(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024460
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】散薬鑑査装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127295
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ03
4C047JJ34
4C047KK27
4C047KK28
4C047KK31
(57)【要約】
【課題】散薬の成分鑑査及び重量鑑査を正確かつ簡易に行うことが可能な散薬鑑査装置を提供する。
【解決手段】個包27内に封入された散薬28の重量を測定する重量測定装置2と、散薬28に光を照射し散薬28から反射された光を分光分析して散薬28の成分を分析する成分分析装置3とを備え、散薬28の重量鑑査及び成分鑑査を行う散薬鑑査装置1であって、散薬28が封入された個包27が複数連続した分包紙27Xが載置される分包紙載置台13と、分包紙27Xから分離された個包27が載置される個包載置台15と、を備え、成分分析装置3は個包載置台15に載置された個包27内の散薬の成分を分析し、重量測定装置2は分包紙載置台13及び個包載置台15に載置された分包紙27X及び個包27の総重量を測定する散薬鑑査装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個包内に封入された散薬の重量を測定する重量測定装置と、前記散薬に光を照射し前記散薬から反射された光を分光分析して前記散薬の成分を分析する成分分析装置とを備え、前記散薬の重量鑑査及び成分鑑査を行う散薬鑑査装置であって、
散薬が封入された個包が複数連続した分包紙が載置される分包紙載置台と、
前記分包紙から分離された個包が載置される個包載置台と、を備え、
前記成分分析装置は前記個包載置台に載置された個包内の散薬の成分を分析し、
前記重量測定装置は前記分包紙載置台及び前記個包載置台に載置された前記分包紙及び前記個包の総重量を測定する散薬鑑査装置。
【請求項2】
請求項1記載の散薬鑑査装置において、
前記成分分析装置は前記散薬に光を照射する発光部を有し、
前記個包載置台は前記個包内の散薬が所定位置に集まるように傾斜して設けられ、
前記発光部は前記所定位置に向けて発光することを特徴とする散薬鑑査装置。
【請求項3】
請求項1記載の散薬鑑査装置において、
前記分包紙載置台は前記分包紙の落下を防止する複数の囲壁を有することを特徴とする散薬鑑査装置。
【請求項4】
請求項2記載の散薬鑑査装置において、
前記個包載置台に対して接離自在に設けられ、前記個包を前記個包載置台に対して固定するアーム部材を有することを特徴とする散薬鑑査装置。
【請求項5】
請求項4記載の散薬鑑査装置において、
前記アーム部材は、前記個包を前記個包載置台に対して固定する第1の位置と、前記個包載置台に対する前記個包の固定を解除する第2の位置とを占め、前記アーム部材を前記第1の位置に保持する保持部材を有することを特徴とする散薬鑑査装置。
【請求項6】
請求項4記載の散薬鑑査装置において、
前記アーム部材により前記個包載置台に対して前記個包が固定される際に、前記個包内の散薬が前記所定位置を占めるように前記個包をガイドするガイド部材を有することを特徴とする散薬鑑査装置。
【請求項7】
請求項6記載の散薬鑑査装置において、
前記ガイド部材は、前記個包載置台に対して着脱自在であることを特徴とする散薬鑑査装置。
【請求項8】
請求項7記載の散薬鑑査装置において、
前記ガイド部材は、前記個包載置台に対して第1の態様または第2の態様で装着可能であり、前記各態様において前記個包載置台に対して固定される前記個包の数量がそれぞれ変化することを特徴とする散薬鑑査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散薬の重量鑑査と成分鑑査とを同時に行うことが可能な散薬鑑査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投入ホッパに投入された散薬を一包ずつの個包内に順次封入して分包する包装装置と、散薬を散薬フィーダにて回転式環状受部材に配分してから一包分ずつ分割して投入ホッパへと送り込む散薬供給装置とを備えた散薬分包装置が知られている。
この散薬分包装置は、患者毎の処方データに基づいて一処方分の個包が連続して形成された分包紙(分包帯)を出力しており、個包内に封入される散薬の種類、個包重量、一処方分の総重量等を処方データに基づいて作成している。
【0003】
このような散薬分包装置から出力された分包紙は、医師によって処方された医薬品であるか否かの確認である鑑査が、鑑査者である薬剤師によって行われる。このときに行われる鑑査は、一処方分の総重量を鑑査する重量鑑査と、個包内に封入されている散薬の種類を鑑査する成分鑑査とが行われる。これ等二種類の鑑査は、従来はそれぞれ異なる鑑査装置によって行われ、すなわち重量鑑査装置によって重量鑑査がまた成分鑑査装置によって成分鑑査がそれぞれ行われ、鑑査者は各鑑査装置の結果に基づいて個包内の散薬の鑑査を行っていた。
【0004】
従来では、このように二種類の鑑査装置を用いていたため、鑑査装置を二種類用意しなければならず、装置の設置スペースを大きく取る必要があると共に、二種類の鑑査を二種類の装置で行わなければならず、作業効率が悪いという問題点があった。
このような問題点を解決可能な、散薬個包の重量測定と個包内の散薬の成分鑑査とを一つの装置で行う技術が、例えば「特許文献1」に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の技術では、皿状のサンプルホルダ上に載置された分包紙のうちのサンプルである一つの個包に対して近赤外線光源から近赤外線光を照射し、個包内の散薬で反射された反射光を近赤外分光器で検知して、プロセッサが検知された反射光から近赤外スペクトルを取得し、さらに近赤外スペクトルをプロセッサが二次微分処理している。そしてプロセッサは、取得した二次微分データとデータベース内に記憶された医薬品データのスペクトルとから近赤外QI値を算出し、個包内に封入された散薬の成分鑑査を行っている。
