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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024483
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】測定装置及びバンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240215BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240215BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/89
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127331
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA07
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA04
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA19
2F112DA21
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112GA01
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA40
5J084BB02
5J084BB20
5J084BB26
5J084BB28
5J084CA03
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響を抑制する。
【解決手段】本開示に係る測定装置は、温度に応じた波長の光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光の反射光を通過させるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを通過した光を受光する受光センサとを備える。本開示に係る測定装置では、温度に応じて前記バンドパスフィルタを通過可能な光の波長が変化することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に応じた波長の光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された光の反射光を通過させるバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタを通過した光を受光する受光センサと
を備え、
温度に応じて前記バンドパスフィルタを通過可能な光の波長が変化する、
測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記バンドパスフィルタは、基材と、前記基材の上に形成された薄膜とを有し、
前記薄膜の表面には、複数の突起が所定のパターンで配置されており、
温度に応じて、前記突起の間隔が変化する、
測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置であって、
前記基材の線膨張係数は、前記薄膜の線膨張係数よりも大きい、測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置であって、
前記基材は、光透過性の樹脂で構成されている、測定装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の測定装置であって、
前記突起は、柱状に構成されており、
複数の前記突起が格子状に配置されている、
測定装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の測定装置であって、
前記突起は、凸条に構成されており、
複数の前記凸条が所定方向に並んで配置されている、
測定装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載の測定装置であって、
前記受光センサに光を集光する集光レンズを更に備え、
前記バンドパスフィルタは、前記集光レンズと前記受光センサとの間に配置されている、
測定装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載の測定装置であって、
前記発光部は、所定の波長帯域の範囲で温度に応じた波長の光を照射し、
前記所定の波長帯域の光を通過させ前記バンドパスフィルタとは別のバンドパスフィルタを更に備える、
測定装置。
【請求項9】
基材と、
前記基材の上に形成された薄膜と、
を有し、
前記薄膜の表面には、複数の突起が所定のパターンで配置されており、
