(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024487
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】磁気メモリ
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20240215BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240215BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240215BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L29/82 Z
H01L43/08 Z
G11B5/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127338
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】梅津 信之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】下村 尚治
(72)【発明者】
【氏名】中村 志保
(72)【発明者】
【氏名】橋本 進
(72)【発明者】
【氏名】大寺 泰章
(72)【発明者】
【氏名】上田 善寛
【テーマコード(参考)】
4M119
5D034
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA20
4M119BB01
4M119BB20
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD17
4M119DD33
4M119DD52
4M119EE11
4M119FF05
4M119FF13
4M119FF14
4M119KK12
5D034BA02
5F092AB06
5F092AB07
5F092AB08
5F092AC11
5F092AD23
5F092AD26
5F092BC04
(57)【要約】
【課題】情報の書込み効率を向上させた磁気メモリを提供する。
【解決手段】磁気メモリは、第1方向に沿って延び第1および第2端部を有する第1磁性部材を備える。第1および第2配線は第1磁性部材の第2端部側に該第1磁性部材から離間して配置され、第2方向に沿って延び第3方向に隣り合って配置される。第1および第2配線は、第1方向から見た平面視において、第1配線と第2配線との間に第1磁性部材が位置する。第2磁性部材は、第1および第2配線の上方に設けられた第1部分と、第1配線と第2配線との間に設けられ、第1部分と電気的に接続された第2部分と、第1および第2配線の下方に設けられ、第1および第2部分から電気的に分離された第3部分とを含む。第2磁性部材は、第1および第3部分の少なくとも一方の飽和磁化は第2部分のそれよりも低い。第3配線は、第1磁性部材の第1端部側に設けられ、第3方向に沿って延びている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延び第1端部および第2端部を有する複数の第1磁性部材と、
前記第1磁性部材の前記第2端部側に該第1磁性部材から離間して配置され、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に隣り合って配置された第1および第2配線であって、前記第1方向から見た平面視において、前記第1配線と前記第2配線との間に少なくとも1つの前記第1磁性部材が位置する前記第1配線および前記第2配線と、
前記第1および第2配線の上方に設けられた第1部分と、前記第1配線と前記第2配線との間に設けられ、前記第1部分と電気的に接続された第2部分と、前記第1および第2配線の下方に設けられ、前記第1および第2部分から電気的に分離された第3部分とを含む第2磁性部材であって、前記第1および第3部分の少なくとも一方の飽和磁化は前記第2部分のそれよりも低い第2磁性部材と、
前記第1磁性部材の前記第1端部側に設けられ、前記第3方向に沿って延びた第3配線と、を備える磁気メモリ。
【請求項2】
前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、該第1および第2部分とは異なる導電材料を含む導電膜をさらに備え、
前記第1部分の飽和磁化は、前記第2部分のそれよりも低い、請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項3】
前記導電膜は、非磁性膜である、請求項2に記載の磁気メモリ。
【請求項4】
前記第3部分の飽和磁化は、前記第2部分のそれよりも低い、請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項5】
前記第1および第2部分は、一体として同一磁性材料で構成されている、請求項4に記載の磁気メモリ。
【請求項6】
前記第1および第3部分の少なくとも一方の交換スティフネスは前記第2部分のそれよりも低い、請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項7】
前記第1方向から見た平面視において、前記第2部分は、前記複数の第1磁性部材のそれぞれに対応して設けられており、
前記第1磁性部材の前記第2端部は、対応する前記第2部分と前記第3部分との間にある、請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項8】
前記第1方向から見た平面視において、前記第3部分は、前記複数の第1磁性部材のそれぞれに対応して設けられた開口部を有し、
前記第1磁性部材の前記第2端部および前記第2部分は、対応する前記開口部内にある、請求項7に記載の磁気メモリ。
【請求項9】
前記複数の第1磁性部材は、それぞれに対応する前記第2部分に電気的に接続され、
