印刷装置1に指(指の爪T)がセットされると、制御部11は、読取り手段である撮影部14のカメラでセットされた爪Tを撮影させ、爪画像を取得する(ステップS2)。そして形状判断手段として、この読取り結果(爪画像)に基づき印刷対象である爪Tの形状(爪輪郭及び爪Tの曲率等)を判断する。具体的には、まず爪画像に画像処理を行う等により爪画像から爪領域(爪輪郭の内側領域)を検出する(ステップS3)。
そして制御部11は、判断された印刷対象である爪Tの形状に基づいて、印刷データにおける「識別標識M」の印刷を施す位置を決定する。
【0058】
すなわち、形状判断手段としての制御部11は、まず爪領域のうち、端部の所定範囲を端部領域ArEgとし、この端部領域ArEgを除く範囲を「識別標識M」を印刷する候補領域ArSと設定する(ステップS4)。なお、端部のどの程度の範囲を端部領域ArEgとするかは適宜設定される。端部領域ArEgは、例えば爪Tが曲率の大きな形状の場合には端部領域ArEgを広めに設定するというように、爪Tの曲率に応じて設定されてもよい。
【0059】
また形状判断手段としての制御部11は、印刷対象である爪Tの爪領域のうち、撓みが小さい領域を平坦領域ArFと判断する。撓みが小さい領域とは湾曲や凹凸等が少ない領域である。端部領域ArEgよりも内側の候補領域ArSとされた領域内でも傾斜が大きい場合や、凹凸があるような場合には、「識別標識M」を印刷してもきれいに印刷できない可能性がある。このため、形状判断手段としての制御部11は爪領域のうち、撓みが小さい平坦な部分を平坦領域ArFとして検出する(ステップS5)。
【0060】
そして制御部11は、データ生成手段として、候補領域ArS内に「所定の個数」以上の「識別標識M」が配置され、かつ「識別標識M」のうち少なくとも1つが平坦領域ArF内に印刷されるような態様で印刷データを生成する(ステップS6)。なお、平坦領域ArF内に少なくとも1つの「識別標識M」の全体が配置されることが好ましいが、少なくとも当該「識別標識M」の読取りを正常に行う為に必須である領域(「切り出しシンボルfm」の部分等)が平坦領域ArF内に印刷されるように印刷データを生成する。
【0061】
生成された印刷データは、印刷機構13に出力され(ステップS7)、印刷機構13において、当該データに印刷したがった印刷が行われる(ステップS8)。
これにより、図2(b)に示すように、同一の「識別標識M」を複数含み、「所定の個数」以上の「識別標識M」が印刷対象である爪Tの候補領域ArS内に配置され、かつそのうちの少なくとも1つの「識別標識M」(図2(b)では真ん中の1つ)の全体又は少なくとも「識別標識M」のうち読取りを正常に行う為に必須である領域(「切り出しシンボルfm」の部分等)が平坦領域ArF内に配置された印刷結果を得ることができる。
【0062】
また情報の読取りを行う場合には、図4に示すように、読取り装置3の図示しない表示部等に、「識別標識M」を印刷した爪Tを装置の所定位置にかざすようにユーザに促す指示画面等を表示させる(ステップS11)。なお、表示の代わりに、又は表示とともに、音声によるメッセージ等を出力させてもよい。
指示に応じてユーザが、例えば図2(b)に示すような印刷が施された爪Tを読取り装置3の所定の読取り位置に配置すると、読取り装置3では、爪Tに印刷された「識別標識M」を読取り部36において読み取る(ステップS12)。具体的には読取り部36の図示しないカメラで爪Tを撮影し、撮影された画像を検出部としての制御部31が取得・解析することによって、画像から「識別標識M」を検出する。
【0063】
さらに制御部31は「識別標識M」が予め設定された「所定の個数」以上検出できたか否かを判断し(ステップS13)、検出できない場合(ステップS13;NO)には、「識別標識M」にしたがった処理を行わない(ステップS14)。この場合には、例えば表示部にエラー表示を行ったり、音声によるメッセージを出力させる等により、状況をユーザに報知してもよい。
例えば「所定の個数」が「3」である場合に、図2(c)のように、3つ印刷された「識別標識M」のうちの1つでも読取り不可能な状態である場合には、処理を実行する条件を満たさず、「識別標識M」にしたがった処理は行われない。
【0064】
これに対して「識別標識M」が予め設定された「所定の個数」以上検出できた場合(ステップS13;YES)には、検出された「識別標識M」についてデコード処理を行い(ステップS15)、「識別標識M」に格納されていた「特定の情報」を読み取って「特定の情報」へのアクセスを試みる。
