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特開2024-24450航空機移送装置および方法並びに航空機移送装置の改造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024450
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】航空機移送装置および方法並びに航空機移送装置の改造方法
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/22 20240101AFI20240215BHJP
   B60P 3/11 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B64F1/22
B60P3/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127279
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山丈 政之
(57)【要約】
【課題】航空機移送装置および方法並びに航空機移送装置の改造方法において、航空機の移送作業における作業効率の向上を図る。
【解決手段】運転台を有して走行装置により走行可能な車両と、車両に設けられて航空機に連結可能な連結器と、遠隔操作により走行装置を駆動可能な操作装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転台を有して走行装置により走行可能な車両と、
前記車両に設けられて航空機に連結可能な連結器と、
遠隔操作により前記走行装置を駆動可能な操作装置と、
を備える航空機移送装置。
【請求項2】
前記操作装置は、前記車両に搭載された状態と前記車両に搭載されていない状態との両方の状態で、前記走行装置を駆動可能である、
請求項1に記載の航空機移送装置。
【請求項3】
前記操作装置は、前記車両に搭載されていない状態では、予め設定された制限速度までの範囲で前記走行装置を駆動可能であり、前記車両に搭載された状態では、前記制限速度を超えて前記走行装置を駆動可能である、
請求項2に記載の航空機移送装置。
【請求項4】
前記操作装置は、前記車両に搭載された状態で前記走行装置に対して無線または有線により接続される、
請求項2に記載の航空機移送装置。
【請求項5】
前記運転台に作業者が乗車したことを検出する乗車センサと、前記運転台に乗車した作業者を保護する安全装置が作動したことを検出する作動センサと、前記乗車センサが作業者を検出したときに前記作動センサが安全装置の作動を検出すると前記操作装置により前記走行装置を駆動可能とする操作制御装置と、を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の航空機移送装置。
【請求項6】
前記安全装置は、シートベルト装置である、
請求項5に記載の航空機移送装置。
【請求項7】
前記操作装置は、前記車両に対して着脱自在に設けられる、
請求項1に記載の航空機移送装置。
【請求項8】
前記運転台に作業者が乗車したことを検出する乗車センサと、前記操作装置が前記車両に取付けられたことを検出する着脱センサと、前記乗車センサが作業者を検出したときに前記着脱センサが前記操作装置を検出すると前記操作装置により前記走行装置を駆動可能とする操作制御装置と、を有する、
請求項7に記載の航空機移送装置。
【請求項9】
車両に連結器を介して航空機に連結する工程と、
作業者が前記車両から降車した状態で前記車両を遠隔操作により低速走行させて前記航空機を移送する工程と、
作業者が前記車両に乗車した状態で前記車両を高速走行させて前記航空機を移送する工程と、
を有する航空機移送方法。
【請求項10】
航空機に連結可能な連結器を有する車両の走行装置を操作する操作部材を使用不能とする工程と、
遠隔操作により前記走行装置を駆動可能な操作装置を前記走行装置に接続する工程と、
を有する航空機移送装置の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機移送装置および方法並びに航空機移送装置の改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機は、空港の駐機場に置かれており、駐機場にある航空機をターミナルに移動させ、ターミナルから滑走路へ移動させて使用する。このとき、航空機は、原則として自身で後進することが認められていないため、トーイングカーを使って移動する。また、空港において、ターミナルと整備場との間の航空機の移動なども、トーイングカーを使って行う。