また、サンプルホルダの下方に重量計を備え、サンプルホルダ上に載置された分包紙の重量を測定可能に構成されている。
【0007】
ここで、サンプルホルダ上に載置される分包紙は、成分鑑査に供される一つの個包に対して光源からの光が照射可能となるように、この個包を光源に対して所定の位置に配置すると共に、他の分包紙がサンプルホルダ上から落下しないように載置する必要がある。このため、成分鑑査用の個包及びこの個包に連続した分包紙をサンプルホルダ上に正確に載置することが難しいという問題点があった。また、サンプルホルダ上に載置された個包に対して光を照射する際に、個包内の散薬に対して光を効果的に照射するためには個包内において散薬を特定の箇所に集める必要がある。
本発明は上述の問題点を解決し、個包及び分包紙のセットを簡単に行うことができ、操作性を向上することが可能な散薬鑑査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、個包内に封入された散薬の重量を測定する重量測定装置と、前記散薬に光を照射し前記散薬から反射された光を分光分析して前記散薬の成分を分析する成分分析装置とを備え、前記散薬の重量鑑査及び成分鑑査を行う散薬鑑査装置であって、散薬が封入された個包が複数連続した分包紙が載置される分包紙載置台と、前記分包紙から分離された個包が載置される個包載置台と、を備え、前記成分分析装置は前記個包載置台に載置された個包内の散薬の成分を分析し、前記重量測定装置は前記分包紙載置台及び前記個包載置台に載置された前記分包紙及び前記個包の総重量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長尺の分包紙から短い個包を分離して成分鑑査を行うことにより、散薬鑑査装置に対する分包紙及び個包のセットを簡単に行うことができ、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置の概略正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置の概略平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置の概略側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置の概略正面部分断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置の概略側面部分断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に用いられるアーム部材の離間位置及び傾斜面の窓部に設けられる発光部を説明する概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態に用いられるガイド部材の(a)斜め上方から見た斜視図、(b)平面図、(c)左側面図、(d)正面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置において3個の連続した個包を所定位置に載置した状態を示す概略正面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置において1個の個包を所定位置に載置した状態を示す概略正面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置における個包が載置される所定位置を説明するための概略図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置における個包に封入された散薬と発光部の状態を説明するための概略図である。
【
図13】本発明の一実施形態に用いられる散薬鑑査装置のシステム構成を示す概略図である。
【
図14】本発明の一実施形態に用いられる(a)分包紙(b)分包紙が載置されるトレイを説明する概略図である。
【
図15】本発明の一実施形態に用いられる調剤指示データを説明する概略図である。
【
図16】本発明の一実施形態に用いられる表示装置に表示された処方箋情報を説明する概略図である。
【
図17】本発明の一実施形態に用いられる表示装置に表示された鑑査画面を説明する概略図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る長尺の分包紙が載置された載置台の状態を説明する概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置1の斜視図、
図2は同正面図、
図3は同平面図、
図4は同側面図、
図5は同正面部分断面図、
図6は同側面部分断面図をそれぞれ示している。
散薬鑑査装置1は、出力物である分包紙内に封入された散薬の重量を測定する重量測定装置2と、分包紙内に封入された散薬の成分を分析する成分分析装置3とを備えている。重量測定装置2は散薬鑑査装置1の下部を構成しており、重量測定装置2の上方に成分分析装置3が配置されている。
図1において、矢印Xは散薬鑑査装置1の前後方向、矢印Yは同左右方向、矢印Zは同上下方向をそれぞれ示している。そして、矢印Xで示す方向を前方とし逆方向を後方、矢印Yで示す方向を左方とし逆方向を右方、矢印Zで示す方向を上方とし逆方向を下方とする。
【0012】
重量測定装置2は汎用の調剤用天秤によって構成されており、その前面には測定した重量をデジタル表示する表示部4が設けられている。重量測定装置2は、表示部4の近傍に設けられた電源スイッチ5を操作することにより動作可能であると共に、パソコン等の外部装置からの動作指令に基づいて動作可能に構成されている。重量測定装置2としては、上述したように市販されている調剤用天秤をそのまま使用することができるため、散薬鑑査装置1のコストダウンに寄与している。符号6は、鑑査精度を保つために散薬鑑査装置1を水平に設置する際に使用する水平器を示している。
重量測定装置2は、
図5及び
図6に示すように、重量が計測される被測定物が載置される測定皿7と、測定皿7上に載置された被測定物の重量を測定するロードセル8と、表示部4及びロードセル8をそれぞれ支持する装置本体9とを有している。測定皿7はロードセル8に支持されており、表示部4及びロードセル8はそれぞれ装置本体9に取り付けられている。ロードセル8は精密な重量計測が可能に構成されており、このため測定可能な最大重量に制限が設けられている。
