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特開2024-24449インペラおよびインペラの製造方法並びに回転機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024449
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】インペラおよびインペラの製造方法並びに回転機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/28 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127278
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昂平
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一浩
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA22C
3H130BA23C
3H130CB05
3H130CB09
3H130DD09Z
3H130EA02C
3H130EB01C
3H130EC05C
3H130EC15C
3H130EC17C
3H130ED01C
(57)【要約】
【課題】インペラおよびインペラの製造方法並びに回転機械において、径方向への変形を抑制する。
【解決手段】円筒形状をなすハブと、円筒形状をなしてハブの外側に配置されるシュラウドと、ハブとシュラウドとの間で周方向に間隔をあけて配置される複数のブレードと、を備え、ハブとシュラウドの少なくとも一方は、厚さ方向に積層される複数の層を有し、複数の層は、それぞれ繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、複数の層は、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状をなすハブと、
円筒形状をなして前記ハブの外側に配置されるシュラウドと、
前記ハブと前記シュラウドとの間で周方向に間隔をあけて配置される複数のブレードと、
を備え、
前記ハブと前記シュラウドの少なくとも一方は、厚さ方向に積層される複数の層を有し、前記複数の層は、それぞれ繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、前記複数の層は、厚さ方向における外側ほど剛性が高い、
インペラ。
【請求項2】
前記シュラウドは、前記複数の層からなるシュラウド強化層を有し、前記シュラウド強化層は、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、厚さ方向における外側ほど剛性が高い、
請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記ハブは、前記複数の層からなるハブ強化層を有し、前記ハブ強化層は、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、厚さ方向における外側ほど剛性が高い、
請求項2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記複数の層は、3層以上設けられる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインペラ。
【請求項5】
前記複数の層は、異なる材料により構成される、
請求項1に記載のインペラ。
【請求項6】
前記ハブと前記シュラウドと前記複数のブレードは、個別に形成され、接着により一体に形成される、
請求項1に記載のインペラ。
【請求項7】
円筒形状をなすハブを形成する工程と、
周方向に間隔をあけて配置されて支持内筒と支持外筒との間に複数のブレードが配置されるブレード組立体を形成する工程と、
円筒形状をなすシュラウドを形成する工程と、
前記ハブとブレード組立体と前記シュラウドとを組み付ける工程と、
を有し、
前記ハブと前記シュラウドの少なくとも一方に、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって形成されると共に、外側ほど剛性が高い複数の層から構成される強化層を形成する、
インペラの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のインペラを有する回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インペラおよびインペラの製造方法並びに回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機械として、内部にインペラを収容した遠心圧縮機がある。遠心圧縮機は、インペラを回転させることで、流体に圧力エネルギーおよび速度エネルギーを与える。遠心圧縮機に適用されるインペラとして、ハブとシュラウドとの間に複数のブレードを配置したクローズドインペラがある。クローズドインペラは、繊維材料から構成された複合材料を用いることで剛性の向上が図られる。遠心圧縮機などに適用されるインペラとしては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/088451号
