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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024442
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】防災面
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/22 20060101AFI20240215BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240215BHJP
   A42B 1/00 20210101ALI20240215BHJP
   A42B 1/0181 20210101ALI20240215BHJP
   A42B 1/019 20210101ALI20240215BHJP
【FI】
A42B3/22
A41D13/11 L
A42B1/00 Z
A42B1/0181
A42B1/019 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127267
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】390017112
【氏名又は名称】株式会社トーアボージン
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 学
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107CA03
3B107DA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、防災面について暑熱対策と防災性とを両立させることを目的とする。
【解決手段】支持体と、支持体に着脱自在に設けられた上部面体と、上部面体の下側に着脱自在に設けられた下部面体から成り、この上部面体と下部面体は略同一面状に形成された、防災面であって、上部面体は広い視界を確保できるように構成され、下部面体は通気性を備え、かつ飛来物が侵入しにくいように構成され、この防災面は、ヘルメットに取り付けること、あるいは頭部に直接装着すること、が可能であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体に着脱自在に設けられた上部面体と、該上部面体の下側に着脱自在に設けられた下部面体から成り、この上部面体と下部面体は略同一面状に形成された、防災面であって、
前記上部面体は広い視界を確保できるように構成され、
前記下部面体は通気性を備え、かつ飛来物が侵入しにくいように構成され、
前記防災面は、ヘルメットに取り付けること、あるいは頭部に直接装着すること、が可能である、
ことを特徴とする防災面。
【請求項2】
前記上部及び下部面体は、平面状の形体および曲面状の形体から成る群から選択される1以上の形体を有し、枠体を有する場合は枠体まで含めて面体とすることを特徴とする請求項1に記載の防災面。
【請求項3】
前記上部面体が、透明性の及び/又は遮光性の材料から成る、ことを特徴とする請求項1に記載の防災面。
【請求項4】
前記透明性及び/又は遮光性の材料が、アクリル、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、塩化ビニルから成る群から選択される1種以上である、請求項1に記載の防災面。
【請求項5】
前記下部面体が、網構造を有して成る、ことを特徴とする請求項1に記載の防災面。
【請求項6】
前記網構造が、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、フッ素樹脂から成る群から選択される1種以上の素材からなる、請求項1に記載の防災面。
【請求項7】
前記網構造の網目の数が、30メッシュ乃至16メッシュである、請求項5又は6に記載の防災面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災面に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、咳、くしゃみ、血液、分泌液、唾液、汗、おう吐物,痰等の感染飛散物質から顔全体を保護する医療用のフェイスガードや、製造段階で発生する水、油、塵埃等の飛散物質から顔全体を保護する工業用のフェイスガード、天ぷら油や花粉、直射日光から目や鼻を保護する家庭用のフェイスガードなど、多種多様のフェイスガードが提案されている。
【0003】
一般に、危険な作業、例えば、高温物(溶解金属、溶解樹脂)の取扱作業、微細金属粉、石粉体が飛散する切削作業、溶接作業、危険溶剤の取扱作業等においては、作業時に作業者の顔面を保護することが必要である。
このような作業時に、安全帽、作業帽の前面に取りつけて作業者の顔部を面状で保護する為に、熱風、熱塵等から保護するレンズ型、アクリル板型等の防災面、メッシュタイプの防塵面などがある。
【0004】
これら面状タイプの防災面には、安全帽、作業帽の前面に取り付けずそのまま頭部に着用するものや、安全帽、作業帽の前面に取り付ける固定タイプのもの、更に作業帽の前面に回動自在に取り付け、必要時に顔面に下ろし、不要時にはね上げるタイプのものなどがある。
【0005】
こういった作業者用の面体は、熱風、溶剤その他危険物に接触するため、熱衝撃、熱劣化、溶剤劣化等により傷みやすく、面体が損傷すると防災面全部を取り替える必要が生じていた。
また、メッシュタイプの防熱面を付けて作業中に一時的にアクリル板型等の防災面を付けて作業する必要があるとき、防災面全体を一時的に取り替え、また元の防災面に戻すという作業が必要になる。その煩雑さや作業効率の観点から、作業者は適当な防災面に付け代えずに作業しがちで、結果防災面が作業内容と適合せず労働災害に遭遇する等の問題点もあった。
【0006】
特許文献1に記載された発明は、これらの状況を鑑み、面体交換可能な防災面を提案したものである。
【0007】
しかしながら、この防災面は、熱気のこもる建屋内や、夏あるいは熱帯地方の屋外での作業において、アクリル板型を使用すれば面内に熱がこもり、メッシュタイプを使用すれば飛来した粉塵が作業者の眼などを傷つける場合があり、暑熱対策と防災性とを両立しきれないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平1-155459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、防災面について暑熱対策と防災性とを両立することを目的とする。
