(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024459
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】珪藻土粒子含有繊維からなるバスマット
(51)【国際特許分類】
D01F 1/10 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
D01F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127294
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】青木 光男
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD13
4L035EE05
4L035EE20
4L035FF01
4L035JJ08
4L035KK01
4L035KK05
(57)【要約】
【課題】吸水性と速乾性に加えて、フレキシビリティ(可撓性)を備えたバスマットを提供すること、さらに、マットを清潔に保つため、繰り返しの水洗い(洗濯)が可能なバスマットを提供することを目的とする。
【解決手段】繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維からなるバスマット、及び繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程を含む、繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維からなるバスマットの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面に、珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維からなるバスマット。
【請求項2】
繊維が、合成高分子からなる合成繊維である請求項1に記載のバスマット。
【請求項3】
合成繊維が、極細繊維である請求項2に記載のバスマット。
【請求項4】
珪藻土粒子の平均粒径が、繊維径の0.1倍~10倍である請求項3に記載のバスマット。
【請求項5】
繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程を含む、繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維からなるバスマットの製造方法。
【請求項6】
繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程において、繊維原料が合成高分子であり、紡糸が溶融紡糸である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
珪藻土含有繊維が、極細の繊維である請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
珪藻土粒子の平均粒径が、繊維の繊維径の0.1倍~10倍である請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪藻土粒子含有繊維からなるバスマットに関する。また本発明は、珪藻土粒子含有繊維からなるバスマットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴後やシャワーを浴びた後に、足を拭いたり、体から滴り落ちる水を吸収したりするためバスマットを使用する。バスマットとして、古くから木製のスノコやタオル地のマットが用いられてきた。近年、バスマットの性能として、吸水性だけでなく、使用後のサラサラ感を実現する速乾性が強く求められるようになり、珪藻土を固めたタイプの板状マットが広く使用されるようになった。しかし、板状マットは、吸水性と速乾性には優れるものの、破損しやすいうえ、フレキシブルでない(可撓性がない)ため折り曲げたり畳んだりすることができず、乾燥時や不使用時に不便である。さらに、その高い吸水性・速乾性のため水洗いすることができず清潔に保つことが難しい。
【0003】
珪藻土を使用し、かつフレキシブルなマットとして、例えば特許文献1には、吸水性に優れた珪藻土を主成分とする吸水性板を使用し、乾燥時や不使用時には筒状に丸めたり、蛇腹状に折り畳んだりしてコンパクトな形状にすることができる足拭きマットが開示されている。このマットは、珪藻土を主成分とする同一形状の複数枚の珪藻土矩形板を、支持板上に等間隔の一列に並べて固定したものである(
図1)。しかしながら、特許文献1に記載された足拭きマットは、珪藻土を主成分とする吸水性板をつなげたものであり、従来の珪藻土の板状マットと同様水洗いに適しておらず、清潔に保つことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、吸水性と速乾性に加えて、フレキシビリティ(可撓性)を備えたバスマットを提供することを目的とする。さらに本発明は、マットを清潔に保つため、繰り返しの水洗い(洗濯)が可能なバスマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本明細書は、以下の実施形態を提供する。
【0007】
[1]繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維からなるバスマット。
[2]繊維が、合成高分子からなる合成繊維である[1]に記載のバスマット。
[3]合成繊維が、極細繊維である[2]に記載のバスマット。
[4]珪藻土粒子の平均粒径が、繊維の繊維径の0.1倍~10倍である[3]に記載のバスマット。
[5]繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程を含む、繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維バスマットの製造方法。
[6]繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程において、繊維原料が合成高分子であり、紡糸が溶融紡糸である[5]に記載の製造方法。
[7]珪藻土含有繊維が、極細の繊維である[5]に記載の製造方法。
