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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024496
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ヘッドランプ制御装置および車両
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20240215BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B60Q1/14 Z
B60Q1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127355
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】中村 駿一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 憲昭
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339GB01
3K339KA04
3K339LA06
3K339LA33
3K339LA34
3K339LA35
3K339MA01
3K339MA02
3K339MC03
3K339MC36
3K339MC48
3K339MC58
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】車両速度によるADB作動の制限があった場合においても、夜間におけるドライバの前方視界を確保することができるヘッドランプ制御装置および車両を提供する。
【解決手段】ヘッドランプ制御装置1は、自車両の前方の画像を撮像する撮像部10と、自車両の前方領域に存在する前方車両を検出する前方車両検出部20と、前方車両の位置を算出する前方車両位置算出部30と、自車両の走行速度が第1の速度を下回ったか否かを判定する速度判定部40と、自動ブレーキが作動中であるか否かを検出するブレーキ状態検出部50と、ヘッドランプの点灯を切り替えて、車両前方を照明するヘッドランプ部60と、前方車両検出部20と速度判定部40との検出結果に基づいて、ヘッドランプ部60の点灯を制御するヘッドランプ制御部70と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方領域に存在する前方車両を検出する前方車両検出部と、
自車両の走行速度が第1の速度を下回ったか否かを判定する速度判定部と、
前記前方車両検出部と前記速度判定部との検出結果に基づいて、ヘッドランプの点灯を制御するヘッドランプ制御部と、を備え、
前記ヘッドランプ制御部は、第1のモードと第2のモードとを有し、
前記第1のモードは、
前記前方車両検出部において前記前方車両が検出されている場合には、前記前方車両の位置に基づいて、前記ヘッドランプの照射領域を可変する制御を行い、前記前方車両検出部において前記前方車両が検出されていない場合には、前記ヘッドランプの点灯をハイビームに切り替える制御であり、
前記第2のモードは、
前記前方車両検出部により前記前方車両が検出されている場合には、前記ヘッドランプの点灯をロービームに切り替え、前記前方車両検出部において前記前方車両が検出されていない場合には、前記ヘッドランプの点灯をハイビームに切り替える制御であり、
前記ヘッドランプ制御部は、前記第1のモードにおいて、前記速度判定部により、前記自車両の走行速度が第1の速度を下回ったと判定された場合、前記第2のモードに制御を遷移させることを特徴とするヘッドランプ制御装置。
【請求項2】
自動ブレーキが作動中であるか否かを検出するブレーキ状態検出部を備え、
前記速度判定部が、前記走行速度が前記第1の速度より遅い速度である第2の速度を下回ったか否かをさらに判定し、
前記ヘッドランプ制御部は、前記速度判定部により、前記自車両の走行速度が前記第2の速度を下回ったと判定され、かつ、前記ブレーキ状態検出部により自動ブレーキが作動中ではないと判定されている場合には、前記ヘッドランプの点灯をロービームに切り替えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプ制御装置。
【請求項3】
前記ヘッドランプ制御部は、前記速度判定部において、前記自車両の走行速度が第1の速度よりも速い第3の速度を上回ったと判定されたときには、前記第1のモードに制御を遷移させ、前記速度判定部において、前記自車両の走行速度が前記第2の速度よりも速い第4の速度を上回ったと判定されたときには、前記第2のモードに制御を遷移させ、前記第1の速度と前記第3の速度、前記第2の速度と前記第4の速度とには、所定の速度差が設定されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドランプ制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドランプ制御装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ制御装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両の前方領域の照明効果を高め、かつ、自車両の前方領域に存在する先行車や対向車等に対する眩惑を防止する、配光可変ヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)が実用化されている。