制御部31は「特定の情報」にアクセスできたか否かを判断し(ステップS16)、アクセスできた場合(ステップS16;YES)には、「識別標識M」から読み取られた「特定の情報」にしたがった処理を実行する(ステップS17)。
例えば「特定の情報」がイベント会場への入場チケットの情報等、会場への入場を許可する情報である場合には、制御部31は入場ゲートを開錠する処理を実行する。
【0065】
他方、「特定の情報」にアクセスできない場合(ステップS16;NO)には、「識別標識M」から読み取られた「特定の情報」にしたがった処理を行わない(ステップS14)。「特定の情報」にアクセスできない場合とは、例えば読取り装置3に爪Tをかざしたユーザが異なる日の入場チケットを購入した者であり、入場が許可される日時が「識別標識M」に格納された「特定の情報」と一致しない場合(例えば「特定の情報」が7月10日の入場を許可するものである場合に、爪Tをかざしたのが7月9日であった場合等)や、入場しようとしたゲートが「識別標識M」に格納された「特定の情報」と一致しない場合(例えば「特定の情報」がゲートAからの入場を許可するものである場合に、爪TをかざしたのがゲートCに設置された読取り装置3であった場合等)等である。
この場合には、前述の場合と同様に、例えば表示部にエラー表示を行ったり、音声によるメッセージを出力させる等により、状況をユーザに報知してもよい。
【0066】
このように、爪T等の印刷対象に印刷された「識別標識M」を読取り装置3で読み取るだけで、容易にイベント会場への入場等を行うことができ、ユーザにとって便宜である。そして、同一の「識別標識M」が複数印刷されるため、仮に一部が読み取りできなくなった場合でも、「識別標識M」に格納された「特定の情報」にしたがった処理を行うことができ、爪T等に印刷された「識別標識M」を入場チケット等として安心して使用することができる。
【0067】
[効果]
以上のように本実施形態における電子機器である印刷装置1によれば、データ生成手段として機能する制御部11が、印刷対象である爪Tに対して同一の「識別標識M」を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成する。
このため、「識別標識M」を印刷したのち、爪Tの一部が欠けてしまったり、手を洗う際等に擦れる等により印刷対象に印刷された「識別標識M」の一部が不鮮明になってしまったような場合でも、複数印刷された「識別標識M」のうち読取り可能なものがあれば「識別標識M」を読み取ることができる。これにより、例えばイベントのチケット等、「識別標識M」を読み取れないとイベントに参加することができないような場合でも、爪Tに印刷した「識別標識M」を安心してチケット代わりに用いることができる。
【0068】
例えば本実施形態のように「識別標識M」に、チケットの有効日時情報、チケットの入場者情報、チケットの座席情報、のうち少なくともいずれか1つの情報が含まれている場合、「識別標識M」が印刷された爪T等の印刷対象を読取り装置3にかざすだけでイベントへの入場等が認められる。このため、入場時にユーザが紙のチケットを取り出したり、これを1枚ずつ確認する等の煩雑な手続きが不要となり、入場ゲートでの混雑緩和、待ち時間の短縮等を図ることができる。
この場合にも、爪T等には同一の「識別標識M」が複数印刷されているため、確実に必要な情報を読取り装置3に読み取らせることができる。このため、爪Tが擦れたり傷ついたりしないように必要以上に気を付けたり、チケットとして使用することに不安を抱く必要がなくなる。
【0069】
また本実施形態では、データ生成手段としての制御部11を有する電子機器が、生成した印刷データに基づいて、印刷対象(例えば爪T)に対して印刷を施す印刷手段としての印刷機構13を備える印刷装置1である。
このため、生成した印刷データを外部の別装置に出力する等の手間が不要であり、データをやりとすることなく1台の装置で印刷動作まで完結させることができる。
【0070】
また本実施形態では、電子機器である印刷装置1が印刷対象(例えば爪T)の形状(爪輪郭や曲率等)を読み取る読取り手段としての撮影部14と撮影部14による読取り結果に基づいて印刷対象(例えば爪T)の形状を判断する形状判断手段としての制御部11とをさらに備えており、データ生成手段としての制御部11は、形状判断手段として判断した印刷対象(例えば爪T)の形状に基づいて、印刷データにおける「識別標識M」の印刷を施す位置を決定する。