[8]珪藻土粒子の平均粒径が、繊維の繊維径の0.1倍~10倍である[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、吸水性と速乾性に加えて、フレキシビリティ(可撓性)を備えたバスマットを提供することが可能となる。さらに、本発明により、繰り返しの水洗い(洗濯)が可能なバスマットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】繊維表面に珪藻土粒子が露出(20)または突出(22)している珪藻土含有繊維の例示的な態様2を示す図である。
【
図3】多層型の紡糸ノズルを用いて製造した珪藻土粒子を含む珪藻土含有繊維の例示的な態様3の繊維の断面図(模式図)である。繊維断面の形状はノズルの形状により、円または楕円とすることもできる。海部分32を除去することにより、海部分32および/または島部分30に含まれる珪藻土粒子34が、繊維表面に露出または突出する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(バスマット)
本発明のバスマットは、繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維からなる。
【0011】
「繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維」(以下、単に「珪藻土含有繊維」ということがある)とは、珪藻土粒子を含む繊維において、繊維表面の少なくとも一箇所に珪藻土粒子が露出している、または繊維表面の少なくとも一箇所から珪藻土粒子が突出している繊維を示す。繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出していることにより、珪藻土粒子の性質である吸水性・速乾性を有する繊維とすることができる。さらに、この様な繊維を用いることにより、吸水性及び速乾性を有するバスマットを得ることができる。
【0012】
珪藻土含有繊維からなるバスマットには、珪藻土含有繊維を加工して得られる布帛、帆布、タオル等の織物、あるいは不織布からなるバスマットが挙げられ、より具体的には、ループパイルや撚りループパイルからなるバスマットが挙げられる。さらに、珪藻土含有繊維を加工して得られる織物や不織布を、その一部として含むバスマットも、本発明のバスマットに含まれる。
【0013】
珪藻土含有繊維は、公知の方法を用いて、繊維原料に珪藻土を混合して紡糸することにより製造することができる。
【0014】
珪藻土は、珪藻の殻の化石を原料にして作られた素材であり、種々の製品が市販されている。珪藻土含有繊維に含まれる珪藻土粒子の平均粒径は、珪藻土粒子が繊維表面に露出または繊維表面から突出するような径であればよく、繊維径との関係で、あるいは繊維の製造方法に鑑み適宜選択することが可能である。珪藻土粒子の平均粒径は、例えば、繊維径の0.1倍~10倍とすることができる。具体的には、珪藻土粒子の平均粒径は、1μm以上10μm未満とすることができる。このような粒径の場合に、珪藻土粒子が繊維表面に露出または繊維表面から突出する、珪藻土含有繊維とすることができる。
【0015】
珪藻土含有繊維において、繊維は、合成高分子からなる合成繊維とすることができる。この場合珪藻土含有繊維は、溶融した合成高分子(ポリマー)に、珪藻土を混合してスラリーを製造し、得られたスラリーを紡糸ノズルから繊維状に押出して巻き取り、次いで延伸、熱セットなどを行なう溶融紡糸により製造することができる。あるいは、紡糸ノズルの口金をサイド・バイ・サイド型とし、一方からは合成高分子のみを、他方からは珪藻土を混合した高分子スラリーを押出すことによって製造してもよい。
【0016】
合成高分子としては、衣料用繊維の製造に用いられるものであればよく特に限定されな。具体的には、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、及びポリフェニレンスルフィドからなる群から選択される1種以上を用いることができる。さらに、各種の添加剤、たとえば、防臭剤、難燃剤、酸化防止剤、または紫外線吸収剤などを必要に応じて共重合または混合していても良い。
【0017】
溶融紡糸により珪藻土含有繊維を製造する場合、熱可塑性(溶融性)ポリマーを用いることが好ましく、好適な合成高分子として、ポリエステル、ナイロン、またはポリプロピレンを挙げることができる。
【0018】
珪藻土含有繊維において、繊維径は特に限定されないが、例えば1μm以上40μm未満、あるいは1μm以上10μm未満(極細繊維)とすることができる。
【0019】
珪藻土含有繊維が極細繊維である場合、繊維の材料に好適な高分子としてポリエステルが挙げられる。また、珪藻土を含有する極細繊維は、単純に珪藻土含有高分子スラリーを押出し、延伸することによって製造することができるが、さらに紡糸ノズルとして多層型や多軸型あるいは分割・溶出型の口金を用いて、海島構造を有する複合繊維とし、珪藻土粒子が繊維表面に露出、あるいは繊維表面から突出するように製造してもよい。海島構造を有する複合繊維とする場合、珪藻土粒子は、海部分、島部分、あるいは海島部分両方の、いずれに混合してもよく、海部分を公知の方法により除去することにより、珪藻土粒子が繊維表面に露出または突出する。
【0020】
(バスマットの製造方法)
本発明のバスマットの製造方法は、繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程を含む。かかる工程により、繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維を製造し、この繊維を公知の方法を用いて、布帛、帆布、タオル等の織物、あるいは不織布としてバスマットを得ることができる。
【0021】
本発明のバスマットの製造方法において、繊維原料に珪藻土を混合して紡糸する工程に用いる繊維原料を、合成高分子とし、溶融紡糸により紡糸する。
【0022】
さらに、本発明のバスマットの製造方法において、珪藻土含有繊維は極細の繊維とすることができる。
【0023】
また、本発明のバスマットの製造方法において、珪藻土粒子の平均粒径は、繊維の繊維径の0.1倍~10倍とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 従来例における板状バスマット
2 繊維表面に珪藻土粒子が露出または突出している珪藻土含有繊維の例示的な態様
20 繊維表面に露出する珪藻土粒子
22 繊維表面から突出する珪藻土粒子
3 多層構造の紡糸ノズルを用いて製造した珪藻土粒子を含む珪藻土含有繊維の例示的な態様
30 海島構造繊維の島部分
32 海島構造繊維の海部分
34 珪藻土粒子