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特開2024-24486基板ユニットの製造方法及び位置決め治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024486
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】基板ユニットの製造方法及び位置決め治具
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240215BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240215BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H05K1/02 D
H01L23/12 D
H05K1/02 J
H05K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127335
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】原田 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤士
(72)【発明者】
【氏名】上島 賢久
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 智也
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA18
5E338BB71
5E338CD24
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】セラミックス板上の所定位置に金属パターン部材が配置された基板ユニットの製造方法及び金属パターン部材の位置決め治具を提供することを目的とする。
【解決手段】基板ユニットXaを製造する製造方法において、金属パターン部材Pをカーボン板TP上に仮止めする仮止め工程S11と、接合材12をセラミックス板BP上に設置する接合材設置工程S12と、金属パターン部材Pと接合材12とが接触するように、カーボン板TPをセラミックス板BPに積層して基板ユニットXaを形成する積層工程S13と、を備え、仮止め工程S11では、格子治具3によってカーボン板TP上の所定位置A1に金属パターン部材Pを配置し、格子治具3には、カーボン板TP上に重ねた際に、所定位置A1の外縁Edに沿い、且つ金属パターン部材Pに当接可能な位置決め孔部32が設けられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を形成する金属パターン部材をセラミックス板上に配置して加熱接合前の基板ユニットを製造する製造方法において、
前記金属パターン部材を仮支持板上に仮止めする仮止め工程と、
加熱されることによって前記金属パターン部材と前記セラミックス板とを接合する接合材を前記セラミックス板上に設置する接合材設置工程と、
前記金属パターン部材と前記接合材とが接触するように、前記仮支持板を前記セラミックス板に積層して前記基板ユニットを形成する積層工程と、を備え、
前記仮止め工程では、位置決め治具によって前記仮支持板上の所定位置に前記金属パターン部材を配置し、
前記位置決め治具には、前記仮支持板上に重ねた際に、前記所定位置の外縁に沿い、且つ前記金属パターン部材に当接可能な位置合わせ部が設けられている基板ユニットの製造方法。
【請求項2】
セラミックス板に積層される仮支持板上の所定位置に金属パターン部材を位置決めする位置決め治具であって、
前記仮支持板の外周の少なくとも一部に揃う基準設定部と、
前記仮支持板の前記外周と前記基準設定部とが揃った状態で、前記所定位置の外縁の少なくとも一部に揃い、且つ前記金属パターン部材に当接可能な位置合わせ部と、を備えている位置決め治具。
【請求項3】
前記基準設定部は、前記仮支持板の前記外周に沿って延在し、且つ前記位置合わせ部を囲むように設けられた枠部である、請求項2記載の位置決め治具。
【請求項4】
前記金属パターン部材は、隣接する側面が屈曲して接続された角部を備え、
前記位置合わせ部は、前記金属パターン部材が収まる位置決め孔部であり、