このような従来のトーイングカーとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された航空機牽引車は、管制塔からの無線信号に基づいて航空機牽引車を遠隔操作することで、航空機牽引車に連結された航空機を移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-152295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トーイングカーを使って航空機を移動する場合、まず、トーイングカーに連結器を介して航空機を連結する。そして、トーイングカーの前進および後退、並びにトーイングカーの操舵を繰り返しながら、航空機の位置や向きを調整し、所定の位置で機首が所定の方向を向くように停止させる。作業者がトーイングカーに乗って航空機を移動させる場合、運転席にいる作業者は、航空機の車輪などが見えにくいことから、目視確認が必要となり、作業に長時間を要してしまうという課題がある。また、特許文献1のように、管制塔から航空機牽引車を遠隔操作する場合であっても、同様の課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、航空機の移送作業における作業効率の向上を図る航空機移送装置および方法並びに航空機移送装置の改造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の航空機移送装置は、運転台を有して走行装置により走行可能な車両と、前記車両に設けられて航空機に連結可能な連結器と、遠隔操作により前記走行装置を駆動可能な操作装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の航空機移送方法は、車両に連結器を介して航空機に連結する工程と、作業者が前記車両から降車した状態で前記車両を遠隔操作により低速走行させて前記航空機を移送する工程と、作業者が前記車両に乗車した状態で前記車両を高速走行させて前記航空機を移送する工程と、を有する。
【0008】
また、本開示の航空機移送装置の改造方法は、航空機に連結可能な連結器を有する車両の走行装置を操作する操作部材を使用不能とする工程と、遠隔操作により前記走行装置を駆動可能な操作装置を前記走行装置に接続する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の航空機移送装置および方法並びに航空機移送装置の改造方法によれば、航空機の移送作業における作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の航空機移送装置を表す側面図である。
図2図2は、航空機移送装置における操作装置を表す斜視概略図である。
図3図3は、第1実施形態の航空機移送装置の制御ブロックを表す概略構成図である。
図4図4は、降車した作業者がトーイングカーを操作する状態を表す説明図である。
図5図5は、乗車した作業者がトーイングカーを操作する状態を表す説明図である。
図6図6は、第2実施形態の航空機移送装置の制御ブロックを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<航空機移送装置>
図1は、第1実施形態の航空機移送装置を表す側面図である。
【0013】
図1に示すように、航空機移送装置10は、トーイングカー(車両)11と、操作装置12とを備える。
【0014】
トーイングカー11は、航空機100(図4参照)を連結して牽引可能である。トーイングカー11は、車両本体21と、走行装置22と、複数(本実施形態では、4個)の車輪23と、運転席(運転台)24と、連結器25と、通信装置26とを有する。
【0015】
車両本体21は、進行方向の後部に走行装置22が搭載される。車両本体21は、前部および後部に車輪23が装着される。走行装置22は、図示しないが、少なくとも駆動装置と操舵装置を有するが、制動装置などを有していてもよい。駆動装置は、複数の車輪23のうちの少なくとも2個を駆動回転可能である。操舵装置は、前部の車輪23を操舵可能である。
【0016】
そのため、トーイングカー11は、走行装置22を駆動することで、前進と後退と停止が可能であると共に、所定の方向に操舵することができる。
【0017】
車両本体21は、進行方向の前部に運転席24が設けられる。作業者は、運転席24に着座することでトーイングカー11に乗車して運転可能となる。運転席24は、安全装置として、運転席24に作業者を拘束するシートベルト装置(図示略)が設けられる。なお、作業者がトーイングカー11に乗車して運転する場所は、運転席24に限るものではなく、作業者が立った状態で拘束される運転台であってもよい。車両本体21は、進行方向の後部に連結器25が設けられる。連結器25は、航空機100(図4参照)に連結可能である。通信装置26は、車両本体21に搭載され、必要に応じて操作装置12と無線での通信が可能である。
