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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024443
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240215BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20240215BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20240215BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20240215BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G05D1/02 S
B62B3/02
B62D65/18 B
G05D1/00 B
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127268
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 弘人
【テーマコード(参考)】
3D050
3D114
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3D050DD01
3D050EE09
3D050HH07
3D050KK02
3D114DA05
3F022BB01
3F022CC10
3F022DD03
3F022LL07
3F022NN21
3F022NN57
3F022PP03
3F022PP06
3F022QQ03
3F022QQ07
3F022QQ17
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL14
5H301LL16
(57)【要約】
【課題】走行器具に対して着脱自在であって、状況に応じた障害物への衝突回避動作が可能な搬送装置及び搬送装置の制御方法を提供する。
【解決手段】搬送装置1は、装置本体10に支持される駆動輪と、複数の従動輪120を備える走行器具100に接続可能な接続部30と、走行器具100との接続状態を検出可能な接続状態検出部と、障害物の方向及び距離を検知可能な障害物検知部50と、制御部60と、無線通信を介して走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部と、を備え、制御部60は、接続検出時に、装置本体10の全周に近接する障害物を検知した場合、操作信号に基づく制御より優先して走行を停止させ、接続非検出時に、障害物検知部50から視て従動輪120最大可動範囲121を非検知領域53とした場合の隣接する2つの非検知領域53の間の範囲に障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、
本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続可能であって前記装置本体に設けられる接続部と、
前記接続部における前記走行器具との接続状態を検出可能な接続状態検出部と、
前記装置本体の周囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を検知可能であって前記装置本体に設けられる障害物検知部と、
制御部と、
無線通信を介して前記制御部と通信可能であって、前記駆動輪による前記装置本体の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部と、
を備え、
前記制御部は、
前記操作信号に基づいて走行を制御し、
前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出していない状態において、第1検知範囲に前記障害物検知部が障害物を検知した場合、前記操作信号に基づく制御より優先して走行を停止させ、
前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出している状態において、第2検知範囲に前記障害物検知部が障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させ、
前記第1検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が所定距離以内の範囲であって、前記装置本体の全周に近接する障害物を検知する範囲であり、
前記第2検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が前記従動輪までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、前記障害物検知部から視て前記従動輪の最大可動範囲を非検知領域とした場合の隣接する2つの前記非検知領域の間の範囲である、
搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出している状態において、前記障害物検知部が前記第2検知範囲に障害物を検知した場合、トルク制御により前記駆動輪に対するトルクの指令値の上限値を下げて所定速度まで減速させる、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2検知範囲に障害物を検知して前記駆動輪に対するトルクの指令値の上限値を下げた後、前記障害物検知部が前記第2検知範囲に障害物を検知しなくなった場合、トルクの指令値の上限値を初期値に復帰させる、
請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出していない状態において、前記障害物検知部が前記第1検知範囲に障害物を検知した場合、速度制御により前記駆動輪に対する速度の指令値を下げて所定速度まで減速し、検知した前記障害物までの距離が所定距離を下回った場合に走行を停止させる、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記接続状態検出部による前記走行器具との接続状態に基づいて、前記障害物検知部による走査範囲を変更させる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記接続状態検出部による前記走行器具との接続状態に基づいて、前記障害物検知部が検知した走査範囲のうち障害物の有無を判断する範囲を変更させる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記接続部は、
前記装置本体に対して昇降可能かつ上面側から上方に突出して設けられる接続ピン部を含む荷重受け部材と、
前記走行器具に取り付けられ、前記接続ピン部が下方から挿入可能な嵌合孔を有する取り付け部材と、
を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記接続状態検出部は、
前記取り付け部材の下面側から下方に突出して前記嵌合孔の軸方向と平行な方向に延びて形成される押圧ピンと、
前記接続ピン部と前記嵌合孔とが嵌合した状態である場合、前記押圧ピンが感圧面を押圧する位置に設けられ、前記感圧面にかかる圧力を検出する感圧センサと、
を備える、
請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記接続状態検出部は、
前記感圧センサの前記感圧面を覆う緩衝材をさらに備え、
前記接続ピン部と前記嵌合孔とが嵌合した状態である場合、前記押圧ピンが前記緩衝材を介して前記感圧面を押圧する、
請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、
本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続可能であって前記装置本体に設けられる接続部と、
前記接続部における前記走行器具との接続状態を検出可能な接続状態検出部と、
前記装置本体の周囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を検知可能であって前記装置本体に設けられる障害物検知部と、
無線通信を介して前記駆動輪による前記装置本体の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部と、
を備える搬送装置の制御方法であって、
前記接続状態検出部によって前記走行器具との接続を検出する接続状態検出ステップと、
前記装置本体の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知ステップと、
前記走行器具との接続を検出せず、第1検知範囲に障害物を検知した場合、前記操作信号に基づく処理より優先して走行を停止させる停止ステップと、
前記走行器具との接続を検出し、第2検知範囲に障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させる減速ステップと、
を含み、
前記第1検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が所定距離以内の範囲であって、前記装置本体の全周に近接する障害物を検知する範囲であり、
前記第2検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が前記従動輪までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、前記障害物検知部から視て前記従動輪の最大可動範囲を非検知領域とした場合の隣接する2つの前記非検知領域の間の範囲である、
搬送装置の制御方法。
【請求項11】
前記減速ステップでは、トルク制御により前記駆動輪に対するトルクの指令値の上限値を下げて所定速度まで減速させる、
請求項10に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項12】
前記減速ステップの後、前記第2検知範囲に障害物を検知しなくなった場合、トルクの指令値の上限値を初期値に復帰させる復帰ステップをさらに含む、
請求項11に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項13】
前記停止ステップでは、速度制御により前記駆動輪に対する速度の指令値を下げて所定速度まで減速し、検知した前記障害物までの距離が所定距離を下回った場合に走行を停止させる、
請求項10から12のいずれか1項に記載の搬送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台車、搬送カート、移動ベッド、ストレッチャー等、搬送物を積載して床面上を走行する走行器具に接続して、走行器具の走行を補助する無人搬送車(AGV;Auto Guided Vehicle)及び自律走行搬送ロボット(AMR;Autonomous Mobile Robot)等の搬送装置が知られている。