【特許文献2】特表2012-526230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のインペラにて、インペラ本体のハブ面に固定された繊維強化複合材からなる補強リングは、繊維の配向方向がインペラ本体の周方向である。そのため、インペラは、周方向に高い剛性を有するが、繊維の配向方向に直交するインペラの半径方向の剛性が低くなってしまう。そのため、インペラを径方向に増厚することが考えられるが、この場合、インペラが重量化して遠心力により径方向の剛性が厳しくなってしまう。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、径方向への変形を抑制するインペラおよびインペラの製造方法並びに回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示のインペラは、円筒形状をなすハブと、円筒形状をなして前記ハブの外側に配置されるシュラウドと、前記ハブと前記シュラウドとの間で周方向に間隔をあけて配置される複数のブレードと、を備え、前記ハブと前記シュラウドの少なくとも一方は、厚さ方向に積層される複数の層を有し、前記複数の層は、それぞれ繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、前記複数の層は、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。
【0007】
また、本開示のインペラの製造方法は、円筒形状をなすハブを形成する工程と、周方向に間隔をあけて配置されて支持内筒と支持外筒との間に複数のブレードが配置されるブレード組立体を形成する工程と、円筒形状をなすシュラウドを形成する工程と、前記ハブとブレード組立体と前記シュラウドとを組み付ける工程と、を有し、前記ハブと前記シュラウドの少なくとも一方に、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって形成されると共に、外側ほど剛性が高い複数の層から構成される強化層を形成する。
【0008】
また、本開示の回転機械は、前記インペラを有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のインペラおよびインペラの製造方法並びに回転機械によれば、径方向への変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のインペラが適用された遠心圧縮機を表す断面図である。
図2図2は、本実施形態のインペラを表す正面図である。
図3図3は、インペラの断面を表す図2のIII-III断面図である。
図4図4は、ハブおよびシュラウドに適用される材料を表す表である。
図5図5は、インペラの製造方法を説明するための説明図である。
図6図6は、従来のインペラにおける径方向応力を表す概略図である。
図7図7は、本実施形態のインペラにおける径方向応力を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<遠心圧縮機>
本実施形態では、回転機械として遠心圧縮機を適用して説明する。但し、回転機械は、遠心圧縮機に限らず、例えば、ターボチャージャ、無冷却過給機(いわゆる、MET過給機)、ターボ冷凍機などであってもよい。
【0013】
図1は、本実施形態のインペラが適用された遠心圧縮機を表す断面図である。なお、以下の説明にて、遠心圧縮機における回転中心の軸心を軸心Oとし、軸心Oの方向を軸方向A、軸心Oに対する遠心圧縮機の半径方向を径方向D、軸心Oを中心とする周方向を周方向Rとして説明する。
【0014】
図1に示すように、遠心圧縮機11は、タービン12と、コンプレッサ13と、回転軸14とを備え、これらがハウジング15の内部に収容されて構成される。
【0015】
ハウジング15は、中空形状をなす。ハウジング15は、タービンハウジング21と、コンプレッサハウジング22と、ベアリングハウジング23とを有する。タービンハウジング21とコンプレッサハウジング22との間にベアリングハウジング23が配置され、例えば、ボルトにより一体に締結される。タービンハウジング21は、タービン12が収容される。コンプレッサハウジング22は、コンプレッサ13が収容される。ベアリングハウジング23は、回転軸14が収容される。
【0016】
回転軸14は、軸心Oに沿って配置される。回転軸14は、一対のジャーナル軸受24,25によりコンプレッサハウジング22に回転自在に支持され、径方向Dの移動が規制される。また、回転軸14は、スラスト軸受26によりコンプレッサハウジング22に回転自在に支持され、軸方向Aへの移動が規制される。回転軸14は、ジャーナル軸受24,25およびスラスト軸受26によりハウジング15に対して軸心Oを中心として回転自在に支持される。
