(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024488
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】剥離紙原紙、剥離紙及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20240215BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20240215BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
D21H27/00 A
C09J7/40
D21H27/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127339
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 翔
【テーマコード(参考)】
4J004
4L055
【Fターム(参考)】
4J004AA03
4J004AA05
4J004AA07
4J004AA10
4J004AA13
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004AB03
4J004AB04
4J004AB05
4J004AB06
4J004DA01
4J004DA03
4J004DA04
4J004DA05
4J004DB02
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AF13
4L055AF33
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG86
4L055AG97
4L055AH17
4L055AH38
4L055BE02
4L055BE08
4L055BE10
4L055BE11
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA32
4L055GA43
(57)【要約】
【課題】低坪量でありながら、取扱性が良く、粘着テープとした際に加工適性が良好な剥離紙原紙、剥離紙及び粘着テープを提供する。
【解決手段】紙基材11と、紙基材11の表面の少なくとも一部に積層される目止め層12と、を備え、紙基材11は、20g/m
2未満の坪量と、35μm未満の紙厚を有し、JIS P 8113:2006に準拠して測定した縦方向の引張り強さが2.0kN/m以上である剥離紙原紙、当該剥離紙原紙と、剥離紙原紙の表面の少なくとも一部に積層された剥離剤層と、を含む剥離紙、テープ基材と、テープ基材の表面の少なくとも一部に積層された粘着剤層と、粘着剤層の表面のうち、テープ基材と反対側の表面に積層された請求項6に記載の剥離紙と、を含む粘着テープである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の表面の少なくとも一部に積層される目止め層と、を備え、
前記紙基材は、
20g/m2未満の坪量と、
35μm未満の紙厚を有し、
JIS P 8113:2006に準拠して測定した縦方向の引張り強さが2.0kN/m以上であることを特徴とする剥離紙原紙。
【請求項2】
前記紙基材は、針葉樹パルプと広葉樹パルプを含み、
前記針葉樹パルプと前記広葉樹パルプとの重量配合比が50:50~100:0であることを特徴とする請求項1に記載の剥離紙原紙。
【請求項3】
前記紙基材は、木材パルプとプラスチック繊維を含み、
前記木材パルプの含有量が前記紙基材の全質量に対して50質量%以上100質量%以下であり、かつ、前記プラスチック繊維と前記木材パルプ重量配合比が10:90~49:51であることを特徴とする請求項1に記載の剥離紙原紙。
【請求項4】
前記紙基材は、原料パルプの全質量に対して湿潤紙力増強剤を0.5質量%以上20質量%以下で含有することを特徴とする請求項1に記載の剥離紙原紙。
【請求項5】
前記紙基材は、樹脂を含有する処理液がサイズプレスを用いて、片面あたり1.0g/m2以上5.0g/m2以下(乾燥固形分換算)で塗布又は含浸されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の剥離紙原紙。
【請求項6】
請求項1に記載の剥離紙原紙と、
前記剥離紙原紙の表面の少なくとも一部に積層された剥離剤層と、
を含むことを特徴とする剥離紙。
【請求項7】
テープ基材と、
前記テープ基材の表面の少なくとも一部に積層された粘着剤層と、
前記粘着剤層の表面のうち、前記テープ基材と反対側の表面に積層された請求項6に記載の剥離紙と、
を含むことを特徴とする粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙原紙、剥離紙及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
剥離紙は、粘着テープの粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。近年は、環境負荷を低減させる観点から、プラスチックの廃棄物を削減することやリサイクル性が求められている。中でも、剥離剤の紙基材への浸透を極力抑制し、その剥離性を最大限に発揮させるための目止め層として形成されるポリオレフィン層を用いない剥離紙の要求が高まっている(例えば、特許文献1参照)。さらに、ゴミ削減や輸送コスト改善という観点から、剥離紙の低坪量化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、剥離紙の坪量を単に低くしても、剥離紙の引張強度が低下し、粘着テープとした際に剥離紙を剥離する工程で剥離紙が破れるといった加工適性が低下する。そのため、剥離紙の過度の低坪量化は避けられる傾向があった。