【0003】
このような搬送装置において、走行中に障害物への衝突を回避することが求められる。例えば、特許文献1には、走行方向に対する車体の両側に、赤外線カメラや超音波検出器等の障害物を検知し、車体の駆動を停止する機構を備える荷物搬送用の自己駆動ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-504679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行器具として、移動ベッドやストレッチャー等は、エレベータや病室等の狭い空間でも移動する必要がある。すなわち、狭い空間を走行する場合には、壁等を障害物として検知しても、走行を続行させる必要がある。また、走行器具に対して着脱する搬送装置では、走行器具を除外して周囲の障害物を検知する必要がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、走行器具に対して着脱自在であって、状況に応じた障害物への衝突回避動作が可能な搬送装置及び搬送装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る搬送装置は、装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続可能であって前記装置本体に設けられる接続部と、前記接続部における前記走行器具との接続状態を検出可能な接続状態検出部と、前記装置本体の周囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を検知可能であって前記装置本体に設けられる障害物検知部と、制御部と、無線通信を介して前記制御部と通信可能であって、前記駆動輪による前記装置本体の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部と、を備え、前記制御部は、前記操作信号に基づいて走行を制御し、前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出していない状態において、第1検知範囲に前記障害物検知部が障害物を検知した場合、前記操作信号に基づく制御より優先して走行を停止させ、前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出している状態において、第2検知範囲に前記障害物検知部が障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させ、前記第1検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が所定距離以内の範囲であって、前記装置本体の全周に近接する障害物を検知する範囲であり、前記第2検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が前記従動輪までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、前記障害物検知部から視て前記従動輪の最大可動範囲を非検知領域とした場合の隣接する2つの前記非検知領域の間の範囲である。
【0008】
これにより、搬送装置が単体で走行している状態では、遠隔操作部からの操作に関わらず障害物近傍で停止することで衝突を回避させるのに対し、搬送装置が走行器具に接続して走行器具を搬送している状態では、障害物に接近すると減速させ、障害物近傍では低速で走行することで衝突を回避させる。すなわち、走行器具の搬送中、エレベータや病室等の狭い空間を走行する場合には、むやみに停止させることなく、低速走行することで障害物への衝突を回避することができる。また、搬送装置が単体で走行している場合は、搬送装置の全周に近接する領域を障害物の検知範囲としているが、走行器具と接続している場合は、主要な進行方向のみを検知範囲とし、走行器具の従動輪を障害物として検知しないようにしている。したがって、走行器具に対して着脱自在に接続する搬送装置にも適用可能である。
【0009】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記制御部は、前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出している状態において、前記障害物検知部が前記第2検知範囲に障害物を検知した場合、トルク制御により前記駆動輪に対するトルクの指令値の上限値を下げて所定速度まで減速させる。
【0010】
搬送装置が走行器具に接続して走行器具を搬送している状態で障害物を検知した場合、所定速度まで減速はさせるが、低速での走行を許可している。すなわち、トルク制限はするものの、遠隔操作部からの操作に基づいて、走行速度を変更させることが可能な状態である。低速かつ搬送対象を載せている走行器具という重量物を搬送している状態では、トルク制御によりモータの回転数を抑制することにより、走行を安定させることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記制御部は、前記第2検知範囲に障害物を検知して前記駆動輪に対するトルクの指令値の上限値を下げた後、前記障害物検知部が前記第2検知範囲に障害物を検知しなくなった場合、トルクの指令値の上限値を初期値に復帰させる。
【0012】
これにより、狭い空間から広い空間に出た後は、走行速度を上げて走行器具を搬送させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記制御部は、前記接続状態検出部が前記走行器具との接続を検出していない状態において、前記障害物検知部が前記第1検知範囲に障害物を検知した場合、速度制御により前記駆動輪に対する速度の指令値を下げて所定速度まで減速し、検知した前記障害物までの距離が所定距離を下回った場合に走行を停止させる。
【0014】
搬送装置が単体で走行している状態では、走行器具に接続している状態に比べて、走行物の全体の重量が軽量である。また、遠隔操作部からの操作より優先して、自走で減速、停止を行うため、外部から変動する外力が加わることがない。したがって、速度制御により、滑らかに減速し、安定的に停止することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記制御部は、前記接続状態検出部による前記走行器具との接続状態に基づいて、前記障害物検知部による走査範囲を変更させる。
【0016】
これにより、取得するデータ数を削減し、制御部で取り扱うデータ容量を節約することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記制御部は、前記接続状態検出部による前記走行器具との接続状態に基づいて、前記障害物検知部が検知した走査範囲のうち障害物の有無を判断する範囲を変更させる。
【0018】
これにより、障害物検知部の種類及び性能に関わらず、障害物の有無を検知する範囲を制御部のみで設定できる。
【0019】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記接続部は、前記装置本体に対して昇降可能かつ上面側から上方に突出して設けられる接続ピン部を含む荷重受け部材と、前記走行器具に取り付けられ、前記接続ピン部が下方から挿入可能な嵌合孔を有する取り付け部材と、を備える。
【0020】
これにより、接続ピン部が嵌合孔に挿通して嵌合することで、荷重受け部材と走行器具に取り付けられる取り付け部材とが接続するので、走行器具との接続及び分離が容易に可能である。
【0021】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記接続状態検出部は、前記取り付け部材の下面側から下方に突出して前記嵌合孔の軸方向と平行な方向に延びて形成される押圧ピンと、前記接続ピン部と前記嵌合孔とが嵌合した状態である場合、前記押圧ピンが感圧面を押圧する位置に設けられ、前記感圧面にかかる圧力を検出する感圧センサと、を備える。
【0022】
これにより、嵌合孔に対して接続ピン部が挿通して嵌合する際、押圧ピンが軸方向に沿って感圧面に接近して押圧するため、接続状態を正確に検出することができる。また、感圧面を押圧ピンの先端で押圧すればよいので、感圧センサの基部や配線を、部材の内部に埋め込んで配置して、外的要因による負荷や損傷を抑制できるように構成することも可能である。
【0023】
本発明の一態様に係る搬送装置において、前記接続状態検出部は、前記感圧センサの前記感圧面を覆う緩衝材をさらに備え、前記接続ピン部と前記嵌合孔とが嵌合した状態である場合、前記押圧ピンが前記緩衝材を介して前記感圧面を押圧する。
【0024】
これにより、緩衝材が低周波振動を吸収し、ロバスト性を確保することができる。また、これに伴って、小さな段差や勾配等による細かい振動による接続状態解除の誤検出を抑制できる。また、感圧センサの感圧面を緩衝材で覆うことで保護できるので、感圧センサへの外的要因による負荷や損傷を抑制することができる。
【0025】
本発明の一態様に係る搬送装置の制御方法は、装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続可能であって前記装置本体に設けられる接続部と、前記接続部における前記走行器具との接続状態を検出可能な接続状態検出部と、前記装置本体の周囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を検知可能であって前記装置本体に設けられる障害物検知部と、無線通信を介して前記駆動輪による前記装置本体の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部と、を備える搬送装置の制御方法であって、前記接続状態検出部によって前記走行器具との接続を検出する接続状態検出ステップと、前記装置本体の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知ステップと、前記走行器具との接続を検出せず、第1検知範囲に障害物を検知した場合、前記操作信号に基づく処理より優先して走行を停止させる停止ステップと、前記走行器具との接続を検出し、第2検知範囲に障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させる減速ステップと、を含み、前記第1検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が所定距離以内の範囲であって、前記装置本体の全周に近接する障害物を検知する範囲であり、前記第2検知範囲は、前記障害物検知部からの距離が前記従動輪までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、前記障害物検知部から視て前記従動輪の最大可動範囲を非検知領域とした場合の隣接する2つの前記非検知領域の間の範囲である。
【0026】