【0013】
成分分析装置3は、
図5及び
図6に示すように、成分分析装置3の外装を構成する外装部10と、成分分析を行う分析部11とを備えている。
外装部10は、底面が開放されたほぼ箱形形状を呈したカバー部材12を有している。カバー部材12は、
図6に示すように、前後方向に向けてそれぞれ延出形成された延出部12a,12bがその下部に設けられており、上部には前方側から後方側に向かうに連れて下方側へと向かうように傾斜した傾斜面が設けられていて、この傾斜面は分包紙が載置される分包紙載置台13を形成している。
【0014】
またカバー部材12の前面には、
図6に示すように、上方側から下方側に向かうに連れて前方側へと向かうように傾斜した傾斜面14が設けられている。傾斜面14の下部は、
図1に示すように傾斜面14から前方側に向けて傾斜面14に対して直角に起立するように突出形成されており、この突出形成部はカバー部材12の幅方向の全域にわたって設けられている。この突出形成部の上面は、
図2に示すようにカバー部材12の左方から右方に向かうに連れて下方側へと向かうように傾斜して形成されており、突出形成部の傾斜した上面によって個包が載置される個包載置台15が形成されている。個包載置台15上には、個包載置台15上に個包を載置する際に個包のガイドを行う2個のガイド部15a,15bが設けられている。
【0015】
分包紙載置台13の左右方向両端部には、外装部10を構成し囲壁として機能する一対の第1ガイド部材16が設けられている。曲折形成された樹脂材からなる各第1ガイド部材16は、それぞれの基端を分包紙載置台13に固定されており、分包紙載置台13からそれぞれ水平方向に延出した後、上方に向けて曲折形成されている。各第1ガイド部材16上には鑑査対象となる分包紙が載置され、各第1ガイド部材16の自由端はそれぞれの角部が曲面状となるように面取りを施されている。
【0016】
分包紙載置台13の装置奥側(後方側)端部近傍には、外装部10を構成し囲壁として機能する第2ガイド部材17が設けられている。樹脂材からなる第2ガイド部材17は、
図4に示すように、分包紙載置台13から起立するようにその基端を分包紙載置台13に固定されている。第2ガイド部材17は、分包紙載置台13側を向くガイド面が分包紙載置台13に対して直角となるように取り付けられている。第2ガイド部材17は、自由端の角部が曲面状となるように面取りを施されている。各ガイド部材16,17には、重量軽減用の穴部がそれぞれ設けられている。
【0017】
図1に示すように、傾斜面14の中央よりもやや右側の位置には、外装部10を構成するアーム部材18が配置されている。アーム部材18は、分包紙載置台13と傾斜面14との角部に取り付けられた取付部材19に基端を回動自在に取り付けられており、自由端は個包載置台15の直上方に位置する傾斜面14と対応する位置に位置している。すなわちアーム部材18は、分包紙載置台13から個包載置台15に至る傾斜面14の一部を横断するように設けられている。
平板状の部材から形成されたアーム部材18は、自由端部が傾斜面14に対して接触可能に構成されている。アーム部材18の自由端近傍には、直角に起立形成された摘み部18aが設けられており、摘み部18aを把持してアーム部材18の回動が行われる。アーム部材18は、取付部材19によって回動自在に支持された支軸18bにその基端を取り付けられている。この構成によりアーム部材18は、
図1に示すように、自由端が傾斜面14に接触する第1の位置である接触位置と、
図7に示すように、自由端が傾斜面14から離間する第2の位置である離間位置とを選択的に占める。
【0018】
アーム部材18の中央よりもやや上部寄りには突起部18cが形成されており、突起部18c内には図示しない磁石が設けられている。また、
図7に示すように、取付部材19の突起部18cと対応する位置には、鉄等の強磁性体19aが設けられている。この構成により、アーム部材18が接触位置を占めると突起部18c内の磁石が強磁性体19aに磁着し、アーム部材18が接触位置で保持される。このとき、図示しない磁石を包含する突起部18cが保持部材として機能する。なお、支軸18bを保持する図示しない保持部材を設け、アーム部材18が
図7に示す離間位置を占めたときにアーム部材18を保持する構成としてもよい。
【0019】
分包紙載置台13及び傾斜面14及び個包載置台15を有するカバー部材12、カバー部材12に取り付けられた各ガイド部材16,17、カバー部材12に取り付けられた取付部材19に支持されたアーム部材18を有する外装部10は、
図6に示すように、カバー部材12の各延出部12a,12bが測定皿7上に載置されることにより、その重量をロードセル8によって測定される。ロードセル8は、各載置台13,15上に載置された分包紙及び個包内に封入された散薬の重量を測定するため、外装部10の重量は風袋として扱われる。ここで、外装部10はそのほとんどの部材が樹脂製であるため軽量であり、ロードセル8による測定可能な最大重量よりも軽量となるように構成されている。
【0020】
分析部11は、
図5、
図6に示すように、検知部20、コネクタ21、ベース部材22等を有している。検知部20は、個包内に封入された散薬に向けて検知光を照射する発光部20aを有しており、散薬から反射された光を検知する。発光部20aは、例えば上述した特開2020-85513号公報に開示されているように、可視光線や赤外線等の光線を被検知物である個包内に封入された散薬に向けて照射する。発光部20aは、個包載置台15上に載置され接触位置を占めたアーム部材18によって固定された個包内に封入された散薬に対して発せられる光線が、
図7に示すように、傾斜面14に貫通形成された窓部14aを介して照射される位置に配置されている。ここで、発光部20aから発せられる光が照射される位置は、後述する所定位置となるように設定されている。検知部20は、個包内の散薬によって反射された光線を検知して散薬の成分を解析する。
【0021】
コネクタ21は図示しない接続線を介して検知部20に接続されており、検知部20に対して電力を供給したり信号の入出力を行ったりする。検知部20及びコネクタ21は、それぞれベース部材22に取り付けられている。