前記複数の第1磁性部材と前記第3部分との間に設けられた絶縁膜をさらに備える、請求項8に記載の磁気メモリ。
【請求項10】
複数の第1磁性部材の前記第1端部にそれぞれの一端が電気的に接続された複数の磁気抵抗素子をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項11】
前記複数の磁気抵抗素子のそれぞれと前記第3配線との間に設けられたスイッチング素子をさらに備える、請求項10に記載の磁気メモリ。
【請求項12】
第1方向に沿って延び第1端部および第2端部を有する複数の第1磁性部材と、
前記第1磁性部材の前記第2端部側に該第1磁性部材から離間して配置され、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に隣り合って配置された第1および第2配線であって、前記第1方向から見た平面視において、前記第1配線と前記第2配線との間に少なくとも1つの前記第1磁性部材が位置する前記第1配線および前記第2配線と、
前記第1および第2配線の上方に設けられた第1部分と、前記第1配線と前記第2配線との間に設けられ、前記第1部分と電気的に接続された第2部分と、前記第1および第2配線の下方に設けられ、前記第1および第2部分から電気的に分離された第3部分とを含む第2磁性部材と、
前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた導電層と、
前記第1磁性部材の前記第1端部側に設けられ、前記第3方向に沿って延びた第3配線と、を備える磁気メモリ。
【請求項13】
前記導電膜は、非磁性導電膜である、請求項12に記載の磁気メモリ。
【請求項14】
前記第1および第3部分の少なくとも一方の交換スティフネスは前記第2部分のそれよりも低い、請求項12に記載の磁気メモリ。
【請求項15】
前記第1方向から見た平面視において、前記第2部分は、前記複数の第1磁性部材のそれぞれに対応して設けられており、
前記第1磁性部材の前記第2端部は、対応する前記第2部分と前記第3部分との間にある、請求項12に記載の磁気メモリ。
【請求項16】
前記第1方向から見た平面視において、前記第3部分は、前記複数の第1磁性部材のそれぞれに対応して設けられた開口部を有し、
前記第1磁性部材の前記第2端部および前記第2部分は、対応する前記開口部内にある、請求項15に記載の磁気メモリ。
【請求項17】
前記複数の第1磁性部材は、それぞれに対応する前記第2部分に電気的に接続され、
前記複数の第1磁性部材と前記第3部分との間に設けられた絶縁膜をさらに備える、請求項16に記載の磁気メモリ。
【請求項18】
複数の第1磁性部材の前記第1端部にそれぞれの一端が電気的に接続された複数の磁気抵抗素子をさらに備える、請求項12から請求項17のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項19】
前記複数の磁気抵抗素子のそれぞれと前記第3配線との間に設けられたスイッチング素子をさらに備える、請求項18に記載の磁気メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性部材に電流を流すことにより磁性部材の磁壁を移動(シフト)させる磁気メモリが知られている。このような磁気メモリにおいて、磁性部材への情報の書き込みは、フィールドラインに電流を流し、この電流によって発生する磁場により行われる。しかし、従来の磁気メモリでは、情報の効率的な書き込みを行うために充分な強度の磁場を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
情報の書込み効率を向上させることができる磁気メモリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による磁気メモリは、第1方向に沿って延び第1端部および第2端部を有する複数の第1磁性部材を備える。第1および第2配線は、第1磁性部材の第2端部側に該第1磁性部材から離間して配置され、第1方向に交差する第2方向に沿って延び、第1方向および第2方向に交差する第3方向に隣り合って配置されている。第1および第2配線は、第1方向から見た平面視において、第1配線と第2配線との間に少なくとも1つの第1磁性部材が位置する。第2磁性部材は、第1および第2配線の上方に設けられた第1部分と、第1配線と第2配線との間に設けられ、第1部分と電気的に接続された第2部分と、第1および第2配線の下方に設けられ、第1および第2部分から電気的に分離された第3部分とを含む。第2磁性部材は、第1および第3部分の少なくとも一方の飽和磁化は第2部分のそれよりも低い。第3配線は、第1磁性部材の第1端部側に設けられ、第3方向に沿って延びている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】ヨークおよびその周辺の構成例を示す断面図。
【
図5】ヨークおよびその周辺の他の構成例を示す断面図。
【
図6】メモリ部の磁性部材に情報を書き込む場合を説明する図。
【
図7】電流を分割しない場合の書き込み動作を説明する図。
【
図8】電流を分割した場合の書き込み動作を説明する図。
【
図9】
図9A、9Bは、ヨークの飽和を回避する書き込み動作を説明する図。
【
図10】
図10A、10Bは、ヨークの飽和を回避する書き込み動作を説明する図。
【
図11】第1実施形態の磁気メモリの書き込みにおける磁束の見積もりを説明する図。
【
図12】メモリ部アレイの端部における書き込み動作を説明する図。
【
図14】ヨーク25c、25aをヨーク25b、25dと同一の高飽和磁化材料で構成した場合の磁化方向を示す模式平面図。
【
図15】ヨーク25c、25aをヨーク25b、25dとは異なる低飽和磁化材料で構成した場合の磁化方向を示す模式平面図。
【
図16】第2実施形態によるヨークおよびその周辺の構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による磁気メモリの平面図である。