【0018】
操作装置12は、作業者が操作可能である。操作装置12は、トーイングカー11とは別体に設けられる。操作装置12は、後述する通信装置53(図3参照)を有し、通信装置53によりトーイングカー11の通信装置26と双方向通信が可能である。そのため、作業者は、操作装置12を操作することで、遠隔操作によりトーイングカー11の走行装置22を駆動し、トーイングカー11を走行させることができる。
【0019】
<操作装置>
図2は、航空機移送装置における操作装置を表す斜視概略図である。
【0020】
操作装置12は、遠隔操作によりトーイングカー11の走行装置22を駆動可能である。操作装置12は、例えば、図2に示すように、作業者が把持可能である。この場合、作業者は、操作装置12を首からぶら下げて使用することが好ましい。操作装置12は、メインスイッチ31を有する。メインスイッチ31をオン(ON)することで、操作装置12を使用可能となる。操作装置12は、例えば、ジョイステックレバー32を操作することで、トーイングカー11の前進動作、停止動作、後退動作が可能である。操作装置12は、例えば、ジョイステックレバー33を操作することで、トーイングカー11の走行方向を変更可能である。なお、操作装置12は、走行装置22を駆動可能であればよく、このような構造に限定されるものではない。
【0021】
<航空機移送装置の制御ブロック>
図3は、第1実施形態の航空機移送装置の制御ブロックを表す概略構成図である。
【0022】
図1および図3に示すように、トーイングカー11は、シートセンサ41と、シートベルトセンサ42と、操作制御装置43と、走行制御装置44とを有する。
【0023】
シートセンサ41は、作業者がトーイングカー11に乗車したことを検出する乗車センサとして機能する。すなわち、作業者が運転席24に座ると、作業者の位置や重量などを検出することで、シートセンサ41がオフ(OFF)からオン(ON)に切り替わる。シートベルトセンサ42は、運転席24に乗車した作業者を保護する安全装置が作動したことを検出する作動センサとして機能する。すなわち、安全装置はシートベルト装置であり、作業者が運転席24に座り、シートベルトを装着(作動)すると、シートベルトのロック装置などを検出することで、シートベルトセンサ42がオフ(OFF)からオン(ON)に切り替わる。
【0024】
操作制御装置43は、シートセンサ41とシートベルトセンサ42が接続される。操作制御装置43は、シートセンサ41の検出結果と、シートベルトセンサ42の検出結果が入力される。操作制御装置43は、シートセンサ41の検出結果とシートベルトセンサ42の検出結果に基づいて操作装置12の操作状態を変更する。
【0025】
操作制御装置43は、通信装置26に接続される。通信装置26は、操作装置12と通信可能である。操作制御装置43は、シートセンサ41がオン(ON)に切り替わって作業者の乗車を検出したとき、シートベルトセンサ42がオン(ON)に切り替わって作業者の安全が確認されると、通信装置26を介して操作装置12に使用許可信号を出力する。操作装置12は、使用許可信号が入力されると、セキュリティロックが解除されて使用可能となり、走行装置22を駆動することができる。
【0026】
一方、操作制御装置43は、シートセンサ41がオン(ON)に切り替わって作業者の乗車を検出しても、作業者がシートベルトを装着せず、シートベルトセンサ42がオフ(OFF)のままで作業者の安全が確認されないと、通信装置26を介して操作装置12に使用許可信号を出力しない。操作装置12は、使用許可信号が入力されないと、セキュリティロックが解除されずに使用不能となり、走行装置22を駆動することができない。
【0027】
走行制御装置44は、走行装置22を駆動制御可能である。走行制御装置44は、操作装置12からの操作制御信号を受けて走行装置22を駆動制御する。
【0028】
図2および図3に示すように、操作装置12は、操作部51と、操作部制御装置52と、通信装置53とを有する。操作部51は、作業者が直接操作可能なメインスイッチ31、ジョイステックレバー32,33などにより構成され、操作信号(操作量)を出力する。操作部制御装置52は、操作部51に接続され、操作部51の操作信号に応じた走行装置22の制御量を出力する。通信装置53は、操作部制御装置52に接続され、走行装置22の制御量をトーイングカー11の通信装置26を介して走行制御装置44に出力する。
【0029】
図1および図3に示すように、本実施形態の航空機移送装置10は、トーイングカー11に操作装置12が装備されていない。操作装置12は、トーイングカー11に搭載された状態と、トーイングカー11に搭載されていない状態との両方の状態で、走行装置22を駆動可能である。すなわち、作業者は、操作装置12を持ち、トーイングカー11の運転席24に乗車した状態で、操作装置12を操作することで走行装置22を駆動可能である。また、作業者は、操作装置12を持ち、トーイングカー11の運転席24から降車してトーイングカー11から離れた場所で、操作装置12を操作することで走行装置22を駆動可能である。