検知部20は、ベース部材22にブラケット23を介して取り付けられている。ブラケット23は、傾斜面14に対して発光部20aの面が平行となるように、かつ、個包載置台15の載置面に対して発光部20aが平行となるように、取付板22bの上面に対してそれぞれ左右方向及び上下方向に傾いて形成されている。
なお、検知部20を用いて散薬の成分分析を行う技術は、上述した特開2020-85531号公報等に開示されており公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0022】
ベース部材22は、それぞれ金属板から構成された脚部22a、取付板22bを有している。ほぼコ字形状となるように曲折形成された脚部22aは、曲折形成された各自由端が下方を向く態様で配置されており、各自由端の端部はさらに互いに向かい合う向きに曲折されて、
図5に示すように取付部22cがそれぞれ形成されている。脚部22aの前後方向における大きさは、測定皿7の同方向における大きさに対して十分に小さくなるように形成されている。そして
図5に示すように、測定皿7の左右方向における大きさが脚部22aの同方向における大きさよりも部分的に小さくなるように、測定皿7の前後方向における中央部近傍に切欠部7aが形成されている。この切欠部7aが形成されていることにより、脚部22aは測定皿7に接触及び干渉することなくカバー部材12の内側に配置されている。各取付部22cには図示しないタップが形成されるか若しくは図示しないナットが固定されており、脚部22aは各取付部22cに螺合するねじ24によって装置本体9に固定されている。
【0023】
脚部22aの上部には、ほぼコ字形状となるように曲折形成された取付板22bが溶接等によって固定されている。取付板22bの上面の内面には、ブラケット23を介して検知部20が取り付けられていると共に、図示しない取付部材を介してコネクタ21が取り付けられている。
上述の構成により、ベース部材22は重量測定装置2を構成する測定皿7に接触及び干渉することなく固定部材である装置本体9に固定されているため、ベース部材22によって支持される検知部20、コネクタ21及びベース部材22自体といった主に金属からなる重量物が測定皿7に干渉してロードセル8によって測定されることを回避できる。これにより、ロードセル8による測定可能な最大重量内で重量測定装置2を構成可能となる。
【0024】
図1に示すように、個包載置台15の傾斜下位方向、本実施形態では右方端部には、ガイド部材25が配置されている。ガイド部材25は、成分分析に供される散薬を内包した個包を個包載置台15上に載置する際に、発光部20aからの光線が照射される上述した所定位置に個包内の散薬が位置するように個包をガイドする。
図8(a)はガイド部材25の斜め上方から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は左側面図、(d)は正面図をそれぞれ示している。
ガイド部材25は、個包載置台15とほぼ同一平面となり個包が載置される底面25a、底面25aの一方の長辺から上方に向けて突出形成された大壁面25b、底面25aの他方の長辺の角部に設けられ大壁面25bと同じ高さまで突出形成された突出角部25cを有している。さらにガイド部材25は、大壁面25bと突出角部とを接続する底面25aの一方の短辺から大壁面25bよりも低い位置まで突出形成された小壁面25d、底面25aの他方の短辺の近傍に設けられた位置決め部25eを有している。
大壁面25bの右下部には、鉄等の強磁性体25fが一体的に設けられている。位置決め部25eは底面25aから下方に向けて突出した円形の突出部25gを有しており、その中央には貫通穴25hが形成されている。ガイド部材25が装着される個包載置台15には、突出部25gがしっくりと嵌合可能な凹部15a及び貫通穴25hと同径の穴部15bが形成されている。ガイド部材25は、突出部25gを凹部15aに嵌合させた状態で、貫通穴25h及び穴部15bに嵌入可能な位置決めピン36によって、個包載置台15に対して位置決めされる。
【0025】
ガイド部材25は、個包載置台15に対して、
図1に示すように、大壁面25bが装置前面側に位置し小壁面25dが装置右側に位置するように装着される第1の態様と、この第1の態様とは逆に、大壁面25bが傾斜面14側に位置し小壁面25dが装置左側に位置するように装着される第2の態様とを選択的に占める。
第1の態様でガイド部材25を個包載置台15に装着した場合には、
図9に示すように、成分分析用の個包として個包載置台15上に3個の個包26A,26B,26Cが連なった個包26を載置した際に、右側に位置する個包26Cが小壁面25dの内壁に接触して個包26の位置決めが行われる。このとき、位置決めが行われた個包26は個包26Bをアーム部材18によって固定されるが、右端部に位置する個包26Cは大壁面25bによってガイドされる。第1の態様では、個包26のうち中央に位置する個包26Bが所定位置に位置決めされる。なお、各個包26A,26B,26Cは、形状及び封入された散薬の種類及び容量が全て同じとなるように作成される。第1の態様でガイド部材25を個包載置台15に装着した場合、ガイド部材25は、
図9において左方側の位置を位置決めピン36によって決定され、右側の位置は突出角部25cが個包載置台15の傾斜によって傾斜面14に寄り掛かることによって決定される。
【0026】
第2の態様でガイド部材25を個包載置台15に装着した場合には、
図10に示すように、成分分析用の個包として個包載置台15上に1個の個包27を載置した際に、個包27が小壁面25dの外壁に接触して位置決めが行われる。位置決めが行われた個包27はアーム部材18によって固定される。第2の態様でガイド部材25を個包載置台15に装着した場合、ガイド部材25は、
図10において右方側の位置を位置決めピン36によって決定される。ガイド部材25の左側の位置は、大壁面25bが個包載置台15の傾斜によって傾斜面14側に倒れ込むことによって決定されるが、
図9に示す重量バランスより、大壁面25bは傾斜面14側には積極的に倒れ込まない。そこで、傾斜面14の裏側であって、ガイド部材25が第2の態様で個包載置台15に装着されたときにガイド部材25に設けられた強磁性体25fと対応する位置には、強磁性体25fが磁着可能な磁石14bが設けられている。磁石14bの働きにより、ガイド部材25が第2の態様で個包載置台15上に装着される。
【0027】