図2は、
図1に示すA-A線に沿った断面図である。第1実施形態の磁気メモリは、m、nを自然数とするとき、m行n列に配置されたメモリ部10
ij(i=1,・・・m、j=1,・・・,n)を備えている。なお、
図1では、3行5列に配列されたメモリ部10
11~10
35を示している。
【0009】
第i行のメモリ部10
i1~10
inは、x方向に延びているビット線BL
iに沿って配置され、第1端部(
図3の11a)がビット線BL
iに電気的に接続される。本明細書では、「AとBが電気的に接続される」とは、AとBが直接接続されてもよいし、導電体を介して間接的に接続されてもよいことを意味する。第i行において、奇数列のメモリ部10
i1,10
i3,・・・と、偶数列のメモリ部10
i2,10
i4,・・・は、紙面上で上下方向(y方向)にずれて配置される。例えば、偶数列のメモリ部10
i2は、奇数列のメモリ部10
i1とメモリ部10
i3との間に設けられ、かつ、-y方向にずれて配置される。このような配置を用いたことにより、複数のメモリ部を稠密に配置することができ、集積化を行うことができる。
【0010】
第j列に配置されたメモリ部10
1j、・・・10
mjのそれぞれに対して、2つのフィールドラインFL
j,FL
j+1(j=1,・・・,n-1)が設けられている。z方向から見た平面視において、メモリ部10
1j~10
mjは、フィールドラインFL
jとフィールドラインFL
j+1との間に対応して位置されている。フィールドラインFL
j+1は、z方向から見た平面視において、第j列のメモリ部10
ijのそれぞれの一部に重なるとともに第j+1列のメモリ部10
ij+1のそれぞれの一部に重なるように配置されてもよい。
図2に示すように、フィールドラインFL
j+1は、第j列のメモリ部10
ijと第j+1列のメモリ部10
ij+1との間の領域の上方(+z方向)に配置される。
【0011】
例えば、第2列に配置されたメモリ部10
i2に対してフィールドラインFL
2とフィールドラインFL
3が設けられている。z方向から見た平面視において、メモリ部10
i2は、フィールドラインFL
2とフィールドラインFL
3との間に位置している。フィールドラインFL
2は、z方向から見た平面視において、第1列のメモリ部10
i1のそれぞれの一部に重なるとともに第2列のメモリ部10
i2のそれぞれの一部に重なるように配置してもよい。
図2に示すように、フィールドラインFL
2は、第1列のメモリ部10
i1と第2列のメモリ部10
i2との間の領域の上方に配置される。
【0012】
フィールドラインFLj(j=1,・・・,n+1)は、z方向およびx方向に対して交差するy方向に沿って延び、x方向に隣り合って配置されている。フィールドラインFLjは、x方向に延びているビット線BLiと交差する。各フィールドラインFLjは、制御回路100に接続されて制御される。また、各ビット線BLiも、制御回路100に接続されて制御される。
【0013】
図2に示すように、フィールドラインFL
jは、メモリ部10
ijの第2端部(
図3の11b)側に設けられており、メモリ部10
ijから離間して配置されている。フィールドラインFL
jは、ヨーク25a~25dおよびメモリ部10
ijから電気的に絶縁されている。
【0014】
メモリ部10ijの上方にヨーク25aが配置されている。ヨーク25aは、全てのフィールドラインFL1~FLn+1のそれぞれの上方に配置される。また、ヨーク25aに電気的に接続したプレート電極PLがヨーク25aの上面に接しかつ被覆している。また、プレート電極PLは制御回路100に接続され、制御される。ヨーク25aは、プレート電極PLに電気的に接続されており、プレート電極として機能してもよい。
ヨーク25bおよび25dは、隣り合う2つのフィールドラインFLjとフィールドラインFLj+1との間に一体として設けられ、ヨーク25aと電気的に接続されている。ヨーク25cは、フィールドラインFL1~FLn+1の下方に設けられ、ヨーク25a、25bおよび25dから電気的に分離されている。ただし、ヨーク25cは、ヨーク25a、25bおよび25dに磁気的に接続されており、ヨーク25全体として磁気回路を構成する。
【0015】
ヨーク25a、25b、25c、25dの材料には、例えば、3d遷移金属(例えば、Fe、Co、Niのいずれか)を含む合金が用いられる。
【0016】
ヨーク25a、25cの材料は、ヨーク25b、25dと異なり、ヨーク25b、25dの材料よりも飽和磁化において低い材料である。ヨーク25a、25cの材料には,例えば、パーマロイ(非磁性材料が添加されてもよい)や、ホイスラー合金が用いられる。また、ヨーク25a、25cの材料として、絶縁体マトリクス中に磁性粒子が密に分散したグラニュラー構造を有する材料を用いても良い。
【0017】
各メモリ部10
ijは、
図2に示すように、導電性の磁性体からなる磁気メモリ線(磁性部材)ML
ijと、非磁性導電層12
ijと、磁気抵抗素子14
ijと、非磁性導電層16
ijと、縦型薄膜トランジスタ18
ijと、非磁性導電層19
ijと、を備えている。
【0018】
各磁性部材ML
ijは、
図2において上下方向(z方向)に沿って延びた垂直磁性材料から構成され、筒形状を有している。
図3は、磁性部材ML
ijの構成例を示す断面図である。各磁性部材ML
ijの筒内には非磁性絶縁体50が設けられていてもよい。すなわち、各磁性部材ML
ijは、非磁性絶縁体50を取り囲むように設けられていてもよい。磁性部材ML
ijにおいては、
図3に示すように、領域11c1、縊れ部11d1、領域11c2、縊れ部11d2がz方向に沿って配置されている。領域11c1のz方向に沿った断面においてx方向における領域11c1の端部11c1aと端部11c1bとの間の長さ(直径)をd1とし、縊れ部11d1のz方向に沿った断面においてx方向における縊れ部11d1の端部11d1aと端部11d1bとの間の長さ(直径)をd2とし、領域11c2のz方向に沿った断面においてx方向における領域11c2の端部11c2aと端部11c2bとの間の長さ(直径)をd3とし、縊れ部11d2のz方向に沿った断面においてx方向における縊れ部11d2の端部11d2aと端部11d2bとの間の長さ(直径)をd4とする。この場合、以下の条件が成立する。