【0005】
そこで、本開示では、低坪量でありながら、取扱性が良く、粘着テープとした際に加工適性が良好な剥離紙原紙、剥離紙及び粘着テープを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)紙基材と、前記紙基材の表面の少なくとも一部に積層される目止め層と、を備え、前記紙基材は、20g/m2未満の坪量と、35μm未満の紙厚を有し、 JIS P 8113:2006に準拠して測定した縦方向の引張り強さが2.0kN/m以上である剥離紙原紙である。
(2)前記紙基材は、針葉樹パルプと広葉樹パルプを含み、前記針葉樹パルプと前記広葉樹パルプとの重量配合比が50:50~100:0である(1)に記載の剥離紙原紙である。
(3)前記紙基材は、木材パルプとプラスチック繊維を含み、前記木材パルプの含有量が前記紙基材の全質量に対して50質量%以上100質量%以下であり、かつ、前記プラスチック繊維と前記木材パルプ重量配合比が10:90~49:51である(1)に記載の剥離紙原紙である。
(4)前記紙基材は、原料パルプの全質量に対して湿潤紙力増強剤を0.5質量%以上20質量%以下で含有する(1)に記載の剥離紙原紙である。
(5)前記紙基材は、樹脂を含有する処理液がサイズプレスを用いて、片面あたり1.0/m2以上5.0g/m2以下(乾燥固形分換算)で塗布又は含浸されていることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の剥離紙原紙である。
(6)(1)に記載の剥離紙原紙と、前記剥離紙原紙の表面の少なくとも一部に積層された剥離剤層と、を含む剥離紙である。
(7)テープ基材と、前記テープ基材の表面の少なくとも一部に積層された粘着剤層と、
前記粘着剤層の表面のうち、前記テープ基材と反対側の表面に積層された(6)に記載の剥離紙と、を含む粘着テープである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低坪量でありながら、取扱性が良く、粘着テープとした際に加工適性が良好な剥離紙原紙、剥離紙及び粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る剥離紙原紙の断面模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る剥離紙の断面模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る粘着テープの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0010】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
<剥離紙原紙>
図1は、本実施形態に係る剥離紙原紙の断面模式図である。
【0012】
本実施形態に係る剥離紙原紙10は、紙基材11と、紙基材11の表面の少なくとも一部に積層される目止め層12とを含む。また、紙基材11は、20g/m2未満の坪量と、35μm未満の紙厚を有し、JIS P 8113:2006に準拠して測定した縦方向の引張り強さが2.0kN/m以上である。当該構成により、低坪量でありながら、取扱性が良く、粘着テープとした際に加工適性が良好な剥離紙原紙10とすることができる。
【0013】
(紙基材の坪量)
紙基材11の坪量は、20g/m2未満である。また、紙基材11の坪量の下限としては、加工適性の点から、5g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましい。
【0014】
(紙基材の紙厚)
紙基材11の紙厚は、JIS P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定される。紙基材11の厚さの下限としては10μmが好ましく、15μmがより好ましい。上記紙基材11の厚さの上限としては、35μm以下であるが、25μmがより好ましく、20μmがより好ましい。紙基材11の紙厚が上記範囲であることで、紙基材11の密度が高くなり、剥離剤の剥離紙原紙10への浸透を効果的に抑制し、剥離剤の低坪量化及び軽量化を可能にしつつ、強度を維持できる。その結果、剥離紙原紙10を用いて剥離紙を製造する場合の作業性及び加工適性及び粘着テープから剥離紙を剥離する際の加工適性を向上できる。上記範囲の紙厚を製造するにあたっては、カレンダー加工を行うのが望ましい。
【0015】
カレンダー加工とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性や厚みを平均化する処理である。カレンダー加工を受けることによって、紙基材11の密度が高くなる。カレンダー加工の装置としては、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0016】
(紙基材の縦方向の引張り強さ)
紙基材11の縦(MD)方向の引張り強さは、JIS P 8113:2006(紙及び板紙-引張特性の試験方法-)に準拠して測定する。試験片は横方向25mm(±0.5mm)×縦方向150mm程度に裁断したものを用いる。引張試験機のつかみ具とつかみ具の間隔を100mmとし、縦方向に引張速度300mm/minの条件で引っ張って測定する。引張速度は300mm/minとする。5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を縦方向の引張り強さとする。紙基材11の縦方向の引張り強さは、2.0kN/m以上である。また、5kN/m以下が好ましく、4kN/m以下がより好ましい。