これにより、搬送装置が単体で走行している状態では、遠隔操作部からの操作に関わらず障害物近傍で停止することで衝突を回避させるのに対し、搬送装置が走行器具に接続して走行器具を搬送している状態では、障害物に接近すると減速させ、障害物近傍では低速で走行することで衝突を回避させる。すなわち、走行器具の搬送中、エレベータや病室等の狭い空間を走行する場合には、むやみに停止させることなく、低速走行することで障害物への衝突を回避することができる。また、搬送装置が単体で走行している場合は、搬送装置の全周に近接する領域を障害物の検知範囲としているが、走行器具と接続している場合は、主要な進行方向のみを検知範囲とし、走行器具の従動輪を障害物として検知しないようにしている。したがって、走行器具に対して着脱自在に接続する搬送装置にも適用可能である。
【0027】
本発明の一態様に係る搬送装置の制御方法において、前記減速ステップでは、トルク制御により前記駆動輪に対するトルクの指令値の上限値を下げて所定速度まで減速させる。
【0028】
搬送装置が走行器具に接続して走行器具を搬送している状態で障害物を検知した場合、所定速度まで減速はさせるが、低速での走行を許可している。すなわち、トルク制限はするものの、遠隔操作部からの操作に基づいて、走行速度を変更させることが可能な状態である。低速かつ搬送対象を載せている走行器具という重量物を搬送している状態では、トルク制御によりモータの回転数を抑制することにより、走行を安定させることができる。
【0029】
本発明の一態様に係る搬送装置の制御方法は、前記減速ステップの後、前記第2検知範囲に障害物を検知しなくなった場合、トルクの指令値の上限値を初期値に復帰させる復帰ステップをさらに含む。
【0030】
これにより、狭い空間から広い空間に出た後は、走行速度を上げて走行器具を搬送させることができる。
【0031】
本発明の一態様に係る搬送装置の制御方法において、前記停止ステップでは、速度制御により前記駆動輪に対する速度の指令値を下げて所定速度まで減速し、検知した前記障害物までの距離が所定距離を下回った場合に走行を停止させる。
【0032】
これにより、搬送装置が単体で走行している状態では、走行器具に接続している状態に比べて、走行物の全体の重量が軽量である。また、遠隔操作部からの操作より優先して、自走で減速、停止を行うため、外部から変動する外力が加わることがない。したがって、速度制御により、滑らかに減速し、安定的に停止することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、走行器具に対して着脱自在であって、状況に応じた障害物への衝突回避動作が可能な搬送装置及び搬送装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施形態に係る搬送装置の構成例を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示す搬送装置の内部構成の一部を示す平面図である。
図3図3は、図1に示す搬送装置の走行器具への接続前の状態を一部断面で示す側面図である。
図4図4は、図1に示す搬送装置の走行器具への接続後における空洞部を示す断面図である。
図5図5は、単体で走行中である搬送装置による障害物の第1検知範囲の一例を示す平面図である。
図6図6は、走行器具と接続中である搬送装置による障害物の第2検知範囲の一例を示す平面図である。
図7図7は、搬送装置の制御部による検知範囲切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、単体で走行中である搬送装置の制御部による障害物回避処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、走行器具と接続中である搬送装置の制御部による障害物回避処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0036】
(実施形態)
[装置構成]
まず、実施形態に係る搬送装置1の構成について、図を参照して説明する。図1は、実施形態に係る搬送装置1の構成例を模式的に示す平面図である。図2は、図1に示す搬送装置1の内部構成の一部を示す平面図である。図3は、図1に示す搬送装置1の走行器具100への接続前の状態を一部断面で示す側面図である。図4は、図1に示す搬送装置1の走行器具100への接続後における空洞部34aを示す断面図である。
【0037】
なお、実施形態を示す図において、発明に係る構成要素以外の構成要素は、適宜省略して図示される。また、以下の説明では、搬送装置1の水平な一方向(図1の左右方向)を「前後方向」と言い、水平かつ一方向に直交する交差方向(図1の上下方向)を「幅方向」と言う。
【0038】
実施形態の搬送装置1は、走行器具100(図3及び図6参照)の下に潜り込んで下方から走行器具100に接続し、走行することで走行器具100を搬送する装置である。走行器具100は、少なくとも、搬送対象を載せる本体部110と、本体部110を水平姿勢に維持して水平方向に移動させることが可能な複数の従動輪120とを備え、搬送装置1が本体部110の下に潜り込める隙間を有する搬送車両である。従動輪120は、実施形態において、自在輪である。走行器具100は、例えば、台車、搬送カート、移動ベッド、ストレッチャー等である。
【0039】
図1及び図2に示すように、搬送装置1は、装置本体10と、駆動輪20と、モータ21と、接続部30と、障害物検知部50と、制御部60と、リモコン70(遠隔操作部)と、を備える。実施形態の装置本体10は、平面視形状が略正方形状の直方体である。搬送装置1の駆動輪20の一部を除く各構成要素は、装置本体10の内部に配置される。
【0040】
装置本体10には、上記構成要素の他に、例えば、接続部30を昇降させる昇降機構や、走行速度を測定するための速度測定部等が搭載される。速度測定部は、装置本体10等に別途設けられる加速度センサを含んでもよいし、オドメトリによって速度推定を行うためのロータリエンコーダやホールセンサ等の位置検出器を含んでもよい。
【0041】
図2に示すように、装置本体10は、装置本体10の底面を構成する板状の本体基台11を含む。本体基台11は、後述の駆動輪20の一部を本体基台11より下方に露出させるための開口を有する。本体基台11の開口は、駆動輪20の配置及び数に対応して設けられ、実施形態では、本体基台11の4辺の各々の中心近傍に合計4つ形成される。
【0042】
本体基台11は、上面側において、サスペンション13を介して、車輪基台12を支持する。車輪基台12は、本体基台11より上方に位置し、下面が本体基台11の上面と対向する板状のフレームである。車輪基台12には、後述の駆動輪20が設けられる。
【0043】
車輪基台12は、駆動輪20の配置及び数に対応して設けられ、実施形態では、本体基台11の4辺の各々の中心近傍に合計4つ配置される。車輪基台12の上面側には、例えば、駆動輪20の車軸20aの両端部をそれぞれ支持する一対のシャフトホルダが設けられる。一対のシャフトホルダは、車軸20aを、車輪基台12より上方の位置において、車輪基台12に対して水平姿勢に支持する。
【0044】
車輪基台12には、後述の駆動輪20の一部を車輪基台12より下方に露出させるための開口と、複数の貫通孔と、が形成されている。車輪基台12の開口は、平面視において、本体基台11の開口と同一の位置に設けられる。貫通孔は、後述の軸部材14(図3参照)に対応する位置にそれぞれ形成され、対応する軸部材14の通過を許容する。
【0045】
図3に示すように、サスペンション13は、本体基台11と車輪基台12との間の振動を吸収するように構成され、走行時における路面の凹凸等による駆動輪20の上下動を吸収することで、装置本体10の振動を抑制し、水平姿勢を維持させる。サスペンション13は、軸部材14と、直動案内機構15と、弾性体16と、ばね押さえ17と、を備える。
【0046】
軸部材14は、本体基台11から上方に直立し、下端部が本体基台11の上面に固定して設けられる円柱状の軸部材である。軸部材14は、例えば、スタットボルトである。軸部材14は、本体基台11の1つの開口に対して、当該開口を挟むように少なくとも2つ設けられる。図2に示すように、軸部材14は、実施形態において、本体基台11の1つの開口に対して、当該開口を水平かつ後述の駆動輪20の車軸20aに対して直交する方向に挟む位置に2つずつで4つずつ、本体基台11全体で合計16個設けられる。複数の軸部材14は、後述の駆動輪20の位置に対して均等に設けられることが好ましい。
【0047】
軸部材14は、車輪基台12に形成された貫通孔と、直動案内機構15と、弾性体16及び一対のばね押さえ17と、に挿通する。軸部材14は、車輪基台12、直動案内機構15、弾性体16、及び一対のばね押さえ17の軸方向(図3の上下方向)への移動を案内し、軸方向に交差する方向への移動を規制する。軸部材14は、外径がばね押さえ17の内径より大きい鍔部を上端に有し、ばね押さえ17が上方に抜けることを制止している。
【0048】
直動案内機構15は、軸部材14に沿って軸部材14の軸方向に直動移動する円筒状の転がり軸受(リニアブッシュ)である。直動案内機構15は、円筒の軸心が、車輪基台12の貫通孔の軸心に一致するように、車輪基台12の上面側に固定して設けられる。車輪基台12は、車輪基台12に形成された貫通孔及び直動案内機構15が、本体基台11に設けられた軸部材14によって案内されて、軸部材14の軸方向に直動移動することで、本体基台11に対して、垂直に接近又は離隔する方向に移動可能である。
【0049】
弾性体16は、筒状に形成され、内周側を軸部材14が挿通する。弾性体16は、軸部材14の軸方向への移動を許容する。弾性体16は、車輪基台12の上面側と軸部材14の上端との間に介在する。弾性体16は、例えば、圧縮コイルばね、又はゴム等の粘弾性材料で形成される円筒体を含む。
【0050】
弾性体16は、実施形態において、上端側及び下端側に一対のばね押さえ17を有する。ばね押さえ17は、環状に形成され、内周側を軸部材14が挿通する。一方のばね押さえ17は、弾性体16の上端と、軸部材14の上端の鍔部との間に配置される。他方のばね押さえ17は、弾性体16の下端と、直動案内機構15の上端との間に配置される。
【0051】
弾性体16は、一方のばね押さえ17及び軸部材14を介して本体基台11と上端側が接続する。弾性体16は、他方のばね押さえ17及び直動案内機構15を介して下端側が車輪基台12と接続する。これにより、弾性体16は、本体基台11と車輪基台12との間の垂直方向への近接及び離隔による衝撃を吸収する。
【0052】
駆動輪20は、車輪基台12に対して車軸20a回りに回動可能であるように支持される。駆動輪20は、例えば、車軸20aの両端部にそれぞれ設けられる一対のシャフトホルダによって支持される。駆動輪20は、例えば、全方向移動が可能なオムニホイール、又はメカナムホイールであってもよい。駆動輪20には、車軸20a回りの回転駆動力がモータ21から伝達される。
【0053】