d1>d2,d4、
d3>d2,d4、
【0019】
また、磁性部材ML
ijは、第1端部11a(
図3)が非磁性導電層12
ijを介して磁気抵抗素子14
ijに電気的に接続される。なお、非磁性導電層12
ijは、省略してもよい。この場合、磁性部材ML
ijの第1端部11aは磁気抵抗素子14
ijに直接接続される。磁性部材ML
ijの第1端部11a側には、ビット線BLが設けられている。ビット線BLは、フィールドラインFL
1,・・・,FL
n+1に交差するx方向に伸びている。
【0020】
また、各磁性部材ML
ijは、第2端部11b(
図3)がヨーク25dに電気的に接続される。ヨーク25dとヨーク25cは、磁気的に接続される。ここで、「AがBに磁気的に接続される」とは、AとBが磁気回路を構成することを意味し、磁性体同士が直接接触していない場合も含む。ヨーク25cは、ヨーク25aに対向して設けられ、ヨーク25aとヨーク25cとの間にフィールドラインFL
1,・・・,FL
n+1が配置される。ヨーク25b、25dは、z方向から見た平面視において、
図1に示すように、複数のメモリ部10
ijのそれぞれに対応して設けられている。ヨーク25dは、各磁性部材ML
ijの筒内の中央部に配置され、ヨーク25cと同じ階層に位置し、ヨーク25cと磁気的に接続される。ヨーク25bは、ヨーク25aとヨーク25dとの間に配置され、ヨーク25aおよびヨーク25dと電気的に接続されるとともに、磁気的に接続される。したがって、プレート電極PLは、各メモリ部10
ijに対して共通に電気的に接続される。
【0021】
ヨーク25a、ヨーク25b、ヨーク25c、およびヨーク25dは、磁気回路25を構成する。この磁気回路25には、磁気ギャップが設けられる。
図4は、ヨーク25およびその周辺の構成例を示す断面図である。例えば、
図4に示すように、ヨーク25bは、一端がヨーク25aに接続され、他端がヨーク25dに接続される。各磁性部材ML
ijの第2端部(
図3の11b)は、対応するヨーク25b、25dとヨーク25cとの間の磁気ギャップに設けられ、ヨーク25b、25dとヨーク25cとの間に挟まれている。ヨーク25dは、対応する磁性部材ML
ijの上端部の内側面に電気的に接続される。各磁性部材ML
ijの外側面に非磁性の絶縁層28が配置され、この絶縁層28を介してヨーク25dはヨーク25cと磁気的に接続される。絶縁層28は、複数の磁性部材ML
ijの外側面とヨーク25cとの間に設けられている。すなわち、
図4に示す場合には、各磁性部材ML
ijのx方向の厚さと絶縁層28のx方向の厚さとの和が磁気ギャップΔとなる。
【0022】
ここで、ヨーク25a、25cの材料は、ヨーク25b、25dの材料と異なり、ヨーク25a、25cの飽和磁化Msは、ヨーク25b、25dの飽和磁化Msよりも低い。例えば、ヨーク25b、25dの飽和磁化Msが約1500emu/cm
3であるのに対し、ヨーク25a、25cの飽和磁化Msは約500emu/cm
3である。この場合、ヨーク25a、25cの交換スティフネス定数Aも、ヨーク25b、25dの交換スティフネス定数Aよりも低くなる。例えば、ヨーク25b、25dの交換スティフネス定数Aが約1.5uerg/cmであるのに対し、ヨーク25a、25cの交換スティフネス定数Aは約0.5uerg/cmである。このように、ヨーク25a、25cの飽和磁化Msをヨーク25b、25dの飽和磁化Msよりも低下させることによって、ヨーク25a、25cの構造に伴う書き込み磁場強度のばらつきおよび低下を抑制することができる。ヨーク25a、25cの構造とヨーク25b、25dの材料との関係については後で
図13を参照して説明する。
【0023】
図5は、ヨーク25a~25dおよびその周辺の他の構成例を示す断面図である。
図5に示すように構成しても磁気回路25の磁気ギャップを得ることができる。
図5に示す場合は、
図4において、各磁性部材ML
ijと、ヨーク25dとの間に、非磁性導電層29が設けられていることを示す。この非磁性導電層29は、各磁性部材ML
ijの内表面にz方向に沿って配置される。この
図5に示す場合においては、磁気ギャップΔは、非磁性導電層29のx方向の厚さ、各磁性部材ML
ijのx方向の厚さ、および絶縁層28のx方向の厚さの和となる。なお、
図4および
図5において、絶縁層28の代わりに非磁性導電層を用いてもよい。また、各磁性部材ML
ijは、磁性層(例えば、CoFeB)と絶縁層(例えばMgO)との積層構造を備えていてもよい。この場合、ヨーク25dとの接続部分において絶縁層を取り除き、ヨーク25dと磁性層とを接触させて電気的に接続させることが好ましい。なお、MgO層は極薄い層なのでこの層にリーク電流が流れる可能性もある。よって、MgO層は必ずしも除去しなくてもよい。
【0024】
また、本実施形態では、各磁性部材MLijは、ヨーク25b、25dと電気的に接続されたが、代わりにヨーク25cと電気的に接続されてもよい。この場合、ヨーク25cはヨーク25aと他の場所で電気的に接続されることが好ましい。各磁性部材MLijと、ヨーク25dおよびヨーク25cの少なくとも一方との間に非磁性層を設けてもよい。さらにまた、各磁性部材MLijと、ヨーク25dおよびヨーク25cの両方とが電気的に接続されてもよい。この場合、各磁性部材MLijと、ヨーク25dおよびヨーク25cの少なくとも一方との間に非磁性導電層を設けてもよい。
【0025】
再び
図2に戻り、本実施形態の磁気メモリについて説明する。磁気抵抗素子14
ijは、磁性部材ML
ijに書き込まれた情報を読み出すものであって、例えばMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子が用いられる。以下、磁気抵抗素子14