【0017】
紙基材11を構成するパルプとしては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)等の木材パルプを使用できる。針葉樹パルプ、広葉樹パルプとしては、特に限定されるものではなく、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ等を使用することができる。バージンパルプとしては、木材パルプを用いることが好ましく、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプや、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ等が挙げられる。また、これ以外に、非木材パルプとしては、コットンパルプや麻、バガス、ケナフ、エスパルト、楮、三椏、雁皮等を適宜用いることができる。
【0018】
坪量20g/m2未満及び縦方向の引張り強さ2.0kN/m以上である紙基材11を得るためには、紙基材11が針葉樹パルプと広葉樹パルプを含み、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの重量配合比が50:50~100:0である重量比率(固形分重量)が好ましく、80:20~99:1の重量比率(固形分重量)がより好ましく、90:10~99:1の重量比率(固形分重量)がさらに好ましい。
【0019】
また、紙基材11においては、木材パルプが主成分であることが好ましい。具体的には、紙基材11における木材パルプの含有割合は50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。紙基材11の引張り強さを高めるという観点から、紙基材11中にプラスチック繊維を含有させた混抄紙であることも好ましい。この場合、坪量20g/m2未満及び縦方向の引張り強さ2.0kN/m以上である紙基材11を得るためには、木材パルプの含有割合は50質量%以上100質量%以下であると同時に、プラスチック繊維と木材パルプとの重量配合比が10:90~49:51の重量比率(固形分重量)であることが好ましく、35:65~45:55であることがより好ましい。
【0020】
プラスチック繊維としては、例えば、エステル類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブチレン(PB)、これらの混合物及びこれらの共重合体を含む群から選択されることが好ましい。
【0021】
また、坪量20g/m2未満及び縦方向の引張り強さ2.0kN/m以上である紙基材11を得るために、原料パルプの全質量に対して湿潤紙力増強剤を0.5質量%以上20質量%以下で含有することが好ましく、5質量%以上15質量%以下で含有させることがより好ましい。湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミド-ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂等を用いることができる。
【0022】
さらに、坪量20g/m2未満及び縦方向の引張り強さ2.0kN/m以上である紙基材11を得るために、樹脂を含有する処理液がサイズプレスを用いて、片面あたり1.0g/m2以上5.0g/m2以下(乾燥固形分換算)で塗布又は含浸されていることが好ましく、片面あたり1.5g/m2以上2.5g/m2以下の塗布又は含侵がより好ましい。樹脂材料としては、例えば、各種ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、澱粉、変性澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、カゼイン等の水溶性バインダ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレンテレフタレート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、変性スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート-ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル-メタアクリル酸エステル共重合体等のエマルション型バインダ又はエマルション型であるウレタン樹脂バインダ等を用いることができる。
【0023】
紙基材11は、セルロースナノファイバーを含んでもよい。紙基材11にセルロースナノファイバーを含むことにより、紙基材11の光沢度の向上や製紙工程における歩留りの向上を図ることができる。
【0024】
セルロースナノファイバーとは、セルロース系原料を解繊することにより得られるセルロースのシングルミクロフィブリルであり、500nm未満の平均繊維径を有する。セルロースナノファイバーを含むように構成する具体的な方法はセルロースナノファイバーを内添あるいは外添することにより製造する方法のどちらでもよい。
【0025】
紙基材11には、パルプや上述の湿潤紙力増強剤等以外にも、填料、サイズ剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの各種助剤を必要に応じて含有させることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