このため、ユーザの爪Tの大きさや曲率等に応じて、適切な位置に「識別標識M」を印刷させることができる。
【0071】
また本実施形態において、形状判断手段としての制御部11は、印刷対象(例えば爪T)のうち、撓みが小さい領域を平坦領域ArFと判断し、データ生成手段としての制御部11は、形状判断手段として平坦領域ArFと判断した領域内に、少なくとも2つ以上の同一の「識別標識M」のうち1つの「識別標識M」について、当該「識別標識M」の読取りを正常に行う為に必須である領域(「切り出しシンボルfm」等)の印刷が施されるように印刷データを生成する。
例えば「識別標識M」がQRコードである場合、全体の30%近くの部分が不鮮明となっても読み取ることが可能となっている。しかし、情報読取り側で切り出しパターンfmを認識することができないと、それがQRコードと認識できず、「識別標識M」に格納されている「特定の情報」を読み出すことができない。
この点、「識別標識M」の読取りを正常に行う為に必須である領域(「切り出しシンボルfm」等)を高品質に印刷しやすく、読み取りもしやすい平坦領域ArFに印刷させることで、「識別標識M」を用いた情報取得をより確実に行わせることができる。
【0072】
また本実施形態において、印刷対象は爪Tである。
このため、イベントの入場チケットの情報等を「識別標識M」として印刷さえしておけば、何も持たずにイベント等に参加することができ、チケットを忘れるおそれ等もない。
【0073】
また印刷対象が爪Tである場合において、爪Tの形状を読み取る読取り手段としての撮影部14と、撮影部14による読取り結果である爪画像に基づいて爪Tの形状(爪輪郭や曲率等)を判断する形状判断手段としての制御部11と、をさらに備え、データ生成手段としての制御部11は、複数の爪Tのうち、形状判断手段により撓みが小さいと判断された爪Tに、少なくとも2つ以上の同一の「識別標識M」のうち1つの「識別標識M」について、当該「識別標識M」の読取りを正常に行う為に必須である領域(「切り出しシンボルfm」等)の印刷が施されるよう印刷データを生成する。
印刷を行う印刷対象の候補として複数の爪Tがある場合、全ての爪Tに「識別標識M」を印刷してもよいし、一部の爪Tに印刷してもよいが、撓みの大きさに差がある場合には撓みが小さい爪Tに、少なくとも「切り出しシンボルfm」等を含む「識別標識M」を1つ以上印刷させることで、「識別標識M」を用いた情報取得をより確実に行わせることができる。
【0074】
また本実施形態の情報読取りシステムは、電子機器である印刷装置1と、読取り装置3と、を備え、読取り装置3は、「識別標識M」を検出する検出部として機能するとともに、同一の「識別標識M」が「所定の個数」以上検出された場合に、当該「識別標識M」に基づいた処理を行う制御部31を備えている。
このように同一の「識別標識M」が「所定の個数」以上検出されることを条件として処理を行うとすることによって、「識別標識M」が印刷された爪T等を入場チケット等として用いる場合のセキュリティレベルを高めることができる。
【0075】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0076】
例えば本実施形態は、同一の「識別標識M」のみを印刷する場合について説明したが、同一の「識別標識M」の組を複数組み印刷し、各組の「識別標識M」にそれぞれ異なる「特定の情報」を格納してもよい。
【0077】
例えば図5は、「識別標識M」として「識別標識A」、「識別標識B」、「識別標識C」が設定され、印刷対象である爪Tに「識別標識A」が4つ、「識別標識B」が2つ、「識別標識C」が2つ印刷される場合を示した印刷例である。「識別標識A」、「識別標識B」、「識別標識C」にはそれぞれに異なる「特定の情報」が対応(格納)されており、図6は、各「識別標識M」とこれに対応する「特定の情報」のイメージを示した図である。
【0078】
図6に示すように、例えば「識別標識A」にはイベントの実施日時の情報(すなわちチケットの有効日時情報)、「識別標識B」にはチケットの入場者情報(すなわちチケットを購入したユーザを特定するためのID情報等)、「識別標識C」にはチケットの座席情報(図示例ではゲートAから入場して3列目の21番に着席する旨の情報)がそれぞれ対応している。