駆動輪20は、実施形態において、車輪基台12に対して1対1の関係で設けられる。すなわち、4つの駆動輪20は、平面視において、本体基台11の4辺の各々の中心近傍に合計4つ形成される。対向する平行な2辺の近傍に各々配置された2つの駆動輪20は、車軸20aが、本体基台11の中心部を通る水平軸であって、互いに同軸となるように配置される。
【0054】
平常時において、弾性体16は、本体基台11側からかかる荷重、すなわち装置本体10の自重及び後述の接続部30にかかる荷重によって、軸部材14を介して、上方から荷重を受けている。また、弾性体16は、駆動輪20が路面から受ける反力によって、車輪基台12及び直動案内機構15を介して、下方から荷重を受けている。これにより、弾性体16は、上下方向から圧縮されている。
【0055】
駆動輪20が路面の凸状部を走行すると、駆動輪20の車軸20aとともに車輪基台12が上方に変位し、上方向の加速度が発生することで、直動案内機構15を介して弾性体16の下端部に上方への圧縮荷重がかかる。弾性体16は、下方から受ける荷重に対して圧縮することで、駆動輪20が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体16の上端部における上方向の加速度は、弾性体16の下端部における上方向の加速度に対して減少するため、軸部材14及び本体基台11にかかる加速度が、駆動輪20にかかる加速度に対して減少する。
【0056】
駆動輪20が路面の凹状部を走行すると、駆動輪20の車軸20aとともに車輪基台12が下方に変位し、下方向の加速度が発生することで、直動案内機構15を介して弾性体16の下端部に下方への引張荷重がかかる。弾性体16は、下方に引っ張られる荷重によって伸長することで、駆動輪20が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体16の上端部における下方向の加速度は、弾性体16の下端部における下方向の加速度に対して減少するため、軸部材14及び本体基台11にかかる加速度が、駆動輪20にかかる加速度に対して減少する。
【0057】
サスペンション13は、平常時において、本体基台11の上面と車輪基台12の下面との間に、間隙を有することが好ましい。これにより、搬送装置1の走行時における振動を、弾性体16の圧縮及び伸長によって吸収し、本体基台11及び車輪基台12が互い接近又は離隔する際に、本体基台11と車輪基台12とが衝突することを抑制する。
【0058】
なお、軸部材14、車輪基台12の貫通孔、及び弾性体16は、実施形態において、1つの駆動輪20の前後に2組ずつ4組設けられるが、本実施形態では、少なくとも2組設けられればよく、3組、又は5組以上であってもよい。また、平面視において軸部材14及び車輪基台12の貫通孔が配置される位置は、他の部材と干渉しない範囲であれば任意の位置に設定可能である。
【0059】
図2に示すように、駆動輪20には、モータ21の回転駆動力が伝達される。モータ21は、例えば、装置本体10内に設けられたモータドライバによって制御され、後述のバッテリ61等から電力が供給されることにより、回転駆動力を発生させる。モータ21は、例えば、BLDC(Brush-Less Direct-Current)モータを含む。モータ21は、出力軸21aが駆動輪20の車軸20aと平行となるように、筐体が周知の支持部材等を介して、車輪基台12の上面側に固定される。
【0060】
モータ21の出力軸21aの回転を、駆動輪20の車軸20aへ伝達する伝達機構は、実施形態において、プーリ22、23と、ベルト24と、を含む。プーリ22は、駆動輪20の車軸20aに対して軸心が一致するように固定される。プーリ23は、モータ21の出力軸21aに対して軸心が一致するように固定される。ベルト24は、プーリ22とプーリ23との間に掛け回される無端のベルトである。
【0061】
ベルト24は、プーリ23がモータ21の出力軸21aとともに軸心回りに回動することによって、プーリ22及びプーリ23の間を移動し、プーリ22を駆動輪20の車軸20aとともに回動させる。プーリ22、23は、例えば、タイミングプーリであり、ベルト24は、例えば、タイミングベルトである。伝達機構は、ベルト24の代わりにチェーンを有していてもよい。伝達機構は、ベルト24又はチェーンを介して伝達する構成に限定されず、平歯車等の複数の歯車を介して伝達する歯車機構を含んでもよい。
【0062】
接続部30は、装置本体10と走行器具100とを接続する接続機構を含む。実施形態の搬送装置1は、走行器具100から接続部30にかかる荷重を測定可能である。接続部30は、平面視において、装置本体10の中央部に配置される。接続部30は、実施形態において、荷重センサ基部31と、不図示の荷重センサと、荷重受け部材33と、カバー部材34と、感圧センサ35と、緩衝材36と、取り付け部材40と、を有する。接続部30は、荷重センサ基部31、荷重センサ、荷重受け部材33、カバー部材34、感圧センサ35、及び緩衝材36が、取り付け部材40と分離可能である。荷重センサ基部31、荷重センサ、荷重受け部材33、及びカバー部材34は、不図示の昇降装置によって、本体基台11に対して昇降する。
【0063】
荷重センサ基部31は、平面視形状が角丸の正方形状である略四角柱形状に形成され、不図示の昇降機構を介して本体基台11に支持される。荷重センサ基部31は、不図示の荷重センサを介して荷重受け部材33を支持する。荷重センサ基部31は、複数の荷重センサを支持する。
【0064】
不図示の荷重センサは、例えば、荷重を検出するひずみゲージ式のロードセルを含む。1つの荷重センサ(ロードセル)は、2つのひずみゲージを有する。各々の荷重センサは、荷重センサ基部31に固定される環形状の板体である外枠と、外枠の内周側に設けられる板体である舌片と、を有する。舌片は、荷重受け部材33に接する突起部を有し、突起部が荷重受け部材33に押圧されることで、外枠との連結部を中心に揺動する。この際のひずみに基づいて、荷重センサは、面に垂直な方向に加わった荷重を検出する。荷重センサは、水平な一方向、水平かつ一方向に直交する交差方向、及び垂直方向の荷重をそれぞれ検出可能な複数の荷重センサを含んでもよい。
【0065】
荷重受け部材33は、荷重センサ基部31に対して直接接触しないように設けられ、複数の荷重センサを介して荷重センサ基部31に支持される。荷重受け部材33は、搬送装置1と接続する走行器具100からかかる荷重を受け、この荷重の大きさ及び方向に応じて荷重センサ基部31に対して各々の荷重センサの舌片を変位させる。荷重受け部材33は、実施形態において、上面側の中心部から上方に突出して設けられる接続ピン部33aを有する。接続ピン部33aは、後述する取り付け部材40の嵌合孔41に下方から挿入可能である。
【0066】
カバー部材34は、荷重センサ基部31に支持された荷重センサの上方を覆う環形状の保護部材である。カバー部材34は、下面が荷重センサ基部31の上面にねじ等で固定され、荷重受け部材33に対して直接接触しないように設けられる。
【0067】
図4に示すように、カバー部材34は、空洞部34aを有する。空洞部34aは、収容部34bと、ピン挿通穴34cと、を含む。収容部34bは、カバー部材34の内部に空洞状に設けられる。収容部34bは、底面の形状が後述する感圧センサ35に沿う柱状の空洞状であり、底面に感圧センサ35を収容する。ピン挿通穴34cは、一端がカバー部材34の上面に開口し、他端が収容部34bの天面側に連通し、垂直方向に延びる穴である。ピン挿通穴34cは、収容部34bの長手方向の一方の端部寄りに形成される。ピン挿通穴34cには、上面側の開口から、後述する取り付け部材40の押圧ピン42が挿通可能である。
【0068】
図1及び図2に示すように、カバー部材34は、実施形態において、2つの空洞部34aを有する。2つの空洞部34aは、平面視において、各々のピン挿通穴34cの位置が、後述の取り付け部材40の各々の押圧ピン42の位置に一致するように配置される。すなわち、空洞部34aのピン挿通穴34cは、押圧ピン42の数及び位置に対応した数及び位置に設けられる。実施形態の空洞部34aは、平面視において、点対称に配置される。
【0069】
図4に示す感圧センサ35(接続状態検出部)は、接続部30における搬送装置1と走行器具100との接続状態を検出する。感圧センサ35は、印加される外圧の位置及び大きさを検出可能なセンサである。感圧センサ35は、例えば、静電容量式又は抵抗膜式等のセンサを含み、実施形態においては抵抗膜式のセンサである。感圧センサ35は、基部35aと、機能部35bと、を含む。
【0070】
基部35aは、機能部35b及び機能部35bから延びる配線を保持する。基部35aは、薄板状に形成される。基部35aは、例えば、機能部35bを両面から挟む一対の保護フィルムを含んでもよい。
【0071】
機能部35bは、例えば、基板と、複数のセンサ電極と、感圧導電層と、が積層されて配置される。基板は、基部35aの上面に配置され、複数のセンサ電極を支持する。センサ電極は、基板の上面に配置される。感圧導電層は、押圧によって変形する柔軟な樹脂材料の中に導電性粒子を配合した感圧導電による層である。感圧導電層は、表面に、導電粒子が微細な凹凸をなして露出する。感圧導電層は、複数のセンサ電極に接触することで、複数のセンサ電極を導通させる。
【0072】
機能部35bは、センサ電極と感圧導電層の表面の導電粒子と接触面積が変化すると、電気抵抗値が変化する。具体的には、感圧導電層は、センサ電極とは反対側に位置する感圧面35cが押圧されると、層内が押し縮められる。これにより、感圧導電層とセンサ電極との接触面積が大きくなるので、感圧導電層を介して複数のセンサ電極間に流れる電流が大きくなり、電気抵抗値が小さくなる。機能部35bは、基部35aの配線を介して、検出した電気抵抗値を、外部の制御装置等に出力する。すなわち、感圧センサ35は、電気抵抗値の変化を検出することによって、感圧面35cにかかる圧力を検出する。
【0073】
感圧センサ35は、基部35aがカバー部材34の収容部34bの底面上に収容されるとともに、機能部35bの感圧面35cがピン挿通穴34cの底部に位置し、感圧面35cがカバー部材34の上面に平行かつピン挿通穴34cの開口側を向くように、空洞部34aに配置される。
【0074】
緩衝材36は、例えば、ウレタンやゴム等の柔らかく弾性に優れる樹脂材を含む。緩衝材36は、感圧面35cを覆うように設けられる。実施形態の緩衝材36は、平面視において、ピン挿通穴34cと同形状である。緩衝材36は、ピン挿通穴34cに挿通する後述の押圧ピン42の先端42aで押圧される際、低周波振動を吸収しつつ、圧力を感圧面35cに伝達する。
【0075】
図3に示す取り付け部材40は、搬送対象の走行器具100に取り付けられる部材である。取り付け部材40は、走行器具100の下面側に、予めねじ等で固定される。取り付け部材40は、荷重受け部材33と接続可能かつ分離可能である。搬送装置1で搬送する搬送対象の走行器具100が複数である場合は、全ての走行器具100に予め取り付け部材40を取り付けておく。取り付け部材40を荷重受け部材33に接続することにより、搬送装置1は、走行器具100に接続される。取り付け部材40は、嵌合孔41と、押圧ピン42と、を有する。
