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特開2024-24455シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024455
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/34 20060101AFI20240215BHJP
   B60R 22/405 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B60R22/34 119
B60R22/405
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127287
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏一
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018GA00
3D018HA02
3D018HB03
3D018HB05
3D018HC01
3D018HC04
3D018HD04
3D018HD06
3D018HE01
3D018HE04
(57)【要約】
【課題】エンドロック防止構造の動作信頼性を向上できるシートベルトリトラクタを提供する。
【解決手段】シートベルトリトラクタ3は、作動位置に遷移するときシートベルト4の引き出しを規制するフライホイール36と、基端部32Aがロックギア35の回転中心に回動可能に設置され、フライホイール36の作動位置への遷移を規制する規制位置と、非規制位置との間を回動可能なアーム32と、リテーナ14の第1凹部14Aの底面14Dに設置され、回転中心である軸受け部14C周りに歯車を有する第1ギア33と、アーム32の先端部32Bにて第1ギア33と噛合って設置される第2ギア34と、を備える。アーム32は、ロックギア35がシートベルト4の引き出し方向に回転するときに非規制位置に遷移し、ロックギア35がシートベルト4の巻き取り方向に回転するときに規制位置に遷移する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動位置に遷移するときウェビングの引き出しを規制するフライホイールと、
基端部がロックギアの回転中心に回動可能に設置され、前記フライホイールの前記作動位置への遷移を規制する規制位置と、非規制位置との間を回動可能なアームと、
リテーナの前記ロックギアとの対向面に設置され、前記回転中心周りに歯車を有する第1ギアと、
前記アームの先端部にて前記第1ギアと噛合って設置される第2ギアと、
を備え、
前記アームは、前記ロックギアが前記ウェビングの引き出し方向に回転するときに前記非規制位置に遷移し、前記ロックギアが前記ウェビングの巻き取り方向に回転するときに前記規制位置に遷移する、
シートベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記規制位置にて前記フライホイールの前記作動位置への遷移を規制する遷移規制部が、前記アーム及び前記フライホイールの接触位置の少なくとも一方に設けられる、
請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項3】
前記非規制位置にて前記アームの前記規制位置から離間する方向への回動を規制する回動規制部を備える、
請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記ロックギアにおいて前記アームが設置される側の主面と、前記アームの前記先端部との距離を一定に保持する距離保持部を備える、
請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項5】
乗員を拘束するウェビングと、
前記ウェビングを引き出し可能に巻き取るとともに、緊急時に作動して前記ウェビングの引き出しを阻止する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシートベルトリトラクタと、
前記シートベルトリトラクタから引き出された前記ウェビングに摺動可能に支持されるタングと、
車体またはシートに設けられ、前記タングが離脱可能に係止されるバックルと、
を備えるシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルトリトラクタにはウェビングセンサが搭載され、センサが検出するベルトの急引き出し加速度に基づき、フライホイールがロックの引き金となりシートベルトの伸びだしをロックさせる機能を備える。
【0003】
このロック機構では、シートベルトを急巻き取りした際に、シャフトが巻き取り完了付近で急減速すると、フライホイールが動作してしまうことが生じ得る。この場合、シャフトはベルト引き出し方向に回転できなくなるので、シートベルトが引き出せない、所謂「エンドロック状態」となる。
【0004】
特許文献1には、エンドロック状態を防止する構成として、ウェビングセンサの慣性マスである回転体をロック起動方向への変位を規制可能な当接位置とロック起動方向への変位を許容する位置との間で移動可能な部材を有する構成が記載されている。この構成では、当該部材がベルト巻き取り方向のシャフト回転で摩擦により慣性マスを非ロック位置に移動させて、ベルトの巻き取り停止の反動による慣性マスのロック起動方向への変位を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4914201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1などに記載される従来のエンドロック状態防止構造では、慣性マスの変位規制/解除を行う部材の変位に摩擦を使用しており、摩擦による抵抗が変動すると機構の動作信頼性に影響が出るおそれがある。
