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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024405
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】表皮材取付具
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20240215BHJP
   B68G 7/052 20060101ALI20240215BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A47C31/02 B
B68G7/052 A
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127206
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 円香
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝欣
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】押圧手段を用いて表皮材の取り付けを確実に行うことができる表皮材取付具を提供する。
【解決手段】表皮材取付具5は、表皮材に取り付けられる取付部51と、クッション材2の溝21に取り付けられる係止部材4の挿入部42により挿入される被挿入部52と、を備え、被挿入部52は、取付部51に連結される連結部53と、連結部53から延伸し、互いの間に隙間を挟んで対向する第1脚部521および第2脚部522と、第1脚部521から第2脚部522に向かって突出し、挿入部42に係合可能な本係合部54と、本係合部54よりも第1脚部521の先端側において第1脚部521から第2脚部522に向かって突出し、挿入部42に係合可能な仮係合部55と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材(3)をクッション材(2)に取り付ける表皮材取付具(5,5A)であって、
前記表皮材(3)または前記クッション材(2)の溝(21)の一方に取り付けられる取付部(51,51A)と、
前記表皮材(3)または前記クッション材(2)の前記溝(21)の他方に取り付けられる係止部材(4,4A)の挿入部(42)により挿入される被挿入部(52)と、を備え、
前記被挿入部(52)は、
一方向に延伸しかつ互いに対向する第1脚部(521)および第2脚部(522)と、
前記第1脚部(521)と前記第2脚部(522)との各基端部(521R,522R)を連結しかつ前記取付部(51,51A)に接続される連結部(53)と、
前記第1脚部(521)から前記第2脚部(522)に向かって突出し、前記挿入部(42)に係合可能な本係合部(54)と、
前記本係合部(54)よりも前記第1脚部(521)の先端側において前記第1脚部(521)から前記第2脚部(522)に向かって突出し、前記挿入部(42)に係合可能な仮係合部(55)と、を備える、表皮材取付具。
【請求項2】
前記本係合部(54)は、
前記第1脚部(521)の前記先端側に面するように前記第1脚部(521)の延伸方向に対して傾斜した本係合案内面(541)と、
前記第1脚部(521)の基端側に面し、前記挿入部(42)に係合可能な本係合面(542)と、を有し、
前記本係合面(542)は、前記連結部(53)との間に前記挿入部(42)が配置される収容空間(S1)を形成する、請求項1に記載の表皮材取付具。
【請求項3】
前記仮係合部(55)は、
前記第1脚部(521)の先端側に面するように前記第1脚部(521)の延伸方向に対して傾斜した仮係合案内面(551)と、
前記第1脚部(521)の基端側に面し、前記挿入部(42)に係合可能な仮係合面(552)と、を有し、
前記仮係合面(552)は、前記本係合部(54)との間に前記挿入部(42)の一部が入り込み可能な空間(S2)を形成する、請求項1または請求項2に記載の表皮材取付具。
【請求項4】
前記第1脚部(521)の先端部(521F)は、前記第2脚部(522)側とは反対側に向かって屈曲しており、
前記仮係合案内面(551)は、前記第1脚部(521)の前記先端部(521F)に形成されている、請求項3に記載の表皮材取付具。
【請求項5】
前記取付部(51)は、前記表皮材(3)に取り付けられ、
前記連結部(53)は、前記連結部(53)から前記第1脚部(521)および前記第2脚部(522)が延伸する方向とは反対方向に面する平坦面(533)を有する、請求項1に記載の表皮材取付具。
【請求項6】
前記第1脚部(521)または前記第2脚部(522)の一方および前記取付部(51)は、前記溝(21)の幅方向の一方側に配置される前記連結部(53)の端部(531,532)に対して共に接続されている、請求項5に記載の表皮材取付具。