【0076】
嵌合孔41は、取り付け部材40を垂直方向に貫通する孔であって、荷重受け部材33の接続ピン部33aが下方から挿入可能である。嵌合孔41は、平面視で取り付け部材40の中心部に形成される。嵌合孔41は、例えば、下方から順に、上方に向かって徐々に小さくなるテーパ状の内壁を有する部分と、接続ピン部33aが嵌合する部分と、を含んでもよい。接続ピン部33aは、テーパ状の内壁に案内されて嵌合孔41の上部で嵌合孔41に嵌合する。
【0077】
押圧ピン42は、取り付け部材40の下面側から下方に突出して嵌合孔41の軸方向と平行な方向(垂直方向)に延びて形成される。押圧ピン42は、軸方向の先端42a(図4における下端)に向かって徐々に小さくなるようなドーム形状を含む。押圧ピン42は、軸方向の長さが、カバー部材34のピン挿通穴34cの深さより長い。押圧ピン42は、荷重受け部材33と取り付け部材40とが接続状態である場合、感圧センサ35を押圧する突起である。押圧ピン42は、実施形態において、緩衝材36を介して感圧センサ35を押圧する。
【0078】
取り付け部材40は、実施形態において、2つの押圧ピン42を有する。2つの押圧ピン42は、荷重受け部材33と接続状態である場合において、軸方向に視て、カバー部材34の各々のピン挿通穴34cの位置に一致するように配置される。すなわち、押圧ピン42は、空洞部34aのピン挿通穴34cの数及び位置に対応した数及び位置に設けられる。実施形態の押圧ピン42は、平面視において、点対称に配置される。
【0079】
接続部30を接続状態にするには、まず、取り付け部材40が取り付けられた走行器具100の下方に潜り込ませるよう、搬送装置1を走行させ、取り付け部材40の嵌合孔41の直下に荷重受け部材33の接続ピン部33aを対向させるように位置づける。次に、不図示の昇降機構等で荷重センサ基部31、荷重センサ、及びカバー部材34とともに荷重受け部材33を上昇させる。上昇した荷重受け部材33は、取り付け部材40から下方から接近し、接続ピン部33aが嵌合孔41に下方から挿通して嵌合する。
【0080】
荷重受け部材33と取り付け部材40とが正確に接続された場合、押圧ピン42は、空洞部34aに挿通し、空洞部34aの下方の収容部34bに配置される感圧センサ35の感圧面35cを、緩衝材36を介して押圧する。感圧センサ35は、押圧ピン42の先端42aによる緩衝材36を介した感圧センサ35の押圧を検出する。すなわち、感圧センサ35は、荷重受け部材33と取り付け部材40との接続状態を検出する。
【0081】
押圧ピン42は、実施形態のように、平面視において、対角状に配置される2つの押圧ピン42を含んでもよい。これにより、2つの押圧ピン42のいずれもが各々緩衝材36を介して感圧センサ35を押圧したことを感圧センサ35が検出した場合に、荷重受け部材33と取り付け部材40との接続状態が正常であると判断することが可能である。押圧ピン42は、実施形態の2つが対角状に配置される構成に限定されず、3つ以上配置されてもよく、平面視で線対称又は点対称に配置されることが好ましい。
【0082】
搬送装置1が接続部30を介して走行器具100に接続している状態において、搬送装置1が走行すると、走行した方向に接続部30が移動する。搬送装置1は、接続部30を介して走行器具100を走行方向に引っ張る。その結果、搬送装置1が移動した方向に、走行器具100が搬送される。また、搬送装置1は、接続部30を介して走行器具100を右左折移動方向又は旋回移動方向に引っ張る。その結果、搬送装置1の右左折動作又は旋回動作に従って、走行器具100が右左折又は旋回する。
【0083】
搬送装置1を走行器具100から離脱させる際には、不図示の昇降機構で荷重センサ基部31、荷重センサ、及びカバー部材34とともに荷重受け部材33を下降させる。下降した荷重受け部材33は、接続ピン部33aが嵌合孔41から下方に抜けて、取り付け部材40の下方に離隔する。これにより、搬送装置1が走行器具100から離脱される。取り付け部材40から荷重受け部材33が離脱すると、押圧ピン42は、先端42aが感圧センサ35の感圧面35cから離隔し、空洞部34aから抜ける。すなわち、感圧センサ35は、荷重受け部材33と取り付け部材40との接続状態を検出しなくなる。また、搬送装置1が走行器具100を搬送中に、大きな段差や障害物等に衝突し、取り付け部材40の嵌合孔41と荷重受け部材33の接続ピン部33aとの嵌合が意図せず外れた場合は、感圧センサ35によって検出可能である。
【0084】
なお、本実施形態において、接続部30の構成は、搬送装置1の装置本体10と走行器具100とを着脱自在に接続可能であり、かつ接続状態を検出可能であれば、上記実施形態の構成に限定されない。接続部30は、例えば、荷重受け部材33及び取り付け部材40に代わり、走行器具100の下方から上昇させることで走行器具100の下面に吸着するマグネット又は吸盤を含んでもよい。
【0085】
障害物検知部50は、搬送装置1周囲の障害物を検知する。障害物検知部50は、例えば、空間の物理的な形状データを出力する測域センサを含み、実施形態では、2D LiDAR(Light Detection and Ranging)である。実施形態の障害物検知部50(2D LiDAR)は、装置本体10の上面側において、前後の位置に合計2つ配置される。障害物検知部50の高さ方向の位置は、搬送対象の走行器具100の本体部110の下面より下方に位置する。障害物検知部50による検知結果は、後述の制御部60に出力される。
【0086】
実施形態の障害物検知部50は、検知結果に基づいて、少なくとも搬送装置1の水平な全方向における所定距離以内の範囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離が取得可能であればよい。障害物検知部50は、例えば、レーザスキャナ、LRF(Laser Range Finder)、1D LiDAR、又は3D LiDARであってもよい。また、障害物検知部50は、搬送装置1周囲を撮影する3Dカメラであってもよい。なお、LiDARの検知可能な最大距離は、約40mである。
【0087】
なお、障害物検知部50は、前後に合計2つ配置される実施形態の構成に限定されず、搬送装置1及び走行器具100の適用形態に応じて、左右に配置されてもよいし、1つ又は3つ以上設けられてもよい。また、障害物検知部50は、搬送装置1及び走行器具100の適用形態に応じて、主要の進行方向のみ検知し、後方を検知しないように設けられてもよい。
【0088】
搬送装置1は、単体での走行中、すなわち走行器具100と接続していない状態と、走行器具100と接続している状態とで、後述の制御部60によって障害物を検知する範囲が切り替えられる。図5は、単体で走行中である搬送装置1による障害物の第1検知範囲51の一例を示す平面図である。図6は、走行器具100と接続中である搬送装置1による障害物の第2検知範囲52の一例を示す平面図である。なお、図6において、走行器具100は、搬送対象を載せる本体部110のフレーム111と、従動輪120と、のみが図示される。
【0089】
図5に示すように、搬送装置1が走行器具100と接続せず、単体である状態において、第1検知範囲51は、平面視において、2つの障害物検知部50それぞれを基点として放射状に広がり、中心角が優角であり、半径が所定距離である扇形状をなす。ここで、第1検知範囲51の半径距離は、例えば、10m以下に設定される。第1検知範囲51は、2つの障害物検知部50による第1検知範囲51が、装置本体10の側面全域を覆うように設定される。すなわち、第1検知範囲51は、障害物検知部50からの距離が所定距離以内の範囲であって、装置本体10の全周に近接する障害物を検知する範囲である。
【0090】
図6に示すように、搬送装置1が走行器具100と接続している状態において、第2検知範囲52は、第2検知範囲52は、平面視において、2つの障害物検知部50それぞれを基点として放射状に広がり、中心角が平角未満であり、半径が所定距離である扇形状をなす。ここで、第2検知範囲52の半径距離は、第1検知範囲51の半径距離と同一でも異なってもよく、例えば、10m以下に設定される。第2検知範囲52の半径距離は、少なくとも、障害物検知部50から従動輪120までの距離より大きい。第2検知範囲52には、走行器具100の従動輪120及び従動輪120を支持するフレーム111の脚部等に干渉し得る範囲が除外される。
【0091】
より詳しくは、装置本体10の前方に配置される障害物検知部50による第2検知範囲52は、走行器具100の前方に位置する2つの従動輪120の間の範囲において、従動輪120(自在輪)がいずれの回転位置にある場合でも干渉しないように設定される。また、装置本体10の後方に配置される障害物検知部50による第2検知範囲52は、走行器具100の後方に位置する2つの従動輪120の間の範囲において、従動輪120(自在輪)がいずれの回転位置にある場合でも干渉しないように設定される。
【0092】
すなわち、第2検知範囲52は、障害物検知部50からの距離が従動輪120までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、障害物検知部50から視て、従動輪120の最大可動範囲121を非検知領域53とした場合の隣接する2つの非検知領域53の間の範囲である。従動輪120の最大可動範囲121とは、従動輪120の回転軸を基点とした相対的な範囲であり、従動輪120が回転軸回りに360°回転した際に従動輪120全体が通る領域全域を示す。
【0093】
図1に示す制御部60は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを有する演算処理部、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、記憶部、及び入出力インターフェース装置等のハードウェア資源を備える。制御部60の機能は、記憶部に格納された所定のプログラムを演算処理部が実行することで実現される。制御部60は、所定のプログラムが実行されることで、演算処理部による演算結果に従って、各構成要素に各種機能を実行させる制御信号を出力し、演算結果を外部へ出力する。
【0094】
制御部60は、バッテリ61から電力が供給されて駆動する。バッテリ61は、装置本体10に搭載される。さらに、装置本体10には、非常停止ボタン62が設けられる。搬送装置1は、非常停止ボタン62が操作者によって押されると、リレースイッチが主電源を切り、バッテリ61からの電力供給が停止される。
【0095】
制御部60の記憶部には、例えば、搬送対象の走行器具100の情報が予め記憶可能である。記憶部に記憶される情報は、例えば、走行器具100の長手方向の長さ、短手方向の幅、及び従動輪120の配置等を含む寸法情報を含む。制御部60は、例えば、所定のプログラムが実行されることで、モータドライバにモータ21を駆動させる。また、制御部60は、例えば、所定のプログラムが実行されることで、荷重センサによる計測結果に基づいて荷重受け部材33にかかる荷重を算出する。