前記位置決め孔部は、前記角部に当接可能な角隅部と、前記角隅部に前記角部が当接した状態で、前記金属パターン部材との間で隙間を形成する隙間形成部と、を備えている、請求項2または3記載の位置決め治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を形成するための基板ユニットを製造する製造方法及び位置決め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどの電子部品が実装されるパワーモジュール用の回路基板が知られている。回路基板の上面には回路部が設けられ、下面には放熱部が設けられている。発熱体である半導体チップは、回路部上に搭載され、放熱部にはヒートシンクが配置されている。半導体チップで発生した熱は、下面の放熱部を介してヒートシンク内に放熱される。
【0003】
回路基板を形成する方法として、例えば、セラミックス板と金属板との接合体をエッチングして金属回路や金属放熱板を形成する方法(以下、「エッチング法」と称する)が知られている。また、金属板から打ち抜かれた金属回路等の金属パターン部材をセラミックス板に接合する方法(以下、「パターン搭載法」と称する)が知られている(特許文献1―5参照)。パターン搭載法では、金属パターン部材をセラミックス板上に配置して基板ユニットを製造し、その基板ユニットを加熱して回路基板を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5863234号公報
【特許文献2】特許第4618136号公報
【特許文献3】特許第5664679号公報
【特許文献4】特許第6790915号公報
【特許文献5】特許第6801501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パターン搭載法において製造される基板ユニットは、その状態のまま加熱炉に送られ、加熱炉内で金属パターン部材とセラミックス板とが接合される。ここで、金属パターン部材がセラミックス板の所定位置からずれていると、接合にばらつきが生じ、接合品質を低下させる可能性がある。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、セラミックス板上の所定位置に金属パターン部材が配置された基板ユニットの製造方法及び金属パターン部材の位置決め治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回路基板を形成する金属パターン部材をセラミックス板上に配置して加熱接合前の基板ユニットを製造する製造方法において、金属パターン部材を仮支持板上に仮止めする仮止め工程と、加熱されることによって金属パターン部材とセラミックス板とを接合する接合材をセラミックス板上に設置する接合材設置工程と、金属パターン部材と接合材とが接触するように、仮支持板をセラミックス板に積層して基板ユニットを形成する積層工程と、を備え、仮止め工程では、位置決め治具によって仮支持板上の所定位置に金属パターン部材を配置し、位置決め治具には、仮支持板上に重ねた際に、所定位置の外縁に沿い、且つ金属パターン部材に当接可能な位置合わせ部が設けられている。
【0008】
金属パターン部材を仮止めする際、仮支持板上の所定位置から金属パターン部材がずれていると、仮支持板をセラミックス板に積層して基板ユニットを製造した際、金属パターン部材はセラミックス板上の適切な位置からずれてしまう。上記の製造方法によれば、位置決め治具によって仮支持板上の所定位置に金属パターン部材を配置できるので、セラミックス板上の適切な位置に金属パターン部材が配置された基板ユニットを製造できる。
【0009】
また、本発明は、セラミックス板に積層される仮支持板上の所定位置に金属パターン部材を位置決めする位置決め治具であって、仮支持板の外周の少なくとも一部に揃う基準設定部と、仮支持板の外周と基準設定部とが揃った状態で、所定位置の外縁の少なくとも一部に揃い、且つ金属パターン部材に当接可能な位置合わせ部と、を備えていてもよい。基準設定部を仮支持板の外周に揃うように配置することで、位置合わせ部は、仮支持板の所定位置の外縁に揃う。この状態で、金属パターン部材を位置合わせ部に当接させるように設置することで、金属パターン部材を仮支持板上の所定位置に簡単に、且つ適切に配置できるようになる。
【0010】