【請求項7】
前記第2脚部(522)は、
前記第1脚部(521)側に面し、かつ、前記第2脚部(522)の延伸方向に沿って配置される内側面(522A)と、
前記第1脚部(521)側および前記第2脚部(522)の先端側に面し、かつ、前記内側面(522A)に連続して形成された傾斜面(523)と、を有する、請求項1に記載の表皮材取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材をクッション材に取り付ける表皮材取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用座席や椅子などでは、座面や背当てなど人体に触れる部分にクッション材を設置し、その表面を表皮材で被覆したものが多用されており、表皮材をクッション材に取り付ける手段としての表皮材取付具が知られている。
例えば、特許文献1の表皮材取付具は、表皮材またはクッション材の溝の一方に取り付けられるものであって、表皮材またはクッション材の溝の他方に取り付けられる係止部材に係止される。この表皮材取付具は一対の脚部を有しており、係止部材の挿入部が当該一対の脚部の間に挿入されることで、表皮材取付具が係止部材に係止される。その結果、表皮材がクッション材に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/050393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、表皮材の取り付け現場では、作業者の負担軽減などの理由から自動機などの押圧手段を用いることの要望がある。
しかし、上述の特許文献1に開示の技術では、表皮材に取り付けられた表皮材取付具(または係止部材)をクッション材の溝に挿入する際、クッション材の形状や表皮材に加わる張力などの影響により、表皮材取付具(または係止部材)の姿勢が傾き易い。自動機などの押圧手段を用いる場合、表皮材に取り付けられた表皮材取付具(または係止部材)の姿勢が傾いたまま押圧を受けると、係止部材の挿入部が表皮材取付具の一対の脚部の間に挿入されず、表皮材の取り付けが成功しないことがある。
【0005】
本発明の目的は、押圧手段を用いて表皮材の取り付けを確実に行うことができる表皮材取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1態様)
本発明の第1態様に係る表皮材取付具は、表皮材をクッション材に取り付ける表皮材取付具であって、前記表皮材または前記クッション材の溝の一方に取り付けられる取付部と、前記表皮材または前記クッション材の前記溝の他方に取り付けられる係止部材の挿入部により挿入される被挿入部と、を備え、前記被挿入部は、一方向に延伸しかつ互いに対向する第1脚部および第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部との各基端部を連結しかつ前記取付部に接続される連結部と、前記第1脚部から前記第2脚部に向かって突出し、前記挿入部に係合可能な本係合部と、前記本係合部よりも前記第1脚部の先端側において前記第1脚部から前記第2脚部に向かって突出し、前記挿入部に係合可能な仮係合部と、を備える。
このような構成では、表皮材取付具の仮係合部が係止部材に係合されることで、係止部材の挿入部が第1脚部と第2脚部との間に浅く挿入された状態を一時的に保つことができる。その後、自動機などの押圧手段によって表皮材取付具または係止部材に押圧を加えることで、挿入部が第1脚部と第2脚部との間により深く挿入され、表皮材取付具の本係合部を係止部材に係合させることができる。本発明の第1態様に係る表皮材取付具によれば、押圧手段を用いて表皮材の取り付けを確実に行うことができる。
【0007】
(第2態様)
本発明の第1態様に係る表皮材取付具において、前記本係合部は、前記第1脚部の先端側に面するように前記第1脚部の延伸方向に対して傾斜した本係合案内面と、前記第1脚部の基端側に面し、前記挿入部に係合可能な本係合面と、を有し、前記本係合面は、前記連結部との間に前記挿入部が配置される収容空間を形成することが好ましい。
このような構成において、本係合案内面は、仮係合した挿入部を収容空間へ案内することができ、本係合面は、収容空間に収容された挿入部に対して当接することができる。これにより、本係合を好適に行うことができる。
【0008】
(第3態様)
本発明の第1態様または第2態様に係る表皮材取付具において、前記仮係合部は、前記第1脚部の先端側に面するように前記第1脚部の延伸方向に対して傾斜した仮係合案内面と、前記第1脚部の基端側に面し、前記挿入部に係合可能な仮係合面と、を有し、前記仮係合面は、前記本係合部との間に前記挿入部の一部が入り込み可能な空間を形成することが好ましい。