このような場合に、図5に示すように、全ての「識別標識M」(「識別標識A」~「識別標識C」)が、印刷対象である爪Tの端部領域ArEgを避けて、端部領域ArEgよりも内側の候補領域ArS内に配置され、同じ「特定の情報」が対応付けられた各組の「識別標識M」のうち、少なくとも1つの「識別標識M」(「識別標識M」のうちの少なくとも「切り出しシンボルfm」等を含む部分)は、平坦領域ArF内に配置されるようにする。
【0079】
例えば図5に示す例では、「識別標識A」が2つ、「識別標識B」と「識別標識C」が1つずつ、候補領域ArS内であり、かつ平坦領域ArF内に印刷されている。
これにより、チケットの有効日時情報、ユーザを特定するためのID情報、座席情報が、いずれも確実に印刷対象である爪Tから読み取れるようになっており、ユーザは読取り装置3に爪Tをかざすだけで、必要な情報をすべて提示することができる。
【0080】
なお、それぞれの「特定の情報」の重要性に差がある(またはそれぞれの「特定の情報」に重要性のレベルが設定されている)場合には、より重要な情報(重要性のレベルが高く設定されている情報)について多くの「識別標識M」を印刷させるようにしてもよい。
例えば情報提供装置2の制御部21が「識別標識M」を生成する際に、情報の種類ごとに予め定められた重要度、またはユーザが個別に設定した重要度に基づいて、「特定の情報」とともに重要度情報が格納された「識別標識M」を生成してもよい。
例えば図5及び図6に示す例では、チケットの有効日時情報に対応する「識別標識A」が最も重要であるとした場合の例であり、「識別標識A」の印刷数が最も多く、最も安定的に情報を読み取ることのできる位置である平坦領域ArF内に配置される数も多くなっている。
また、データ生成手段は、「識別標識A」が最も重要度が高く、「識別標識C」が最も重要度が低い場合の例として、図7に示すように、重要度が高い「識別標識M」ほど、平坦領域ArFと判断された領域内の中央部(爪Tの幅方向(図7等において横方向W)の中央部であり、図7等における縦方向Hの中央部)により近い位置に印刷を施す態様で印刷データを生成してもよい。
また、データ生成手段は、「識別標識A」が最も重要度が高い場合の例として、印刷場所は問わず、「識別標識A」の印刷数が最も多い態様の印刷データを生成してもよい(例えば、図5では上記の例で最も重要度が高いとされる「識別標識A」の印刷数が「識別標識B」や「識別標識C」よりも多くなっている。)。
また、データ生成手段は、「識別標識A」が最も重要度が高い場合の例として、印刷個数は問わず、印刷する「識別標識A」を最も安定的に情報を読み取ることのできる位置である平坦領域ArF内に配置される態様で印刷データを生成してもよい。
【0081】
また本実施形態では、「特定の情報」が格納された(変換された)「識別標識M」が情報提供装置2で生成され、これを印刷対象(爪T等)にどのように配置するかは、電子機器である印刷装置1の、データ生成手段としての制御部11が調整して印刷データを生成する場合を例示したが、電子機器が備えるデータ生成手段はこのようなものに限定されない。
例えば、スマートフォン等の端末装置の制御部が「特定の情報」が格納された(変換された)「識別標識M」を生成し、データ生成手段として印刷対象(爪T等)に対して同一の「識別標識M」を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成してもよい。この場合には、印刷機構を有する装置(ネイルプリンタ等の印刷装置)に生成された印刷データを出力し、印刷対象(爪T等)に印刷データに基づく印刷を行わせる。
【0082】
すなわち、例えば「識別標識M」に格納(変換)される「特定の情報」がスマートフォン等の端末装置のユーザの個人的なメールアドレスやアカウント情報等である場合、これらを当該端末装置の制御部において専用のアプリケーションプログラムを用いて「識別標識M」に格納(変換)することができ、端末装置の制御部がさらにデータ生成手段として印刷対象(爪T等)に対して同一の「識別標識M」を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成してもよい。
【0083】
また、データ生成手段を備える電子機器は印刷装置1に限定されない。
例えば情報提供装置2の制御部21が「識別標識M」を生成するとともに、爪T等の印刷対象に対して同一の「識別標識M」を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段として機能してもよい。この場合、印刷機構13を備える装置に対して情報提供装置2から印刷データが提供される。