【0017】
回転軸14は、軸方向Aにおける一端部にタービン12を構成するタービンホイール31が固定される。タービンホイール31は、タービンハウジング21の内部に収容される。タービンホイール31は、ハブ32と、複数のブレード33と、シュラウド34とを有する。すなわち、ハブ32は、外周部に複数のブレード33が周方向Rに等間隔で配置され、複数のブレード33は、外側にシュラウド34が配置される。タービンホイール31は、ハブ32が回転軸14の一端部に固定される。
【0018】
回転軸14は、軸方向Aにおける他端部にコンプレッサ13を構成するコンプレッサホイール36が固定される。コンプレッサホイール36は、コンプレッサハウジング22の内部に収容される。コンプレッサホイール36は、ハブ37と、複数のブレード38と、シュラウド39とを有する。すなわち、ハブ37は、外周部に複数のブレード38が周方向Rに等間隔で配置され、複数のブレード38は、外側にシュラウド39が配置される。コンプレッサホイール36は、ハブ37が回転軸14の他端部に固定される。
【0019】
タービンハウジング21は、タービンホイール31に対して第1流体の入口通路41と第1流体の出口通路42が設けられる。タービンハウジング21は、入口通路41とタービンホイール31との間にタービンノズル43が設けられる。タービン12は、タービンノズル43により静圧膨張されて軸方向Aに流れる第1流体が複数のタービンホイール31に導かれることで、駆動回転する。
【0020】
コンプレッサハウジング22は、コンプレッサホイール36に対して吸入口44と吐出口45が設けられる。コンプレッサハウジング22は、コンプレッサホイール36と吐出口45との間にディフューザ46が設けられる。コンプレッサホイール36は、タービンホイール31の回転力が回転軸14を介して伝達されることで駆動回転する。コンプレッサホイール36が回転すると、第2流体を吸入して圧縮し、圧縮された第2流体がディフューザ46を通って外部に排出される。
【0021】
そのため、遠心圧縮機11は、第1流体によりタービン12が駆動し、タービン12の回転力が回転軸14に伝達されてコンプレッサ13が駆動し、コンプレッサ13が第2流体を圧縮する。
【0022】
すなわち、第1流体は、入口通路41を通り、タービンノズル43により静圧膨張され、軸方向Aに流れる第1流体が複数のブレード33に導かれることで、タービンホイール31が駆動回転する。タービンホイール31を駆動した第1流体は、出口通路42から外部に排出される。一方、タービンホイール31により回転軸14が回転すると、回転軸14と一体のコンプレッサホイール36が駆動回転する。すると、第2流体が吸入口44から吸入され、コンプレッサホイール36で加圧されて圧縮される。圧縮された第2流体は、ディフューザ46を通り、吐出口45から外部に排出される。
【0023】
<インペラ>
図2は、本実施形態のインペラを表す正面図、図3は、インペラの断面を表す図2のIII-III断面図である。
【0024】
図2および図3に示すように、本実施形態のインペラ50は、上述した遠心圧縮機11のコンプレッサホイール36に適用される。
【0025】
インペラ50は、ハブ51と、シュラウド52と、複数のブレード53とを備えるクローズドインペラである。但し、インペラ50は、オープンインペラであってもよい。
【0026】
インペラ50は、ハブ51とシュラウド52との間に、複数のブレード53が周方向Rに間隔(好ましくは、等間隔)を空けて配置されて構成される。複数のブレード53は、軸方向Aおよび径方向Dの一方側がハブ51に固定され、他方側がシュラウド52に固定される。インペラ50は、ハブ51とシュラウド52と複数のブレード53とに囲まれる複数のインペラ流路54が設けられる。インペラ流路54は、軸方向Aの一方側から径方向Dの外方側にかけて、略90度屈曲すると共に、軸心Oを中心とする螺旋形状をなすように配置される。
【0027】
ハブ51は、軸心Oを中心とした円筒形状および円板形状をなす。すなわち、ハブ51は、軸方向Aの一方(図3の上方)から他方(図3の下方)に向けて、径方向Dの外方に徐々に拡径する。ハブ51は、円筒部61と、円板部62と、強化層(ハブ強化層)63とを有する。
【0028】
円筒部61は、軸心Oの位置に軸方向Aに沿って貫通する円形の貫通孔61aが形成される。ハブ51は、円筒部61の貫通孔61aの内周面が回転軸(図1に示す回転軸14)の外周面に嵌まり込んだ状態で、回転軸に対して一体に固定される。なお、ハブ51は、円筒部61の貫通孔61aの内周面が回転軸の外周面に嵌まり込んだ状態で、回転軸に対して回転自在に支持されていてもよい。円板部62は、内周部が円筒部61における軸方向Aの中間位置に一体に固定される。円板部62は、内周部から外周部に向けて、径方向Dの外方で、且つ、軸方向Aの他方(図3の下方)に延出する中空円錐台形状をなす。円板部62は、外周面が凹状に湾曲した取付面62aとなる。円筒部61と円板部62は、例えば、樹脂の射出成形により形成される。