また、基準設定部は、仮支持板の外周に沿って延在し、且つ位置合わせ部を囲むように設けられた枠部であってもよい。枠部は、仮支持板の外周に沿うように延在するため、枠部を仮支持板の外周に揃えることで、枠部によって囲まれている位置合わせ部を仮支持板上の適切な位置に配置できる。
【0011】
また、金属パターン部材は、隣接する側面が屈曲して接続された角部を備え、位置合わせ部は、金属パターン部材が収まる位置決め孔部であり、位置決め孔部は、角部に当接可能な角隅部と、角隅部に角部が当接した状態で、金属パターン部材との間で隙間を形成する隙間形成部と、を備えていてもよい。金属パターン部材の角部を位置決め孔部の角隅部に当接させることで、金属パターン部材を仮支持板上の所定位置に位置決めできる。また、位置決め孔部は、隙間形成部を備えているので、金属パターン部材を位置決め孔部内に円滑に収め易くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セラミックス板上の所定位置に金属パターン部材が配置された基板ユニットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る回路基板の製造方法に係るフローチャートを示す。
図2図2は、仮止め工程を示し、(a)図はカーボン板上の所定位置に仮止め材を設置した状態を示す斜視図であり、(b)図はカーボン板上の所定位置に金属パターン部材を設置した状態を示す斜視図である。
図3図3は、カーボン板上に格子治具を設置した状態を示す平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、カーボン板をセラミックス板に積層して基板ユニットを形成している状態を示し、(a)図は、カーボン板とセラミックス板とが積層される前の状態を示す斜視図であり、(b)図は、基板ユニットの斜視図である。
図6図6は、中間積層体形成工程を示し、複数の基板ユニットの積層によって形成された中間積層体の断面図である。
図7図7は、中間積層体を加圧して、囲い治具を取り外している状態を示す断面図である。
図8図8は、接合工程を示し、(a)図は、中間積層体を加熱炉内で加熱している状態を示す断面図であり、(b)図は、セラミックス板からカーボン板を取り外している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
回路基板CB(図8の(b)図参照)は、回路部Cpが形成されている一方の面(上面)と、放熱部Hsが形成されている他方の面(下面)とを備えている。発熱体である半導体チップは、回路部Cp上に搭載され、放熱部Hsにはヒートシンクが配置される。半導体チップで発生した熱は、下面の放熱部Hsを介してヒートシンク内に放熱される。
【0016】
回路部Cpや放熱部Hsは、金属パターン部材Pをセラミックス板BP上の所望の位置に設置し、その状態で加熱接合することで形成される(パターン搭載法)。金属パターン部材Pは、銅板やアルミ板などの金属板(導体板)を、回路部Cpや放熱部Hsの形状に倣った所望の形状となるように打ち抜くことで形成される。
【0017】
本実施形態では、一枚のセラミックス板BPの上面Sfaに複数の金属パターン部材Pが縦横に規則的に並んで配置されており、セラミックス板BPの下面Sfbには、上面Sfaの複数の金属パターン部材Pに重なるように複数の金属パターン部材Pが並んで配置されている。上面Sfaの複数の金属パターン部材Pは、それぞれ独立した複数の回路部Cpを形成し、下面Sfbの複数の金属パターン部材Pは、各回路部Cpに対応して複数の独立した放熱部Hsを形成する。一枚のセラミックス板BPは、複数の回路部Cpを分けるように切断されて、複数の回路基板CBとなる。なお、セラミックス板BPは様々な形状を適用でき、例えば、平面視で短辺/長辺比が1~2程度である四辺形状であってもよい。本実施形態では、長方形状(矩形状)を例示する。また、セラミックス板BPの面積は、例えば、2000mm~30000mmである。
【0018】
セラミックス板BPは、電気絶縁性を有し、例えば、AlN、Si又はAlで形成されていてもよい。セラミックス板BPの厚みは、例えば、0.2mm以上、且つ1.5mm以下にすることができる。金属パターン部材Pは、CuやAlを主成分として含む部材等から形成することができ、例えば、Cu、Al、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されていてもよい。金属パターン部材Pの厚みは、0.1mm以上、且つ2.0mm以下にすることができる。