紙基材11の密度は、0.5g/cm3以上2.0g/cm3以下が好ましく、0.6g/cm3以上1.5g/cm3以下がより好ましく、0.7g/cm3以上1.3g/cm3以下が更に好ましい。密度が0.5g/cm3未満であると、剥離剤の染み込みが大きくなり、剥離性が悪くなる。また、剥離剤が反対面へ抜けてしまうおそれがある。一方、密度が2.0g/cm3を超えると、平滑性が高くすぎて、剥離剤を塗工すると紙が滑りやすくなってしまう。
【0027】
紙基材11の製造方法やその抄紙方法及び抄紙機の型式等は、特に限定されない。例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、ギャップフォーマー型、ハイブリッドフォーマー型(オントップフォーマー型)等のツインワイヤー抄紙機等、公知の製造(抄紙)方法、抄紙機が選択可能である。また、抄紙時のpHは、特に限定されず、酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙層の表面にアルカリ性薬剤を塗工してもよい。また、紙基材11は、1層であってもよく、2層以上の複数層で構成されていてもよい。
【0028】
(目止め層)
目止め層12は、剥離剤の紙基材11への浸透を効果的に抑制し、剥離剤層の表面の平滑性を得るためのものである。なお、環境負荷を低減させる観点から、目止め層12は、ポリオレフィンを含有しないことが好ましい。目止め層12が、ポリオレフィンレスな目止め層であれば、上述した「脱プラ」やリサイクル性の要求にも十分に応えることができる。
【0029】
目止め層12は、バインダ樹脂を含有することが好ましい。バインダ樹脂としては、特に限定されず、塗工紙分野等で使用可能なものを適宜使用できる。バインダ樹脂としては、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂;メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体等のスチレン系樹脂;カゼイン、アラビアゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、デキストリン、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、澱粉類、及びスチレン系樹脂からなる群よりなる少なくとも1種であることが好ましい。そして、ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール)、酸化澱粉、及びスチレン系共重合体(スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体等)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
目止め層12は、無機顔料を含有することが好ましく、上記したバインダ樹脂と無機顔料とを含有することがより好ましい。無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、シリカ、コロイダルシリカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリナイト、アンチゴライト、スメクタイト、バーミキュライト、マイカ等が挙げられる。これらの中でも、カオリン、焼成カオリン、及びエンジニアードカオリンからなる群より選ばれる1種であることが好ましく、カオリンがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
無機顔料の含有量は、特に限定されないが、平滑性や結着性の観点から、乾燥重量でバインダ樹脂125質量部に対して、1質量部以上1400質量部以下であること好ましく、200質量部以上600質量部以下であることがより好ましく、250質量部以上500質量部以下であることが更に好ましく、300質量部以上400質量部以下であることがより更に好ましい。
【0032】
目止め層12は、必要に応じてサイズ剤、耐水化剤、撥水剤、染料、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料、架橋剤等の通常使用される各種助剤を含有させることができる。
【0033】
目止め層12の塗布量は、乾燥重量で0.2g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。この塗布量は、0.5g/m2以上であることがより好ましく、0.7g/m2以上であることが更に好ましい。また、この塗布量の上限は、10g/m2以下であることがより好ましく、8g/m2以下であることが更に好ましい。目止め層12の塗布量を上記下限値以上とすることで、剥離剤の紙基材11への浸透を一層効果的に抑制でき、また、剥離剤層の表面の平滑性を一層向上させることができる。一方、目止め層12の塗布量を上記上限値以下とすることで、塗工時の乾燥負荷を一層軽減でき、操業面やコスト面も一層好ましくなる。なお、目止め層12が2層以上の複数層である場合、各目止め層12の少なくとも1つの層の塗布量が、上記範囲であることが好ましく、目止め層12の全ての層の塗布量が、上記範囲であることがより好ましい。
【0034】
目止め層12の厚みは、0.5μm以上50μm以下であることが好ましい。この厚みの下限は、1μm以上であることがより好ましい。また、この厚みは、10μm以下であることがより好ましい。この厚みの下限をこのような範囲に制御することによって、後述する剥離剤の紙基材11への浸透を効果的に抑制することができる。また、この厚みの上限をこのような範囲に制御することによって、不必要に厚くなることを防ぐ、実用的な厚さに留めることができる。
【0035】