このような構成において、仮係合案内面は、挿入部を第1脚部と第2脚部との間の隙間に向かって案内することができ、仮係合面は、第1脚部と第2脚部との間の隙間に挿入された挿入部に対して当接することができる。これにより、仮係合を好適に行うことができる。
【0009】
(第4態様)
本発明の第1態様から第3態様のいずれかに係る表皮材取付具において、前記第1脚部の先端部は、前記第2脚部側とは反対側に向かって屈曲しており、前記仮係合案内面は、前記第1脚部の前記先端部に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、挿入部を案内するための仮係合案内面を溝の幅方向に広く確保することができる。
【0010】
(第5態様)
本発明の第1態様から第4態様のいずれかに係る表皮材取付具において、前記取付部は、前記表皮材に取り付けられ、前記連結部は、前記連結部から前記第1脚部および前記第2脚部が延伸する方向とは反対方向に面する平坦面を有することが好ましい。
このような構成では、平坦面がクッション材の溝の開口側に面するように表皮材取付具を配置させた場合、自動機等の押圧手段により、平坦面に対してクッション材の溝深さ方向に沿った押圧を好適に加えることができる。
【0011】
(第6態様)
本発明の第5態様に係る表皮材取付具において、前記第1脚部または前記第2脚部の一方および前記取付部は、前記溝の幅方向の一方側に配置される前記連結部の端部に対して共に接続されていることが好ましい。
このような構成によれば、連結部の平坦面をより広く確保することができる。
【0012】
(第7態様)
本発明の第1態様から第6態様のいずれかに係る表皮材取付具において、前記第2脚部は、前記第1脚部側に面し、かつ、前記第2脚部の延伸方向に沿って配置される内側面と、前記第1脚部側および前記第2脚部の先端側に面し、かつ、前記内側面に連続して形成された傾斜面と、を有することが好ましい。
このような構成において、第2脚部は、第1脚部とは異なり、本係合部や仮係合部などの突起形状を有さない。これにより、特に表皮材取付具が係止部材との嵌合姿勢から傾いた状態である場合において、第2脚部から係止部材への不要な干渉を減らし、仮係合を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る表皮材取付具をクッション材に設置した状態を示す断面図。
図2図2の一部範囲を示す拡大図。
図3】前記実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、挿入部をクッション材の溝に挿入する様子を示す図。
図4】前記実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、仮係合の様子を示す図。
図5】前記実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、本係合の様子を示す図。
図6】前記実施形態の変形例に係る表皮材取付具を示すクッション材の断面図。
図7】前記実施形態の他の変形例に係る表皮材取付具を示すクッション材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る表皮材取付具5は、車両用座席などを構成するクッション材2に対して表皮材3を取り付ける表皮材取付構造1を構成する。すなわち、表皮材取付構造1は、クッション材2の溝21に取り付けられる係止部材4と、表皮材3に取り付けられる表皮材取付具5とによって構成され、表皮材取付具5を係止部材4に係止させることにより、表皮材3をクッション材2に取り付けることができる。
【0015】
クッション材2は、座席の形状に成形された発泡ポリウレタン等の合成樹脂ウレタンフォーム材である。クッション材2には、表皮材取付構造1が配置される溝21が形成されている。溝21は、互いに対向する第1溝壁面211および第2溝壁面212を有しており、クッション材2の上下方向の一方側に開口21Aを形成しつつ、クッション材2の表面の任意の方向に沿って延びている。
【0016】
表皮材3は、クッション材2の表面を覆うシートであり、例えば合成樹脂織物シートである。表皮材3の端縁部31は、表皮材取付具5に対して縫製等によって装着される。なお、図1では、2枚の表皮材3の端縁部31が表皮材取付具5に装着されている。
【0017】
以下、表皮材取付構造1の構成の説明では、表皮材取付具5が係止部材4に係止された状態(本係合した状態)を基準としてXYZの3軸方向を用いる(図1図5参照)。例えば、表皮材取付構造1の長さ方向をX方向とし、表皮材取付構造1の左右方向をY方向とし、表皮材取付構造1の上下方向をZ方向とする。なお、表皮材取付構造1により表皮材3がクッション材2に設置された状態(図1参照)では、X方向がクッション材2の溝21の長さ方向に対応し、Y方向が溝21の幅方向に対応し、Z方向が溝21の深さ方向に対応する。また、説明の便宜上、Z方向の一方側(上方)に向かう方向を+Z方向とし、Z方向の他方側(下方)に向かう方向を-Z方向とし、溝21は、クッション材2において+Z方向に開口するものとする。