【0029】
強化層63は、円筒部61と円板部62との間に配置される。強化層63は、第1層63aと、第2層63bと、第3層63cとを有する。強化層63を構成する第1層63aと第2層63bと第3層63cは、ハブ51の厚さ方向に積層される。第1層63aと第2層63bと第3層63cは、それぞれ繊維部材が周方向に沿って連続して配置された複合材によって構成される。第1層63aと第2層63bと第3層63cは、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。すなわち、第1層63aの剛性より第2層63bの剛性が高く、第2層63bの剛性より第3層63cの剛性が高い。
【0030】
本実施形態では、円筒部61と円板部62との間に強化層63を配置したが、この構成に限定されるものではない。例えば、円板部62をなくし、円筒部61の外周部に強化層63を配置してもよい。また、第1層63aと第2層63bと第3層63cをハブ51の厚さ方向、ここでは、径方向Dに沿って積層したが、径方向Dに対して軸方向Aに所定の傾斜角度だけ傾斜する方向に沿って積層してもよい。また、第1層63aと第2層63bと第3層63cの厚さは、同じであっても、異なってもよく、適宜設定すればよい。さらに、強化層63を、3つの層である第1層63a、第2層63b、第3層63cから構成したが、2つの層でもよく、4つ以上の層であってもよい。
【0031】
シュラウド52は、軸心Oを中心とした円筒形状をなす。シュラウド52は、強化層(シュラウド強化層)64を有する。
【0032】
シュラウド52は、強化層64により構成される。強化層64は、第1層64aと、第2層64bと、第3層64cとを有する。強化層64を構成する第1層64aと第2層64bと第3層64cは、シュラウド52の厚さ方向に積層される。第1層64aと第2層64bと第3層64cは、それぞれ繊維部材が周方向に沿って連続して配置された複合材によって構成される。第1層64aと第2層64bと第3層64cは、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。すなわち、第1層64aの剛性より第2層64bの剛性が高く、第2層64bの剛性より第3層64cの剛性が高い。強化層64は、3つの層である第1層64a、第2層64b、第3層64cから構成したが、2つの層でもよく、4つ以上の層であってもよい。
【0033】
本実施形態では、シュラウド52を強化層64により構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、樹脂製の円筒部を設け、円筒部の外周部に強化層64を配置してもよい。また、第1層64aと第2層64bと第3層64cをシュラウド52の厚さ方向、ここでは、径方向Dに沿って積層したが、径方向Dに対して軸方向Aに所定の傾斜角度だけ傾斜する方向に沿って積層してもよい。また、第1層64aと第2層64bと第3層64cの厚さは、同じであっても、異なってもよく、適宜設定すればよい。さらに、強化層64を、3つの層である第1層64a、第2層64b、第3層64cから構成したが、2つの層でもよく、4つ以上の層であってもよい。
【0034】
シュラウド52は、ハブ51に対して、径方向Dの外方側に所定距離だけ離間して配置される。強化層64は、内周面が凸状に湾曲した取付面64dとなる。ハブ51における円板部62の取付面62aと、シュラウド52における強化層64の取付面64dとは、対向する。
【0035】
複数のブレード53は、ハブ51とシュラウド52とを接続する。複数のブレード53は、径方向Dの一方がハブ51における円板部62の取付面62aに固定され、径方向Dの他方がシュラウド52における強化層64の取付面64dに固定される。複数のブレード53は、軸方向Aの一方側から径方向Dの外方側に向かって湾曲するように延びる。複数のブレード53は、周方向Rに間隔をあけて配置される。複数のブレード53は、軸心Oを中心として径方向Dの外方に向かって放射状に配列される。ブレード53は、射出成形、切削加工などにより形成される。
【0036】
インペラ流路54は、ハブ51とシュラウド52との間で、複数のブレード53により周方向Rに複数区画されて形成される。インペラ流路54は、軸方向Aの一方側から他方側に向かうに伴って、径方向Dの内方側から外方側に向かうように湾曲しながら延びる。インペラ流路54は、径方向Dの内方側で、且つ、軸方向Aの一方側に開口する流入口54aを有する。また、インペラ流路54は、径方向Dの外方側で、且つ、軸方向Aの他方側に開口する流出口54bを有する。
【0037】
そのため、インペラ50は、回転時、流体F1が流入口54aからインペラ流路54に吸入されると、複数のブレード53により加圧されて圧縮される。圧縮された圧縮流体F2は、流出口54bから排出される。