ここで、発光部20aからの光線が照射される所定位置について説明する。上述したように発光部20aは、傾斜面14に貫通形成された窓部14aの内部に配置されており、
図9あるいは
図10に示すように、個包載置台15上に個包26(27)が載置された際に、個包26(27)の右下隅部分と対応する位置に配置位置、すなわち所定位置が定められている。
図11に示すように、個包27内に十分な量の散薬28が封入されている場合には、発光部20aにより散薬28に対して十分な発光を行うことができ、正確な成分鑑査を行うことができる。
しかし、個包27内に十分な量の散薬28が封入されていない場合には、
図12(a)に示すように散薬28が個包27内の発光部20aとは反対側の隅に溜まった場合、
図12(b)に示すように散薬28が個包27内の下方に溜まった場合、
図12(c)に示すように広範囲に散らばった場合、
図12(d)に示すように広範囲に散らばって発光部20aを覆えていない場合において、正確な成分鑑査を行うことができない。
【0028】
そこで本発明では、傾斜面14を装置奥側に向けて傾斜させると共に個包載置台15を左方から右方に向かうに従い上方から下方に向けて傾斜させており、これにより個包27内の散薬28が個包27の右下隅部分に集まるように構成されている。そして、このように散薬28が集められた個包27の右下隅部分を、ガイド部材25によって発光部20aと対応する所定位置に位置決めされるように構成している。これにより、発光部20aと対応する所定位置に十分な量の散薬28を集め、発光部20aにより集めた散薬28に対して正確な発光を行うことができ、より正確な成分鑑査を行うことができる。
なお、この例では個包27を用いて説明したが、個包26でも同様である。
【0029】
図13は、本発明の一実施形態に係る散薬鑑査装置1のシステム構成を示す概略図である。
図13に示すように、散薬鑑査装置1は表示装置であるディスプレイ29aを備えたパソコン29に接続されており、パソコン29には入力装置であるバーコードリーダ30がUSBハブ31を介して接続されている。パソコン29には、さらにUSBハブ31を介して上位解析システム32が接続されており、上位解析システム32には散薬分包装置33が接続されている。
上位解析システム32には、散薬分包装置33によって分包可能な全ての薬剤のデータが記憶されており、これ等のデータは複数の種類に分類されて更新可能に記憶されている。散薬分包装置33は上位解析システム32からのデータに基づいて様々な分包を行い、散薬が封入された個包が複数連続した分包紙を出力物として作成する。
【0030】
次に、上述した散薬鑑査装置1を用いた散薬鑑査工程について説明する。上位解析システム32には散薬分包装置33によって分包可能な全ての薬剤のデータの他に、全処方データ、散薬鑑査完了データ、分包完了データが記憶されている。全処方データは散薬分包装置33によって各患者の処方箋に基づいて分包される全ての処方箋データを、散薬鑑査完了データは全処方データのうち散薬分包装置33から分包前の散薬鑑査完了(患者毎の散薬の準備が完了)した信号を受け取った処方箋データを、分包完了データは散薬鑑査完了データのうち散薬分包装置33から分包が完了して分包紙が出力された信号を受け取った処方箋データをそれぞれ示している。
本発明では散薬分包装置33によって分包された分包紙を鑑査対象としているため、出力された分包紙を有する分包完了データに基づいた散薬鑑査工程が行われる。上位解析システム32に記憶された各データは、パソコン29を介して散薬鑑査装置1に送られる。
【0031】
図14(a)は、鑑査対象となる、個包26が連続して形成された分包紙26Xの一例を示している。樹脂製の分包紙26Xは、表面側には熱に強い基体層を、裏面側には静電気が発生しにくい層をそれぞれ有しており、表面側には文字やバーコード等の印字が可能であると共に、裏面側は静電気が少なく封入された散薬28が落下し易くなるように構成されている。分包紙26Xは、散薬分包装置33内において複数の個包26A,26B,26Cを作成され、各個包26A,26B,26C内のそれぞれに散薬28が封入されている。なお、
図14(a)では各個包26A,26B,26C内の散薬28として、各個包26A,26B,26Cの下方に集まった状態の散薬28を示したが、実際の散薬28は各個包26A,26B,26C内で分散しており、一つの箇所には集積していない。また、
図14(a)に示した散薬28も実際にはさらなる集積が可能であり、集積時にはその面積がさらに小さくなる。各個包26A,26B,26C間には、各個包26A,26B,26Cを分離する際に切り離されるミシン目26aが形成されている。なお、個包27も個包26と同様に、複数個が連なって分包紙27Xが形成される。
図14(b)は、鑑査対象である散薬28が封入された分包紙26Xが散薬鑑査工程に供される際に、指定のトレイ34に載置されている状態を示している。鑑査者は、散薬分包装置33から出力された分包紙26Xをトレイ34に載置して散薬鑑査装置1に運び、トレイ34上の分包紙26Xを鑑査する。また図示してはいないが、分包紙26Xには各個包26A,26B,26C内の散薬28に対応した処方箋の処方箋番号、及びこの処方箋番号に対応したバーコードが印刷されている。
【0032】
図15は、鑑査対象である散薬28が封入された分包紙26Xに対応した調剤指示データ35を示している。この調剤指示データ35は、散薬分包装置33による分包を含む調剤工程を行う際に用いられる。調剤指示データ35には、当該分包紙26Xに対応した患者氏名、処方箋番号、薬剤名、服用回数、分包紙重量、薬剤重量、分包紙総重量等が記載されている。
図15に示した例では、薬剤名としてテグレトール細粒50%が1日量1.5gで2日分、薬剤重量3.0gと分包紙6包重量3.9gで分包紙総重量が6.9gであることが記載されている。また、
図15に示した例では患者氏名や処方箋番号の記載を省略しているが、実際には各項目が記載されている。
調剤指示データ35は、後述する処方箋データに紐付けられて上位解析システム32に記憶されており、鑑査者は調剤指示データ35に記載された情報に基づいて散薬28の鑑査を行う。
【0033】