【0018】
係止部材4は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品である。この係止部材4は、クッション材2の溝21の底部に埋設される基部41と、基部41に立設された挿入部42とを備える。
基部41は、例えばプレート形状を有している。この基部41は、クッション材2の成形と同時にクッション材2の溝21の底部に埋設されることで、クッション材2の溝21に取り付けられる。
【0019】
挿入部42は、基部41から+Z方向に延び、XZ面に沿って配置される壁部421と、壁部421の+Z側の先端に設けられた膨大部422とを備える。
壁部421の各側面には、膨大部422との隣接領域においてX方向に延びる凹部423が形成されている。
膨大部422は、壁部421からY方向の両側に突出する上向きの錨形状を有している。具体的には、膨大部422は、-Z方向に面する一対の被係合面424と、+Z方向に面する一対の傾斜面425と、被係合面424と傾斜面425との間を連結する一対の端面426と、を有する。一対の傾斜面425は、Y方向外側および+Z側に面するように、Z方向に対して傾斜している。
【0020】
表皮材取付具5は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品である。表皮材取付具5は、表皮材3に取り付けられる取付部51と、係止部材4の挿入部42により挿入される被挿入部52と、を備える。
【0021】
取付部51は、例えばXZ面に沿って配置されるプレート形状を有する。本実施形態では、取付部51の-Y側に面する取付面511に対して、2枚の表皮材3の端縁部31が重ねられ、取付部51および表皮材3の端縁部31が共に縫製されている。
【0022】
被挿入部52は、互いの間に隙間を挟んでY方向に対向する第1脚部521および第2脚部522と、第1脚部521および第2脚部522の各基端部521R,522Rを連結しかつ取付部51に接続される連結部53と、第1脚部521に設けられた本係合部54および仮係合部55と、を備える。
【0023】
第1脚部521および第2脚部522は、連結部53から-Z方向にそれぞれ延伸している。すなわち、第1脚部521および第2脚部522の各基端部521R,522Rは、連結部53に接続されている。
【0024】
第1脚部521は、本係合部54よりも+Z側においてY方向内側に面する内側面521Aを有する。この内側面521Aは、Z方向に沿って配置される平面形状を有する。本係合部54および仮係合部55のそれぞれは、内側面521AよりもY方向内側に突出している。
【0025】
第2脚部522は、Y方向内側に面する内側面522Aを有する。この内側面522Aは、Z方向に沿って配置される平面形状を有する。第2脚部522の内側面522Aは、第1脚部521の内側面521Aに対してY方向に対向している。
また、第2脚部522は、第2脚部522の先端部522Fにおいて内側面522Aに連続して形成された傾斜面523を有する。この傾斜面523は、-Z側およびY方向内側に面するように、Z方向に対して傾斜している。
【0026】
連結部53は、Y方向に沿って延伸している。連結部53の+Y側の端部531は、取付部51に接続されると共に、第1脚部521に接続されている。これにより、本実施形態では、取付部51および第1脚部521がZ方向に連続するように形成されている。一方、連結部53の-Y側の端部532は、第2脚部522に接続されている。また、連結部53は、連結部53から第1脚部521および第2脚部522が延伸する方向とは反対方向、すなわち-Z側に面する平坦面533を有する。
【0027】
図2は、本係合部54および仮係合部55を拡大して示す図である。
図2に示すように、本係合部54は、第1脚部521の仮係合部55よりも+Z側の部位から第2脚部522に向かって突出している。具体的には、本係合部54は、第1脚部521の先端側(-Z方向)および第2脚部522側(-Y方向)のそれぞれに面する本係合案内面541と、第1脚部521の基端側(+Z方向)に面する本係合面542と、を有する。本係合面542は、XY面に沿って配置されることが好ましい。
【0028】
仮係合部55は、第1脚部521の先端部521Fから第2脚部522に向かって突出している。具体的には、仮係合部55は、第1脚部521の先端側(-Z方向)および第2脚部522側(-Y方向)のそれぞれに面する仮係合案内面551と、第1脚部521の基端側(+Z方向)に面する仮係合面552と、を有する。仮係合面552は、Y方向内側に向かうほど下方に位置するように、XY面に対して傾斜している。
【0029】