【0019】
次に、図1等を参照し、回路基板CBの製造方法の一例について説明する。図1は、半導体チップなどの電子部品が実装されるパワーモジュール用の回路基板CBを製造する製造方法を示すフローチャートであり、特に、パターン搭載法を示している。
【0020】
回路基板CBの製造方法は、基板ユニットXaを形成する基板ユニット形成工程S1(図1参照)と、基板ユニットXaを積層して中間積層体XAを形成する中間積層体形成工程S2と、中間積層体XAを加熱して金属パターン部材Pをセラミックス板BPに接合する接合工程S3と、金属パターン部材Pが接合されたセラミックス板BPを分割して複数の回路基板CBを形成する仕上げ工程S4と、を備えている。
【0021】
(基板ユニット形成工程)
基板ユニット形成工程S1は、回路基板CBを形成する金属パターン部材Pをセラミックス板BP上に配置して加熱接合前の基板ユニットXaを製造する製造方法の一例である。基板ユニット形成工程S1は、仮止め工程S11と、接合材設置工程S12と、積層工程S13とを備えている。
【0022】
仮止め工程S11(図2参照)は、仮止め材11によってカーボン板TP(仮支持板の一例)の所定位置A1に金属パターン部材Pを固定する工程である。仮止め材11は、接合工程S2での加熱によって消失する。なお、カーボン板TPの所定位置A1とは、セラミックス板BP上に固定される金属パターン部材Pの接合予定位置A2(図5参照)に対応した位置である。具体的には、カーボン板TPをセラミックス板BP上の適切な位置に重ねた際に、セラミックス板BP上の接合予定位置A2に金属パターン部材Pが配置されるような位置である。
【0023】
図2の(a)図に示されるように、一枚のカーボン板TPは、複数の回路基板CBを形成するため、便宜上、複数のエリアに区画されている。図面上の破線は、複数のエリアを区分けするように示しているが、実際のカーボン板TP上において印字等はされていない。複数のエリアには、それぞれ金属パターン部材Pを仮止めするための仮止め材11が設置される。
【0024】
仮止め材11としては、シートタイプの接着剤を使用することができる。シートタイプの接着剤とは、常温で金属パターン部材Pをカーボン板TPに接着可能な接着テープである。接着テープは、両面で接着可能であり、且つ有機成分からなる粘着層と、粘着層の両面を覆う剥離フィルムとを備えている。剥離フィルムは粘着層の両面を保護する部材であり、使用時には剥離される。剥離フィルムは、例えば、透明なPETフィルムである。仮止め工程S11では、粘着層の一方の面をカーボン板TPの所定位置A1に接着し、金属パターン部材Pを、粘着層の他方の面に接着して所定位置A1に設置する。
【0025】
また、仮止め材11の他の例として、スプレータイプの接着剤を使用することができる。スプレータイプの接着剤とは、常温で金属パターン部材Pをカーボン板TPに接着可能な液状で、且つ有機成分からなる接着剤である。この接着剤は、噴霧による使用を想定されている。仮止め工程S11では、カーボン板TPの所定位置A1に接着剤を噴霧し、その接着剤を介して金属パターン部材Pをカーボン板TPに接着させて固定する。
【0026】
仮止め工程S11では、格子治具3が使用される(図3図4参照)。格子治具3は、カーボン板TP上の所定位置A1に金属パターン部材Pを位置決めする位置決め治具の一例である。図3は、カーボン板TP上に格子治具3を設置し、更に格子治具3を利用して金属パターン部材Pを所定位置A1に位置合わせし、その場所で仮止めしている状態を示す平面図であり、図4は、格子治具3の一部分の拡大断面図である。
【0027】
格子治具3は、接合工程S2の加熱炉8(図8の(a)図参照)への導入は想定されていない。したがって、格子治具3において、耐熱性に配慮する必要性は少なく、多様な材質を適宜に利用することができる。例えば、格子治具3は、(高密度)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、アクリル樹脂、A2017(ジュラルミン)、A5052(アルミ合金)等を使用することができる。これらの材料であれば、加工性に優れるという利点がある。
【0028】