温度に応じて、前記突起の間隔が変化することによって、通過可能な光の波長が変化する、
バンドパスフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及びバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パルス光を射出してから反射光を受光するまでの光の飛行時間に基づいて、反射物までの距離を測定する測距装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-152536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光等の背景光によるノイズの影響を低減させるため、受光用光学系にバンドパスフィルタを設けることがある。但し、発光部から出射される光の波長が温度に応じて変化する場合、バンドパスフィルタの通過帯域を拡張する必要がある。この結果、受光素子の受光データに混入するノイズが増加して、測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、ノイズの影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、温度に応じた波長の光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光の反射光を通過させるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを通過した光を受光する受光センサとを備え、温度に応じて前記バンドパスフィルタを通過可能な光の波長が変化する、測定装置である。
【0007】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノイズの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、測定装置1の全体構成の説明図である。
図2図2は、測定装置1の概略説明図である。
図3図3は、測定方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図4図4A及び図4Bは、受光部20の説明図である。
図5図5は、本実施形態のバンドパスフィルタBPFの特性を示す概略説明図である。
図6図6A及び図6Bは、バンドパスフィルタBPFの構造の拡大説明図である。
図7図7は、バンドパスフィルタBPFの特性を示すグラフである。
図8図8は、バンドパスフィルタBPFの別の特性を示すグラフである。
図9図9は、バンドパスフィルタBPFの配置の変形例の説明図である。
図10図10A図10Cは、別のバンドパスフィルタBPF’の配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0011】
<全体構成>
図1は、測定装置1の全体構成の説明図である。図2は、測定装置1の概略説明図である。
【0012】
以下の説明では、図2に示すように各方向を定めている。Z方向は、受光用光学系24の光軸に沿った方向である。なお、測定装置1の測定対象となる対象物90は、測定装置1に対してZ方向に離れていることになる。また、X方向及びY方向は、Z方向に対して垂直な方向である。X方向は、投光用光学系14の光軸と受光用光学系24の光軸の並ぶ方向である。Y方向は、X方向及びZ方向に垂直な方向である。
【0013】
測定装置1は、対象物90までの距離を測定する装置である。測定装置1は、いわゆるLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)としての機能を有する装置である。測定装置1は、測定光を出射し、対象物90の表面で反射した反射光を検出し、測定光を出射してから反射光を受光するまでの時間を計測することによって、対象物90までの距離をTOF方式(Time of flight)で測定する。測定装置1は、照射部10と、受光部20と、制御部30とを有する。
【0014】
照射部10は、対象物90に向かって測定光を照射する照射装置である。照射部10は、所定の画角で測定エリア50(図2参照)に測定光を照射する。照射部10は、発光部12と、投光用光学系14とを有する。発光部12は、光を出射する部材(光源)である。例えば、発光部12は、面発光レーザー(VCSEL)アレイチップで構成されている。発光部12は、発光素子121(例えば面発光レーザー;VCSEL)を複数有しており、複数の発光素子121はX方向及びY方向に沿って2次元配置されている。投光用光学系14は、発光部12から出射された光を測定エリア50に照射する光学系である。発光部12は、それぞれの発光素子121を個別に発光させることができる。発光部12のそれぞれの発光素子121は、投光用光学系14を介して、測定エリア50の所定の領域に対応付けられている。或る発光素子121から出射した光は、投光用光学系14を介して、測定エリア50の対応する領域に照射されることになる。但し、照射部10は、発光部12の発光面全体から光を出射して、測定エリア50の全体に光を一括照射するように構成されても良い。また、投光用光学系14が回転可能なミラー(例えばポリゴンミラー)を備えており、ミラーを回転させることによって発光部12の光を測定エリア50に照射しても良い。なお、発光部12が照射する光の波長は、温度に応じて変化する。この点については後述する。
