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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024430
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】害虫防除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/12 20090101AFI20240215BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20240215BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240215BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20240215BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20240215BHJP
【FI】
A01N65/12
A01N53/10 210
A01N25/02
A01P7/04
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127246
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 教代
(72)【発明者】
【氏名】黒田 明
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA14
2B121AA16
2B121CA02
2B121CC02
2B121CC34
2B121EA01
2B121FA13
4H011AC01
4H011BB15
4H011BB22
4H011DA14
(57)【要約】
【課題】より優れた害虫防除効果を有する害虫防除剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
ジョチュウギクエキス、界面活性剤およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種、ポリエチレングリコールならびに水を含有する害虫防除剤であって、前記ポリエチレングリコールの含有量が前記害虫防除剤全体量に対し1~15重量%であることを特徴とする害虫防除剤により優れた害虫防除効果が得られる。また、当該害虫防除剤を害虫に接触するように施用させることを特徴とする害虫防除方法により、効率よく害虫を防除することが可能となる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョチュウギクエキス、界面活性剤およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種、ポリエチレングリコールならびに水を含有する害虫防除剤であって、前記ポリエチレングリコールの含有量が前記害虫防除剤全体量に対し1~15重量%であることを特徴とする害虫防除剤。
【請求項2】
ジョチュウギクエキス、界面活性剤およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種、ポリエチレングリコールならびに水を含有する害虫防除剤であって、前記ポリエチレングリコールの含有量が前記害虫防除剤全体量に対し2.5~10重量%であることを特徴とする害虫防除剤。
【請求項3】
ジョチュウギクエキス、界面活性剤およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種、ポリエチレングリコールならびに水を含有する害虫防除剤であって、前記ポリエチレングリコールの含有量が前記害虫防除剤全体量に対し5~10重量%であることを特徴とする害虫防除剤。
【請求項4】
防除対象がゴキブリ類またはダニ類である請求項1~3の害虫防除剤。
【請求項5】
請求項1~4の害虫防除剤を害虫に接触するように施用させることを特徴とする害虫防除方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は害虫防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の天然志向および安全志向の高まりから、天然成分であるジョチュウギクエキと水とを含有する害虫防除剤が開発されている(例えば特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-251922号
【特許文献2】特開2020-176105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より害虫防除効力が優れる害虫防除剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、
〔1〕ジョチュウギクエキス、界面活性剤およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種、ポリエチレングリコールならびに水を含有する害虫防除剤であって、前記ポリエチレングリコールの含有量が前記害虫防除剤全体量に対し1~15重量%であることを特徴とする害虫防除剤。
〔2〕前記害虫防除剤を害虫に接触するように施用させることを特徴とする害虫防除方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より優れた害虫防除効果を有する害虫防除剤を提供することができる。また、当該害虫防除剤を害虫に接触するように施用させることにより、効率よく害虫を防除することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の害虫防除剤に使用されるジョチュウギクエキスは、天然に存在する除虫菊からの抽出物である。該ジョチュウギクエキスは、通常、ピレトリンI、ピレトリンII、シネリンI、シネリンII、ジャスモリンIおよびジャスモリンIIの有効成分6種類を含有する。これら6種類の成分を合わせて総ピレトリンといわれており、本発明に使用されるジョチュウギクエキスは総ピレトリン量が10~90%である。ジョチュウギクエキスの含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し0.05~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%である。
【0008】
本発明の害虫防除剤に使用されるアルコール類としては、炭素数1~4のアルコールが挙げられ、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールが挙げられる。これらの中でも、イソプロパノール、エタノールが好ましい。