配光可変ヘッドランプは、先行車や対向車等の状況を確認し、先行車や対向車に眩しさを与える光を遮光する制御を行い、夜間におけるドライバの前方視界を拡大する。
ここで、配光可変ヘッドランプとして、カメラで撮像した画像から対象物が検出されたときに、対象物の位置を検出し、その検出した位置に基づいてランプユニットによる照明光の照射領域を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2018-135356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、米国法規では、車両速度が法定の速度未満において、ADB作動が禁止されているために、例えば、自車両の前方の対象物(歩行者や車両等)への衝突を回避するための自動ブレーキが作動したときに、車両速度が法定の速度未満になると、ヘッドランプの点灯がロービームに切り替わってしまい、前方の対象物を見失ってしまうという課題があった。
また、ADB作動中に、山道等のカーブの手前で減速をして、車両速度が法定の速度未満になると、ヘッドランプの点灯がロービームに切り替わってしまうため、夜間におけるドライバの前方視界が縮小してしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両の走行速度によるADB作動の制限があった場合においても、夜間におけるドライバの前方視界を確保することができるヘッドランプ制御装置および車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、自車両の前方領域に存在する前方車両を検出する前方車両検出部と、自車両の走行速度が第1の速度を下回ったか否かを判定する速度判定部と、前記前方車両検出部と前記速度判定部との検出結果に基づいて、ヘッドランプの点灯を制御するヘッドランプ制御部とを備え、前記ヘッドランプ制御部は、第1のモードと第2のモードとを有し、前記第1のモードは、前記前方車両検出部において前記前方車両が検出されている場合には、前記前方車両の位置に基づいて、前記ヘッドランプの照射領域を可変する制御を行い、前記前方車両検出部において前記前方車両が検出されていない場合には、前記ヘッドランプの点灯をハイビームに切り替える制御であり、前記第2のモードは、前記前方車両検出部により前記前方車両が検出されている場合には、前記ヘッドランプの点灯をロービームに切り替え、前記前方車両検出部において前記前方車両が検出されていない場合には、前記ヘッドランプの点灯をハイビームに切り替える制御であり、前記ヘッドランプ制御部は、前記第1のモードにおいて、前記速度判定部により、前記自車両の走行速度が第1の速度を下回ったと判定された場合、前記第2のモードに制御を遷移させるヘッドランプ制御装置を提案している。
【0007】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、自動ブレーキが作動中であるか否かを検出するブレーキ状態検出部を備え、前記速度判定部が、前記走行速度が前記第1の速度より遅い速度である第2の速度を下回ったか否かをさらに判定し、前記ヘッドランプ制御部は、前記速度判定部により、前記自車両の走行速度が前記第2の速度を下回ったと判定され、かつ、前記ブレーキ状態検出部により自動ブレーキが作動中ではないと判定されている場合には、前記ヘッドランプの点灯をロービームに切り替えるヘッドランプ制御装置を提案している。
【0008】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記ヘッドランプ制御部は、前記速度判定部において、前記自車両の走行速度が第1の速度よりも速い第3の速度を上回ったと判定されたときには、前記第1のモードに制御を遷移させ、前記速度判定部において、前記自車両の走行速度が前記第2の速度よりも速い第4の速度を上回ったと判定されたときには、前記第2のモードに制御を遷移させ、前記第1の速度と前記第3の速度、前記第2の速度と前記第4の速度とには、所定の速度差が設定されているヘッドランプ制御装置を提案している。
【0009】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、形態1から3のいずれかに記載のヘッドランプ制御装置を備える車両を提案している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車両の走行速度によるADB作動の制限があった場合においても、夜間におけるドライバの前方視界を確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るヘッドランプ制御装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るヘッドランプ制御装置が制御するヘッドランプの点灯パターンを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るヘッドランプ制御装置の点灯モードと走行速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