【0015】
受光部20は、対象物90からの反射光を受光する。受光部20は、測定エリア50(図2参照)からの反射光を受光することになる。受光部20は、受光センサ22と、受光用光学系24とを有する。受光センサ22は、2次元配置された複数の画素221を有する。例えば、VGAの受光センサ22の場合、480×640の画素221が2次元配置されている。各画素221は、受光素子を有しており、受光素子は、受光量に応じた信号(受光データ)を出力する。受光用光学系24は、測定エリア50からの反射光を受光部20に受光させる光学系である。受光用光学系24は、測定エリア50の像を受光センサ22の受光面で結像させる。受光センサ22のそれぞれの画素221は、受光用光学系24を介して、測定エリア50の所定の領域に対応付けられている。受光センサ22の或る画素221は、受光用光学系24を介して、測定エリア50の対応する領域からの光(反射光及び背景光)を受光することになる。また、受光センサ22のそれぞれの画素221は、発光部12の所定の発光素子121と対応付けられている。或る発光素子121から出射した光は、投光用光学系14及び受光用光学系24を介して、対応する画素221に受光されることになる。なお、受光用光学系24については、後述する。
【0016】
制御部30は、測定装置1の制御を司る。制御部30は、照射部10を制御し、照射部10から照射させる光を制御する。また、制御部30は、受光部20の出力結果に基づいて、対象物90までの距離をTOF方式(Time of flight)で測定する。制御部30は、不図示の演算装置及び記憶装置を有する。演算装置は、例えばCPU、GPU、MPU、ASICなどで構成された演算処理装置である。演算装置の一部がアナログ演算回路で構成されても良い。記憶装置は、主記憶装置と補助記憶装置とにより構成され、プログラムやデータを記憶する装置である。記憶装置に記憶されているプログラムを演算装置が実行することにより、対象物90までの距離を測定するための各種処理が実行される。図1には、各種処理の機能ブロックが示されている。
【0017】
制御部30は、設定部32と、タイミング制御部34と、測距部36とを有する。設定部32は、各種設定を行う。タイミング制御部34は、各部の処理タイミングを制御する。例えば、タイミング制御部34は、発光部12から光を射出させるタイミングなどを制御する。測距部36は、対象物90までの距離を測定する。測距部36は、信号処理部362と、時間検出部364と、距離算出部366とを有する。信号処理部362は、受光センサ22の出力信号(受光データ)を処理する。時間検出部364は、光の飛行時間(光を照射してから反射光が到達するまでの時間)を検出する。距離算出部366は、対象物90までの距離を算出する。
【0018】
図3は、測定方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【0019】
制御部30(タイミング制御部34)は、照射部10の発光部12に所定の周期でパルス光を出射させる。図3の上側には、発光部12がパルス光(測定光)を出射するタイミングが示されている。発光部12から出射された光は、投光用光学系14を介して測定エリア50に照射される。測定エリア50内の対象物90の表面で反射した光は、受光用光学系24を介して受光センサ22に受光される。受光センサ22の画素221は、パルス状の反射光を受光することになる。図3の中央には、パルス状の反射光が到達するタイミングが示されている。図3の下側には、受光センサ22の或る画素221の画素データS(或る画素221の受光素子の受光データ)が示されている。受光センサ22の画素データSは、画素221の受光量を示すデータである。
【0020】
制御部30(タイミング制御部34)は、発光部12の全ての発光素子121から光を出射させて測定エリア50の全体に光を一括して照射しても良いし、発光部12の一部の発光素子121(例えば1つの発光素子121)から光を出射させて測定エリア50の所定の領域のみに光を照射しても良い。発光部12の一部の発光素子121(例えば1つの発光素子121)から光を出射させる場合、制御部30(信号処理部362)は、発光させた発光素子121に対応する画素221の画素データSを取得することになる。
【0021】