【0030】
但し、作業者は、トーイングカー11に乗車した状態で操作装置12を操作するとき、作業者の安全上の制限が設けられている。すなわち、作業者は、操作装置12を持ってトーイングカー11の運転席24に座ったとき、トーイングカー11に対して拘束されていないとき、トーイングカー11の走行時における安全性が不十分となる。つまり、前述したように、作業者が操作装置12を持ってトーイングカー11の運転席24に座ったとき、トーイングカー11側の操作制御装置43は、シートセンサ41のオン(ON)信号が入力したとき、シートベルトセンサ42のオン(ON)信号が入力しないと、使用許可信号を出力しない。そのため、この状態で、操作装置12側の操作部制御装置52は、使用許可信号が入力しないことから、操作装置12が使用不能となり、作業者は、操作装置12による走行装置22の駆動が禁止される。
【0031】
一方、トーイングカー11側の操作制御装置43は、シートセンサ41のオン(ON)信号が入力し、且つ、シートベルトセンサ42のオン(ON)信号が入力すると、トーイングカー11に乗車した作業者の安全性が確保されたと判断する。すると、トーイングカー11側の操作制御装置43は、使用許可信号を出力する。そのため、この状態で、操作装置12側の操作部制御装置52は、使用許可信号が入力したことから、操作装置12が使用可能となり、作業者は、操作装置12による走行装置22の駆動が許可される。
【0032】
なお、作業者は、操作装置12を持ち、トーイングカー11から降車し、トーイングカー11から離れた場所で、操作装置12により走行装置22を駆動するとき、上述した操作装置12の使用制限は設けられていない。
【0033】
また、作業者は、操作装置12を持ち、トーイングカー11から降車し、トーイングカー11から離れた場所で、操作装置12により走行装置22を駆動するとき、トーイングカー11の走行速度に制限が設けられる。すなわち、作業者がトーイングカー11から離れた場所で走行装置22を駆動する作業は、連結器25の連結作業や航空機100の位置や向きの調整作業などが主な作業となり、高速走行が不要になる。そのため、このとき、操作装置12による走行装置22の駆動は、予め設定された制限速度(例えば、10km/h)までの範囲でのトーイングカー11の走行に制限される。一方、作業者がトーイングカー11に乗車時の走行装置22を駆動する作業は、航空機100の移送作業などが主な作業となり、高速走行が必要になる。そのため、このとき、操作装置12による走行装置22の駆動は、制限速度を超えてのトーイングカー11の走行が可能になる。
【0034】
なお、トーイングカー11と操作装置12との間での双方向通信は、基本的に通信装置26,53による無線通信である。但し、作業者が操作装置12を持ってトーイングカー11の運転席24に座ったとき、トーイングカー11と操作装置12とを図示しない有線装置により接続し、有線装置による双方向通信としてもよい。
【0035】
また、操作制御装置43と走行制御装置44と操作部制御装置52は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、トーイングカー11に操作制御装置43を設け、操作装置12に操作部制御装置52を設けたが、操作部制御装置は、少なくともいずれか一方に設ければよいものである。
【0036】
<航空機移送装置の作動>
図4は、降車した作業者がトーイングカーを操作する状態を表す説明図、図5は、乗車した作業者がトーイングカーを操作する状態を表す説明図である。
【0037】
本実施形態の航空機移送方法は、トーイングカー11に連結器25を介して航空機100に連結する工程と、作業者がトーイングカー11から降車した状態でトーイングカー11を遠隔操作により低速走行させて航空機100を移送する工程と、作業者がトーイングカー11に乗車した状態でトーイングカー11を高速走行させて航空機100を移送する工程とを有する。
【0038】
すなわち、図4に示すように、航空機100は、胴体101に対して前部に左右一対の主翼102が設けられ、後部に左右一対の水平尾翼103が設けられると共に、垂直尾翼104が設けられて構成される。そして、航空機100は、例えば、各主翼102の下部に航空機エンジン105が取付けられている。但し、航空機エンジン105の装着位置は、主翼102の下部に限らず、胴体101に取付けられているものもある。また、航空機100は、前部に前脚106が設けられ、後部に左右一対の主脚107が設けられる。
【0039】