【0010】
本発明者らは上記目的の実現に向けて鋭意検討していたところ、本来作業者は主にうつむいて作業するため上部前方半分の面体だけで顔面はほぼガード可能であることを見出した。そこで、首や胸上部を保護する予備的部分である下側半分の面体をメッシュにすることで、首や胸上部の保護を図れるとともに、顔面前面周辺空間の通気性を確保できる事を発見した。本発明はこの知見に基づいて完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、
支持体と、該支持体に着脱自在に設けられた上部面体と、該上部面体の下側に着脱自在に設けられた下部面体から成り、この上部面体と下部面体は略同一面状に形成された、防災面であって、
前記上部面体は広い視界を確保できるように構成され、
前記下部面体は通気性を備え、かつ飛来物が侵入しにくいように構成され、
前記防災面は、ヘルメットに取り付けること、あるいは頭部に直接装着すること、が可能である、
ことを特徴とする防災面に関する。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記上部及び下部面体は、平面状の形体および曲面状の形体から成る群から選択される1以上の形体を有し、枠体を有する場合は枠体まで含めて面体とすることを特徴とする請求項1に記載の防災面に関する。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記上部面体が、透明性及び/又は遮光性の材料から成る、ことを特徴とする請求項1に記載の防災面に関する。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記透明性及び/又は遮光性の材料が、アクリル、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース、ポリ塩化ビニル(PVC)から成る群から選択される1種以上である、請求項1に記載の防災面に関する。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記下部面体が、網構造を有して成る、ことを特徴とする請求項1に記載の防災面に関する。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記網構造が、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂から成る群から選択される1種以上の素材からなる、請求項1に記載の防災面に関する。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記網構造の網目の数が、30メッシュ乃至16メッシュである、請求項5又は6に記載の防災面に関する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、上記した請求項1の構成要件から、暑熱対策と防災性とを両立し得る防災面を提供できる。
より詳細には、この防災面は、支持体に着脱自在に設けられた上部面体と、上部面体の下側に着脱自在に設けられた下部面体から成るので、上部と下部それぞれ、作業内容によって必要な機能を備えた面体に付け替えが可能であるという効果を奏する。
また、この上部面体と下部面体は略同一面状に形成されているので、安全性を確保するとともに、うつむいたときに首元に当たるなどの現象を防ぎ、作業性を確保するという効果を奏する。
さらに、上部面体は広い視界を確保できるように構成され、下部面体は通気性を備え、かつ飛来物が侵入しにくいように構成されているので、上部面体で広い視界を確保しつつほぼ顔面を保護し、予備的に下部面体で首や胸上部を保護しつつ顔面周囲の通気性を確保でき、空気の流れが生まれることが涼しさに繋がり、暑熱対策ができるという効果を奏する。
また、この防災面は、ヘルメットに取り付けることも、あるいは頭部に直接装着することも可能であるという効果を奏する。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、上部及び下部面体は、平面状の形体および曲面状の形体から成る群から選択される1以上の形体を有し、枠体を有する場合は枠体まで含めて面体とすることを特徴とするので、上部及び下部面体は、硬度、分厚さ、重量、形状、性状を用途に応じて選択できるという効果を奏する。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、上部面体が、透明性及び/又は遮光性の材料から成る、ことを特徴とするので、防災面を着用した者が視野全体を見渡せるという効果を奏する。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、透明性及び/又は遮光性の材料が、アクリル、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース、ポリ塩化ビニル(PVC)から成る群から選択される1種以上であることから、市場性の高い材料で容易に製造できるという効果を奏する。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、下部面体が、網構造を有して成ることから、通気性に優れた防災面を提供できるという効果を奏する。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、網構造が、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂から成る群から選択される1種以上の素材からなることから、市場性の高い材料で容易に製造できるという効果を奏する。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、網構造の網目の数が、30メッシュ乃至16メッシュであることから、飛来物の侵入を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】本発明の一実施形態に係る防災面の正面説明図である。
図1b図1のI-I線断面図である。
図1c図1の領域Xの拡大図である。
図2図1の防災面について上部面体と下部面体を分離した説明図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る防災面の正面説明図である。