格子治具3は、枠部31と、枠部31内に形成された複数の位置決め孔部32(位置合わせ部)と、枠部31から張り出すように設けられた一対の取っ手部33とを備えている。枠部31は、カーボン板TPの外周Cfに沿って延在し、且つ複数の位置決め孔部32を囲むように設けられている。枠部31は、基準設定部の一例である。
【0029】
枠部31は、取っ手部33を除いて実質的にカーボン板TPの外周Cfに揃うような矩形状であり、枠部31をカーボン板TPの外周Cfに揃うように設置することで、カーボン板TPに対し、格子治具3を適切な位置に設置できる。なお、本実施形態では、取っ手部33を設けているが、取っ手部33が存在せず、枠部31の外周3aが全周に亘ってカーボン板TPの外周Cfに揃うような形態であってもよい。
【0030】
また、枠部31の外周3aの一部分のみが、カーボン板TPの外周Cfに揃うような形態であってもよい。例えば、平面視で矩形状のカーボン板TPに対し、枠部31は、カーボン板TPの一または複数の角部に揃う角部分を有し、角部分以外は、カーボン板TPの外周Cfから外れるような形状であってもよい。また、枠部31の一部分のみが、カーボン板TPの外周Cfに揃う場合、枠部31とカーボン板TPとが揃う位置(基準出し位置)と、金属パターン部材Pを仮止めするための所定位置A1とは設計上、対応させておく必要がある。つまり、枠部31とカーボン板TPとが、基準出し位置で揃っている状態において、金属パターン部材Pを所定位置A1に位置合わせできるようにする必要がある。なお、上述の例で示されるように、カーボン板TPの角部と枠部31の角部分とが基準出し位置の場合、目視にて感覚的に基準出し位置を把握できるので便利である。なお、基準出し位置を目視等で感覚的に把握し難い形態の場合、枠部31に基準出し位置を示す目印などを設けてもよい。
【0031】
枠部31で囲まれた内側には、互いに直交する複数の縦壁部31aと、複数の横壁部31bとが設けられている。複数の位置決め孔部32は、縦壁部31aと横壁部31bとの交差によって形成されている。例えば、枠部31の内側の領域は、複数の縦壁部31aと複数の横壁部31bとの交差によって均等に分割されており、その分割された各小領域は位置決め孔部32となる。位置決め孔部32は、平面視で矩形状であり、枠部31、縦壁部31a及び横壁部31bによって区画され、あるいは縦壁部31aと横壁部31bとに区画されている。
【0032】
格子治具3をカーボン板TPの適切な位置に設置すると、複数の位置決め孔部32は、それぞれカーボン板TP上の所定位置A1の外縁Edに揃うように配置される。位置決め孔部32は、金属パターン部材Pよりも大きく、且つ金属パターン部材Pを収容可能な矩形状である。なお、本実施形態では、矩形状の位置決め孔部32を例示するが、金属パターン部材Pを所定位置A1に位置合わせできれば、他の形状であってもよく、実質的に金属パターン部材Pとは異なる形状であっても良い。なお、位置決め孔部32が所定位置A1の外縁Edに揃うという意味は、位置決め孔部32の少なくとも一部が外縁Edに揃うことを意味する。
【0033】
金属パターン部材Pの形状と位置決め孔部32との関係について補足する。金属パターン部材Pは、略矩形状であり、隣接する側面Pbが屈曲して接続された四か所の角部Paを備えている。これは、所定位置A1も略矩形状であり、所定位置A1の外縁Edは、金属パターン部材Pの角部Paに揃う角部分(屈曲した縁部分)を有することを意味する。位置決め孔部32は、金属パターン部材Pが収まるような矩形状の孔部であり、四か所(複数)の角隅部32aを備えている。金属パターン部材Pは、位置決め孔部32の複数の角隅部32aのうち、基準の角隅部32xに角部Paが当接することで所定位置A1に位置決めされる。本実施形態では、位置決め孔部32は四か所の角隅部32aのうち、右下の角隅部32aが基準の角隅部32xとして設定されている(図3参照)。つまり、基準の角隅部32xは、所定位置A1の外縁Edの全周のうち、少なくとも角部分に揃うように設定されていることを意味する。
【0034】
また、位置決め孔部32は、隙間形成部32bを備えている。隙間形成部32bは、基準の角隅部32xに金属パターン部材Pの角部Paが当接した状態において、金属パターン部材Pとの間に隙間Spを形成する部分である。例えば、基準の角隅部32aに金属パターン部材Pの角部Paを当接させると、金属パターン部材Pの左側には、位置決め孔部32との間に隙間Spが形成される。位置決め孔部32において、この隙間Spに面する部分は隙間形成部32bである。