例えば、航空機100を移送するとき、トーイングカー11の連結器25を航空機100の前脚106に連結する。このとき、作業者は、トーイングカー11から降車し、トーイングカー11から離れた場所で、操作装置12を操作する。そして、作業者は、操作装置12を操作することで、トーイングカー11を移動し、連結器25の先端部と航空機100の前脚106との位置を調整した後、連結器25を航空機100の前脚106に連結する。その後、作業者は、操作装置12を操作することで、トーイングカー11により航空機100を牽引し、航空機100の位置や向きを調整する。このとき、トーイングカー11は、制限速度以下の低速走行となる。
【0040】
その後、航空機100に対して所定の作業が完了すると、航空機100をターミナルや駐機場などに移送する。このとき、作業者は、トーイングカー11に乗車した状態で、操作装置12を操作する。作業者は、制限速度を超えた速度でトーイングカー11を高速走行させて航空機100を移送する。
【0041】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の航空機移送装置の制御ブロックを表す概略構成図である。なお、第2実施形態の基本的な構成は、上述した第1実施形態と同様であり、図1を用いて説明し、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図1および図6に示すように、航空機移送装置10Aは、トーイングカー(車両)11Aと、操作装置12とを備える。
【0043】
トーイングカー11Aは、運転席24の前方に取付台27が設けられる。操作装置12は、取付台27に対して着脱自在に設けられる。例えば、取付台27は、位置決め部材と固定部材が設けられる。操作装置12は、取付台27に対して位置決め部材により位置決めされ、固定部材により固定可能となる。
【0044】
トーイングカー11Aは、シートセンサ41と、着脱センサ45と、操作制御装置43とを有する。
【0045】
シートセンサ41は、作業者がトーイングカー11Aに乗車したことを検出する乗車センサとして機能する。すなわち、作業者が運転席24に座ると、作業者の位置や重量などを検出することで、シートセンサ41がオフ(OFF)からオン(ON)に切り替わる。着脱センサ45は、操作装置12が取付台27に固定されたことを検出する。操作装置12が取付台27に固定されると、作業者は、操作装置12を持って操作することとなり、トーイングカー11Aにつかまった状態となる。そのため、着脱センサ45は、運転席24に乗車した作業者を保護する安全装置が作動したことを検出する作動センサとして機能するとも言える。すなわち、安全装置は、取付台27に固定された操作装置12であり、作業者が運転席24に座り、操作装置12を取付台27に固定すると、操作装置12や固定装置などを検出することで、着脱センサ45がオフ(OFF)からオン(ON)に切り替わる。
【0046】
操作制御装置43は、シートセンサ41と着脱センサ45が接続される。操作制御装置43は、シートセンサ41の検出結果と、着脱センサ45の検出結果が入力される。操作制御装置43は、シートセンサ41の検出結果と着脱センサ45の検出結果に基づいて操作装置12の操作状態を変更する。
【0047】
操作制御装置43は、シートセンサ41がオン(ON)に切り替わって作業者の乗車を検出したとき、着脱センサ45がオン(ON)に切り替わって作業者の安全が確認されると、操作装置12に使用許可信号を出力する。操作装置12は、使用許可信号が入力されると、セキュリティロックが解除されて使用可能となり、走行装置22を駆動することができる。
【0048】
一方、操作制御装置43は、シートセンサ41がオン(ON)に切り替わって作業者の乗車を検出しても、作業者が着脱センサ45を取付台27に固定せず、着脱センサ45がオフ(OFF)のままで作業者の安全が確認されないと、操作装置12に使用許可信号を出力しない。操作装置12は、使用許可信号が入力されないと、セキュリティロックが解除されずに使用不能となり、走行装置22を駆動することができない。
【0049】
すなわち、作業者は、トーイングカー11Aに乗車した状態で操作装置12を操作するとき、作業者の安全上の制限が設けられている。すなわち、作業者は、操作装置12を持ってトーイングカー11Aの運転席24に座ったとき、トーイングカー11Aに対して拘束されていないとき、具体的に、トーイングカー11Aの一部(ここでは、操作装置12)につかまっていないとき、トーイングカー11Aの走行時における安全性が不十分となる。つまり、作業者が操作装置12を持ってトーイングカー11Aの運転席24に座ったとき、トーイングカー11Aに操作装置12が固定されていないと、操作装置12が使用不能となり、作業者は、操作装置12による走行装置22の駆動が禁止される。
【0050】