ijがMTJ素子であるとして説明する。MTJ素子14
ijは、磁化方向が可変のフリー層(磁化自由層)14aと、磁化方向が固定された固定層(参照層)14cと、フリー層14aと固定層14cとの間に配置された非磁性絶縁層14bと、を備えている。MTJ素子14
ijにおいては、フリー層14aは、対応する非磁性導電層12
ijを介して磁性部材ML
ijの第1端部11a(
図3)に電気的に接続され、固定層14cは対応する非磁性導電層16
ijを介して対応する縦型薄膜トランジスタ18
ijに電気的に接続される。ここで、「磁化方向が可変である」とは、後述する読み出し動作において、対応する磁性部材ML
ijからの漏れ磁場によって磁化方向が変化可能であることを意味し、「磁化方向が固定である」とは、対応する磁性部材ML
ijからの漏れ磁場によって磁化方向が変化しないことを意味する。
【0026】
縦型薄膜トランジスタ18ijは、一端が非磁性導電層16ijを介して磁気抵抗素子14ijの固定層14cに電気的に接続され、他端が非磁性導電層19ijを介してビット線BLiに電気的に接続され、z方向に延びたチャネル層18aと、このチャネル層18aを囲む、或いは挟むように配置されたゲート電極部SGjと、を備えている。すなわち、ゲート電極部SGjはチャネル層の少なくとも一部を覆っている。チャネル層18aは例えば結晶シリコンから構成される。ゲート電極部SGjは、y方向に沿って延び、制御回路100に接続されて制御される。
【0027】
ヨーク25a、25b、25c、25dは、
図2に示すように、フィールドラインFL
1~FL
n+1のそれぞれの一部分を囲むように、配置されている。例えば、ヨーク25aは、各フィールドラインFL
1~FL
n+1の上面に対向して配置されこの上面を覆い、ヨーク(リターンヨークとも云う)25cは各フィールドラインFL
1~FL
n+1の下面に対向して配置され、ヨーク25bは、ヨーク25aとヨーク25dとを接続し各フィールドラインFL
1~FL
n+1の側部に配置される。ヨーク25aは各フィールドラインFL
1~FL
n+1の上面から離れて配置され、ヨーク25bは各フィールドラインFL
1~FL
n+1の側面から離れて配置され、ヨーク25cは各フィールドラインFL
1~FL
n+1の下面から離れて配置される。ヨーク25dは、
図4および
図5に示すように、各磁性部材ML
ik内に第2端部11bから挿入されており、対応する磁性部材ML
ikと電気的に接続されている。
【0028】
(書き込み方法)
次に、本実施形態の磁気メモリの書き込み方法について
図6を参照して説明する。
図6は、i,kを正の整数としたとき、第i行第k列のメモリ部10
ikの磁性部材ML
ikに情報を書き込む場合を説明する図である。この場合、メモリ部10
ikの左上側に位置しているN1個のフィールドラインFL
k、FL
k-1、・・・,FL
k―N1+1に書き込み電流を分割して流し、メモリ部10
ikの右上側に位置しているN2個のフィールドラインFL
k+1、FL
k+2、・・・,FL
k+N2に、逆向きの書き込み電流を分割して流すことにより行う。例えば、N1個のフィールドラインFL
k、FL
k-1、・・・,FL
k―N1+1に手前から奥行き方向に流れる書き込み電流を流し、N2個のフィールドラインFL
k+1、FL
k+2、・・・,FL
k+N2に奥から手前方向に書き込み電流を流す。
【0029】
次に、書き込み電流を複数のフィールドラインに分割しても書き込み動作が可能なことを
図7および
図8を参照して説明する。
図7は、
図2に示すフィールドラインFL
2に書き込み電流、例えば2mAを流して書き込みを行う場合を説明する模式図である。この場合、磁性部材ML
11上のヨーク25b、ヨーク25a、磁性部材ML
12上のヨーク25b、および磁性部材ML
12と磁性部材ML
11との間のヨーク25cが
図7の破線で示す磁気回路30を形成する。この磁気回路30においては、ヨーク25cと磁性部材ML
11との間に磁気ギャップΔが設けられているとともに、ヨーク25cと磁性部材ML
11との間に磁気ギャップΔが設けられている。これらの磁気ギャップΔのそれぞれの長さをLとし、磁気回路30を貫く電流値をIとすると、これらの磁気ギャップΔにおける磁場強度Hは、アンペールの法則により、H=I/(2L)となる。
図7においては、I=2mAであるので、H=2mA/(2L)となる。なお、磁気回路30におけるヨーク25a、25b、25cの磁気抵抗はゼロとしている。
【0030】
これに対して、4本のフィールドラインに書き込み電流を分割して流した場合の模式図を
図8に示す。
図8は、
図1に示す切断線B-Bで切断した断面に対応する模式図である。
図8において、磁性部材ML
12上のヨーク25b、ヨーク25a、磁性部材ML
16上のヨーク25b、およびヨーク25cが
図8の破線で示す磁気回路30を形成する。この磁気回路30においては、ヨーク25cと磁性部材ML
12との間に磁気ギャップΔが設けられているとともに、ヨーク25cと磁性部材ML
16との間に磁気ギャップΔが設けられている。なお、磁性部材ML
14とヨーク25cとの間にも磁気ギャップが設けられているように見えるが、
図1からわかるように、ヨーク25cは連続してつながっており、磁性部材ML
14の外側の周囲を迂回して磁気回路30が形成される。このため、磁性部材ML
14とヨーク25cとの間には磁気ギャップは生じない。この
図8に示す場合の磁気ギャップにおける磁場強度Hは、これらの磁気ギャップΔのそれぞれの長さをLとし、磁気回路30を貫く電流値をIとすると、これらの磁気ギャップΔにおける磁場強度Hは、アンペールの法則により、H=I/(2L)となる。
図8においては、I=0.5mA×4=2mAであるので、H=2mA/(2L)となる。すなわち、磁気ギャップΔにおける磁場強度は
図7に示す場合と同じになる。これは、複数のフィールドラインに書き込み電流を分割しても、電流分割しない場合と同様の書き込み動作を行うことができることを意味する。