鑑査対象である散薬28が封入された分包紙26Xが入れられたトレイ34が散薬鑑査装置1に運ばれると、鑑査者は電源スイッチ5を押下して散薬鑑査装置1を始動させる。電源スイッチ5がオンされると、ディスプレイ29aに散薬鑑査装置1のスタートキーが表示され、鑑査者はパソコン29を操作して散薬の鑑査工程を開始する。スタートキーが操作されると、ディスプレイ29aにはリファレンスキーが表示され、アーム部材18が
図1に示す接触位置を占めた状態でリファレンスキーが押下されると、散薬鑑査装置1の初期設定動作が行われる。この初期設定動作は、重量測定装置2によって成分分析装置3の風袋重量が測定され、これが重量測定値のゼロ点に設定される。具体的には、ロードセル8によって成分分析装置3のうちの外装部10の重量のみが測定され、これが風袋重量に設定される。本発明の散薬鑑査装置1では、重量がかさむ分析部11はロードセル8には干渉しない構成であるため、精密計測が可能であるロードセル8の測定可能重量内で成分分析装置3を構成できる。
散薬鑑査装置1の初期設定動作は、散薬鑑査工程が行われる際の最初、すなわち散薬鑑査装置1に鑑査される分包紙26Xが載置される前に、その都度行われる。これにより、外装部10を構成するカバー部材12及び各ガイド部材16,17及びアーム部材18等に、例えば付着物等による重量変化があった場合でも、これを風袋として薬剤重量から除外でき重量鑑査の精度を向上できる。また、風袋重量として外装部10の重量を予め記憶させる必要がなく、構成を簡易化できる。
【0034】
初期設定動作完了後、鑑査者によりディスプレイ29a上に表示された更新キーが押下されると、ディスプレイ29a上には
図16に示すように、分包完了データに基づいた処方箋データが一覧表示される。
図16に示した例では一画面上に12個のデータを表示しており、この例では各データにおいて処方箋番号、患者名、処方薬名、重量等の表記をそれぞれ省略しているが、実際の各データにはそれぞれ異なる情報が表示及び記憶されている。
次に鑑査者は、分包紙26Xに印刷された処方箋番号を入力する。この入力により、ディスプレイ29aの一部に処方箋番号に対応した調剤指示データ35が表示される。そして鑑査者は、調剤指示データ35を参照して合致する処方箋データを検索して設定する。この設定は、ディスプレイ29aをタッチパネルとしてディスプレイ29aを接触することによって選択しても、パソコン29のキーボードやマウスから設定してもよい。
画面上に当該データが存在しない場合、鑑査者は画面をスクロールあるいはページ送りして新たな処方箋データを表示させて検索を続行する。ここで、鑑査に使用される分包完了データは、全処方データのうち散薬分包装置33から分包が完了して分包紙が出力された信号を受け取った処方箋データであるため、数量が少ないことから容易に検索を行うことができる。なお、分包紙26Xに印刷されたバーコードをバーコードリーダ30でスキャンすることにより、処方箋番号の入力動作を省略できる。
【0035】
鑑査対象の調剤指示データ35に対応した分包完了データが設定されると、ディスプレイ29aの表示が
図17に示す鑑査画面に変化する。
図17に示す鑑査画面では、一つの画面の左方に調剤指示データ35に対応した患者氏名、処方箋番号、薬剤名、分包紙重量、薬剤総重量の目標値、薬剤総重量の実測値等が表示されている。
また、同画面の右方には鑑査(測定)結果が表示される。この鑑査結果は、成分鑑査結果と重量鑑査結果とが一つの画面の中で2行表示されており、成分鑑査結果と重量鑑査結果とを一つの画面で同時に得ることができる。成分鑑査及び重量鑑査の判定結果は結果表示箇所29b(
図17において円で示した箇所)に表示され、鑑査前は各結果表示箇所29bが灰色で表示されている。
【0036】
ディスプレイ29aに鑑査画面が表示されると、鑑査者は成分鑑査対象である散薬28が封入された個包を分包紙から切り離して個包載置台15上にセットする。ここで、1日分の個包が3包である分包紙26Xの場合には、
図9に示すように、ガイド部材25を第1の態様で個包載置台15上に装着して、個包載置台15上に個包26A,26B,26Cを有する個包26をガイド部材25に接触させて載置し、アーム部材18を離間位置から接触位置に変位させて個包26Bを保持する。1日分の個包が1包である分包紙27Xの場合には、
図10に示すように、ガイド部材25を第2の態様で個包載置台15上に装着して、個包載置台15上に個包27をガイド部材25に接触させて載置し、アーム部材18を離間位置から接触位置に変位させて個包27を保持する。成分鑑査に供される個包26(27)が分離された残りの分包紙26X(27X)は、
図18に示すように、分包紙載置台13上に折り畳むように載置される。
【0037】
アーム部材18が接触位置に変位され、成分鑑査される個包26が個包載置台15上の所定位置に位置決めされると、個包26は
図9に示す状態となる。ここで、個包26B内の散薬28が個包26B内の所定位置すなわち右下隅部分に集まるように、傾斜面14は上方側から下方側に向かうに連れて前方側へと向かうように傾斜して形成されると共に、個包載置台15は左方から右方に向かうに連れて下方側へと向かうように傾斜して形成されている。この構成により、
図12に示すように個包26B(27)内で分散している散薬28を
図11に示すように個包26B(27)内の右下隅部分に集めることができ、成分鑑査時において発光部20aから発せられる光を確実に散薬28に照射することができる。これにより、正確な成分鑑査を行うことができる。
また、分包紙載置台13上に載置された分包紙26X(27X)は複数の囲壁である各ガイド部材16,17によって囲まれる状態となるので、各ガイド部材16,17によって分包紙26X(27X)が分包紙載置台13から落下することを効果的に防止することができる。
【0038】
アーム部材18によって個包26(27)が個包載置台15上の所定位置に固定されると、例えばアーム部材18の変位を検知する図示しないセンサによってこれが検知され、ディスプレイ29aに「鑑査を開始しますか」といった表示がなされる。そして、鑑査者により図示しないスタートキーがオンされることにより、散薬鑑査動作が行われる。
散薬鑑査動作では、先ず重量測定装置2すなわちロードセル8によって外装部10、分包紙載置台13上の分包紙26X(27X)、及び個包載置台15上の個包26(27)の重量が測定される。ここで、初期設定動作により外装部10の重量が風袋として処理されているため、実際には分包紙26X(27X)及び個包26(27)の重量が測定される。測定された重量は、