一方、作業者が操作装置12を持ってトーイングカー11Aの運転席24に座ったとき、トーイングカー11Aに操作装置12が固定されていると、操作装置12が使用可能となり、作業者は、操作装置12による走行装置22の駆動が許可される。
【0051】
なお、上述の各実施形態にて、航空機移送装置10は、新規に製造されたものとして説明したが、既存の航空機移送装置、つまり、トーイングカーを改造して製造することができる。既存のトーイングカーは、図1に示すように、本実施形態のトーイングカー11,11Aにおける車両本体21と、走行装置22と、複数の車輪23と、運転席24と、連結器25をすでに備えている。また、既存のトーイングカーは、走行装置22を操作する操作部材として、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルなどが設けられている。
【0052】
そのため、本実施形態の航空機移送装置の改造方法は、航空機100に連結可能な連結器25を有するトーイングカーの走行装置22を操作する操作部材を使用不能とする工程と、遠隔操作により走行装置22を駆動可能な操作装置12を走行装置22に接続する工程とを有する。
【0053】
すなわち、車両本体21と走行装置22と複数の車輪23と運転席24と連結器25を備えた既存のトーイングカーに対して、まず、走行装置22を操作するハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルなどの操作部材を使用不能とする。使用不能とは、走行装置22と操作部材との機械的な連結や制御信号の送受信を切断するだけでもよく、車両本体21から操作部材を撤去してもよい。次に、既存のトーイングカーに対して、走行装置22に操作装置12を接続する。この場合、操作装置12を付加するだけどなく、既存のトーイングカーに操作制御装置43や通信装置26を付加する。このような改造により本実施形態の航空機移送装置10を製造することができる。
【0054】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る航空機移送装置は、運転席(運転台)24を有して走行装置22により走行可能なトーイングカー(車両)11,11Aと、トーイングカー11,11Aに設けられて航空機100に連結可能な連結器25と、遠隔操作により走行装置22を駆動可能な操作装置12とを備える。
【0055】
第1の態様に係る航空機移送装置によれば、トーイングカー11,11Aの連結器25を航空機100に連結する作業や航空機100の位置や向きを調整する作業に対して、作業者は、トーイングカー11,11Aから降車した状態で操作装置12を操作することができ、目視確認が容易となって作業時間が短縮される。また、トーイングカー11,11Aにより航空機100を移送する作業に対して、作業者は、トーイングカー11,11Aに乗車した状態で操作装置12を操作することができる。その結果、航空機100の移送作業における作業効率の向上を図ることができる。
【0056】
第2の態様に係る航空機移送装置は、第1の態様に係る航空機移送装置であって、さらに、操作装置12は、トーイングカー11,11Aに搭載された状態とトーイングカー11,11Aに搭載されていない状態との両方の状態で、走行装置22を駆動可能である。これにより、操作装置12の共通化を図ることができ、装置の簡素化および低コスト化を図ることができる。
【0057】
第3の態様に係る航空機移送装置は、第1の態様または第2の態様に係る航空機移送装置であって、さらに、操作装置12は、トーイングカー11,11Aに搭載されていない状態では、予め設定された制限速度までの範囲で走行装置22を駆動可能であり、トーイングカー11,11Aに搭載された状態では、制限速度を超えて走行装置22を駆動可能である。これにより、トーイングカー11,11Aの連結器25を航空機100に連結する作業や航空機100の位置や向きを調整する作業に対して、トーイングカー11,11Aを低速走行させることで、安全性の向上を図ることができ、トーイングカー11,11Aにより航空機100を移送する作業に対して、トーイングカー11,11Aを高速走行させることで、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
第4の態様に係る航空機移送装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る航空機移送装置であって、さらに、操作装置12は、トーイングカー11,11Aに搭載された状態で走行装置22に対して無線または有線により接続される。これにより、作業者がトーイングカー11,11Aに乗車して航空機100を移送するとき、操作装置12と走行装置22とを有線接続することで、通信を安定させて走行の安全性を確保することができる。
【0059】