【0096】
また、制御部60は、例えば、感圧センサ35による検出結果に基づいて、接続部30における搬送装置1と走行器具100との接続状態を検知する。また、制御部60は、例えば、所定のプログラムが実行されることで、障害物検知部50による障害物の検知範囲を第1検知範囲51(図5参照)と第2検知範囲52(図6参照)とで切り替える。
【0097】
制御部60は、感圧センサ35による検出結果を取得し、接続部30において走行器具100と接続していないと判断した場合、障害物検知部50による検出結果に基づいて、第1検知範囲51内、すなわち、装置本体10の左右前後を含む全周に近接し、障害物検知部50から所定距離以内に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を取得する。
【0098】
制御部60は、第1検知範囲51に障害物を検出したと判断した場合、後述のリモコン70による搬送装置1の操作を無効する。ここで、操作を無効にするとは、リモコン70から出力された走行方向及び走行速度を操作するための操作信号に基づく制御より、以下に説明する減速処理及び停止処理を優先させることをいう。制御部60は、モータドライバによりモータ21を制御することで減速処理及び停止処理を行う。具体的には、制御部60は、速度制御により、搬送装置1の走行速度を所定速度まで減速させる。所定速度は、例えば、0.3m/secである。さらに、制御部60は、障害物までの距離が所定距離を下回った場合、モータドライバによりモータ21の回転を停止させ、搬送装置1の走行を停止させる。
【0099】
制御部60は、感圧センサ35による検出結果を取得し、接続部30において走行器具100と接続していると判断した場合、障害物検知部50による検知結果に基づいて、第2検知範囲52内、すなわち、装置本体10の主要な進行方向(前方及び後方)における所定距離以内に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を取得する。
【0100】
制御部60は、第2検知範囲52に障害物を検知したと判断した場合、モータドライバによりモータ21を制御する。具体的には、制御部60は、トルク制御により、モータ21へのトルク指令値の上限値を低減する。この際、搬送装置1の最大走行速度(制限速度)は、例えば、0.3m/secである。制御部60は、第2検知範囲52に障害物を検知なくなると、トルク指令値の上限値を初期値に復帰させる。
【0101】
なお、障害物検知部50による検知範囲の切り替えは、障害物検知部50によるセンサの走査範囲を変更するものであってもよいし、センサの走査範囲自体は広範囲のまま変更せず、制御部60の方で必要なデータのみピックアップして使用するものであってもよい。
【0102】
リモコン70(遠隔操作部)は、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)通信、Wi-Fi通信、又は5G通信等の無線通信を介して、装置本体10と通信可能であるように、装置本体10と別体で設けられる。リモコン70は、駆動輪20による装置本体10の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能である。リモコン70は、例えば、複数の装置本体10を切り替えて操作可能であるように共通で設けられてもよい。リモコン70は、ジョイスティック71と、操作用の複数のボタン72と、を有する。
【0103】
ジョイスティック71は、リモコン70の本体の上面側から直立し、かつ傾斜する方向に揺動可能なスティックを含む。実施形態のスティックは、平面視において、360°いずれの方向にも傾斜可能である。ジョイスティック71は、スティックの傾斜方向が装置本体10の進行方向に対応付けられているとともに、スティックの傾斜角度が移動速度に対応付けられている。リモコン70は、スティックが傾斜することで、スティックの傾斜方向及び傾斜角度に基づく進行方向及び走行速度で装置本体10を走行させるための制御信号を出力する。
【0104】
複数のボタン72は、各々予め定められた動作に対応付けられる。ボタン72は、例えば、所定の装置本体10とペアリング設定を行うためのペアリングボタン、操作する装置本体10を切り替えるための切り替えボタン、装置本体10を遠隔で起動させる電源ボタン、接続部30を昇降させる不図示の昇降機構を駆動させる上昇ボタン及び下降ボタン等を含んでもよい。
【0105】
[制御方法]
次に、制御部60による搬送装置1の制御方法について、説明する。まず、障害物の検知範囲切り替え処理について説明する。図7は、搬送装置1の制御部60による検知範囲切り替え処理の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理は、搬送装置1の制御部60が、予め定められる制御プログラム及びデータに基づいて実行する。制御部60は、例えば、搬送装置1が所定の起動操作を受け付けることによって、図7に示すフローチャートのステップS201に移行して処理を開始する。
【0106】
ステップS201において、制御部60は、接続対象の走行器具100の情報を取得する。ステップS201で取得する走行器具100の情報は、ステップS202で設定する第2検知範囲52を設定するために必要な情報であり、例えば、接続部30の取り付け部材40の位置に対する従動輪120の配置情報を含む。ステップS201では、例えば、予め制御部60の記憶部に記憶された複数種類の走行器具100から、接続対象の走行器具100を選択する操作を実行するように使用者に対して報知してもよい。搬送装置1に対して接続対象となりうる走行器具100のタイプが1種類である場合、ステップS201は省略されてもよい。制御部60は、ステップS202に移行する。
【0107】
ステップS202において、制御部60は、第2検知範囲52を設定する。より詳しくは、制御部60は、ステップS201で取得した接続対象の走行器具100の従動輪120の配置情報に基づいて、第2検知範囲52が、障害物検知部50からの距離が従動輪120までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、障害物検知部50から視て、従動輪120の最大可動範囲121を非検知領域53とした場合の隣接する2つの非検知領域53の間の範囲であるように設定する。制御部60は、ステップS203に移行する。
【0108】
ステップS203において、制御部60は、初期設定として、障害物の検知範囲を第1検知範囲51に設定する。すなわち、搬送装置1による障害物の検知範囲は、初期状態において、装置本体10の左右前後を含む水平な全方向である。制御部60は、ステップS204に移行する。
【0109】
ステップS204において、制御部60は、接続部30における搬送装置1と走行器具100との接続状態の検知を開始する。より詳しくは、制御部60は、感圧センサ35による検知結果を取得する。
【0110】
制御部60は、接続状態の検知を終了するまで、ステップS205からステップS207までの処理、又はステップS205及びステップS208からステップS209までの処理を、繰り返し実行する。接続状態の検知は、例えば、搬送装置1が所定の停止操作を受け付けることによって終了する。
【0111】
ステップS205において、制御部60は、接続部30において搬送装置1と走行器具100とが接続されているか否かを判断する。より詳しくは、制御部60は、感圧センサ35にかかる圧力の計測値に基づいて、荷重センサ、荷重センサ基部31及び不図示の昇降機構を介して装置本体10に支持される荷重受け部材33と、走行器具100に固定して取り付けられる取り付け部材40とが、正確に接続しているか否かを判断する。
【0112】
制御部60は、ステップS205において接続していないと判断した場合(ステップS205;No)、ステップS206に移行する。ステップS206において、制御部60は、障害物の検知範囲を第1検知範囲51に設定済みか否かを判断する。
【0113】
制御部60に設定された障害物の検知範囲は、ステップS203において、第1検知範囲51に設定された後、後述のステップS209を実行していない場合、又は最後にステップS209で第2検知範囲52に変更した後に後述のステップS207において再び第1検知範囲51に変更している場合、第1検知範囲51である。制御部60に設定された障害物の検知範囲は、最後に後述のステップS209で第2検知範囲52に変更した後に後述のステップS207を実行していない場合、第2検知範囲52である。
【0114】
制御部60は、第1検知範囲51に設定済みと判断した場合(ステップS206;Yes)、ステップS205に戻る。制御部60は、第1検知範囲51に設定していないと判断した場合(ステップS206;No)、ステップS207に移行する。
【0115】
ステップS207において、制御部60は、障害物の検知範囲を第1検知範囲51に設定する。これにより、搬送装置1による障害物の検知範囲は、第2検知範囲52から第1検知範囲51に変更される。
【0116】
制御部60は、ステップS205において接続していると判断した場合(ステップS205;Yes)、ステップS208に移行する。ステップS208において、制御部60は、障害物の検知範囲を第2検知範囲52に設定済みか否かを判断する。
【0117】
制御部60は、第2検知範囲52に設定済みと判断した場合(ステップS208;Yes)、ステップS205に戻る。制御部60は、第2検知範囲52に設定していないと判断した場合(ステップS208;No)、ステップS209に移行する。
【0118】
ステップS209において、制御部60は、障害物の検知範囲を第2検知範囲52に設定する。これにより、搬送装置1による障害物の検知範囲は、第1検知範囲51から第2検知範囲52に変更される。
【0119】
制御部60は、ステップS207又はステップS209を実行した後、ステップS205に戻る。制御部60は、接続状態の検知を終了する所定の信号を受け付けた場合、ステップS204からステップS209までのループ処理を抜け、図7に示すフローチャートの処理を終了する。
【0120】
次に、単体で走行中、すなわち第1検知範囲51で障害物を検知している状態における搬送装置1の走行制御処理について説明する。図8は、単体で走行中である搬送装置1の制御部60による障害物回避の一例を示すフローチャートである。図8に示す処理は、搬送装置1の制御部60が、予め定められる制御プログラム及びデータに基づいて実行する。図8に示す処理は、例えば、図7のステップS204からステップS209までに示す接続状態の検知処理と平行して、図9に示す処理と択一的に実行される。制御部60は、図7のステップS203又はステップS207が実行されると、ステップS301に移行して処理を開始する。
【0121】