図17に示す実測値としてディスプレイ29a上に表示される。
そして散薬鑑査装置1は、測定された分包紙26X(27X)及び個包26(27)の重量である実測値が、当該処方データの全量に基づいて予め定められている許容値(例えば±5%)以内である場合に合格であると判断し、重量鑑査結果に対応した表示箇所29bを緑色に点灯させる。また、許容値を外れている場合には不合格であると判断して、表示箇所29bを赤色に点灯させる。
【0039】
重量鑑査が完了すると、続いて成分鑑査が行われる。成分鑑査は、上述したように特開2020-85513号公報で開示された方法と同様に行われる。この成分鑑査時において、
図11に示すように、個包載置台15上に固定された個包26B(27)内の所定位置に集められた散薬28に対して発光部20aから発せられた光が照射されるので、散薬28の成分鑑査を正確に行うことができる。なお、散薬28の成分鑑査は個包26B(27)を構成する分包紙を介して行われるため、分包紙の成分が判明している必要がある。
そして散薬鑑査装置1は、分析された個包26B(27)内の散薬28の成分に対応した分光スペクトルデータが、当該処方データに記載された薬剤の成分に対応した分光スペクトルデータに対して許容値(例えば一致率95%)以上である場合に合格であると判断し、成分鑑査結果に対応した表示箇所29bを緑色に点灯させる。また、許容値を外れている場合には不合格であると判断して、表示箇所29bを赤色に点灯させる。
【0040】
本実施形態で示した散薬鑑査装置1は、散薬の重量を測定する重量測定装置2と散薬の成分を分析する成分分析装置3と、分包紙26X(27X)が載置される分包紙載置台13と、分包紙26X(27X)から分離された個包26(27)が載置される個包載置台15とを備えている。そして散薬鑑査装置1は、個包載置台15上に載置された個包26(27)の成分を分析し、分包紙載置台13及び個包載置台15に載置された分包紙26X(27X)及び個包26(27)の総重量を測定する。従って、長尺の分包紙26X(27X)から短い個包26(27)を分離して成分鑑査を行うことにより、散薬鑑査装置1に対する分包紙26X(27X)及び個包26(27)のセット(装着)を簡単に行うことができ、操作性を向上することができる。
【0041】
また、本発明の散薬鑑査装置1は、個包26(27)内の散薬28が所定位置すなわち右下隅部分に集まるように、傾斜面14は上方側から下方側に向かうに連れて前方側へと向かうように傾斜して形成されると共に、個包載置台15は左方から右方に向かうに連れて下方側へと向かうように傾斜して形成されている。この構成により、
図12に示すように個包26B(27)内で分散している散薬28を
図11に示すように個包26B(27)内の右下隅部分に集めることができ、成分鑑査時において発光部20aから発せられる光を確実に散薬28に照射することができる。これにより、正確な成分鑑査を行うことができる。
また、本発明の散薬鑑査装置1において、分包紙載置台13上に載置された分包紙26X(27X)は複数の囲壁である各ガイド部材16,17によって囲まれる状態となるので、各ガイド部材16,17によって分包紙26X(27X)が分包紙載置台13から落下することを効果的に防止することができる。
【0042】
また、本発明の散薬鑑査装置1は、個包載置台15に対して接離自在に設けられ、個包26(27)を個包載置台15に対して固定するアーム部材18を備えている。この構成により、個包載置台15上に個包26(27)を固定でき、個包載置台15上からの個包26(27)の落下を抑制できる。
また、本発明の散薬鑑査装置1において、アーム部材18は接触位置と離間位置とを占め、アーム部材18を接触位置で保持する保持部材としての突起部18cを有している。この構成により、成分分析対象の個包26(27)を良好に保持でき、個包26(27)の個包載置台15からの落下を防止して正確な成分鑑査を補助することができる。
【0043】
また、本発明の散薬鑑査装置1は、アーム部材18により個包載置台15に対して個包26(27)が保持される際に、個包26(27)の散薬28が集まる右下隅部分が所定位置である発光部20aから発せられる光が照射される位置を占めるように、個包26(27)をガイドするガイド部材25を備えている。この構成により、発光部20aと対応する所定位置に十分な量の散薬28を集め、発光部20aにより集めた散薬28に対して正確な発光を行うことができ、より正確な成分鑑査を行うことができる。
また、本発明の散薬鑑査装置1は、ガイド部材25が個包載置台15に対して着脱自在であるので操作性がよいと共に、ガイド部材25は個包載置台15に保持される個包26(27)の数量が互いに異なる二つの態様で個包載置台15に装着可能であるので、1日処方量に応じて個包の成分分析を行うことができる。
【0044】
上述した実施形態では、散薬鑑査装置1に接続された上位解析システム32に分包完了データ、散薬鑑査完了データ、全処方データが記憶され、上位解析システム32を介して散薬分包装置33から送られた分包完了データに基づいて散薬鑑査装置1が散薬鑑査工程を行う例を示した。しかし、上位解析システム32を介することなく、分包完了データを散薬分包装置33から直接受け取って散薬鑑査装置1が散薬鑑査工程を行う構成としてもよい。
また、分包完了データに代えて、散薬鑑査完了データあるいは全処方データに基づいて散薬鑑査装置1が散薬鑑査工程を行う構成としてもよい。
散薬鑑査完了データに基づいて散薬鑑査工程を行う場合には、上述した散薬準備完了まで進んだ時点でディスプレイ29a上に
図16と同様な一覧表示がなされる。しかし、この時点では結果物である分包紙が散薬分包装置33から出力されていない場合もあるため、鑑査者は分包紙がないあるいは出力数が表示数よりも少ないといった場合には、散薬分包装置33が散薬準備を終えて分包待ち状態であり、分包紙が近々出力されることを推測できる。
全処方データに基づいて散薬鑑査工程を行う場合には、分包紙の出力や散薬準備完了の何れも判断できず全ての処方箋データが一覧表示されるため、ディスプレイ29a上に表示される情報量が分包完了データ及び散薬鑑査完了データに比して飛躍的に多くなる。
【0045】