【0031】
本実施形態においては、情報を書き込むメモリ部の左上側に位置しているフィールドラインに書き込み電流を流し、上記メモリ部の右上側に位置しているフィールドラインに、逆向きの書き込み電流を流すことにより書き込み動作を行っている。この書き込み動作を行うことにより、ヨークの飽和を回避することができることについて
図9A乃至
図10Bを参照して説明する。
【0032】
図9Aは、
図6において、フィールドラインFL
kとフィールドラインFL
k+1に同じ大きさで向きが異なる書き込み電流を流し、他のフィールドラインに書き込み電流を流さない場合の模式図である。この場合の磁気回路を
図9Bに示す。フィールドラインFL
kとフィールドラインFL
k+1に同じ大きさで向きが異なる書き込み電流を流しているので、書き込みメモリ部10
ikの左右に互いに逆向きの起磁力Fが生じる。各ヨーク25bとリターンヨーク25cとの間には磁気ギャップΔが設けられているので、この磁気ギャップΔが磁気抵抗Rとなる。
【0033】
図9Bにおいて、書き込みメモリ部10
ikの左側の回路においては、磁気抵抗RがN1個並列に接続されているので、合成磁気抵抗はR/N1となり、書き込みメモリ部10
ikの右側の回路においては、磁気抵抗RがN2個並列に接続されているので、合成磁気抵抗はR/N2となる。すなわち、
図9Bに示す磁気回路は
図10Aに示す等価磁気回路で表される。この等価磁気回路においては、2つの起磁力Fは並列に接続されている。
【0034】
図10Aにおいて、N1およびN2が大きいと仮定すると、合成抵抗R/N1、R/N2は書き込みメモリ部10
ikにおける磁気抵抗Rに比べて小さくなり、起磁力Fによる磁気回路25を流れる磁束φは、F/Rとなる。
【0035】
これに対して、
図9Aにおいて、書き込み電流をフィールドラインFL
k+1に流し、他のフィールドラインには書き込み電流を流さない場合の等価磁気回路を
図10Bに示す。この
図10Bにおいても、合成抵抗R/N1、R/N2はヨーク32の磁気抵抗Rに比べて小さく、かつ左側の磁気回路には起磁力Fが設けられていないので、書き込みメモリ部10
ikにおける磁気抵抗Rの端子32a、32bがほぼショートしている状態に近い。このため、書き込みメモリ部10
ikに対応するヨークに極めて大きな磁束φが流れ、この磁気抵抗Rに磁気飽和が生じる。
【0036】
一方、本実施形態のように、例えば
図9Aに示すように、書き込みメモリ部に対応するヨークの両側に同じ大きさで向きが異なる書き込み電流を流すことにより、磁気飽和が生じることを抑制することができる。
【0037】
次に、
図6に示す磁気メモリにおいて、書き込みメモリ部の両側の各r(<N1、N2)本のフィールドラインに互いに逆向きの分割した書き込み電流を流した場合に発生する磁束について、
図11を用いて説明する。
図11はこの場合の磁気回路図である。書き込みメモリ部10
ikに対応する磁気ギャップに発生する磁束をφ
0とし、書き込みメモリ部10
ikの左側のj(j=1,・・・,r―1)番目のメモリ部に対応する磁気ギャップに発生する磁束をφ
-jとし、書き込みメモリ部10
ikの右側のj(j=1,・・・,r-1)番目のメモリ部に対応する磁気ギャップに発生する磁束をφ
jとする。このとき、これらの磁束は以下の関係式を満たす。
φ
-(r-1)=φ
r-1=F/R、
φ
-(r-2)=φ
r-2=2F/R、
・・・、
φ
0=rF/R
【0038】
この場合、ヨーク内で最も磁束密度が高くなるのは、書き込み電流を流す最外部の領域(
図11において、破線で示す領域)である。この領域を通過する磁束は。以下のようになる。
【0039】
【0040】
上記領域の磁束と書き込みメモリ部を通過する磁束φ0との比を取ると、以下のようになる。
【0041】
【0042】
上記比の上限はヨークの膜厚、磁気特性等によって大きく変化する。なお、
図11において、最も磁束密度が高くなる領域の外側の領域におけるメモリ部の合成磁気抵抗は、書き込みメモリ部の左側ではR/(N1-r)、右側ではR/(N2-r)となる。N1,N2>>rと仮定すれば、上記合成磁気抵抗は実質的にゼロと見なすことができる。
【0043】
次に、メモリ部アレイの端部のメモリ部への書き込みについて
図12A、12Bを参照して説明する。
図12Aはメモリ部アレイの端部における書き込み動作を説明する図であり、
図12Bは
図12Aについての等価磁気回路を示す図である。本実施形態においては、端部のメモリ部への書き込みのために、メモリ部アレイの外側にダミーメモリ部アレイを設けた構成を備えている。端部のメモリ部への書き込みは、
図12A、12Bに示すように、このメモリ部の左側のr個のフィールドラインに例えば紙面の奥行き方向から手前方向に流れる書き込み電流を流し、上記端部のメモリ部から右側のr個のフィールドライン(メモリ部アレイまたはダミーメモリ部アレイに含まれるメモリ部に対応するフィールドライン)に例えば紙面の手前方向から奥行き方向に流れる書き込み電流を流す。情報が書き込まれるメモリ部の左側のr個のフィールドラインに流れる書き込み電流と、右側のr個のフィールドラインに流れる書き込み電流とは同じ大きさで向きが互いに異なる。このようにしてメモリ部アレイの端部における書き込みを行うことができる。
【0044】
なお、書き込みを行うメモリ部の片側に位置するフィールドラインのうち書き込み電流を流すフィールドラインの個数をrとすると、ダミーメモリ部は、少なくともr列以上を設けることが好ましい。
【0045】
また、ダミーメモリ部には、
図6に示すヨーク25a、リターンヨーク25c、およびフィールドラインFLを設ける(
図6参照)。しかし、ダミーメモリ部には、磁性部材MLは設けてもよいし、設けなくともよい。設ける場合は、磁性部材MLはプレート電極PLおよびビット線BLの少なくとも一方と電気的に接続されなくてもよい。なお、メモリ部領域とダミーメモリ部領域とを合わせた領域において、書き込みメモリ部に対して対称性が保たれることが好ましいので、ダミーメモリ部にもヨーク25b、ヨーク25dを設けることが好ましい。