目止め層12は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。目止め層12が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。これらの中でも、目止め層12は2層以上の複数層であることが好ましい。目止め層12が複数層であることで、剥離剤の紙基材11への浸透を効果的に抑制する効果と、剥離剤層の表面の平滑性を得る効果を両立させやすくなる。
【0036】
目止め層12の塗工方法は特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、サイズプレスコーター、シムサイザー等が挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工等が挙げられる。また、目止め層12を乾燥させる手法としては、特に限定されず、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0037】
<剥離紙>
図2は、本実施形態に係る剥離紙の断面模式図である。
【0038】
本実施形態に係る剥離紙20は、紙基材11と紙基材11の表面の少なくとも一部に積層される目止め層12を備える剥離紙原紙10の表面の少なくとも一部に積層された剥離剤層21とを含む。目止め層12の表面に剥離剤層21を設けることで、剥離紙20として好適に使用できる。なお、環境の観点から、剥離紙20は、ポリオレフィンを含有する層(ポリオレフィン層)を有しないことが好ましい。このポリオレフィン層は、当該層中にポリオレフィンを合計で50質量%以上含有する層である。これにより、上述した「脱プラ」やリサイクル性の要求に応えることができる。
【0039】
なお、剥離紙20は、目止め層12及び剥離剤層21を紙基材11の両面に設けて、両面剥離紙としてもよい。さらに、剥離紙20は、紙基材11における、目止め層12及び剥離剤層21が設けられた面とは反対側の面に、カール抑制層(図示せず)等を設けてもよい。カール抑制層としては、特に限定されず、公知のものを採用することができる。
【0040】
(剥離剤層)
剥離剤層21に含有される剥離剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アルキッド樹脂、長鎖アルキル系樹脂、各種ワックス類等の剥離剤等が挙げられる。これらの中でも、剥離性に優れる観点から、剥離剤はシリコーン系樹脂であることが好ましい。
【0041】
剥離剤層21は、目止め層12の表面の一部に、上述した剥離剤を含む塗布液を塗布・加熱することによって硬化させて形成することができる。塗布方法は、特に限定されず、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、多段ロールコーター等の各種塗工装置を適宜選択して塗布する方法を採用することができる。
【0042】
剥離剤の塗布量は、乾燥重量で0.4g/m2以上3.0g/m2以下であることが好ましい。この塗布量の下限は、0.6g/m2以上であることがより好ましく、0.8g/m2以上であることが更に好ましい。また、この塗布量は、2.0g/m2以下であることがより好ましく、1.8g/m2以下であることが更に好ましい。塗布量をこのような範囲に制御することによって、剥離紙20により適した剥離力とすることができる。
【0043】
<粘着テープ>
図3は、本実施形態に係る粘着テープの断面模式図である。
【0044】
本実施形態に係る粘着テープ30は、上述の剥離紙20と、剥離紙20の表面に設けられた粘着剤層32と、粘着剤層32の表面のうち、剥離紙20と反対側の表面に積層されたテープ基材31を含む。なお、粘着剤層32は、テープ基材31の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。上述した剥離紙20の剥離剤層21の表面に、粘着剤層32を介してテープ基材31を貼合することによって、粘着テープ30として好適に使用することができる。すなわち、粘着テープ30は、紙基材11、目止め層12、剥離剤層21、粘着剤層32及びテープ基材31をこの順に積層されたものである。
【0045】
(テープ基材)
テープ基材31としては、紙系、樹脂系等の原料から構成されている基材を用途や環境により、適宜選択することができる。また、テープ基材31の厚みは、特に限定はなく、一般的には100μm以下である。ゴミ削減や輸送コスト改善という観点から、粘着テープ30にも薄型化が望まれるため、テープ基材31の厚みは、1μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上15μm以下がより好ましい。テープ基材31の厚みが1μm未満の場合、粘着テープ30のハンドリング性や加工適性が低下する可能性がある。
【0046】
(粘着剤層)
粘着剤層32に含まれる粘着剤としては、特に限定はなく、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。また、溶剤型粘着剤、エマルション型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等の無溶剤型粘着剤、エネルギー線の照射により硬化して再剥離性となるエネルギー線硬化型粘着剤であってもよい。さらに、粘着剤には、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、填料、染料又は顔料等の着色剤等を配合することができる。
【0047】