【0007】
本開示は、エンドロック防止構造の動作信頼性を向上できるシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の一観点に係るシートベルトリトラクタは、作動位置に遷移するときウェビングの引き出しを規制するフライホイールと、基端部がロックギアの回転中心に回動可能に設置され、前記フライホイールの前記作動位置への遷移を規制する規制位置と、非規制位置との間を回動可能なアームと、リテーナの前記ロックギアとの対向面に設置され、前記回転中心周りに歯車を有する第1ギアと、前記アームの先端部にて前記第1ギアと噛合って設置される第2ギアと、を備え、前記アームは、前記ロックギアが前記ウェビングの引き出し方向に回転するときに前記非規制位置に遷移し、前記ロックギアが前記ウェビングの巻き取り方向に回転するときに前記規制位置に遷移する。
【0009】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係るシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、前記ウェビングを引き出し可能に巻き取るとともに、緊急時に作動して前記ウェビングの引き出しを阻止する、上記のシートベルトリトラクタと、前記シートベルトリトラクタから引き出された前記ウェビングに摺動可能に支持されるタングと、車体またはシートに設けられ、前記タングが離脱可能に係止されるバックルと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、エンドロック防止構造の動作信頼性を向上できるシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るシートベルトリトラクタが適用されるシートベルト装置の構成の一例を示す図
図2】実施形態に係るシートベルトリトラクタの分解斜視図
図3図2中のリテーナと、アームと、第1ギアの構成をX負方向側から視た斜視図
図4】実施形態に係るロックギアと、アームと、第2ギアの構成を示す分解斜視図
図5】アームを突起側から視た斜視図
図6】シートベルトリトラクタのベルト引き出し方向回転時の状態を示すX負方向から視た断面図
図7図6の状態における実施形態に係るロックギアと、アームと、第2ギアの位置関係を示す斜視図
図8】ウェビングセンサの作動状態を示す図
図9】ビークルセンサの作動状態を示す図
図10】シートベルトリトラクタのベルト巻き取り方向回転時の状態を示すX負方向から視た断面図
図11図10の状態における実施形態に係るロックギアと、アームと、第2ギアの位置関係を示す斜視図
図12】変形例に係るロックギアと、アームと、第2ギアの構成を示す分解斜視図
図13】シートベルトリトラクタのベルト引き出し方向回転時における変形例に係るロックギアと、アームと、第2ギアの位置関係を示す斜視図
図14】シートベルトリトラクタのベルト巻き取り方向回転時における変形例に係るロックギアと、アームと、第2ギアの位置関係を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
なお、以下の説明において、図2以降のシートベルトリトラクタ3に関する各図面で示すX方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向はスプール12の回転軸の軸心CAの延在方向である。Y方向、Z方向は、それぞれスプール12の回転軸からの遠心方向であり、典型的にはZ方向は上下方向である。また、シートベルトリトラクタ3の回転軸方向のうち、リテーナ14側をX正方向側とし、その反対側をX負方向側とする。
【0014】
また、図4以降のロックギア35と、アーム32と、ギア33、34の位置関係を示す図では、ロックギア35の円形状の径方向を「径方向R」とし、ロックギア35の円形状の周方向を「周方向CD」とする。径方向Rのうちスプール12の回転軸側を径方向内側、回転軸からの遠心方向を径方向外側とも表記する。
【0015】
[実施形態]
まず図1を参照して、実施形態に係るシートベルトリトラクタ3が適用されるシートベルト装置1の構成の一例を説明する。
【0016】
シートベルト装置1は、車両に搭載された車載システムの一例である。シートベルト装置1は、例えば、シートベルト4と、シートベルトリトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8とを備える。
【0017】
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員9を拘束するウェビングの一例であり、シートベルトリトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0018】
シートベルトリトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わると、シートベルト4がシートベルトリトラクタ3から引き出されることを制限する。シートベルトリトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0019】