図1から図3を用いて、本実施形態に係るヘッドランプ制御装置1について説明する。
【0013】
<ヘッドランプ制御装置1の構成>
図1に示すように、ヘッドランプ制御装置1は、車両が備えるヘッドランプの点灯を制御する装置であって、撮像部10と、前方車両検出部20と、前方車両位置算出部30と、速度判定部40と、ブレーキ状態検出部50と、ヘッドランプ制御部70と、ヘッドランプ部60と、を備えている。
【0014】
撮像部10は、例えば、単眼カメラやステレオカメラ等で構成され、自車両の前方の画像を撮像し、その画像を後述する前方車両検出部20に送信する。
【0015】
前方車両検出部20は、自車両の前方領域に存在する車両を検出し、その検出結果を後述する前方車両位置算出部30およびヘッドランプ制御部70に送信する。
具体的には、撮像部10から受信した画像を分析し、自車両の前方領域に、前走車または対向車が存在するか否かを検出する。
【0016】
前方車両位置算出部30は、前方車両検出部20から、自車両の前方領域に前走車または対向車を検出した旨の情報を受信したときには、検出した前走車または対向車の位置情報を算出し、ヘッドランプ制御部70に送信する。
具体的には、撮像部10から受信した画像を分析し、自車両の基準位置(例えば、ヘッドランプの光源の位置)から見た先行車両の位置情報を算出する。
【0017】
速度判定部40は、自車両の走行速度を検出し、走行速度が第1の速度、第2の速度を下回ったか否かを判定し、判定結果を後述するヘッドランプ制御部70に送信する。
また、速度判定部40は、自車両の走行速度を検出し、走行速度が第3の速度、第4の速度を上回ったか否かを判定し、判定結果を後述するヘッドランプ制御部70に送信する。
具体的には、速度判定部40は、例えば、車速パルスを取得して、自車両の走行速度を算出し、速度判定を行う。
なお、第1の速度~第4の速度についての詳細は、後述する。
【0018】
ブレーキ状態検出部50は、自車両の前方に存在する対象物への衝突を回避するための自動ブレーキが、現在作動しているか否かを検出し、検出結果をヘッドランプ制御部70に送信する。
具体的には、ブレーキ状態検出部50は、例えば、図示しないブレーキ制御部から、ブレーキの作動状態を示す情報を取得して、自動ブレーキが作動中であるか否かを検出する。
【0019】
ヘッドランプ部60は、ヘッドランプ制御部70からの指示に従って、ヘッドランプの点灯を切り替えて、車両前方を照明する。
具体的には、図2に示すように、ヘッドランプ部60は、後述するヘッドランプ制御部70からの指示に従って、ヘッドランプの点灯をロービーム(すれ違い前照灯)、ハイビーム(走行用前照灯)、ADB(Adaptive Driving Beam)のいずれかに切り替える。
【0020】
図2の(1)に示すように、ヘッドランプ部60が、ロービーム(すれ違い前照灯)によって車両前方を照射したときには、ドライバは、例えば、40mの先にある先行車、対向車や人等の交通上、障害となる対象物を確認することができる。
つまり、ロービーム(すれ違い前照灯)により車両前方を照射した場合には、自車両の前方領域に存在する先行車や対向車等のドライバに対する眩惑を防止することができるが、遠方の対象物を確認することが難しい。
図2の(2)に示すように、ヘッドランプ部60が、ハイビーム(走行用前照灯)によって車両前方を照射したときには、ドライバは、例えば、100mの先にある先行車、対向車や人等の交通上、障害となる対象物を確認することができる。
つまり、ハイビーム(走行用前照灯)により車両前方を照射した場合には、ドライバは、遠方の対象物を確認することができるが、照射範囲を走行する車両のドライバに対して、眩惑を与えてしまう。
図2の(3)に示すように、ヘッドランプ部60が、ADBによって車両前方を照射したときには、車両前方を走行する先行車や対向車の位置に照射した光が届かないように、ヘッドランプの配光が制御され、ドライバは、例えば、100mの先にある先行車、対向車や人等の交通上、障害となる対象物を確認することができる。
つまり、ADBによって車両前方を照射した場合には、ドライバは、遠方の対象物を確認することができ、かつ、照射範囲を走行する車両のドライバに対して、眩惑を与えないようにすることができる。
なお、ADBによって車両前方を照射するときには、前方車両位置算出部30において検出した前方車両の位置情報に基づいて、ヘッドランプ制御部70がヘッドランプ部60の配光を制御する。
【0021】
ヘッドランプ制御部70は、図示しないROM等に格納された制御プログラムに従って、ヘッドランプ制御装置1の全体の動作を制御する。
ヘッドランプ制御部70は、前方車両検出部20と、速度判定部40との検出結果に基づいて、ヘッドランプ部60の点灯を制御する。
ヘッドランプ制御部70は、ヘッドランプの点灯モードである、第1のモードと第2のモードとを有している。
ヘッドランプ制御部70は、ヘッドランプの点灯モードが第1のモードにおいては、前方車両検出部20において前方車両が検出されている場合には、前方車両の位置に基づいて、ヘッドランプの照射領域を可変する制御を行い、前方車両検出部20において前方車両が検出されていない場合には、ヘッドランプの点灯をハイビームに切り替える制御を行う。