制御部30の測距部36(信号処理部362)は、各画素221の画素データSに基づいて、反射光の到達タイミングを検出する。例えば、信号処理部362は、画素データSのピークのタイミングに基づいて、反射光の到達タイミングを検出する。
測距部36(時間検出部364)は、光の出射タイミングと、光の到達タイミングとに基づいて、光を照射してから反射光が到達するまでの時間Tfを検出する。時間Tfは、測定装置1と対象物90との間を光が往復する時間に相当する。そして、測距部36(距離算出部366)は、時間Tfに基づいて、対象物90までの距離Lを算出する。なお、光を照射してから反射光が到達するまでの時間をTfとし、光の速度をCとしたとき、距離Lは、L=C×Tf/2となる。制御部30は、受光部20の画素221ごとに検出した時間Tfに基づいて、画素221ごとに対象物90までの距離を算出することによって、距離画像を生成する。
【0022】
<受光部20について>
図4A及び図4Bは、受光部20の説明図である。
【0023】
受光用光学系24は、集光レンズ241と、バンドパスフィルタBPFとを有する。集光レンズ241は、測定エリア50の像を受光センサ22の受光面に結像させる光学素子である。バンドパスフィルタBPFは、特定の波長の光を通過させ、当該特定波長以外の光をカットする(減衰させる)フィルタである。バンドパスフィルタBPFでは、特定の波長の光の透過率は高く、当該特定波長以外の光の透過率は低い(当該特定波長以外の光の減衰率は高い)。以下の説明では、バンドパスフィルタBPFを通過する光の波長帯域のことを「通過帯域」と呼び、バンドパスフィルタBPFにカット(減衰)される光の波長帯域のことを「遮断帯域」と呼ぶことがある。例えば、通過帯域は、バンドパスフィルタBPFの透過率が50%以上となる波長帯域であり、遮断帯域は透過率が50%未満となる帯域である。バンドパスフィルタBPFは、反射光を透過させる必要があるため、少なくとも、発光部12から照射される波長の光を透過可能である(発光部12から照射される光の波長に対する透過率は高い)。つまり、バンドパスフィルタBPFの通過帯域には、発光部12から出射される光の波長が少なくとも含まれる必要がある。受光用光学系24がバンドパスフィルタBPFを備えることにより、太陽光等の背景光における遮断帯域の光をカットできるため、背景光によるノイズの影響を抑制することができる。
【0024】
一方、発光部12から出射する光の波長λは、温度に応じて変化する。例えば、発光部12の温度が上昇すると、発光部12から出射する光の波長λは長くなる。ここでは一例として、発光部12は、温度がT1(例えばT1=25℃)のときに波長λ1(例えばλ1=940nm)の光を出射し、温度がT2(例えばT2=105℃)のときに波長λ2(例えばλ2=946nm)の光を出射する。つまり、発光部12は、使用温度T1~T2の範囲において、λ1~λ2の波長帯域の範囲で、温度に応じた波長λの光を出射することになる。
【0025】
バンドパスフィルタBPFは、発光部12から照射される光を高い透過率で透過させる必要がある。仮にバンドパスフィルタBPFの通過帯域が温度によらずに一定な場合、使用温度T1~T2の範囲で発光部12から出射される光の波長帯域(λ1~λ2)の全ての波長に対して高い透過率であることが求められる。つまり、発光部12から出射される光の波長帯域(λ1~λ2の範囲)の全てが含まれるように、バンドパスフィルタBPFの通過帯域を拡張する必要がある。但し、バンドパスフィルタBPFの通過帯域が拡張された結果、バンドパスフィルタBPFを通過する背景光(背景光における通過帯域の光)が増加してしまう。このため、バンドパスフィルタBPFの通過帯域が温度によらずに一定な場合、画素データS(画素221の受光量を示すデータ)に含まれるノイズが増加してしまう。
そこで、本実施形態では、温度に応じてバンドパスフィルタBPFの通過可能な光の波長が変化する。言い換えると、本実施形態のバンドパスフィルタBPFは、温度に応じて特性を変化させる(バンドパスフィルタBPFが温度依存性を有する)。以下、この点について説明する。
【0026】
図5は、本実施形態のバンドパスフィルタBPFの特性を示す概略説明図である。図中のグラフの横軸は波長(単位:nm)を示し、縦軸は透過率(単位:%)を示している。図中の2つのグラフは、異なる2つの温度でのバンドパスフィルタBPFの波長と透過率との関係を示している。図中の太線は、温度T11のときのバンドパスフィルタBPFの特性を示すグラフである。図中の細線は、温度T12(T>11)のときのバンドパスフィルタBPFの特性を示すグラフである。
【0027】