【0035】
仮止め工程S11では、例えば、カーボン板TP上の所定位置A1に仮止め材11を設置した後、カーボン板TP上の適切な位置に格子治具3を設置する。または、カーボン板TP上の適切な位置に格子治具3を設置した後で、格子治具3の位置決め孔部32内に仮止め材11を設置するようにしてもよい。カーボン板TP上の適切な位置に格子治具3を設置した後、金属パターン部材Pを位置決め孔部32内に挿入し、格子治具3を利用して金属パターン部材Pを所定位置A1に位置合わせする。その際、金属パターン部材Pは、仮止め材11を介してカーボン板TPに固定される。
【0036】
仮止め工程S11の後に、接合材設置工程S12が行われる(図1及び図5参照)。接合材設置工程S12では、セラミックス板BPの接合予定位置A2に、ロウ材等の接合材12を設置する。例えば、セラミックス板BPの上面Sfaには、回路部Cpを形成する金属パターン部材Pが接合され、下面Sfbには、放熱部Hsを形成する金属パターン部材Pが接合される。セラミックス板BPの上面Sfa及び下面Sfbには、それぞれ金属パターン部材Pが適切に接合されるための接合予定位置A2が設定されている。接合材12は、接合予定位置A2を含む領域に印刷等されて設置される。
【0037】
接合材設置工程S12の後に、基板ユニットXaを形成するための積層工程S13が行われる。積層工程S13では、セラミックス板BPとの間で金属パターン部材Pを挟むようにカーボン板TPをセラミックス板BP上に積層し、金属パターン部材Pをセラミックス板BP上の接合予定位置A2に設置して基板ユニットXaを形成する。基板ユニットXaの形成について更に詳しく説明する。
【0038】
セラミックス板BPの上面Sfaには第1のカーボン板TP(TPa)が積層され、下面Sfbには第2のカーボン板Tp(TPb)が積層される。第1のカーボン板TPaには回路部Cpを形成する複数の金属パターン部材Pが仮止めされている。第2のカーボン板TPbには放熱部Hsを形成する複数の金属パターン部材Pが仮止めされている。セラミックス板BP、第1のカーボン板TPa及び第2のカーボン板TPbは共通する外形、寸法を備えており、積層すると互いに揃うように形成されている。なお、「セラミックス板BP上に積層」とは、セラミックス板BPの上面Sfaのみならず、下面Sfbに積層される態様も含まれる。
【0039】
セラミックス板BPの上面Sfaには、金属パターン部材Pの接合予定位置A2に接合材12が設置されている。この接合予定位置A2は、第1のカーボン板TPaの所定位置A1に対応している。第1のカーボン板TPaは、金属パターン部材Pがセラミックス板BPの上面Sfaに対面し、金属パターン部材Pがセラミックス板BPに接触するようにセラミックス板BPに積層され、その結果、金属パターン部材Pは、セラミックス板BPの接合予定位置A2に合うように設置される。
【0040】
セラミックス板BPの下面Sfbには、金属パターン部材Pの接合予定位置A2に接合材12が設置されている。この接合予定位置A2は、第2のカーボン板TPbの所定位置A1に対応している。第2のカーボン板TPbは、金属パターン部材Pがセラミックス板BPの下面Sfbに対面し、金属パターン部材Pがセラミックス板BPに接触するようにセラミックス板BPに積層され、その結果、金属パターン部材Pは、セラミックス板BPの接合予定位置A2に合うように設置される。以上により、基板ユニットXaが形成され、基板ユニット形成工程S1は終了する。
【0041】
基板ユニット形成工程S1が終了すると、中間積層体形成工程S2が行われる。中間積層体形成工程S2では、複数の基板ユニットXaを積層して中間積層体XAを形成する(図1及び図6参照)。中間積層体形成工程S2は、加圧装置7の土台71上に中間積層体XAを載置する位置合わせ工程と、位置合わせされた中間積層体XAに対し、土台71との間で挟持するように加圧して中間積層体XAを保持する加圧工程と、加圧されている状態で、囲い治具5を分割して中間積層体XAから取り外す治具離脱工程と、を備えている。
【0042】
位置合わせ工程では、分割可能な囲い治具5を複数の基板ユニットXa(中間積層体XA)の周囲に配置して中間積層体XAを位置合わせしている。例えば、複数の基板ユニットXaは、土台71上に積層されるように載置される。複数の基板ユニットXaの積層によって中間積層体XAが形成される。囲い治具5は、複数の基板ユニットXaを積層しながら、あるいは、全ての基板ユニットXaを積層した後で、中間積層体XAの周囲に配置され、中間積層体XAを位置合わせする。囲い治具5は、分割可能な複数の分割壁部51,52を備えており、複数の分割壁部51,52を組み付けることで、中間積層体XAの周囲を囲んで保持可能な治具が形成される。