【0038】
<強化層の具体例>
図4は、ハブおよびシュラウドに適用される材料を表す表である。ここで、弾性率E、せん断弾性係数G、ポアソン比v、引張強度Fにて、添字の1は、繊維方向、2は、繊維に直交する方向、3は、積層方向に対するものであり、tは、引張を表すものである。
【0039】
図3および図4に示すように、ハブ51およびシュラウド52における強化層63,64にて、第1層63a,64aと第2層63b,64bと第3層63c,64cは、それぞれ異なる材料により構成される。ハブ51の強化層63にて、例えば、第1層63aは、T300/EP#3631(繊維/樹脂)により形成され、第2層63bは、T800H/EP#3631(繊維/樹脂)により形成され、第3層63cは、M40J/EP#3631(繊維/樹脂)により形成される。また、シュラウド52の強化層64にて、例えば、第1層64aは、T300/EP#3631(繊維/樹脂)により形成され、第2層64bは、T800H/EP#3631(繊維/樹脂)により形成され、第3層64cは、M40J/EP#3631(繊維/樹脂)により形成される。
【0040】
第1層63a,64a(T300/EP#3631)と第2層63b,64b(T800H/EP#3631)と第3層63c,64c(M40J/EP#3631)は、剛性に対応する縦弾性係数E1が、130000Mpa、165000Mpa、212000Mpaである。そのため、強化層63,64は、ハブ51およびシュラウド52の厚さ方向(径方向D)の外方ほど剛性が高くなる。なお、第1層63a,64aと第2層63b,64bと第3層63c,64cにおける材料の組合せは、上述したものに限定されず、例えば、図4の表に基づいて適宜選択すればよいものである。
【0041】
また、T300とT800HとM40Jなどは、東レ株式会社のトレカ(登録商標)のポリアクリロニトリルを原料とする高性能炭素繊維である。但し、第1層63a,64aと第2層63b,64bと第3層63c,64cは、このような材料に限定されるものではなく、他の複合材を用いてもよい。
【0042】
なお、上述した実施形態では、ハブ51とシュラウド52の両方に強化層63,64を設けたが、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方に強化層63,64を設ければよい。
【0043】
<インペラの製造方法>
図5は、インペラの製造方法を説明するための説明図である。
【0044】
本実施形態のインペラの製造方法は、図5に示すように、円筒形状をなすハブ51を形成する工程と、周方向に間隔をあけて配置されて支持内筒71と支持外筒72との間に複数のブレード53が配置されるブレード組立体53Aを形成する工程と、円筒形状をなすシュラウド52を形成する工程と、ハブ51とブレード組立体53Aとシュラウド52とを組み付ける工程とを有し、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方に、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって形成されると共に、外側ほど剛性が高い複数の層から構成される強化層63,64を形成する。
【0045】
すなわち、ハブ51とシュラウド52と複数のブレード53とを個別に形成し、ハブ51とシュラウド52と複数のブレード53とを接着により一体に形成する。
【0046】
ハブ51は、例えば、円筒部61および円板部62が樹脂の射出成形により形成され、ハブ51は、円筒部61と円板部62との間に強化層63が配置され、例えば、接着により固定される。この場合、強化層63は、厚さ方向における外側ほど剛性が高い第1層63aと第2層63bと第3層63cとから構成される。
【0047】
シュラウド52は、強化層64として構成される。この場合、強化層64は、厚さ方向における外側ほど剛性が高い第1層64aと第2層64bと第3層64cとから構成される。
【0048】
複数のブレード53は、周方向に間隔をあけて配置される。周方向に間隔をあけて配置された複数のブレード53は、径方向Dの一方側が支持内筒71により支持され、径方向Dの他方側が支持外筒72により支持される。複数のブレード53が支持内筒71と支持外筒72により支持されることで、ブレード組立体53Aが形成される。
【0049】
支持内筒71は、ハブ51における円板部62の取付面62aと同材料で形成されることが好ましい。支持外筒72は、シュラウド52における強化層64の取付面64dと同材料で形成されることが好ましい。すなわち、支持内筒71は、ハブ51の円板部62と同材料で形成され、支持外筒72は、シュラウド52における強化層64の第1層64aと同材料で形成されることが好ましい。
【0050】
なお、ハブ51およびシュラウド52は、熱硬化樹脂を用いたフィラメントワイディングと樹脂含浸の併用や、パイプ成形と機械加工の併用などにより形成することが好ましい。ブレード53は、曲面を含む複雑構造のため、熱可塑性樹脂を用いた短繊維強化複合材の射出成形や、熱硬化性樹脂と短繊維マットを用いたSMC(シートモールドコンパウンド)による成形が適用可能である。