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、シートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員9の肩部の方へガイドする部材である。
【0020】
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4に摺動可能に取り付けられた部品である。
【0021】
バックル8は、タング7が離脱可能に係止される部品であり、例えば、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0022】
次に図2図5を参照して、実施形態に係るシートベルトリトラクタ3の構成を説明する。図2は、実施形態に係るシートベルトリトラクタ3の分解斜視図である。図3は、図2中のリテーナ14と、アーム32と、第1ギア33の構成をX負方向側から視た斜視図である。図4は、実施形態に係るロックギア35と、アーム32と、第2ギア34の構成を示す分解斜視図である。図5は、アーム32を突起32E側から視た斜視図である。
【0023】
図2に示すように、シートベルトリトラクタ3は、プリテンショナ(PT)サブアセンブリ10と、シャフトサブアセンブリ20と、ロック機構30と、を備える。
【0024】
PTサブアセンブリ10は、フレーム11にプリテンショナが搭載されている。プリテンショナは、シャフトサブアセンブリ20のパドルホイール22と接続されており、プリテンショナの作動によって、パドルホイール22がプリテンショナから回転力を受け、これによりスプール12がシートベルト4を引き込む方向に回転する。
【0025】
フレーム11は、Y方向を向いて配置される背板11aと、この背板11aのX方向両側端から直交する方向に突設された左右の側壁11b、11cと、を備える。側壁11bはX正方向側、側壁11cはX負方向側に配置されて対向している。側壁11b、11cには、それぞれ円形状の開口11d、11eが形成される。
【0026】
シャフトサブアセンブリ20は、シートベルト4の一端が係止され、シートベルト4が巻きつけられるスプール12を備える。シャフトサブアセンブリ20は、X方向の回転軸21まわりに回転可能にフレーム11に取り付けられる。
【0027】
ロック機構30は、スプール12の回転軸21に連結され、非作動時にスプール12の回転を許容し、作動時にスプール12のシートベルト引き出し方向の回転を阻止する。ロック機構30は、図2に示すロックサブアセンブリ31と、アーム32と、第2ギア34と、図3に示す第1ギア33と、図2に示すロッキングベース51と、パウル52と、係合歯53と、を有する。また、図2などに示すように、シートベルトリトラクタ3は、ロック機構30の動作を制御するための要素として、ビークルセンサ40と、ウェビングセンサ50と、を備える。
【0028】
ロックサブアセンブリ31は、図2に示すようにロックギア35を有する。ロックギア35は、X負方向側に底面35Aを有する有底円筒状に形成され、円筒形状の内部に、アーム32、第2ギア34や、ウェビングセンサ50の要素であるフライホイール36などを組み付けて収容する。底面35Aは、ロックギア35においてアーム32等が設置される側の主面、とも表現できる。
【0029】
また、図4に示すように、ロックギア35の円形状の底面35Aの中心には回転軸21を貫通する貫通孔35Bが設けられる。貫通孔35Bは、底面35AからX正方向側に突出する略円筒状に形成されている。ロックギア35は、スプール12の回転軸21と同心に回転軸21と共に回転し、且つ、回転軸21に嵌合支持された回転部材である。ロックギア35は、所定の歯数のラチェット歯35Cが形成された外周部を有する。
【0030】
ウェビングセンサ50は、シートベルト4がスプール12から引き出される方向(シートベルトの引き出し方向)に、所定の閾値を超える引き出し加速度で、シートベルト4がスプール12から急激に引き出されたことを検出する第1の検出機構の一例である。ウェビングセンサ50は、例えば、ロックギア35の円盤面に揺動可能に支持された慣性部材であるフライホイール36と、フライホイール36に設けられた係止爪36A(図6等参照)と、図3等に示すリテーナ内歯54と、を有する。
【0031】
フライホイール36は、ロックギア35の底面35AからX正方向側に突出して設けられる回転軸39に篏合されて、回転軸39を中心に「作動位置」と「非作動位置」との間で遷移可能に設けられる。ウェビングセンサ50は、シートベルト4がスプール12から急激に引き出されたことによりフライホイール36が作動位置に遷移するとき(図7図8参照)に作動して、スプール12のシートベルト引き出し方向の回転を阻止して、シートベルト4の引き出しを規制する。係止爪36Aは、フライホイール36が作動位置に遷移したときに、非作動位置のときよりも径方向外側に突出する位置に形成されている(図8参照)。
【0032】
図2に示すように、シャフトサブアセンブリ20は、フレーム11の側壁11b、11cの開口11d、11eをX方向に貫通して設置され、X正方向側の開口11dからの突出部分ではロックサブアセンブリ31と接続される。フレーム11のX正方向側の側壁11bにはリテーナ14が取り付けられ、ロックサブアセンブリ31が内蔵される。この状態で、スプール12は、フレーム11に回転可能に支持されるとともにシートベルト4を巻き取ることができる。
【0033】
また、フレーム11のX正方向側の開口11dの内周面には、開口11dの円形状の中心側に向かって突出するように複数の係合歯53が形成されている。係合歯53は、上述のようにロック機構30の一要素である。