【0043】
図7に示されるように、位置合わせ工程が終了すると、土台71との間で挟持するように中間積層体XAを加圧し、中間積層体XAを所定の状態に保持する加圧工程が行われる。ここで、中間積層体XAを加圧する加圧装置7について説明する。加圧装置7は、中間積層体XAを支える土台71と、土台71から立設された複数の柱部72と、中間積層体XAの上面に当接するカバープレート73と、カバープレート73上に配置された複数の弾性体74と、弾性体74上に設置され、弾性体74を押圧する加圧プレート75と、加圧プレート75を所定位置に保持するナット76(保持部)とを備えている。
【0044】
柱部72には、ネジ溝が形成されている。柱部72は、カバープレート73及び加圧プレート75を貫通している。ナット76は、柱部72の上端に螺合し、加圧プレート75の上面に当接している。カバープレート73と加圧プレート75との間には、弾性体74が配置されている。ナット76を締め付けると加圧プレート75が押し下げられ、弾性体74を圧縮する。その結果、カバープレート73を介して中間積層体XAが加圧される。加圧装置7によって中間積層体XAを加圧している状態では中間積層体XAのずれは生じない。
【0045】
加圧工程が終了すると治具離脱工程が行われる。治具離脱工程では、中間積層体XAが加圧されている状態を保持したまま、囲い治具5を分割して中間積層体XAから取り外す。加圧された状態の中間積層体XAは安定しており、囲い治具5を取り外しても複数の基板ユニットXaのズレは生じない。囲い治具5を取り外して中間積層体形成工程S2を終了する。
【0046】
(接合工程)
基板ユニット形成工程S1が終了すると、接合工程S2が行われる(図1及び図8の(a)図参照)。接合工程S2において、中間積層体XAは、加圧装置7によって加圧保持された状態のまま、加熱炉8に導入される。加熱炉8は、ヒータ8aを備えている。ヒータ8aは、金属パターン部材Pがセラミックス板BPに接合可能となる雰囲気温度(接合温度)となるように加熱し、加熱炉8内は、その雰囲気温度が所定時間維持される。例えば、金属パターン部材Pが銅材の場合には、600℃~900℃の温度雰囲気が維持され、アルミ材の場合には、550℃~650℃の雰囲気温度が維持される。ロウ材等の接合材12は、この雰囲気温度下で溶融等し、加熱後の冷却固化により、金属パターン部材Pをセラミックス板BPに接合する。なお、加圧装置7は、耐熱温度が接合温度よりも高くなるように製造されている。加熱炉8内で所定の雰囲気温度が維持された結果、金属パターン部材Pをカーボン板TPに仮止めしていた仮止め材11は、揮発等して消失する。
【0047】
(仕上げ工程)
接合工程S2が終了すると、仕上げ工程が行われる(図1及び図8の(b)図参照)。仕上げ工程では、中間積層体XAを形成していた複数の基板ユニットXaは加熱炉8から取り出される。加熱炉8から取り出された基板ユニットXaのセラミックス板BPには、複数の金属パターン部材Pが接合されて複数の回路基板CBが形成されている。ここで、金属パターン部材Pをカーボン板TPに固定していた仮止め材11は、加熱炉8内で消失している。したがって、複数の回路基板CBを形成するセラミックス板BPから、カーボン板TPを容易に取り外すことができる。カーボン板TPを取り外した後、セラミックス板BPに形成された複数の回路基板CBは、それぞれ分割され、適宜に仕上げ処理が施されて複数の独立した回路基板CBとなる。
【0048】
上述の通り、本実施形態に係る回路基板CBの製造方法は、基板ユニット形成工程S1を備えており、基板ユニット形成工程S1は、基板ユニットXaを製造する製造方法の一例である。以下、基板ユニット形成工程S1及び基板ユニット形成工程S1で使用される格子治具3の作用、効果について説明する。
【0049】