ステップS301において、制御部60は、第1検知範囲51内に障害物を検知したか否かを判断する。具体的には、制御部60は、障害物検知部50の検知結果を取得し、検知結果に基づいて、装置本体10の側面全域を覆う第1検知範囲51内において、所定距離以内に障害物が存在するか否かを判断する。
【0122】
制御部60は、第1検知範囲51内に障害物がないと判断した場合(ステップS301;No)、ステップS301に戻り、ステップS301でYesと判断するまで、所定周期でステップS301を繰り返し実行する。制御部60は、第1検知範囲51内に障害物があると判断した場合(ステップS301;Yes)、ステップS302に移行する。
【0123】
ステップS302において、制御部60は、リモコン70からの操作を無効にする。ここで、操作を無効にするとは、後述のステップS303からステップS305に示す障害物を回避するための動作を実現する処理を、リモコン70による操作に対応して出力された操作信号に基づく動作を実現するための処理より優先させることをいう。制御部60は、平常時において、リモコン70から出力され受信した制御信号に基づいて、リモコン70の操作に対応付けられた進行方向及び走行速度で装置本体10が走行するように、モータドライバによりモータ21を駆動させる。制御部60は、ステップS303に移行する。
【0124】
ステップS303において、制御部60は、速度制御により走行速度を所定速度まで減速させる。具体的には、速度制御では、速度測定部による測定結果に基づいて、装置本体10の走行速度を取得し、走行速度が所定速度を超えている場合、モータドライバによりモータ21を制御して速度の指令値を下げ、各々の駆動輪20の回転数を低減させていくことで、所定速度まで減速させる。制御部60は、ステップS304に移行する。
【0125】
ステップS304において、制御部60は、ステップS301で検知した障害物までの距離が所定距離以上か否かを判断する。制御部60は、障害物までの距離が所定距離以上であると判断した場合(ステップS304;No)、ステップS304に戻り、ステップS304でNoと判断するまで、所定周期でステップS304を繰り返し実行する。すなわち、装置本体10は、障害物までの距離が所定距離以上である場合、ステップS303で減速した後の所定速度で走行する。制御部60は、障害物までの距離が所定距離を下回っていると判断した場合(ステップS304;Yes)、ステップS305に移行する。
【0126】
ステップS305において、制御部60は、装置本体10の走行を停止させる。具体的には、制御部60は、モータドライバによりモータ21を制御して、各々の駆動輪20の回転数を0にすることで、走行を停止させる。図8に示す実施形態の処理では、障害物に接近した場合、走行を停止させる前に、所定速度まで減速させることで、低速状態からの停止により、停止の衝撃を抑制している。制御部60は、ステップS305の処理を実行すると、図8に示すフローチャートの処理を終了する。
【0127】
なお、制御部60は、ステップS305で走行を停止させる前に、第1検知範囲51内に障害物を検知しなくなった場合、再びリモコン70からの操作を有効にさせてもよい。この場合、制御部60は、ステップS305で走行が停止させるまで、図7のステップS209が実行されるまで、リモコン70による操作により走行が停止されるまで、又は搬送装置1の電源が切断されるまで、図8に示すフローチャートの処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0128】
次に、走行器具100と接続中、すなわち第2検知範囲52で障害物を検知している状態における搬送装置1の走行制御処理について説明する。図9は、走行器具100と接続中である搬送装置1の制御部60による障害物回避の一例を示すフローチャートである。図9に示す処理は、搬送装置1の制御部60が、予め定められる制御プログラム及びデータに基づいて実行する。図9に示す処理は、例えば、図7のステップS204からステップS209までに示す接続状態の検知処理と平行して、図8に示す処理と択一的に実行される。制御部60は、図7のステップS209が実行されると、ステップS401に移行して処理を開始する。
【0129】
ステップS401において、制御部60は、第2検知範囲52内に障害物を検知したか否かを判断する。具体的には、制御部60は、障害物検知部50の検知結果を取得し、検知結果に基づいて、装置本体10の主要な進行方向を含む第2検知範囲52内において、所定距離以内に障害物が存在するか否かを判断する。
【0130】
制御部60は、第2検知範囲52内に障害物がないと判断した場合(ステップS401;No)、ステップS401に戻り、ステップS401でYesと判断するまで、所定周期でステップS401を繰り返し実行する。制御部60は、第2検知範囲52内に障害物があると判断した場合(ステップS401;Yes)、ステップS402に移行する。
【0131】
ステップS402において、制御部60は、トルク制御により走行速度が所定速度になるまでトルク指令値の上限値を低減させる。具体的には、トルク制御では、速度測定部による測定結果に基づいて、装置本体10の走行速度を取得し、走行速度が所定速度を超えている場合、モータドライバによりモータ21を制御するトルク指令値を下げ、各々の駆動輪20の回転数を低減させていくことで、所定速度まで減速させる。また、以降もリモコン70による操作によって、走行速度が所定速度を超えないよう、トルク指令値の上限値を低減した状態に維持させる。制御部60は、ステップS403に移行する。
【0132】
ステップS403において、制御部60は、再び、第2検知範囲52内に障害物を検知したか否かを判断する。具体的には、制御部60は、障害物検知部50の検知結果を取得し、検知結果に基づいて、装置本体10の主要な進行方向を含む第2検知範囲52内において、所定距離以内に障害物が存在するか否かを判断する。
【0133】
制御部60は、第2検知範囲52内に障害物があると判断した場合(ステップS403;Yes)、ステップS403に戻り、ステップS403でNoと判断するまで、所定周期でステップS403を繰り返し実行する。すなわち、装置本体10は、第2検知範囲52に障害物がある状態が継続している場合、ステップS402で減速した後の所定速度を上限として走行するように、トルク指令の上限値が制限される。制御部60は、第2検知範囲52内に障害物がないと判断した場合(ステップS403;No)、ステップS404に移行する。
【0134】
ステップS404において、制御部60は、モータドライバによりモータ21を制御するトルク指令値の上限値を、初期値に復帰させる。これにより、装置本体10は、走行速度が制限されず、リモコン70のジョイスティック71の傾斜角度に基づく走行速度で走行する。制御部60は、ステップS404の処理を実行すると、ステップS401を再び開始し、図7のステップS207が実行されるまで、リモコン70による操作により走行が停止されるまで、又は搬送装置1の電源が切断されるまで、図9に示すフローチャートの処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0135】
以上説明したように、実施形態の搬送装置1は、装置本体10に支持されて装置本体10を走行させる駆動輪20と、本体部110と本体部110に支持される複数の従動輪120とを備える走行器具100に接続可能であって装置本体10に設けられる接続部30と、接続部30における走行器具100との接続状態を検出可能な接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)と、装置本体10の周囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を検知可能であって装置本体10に設けられる障害物検知部50と、制御部60と、無線通信を介して制御部60と通信可能であって、駆動輪20による装置本体10の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部(リモコン70)と、を備え、制御部60は、操作信号に基づいて走行を制御し、接続状態検出部が走行器具100との接続を検出していない状態において、第1検知範囲51に障害物検知部50が障害物を検知した場合、操作信号に基づく制御より優先して走行を停止させ、接続状態検出部が走行器具100との接続を検出している状態において、第2検知範囲52に障害物検知部50が障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させ、第1検知範囲51は、障害物検知部50からの距離が所定距離以内の範囲であって、装置本体10の全周に近接する障害物を検知する範囲であり、第2検知範囲52は、障害物検知部50からの距離が従動輪120までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、障害物検知部50から視て従動輪120の最大可動範囲121を非検知領域53とした場合の隣接する2つの非検知領域53の間の範囲である。
【0136】
これによれば、搬送装置1が単体で走行している状態では、遠隔操作部(リモコン70)からの操作に関わらず障害物近傍で停止することで衝突を回避させるのに対し、搬送装置1が走行器具100に接続して走行器具100を搬送している状態では、障害物に接近すると減速させ、障害物近傍では低速で走行することで衝突を回避させる。すなわち、走行器具100の搬送中、エレベータや病室等の狭い空間を走行する場合には、むやみに停止させることなく、低速走行することで障害物への衝突を回避することができる。また、搬送装置1が単体で走行している場合は、搬送装置1の全周に近接する領域を障害物の検知範囲としているが、走行器具100と接続している場合は、主要な進行方向のみを検知範囲とし、走行器具100の従動輪120を障害物として検知しないようにしている。したがって、走行器具100に対して着脱自在に接続する搬送装置1にも適用可能である。
【0137】
また、実施形態の搬送装置1において、制御部60は、接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)が走行器具100との接続を検出している状態において、障害物検知部50が第2検知範囲52に障害物を検知した場合、トルク制御により駆動輪20に対するトルクの指令値の上限値を下げて所定速度まで減速させる。
【0138】
搬送装置1が走行器具100に接続して走行器具100を搬送している状態で障害物を検知した場合、所定速度まで減速はさせるが、低速での走行を許可している。すなわち、トルク制限はするものの、遠隔操作部(リモコン70)からの操作に基づいて、走行速度を変更させることが可能な状態である。低速かつ走行器具100という重量物を搬送している状態では、トルク制御によりモータ21の回転数を抑制することにより、走行を安定させることができる。
【0139】
また、実施形態の搬送装置1において、制御部60は、第2検知範囲52に障害物を検知して駆動輪20に対するトルクの指令値の上限値を下げた後、障害物検知部50が第2検知範囲52に障害物を検知しなくなった場合、トルクの指令値の上限値を初期値に復帰させる。