【0034】
また、図2に示すように、シャフトサブアセンブリ20は、スプール12の他に、ロッキングベース51と、パウル52とを有する。ロッキングベース51と、パウル52とは、上述のようにロック機構30の一要素である。ロッキングベース51は、例えばスプールと略同径の円柱形状の部材であり、スプール12のX正方向側の端部にスプール12と一体回転可能に連結される。スプール12の回転軸21はロッキングベース51を貫通して、ロッキングベース51よりさらにX正方向側に突出している。
【0035】
ロッキングベース51のX正方向側の端面には、パウル52が連結されている。パウル52のX正方向側の端面の位置がロッキングベース51の端面と揃うように、ロッキングベース51の端面からX負方向側に掘り下げられて形成される凹部にパウル52が設置されている。この凹部は径方向外側の外縁部まで達しており、また、パウル52は凹部に回動可能に軸支されているため、パウル52はロッキングベース51の径方向の外縁部より径方向外側に突出するよう回動可能である。
【0036】
また、パウル52のX正方向側の端面には、X正方向側に沿って延在するパウルピン52Aが設けられる。このパウルピン52Aは、組み立て状態において、図4等に示すロックギア35の底面35Aに貫通して設けられるカム孔52Bに挿通される。
【0037】
また、ビークルセンサ40は、例えば図2に示すようにフレーム11のX正方向側の側壁11bに取り付けられる。
【0038】
ビークルセンサ40は、車両の挙動変化(具体的には、車両の挙動変化に伴って生ずる車両の加減速や傾きの急激な変化)を検出する第2の検出機構の一例である。ビークルセンサ40は、内蔵された一つの球状のウエイト40Bと、ウエイト40Bの移動によって揺動するアクチュエータ40Cと、アクチュエータ40Cの揺動によってロックギア35 のラチェット歯35Cに係止する係止爪40Aとを有する(図6等参照)。
【0039】
ビークルセンサ40は、加減速や傾きの急激な変化が車体に生じると、ウエイト40Bが移動することにより、アクチュエータ40Cの先端部に形成された係止爪40Aが揺動するように構成されている。この揺動によって、アクチュエータ40Cは、ロックギア35のラチェット歯35Cに係止爪40Aで係止する。係止爪40Aがラチェット歯35Cに係止することにより、シートベルト4の引き出し方向へのロックギア35の回転が阻止されて、シートベルト4の引き出し方向へのスプール12の回転も阻止されて、シートベルト4の引き出しを規制する。
【0040】
図3に示すように、リテーナ14の側壁11bと対向するX負方向側の面には、ロックサブアセンブリ31やウェビングセンサ50を収容可能に形成される第1凹部14Aと、ビークルセンサ40を収容可能に形成される第2凹部14Bとが設けられる。これにより、リテーナ14が側壁11bに取り付けられた状態では、ロック機構30がリテーナ14に内蔵される。
【0041】
また、図3に示すように、第1凹部14Aの外形は、円形状のロックサブアセンブリ31が収容できるように、ロックサブアセンブリ31の径より大きい円形状に形成されている。そして、第1凹部14Aの円形状の中心には、シャフトサブアセンブリ20の回転軸21を篏合可能な円筒状の軸受け部14Cが設けられる。軸受け部14Cは、第1凹部のX正方向側の底面14DからX負方向側に立設して形成されている。スプール12の回転軸21は、フレーム11に固定されたリテーナ14に回転可能に支持される。
【0042】
図3に示すように、第1凹部14Aの円筒状の軸受け部14Cの外周側に、ロック機構30の一要素である第1ギア33が形成されている。第1ギア33は、軸受け部14Cや回転軸21と共に、回転軸21の軸心CAを中心とする同心円状に形成され、軸受け部14Cと同様に底面14DからX負方向側に立設して形成されている。また、X方向の寸法は、軸受け部14Cより小さく形成され、第1ギア33のX負方向側の面に対して、軸受け部14CのX負方向側の端面が突出し、軸受け部14Cの外周面が露出するように形成される。第1ギア33の外周面には歯車が形成されている。
【0043】
つまり、軸受け部14C及び第1ギア33は、第1凹部14Aの底面14Dの一部として一体的に形成されており、リテーナ14と一体構造となっている。
【0044】
また、図3図4に示すように、ロック機構30のアーム32は、基端部32Aが円筒形状であり、ロックサブアセンブリ31の中心部の貫通孔35Bと、リテーナ14の軸受け部14Cの外周面に篏合され、軸心CA周りの周方向CDに回動可能に取り付けられる。基端部32Aの円筒形状の孔部がリテーナ14の軸受け部14Cの外周面に篏合される。また、基端部32Aには、円筒形状の一部において円筒形状に沿ってX負方向側に突出する周壁32Fが設けられる。この周壁32Fの内周面が、ロックギア35の円筒状の貫通孔35Bの外周面に篏合される。
【0045】
アーム32は径方向Rに沿って延在し、図4図5に示すように、径方向外側の先端部32BにX正方向側に突出するよう回転軸32Cが設けられている。この回転軸32Cには、ロック機構30の第2ギア34が回転軸32Cまわりに回動可能に取り付けられている。第2ギア34の外周面には歯車が形成されている。さらに、回転軸32Cの径方向Rの位置は、図3に示すように、第2ギア34の歯車がリテーナ14側の第1ギア33の歯車と噛み合うことができるように設定されている。
【0046】