基板ユニット形成工程S1は、金属パターン部材Pをカーボン板TP上に仮止めする仮止め工程S11を備えている。仮止め工程S11において、仮止めされた金属パターン部材Pがカーボン板TP上の所定位置A1からずれていると、カーボン板TPをセラミックス板BPに積層して基板ユニットXaを製造した際、金属パターン部材Pはセラミックス板BP上の適切な位置からずれてしまう。これに対し、本実施形態では、格子治具3を使用することで、カーボン板TP上の所定位置A1に正確に金属パターン部材Pを配置できる。その結果、セラミックス板BP上の適切な位置に金属パターン部材Pが配置された基板ユニットXaを製造できる。
【0050】
また、パターン搭載法における金属パターン部材Pの位置合わせは、例えば、エッチング法における金属板の位置合わせに比べ、非常に繊細で重要である。例えば、単体の回路基板CBの上面には回路部Cpとなる金属パターン部材Pが接合され、下面には放熱部Hsとなる金属パターン部材Pが接合されている。金属パターン部材Pの縁から回路基板CBの縁までの距離は、例えば、1.5mm程度であり、その場合、許容される誤差は、例えば、0.3mm以下である。また、セラミックス板BPの回路部Cp側の金属パターン部材Pの位置と放熱部Hs側の金属パターン部材Pの位置とは、互に正確に対応している必要があり、許容される誤差は、例えば、0.25mm以下である。なお、上述の許容される誤差とは、カーボン板TB上の所定位置A1からのズレ量として許容される誤差として説明することもできる。
【0051】
このようにパターン搭載法では、非常に繊細で、精度の高い位置合わせが必要となる。これに対し、本実施形態では、仮止め工程S11において、格子治具3を使用して金属パターン部材Pの位置合わせを行っている。格子治具3は、基準設定部として機能する枠部31を備え、枠部31がカーボン板TBの外周Cfの少なくとも一部に揃った状態で、所定位置A1の外縁Edの少なくとも一部に揃い、且つ金属パターン部材Pに当接可能な位置決め孔部32を備えている。そして、位置決め孔部32内に収めた金属パターン部材Pを位置決め孔部32に当接させるように設置すると、金属パターン部材Pをカーボン板TB上の所定位置A1に、簡単に、且つ適切に配置できるようになる。その結果、例えば、上述の誤差範囲に収まるように、金属パターン部材Pをカーボン板TP上の所定位置A1に配置することが容易になる。
【0052】
また、格子治具3の枠部31は、カーボン板TBの外周Cfに沿って延在し、且つ複数の位置決め孔部32を囲むように設けられている。したがって、枠部31をカーボン板TBの外周Cfに揃えることで、枠部31によって囲まれている位置決め孔部32をカーボン板TB上の適切な位置に配置できる。特に、枠部31は、取っ手部33を除き、実質的にカーボン板TBの外周Cfの全周に沿って延在するため、枠部31の外周3aの全体をカーボン板TBの外周Cfに揃えることで、簡単に、且つ確実な位置合わせが可能になる。
【0053】
また、位置決め孔部32は、金属パターン部材Pの角部Paに当接可能な角隅部32aと、角隅部32aに角部Paが当接した状態で、金属パターン部材Pとの間で隙間Spを形成する隙間形成部32bと、を備えている。金属パターン部材Pの角部Paを位置決め孔部32の角隅部32aに当接させることで、金属パターン部材Pをカーボン板TP上の所定位置A1に位置決めできる。また、位置決め孔部32は、隙間形成部32bを備えているので、金属パターン部材Pを位置決め孔部32内に円滑に収め易くなる。
【0054】
以上、実施形態に基づいて、基板ユニットの製造方法及び位置決め治具を説明したが、本発明は、これらの形態のみには限定されない。例えば、上述の実施形態では、セラミックス板の上面及び下面の両方に、仮支持板を積層して基板ユニットを形成する製造方法を例示したが、セラミックス板の片面のみに仮支持板を積層することで基板ユニットを形成する製造方法であってもよい。また、基準設定部は位置決め孔部に限定されず、仮支持板の外周に沿うように延在する壁部分であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
3…格子治具(位置決め治具)、3a…枠部の外周、12…接合材、31…枠部、32…位置決め孔部、32a,32x…位置決め孔部の角隅部、32b…隙間形成部、A1…所定位置、Ed…所定位置の外縁、BP…セラミックス板、CB…回路基板、TP,TPa,TPb…カーボン板、Cf…カーボン板の外周、P…金属パターン部材、Pa…金属パターン部材の角部、Xa…基板ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8