【0046】
また、ダミーメモリ部をr列以上設ける場合には、r+1列目から外側にフィールドラインを設けなくともよい。
【0047】
また、r+1列目から外側の
図6に示すヨーク25aとリターンヨーク25cを接触させる、すなわち磁気ギャップをなくして、磁気抵抗をゼロにしたセルを設けてもよい。なお、磁気ギャップを無くす代わりにヨーク25aとリターンヨーク25cとの端部を互いに磁気的に接続してもよい。これにより、書き込み時に書き込みメモリ部の両側の磁気抵抗が同じになる。これは、
図12Bにおいて、書き込みメモリ部に対して左側のr+1列目より外側のメモリ部の合成磁気抵抗は実質的にゼロになるからである。
【0048】
以上説明したように、本実施形態においては、メモリ部に書き込みを行う場合は、書き込みメモリ部の両側のr列のフィールドラインに互いに逆向きの分割された書き込み電流を流す。また、メモリ部アレイの端部のメモリ部に書き込みを行う場合、ダミーセルを含めて、書き込みメモリ部の両側のr列のフィールドラインに互いに逆向きの分割された書き込み電流を流す。これにより、1本のフィールドラインに流す電流の大きさを小さくしても書き込みを行うことができ、フィールドラインにエレクトロマイグレーションが生じるのを抑制することが可能となり、断線が発生することを抑制することができる。
【0049】
なお、メモリ部に書き込みを行う場合は、書き込みメモリ部の左側のr1列の各フィールドラインに流す書き込み電流I1と、右側のr2列の各フィールドライン流す書き込み電流I2とは、I1×r1=I2×r2の関係を満たしていればよい。この関係を満たしていれば、書き込みメモリ部には、左右から同じ磁場が印加される。なお、必ずしも左右から同じ磁場が印加されなくても良いが、磁性体の飽和を回避するために、書き込みメモリ部には、左右から同じ磁場が印加されることが好ましい。
【0050】
本実施形態においては、一回の書き込み動作に、一つの列に配置されたメモリ部に同時に一つの情報、例えば情報「1」の書き込みが行われる。例えばkをn以下の自然数とすると、k列に配置されたm個のメモリ部101k~10mkに情報「1」の書き込みが行われる。続いて、この情報「1」を記憶すべきメモリ部(例えば、偶数行目のメモリ部102jk)に対してプレート電極PLと上記情報「1」を記憶するメモリ部に対応するビット線BL2jとの間に選択的にシフト電流を流し、上記情報を磁気抵抗素子側に移動させ、これにより、情報「1」が格納される。ここで、jは1以上m/2以下の自然数である。その後、k列に配置されたメモリ部に対して、情報「0」の書き込みを行う。続いて、情報「1」が格納された以外のメモリ部、例えば、k列の奇数行目のメモリ部に選択的にシフト電流を流し、磁気抵抗素子側に移動させる。以上の2回の動作により、k列に配置されたメモリ部への情報の書き込みが終了する。一回の書き込み動作において、一つの列に配置されたメモリ部に同時に一つの情報が書き込まれることにより、ビット当たりの書き込み消費電力を低減することができる。
【0051】
図13は、ヨーク25cの構成例を示す平面図である。ヨーク25c(リターンヨーク)は、z方向から見た平面視において、複数の磁性部材ML
ijのそれぞれに対応して設けられた開口部OPを有する。磁性部材ML
ijの第2端部11bおよびヨーク25d(ヨーク25b、25dのうち下部25d)は、
図4または
図5に示すように、対応する開口部OP内に設けられている。
【0052】
このように、ヨーク25cに多数の開口部OPが設けられている場合、ヨーク25cをヨーク25b、25dと同様に飽和磁化Msの大きな材料で構成すると、ヨーク25cの磁化応答が低下し、磁束がヨーク25cを通りにくくなる。この場合、
図13に示すように、書き込み対象の磁性部材ML
ikの両側にあるフィールドラインFL
k-5~FL
kとフィールドラインFL
k+1~FL
k+6とに互いに逆方向の書き込み電流I1、I2を流したときに、磁場の方向が安定しない。
【0053】
例えば、
図14は、ヨーク25c、25aをヨーク25b、25dと同一の高飽和磁化材料(例えば、FeCo等)で構成した場合の磁化方向を示す模式平面図である。ヨーク25cの飽和磁化が高い場合、開口部OPにおける磁場方向(
図14の矢印AR)の向きが書き込み対象の磁性部材ML
ijの列において安定していない。また、開口部OPにおける磁場方向の向きは、磁性部材ML
ijの列以外の領域において、磁性部材ML
ijの列に対して対称となっておらず、やはり安定していない。
【0054】
この場合、書き込み対象の磁性部材MLijには、書き込み電流I1、I2の方向に従った論理データを書き込むことができない場合がある。
【0055】
一方、本実施形態では、ヨーク25cをヨーク25b、25dよりも飽和磁化Msにおいて小さな材料で構成している。この場合、ヨーク25cの磁化応答が上昇し、磁束がヨーク25cを通り易くなる。よって、
図13に示すように、書き込み対象の磁性部材ML
ikの両側にあるフィールドラインFL
k-5~FL
kとフィールドラインFL
k+1~FL
k+6とに互いに逆方向の書き込み電流I1、I2を流したときに、磁場の方向が所望の向きに安定し易くなる。
【0056】
例えば、
図15は、ヨーク25a、25cをヨーク25b、25dとは異なる低飽和磁化材料(例えば、非磁性材料を添加したパーマロイ等)で構成した場合の磁化方向を示す模式平面図である。ヨーク25cの飽和磁化がヨーク25b、25dのそれより低い場合、開口部OPにおける磁場方向(
図15の矢印AR)の向きが書き込み対象の磁性部材ML
ijの列において安定している。
図15では、磁性部材ML
ijの列の全ての開口部OPにおいて、磁場方向が開口部OPの中心へ向かっている。また、開口部OPにおける磁場方向の向きは、磁性部材ML
ijの列以外の領域において、磁性部材ML