【0009】
本発明の害虫防除剤に使用される界面活性剤としては、例えば、日光ケミカルズ(株)製のDECAGLYN-1-OV、竹本油脂(株)製01075TXなどで販売されるグリセリン脂肪酸エステル、竹本油脂(株)製ニューカルゲンD-935、花王化学(株)製レオドールSP-030V、花王化学(株)製レオドールSP-S10V、花王化学(株)製レオドールSP-P10などで販売されるソルビタン脂肪酸エステル、エマノーンCH-40(花王(株)製、POE(40)硬化ヒマシ油)、エマノーンCH-60(花王(株)製、POE(60)硬化ヒマシ油)、エマノーンCH-80(花王(株)製、POE(80)硬化ヒマシ油)、ニッコールHCO40(日光ケミカルズ(株)製、POE(40)硬化ヒマシ油)、ニッコールHCO60(日光ケミカルズ(株)製、POE(60)硬化ヒマシ油)、ニッコールHCO100(日光ケミカルズ(株)製、POE(100)硬化ヒマシ油)、ニューカルゲンD-240K(竹本油脂(株)製、POE(40)硬化ヒマシ油)、ニューカルゲンD-260K(竹本油脂(株)製、POE(60)硬化ヒマシ油)などで販売される酸化エチレンの平均付加モル数が25~100モルのポリオキシエチレン硬化ひまし油などが挙げられる。これら界面活性剤は単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。界面活性剤の含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し1.0~10重量%である。
【0010】
本発明の害虫防除剤に使用されるポリエチレングリコールとしては、例えば、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600などで販売される平均分子量が180~640のポリエチレングリコールが挙げられる。ポリエチレングリコールの含有量は、害虫防除剤全体量に対し1~15重量%であり、好ましくは2.5~10重量%であり、より好ましくは5~10重量%である。
【0011】
本発明の害虫防除剤における水の含有量は、害虫防除剤全体量に対し少なくとも40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上である。
【0012】
本発明の害虫防除剤には、必要に応じて、ジョチュウギクエキス以外の害虫防除成分、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤、pH調整剤、キレート剤、溶解補助剤、増粘剤、香料成分などを含有することができる。
【0013】
防腐剤としては、例えば、ユーカリオイル、フェノキシエタノール、メチルパラベン等のパラベン類などが挙げられる。防腐剤を含有する場合の含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し0.1~2.0重量%である。
【0014】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸一カリウム、クエン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤を含有する場合の含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し0.01~0.1重量%である。
【0015】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウム塩などのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の金属塩、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)のナトリウム塩などのエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)の金属塩、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムなどのグルコン酸金属塩などを挙げられる。
【0016】
溶解補助剤としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオールなどが挙げられる。これらのうちプロピレングリコール、グリセリンは凍結防止機能も併せ持つ。溶解補助剤を含有する場合の含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し、0.5~5.0重量%である。
【0017】
香料成分としては、合成香料、植物精油が挙げられるが特に植物精油が望ましい。植物精油は具体的には、ヒノキオイル、ヒバオイル、シダーウッドオイル、アニスオイル、ビャクダンオイル、クローブオイル、ピメンタオイル、パインオイル、パインニードルオイル、マヌカオイル、パチョリオイル、スターアニスオイル、ヒソップオイル、パルマローザオイル、レモングラスオイル、タイムオイル、ディルオイル、セロリーオイル、ペパーミントオイル、レモンユーカリオイル、シトロネラオイル、レモンセントティーツリーオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイル、ローズマリーオイル、ティーツリーオイル、ベルガモットオイル、オレンジオイル、マージョラムオイル、ジュニパーベリーオイル、イランイランオイル、クラリセージオイル、ローズオイルなどが挙げられる。香料成分を含有する場合の含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し0.02~0.2重量%である。
【0018】
本発明の害虫防除剤は、通常、乳化剤または可溶化剤に製剤化される。通常、ジョチュウギクエキス、界面活性剤に必要に応じて油性の性状を有する成分(例えば、防腐剤、香料成分など)を加えた油相プレミックスとアルコール、ポリエチレングリコールおよび水に必要に応じて水性の性状を有する成分(例えばpH調整剤など)を加えた水相プレミックスをそれぞれ作成した後、これら2種のプレミックスを混合することで乳化剤または可溶化剤を調製することができる。
なお、乳化剤に製剤化する場合、乳化粒子径は5.0μm以下、好ましくは1.5μm以下となるように調製することが好ましい。ここでいう乳化粒子径とは、マスターサイザー3000(スペクトリス株式会社)にて測定する体積分布測定における90%粒子径のことである。
【0019】