図に示すように、バンドパスフィルタBPFの通過帯域(バンドパスフィルタBPFを通過する光の波長帯域)は、温度に応じて変化する。ここでは、温度が上昇すると、バンドパスフィルタBPFの通過帯域の波長が長くなる。つまり、バンドパスフィルタBPFの通過帯域は、温度が高くなると、グラフが図中の右側(長波長側)にシフトする。図中には、温度がT11のときのバンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長(透過率がピークとなるピーク波長)はλ11であるのに対し、温度がT12(>T12)のときのバンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長はλ12(>λ12)である。波長λ11に対するバンドパスフィルタBPFの透過率は、温度がT12(>T11)のときよりも温度がT11のときの方が高い。また、波長λ12に対するバンドパスフィルタBPFの透過率は、温度がT11のときよりも温度がT12(>T11)のときの方が高い。
【0028】
図5における温度T11は前述の温度T1(例えばT1=25℃)と同程度に設定されており、λ11は、前述の波長λ1(例えばλ1=940nm)と同程度に設定されている。また、温度T12は前述の温度T2(例えばT2=105℃)と同程度に設定されており、λ11は、前述のλ2(例えばλ2=946nm)と同程度に設定されている。これにより、温度がT1(例えばT1=25℃)であり、発光部12が波長λ1(例えばλ1=940nm)の光を出射するとき、波長λ1に対するバンドパスフィルタBPFの透過率が高くなり、波長λ1の反射光がバンドパスフィルタBPFを通過し易くなる。また、温度がT2(例えばT2=105℃)であり、発光部12が波長λ2(例えばλ2=946nm)の光を出射するとき、波長λ2に対するバンドパスフィルタBPFの透過率が高くなり、波長λ2の反射光がバンドパスフィルタBPFを通過し易くなる。なお、温度T1(≒T11)のときのバンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長(ピーク波長)をλ1に設定しつつ、温度T2(≒T12)のときのバンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長(ピーク波長)をλ2に設定するためのバンドパスフィルタBPFの構造については後述する。
【0029】
上記の通り、発光部12の温度が上昇すると発光部12から出射する光の波長λが長くなるため、本実施形態では、温度が上昇すると透過率のピークとなる波長(中心波長)が長くなるようなバンドパスフィルタBPFが用いられている。これにより、発光部12から出射する光の波長λが温度に応じて変化しても、その波長λに対するバンドパスフィルタBPFの透過率が高くなるとともに、その波長以外の波長に対するバンドパスフィルタBPFの透過率が低くなる。この結果、画素データSに含まれるノイズの影響を低減させることができ、SN比が向上する。
【0030】
<バンドパスフィルタBPFの構造について>
図6A及び図6Bは、バンドパスフィルタBPFの構造の拡大説明図である。図6Aは、バンドパスフィルタBPFの上面図である。図6Bは、バンドパスフィルタBPFの断面図である。なお、図6Aには突起27が7つだけ描かれているが、バンドパスフィルタBPFの表面には、無数の突起27が図6Aに示す配置パターンで配置されている。
【0031】
バンドパスフィルタBPFは、基材25と、薄膜26とにより構成されている。
【0032】
基材25は、光透過性の部材で構成されている。例えば、基材25はガラス基板(ここでは有機ガラス)で構成される。基材25の表面には薄膜26が形成されている。例えば、基材25は光透過性の樹脂(透過率の高い樹脂)で構成されており、ここでは基材25はPMMA(Poly Methyl Methacrylate;ポリメタクリル酸メチル樹脂)で構成されている。但し、基材25は、他の有機ガラスで構成されても良い。また、ここでは、基材25は、薄膜26と比べて線膨張係数が大きい材料で構成されている。但し、基材25は、薄膜26と同程度の線膨張係数でも良く、薄膜26と比べて線膨張係数が大きい材料でなくても良い。
【0033】
薄膜26は、基材25の表面に形成されている。また、薄膜26は、基材25とは異なる屈折率となる材料で構成されている。例えば、薄膜26の屈折率n2が基材25の屈折率n1よりも高く(大きく)なるように、薄膜26は高い屈折率の材料で構成されている。ここでは、薄膜26は、酸化チタン(TiO)で構成されている。但し、薄膜26は、酸化チタン(TiO)に限られるものではなく、例えばアモルファスシリコン(α-Si)で構成されても良い。また、ここでは、薄膜26は、基材25と比べて線膨張係数が小さい材料(無機材料)で構成されている。但し、薄膜26は、基材25と同程度の線膨張係数でも良く、基材25と比べて線膨張係数が小さい材料でなくても良い。
【0034】