粘着剤層32の厚みは、特に限定はなく、1μm以上100μm以下であることが好ましい。ゴミ削減や輸送コスト改善という観点から、粘着テープ30にも薄型化が望まれるため、粘着剤層32の厚みは、50μm以上であることがより好ましく、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。なお、テープ基材31の粘着剤層32とは反対側の表面(最表層の表面)上に、さらに、印刷受容層や印刷層(共に図示せず)等を設けてもよい。また、粘着テープ30の表面には、粘着テープ30の保護や退色防止のために、従来公知のラミネートフィルム(図示せず)を更に設けてもよい。
【0048】
粘着テープ30は、上述した剥離紙20の剥離剤層21の表面に、公知の方法によって粘着剤を含む塗布液を塗布し、乾燥して粘着剤層32を形成した後、粘着剤層32の上にテープ基材31を貼合することによって製造することができる。さらに、必要に応じて、粘着テープ30を巻き取る巻き取り工程等を行ってもよい。
【0049】
粘着テープ30は、シート状やテープ状やラベル状等の適宜な形態に成形して被着体の接着等の従来の粘着テープに準じた各種の用途に用いることができる。粘着テープ30は、例えば、各種オーバーラミネート用ラベル、さらには、管理用途(例えば、物品管理用ラベル、工程管理用ラベル、物流管理用ラベル等)、文具事務用品(目隠しラベル、ファンシーラベル等)、販売促進用及び広告宣伝用、その他各種遊具用途等の各種ラベル等として好適に使用できる。
【実施例0050】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
なお、本実施例における処理及び測定について、その条件について特に断りがない限り、23℃、相対湿度50%の環境下において行ったものである。
【0052】
<実施例1>
叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)20質量%と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)80質量%とを混合してなるパルプスラリーを原料として抄造しサイズプレスにおいて、両外層部にアクリル系エマルションを2.0g/m2(固形分換算)となるよう含浸して、その後、カレンダー処理を行い坪量19g/m2、紙厚が25μm、密度0.76g/cm3の紙基材を得た。
【0053】
得られた紙基材の縦方向の引張り強さをJIS P8113に規定された方法に基づいて測定したところ、2.0kN/m以上であった。
【0054】
次いで、ポリビニルアルコール100質量部と水550質量部からなる目止め層用塗工液を乾燥重量で塗布量が2.0g/m2となるように塗布し、乾燥することにより目止め層を形成した。その後、目止め層上に、シリコーン系剥離剤を、乾燥重量で塗布量が2.0g/m2となるように塗布し、150℃、30秒間硬化させることにより、剥離剤層を形成し、剥離紙を得た。
【0055】
次いで、剥離紙上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布し、乾燥して粘着剤層(厚み10μm)を形成し、粘着剤層の表面を、PET基材(厚み12μm)と貼り合わせて粘着テープを作製した。
【0056】
<実施例2>
ポリエステル繊維が40重量%、叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)25質量%、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)35質量%を配合し、パルプスラリーとしたこと以外は実施例1と同様にして紙基材(坪量19g/m2、紙厚が18μm、密度1.05g/cm3)を得て、粘着テープを作製した。なお、得られた紙基材の縦方向の引張り強さをJIS P8113に規定された方法に基づいて測定したところ、2.0kN/m以上であった。
【0057】
<実施例3>
叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50質量%とを混合してなるパルプスラリーを原料とし、さらに、あらかじめ水酸化ナトリウム で活性化したポリアミン樹脂(星光PMC社製、WS-4011)をパルプ100質量部に対して固形分換算で10質量部配合し、抄紙機で坪量15g/m2となるように抄造し、サイズプレスにおいて、両外層部にアクリル系エマルションを2.0g/m2(固形分換算)となるよう含浸して、坪量19g/m2、紙厚が18μm、密度1.05g/cm3の紙基材を得た。また、実施例1と同様にして、粘着テープを作製した。なお、得られた原紙の縦方向の引張り強さをJIS P8113に規定された方法に基づいて測定したところ、2.0kN/m以上であった。
【0058】
<比較例1>
叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90質量%と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10質量%とを混合してなるパルプスラリーを原料とし、坪量19g/m2、紙厚が18μmの紙基材を得た。また、実施例1と同様にして、粘着テープを作製した。なお、得られた原紙の縦方向の引張り強さをJIS P8113に規定された方法に基づいて測定したところ、2.0kN/m未満であった。
【0059】
実施例1~3で得られた剥離紙は、低坪量でありながら、粘着テープとしての取扱性に優れていた。一方、比較例1で得られた剥離紙は、引張り強さが低いため、取扱性に劣っていた。
【0060】
以上より、本実施例によれば、低坪量でありながら、取扱性が良く、粘着テープとした際に加工適性が良好な剥離紙原紙が得られることが少なくとも確認された。