【0051】
ブレード組立体53Aの内側にハブ51が配置され、ブレード組立体53Aの外側にシュラウド52が配置される。ハブ51とブレード組立体53Aとシュラウド52とは、接着により互いに固定される。
【0052】
複合材は、繊維方向(インペラ50の周方向R)の引張強度は高いが、繊維と直交方向(インペラ50の径方向D)の引張強度が低い。図3に示すように、インペラ50が回転すると、遠心力(径方向応力)が作用する。インペラ50に遠心力が作用すると、複合材には周方向Rの引張応力と径方向Dの引張応力が生じる。
【0053】
例えば、従来のインペラのように、シュラウドが厚さ方向に1つの層の複合材からなるものであれば、径方向Dの引張応力は、複合材の径方向Dの厚さの中心付近で最大となるため、ここを起点として複合材が引き裂かれるように壊れてしまう。
【0054】
一方、本実施形態のインペラ50は、シュラウド52の強化層64が厚さ方向の外側ほど剛性が高い第1層64aと第2層64bと第3層64cとから構成される。すなわち、インペラ50は、複合材を径方向Dに分割し、且つ、内側を低剛性、外側を高剛性にする。外側の第3層64cは、高剛性であるため、インペラ50全体としての変形が抑制され、内側の第1層64aは、低剛性であるため、外側の第3層64cに押し付けられる。すると、分割した第1層64aと第2層64bと第3層64cの各境界で径方向Dの圧縮応力場が生じることとなり、径方向Dの引張応力が低減される。
【0055】
<インペラの径方向応力>
図6は、従来のインペラにおける径方向応力を表す概略図、図7は、本実施形態のインペラにおける径方向応力を表す概略図である。
【0056】
図6および図7は、従来のインペラ100と本実施形態のインペラ50について、FEM(有限要素法)解析を実施した結果である。ここで、従来のインペラ100は、繊維強化複合材で補強したハブ101と繊維強化複合材で補強したシュラウド102との間に複数のブレード103を配置したものである。一方、本実施形態のインペラ50は、厚さ方向における外側ほど剛性が高い強化層63を有するハブ51と厚さ方向における外側ほど剛性が高い強化層64を有するシュラウド52との間に複数のブレード53を配置したものである。
【0057】
なお、従来のインペラ100は、ブレード103に前縁スイープを設けているが、本実施形態のインペラ50は、ハブ51とブレード53との接合部での径方向D応力を低減するため、前縁スイープをなくしている。
【0058】
図6に示すように、従来のインペラ100は、強度的に最も厳しくなる前縁内側のハブ101とブレード103との接合部Pにて、径方向応力は、1413MPaである。一方、本実施形態のインペラ50は、強度的に最も厳しくなる前縁内側のハブ51とブレード53との接合部Pにて、径方向応力は、451MPaであり、径方向応力は、約1/3.1に低減された。また、本実施形態のインペラ50は、周速が遠心力の平方根に比例するため、周速は、従来のインペラ100の約1.8倍に向上する。
【0059】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係るインペラは、円筒形状をなすハブ51と、円筒形状をなしてハブ51の外側に配置されるシュラウド52と、ハブ51とシュラウド52との間で周方向に間隔をあけて配置される複数のブレード53とを備え、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方は、厚さ方向に積層される複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cを有し、複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cは、それぞれ繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cは、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。
【0060】
第1の態様に係るインペラによれば、インペラ50が回転すると、遠心力が作用するが、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方は、外側ほど剛性が高い複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cにより構成されている。すると、外側の第3層63c,64cは、高剛性であるため、インペラ50全体としての変形が抑制され、内側の第1層63a,64aは、低剛性であるため、外側の第3層64cに押し付けられ、分割した第1層63a,64aと第2層63b,64bと第3層63c,64cの各境界で径方向Dの圧縮応力場が生じることとなり、径方向Dの引張応力が低減される。そのため、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方は、遠心力による径方向応力が低減され、径方向Dへの変形を抑制することができる。