薄膜26の表面には、複数の突起27が設けられている。薄膜26の表面の突起27は、光の波長よりも小さい微小構造体であり、ナノポストと呼ばれることもある。突起27は、柱状に構成されており、ここでは、突起27は円柱状に構成されている。但し、突起27は、角柱状(例えば6角柱状、8角柱状など)に構成されても良い。多数の突起27は、所定のパターンで配置されている。ここでは、図6Aに示すように、柱状の突起27が格子状に配置されている。言い換えると、薄膜26の表面に、ナノポストアレイが形成されている。多数の突起27を格子状に配置することによって、突起27を所定の間隔で配置できる。また、柱状の突起27が格子状に配置されることによって、バンドパスフィルタBPFの偏光依存性を弱めることができる。また、図6Aに示すように、多数の突起27を三角格子状(正三角格子状)に配置することによって、周囲の6つの突起27との間隔が等しくなるように、各突起27を高密度で配置することができる。なお、突起27の配置パターンは、図6Aに示すパターンに限られるものではない。例えば、周囲の3つの突起27との間隔が等しくなるように多数の突起27を六角格子状に配置しても良い。突起27は、薄膜26と同じ材料で構成されており、ここでは酸化チタン(TiO)で構成されている。
【0035】
光の波長よりも小さい突起27が所定パターンで配置されることによって、光の位相や方向が制御され、強め合う波長(若しくは弱め合う波長)が制御される。本実施形態では、温度変化に応じて基材25及び薄膜26(及び突起27)が膨張・収縮するため、温度に応じて、突起27の間隔が変化する(突起27の密度が変化する)。これにより、温度に応じて、バンドパスフィルタBPFを通過可能な光の波長が変化し、バンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長が変化する。本実施形態では、温度が上昇すると突起27の間隔が広がるため、バンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長が長くなる(長波長側にシフトする)。このため、温度が上昇したときに、発光部12から出射する光の波長λは長くなるのに適応するように、バンドパスフィルタBPFの通過帯域を変化させることができる。なお、温度に応じて、突起27の形状(円柱の高さや直径)も変化し、この影響によってもバンドパスフィルタBPFを通過可能な光の波長が変化し、バンドパスフィルタBPFの通過帯域の中心波長が変化することになる。本実施形態では、突起27同士の間隔を調整することによって、バンドパスフィルタBPFの特性(温度依存性)を調整可能である。また、突起27の高さや直径を調整することによって、バンドパスフィルタBPFの特性(通過帯域や遮断帯域の波長など)を調整可能である。
【0036】
なお、本実施形態では、線膨張係数の大きい基材25の上に、突起27を有する薄膜26が形成されている。これにより、突起27(薄膜26)の線膨張係数が小さくても、温度に応じた突起27の間隔の変化を大きくできる。但し、基材25の線膨張係数が薄膜26(及び突起27)の線膨張係数よりも大きくなくても良く、例えば、基材25の線膨張係数が薄膜26(及び突起27)の線膨張係数と同程度でも良い。
【0037】
図7は、バンドパスフィルタBPFの特性を示すグラフである。図中の太線は、温度が25℃(前述のT1,T11に相当)のときのバンドパスフィルタBPFの特性を示すグラフである。図中の細線は、温度が105℃(前述のT2,T12に相当)のときのバンドパスフィルタBPFの特性を示すグラフである。
【0038】
図7に示すバンドパスフィルタBPFでは、基材25はPMMA(Poly Methyl Methacrylate;ポリメタクリル酸メチル樹脂)で構成されており、薄膜26(及び突起27)は酸化チタン(TiO)で構成されている。基材25の線膨張係数は56×10-6/℃であり、薄膜26の線膨張係数は10×10-6/℃である。また、基材25の屈折率は1.49であり、薄膜26の屈折率は2.5である。薄膜26の厚さは146nmである。突起27は図6Aに示すパターンで配置されており、突起27同士の間隔は557nmである。また、円柱状の突起27の半径は185nmであり、突起27の高さは145nmである。
【0039】
図7に示すバンドパスフィルタBPFは、25℃のときに940nm(前述のλ1,λ11に相当)に対する透過率が高くなる。本実施形態の発光部12は25℃のときに940nmの波長の光を出射するため、このバンドパスフィルタBPFは、反射光を透過し易くなる。また、このバンドパスフィルタBPFは、105℃のときに946nm(前述のλ2,λ12に相当)に対する透過率が高くなる。本実施形態の発光部12は105℃のときに946nmの波長の光を出射するため、このバンドパスフィルタBPFは、反射光を透過し易くなる。
【0040】
なお、ここでは、発光部12は、25℃のときに940nmの波長の光を出射し、105℃のときに946nmの波長の光を出射することを想定している。但し、発光部12の構造に応じて、発光部12の温度特性が異なることがある。この場合、発光部12の温度特性に応じて、バンドパスフィルタBPFの突起27の配置(突起27の間隔)や形状(高さや直径)を変更することになる(また、基材25や薄膜26の材質を変更しても良い)。