本実施形態では、本係合部54と連結部53との間かつ第1脚部521と第2脚部522との間において、係止部材4の膨大部422が収容可能な収容空間S1が形成される。ここで、収容空間S1のZ方向の寸法H1は、膨大部422のZ方向の寸法H2以上であることが好ましい。また、収容空間S1を挟む第1脚部521と第2脚部522との間の隙間のY方向の寸法D1は、膨大部422のY方向の最大寸法D2と等しいことが好ましい(図1参照)。
また、図2に示すように、仮係合面552と本係合案内面541との間には、膨大部422のY方向一方側の一部が入り込み可能な空間S2が形成される。
【0030】
本実施形態において、本係合部54の突出先端は、仮係合部55の突出先端よりも第2脚部522側(Y方向内側)に位置している。これにより、本係合面542のY方向の寸法が大きく確保されている。具体的には、本係合面542のY方向の寸法D3は、仮係合面552のY方向の寸法D4よりも大きい。
【0031】
本実施形態において、本係合案内面541および仮係合案内面551の配置角度は、互いに異なる。具体的には、XZ面に対する本係合案内面541の傾斜角θ1は、XZ面に対する仮係合案内面551の傾斜角θ2よりも小さい。ここで、第1脚部521の先端部521FがY方向外側に向かって屈曲していることにより、仮係合案内面551のY方向の寸法が大きく確保されている。
【0032】
以上説明した係止部材4および表皮材取付具5は、それぞれX方向に沿って連続形成されており、係止部材4および表皮材取付具5のX方向における各長さ寸法は適宜設定される。
また、図示を省略するが、表皮材3の端縁部31に対して複数の表皮材取付具5が所定間隔で取り付けられてもよい。この場合、クッション材2の溝21には、複数の係止部材4が溝21の長さ方向に沿って所定間隔で設けられ、互いに対応する係止部材4および表皮材取付具5が係合してもよい。
【0033】
(表皮材取付方法)
本実施形態の表皮材取付構造1を用いた表皮材3の取り付け方法について、図3図5を用いて説明する。なお、図3図5では、図の簡略化のため、表皮材3の図示を省略し、クッション材2の溝21の基本的な輪郭を2点鎖線で示している。
【0034】
まず、作業者は、表皮材3が取り付けられた表皮材取付具5と、溝21内に係止部材4が取り付けられたクッション材2とを準備し、クッション材2を覆うように表皮材3を配置する。そして、作業者は、図3に示すように、表皮材取付具5をクッション材2の溝21内に挿入する。
【0035】
表皮材取付具5が溝21に挿入される際、表皮材取付具5は、クッション材2の形状や表皮材3に加わる張力等により、係止部材4との係止姿勢から傾いた状態で係止部材4に近接する。具体的には、表皮材取付具5は、第1脚部521および第2脚部522の各延伸方向が溝21の深さ方向に対して傾いた状態で係止部材4に近接する。このように表皮材取付具5が係止部材4に近接すると、第1脚部521の仮係合案内面551および第2脚部522の傾斜面523のそれぞれが、係止部材4の傾斜面425に押し当る。そして、係止部材4の膨大部422が第1脚部521と第2脚部522との間の隙間に向かって案内される。このとき、第1脚部521または連結部53における任意の部位が弾性変形することで、膨大部422が仮係合部55を乗り越える。これにより、図4に示すように、膨大部422の+Y側の一部が本係合案内面541と仮係合面552との間の空間S2に入り込む。
【0036】
図4に示す状態では、表皮材取付具5の仮係合面552が係止部材4の膨大部422(具体的には被係合面424の縁部)に当接することにより、表皮材取付具5が係止部材4に仮係合する。これにより、係止部材4の挿入部42が第1脚部521と第2脚部522との間に浅く挿入された状態を一時的に保つことができる。
なお、仮係合の際、図5の仮想線で示すように、作業者が表皮材取付具5の姿勢を調整してもよい。これにより、表皮材取付具5の平坦面533がZY平面に沿って配置される。
【0037】
次に、自動機の押圧部(図示省略)をクッション材2の溝21の上方に配置する。そして、自動機が押圧部を溝21に向かって下降させることで、表皮材取付具5に対して押圧を加える。なお、自動機は、シリンダなどの任意の駆動機構によって押圧部を下降させればよい。
【0038】
図4の実線または図5の仮想線の状態において、表皮材取付具5に押圧が加えられると、係止部材4の傾斜面425が第1脚部521の本係合案内面541に押し当り、係止部材4の膨大部422が被挿入部52の収容空間S1に向かって案内される。このとき、第1脚部521または連結部53における任意の部位が弾性変形することで、膨大部422が本係合部54を乗り越える。これにより、図5の実線で示すように、膨大部422が収容空間S1に入り込むと共に、本係合部54が係止部材4の凹部423に入り込む。
【0039】