上述した各モードを併用し、モード毎にディスプレイ29aにおける表示色を変更する等によって仕分けを行い、分包完了データ、散薬鑑査完了データ、それ以外のデータを一覧で表示することにより全体の分包工程の総量及び進度を判り易くすることができ、工程管理を容易に行うことができる。
また、ソート機能を用いて、例えば分包完了データを優先表示させ、次に散薬鑑査完了データ、最後に全処方データを表示させることにより、結果物を伴う処方データの選択を容易化できる。また、ソート機能を用いても全体の情報表示量に変化はないが、基本的には分包完了データを維持し、分包工程の全体進度を確認するために切り替えを行う等の運用を行うことにより、工程管理を容易化できる。
【0046】
分包完了データは、基本的には散薬分包装置33と散薬鑑査装置1とが接続された状態でしか使用することができない。しかし、散薬鑑査工程のシステム構成として、散薬分包装置がシステムから外れたスタンドアロンの状態で使用される場合も考えられる。この場合には、散薬分包装置33から分包完了データを受信することができないため、散薬鑑査工程としては上述した全処方データを用いることとなる。
また、システム構成に組み込まれた散薬分包装置33としては、分包に使用される分包紙として成分が判明しているものが用いられる。これは、成分分析装置3によって散薬28の成分が分析される際に、分包紙の成分も同時に分析されるためである。しかし、上述したようなスタンドアロンの散薬分包装置の場合には、使用されている分包紙の成分が判明していない場合が多い。このため、散薬鑑査装置1をスタンドアロンの散薬分包装置と併用する場合には、使用される分包紙の成分を予め分析する必要がある。
【0047】
上述の実施形態では、重量鑑査を行う場合に、分包紙載置台13に対して重量鑑査対象の分包紙26X(27X)を全て載置する場合を示した。しかし、長期処方によって分包紙が長尺で処方される場合がある(例えば1日3回4週間で84包)。このような長期処方の場合には、全ての分包紙26X(27X)を分包紙載置台13上に載置しきれない場合がある。このような場合には、当該分包紙を例えば10包で切断し、1包で成分を、10包で重量を測定する。分包紙内の散薬28の量は均等であるので、10包での重量鑑査結果が合格であれば、残り74包も均等であることから、トータル重量も合格となる。
【0048】
上述の実施形態では、重量鑑査結果と成分鑑査結果とをそれぞれ表示しており、何れか一方が不合格であった場合に不合格とする構成とはしていない。例えば重量鑑査結果が不合格であり成分鑑査結果が合格である場合には、薬効的には合格している。このような場合であって、かつ重量鑑査結果の不合格範囲がごく少ない場合(例えば±5%以内が合格範囲である場合に+5.2%であった場合等)には、鑑査者が重量誤差として合格とする場合も考えられる。分包紙は散薬分包装置内を通過した後に出力されるため、重量誤差が発生する場合もあり得るためである。本発明の構成では、このような事例にも対応可能である。
【0049】
また、上述の散薬鑑査装置1では、成分鑑査時において、ディスプレイ29aに表示される図示しない検索キーを押下すると、印字のかすれ等によって名称が不明確であったり、処方データがなかったりする薬剤を分析し、データベースに登録されている薬剤の中から類似性の高い薬剤をリストアップすることが可能である。鑑査対象の個包を個包載置台15にセットして検索キーを押下すると、データベースに登録された薬剤の中からスペクトル類似性の高い薬剤が最大10個リストアップされる。リストアップされた薬剤のうち、適合度が所定値以上の薬剤はハイライト表示される。この機能により、名称が不明な薬剤を検索することができる。
【0050】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
[1]個包内に封入された散薬の重量を測定する重量測定装置と、前記散薬に光を照射し前記散薬から反射された光を分光分析して前記散薬の成分を分析する成分分析装置とを備え、前記散薬の重量鑑査及び成分鑑査を行う散薬鑑査装置であって、散薬が封入された個包が複数連続した分包紙が載置される分包紙載置台と、前記分包紙から分離された個包が載置される個包載置台と、を備え、前記成分分析装置は前記個包載置台に載置された個包内の散薬の成分を分析し、前記重量測定装置は前記分包紙載置台及び前記個包載置台に載置された前記分包紙及び前記個包の総重量を測定する散薬鑑査装置である。
[2]前記成分分析装置は前記散薬に光を照射する発光部を有し、前記個包載置台は前記個包内の散薬が所定位置に集まるように傾斜して設けられ、前記発光部は前記所定位置に向けて発光することを特徴とする[1]に記載の散薬鑑査装置である。
[3]前記分包紙載置台は前記分包紙の落下を防止する複数の囲壁を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の散薬鑑査装置である。
[4]前記個包載置台に対して接離自在に設けられ、前記個包を前記個包載置台に対して固定するアーム部材を有することを特徴とする[1]ないし[3]の何れか一つに記載の散薬鑑査装置である。
[5]前記アーム部材は、前記個包を前記個包載置台に対して固定する第1の位置と、前記個包載置台に対する前記個包の固定を解除する第2の位置とを占め、前記アーム部材を前記第1の位置に保持する保持部材を有することを特徴とする[4]に記載の散薬鑑査装置である。
[6]前記アーム部材により前記個包載置台に対して前記個包が固定される際に、前記個包内の散薬が前記所定位置を占めるように前記個包をガイドするガイド部材を有することを特徴とする[4]または[5]に記載の散薬鑑査装置である。
[7]前記ガイド部材は、前記個包載置台に対して着脱自在であることを特徴とする[6]に記載の散薬鑑査装置である。
[8]前記ガイド部材は、前記個包載置台に対して第1の態様または第2の態様で装着可能であり、前記各態様において前記個包載置台に対して固定される前記個包の数量がそれぞれ変化することを特徴とする[7]に記載の散薬鑑査装置である。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 散薬鑑査装置
2 重量測定装置
3 成分分析装置
13 分包紙載置台
15 個包載置台
16 囲壁(第1ガイド部材)
17 囲壁(第2ガイド部材)
18 アーム部材
18c 保持部材(角柱部)
20a 発光部
25 ガイド部材
26,27 個包
26X,27X 分包紙
28 散薬