【0041】
図8は、バンドパスフィルタBPFの別の特性を示すグラフである。なお、ここでは、発光部12は、25℃のときに1298nmの波長の光を出射し、105℃のときに1308nmの波長の光を出射することを想定している。
図8に示すバンドパスフィルタBPFでは、基材25の線膨張係数は56×10-6/℃であり、薄膜26の線膨張係数は10×10-6/℃である。また、基材25の屈折率は1.49であり、薄膜26の屈折率は3.48である。薄膜26の厚さは270nmである。突起27は図6Aに示すパターンで配置されており、突起27同士の間隔は860nmである。また、円柱状の突起27の直径は210nm(半径は105nm)であり、突起27の高さは160nmである。
図8に示すバンドパスフィルタBPFは、25℃のときに1298nm(前述のλ1,λ11に相当)に対する透過率が高くなる。また、このバンドパスフィルタBPFは、105℃のときに1308nm(前述のλ2,λ12に相当)に対する透過率が高くなる。このように、バンドパスフィルタBPFの突起27の形状及び配置を適宜変更することによって、発光部12の温度特性に適応したバンドパスフィルタBPFを作成することが可能である。
【0042】
ところで、上記の突起27は柱状(円柱状又は角柱状)に構成されているが、突起27の形状は、柱状に限られるものではない。例えば、突起27は、凸条(筋状の凸部)に構成されても良い。この場合、薄膜26の表面には、多数の突起27が所定方向に所定の間隔をあけて配置されることになる。凸条の突起27を所定方向に配置したバンドパスフィルタBPFは、柱状の突起27を格子状に配置したバンドパスフィルタBPF(図6A参照)と比べて、バンドパスフィルタBPFの偏光依存性が強くなる。このため、凸条の突起27を所定方向に配置したバンドパスフィルタBPFは、特定の方向に振動する光を通過又は遮断する場合に用いることが望ましい。なお、突起27が凸条に構成された場合においても、突起27同士の間隔(凸条同士の間隔)や突起27の形状(凸条の高さや幅)を調整することによって、バンドパスフィルタBPFの特性(通過帯域や遮断帯域の波長など)を調整可能である。
【0043】
図9は、バンドパスフィルタBPFの配置の変形例の説明図である。
変形例では、バンドパスフィルタBPFは、集光レンズ241と受光センサ22との間に配置されている。バンドパスフィルタBPFが集光レンズ241よりも後側(集光レンズ241から見て対象物90とは反対側)に配置されることによって、バンドパスフィルタBPFの角度依存性の影響を抑制することができる(言い換えると、バンドパスフィルタBPFに入射する光の角度を抑制できる)。なお、バンドパスフィルタBPFが集光レンズ241よりも前側(対象物90側)に配置されている場合には、バンドパスフィルタBPFに対して広い角度から光が入射するため、バンドパスフィルタBPFの角度依存性の影響を受け易くなる。本実施形態のように温度に応じて透過率が変化するようにバンドパスフィルタBPFを構成した場合、バンドパスフィルタBPFの角度依存性が強くなることが起こり得るため、変形例のようにバンドパスフィルタBPFを集光レンズ241と受光センサ22との間に配置することは特に有効である。
【0044】
図10A図10Cは、別のバンドパスフィルタBPF’の配置の説明図である。
本実施形態のように温度に応じて透過率が変化するようにバンドパスフィルタBPFを構成した場合、バンドパスフィルタBPFの遮断帯域が狭くなることが起こり得る。このため、受光用光学系24は、前述のバンドパスフィルタBPFとは別のバンドパスフィルタBPF’を更に備えることが望ましい。別のバンドパスフィルタBPF’は、発光部12が照射する波長帯域の光を通過させつつ、当該波長帯域以外の光をカットする(減衰させる)。例えば、発光部12が、使用温度の範囲において、λ1~λ2の波長帯域の範囲で温度に応じた波長λの光を出射する場合、別のバンドパスフィルタBPF’は、λ1~λ2の波長帯域の光を通過させつつ、λ1より小さい波長帯域及びλ2より大きい波長帯域の光を減衰させる。これにより、温度に応じて通過帯域が変化するバンドパスフィルタBPFの遮断帯域が狭くても、別のバンドパスフィルタBPF’によって太陽光等の背景光をカットできるため、背景光によるノイズの影響を抑制することができる。
【0045】