【0061】
第2の態様に係るインペラは、第1の態様に係るインペラであって、さらに、シュラウド52は、複数の層64a,64b,64cからなる強化層(シュラウド強化層)64を有し、強化層64は、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。これにより、インペラ50の回転により遠心力が発生するとき、分割した第1層64aと第2層64bと第3層64cの各境界で径方向Dの圧縮応力場が生じることとなり、径方向Dの引張応力が低減され、径方向Dへの変形を効果的に抑制することができる。
【0062】
第3の態様に係るインペラは、第2の態様に係るインペラであって、さらに、ハブ51は、複数の層63a,63b,63cからなる強化層(ハブ強化層)63を有し、強化層63は、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって構成され、厚さ方向における外側ほど剛性が高い。これにより、インペラ50の回転により遠心力が発生するとき、分割した第1層63aと第2層63bと第3層63cの各境界で径方向Dの圧縮応力場が生じることとなり、径方向Dの引張応力が低減され、径方向Dへの変形を効果的に抑制することができる。
【0063】
第4の態様に係るインペラは、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係るインペラであって、さらに、複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cは、3層以上設けられる。これにより、インペラ50の遠心力により作用する引張応力を効果的に低減することができる。
【0064】
第5の態様に係るインペラは、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係るインペラであって、さらに、複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cは、異なる材料により構成される。これにより、外側ほど剛性が高い複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cを容易に形成することができる。
【0065】
第6の態様に係るインペラは、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係るインペラであって、さらに、ハブ51とシュラウド52と複数のブレード53は、個別に形成され、接着により一体に形成される。これにより、外側ほど剛性が高い複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cを有するインペラ50を容易に形成することができる。
【0066】
第7の態様に係るインペラの製造方法は、円筒形状をなすハブ51を形成する工程と、周方向に間隔をあけて配置されて支持内筒71と支持外筒72との間に複数のブレード53が配置されるブレード組立体53Aを形成する工程と、円筒形状をなすシュラウド52を形成する工程と、ハブ51とブレード組立体53Aとシュラウド52とを組み付ける工程とを有し、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方に、繊維部材が周方向に沿って配置された複合材によって形成されると共に、外側ほど剛性が高い複数の層から構成される強化層63,64を形成する。
【0067】
第7の態様に係るインペラの製造方法によれば、ハブ51とシュラウド52の少なくとも一方に、外側ほど剛性が高い複数の層63a,63b,63c,64a,64b,64cを有するインペラ50を容易に製造することができる。
【0068】
第8の態様に係る回転機械は、インペラ50を有する。これにより、例えば、回転機械としての遠心圧縮機11におけるコンプレッサホイール36の変形を抑制して効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0069】
11 遠心圧縮機
12 タービン
13 コンプレッサ
14 回転軸
15 ハウジング
21 タービンハウジング
31 タービンホイール(インペラ)
32 ハブ
33 ブレード
34 シュラウド
36 コンプレッサホイール(インペラ)
37 ハブ
38 ブレード
39 シュラウド
50 インペラ
51 ハブ
52 シュラウド
53 ブレード
54 インペラ流路
61 円筒部
62 円板部
63 強化層(ハブ強化層)
63a 第1層
63b 第2層
63c 第3層
64 強化層(シュラウド強化層)
64a 第1層
64b 第2層
64c 第3層
A 軸方向
D 径方向
R 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7