【0084】
この場合も、印刷対象の端部領域ArEgを避けて「識別標識M」が印刷されるような印刷データを生成することが好ましい。なお、例えば印刷対象がユーザの爪Tのような個人差のあるものではなく、例えばネイルシールやネイルチップ等、大きさや形状が予め定まっているようなものであれば、印刷対象の形状を読み取る読取り手段(本実施形態では撮影部14)や、読取り手段による読取り結果に基づいて印刷対象の形状を判断する形状判断手段等を備えなくても、印刷対象の端部領域ArEgを避けて「識別標識M」を配置することが可能である。また、印刷対象が爪Tである場合でも、実際の印刷対象であるユーザの爪Tの形状の読取り等を行わずに、一般的な人の爪の大きさや形状を想定して、端部領域ArEgを避け、できるだけ中央部の領域(通常、比較的平坦である領域)に「識別標識M」が配置されるように印刷データを生成してもよい。
【0085】
なお、本実施形態では、情報提供装置2が企業等のサーバであり、「識別標識M」の印刷は情報提供装置2から「識別標識M」の情報を受け取った印刷装置1で行う場合を例示したが、電子機器や電子機器としての印刷装置は情報提供装置2側に付属する装置であってもよい。
【0086】
例えばイベントのチケットを発行する企業等において、チケットを購入したユーザに対して発行するチケットの有効日時情報等を格納した「識別標識M」を生成し、これをネイルシールやネイルチップ、樹脂プレート、紙等に印刷して紙のチケットの代わりにユーザに提供してもよい。ネイルチップやプレートはそのまま提供してもよいし、ペンダントヘッドやイヤリング、キーホルダ等に加工して提供してもよい。
【0087】
例えばネイルシールに印刷して提供した場合、ユーザはこれを自分の爪に貼ってイベント会場に行くだけで、簡易に入場することができる。ネイルシールやネイルチップ等に印刷されたものを利用することで、「識別標識M」を直接爪に印刷するよりも耐久性に優れ、紙のチケット等の代わりに用いる場合に安心感がある。またネイルチップやプレート等に印刷した場合には、イベント終了後にこれを記念品として取っておくこともできる。
この場合には、ネイルシールやネイルチップ、樹脂プレート等が印刷対象となり、印刷データを生成するデータ生成手段は、これらの印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成する。
データ生成手段は、情報提供装置2の制御部等であってもよいし、企業側の印刷装置が備える制御部等であってもよい。
【0088】
すでに印刷データに基づいて印刷されたネイルシール等をユーザに提供する場合、ユーザが印刷装置1を用いることのできない環境にある場合(例えばユーザが印刷装置1を所有しておらず、印刷装置1を置いているネイルサロンも近くにない場合等)でも本実施形態に示した場合と同様に情報読取りシステムを利用することができる。
なお、ネイルシールやネイルチップ等は、ユーザの爪の形状に合わせて外周部を切ったり削ったりする等、形を整えて用いられることもある。このため、仮に印刷対象がネイルシールやネイルチップ等のように全体が平坦で湾曲や凹凸がないものである場合でも、「識別標識M」を印刷する印刷データは、「識別標識M」が端部領域ArEgを避けてできるだけ中央付近に配置されるような態様で生成されることが好ましい。
【0089】
なお、爪に印刷された「識別標識M」を情報ツールとして利用する場面は実施形態に示したような入場情報、ゲートの開錠情報等に限定されず、各種の用途が想定される。
例えば、忘れてはいけないが他人から見られたくないようなもの(例えば各種の会員番号や暗証番号等)を「特定の情報」として格納する「識別標識M」を爪Tに印刷して身に着けていき、会員番号等の提示を認められたときに爪Tをかざして入場許可を求めることができるようにしてもよい。
また「特定の情報」として緊急連絡先の電話番号等を「識別標識M」に格納し、これを爪T等の印刷対象に印刷しておけば、緊急時に要保護者の身元確認ツール等としても役立てることができる。
また予防接種やワクチン接種を済ませていることの証明等の情報を「特定の情報」として爪に印刷した「識別標識M」に格納しておけば、対応する店舗等で爪Tを読み取るだけで入店のための証明を簡易に完了させることもできる。
【0090】