第5の態様に係る航空機移送装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る航空機移送装置であって、さらに、運転席24に作業者が乗車したことを検出するシートセンサ(乗車センサ)41と、運転席24に乗車した作業者を保護する安全装置が作動したことを検出するシートベルトセンサ(作動センサ)42と、シートセンサ41が作業者を検出したときにシートベルトセンサ42が安全装置の作動を検出すると操作装置12により走行装置22を駆動可能とする操作制御装置43とを有する。これにより、作業者がトーイングカー11に乗車して走行するときの作業者の安全性を確保することができる。
【0060】
第6の態様に係る航空機移送装置は、第5の態様に係る航空機移送装置であって、さらに、安全装置は、シートベルト装置である。これにより、既存の設備を用いることで、コストの増加を抑制することができる。
【0061】
第7の態様に係る航空機移送装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る航空機移送装置であって、さらに、操作装置12は、トーイングカー11Aに対して着脱自在に設けられる。これにより、作業者がトーイングカー11Aに乗車して走行するとき、作業者は、トーイングカー11Aに固定された操作装置12を把持することができ、作業者の安全性を確保することができる。
【0062】
第8の態様に係る航空機移送装置は、第7の態様に係る航空機移送装置であって、さらに、運転席24に作業者が乗車したことを検出するシートセンサ(乗車センサ)41と、操作装置12がトーイングカー11Aに取付けられたことを検出する着脱センサ(作動センサ)45と、シートセンサ41が作業者を検出したときに着脱センサ45が操作装置12を検出すると操作装置12により走行装置22を駆動可能とする操作制御装置43とを有する。これにより、作業者がトーイングカー11Aに乗車して走行するときの作業者の安全性を確保することができる。
【0063】
第9の態様に係る航空機移送方法は、トーイングカー(車両)11,11Aに連結器25を介して航空機100に連結する工程と、作業者がトーイングカー11,11Aから降車した状態でトーイングカー11,11Aを遠隔操作により低速走行させて航空機100を移送する工程と、作業者がトーイングカー11,11Aに乗車した状態でトーイングカー11,11Aを高速走行させて航空機100を移送する工程とを有する。これにより、トーイングカー11,11Aの連結器25を航空機100に連結する作業や航空機100の位置や向きを調整する作業に対して、作業者は、トーイングカー11,11Aから降車した状態で操作装置12を操作することができ、目視確認が容易となって作業時間が短縮される。また、トーイングカー11,11Aにより航空機100を移送する作業に対して、作業者は、トーイングカー11,11Aに乗車した状態で操作装置12を操作することができる。その結果、航空機100の移送作業における作業効率の向上を図ることができる。
【0064】
第10の態様に係る航空機移送装置の改造方法は、航空機100に連結可能な連結器を有するトーイングカーの走行装置を操作する操作部材を使用不能とする工程と、遠隔操作により走行装置を駆動可能な操作装置を走行装置に接続する工程とを有する。これにより、既存のトーイングカーを操作装置12により遠隔操作可能なトーイングカー11,11Aに容易に改造することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、乗車センサとしてシートセンサ41を適用したが、この構成に限定されるものではない。乗車センサとして、運転席24に座った作業者を検出する位置検出センサであってもよい。また、安全装置として、シートベルト装置を適用したが、この構成に限定されるものではない。また、作動センサとして、シートセンサ41や着脱センサ45を適用したが、この構成に限定されるものではない。
【0066】
また、上述した実施形態にて、トーイングカー11,11Aは、車両本体21と、走行装置22と、車輪23と、運転席24と、連結器25と、通信装置26とを有するものとしたが、これらの構造や取付位置などは、実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
10,10A 航空機移送装置
11,11A トーイングカー(車両)
12 操作装置
21 車両本体
22 走行装置
23 車輪
24 運転席(運転台)
25 連結器
26 通信装置
27 取付台
31 メインスイッチ
32,33 ジョイステックレバー
41 シートセンサ(乗車センサ)
42 シートベルトセンサ(作動センサ)
43 操作制御装置
44 走行制御装置
45 着脱センサ(作動センサ)
51 操作部
52 操作部制御装置
53 通信装置
100 航空機
図1
図2
図3
図4
図5
図6