【0140】
これによれば、狭い空間から広い空間に出た後は、走行速度を上げて走行器具100を搬送させることができる。
【0141】
また、実施形態の搬送装置1において、制御部60は、接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)が走行器具100との接続を検出していない状態において、障害物検知部50が第1検知範囲51に障害物を検知した場合、速度制御により駆動輪20に対する速度の指令値を下げて所定速度まで減速し、検知した障害物までの距離が所定距離を下回った場合に走行を停止させる。
【0142】
搬送装置1が単体で走行している状態では、走行器具100に接続している状態に比べて、走行物の全体の重量が軽量である。また、遠隔操作部(リモコン70)からの操作より優先して、自走で減速、停止を行うため、外部から変動する外力が加わることがない。したがって、速度制御により、滑らかに減速し、安定的に停止することができる。
【0143】
また、実施形態の搬送装置1において、制御部60は、接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)による走行器具100との接続状態に基づいて、障害物検知部50による走査範囲を変更させる。
【0144】
これによれば、取得するデータ数を削減し、制御部60で取り扱うデータ容量を節約することができる。
【0145】
また、実施形態の搬送装置1において、制御部60は、接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)による走行器具100との接続状態に基づいて、障害物検知部50が検知した走査範囲のうち障害物の有無を判断する範囲を変更させる。
【0146】
これによれば、障害物検知部50の種類及び性能に関わらず、障害物の有無を検知する範囲を制御部60のみで設定できる。
【0147】
また、実施形態の搬送装置1において、接続部30は、装置本体10に対して昇降可能かつ上面側から上方に突出して設けられる接続ピン部33aを含む荷重受け部材33と、走行器具100に取り付けられ、接続ピン部33aが下方から挿入可能な嵌合孔41を有する取り付け部材40と、を備える。
【0148】
これによれば、接続ピン部33aが嵌合孔41に挿通して嵌合することで、荷重受け部材33と走行器具100に取り付けられる取り付け部材40とが接続するので、走行器具100との接続及び分離が容易に可能である。
【0149】
また、実施形態の搬送装置1において、接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)は、取り付け部材40の下面側から下方に突出して嵌合孔41の軸方向と平行な方向に延びて形成される押圧ピン42と、接続ピン部33aと嵌合孔41とが嵌合した状態である場合、押圧ピン42が感圧面35cを押圧する位置に設けられ、感圧面35cにかかる圧力を検出する感圧センサ35と、を備える。
【0150】
これによれば、嵌合孔41に対して接続ピン部33aが挿通して嵌合する際、押圧ピン42が軸方向に沿って感圧面35cに接近して押圧するため、接続状態を正確に検出することができる。また、感圧面35cを押圧ピン42の先端42aで押圧すればよいので、感圧センサ35の基部や配線を、部材の内部に埋め込んで配置して、外的要因による負荷や損傷を抑制できるように構成することも可能である。
【0151】
また、実施形態の搬送装置1において、接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)は、感圧センサ35の感圧面35cを覆う緩衝材36をさらに備え、接続ピン部33aと嵌合孔41とが嵌合した状態である場合、押圧ピン42が緩衝材36を介して感圧面35cを押圧する。
【0152】
これによれば、緩衝材36が低周波振動を吸収し、ロバスト性を確保することができる。また、これに伴って、小さな段差や勾配等による細かい振動による接続状態解除の誤検出を抑制できる。また、感圧センサ35の感圧面35cを緩衝材36で覆うことで保護できるので、感圧センサ35への外的要因による負荷や損傷を抑制することができる。
【0153】
また、実施形態の搬送装置1の制御方法は、装置本体10に支持されて装置本体10を走行させる駆動輪20と、本体部110と本体部110に支持される複数の従動輪120とを備える走行器具100に接続可能であって装置本体10に設けられる接続部30と、接続部30における走行器具100との接続状態を検出可能な接続状態検出部(感圧センサ35及び押圧ピン42)と、装置本体10の周囲に存在する障害物のある方向及び障害物までの距離を検知可能であって装置本体10に設けられる障害物検知部50と、無線通信を介して駆動輪20による装置本体10の走行方向及び走行速度を操作するための操作信号を出力可能な遠隔操作部(リモコン70)と、を備える搬送装置1の制御方法であって、接続状態検出部によって走行器具100との接続を検出する接続状態検出ステップと、装置本体10の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知ステップと、走行器具100との接続を検出せず、第1検知範囲51に障害物を検知した場合、操作信号に基づく制御より優先して走行を停止させる停止ステップと、走行器具100との接続を検出し、第2検知範囲52に障害物を検知した場合、走行速度を所定速度になるまで減速させる減速ステップと、を含み、第1検知範囲51は、障害物検知部50からの距離が所定距離以内の範囲であって、装置本体10の全周に近接する障害物を検知する範囲であり、第2検知範囲52は、障害物検知部50からの距離が従動輪120までの距離より大きい所定距離以内の範囲であって、障害物検知部50から視て従動輪120の最大可動範囲121を非検知領域53とした場合の隣接する2つの非検知領域53の間の範囲である。
【0154】
これによれば、搬送装置1が単体で走行している状態では、遠隔操作部(リモコン70)からの操作に関わらず障害物近傍で停止することで衝突を回避させるのに対し、搬送装置1が走行器具100に接続して走行器具100を搬送している状態では、障害物に接近すると減速させ、障害物近傍では低速で走行することで衝突を回避させる。すなわち、走行器具100の搬送中、エレベータや病室等の狭い空間を走行する場合には、むやみに停止させることなく、低速走行することで障害物への衝突を回避することができる。また、搬送装置1が単体で走行している場合は、搬送装置1の全周に近接する領域を障害物の検知範囲としているが、走行器具100と接続している場合は、主要な進行方向のみを検知範囲とし、走行器具100の従動輪120を障害物として検知しないようにしている。したがって、走行器具100に対して着脱自在に接続する搬送装置1にも適用可能である。
【0155】
また、実施形態の搬送装置1の制御方法において、減速ステップでは、トルク制御により駆動輪20に対するトルクの指令値の上限値を下げて所定速度まで減速させる。
【0156】
搬送装置1が走行器具100に接続して走行器具100を搬送している状態で障害物を検知した場合、所定速度まで減速はさせるが、低速での走行を許可している。すなわち、トルク制限はするものの、遠隔操作部(リモコン70)からの操作に基づいて、走行速度を変更させることが可能な状態である。低速かつ走行器具100という重量物を搬送している状態では、トルク制御によりモータ21の回転数を抑制することにより、走行を安定させることができる。
【0157】
また、実施形態の搬送装置1の制御方法は、減速ステップの後、第2検知範囲52に障害物を検知しなくなった場合、トルクの指令値の上限値を初期値に復帰させる復帰ステップをさらに含む。
【0158】
これによれば、狭い空間から広い空間に出た後は、走行速度を上げて走行器具100を搬送させることができる。
【0159】
また、実施形態の搬送装置1の制御方法において、停止ステップでは、速度制御により駆動輪20に対する速度の指令値を下げて所定速度まで減速し、検知した障害物までの距離が所定距離を下回った場合に走行を停止させる。
【0160】
搬送装置1が単体で走行している状態では、走行器具100に接続している状態に比べて、走行物の全体の重量が軽量である。また、遠隔操作部(リモコン70)からの操作より優先して、自走で減速、停止を行うため、外部から変動する外力が加わることがない。したがって、速度制御により、滑らかに減速し、安定的に停止することができる。
【0161】
なお、本実施形態は、上記態様に限定されるものではない。即ち、本実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、制御部60は、走行器具100との接続状態に基づいて、障害物の検知範囲を第1検知範囲51と第2検知範囲52とで切り替える際、障害物検知部50による走査範囲を変更させてもよいし、常時全域を走査させた上で、障害物の有無を判断する範囲を変更してもよい。前者の場合は、障害物検知部50自体に、検知する距離や角度の範囲を限定する機能を有するものを用いればよい。また、後者の場合は、障害物検知部50が第1検知範囲51及び第2検知範囲52を少なくとも包括する範囲を検知し、制御部60が障害物検知部50から取得した情報に基づいて、第1検知範囲51又は第2検知範囲52に障害物があるか否かを判断すればよい。
【0162】
また、実施形態では、図6に示すように、第2検知範囲52が、装置本体10の前方及び後方のみに設定されているが、障害物検知部50を装置本体10の左右にも配置し、左側の2つの従動輪120の最大可動範囲121を含む非検知領域53の間、及び右側の2つの従動輪120の最大可動範囲121を含む非検知領域53の間にも設定してもよい。これにより、装置本体10が真横移動して、進行方向が左右方向となる場合でも、障害物検知が可能である。
【符号の説明】
【0163】
1 搬送装置
10 装置本体
11 本体基台
12 車輪基台
13 サスペンション
14 軸部材
15 直動案内機構
16 弾性体
17 ばね押さえ
20 駆動輪
20a 車軸
21 モータ
21a 出力軸
22、23 プーリ
24 ベルト
30 接続部
31 荷重センサ基部
33 荷重受け部材
33a 接続ピン部
34 カバー部材
34a 空洞部
34b 収容部
34c ピン挿通穴
35 感圧センサ(接続状態検出部)
35a 基部
35b 機能部
35c 感圧面
36 緩衝材(接続状態検出部)
40 取り付け部材
41 嵌合孔
42 押圧ピン(接続状態検出部)
42a 先端
50 障害物検知部
51 第1検知範囲
52 第2検知範囲
53 非検知領域
60 制御部
61 バッテリ
62 非常停止ボタン
70 リモコン(遠隔操作部)
71 ジョイスティック
72 ボタン
100 走行器具
110 本体部
111 フレーム
120 従動輪(自在輪)
121 最大可動範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9