また、ヘッドランプ制御部70は、ヘッドランプの点灯モードが第2のモードにおいては、前方車両検出部20により前方車両が検出されている場合には、ヘッドランプの点灯をロービームに切り替え、前方車両検出部20において前方車両が検出されていない場合には、ヘッドランプの点灯をハイビームに切り替える制御を行う。
また、ヘッドランプ制御部70は、第1のモードにおいて、速度判定部40により、自車両の走行速度が第1の速度を下回ったと判定された場合、第2のモードに制御を遷移させる。
さらに、ヘッドランプ制御部70は、ヘッドランプ点灯モードとして、ロービームを有し、ヘッドランプの点灯モードがロービームにおいては、ロービームを点灯させる制御を行う。
【0022】
<ヘッドランプ制御部70の処理>
図3を用いて、ヘッドランプ制御部70の処理の詳細について説明する。
ヘッドランプ制御部70は、速度判定部40の判定結果およびブレーキ状態検出部50の検出結果に基づいて、ヘッドランプの点灯モードを第1のモード、第2のモード、ロービーム、のいずれかに遷移させて、ヘッドランプ部60の点灯を制御する。
【0023】
図3に示すように、ヘッドランプ制御部70は、速度判定部40において、自車両の走行速度が第3の速度を上回ったと判定されたときには、点灯モードを第2のモードから第1のモードへ遷移させる。
ヘッドランプ制御部70は、点灯モードを第1のモードに設定した場合には、前方車両検出部20から前方に車両が検出されている旨の情報を受信しているときには、ADBを作動させる旨の指示をヘッドランプ部60に送信する。
一方で、ヘッドランプ制御部70は、前方車両検出部20から前方に車両が検出されていない旨の情報を受信しているときには、ハイビームを点灯させる旨の指示をヘッドランプ部60に送信する。
【0024】
ヘッドランプ制御部70は、速度判定部40において、速度判定部40により、自車両の走行速度が第1の速度を下回ったと判定された場合、点灯モードを第1のモードから第2のモードに遷移させ、自車両の走行速度が第4の速度を上回ったと判定されたときには、点灯モードをロービームから第2のモードに遷移させる。
ヘッドランプ制御部70は、点灯モードを第2のモードに設定した場合には、前方車両検出部20から前方に車両が検出されている旨の情報を受信しているときには、ロービームを点灯させる旨の指示をヘッドランプ部60に送信する。
一方で、ヘッドランプ制御部70は、前方車両検出部20から前方に車両が検出されていない旨の情報を受信しているときには、ハイビームを点灯させる旨の指示をヘッドランプ部60に送信する。
【0025】
ヘッドランプ制御部70は、速度判定部40において、自車両の走行速度が第2の速度を下回ったと判定され、かつ、ブレーキ状態検出部50において、自動ブレーキが作動中ではないと判定された場合には、点灯モードをロービームに切り替える。
なお、点灯モードがロービームに設定された場合には、ヘッドランプ制御部70は、前方車両検出部20の検出結果に関係なく、ロービームを点灯させる旨の指示をヘッドランプ部60に送信する。
一方で、速度判定部40において、自車両の走行速度が第2の速度を下回ったと判定され、かつ、ブレーキ状態検出部50において、自動ブレーキ中であると判定された場合には、ヘッドランプ制御部70は、第2のモードを継続する。
つまり、自車両前方に存在する対象物(車両や人等)に対する衝突を避けるための自動ブレーキが作動し、自車両の走行速度が第2の速度を下回った速度まで減速された場合にあっても、ヘッドランプ制御部70は、前方車両が存在しない場合には、ハイビームを点灯させる。
なお、ヘッドランプ制御部70は、ブレーキ状態検出部50の検出結果を継続的に確認し、自動ブレーキが終了したことを確認したときには、点灯モードをロービームに遷移させる。
【0026】
ここで、上述した第1の速度から第4の速度の設定値について説明する。
第1の速度の設定値は、例えば、米国でADB作動が禁止される法定の速度未満に設定され、第3の速度の設定値は、第1の速度より速い速度に設定されている。
つまり、ヘッドランプの点灯モードが、第2のモードから第1のモードに遷移する車両速度(第3の速度)と、第1のモードから第2のモードに遷移する車両速度(第1の速度)とには、所定の速度差が設定されている。
また、第2の速度の設定値は、法定の速度より遅い速度に設定され、第4の速度の設定値は、第2の速度より速い速度に設定されている。
つまり、ヘッドランプの点灯モードが、ロービームから第2のモードに遷移する車両速度(第4の速度)と、第2のモードからロービームに遷移する車両速度(第2の速度)とには、所定の速度差が設定されている。
なお、第4の速度の設定値は、第3の速度の設定値より遅い速度に設定され、第2の速度の設定値は、第1の速度の設定値より遅い速度に設定されている。
【0027】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係るヘッドランプ制御装置1は、自車両の前方の画像を撮像する撮像部10と、自車両の前方領域に存在する前方車両を検出する前方車両検出部20と、前方車両の位置を算出する前方車両位置算出部30と、自車両の走行速度が第1の速度を下回ったか否かを判定する速度判定部40と、自動ブレーキが作動中であるか否かを検出するブレーキ状態検出部50と、ヘッドランプの点灯を切り替えて、車両前方を照明するヘッドランプ部60と、前方車両検出部20と速度判定部40との検出結果に基づいて、ヘッドランプ部60の点灯を制御するヘッドランプ制御部70と、を備えている。