本発明の害虫防除剤は、直接害虫に接触するように施用することで優れた害虫効果が得られる。具体的な施用方法としては、例えば、害虫防除剤を直接害虫に噴霧して防除する方法や、床面、壁面、カーペットやシーツ等の繊維製品などに予め噴霧しておき、噴霧された害虫防除剤に害虫が接触することで防除するといった噴霧剤としての施用が挙げられる。また、害虫防除剤を床面や壁面などに予め塗布しておき、塗布された害虫防除剤に害虫が接触することで防除するといった塗布剤としての施用も挙げられる。
【0020】
噴霧剤として施用する場合は、例えば、本発明の害虫防除剤を充填した容器にトリガータイプまたはフィンガータイプのスプレーヘッドを装着したスプレー剤としての施用、あるいは本発明の害虫防除剤をLPG、ジメチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガスなどの噴射剤とともに噴霧機構を有する耐圧容器に充填したエアゾール剤としての施用などが挙げられる。
【0021】
スプレー剤として施用する場合、通常、噴霧1回当たりの噴霧量が0.5~1.5ml、噴霧距離15~30cmにおける噴霧平均粒子径が80~350μmとなるようなスプレーヘッドを選択する。ここで噴霧平均粒子径とは、スプレー剤のノズル先端から15~30cmの位置を通過する噴霧粒子の体積累積50%粒子径のことで、日機装(株)社製のレーザー回折式粒子径測定装置 AEROTRAC SPR MODEL-7340により測定することができる。
【0022】
塗布剤として施用する場合は、例えば、本発明の害虫防除剤をPETやパルプ製の不織布に含侵したシート剤としての施用、本発明の害虫防除剤をボールを押し付けて転動させることにより容器中の組成物を塗布することが可能なロールオン容器に充填したロールオン剤としての施用などが挙げられる。
【0023】
本発明の害虫防除剤が防除対象とする害虫としては、イエバエ等のハエ類、ショウジョウバエ、チョウバエ等のコバエ類、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ等のゴキブリ類、ノミ類、トコジラミ等のトコジラミ類、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウダニ、ケナガコナダニ、ヒゼンダニ、マダニ、イエダニ、ツメダニ、ミナミツメダニ等のダニ類などが挙げられる。なかでもゴキブリ類またはダニ類の防除に優れる。
【実施例0024】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0025】
100mlSUSビーカーにジョチュウギクエキス(Botanical Resources Australia Pty Ltd製 住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.27g 、ユーカリオイル(大保香料株式会社製)0.2g、ペパーミントオイル(大保香料株式会社製)0.1g、フェノキシエタノール(三洋化成工業株式会社製 ニューポールEFP)0,9g、ソルビタン脂肪酸エステル(竹本油脂株式会社製 ニューカルゲン D-935)4.5g、ポリオキシエチレン硬化ひまし油(竹本油脂株式会社製 ニューカルゲンD-260K)3.0gおよびプロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)2.5gを量り取り、撹拌棒にて混合することで油相プレミックス11.47gを得た。次いで200mLSUSビーカーにリン酸二水素カリウム(関東化学株式会社社製)0.03g、リン酸水素二ナトリウム(関東化学株式会社社製)0.03g、ポリエチレングリコール400(富士フイルム和光純薬株式会社製)1gおよび精製水87.47gを量り取り、撹拌棒にて混合することで水相プレミックス88.6gを得た。前記の水相プレミックスを撹拌翼(プロペラR 直径5cm、新東科学株式会社製)を取り付けた3-1motor(新東科学株式会社製 BL600)を用い回転数300rpmで混合しながら、前記の油相プレミックスをピペットを用いて57秒かけて滴下した後、3-1motorの回転数を400rpmに変更して15分間混合し、本発明の害虫防除剤を得た。
【0026】
実施例1に準じて、表1に示す各種害虫防除剤を作成した。
【0027】
表1
【0028】
〔スプレー剤の作成〕
実施例1~4および比較例1~2の害虫防除剤の100gをそれぞれ市販のスプレー剤用容器(容量300ml)に充填し、トリガータイプのスプレーヘッド(キャニヨン製、型式T-014)を取り付け、スプレー剤を得た。
【0029】
〔チャバネゴキブリへの直接噴霧試験〕
ポリカップ(底面直径105mm、深さ70mm)の側面内側にマーガリンを塗布し、底にろ紙(ADVANTEC No.2 φ106mm)を敷いた後、チャバネゴキブリ成虫を10頭(雌5頭雄5頭)カップ内に入れた。これらを6個準備し、前記のポリカップのカップ底30cmの距離から、ろ紙とスプレー剤のスプレーヘッドの噴霧口が対向するようにして、実施例1~4、比較例1および比較例2の害虫防除剤が充填された前記のスプレー剤をそれぞれ2回噴霧した(噴霧量2ml)。噴霧20分後に、別途準備した6個のポリカップ(底面直径80mm、深さ43mm側面内側にマーガリン塗布)に前記のチャバネゴキブリをそれぞれ移し、25℃の環境下、餌および水を与えて24時間静置し、苦死虫数を数えた。表2に苦死虫率を示す。
【0030】
表2
【0031】
〔チャバネゴキブリへの間接噴霧試験〕
化粧板(15×15cm)を敷き、上方30cmの距離から前記化粧板の略中心付近を目掛けてスプレー剤を1回噴霧した(噴霧量1ml)。室温25℃の部屋で15分間静置した後、ポリカップ(底面直径80mm、深さ70mm、内側側面にマーガリン塗布)にチャバネゴキブリ成虫を10頭(雌5頭雄5頭)入れ、前記の化粧板で蓋をした後、上下反転させた。1分間静置した後、再度上下反転させ前記の化粧板を取り除いた。チャバネゴキブリに固形飼料と水を与えながら24時間後静置し、苦死虫数を数えた。間接噴霧試験は、実施例1、実施例3、実施例4および比較例1の害虫防除剤が充填された前記のスプレー剤において実施した。表3に苦死虫率を示す。
【0032】
表3
【0033】
実施例2の害虫防除剤において、ポリエチレングリコール400をポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール600に変更し本発明の害虫防除剤をそれぞれ作成した(実施例5~7とする)。
【0034】
実施例5~7の害虫防除剤 100gを市販のトリガースプレー用容器(容量300ml)にそれぞれ充填し、トリガータイプのスプレーヘッド(キャニヨン製、型式T-014)を取り付け、スプレー剤を得た。そして、当該スプレー剤について前記のチャバネゴキブリへの直接噴霧試験を実施した。結果を表4に示す。
【0035】
表4