図5の実線で示す状態では、挿入部42が第1脚部521と第2脚部522との間により深く挿入され、本係合面542が膨大部422(具体的には被係合面424)に当接する。これにより、表皮材取付具5は、係止部材4に本係合する、すなわち係止部材4に係止される。
なお、本係合では、被係合面424に対する本係合面542の当接面積が、仮係合時の被係合面424に対する仮係合面552の当接面積よりも大きくなる。これにより、表皮材取付具5は、係止部材4に確実に保持される。
【0040】
以上により、表皮材取付構造1は、表皮材3をクッション材2に取り付けることができる。
なお、表皮材3の端縁部31に複数の表皮材取付具5が取り付けられている場合、当該複数の表皮材取付具5のうち、一部の表皮材取付具5を仮係合させてから全部の表皮材取付具5を本係合させてもよい。
【0041】
(本実施形態の効果)
本実施形態における表皮材取付具5は、上述したように、係止部材4に仮係合されることで、係止部材4の挿入部42が第1脚部521と第2脚部522との間に浅く挿入された状態を一時的に保つことができる。その後、自動機などの押圧手段によって表皮材取付具5に押圧を加えることで、挿入部42が第1脚部521と第2脚部522との間により深く挿入され、表皮材取付具5を係止部材4に本係合させることができる。よって、本実施形態では、押圧手段を用いて表皮材3の取り付けを確実に行うことができる。
なお、本実施形態では、仮係合部55が本係合部54よりも第1脚部521の先端側に配置されること等により、仮係合に必要な力は、本係合に必要な力よりも小さい。このため、作業者が仮係合を行い、自動機等の押圧手段が本係合を行うことにより、表皮材3の取り付けにかかる作業者の負担を減らすことができる。
【0042】
本実施形態において、本係合部54は、第1脚部521の先端側(-Z側)に面するように第1脚部521の延伸方向(Z方向)に対して傾斜した本係合案内面541と、第1脚部521の基端側(+Z側)に面し、挿入部42に係合可能な本係合面542と、を有し、本係合面542は、連結部53との間に挿入部42が配置される収容空間S1を形成する。
このような構成において、本係合案内面541は、仮係合した挿入部42を収容空間S1へ案内することができ、本係合面542は、収容空間S1に収容された挿入部42に対して当接することができる。これにより、本係合を好適に行うことができる。
【0043】
本実施形態において、仮係合部55は、第1脚部521の先端側(-Z側)に面するように第1脚部521の延伸方向(Z方向)に対して傾斜した仮係合案内面551と、第1脚部521の基端側(+Z側)に面し、挿入部42に係合可能な仮係合面552と、を有し、仮係合面552は、本係合部54との間に挿入部42の一部が入り込み可能な空間S2を形成する。
このような構成において、仮係合案内面551は、挿入部42を第1脚部521と第2脚部522との間の隙間に向かって案内することができ、仮係合面552は、第1脚部521と第2脚部522との間の隙間に挿入された挿入部42に対して当接することができる。これにより、仮係合を好適に行うことができる。
なお、本実施形態では、本係合部54の本係合案内面541が、空間S2に配置された挿入部42を案内できるため、仮係合から本係合への移行を滑らかに行うことができる。
【0044】
本実施形態において、第1脚部521の先端部521Fは、第2脚部522側とは反対側(Y方向外側)に向かって屈曲しており、仮係合案内面551は、第1脚部521の先端部521Fに形成されている。
このような構成によれば、挿入部42を案内するための仮係合案内面551をY方向に広く確保することができる。
【0045】
本実施形態において、連結部53は、連結部53から第1脚部521および第2脚部522が延伸する方向とは反対方向(+Z側)に面する平坦面533を有する。
このような構成では、表皮材取付具5が仮係合される際、平坦面533が溝21の開口21A側に面するように配置可能であるため、自動機等の押圧手段により平坦面533に対してZ方向の押圧を好適に加えることができる。
【0046】
本実施形態において、第1脚部521および取付部51は、連結部53の+Y側の端部531に共に接続されている。
このような構成によれば、連結部53の平坦面533をより広く確保することができる。
【0047】
本実施形態において、第2脚部522は、第1脚部521側に面し、かつ、第2脚部522の延伸方向(Z方向)に沿って配置される内側面522Aと、第1脚部521側および第2脚部522の先端側に面し、かつ、内側面522Aに連続して形成された傾斜面523と、を有する。
このような構成において、第2脚部522は、第1脚部521とは異なり、本係合部54や仮係合部55などの突起形状を有さない。これにより、特に表皮材取付具5が係止部材4との係止姿勢から傾いた状態である場合において、第2脚部522から係止部材4への不要な干渉を減らし、仮係合を確実に行うことができる。