また、図3図5に示すように、アーム32の先端部32BのX負方向側の部分には、径方向Rの外縁端の一部分がX正方向側に窪んで形成される切り欠き部32Dが形成されている。一方、図4に示すように、ロックギア35の底面35Aには、X正方向側に突出し、周方向CDに沿って形成されるガイド37(距離保持部)が形成されている。図4に点線で示すように、ガイド37は、アーム32がロックギア35に取り付けられる状態において、その上端面(X正方向側の端面)がアーム32の切り欠き部32Dの底面(軸線CA方向、X負方向側に向く面)と当接する位置に形成される。また、切り欠き部32DのX方向の切り欠き深さと、ガイド37のX方向の高さは、略同一の寸法で形成される。これにより、ロックギア35の底面35Aに対するアーム32の先端部32Bの相対的な距離を一定に保持できる。
【0047】
また、図3図5に示すように、アーム32の周方向CDのうち規制位置方向(図4に示すガイド37の一方の端部37A側)の側面には、突起32E(遷移規制部)が周方向CDに突出して設けられている。突起32Eは、アーム32が規制位置(図10図11参照)に遷移したときに、フライホイール36と当接して、フライホイール36の作動位置への遷移を規制するよう形成される。なお、図5などの例では、突起32Eの形状は、軸線CA方向視において半円形状であるが、少なくともアーム32に対して周方向CDに突出するものであればよく、形状はこれに限られない。
【0048】
また、ガイド37は、その側面(径方向Rの内側を向く面)がアーム32の先端部32Bの切り欠き部32Dの側面(径方向Rの外側を向く面)と当接した状態を保つことで、アーム32の周方向CDに沿った移動をスムーズに誘導する機能も有する。図4に示すように、例えばガイド37の周方向の一方の端部37Aは、アーム32が規制位置(図10図11参照)となるときに切り欠き部32Dがある位置まで設けることができる。また、他方の端部37Bは、アーム32が非規制位置(図6図7参照)になるときに切り欠き部32Dがある位置まで設けることができる。
【0049】
また、図4に示すように、ロックギア35の底面35Aには、X正方向側に突出する、例えば円柱状のストッパ38(回動規制部)が設けられる。ストッパ38は、例えばアーム32の切り欠き部32Dがガイド37の他方の端部37Bにあるときに、アーム32の側面が当接する位置に設けられる。これにより、ストッパ38は、非規制位置にてアーム32の規制位置から離間する方向への回動を規制することができる。
【0050】
また、図3に示すように、第1凹部14Aの軸受け部14C及び第1ギア33のさらに外周側には、周壁14Eが形成されている。周壁14Eは、軸受け部14Cや第1ギア33と共に、回転軸21の軸心CAを中心とする同心円状に形成され、軸受け部14Cや第1ギア33と同様に底面14DからX負方向側に立設して形成されている。周壁14Eの外径は、ロックギア35の円筒形状の内径より小さく形成される。また、周壁14Eの内径は、組み立て時においてフライホイール36が非作動位置にあるときの外縁部分の位置より大きく形成されている。つまり、周壁14Eは、ロックギア35がリテーナ14の第1凹部14Aに設置されるときに、ロックギア35の円筒形状の内周面と、フライホイール36との間に挿入されて配置される(図6等参照)。周壁14EのX方向の高さは、ロックギア35がリテーナ14の第1凹部14Aに設置されるときに、第1ギア33と第2ギア34との噛み合いを阻害しない程度の寸法であればよい。
【0051】
また、周壁14Eの内周面には、複数のリテーナ内歯54が形成されている。リテーナ内歯54は、上述のようにウェビングセンサ50の一要素である。リテーナ内歯54は、フライホイール36が作動位置に遷移したときに、フライホイール36の係止爪36Aが噛み込むことができる位置に形成される(図8参照)。
【0052】
次に図6図11を参照して、実施形態に係るロック機構30の動作について説明する。
【0053】
まず、本実施形態に係るロック機構30の構造としては、上述のように、アーム32はスプール12の回転軸21と同軸で独立して回転できるように設置されており、回転軸21と反対側の先端部32Bに第2ギア34が自転可能なように設置されている。第2ギア34は、リテーナ14に設置されている第1ギア33と噛み合っている。
【0054】
ロックギア35は、回転軸21とともにシートベルト4の引き出し方向(ベルト引き出し方向)と、シートベルト4の巻き取り方向(ベルト巻き取り方向)に回転するが、第2ギア34はリテーナ14の第1ギア33と噛み合っているため、アーム32は動かず、結果、アーム32とロックギア35は相対的に回転位相差を持つようになる。
【0055】
また、ビークルセンサ40及びウェビングセンサ50は、周知の機構であり、通常時には下記のように動作することにより、ロック機構30を作動させて、シートベルト4の引き出し方向へのスプール12の回転をロックするロック動作を行わせる。
【0056】
ベルト装着状態において、ロック機構30のビークルセンサ40が車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度を検知した場合、ビークルセンサ40が作動して係止爪40Aがロックギア35のラチェット歯35Cに噛み合う。これにより、ロックギア35の回転が停止して、スプール12の回転軸21の回転も停止するため、シートベルト4の引き出しがロックされる。このように、ロック機構30は、車両の挙動変化に伴いロックギア35の回転を停止させることによって、シートベルト4の引出し方向へのスプール12の回転をロックするロック動作を行う。
【0057】