ijの列に対して対称となっている。即ち、磁性部材MLの列ごとに、磁場方向が所望の向きにほぼ同じとなっており、安定している。
【0057】
これにより、書き込み対象の磁性部材MLijには、書き込み電流I1、I2の方向に従った論理データを書き込むことができる。
【0058】
また、ヨーク25b、25dをz方向に挟むようにヨーク25cに対向するヨーク25aも、ヨーク25cと同じ材料で構成されている。即ち、ヨーク25aは、ヨーク25b、25dよりも飽和磁化Msにおいて小さな材料で構成されている。この場合、ヨーク25aの透磁率も上昇し、磁束がヨーク25aに対しても通り易くなる。よって、書き込み対象の磁性部材MLikの両側にあるフィールドラインFLk-5~FLkとフィールドラインFLk+1~FLk+6とに互いに逆方向の書き込み電流I1、I2を流したときに、ヨーク25aにおいても磁場の方向が安定し易くなる。尚、ヨーク25a、25cの少なくともいずれか一方が、ヨーク25b、25dよりも飽和磁化Msにおいて小さければよい。これにより、磁場の方向が安定し易くなる。
【0059】
よって、ヨーク25a、25cの少なくともいずれか一方は、それらの間にあるヨーク25b、25dよりも飽和磁化Msにおいて低い材料で構成されている。これにより、磁気回路において、開口部OPの磁場が所望の向きに安定し、メモリ部10ikの磁性部材MLikに所望の磁場を与えることができる。磁性部材MLikに与える書き込み磁場の強度を向上させ、書き込み磁場のばらつきを抑制することができる。その結果、データの書き込み効率が向上する。
【0060】
ヨーク25b、25dは、ヨーク25a、25cよりも飽和磁化Msにおいて高い材料で構成されている。これにより、ヨーク25a~25dで構成される磁気回路25の磁気飽和を抑制することができる。
【0061】
ヨーク25cがヨーク25b、25dよりも飽和磁化Msにおいて低い場合、ヨーク25aは、ヨーク25b、25dと一体的に同一材料で構成されていてもよい。即ち、ヨーク25cは、同一材料で一体形成されたヨーク25a、25b、25dよりも飽和磁化Msにおいて低い材料で構成されていてもよい。この場合でも、磁場の方向が安定し易くなる。
【0062】
(読み出し方法)
次に読み出し方法について説明する。メモリ部から情報を読み出す場合、例えばメモリ部1012から情報を読み出す場合、読み出したい情報がメモリ部1012の磁性部材ML12の最下部、すなわちMTJ素子1412に最も近い領域に位置しているときは、磁性部材ML12の最下部に記憶された情報に対応してMTJ素子1412のフリー層14aの磁化方向も変化している。よって、制御回路100を用いてプレート電極PLとビット線BL1との間に読み出し電流を流して、MTJ素子1412からの情報を読み出す。この読み出し情報は、MTJ素子1412の抵抗状態に対応する。例えば、MTJ素子1412の抵抗が高い場合は、抵抗が低い場合に比べて、MTJ素子1412のフリー層14aと固定層14cの磁化方向が反平行により近い状態(例えば、90度以上)に対応し、MTJ素子1412の抵抗が低い場合は、抵抗が高い場合に比べてMTJ素子1412のフリー層14aと固定層14cの磁化方向が平行により近い状態(例えば90度以下)に対応する。
【0063】
読み出したい情報がメモリ部1012の磁性部材ML12の最下部に存在しない場合は、制御回路100を用いてプレート電極PLとビット線BL1との間にシフト電流を流し、読み出したい情報を磁性部材ML12の最下部に位置するように移動させる。その後、上述した読み出し動作を行うことにより情報を読み出すことができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、書き込み電流を複数のフィールドラインに分割して書き込みを行うことにより、1本当たりのフィールドラインに流れる書き込み電流を低減することが可能となり、エレクトロマイグレーションによる断線を抑制することができる。また、一回の書き込み動作により、複数のメモリ部への情報の書き込みを行うことが可能となり、書き込み消費電力を低減することができる。
【0065】
(第2実施形態)
図16は、第2実施形態によるヨーク25およびその周辺の構成例を示す断面図である。第2実施形態では、ヨーク25aとヨーク25bとの間に、ヨーク25aとヨーク25bとは異なる導電材料で構成された導電膜26が設けられている。導電膜26は、非磁性導電膜であり、例えば、Au、Cu、Cr、Zn、Ga、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Hf、Ta、WまたはPt等で構成されている。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、ヨーク25a、25cの飽和磁化Msは、ヨーク25b、25dの飽和磁化Msよりも低い。ヨーク25a、25cの交換スティフネス定数Aも、ヨーク25b、25dの交換スティフネス定数Aよりも低い。また、第2実施形態の書き込み動作および読出し動作は、第1実施形態のそれらの動作と同様でよい。
【0066】
このように、ヨーク25aとヨーク25bが直接接続しておらず、それらの間に非磁性の導電膜26が介在しても、磁気回路25は成立する。また、ヨーク25a、25cの材料は、第1実施形態のそれらの材料と同様であるので、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、磁性部材MLikに与える書き込み磁場の強度を向上させ、書き込み磁場のばらつきを抑制することができる。さらに、第2実施形態は、第1実施形態のその他の効果も得ることができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
10ij メモリ部、MLij 磁性部材、12ij 非磁性導電層、14ij 磁気抵抗素子、16ij 非磁性導電層、18ij 縦型薄膜トランジスタ、19ij 非磁性導電層、BLi ビット線、FLj フィールドライン、25a~25d ヨーク、26 導電膜