【0048】
(変形例)
前記実施形態の表皮材取付構造1は、クッション材2の溝21に取り付けられる係止部材4と、表皮材3に取り付けられる表皮材取付具5と、を備えるが、本発明はこれに限られない。
例えば、図6に示すように、変形例にかかる表皮材取付構造1Aは、クッション材2の溝21に取り付けられる表皮材取付具5Aと、表皮材3に取り付けられる係止部材4Aと、を備えてもよい。このような変形例において、係止部材4Aは、第1実施形態の基部41を備えず、壁部421に対して表皮材3の端縁部31が縫製等により取り付けられてもよい。また、表皮材取付具5Aは、第1実施形態の取付部51の替わりに、連結部53からY方向両側に延びる取付部51Aを備えてもよい。各取付部51Aは、クッション材2の溝21の底部に埋設されることで、クッション材2に取り付けられてもよい。
図6に示す変形例による表皮材取付方法は、係止部材4Aと表皮材取付具5Aとの配置関係が前記実施形態とは逆であること以外、前記実施形態による表皮材取付方法とほぼ同様である。すなわち、変形例に係る表皮材取付具5Aは、前記実施形態と同様、係止部材4に対して、仮係合および本係合をそれぞれ行うことができる。なお、図6は、表皮材取付具5Aが係止部材4Aに対して仮係合している状態を示している。
【0049】
前記実施形態において、第2脚部522には、本係合部54および仮係合部55が設けられていないが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1脚部521および第2脚部522のそれぞれに、本係合部54および仮係合部55が設けられてもよい。なお、第2脚部522に設けられる本係合部54および仮係合部55は、第1脚部521に設けられる本係合部54および仮係合部55とは左右逆の構成を有すればよい。このような変形例において仮係合を行う場合、第1脚部521または第2脚部522の少なくとも一方における仮係合部55が挿入部42に係合してもよい。
【0050】
前記実施形態では、取付部51および第1脚部521がZ方向に連続するように形成されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、前記実施形態において、被挿入部52に対する取付部51の接続位置は、任意に変更可能である。
例えば、図7に示すように、変形例にかかる表皮材取付構造1Bの表皮材取付具5Bでは、取付部51が連結部53の-Y側の端部532に接続されることで、取付部51および第2脚部522がZ方向に連続するように形成されてもよい。
あるいは、取付部51は、第1脚部521と第2脚部522との間の中間部、すなわち連結部53のY方向の中間部に接続されてもよい。
これらの変形例においても、前記実施形態と同様の表皮材取付方法を実施できる。
【0051】
前記実施形態における表皮材取付具5について、上述した以外の他の詳細な形状は変更されてもよい。例えば、連結部53は平坦面533を有さなくてもよいし、本係合部54は、本係合案内面541を有さなくてもよいし、仮係合部55は、仮係合面552を有さなくてもよい。
【0052】
前記実施形態では、表皮材3の端縁部31に複数の表皮材取付具5が取り付けられている場合について説明しているが、表皮材取付具5はこのような使用例に限定されない。
例えば、表皮材3の端縁部31に対して、ある程度のX方向寸法を有する表皮材取付具5が取り付けられてもよい。この場合、表皮材取付具5のX方向範囲のうち、一部の範囲が仮係合してもよい。このとき、表皮材取付具5のうち仮係合部分と非仮係合部分との間の部分は、弾性変形してもよい。あるいは、表皮材取付具5の当該部分にスリットが形成されていてもよい。
【0053】
前記実施形態では、押圧手段として自動機の押圧部を挙げ、この押圧部を用いて表皮材取付具5の本係合を行う場合を説明しているが、本発明はこれに限定されない。押圧手段は、作業者に操作される治具など、任意の手段であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1A…表皮材取付構造、2…クッション材、21…溝、211…第1溝壁面、212…第2溝壁面、3…表皮材、31…端縁部、4…係止部材、41…基部、42…挿入部、421…壁部、422…膨大部、423…凹部、424…被係合面、425…傾斜面、426…端面、4A…係止部材、5,5A…表皮材取付具、51,51A…取付部、511…取付面、52…被挿入部、521…第1脚部、521A…内側面、521F…先端部、522…第2脚部、522A…内側面、523…傾斜面、53…連結部、531,532…端部、533…平坦面、54…本係合部、541…本係合案内面、542…本係合面、55…仮係合部、551…仮係合案内面、552…仮係合面、S1…収容空間、S2…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7