一方、ベルト装着状態において、シートベルト4がスプール12から引き出されると、スプール12は、シートベルト4の引出し方向に回転するとともに、スプール12の回転軸21も、スプール12と共に同一方向に回転する。この時、シートベルト4の引き出し加速度が所定の閾値を超えた場合、ウェビングセンサ50のフライホイール36は、シートベルト4の急激な引き出しに対して慣性による遅れが生じ、回転軸39まわりに揺動する。フライホイール36が揺動すると、フライホイール36が非作動位置から作動位置に遷移する。これにより、ロック機構30は、シートベルト4の引き出し方向へのスプール12の回転をロックするロック動作を行い、シートベルト4の急激な引き出しを防止する。
【0058】
そして、従来のシートベルトリトラクタにおいて、ウェビングセンサ50を用いてロック機構30を作動させる構成では、シートベルト4を急巻き取りした際に、スプール12の回転軸21が巻き取り完了付近で急減速すると、フライホイール36が動作してしまうことが生じ得る。つまり、上述のシートベルト4を引き出すとき以外にも、シートベルト4を巻き取るときにウェビングセンサ50が急激な引き出し発生と誤検知して、ロック機構30を誤作動させてしまう場合がある。この場合、スプール12の回転軸21はベルト引き出し方向に回転できなくなるので、シートベルト4が引き出せない、所謂「エンドロック状態」となる場合が考えられる。本実施形態のシートベルトリトラクタ3は、このようなエンドロック状態を防止することができる。以下、図6図11を参照して、本実施形態におけるエンドロック防止構造の動作を説明する。
【0059】
図6は、シートベルトリトラクタ3のベルト引き出し方向回転時の状態を示すX負方向から視た断面図である。図7は、図6の状態における実施形態に係るロックギア35と、アーム32と、第2ギア34の位置関係を示す斜視図である。図6は、リテーナ14のうち第1凹部14Aの底面14Dを通り、かつ、YZ平面に平行な切断面における断面図であり、リテーナ14の底面14Dに設けられる第1ギア33の外形を点線で図示している。
【0060】
シートベルトリトラクタ3がベルト引き出し方向(図6では反時計回り方向)に回転するとき、図6に示すように、回転軸21とロックギア35がベルト引き出し方向に回転する。このとき、アーム32と第2ギア34は動かないため、図7に矢印Aで示すように、アーム32は、ウェビングセンサ50のフライホイール36の動作を規制する方向と逆方向の相対変位をする。やがて図6図7に示すように、アーム32はロックギア35上のストッパ38に当接し、非規制位置まで回動する。
【0061】
引き続き回転軸21がベルト引き出し方向に回転すると、第1ギア33と噛み合っている第2ギア34が自転する。これにより、アーム32はロックギア35との間でフライホイール36が動作可能な位置を保ったまま、ロックギア35と一体的にベルト引き出し方向に回転するようになる。つまり、ベルト引き出し方向の回転時には、ウェビングセンサ50のフライホイール36は、図6図7に示す非作動位置から回転軸39を中心に作動位置(図7の状態から矢印Bの方向に回動した後の図8に示す位置)に遷移可能な状態となっている。このように、シートベルト4を引き出す方向の回転軸21の回転では、ウェビングセンサ50が動作可能な状態を維持する。
【0062】
ここで、図8を参照してウェビングセンサ50の作用について説明する。図8は、ウェビングセンサ50の作動状態を示す図である。図8の概要は図6と同様である。
【0063】
図6図7に示すウェビングセンサ50が動作可能な状態では、例えば車両が障害物等に衝突するなどの事象が発生すると、その衝撃によって乗員が座席から前方に急激に移動するため、シートベルト4がスプール12から急激に引き出され、回転軸21も急激に回転する。このとき、回転軸21と連動して回転しているフライホイール36が慣性力によってベルト引き出し方向と反対方向(図7図8に矢印Bで示す方向)に回転軸39を中心として回動し、図8に示す作動位置に遷移する。
【0064】
フライホイール36が作動位置に遷移すると、フライホイール36の係止爪36Aが、非作動位置の場合よりも径方向Rの外側に突出し、リテーナ内歯54が存在する位置まで突出する。これにより、リテーナ内歯54のいずれか1つに係止爪36Aが噛み込み、フライホイール36の回転軸21まわりの回転が規制されることになる。フライホイール36とロックギア35とは連結されているので、ロックギア35も回転が阻止され、回転軸21だけが回転する。すなわち、スプール12及びロッキングベース51は回転を維持できる。
【0065】
この結果、ロッキングベース51に連結されるパウル52と、ロックギア35との間に生じる相対回転によって、図8に矢印Dで示すように、ロックギア35のカム孔52Bに沿ってパウル52のパウルピン52Aが径方向Rの外側へ移動する。パウルピン52Aの移動に伴い、パウル52も径方向Rの外側に回動し、フレーム11の係合歯53(図2参照)のある位置まで飛び出す。これにより、係合歯53のいずれか1つにパウル52が噛み込み、スプール12の回転が規制されることになる。この結果、シートベルト4の引き出しがロックされ、乗員を拘束することができる。
【0066】
さらに、図9を参照してビークルセンサ40の作用について説明する。図9は、ビークルセンサ40の作動状態を示す図である。図9の概要は図6と同様である。
【0067】
例えば車両の衝突などにより加減速や傾きの急激な変化が車体に生じると、その慣性によって例えば図9に矢印Eで示すようにウエイト40Bが移動する。ウエイト40Bの移動に伴い、アクチュエータ40Cが図9に矢印Fで示すようにロックギア35側に回動する。これにより、アクチュエータ40Cの先端の係止爪40Aが、ロックギア35の外周のラチェット歯35Cのいずれか1つに噛み込み、ロックギア35の回転が阻止されるため、回転軸21だけが回転する。すなわち、スプール12及びロッキングベース51は回転を維持できる。