また、情報提供装置2から印刷装置1や印刷装置1と連携するような端末装置に「識別標識M」の情報が送られ、ユーザ側で印刷対象への印刷が行われる場合には、「識別標識M」のを印刷する印刷可能回数に制限を設けるようにしてもよい。これによりチケット等の重複、転用、複製等を防止することが可能となる。
【0091】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段、
を備えることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記データ生成手段は、前記識別標識が前記印刷対象の端部領域を避けて配置される態様で前記印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記データ生成手段が生成した印刷データに基づいて、前記印刷対象に対して印刷を施す印刷手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項4>
前記印刷対象の形状を読み取る読取り手段と、
前記読取り手段による読取り結果に基づいて前記印刷対象の形状を判断する形状判断手段と、
をさらに備え、
前記データ生成手段は、前記形状判断手段によって判断された前記印刷対象の形状に基づいて、前記印刷データにおける前記識別標識の印刷を施す位置を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項5>
前記形状判断手段は、前記印刷対象のうち、撓みが小さい領域を平坦領域と判断し、
前記データ生成手段は、少なくとも2つ以上の同一の前記識別標識のうち1つの前記識別標識について、当該識別標識の読取りを行う為に必須である領域の印刷を施す位置を、前記形状判断手段により前記平坦領域と判断された領域を含む所定の領域内に決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
<請求項6>
前記形状判断手段は、前記印刷対象のうち、撓みが小さい領域を平坦領域と判断し、
前記データ生成手段は、所定の情報とともに所定の重要度を示す重要度情報を前記識別標識に格納し、複数の前記識別標識を、前記重要度情報が示す重要度が高いものほど、前記形状判断手段によって前記平坦領域と判断された領域内の中央部により近い位置に印刷を施す態様の印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
<請求項7>
前記形状判断手段は、前記印刷対象のうち、撓みが小さい領域を平坦領域と判断し、
前記データ生成手段は、所定の情報とともに所定の重要度を示す重要度情報を前記識別標識に格納し、複数の前記識別標識の内、前記重要度情報が示す重要度が高いものほど前記印刷対象に対してより多く印刷を施す態様の印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
<請求項8>
前記印刷対象は爪である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項9>
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器と、読取り装置と、を備える情報読取りシステムであって、
前記読取り装置は、
前記識別標識を検出する検出部と、
前記検出部によって、同一の前記識別標識が所定の個数以上検出された場合に、当該識別標識に基づいた処理を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする情報読取りシステム。
<請求項10>
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成処理、
を含んでいることを特徴とする電子機器が実行する印刷データ生成方法。
<請求項11>
電子機器のコンピュータを、
印刷対象に対して同一の識別標識を少なくとも2つ以上含むような態様で印刷を施すための印刷データを生成するデータ生成手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0092】
1 印刷装置(電子機器)
10 制御装置
11 制御部
12 記憶部
13 印刷機構
14 撮影部
15 通信部
2 情報提供装置
20 制御装置
21 制御部
22 記憶部
3 読取り装置
30 制御装置
31 制御部
32 記憶部
36 読取り部
100 情報読取りシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7