図4図1の防災面を着用して、うつむいて作業している状態を示す説明図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る粗い網構造を有する防災面を着用して、作業している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る防災面の実施形態について、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
図1及び図2は、ヘルメットに装着するタイプの防災面()の全体構成図である。
【0027】
上部面体(1)は、剛性を必要とする場合、例えば、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール(POM)などにより構成される。直射日光の下で作業する場合など、スモークを入れたり着色した素材を用いることも可能である。また、それほどの剛性を必要としない場合は、上部面体に枠体を有する物を採用すれば、ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのシートを用いて所定の張力を持たせた構成とすることも可能である。
【0028】
下部面体(2)は、剛性を必要とする場合、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、チタン、カーボン、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、フッ素樹脂など、金属、合成樹脂、合成又は天然繊維、またこれらの組み合わせで出来たメッシュからなる。また、下部面体に枠体を有する物を採用すれば、メッシュ部分は柔らかいポリ塩化ビニル、麻なども採用され得る。メッシュのサイズは限定されるものでは無いが、30メッシュから16メッシュが望ましい。場合によって、固形飛来物対策による切創防止用の40×40~20×15mm角のネットを用いても良い。
【0029】
支持体(31)(以下、バンドとも言う)は、ジェラルミン、アルミ、などで構成され、軽量さを重視すればプラスチックなどで構成される。
図3には、頭部に直接装着する場合の実施形態を示している。支持体(32)は、ジェラルミン、アルミ、プラスチックなど、またはゴムなどで構成され、頭部に装着する部分はゴムなど伸縮性のある素材を用いたり、後頭部に長さ調整のできる布バンド部分を設けたり、サイズ調整の部品を設けたりする。ポリウレタン、ポリエチレンなどの緩衝材を設けても良い。
【0030】
上部面体(1)を支持体(31、32)へ固定する留め具(4)は、例えばボルトナットやリベット、マジックテープ(登録商標)、釦と紐、などである。図1の実施形態においては、ボルトナットで固定している。
上部面体(1)と下部面体(2)の着脱部分はホック、マジックテープ(登録商標)、釦と紐、などを留め具(5)として用いたり、隙間を厭う場合はボルトナットやリベットでネジ止めする。図1の実施形態では、ホックで止めている。
【0031】
防災面()に剛性を必要とする作業現場、例えば固い木の伐木作業の現場や、小石の多い土地での草刈作業の現場などにおいては、剛性を持つ上部面体(1)と、剛性を持つ下部面体(2)とを合わせて防災面()としたものを用いる。
【0032】
硬い飛来物の危険が低めではあるが眼の防護は確保したい、という場合は、剛性を持つ上部面体(1)と、柔らかいメッシュを枠体に張設して構成された下部面体(2)とを合わせて防災面()としたものを用いてもよい。
【0033】
下からの飛来物に対する防護を強化したい場合は、枠体にシートを張設して構成された上部面体(1)と、剛性を持つ下部面体(2)とを合わせて防災面()としたものを用いてもよい。
【0034】
剛性がなくても飛来物に対処できる作業現場、例えば小石や硬い枝の飛び散りが起きない草刈りの現場などにおいては、枠体にシートを張設して構成された上部面体(1)と、枠体に柔らかいメッシュを張設して構成された下部面体(2)とを合わせて防災面()としたものを用いてもよい。
【0035】
上部面体(1)、下部面体(2)とも、枠体を設けて張設したものを使用すると、剛性は落ちるものの、より軽量化を図れるというメリットがある。
【0036】
上述したように、着脱可能な上部面体(1)と下部面体(2)、それぞれに適性があるので、作業者(P)は、作業の内容や現場環境に応じて、同じ支持体に取り付ける面体を替えることで、種々の作業に対応できる。
【0037】
図4に示す如く、伐木作業、草刈作業の現場(g)において、透明の防災面()を用いると、屋外での日中作業中は熱が面内顔面周囲にこもりやすく、暑い上に汗や呼気で曇るという問題点があった。そのため、全面メッシュタイプの防災面()を用いる作業者(P)が多いが、小石や木枝の破片がメッシュを通過し顔面、特に眼に当たる可能性を排除できないままの作業となる。。
本発明によれば、日中の屋外での作業において、顔面の物理的保護(F1)と息苦しさの解消(F2)が両立できる。また、例えば、夏の屋外での作業、熱帯の屋外作業など、日光の強い場面では上部面体(1)に着色した素材を用いて、物理的にも紫外線からも目を保護することが可能である。さらには下部面体(2)がメッシュであることから、顔面周囲の空気の流れが生まれ、呼気の熱がこもる事も防げるので、熱中症も予防できる。
【0038】
鉄工に関わる作業や自動車修理の作業の現場においては、鉄板や鋼材の跳ね返りによる切創事故が起こりやすい。これらの現場では、透明の防災面()を使用した場合に生じる面内にこもる熱気や面体の曇りを嫌って、全面ステンレスネットの防災面()を用いる作業者(P)が多い。図5に示したように、本発明によれば、防災面()の下部面体(2)にステンレスのネットを用い、上部面体(1)を透明とすることで、切創事故を防止した上で、視界をネットが遮ることも無くなるので、より一層の安全対策となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る防災面によれば、暑熱対策と防災性とを両立できる。更に詳しくは、上部面体で広い視界を確保しつつほぼ顔面を保護し、予備的に下部面体で首や胸上部を保護しつつ顔面周囲の通気性を確保することができる。これにより空気の流れが生まれることが涼しさに繋がり、暑熱対策となる。さらには作業者の呼吸により面が曇ったり、顔面周囲の温度が上がったりすることを防ぐことができる。暑熱対策と安全確保を同時に実現する防災面を提供する事ができる。
【符号の説明】
【0040】
防災面
1 上部面体
2 下部面体
31 支持体(ヘルメットに装着するもの)
32 支持体(頭部に直接装着するもの)
4 支持体と上部面体との留め具
5 支持体と下部面体との留め具
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5