【0068】
この結果、ロッキングベース51に連結されるパウル52と、ロックギア35との間に生じる相対回転によって、図9に矢印Dで示すように、ロックギア35のカム孔52Bに沿ってパウル52のパウルピン52Aが径方向Rの外側へ移動する。パウルピン52Aの移動に伴い、パウル52も径方向Rの外側に回動し、フレーム11の係合歯53(図2参照)のある位置まで飛び出す。これにより、係合歯53のいずれか1つにパウル52が噛み込み、スプール12の回転が規制されることになる。この結果、シートベルト4の引き出しがロックされ、乗員を拘束することができる。
【0069】
図10は、シートベルトリトラクタ3のベルト巻き取り方向回転時の状態を示すX負方向から視た断面図である。図11は、図10の状態における実施形態に係るロックギア35と、アーム32と、第2ギア34の位置関係を示す斜視図である。図10の断面図の概要は図6と同様である。
【0070】
シートベルトリトラクタ3がベルト巻き取り方向(図10では時計回り方向)に回転するとき、図10に示すように、回転軸21とロックギア35がベルト巻き取り方向に回転する。このとき、アーム32と第2ギア34は動かないため、図11に矢印Cで示すように、アーム32は、ウェビングセンサ50のフライホイール36の動作を規制する方向へ相対変位をする。やがて図10図11に示すように、アーム32の突起32Eがロックギア35上で非作動位置にあるフライホイール36の端部に当接し、規制位置まで回動する。
【0071】
引き続き回転軸21がベルト巻き取り方向に回転すると、第1ギア33と噛み合っている第2ギア34が自転する。これにより、アーム32の突起32Eがフライホイール36と当接し続け、アーム32はロックギア35との間でアーム32がフライホイール36を非作動の位置に規制した状態を保ったまま、ロックギア35と一体的にベルト巻き取り方向に回転するようになる。つまり、ベルト巻き取り方向の回転時には、ウェビングセンサ50のフライホイール36は、図10図11に示す非作動位置から回転軸39を中心に作動位置(図7の状態から矢印Bの方向に回動した後の図8に示す位置)には遷移不能な状態となっている。このように、シートベルト4を巻き取る方向の回転軸21の回転では、ウェビングセンサ50が動作不能な状態を維持する。
【0072】
このように、本実施形態に係るシートベルトリトラクタ3では、シートベルト4の巻き取り方向に回転している限り、アーム32はウェビングセンサ50のフライホイール36を非作動位置に規制しているから、回転軸21の回転が急減速した際でも、従来のようにフライホイール36が偶発的にロック方向に動くことがなく、効果的にエンドロックを回避することができる。
【0073】
本実施形態のシートベルトリトラクタ3は、作動位置に遷移するときシートベルト4の引き出しを規制するフライホイール36と、基端部32Aがロックギア35の回転中心である貫通孔35Bに回動可能に設置され、フライホイール36の作動位置への遷移を規制する規制位置と、非規制位置との間を回動可能なアーム32と、リテーナ14のロックギア35との対向面である第1凹部14Aの底面14Dに設置され、回転中心である軸受け部14C周りに歯車を有する第1ギア33と、アーム32の先端部32Bにて第1ギア33と噛合って設置される第2ギア34と、を備える。アーム32は、ロックギア35がシートベルト4の引き出し方向に回転するときに非規制位置に遷移し、ロックギア35がシートベルト4の巻き取り方向に回転するときに規制位置に遷移する。
【0074】
この構成により、図6図11を参照して説明したように、ウェビングセンサ50のフライホイール36の不要な作動位置への遷移を防止できるので、エンドロック防止構造の動作信頼性を向上できる。また、アーム32は、その基端部32Aがロックギア35の貫通孔35Bの外周面に回動可能に連結され、先端部32Bが第2ギア34を介してリテーナ14側の第1ギア33に噛み合わされる。つまり、アーム32の基端部32Aと先端部32Bの両端が他部品によって支持されている。これにより、アーム32の非規制位置と規制位置との間の遷移や、被規制位置及び規制位置での姿勢の保持をより確実にできるので、上述のフライホイール36の作動位置への遷移防止効果をより確実に実現できる。
【0075】
[変形例]
図12図14を参照して、シートベルトリトラクタ3の変形例を説明する。図12は、変形例に係るロックギア35と、アーム32と、第2ギア34の構成を示す分解斜視図である。図12は、上記実施形態の図4と対応する。
【0076】
上記実施形態では、ロックギア35の底面35Aから突出する円柱状のストッパ38を設け、このストッパ38によって、非規制位置にてアーム32の規制位置から離間する方向への回動を規制する構成を例示してが、回動を規制することができればストッパ38以外の構成を適用してもよい。
【0077】
例えば図12に示すように、ロックギア35の貫通孔35Bの外周面にストッパ138を設ける構成でもよい。ストッパ138は、貫通孔35Bの円筒形状の外周面から径方向Rの外側に突出して設けられ、周方向CDの規制位置の方向を向く端面138Aを有する。
【0078】
ストッパ138は、例えばアーム32の切り欠き部32Dがガイド37の他方の端部37Bにあるときに、アーム32の周壁32Fの周方向CDの端面が当接する位置に設けられる。これにより、ストッパ138は、非規制位置にてアーム32の規制位置から離間する方向への回動を規制することができる。