別のバンドパスフィルタBPF’は、バンドパスフィルタBPFよりも前側(対象物90側)に配置されても良いし、バンドパスフィルタBPFよりも後側(バンドパスフィルタBPFから見て対象物90とは反対側)に配置されても良い。但し、図10A図10Cに示すように、別のバンドパスフィルタBPF’がバンドパスフィルタBPFよりも前側(対象物90側)に配置された場合には、別のバンドパスフィルタBPF’を通過した光だけをバンドパスフィルタBPFに入射させることができ、別のバンドパスフィルタBPF’でカットされる波長の光をバンドパスフィルタBPFに入射させずに済む。なお、バンドパスフィルタBPFを集光レンズ241と受光センサ22との間に配置した場合、別のバンドパスフィルタBPF’は、図10Bに示すように集光レンズ241よりも前側(対象物90側)に配置されても良いし、図10Cに示すように集光レンズ241よりも後側(集光レンズ241から見て対象物90とは反対側;ここでは集光レンズ241とバンドパスフィルタBPFとの間)に配置されても良い。なお、図10Cに示すように別のバンドパスフィルタBPF’を配置した場合には、バンドパスフィルタBPF’の角度依存性の影響を抑制することができる。
【0046】
===小括===
本実施形態の測定装置1は、発光部12と、バンドパスフィルタBPFと、受光センサ22とを備えている。発光部12は、温度に応じた波長の光を照射する。バンドパスフィルタBPFは、発光部12から照射された光の反射光を通過させる。受光センサ22は、バンドパスフィルタBPFを通過した光を受光する。本実施形態では、温度に応じて、バンドパスフィルタBPFを通過可能な光の波長が変化する。このような構成によれば、温度に応じた波長の光が発光部12から照射されても、バンドパスフィルタBPFは、その光を通過させることができ、受光センサ22は、反射光を受光する受光センサ22が受光する背景光を軽減させることができ、背景光によるノイズの影響を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、バンドパスフィルタBPFは、基材25と、基材25の上に形成された薄膜26とを有し、薄膜26の表面には、複数の突起27が所定のパターンで配置されており、温度に応じて突起27の間隔が変化する。これにより、温度に応じてバンドパスフィルタBPFの特性を変化させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、基材25の線膨張係数は、薄膜26の線膨張係数よりも大きい。これにより、薄膜26の線膨張係数が小さくても、温度に応じた突起27の間隔の変化を大きくできる。
【0049】
また、本実施形態では、基材25は、光透過性の樹脂で構成されている。これにより、基材25の線膨張係数を薄膜26の線膨張係数よりも大きくすることが容易になる。
【0050】
また、本実施形態では、突起27は、柱状に構成されており、複数の突起27が格子状に配置されている。これにより、バンドパスフィルタBPFの偏光依存性を弱めることができる。
一方、突起27を凸条に構成するとともに、複数の凸条を所定方向に並べて配置することによって、温度に応じて特性を変化させるバンドパスフィルタBPFを構成しても良い。これにより、特定の方向に振動する光を通過又は遮断するようにバンドパスフィルタBPFを構成することができる。
【0051】
また、図9に示すように、バンドパスフィルタBPFは、集光レンズ241と受光センサ22との間に配置されることが望ましい。これにより、バンドパスフィルタBPFの角度依存性の影響を抑制することができる。
【0052】
また、発光部12が照射する波長帯域の光を通過させる別のバンドパスフィルタBPFを更に備えることが望ましい。これにより、温度に応じて通過帯域が変化するバンドパスフィルタBPFの遮断帯域が狭くても、別のバンドパスフィルタBPF’によって太陽光等の背景光をカットすることによって、背景光によるノイズの影響を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態のバンドパスフィルタBPFは、基材25と、基材25の上に形成された薄膜26とを有し、薄膜26の表面には、複数の突起27が所定のパターンで配置されており、温度に応じて突起27の間隔が変化する。これにより、温度に応じて特性を変化させるバンドパスフィルタを実現できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態につき詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 測定装置、10 照射部、
12 発光部、121 発光素子、14 投光用光学系、
20 受光部、22 受光センサ、221 画素、
24 受光用光学系、241 集光レンズ、
25 基材、26 薄膜、27 突起、
BPF バンドパスフィルタ、BPF’ 別のバンドパスフィルタ、
30 制御部、32 設定部、
34 タイミング制御部、36 測距部、
362 信号処理部、364 時間検出部、366 距離算出部、
50 測定エリア、90 対象物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10