【0079】
図13は、シートベルトリトラクタ3のベルト引き出し方向回転時における変形例に係るロックギア35と、アーム32と、第2ギア34の位置関係を示す斜視図である。図13は、上記実施形態の図7と対応する。
【0080】
シートベルトリトラクタ3がベルト引き出し方向(図13では反時計回り方向)に回転するとき、図13に示すように、回転軸21とロックギア35がベルト引き出し方向に回転する。このとき、アーム32と第2ギア34は動かないため、図13に矢印Aで示すように、アーム32は、ウェビングセンサ50のフライホイール36の動作を規制する方向と逆方向の相対変位をする。やがて図13に示すように、アーム32の周壁32Fはロックギア35の貫通孔35Bに設けられるストッパ138の端面138Aに当接し、非規制位置まで回動する。
【0081】
引き続き回転軸21がベルト引き出し方向に回転すると、第1ギア33と噛み合っている第2ギア34が自転する。これにより、アーム32はロックギア35との間でフライホイール36が動作可能な位置を保ったまま、ロックギア35と一体的にベルト引き出し方向に回転するようになる。つまり、ベルト引き出し方向の回転時には、ウェビングセンサ50のフライホイール36は、図13に示す非作動位置から回転軸39を中心に作動位置(図13の状態から矢印Bの方向に回動した位置)に遷移可能な状態となっている。このように、シートベルト4を引き出す方向の回転軸21の回転では、ウェビングセンサ50が動作可能な状態を維持する。
【0082】
図14は、シートベルトリトラクタ3のベルト巻き取り方向回転時における変形例に係るロックギア35と、アーム32と、第2ギア34の位置関係を示す斜視図である。図14は、上記実施形態の図11と対応する。
【0083】
シートベルトリトラクタ3がベルト巻き取り方向(図14では時計回り方向)に回転するとき、図14に示すように、回転軸21とロックギア35がベルト巻き取り方向に回転する。このとき、アーム32と第2ギア34は動かないため、図14に矢印Cで示すように、アーム32は、ウェビングセンサ50のフライホイール36の動作を規制する方向へ相対変位をする。やがて図14に示すように、アーム32の突起32Eがロックギア35上で非作動位置にあるフライホイール36の端部に当接し、規制位置まで回動する。
【0084】
引き続き回転軸21がベルト巻き取り方向に回転すると、第1ギア33と噛み合っている第2ギア34が自転する。これにより、アーム32の突起32Eがフライホイール36と当接し続け、アーム32はロックギア35との間でアーム32がフライホイール36を非作動の位置に規制した状態を保ったまま、ロックギア35と一体的にベルト巻き取り方向に回転するようになる。つまり、ベルト巻き取り方向の回転時には、ウェビングセンサ50のフライホイール36は、図14に示す非作動位置から回転軸39を中心に作動位置(図13の状態から矢印Bの方向に回動した位置)には遷移不能な状態となっている。このように、シートベルト4を巻き取る方向の回転軸21の回転では、ウェビングセンサ50が動作不能な状態を維持する。
【0085】
このように、変形例に係るシートベルトリトラクタ3でも、実施形態と同様に、シートベルト4の巻き取り方向に回転している限り、アーム32はウェビングセンサ50のフライホイール36を非作動位置に規制しているから、回転軸21の回転が急減速した際でも、従来のようにフライホイール36が偶発的にロック方向に動くことがなく、効果的にエンドロックを回避することができる。
【0086】
なお、変形例のストッパ138と比較して、実施形態のストッパ38を設ける構成のほうが好ましい。実施形態のストッパ38のほうが変形例のストッパ138より構造が簡易であり、必要な位置精度も低くて済むので、製造容易性を向上でき、製造コストを抑えることができる。
【0087】
次に他の変形例について説明する。上記実施形態では、規制位置にてフライホイール36の作動位置への遷移を規制する遷移規制部として、アーム32に突起32Eを設ける構成を例示したが、突起32Eと同様の要素をフライホイール36に設ける構成でもよい。また、アーム32及びフライホイール36の接触位置において、アーム32とフライホイール36の両方に突起32Eと同様の要素を設ける構成でもよい。なお、突起32Eと同様の要素をアーム32側のみに設ける構成とするのが好ましい。これにより、既存のフライホイール36などのロック機構30に係る部品を流用できるので、部品の複雑化や製造コストを抑えることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、ロックギア35においてアーム32が設置される側の主面(底面35A)と、アーム32の先端部32BとのX方向の距離を一定に保持する距離保持部として、ロックギア35の底面35Aにガイド37を設ける構成を例示したが、アーム32の先端部32Bから底面35A側へ突出する突起を設ける構成でもよい。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 シートベルト装置
3 シートベルトリトラクタ
4 シートベルト(ウェビング)
7 タング
8 バックル
14 リテーナ
32 アーム
32A 基端部
32B 先端部
32E 突起(遷移規制部)
33 第1ギア
34 第2ギア
35 ロックギア
36 フライホイール
38、138 ストッパ(回動規制部)
37 ガイド(距離保持部)
50 ウェビングセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14