ヘッドランプ制御部70は、速度判定部40において、自車両の走行速度が第1の速度(ADB作動が禁止される法定の速度)を下回ったと判定されたときには、ヘッドランプの点灯モードを第2のモードに遷移させ、前方車両検出部20において前方車両が検出されている場合には、ロービームを点灯させる指示信号をヘッドランプ部60に送信し、前方車両検出部20において前方車両が検出されていない場合には、ハイビームを点灯させる指示信号をヘッドランプ部60に送信する。
つまり、自車両の走行速度が第1の速度(ADB作動が禁止される法定の速度)を下回ったときには、前方車両の有無によって、ハイビームもしくはロービームが点灯される。
これにより、ADB作動が禁止されている車両速度においても、前方車両が存在しない場合には、ヘッドランプの点灯状態がハイビームとなるため、夜間におけるドライバの前方視界を確保することができる。
また、ヘッドランプ制御部70は、前方車両検出部20において、前方車両が検出されている場合には、ヘッドランプの点灯状態をロービームとするために、自車両の前方領域に存在する先行車や対向車のドライバに対する眩惑を防止することができる。
【0028】
また、第1の速度より速い走行速度で山道等のカーブを走行しているときに、カーブの手前で自車両の走行速度が、第1の速度(ADB作動が禁止される法定の速度)を下回った速度まで減速した場合であっても、前方車両が存在しない場合には、ヘッドランプの点灯状態がハイビームとなるため、夜間におけるドライバの前方視界を確保することができる。
【0029】
また、ADB作動中に、自車両前方にある対象物(車両や人等)に対する衝突を避けるための自動ブレーキが作動し、自車両の走行速度が第1の速度(ADB作動が禁止される法定の速度)を下回った速度まで減速された場合であっても、ヘッドランプ制御部70は、前方車両が存在しない場合には、ヘッドランプの点灯状態をハイビームとするために、ドライバが車両前方の対象物を見失うことをなくすことができる。
これにより、ドライバは対象物への衝突を回避するための運転操作をより正確に行うことができる。
【0030】
また、ヘッドランプ制御部70は、速度判定部40において、自車両の走行速度が第2の速度を下回ったと判定され、かつ、ブレーキ状態検出部50により、自動ブレーキが作動中ではないと判定されている場合には、ヘッドランプの点灯状態をロービームに切り替える。
これにより、自動ブレーキ中でない場合には、ヘッドランプの点灯状態がロービームとなるため、前方車両のドライバに対する眩惑を防止することができる。
一方で、自動ブレーキ中であった場合には、ヘッドランプ制御部70は、ヘッドランプの点灯モードを遷移させず、第2のモードを継続し、前方車両検出部20において、前方車両が検出されていない場合には、ヘッドランプの点灯状態をハイビームとし、前方車両が検出されている場合には、ヘッドランプの点灯状態をロービームとする。
これにより、自車両前方にある対象物(車両や人等)に対する衝突を避けるための自動ブレーキが作動し、走行速度が第2の速度を下回る速度に減速された場合であっても、ヘッドランプ制御部70は、前方車両が検出されていない場合には、ヘッドランプの点灯状態をハイビームとするために、ドライバが車両前方の対象物を見失うことを防止することができる。
【0031】
ヘッドランプの点灯モードが、第2のモードから第1のモードに遷移する車両速度(第3の速度)と、第1のモードから第2のモードに遷移する車両速度(第1の速度)とには、所定の速度差(ヒステリシス)が設定されている。
また、ヘッドランプの点灯モードが、ロービームから第2のモードに遷移する車両速度(第4の速度)と、第2のモードからロービームに遷移する車両速度(第2の速度)とには、所定の速度差(ヒステリシス)が設定されている。
例えば、自車両の走行速度が第2の速度を下回ったときには、点灯モードが第2のモードからロービームに遷移するが、その直後に、第2の速度を上回る走行速度に加速されても、所定の速度差が設定されているため、走行速度が第4の速度を上回るまでは、点灯モードがロービームから第2のモードに遷移しない。
これにより、点灯モードの遷移時のハンチングを防止することができる。
【0032】
<変形例1>
上述したヘッドランプ制御装置1は、前方車両の有無を検出して、ヘッドランプの点灯状態を切り替えていたが、さらに、自車両の前方の歩行者を検出して、点灯を切り替えるようにしてもよい。
つまり、自車両の前方に車両が検出されていない場合であっても、自車両に対向して歩いている歩行者等を検出したときには、ヘッドランプの点灯をロービームに切り替えるようにする。
これにより、自車両の前方領域に存在する歩行者等に対する眩惑を防止することができる。
【0033】
<変形例2>
上述した前方車両検出部20は、撮像部10から受信した自車両の前方の画像に基づいて、車両の有無を検出していたが、Lidar(light detection and ranging)等を用いて、車両の有無を検出するようにしてもよい。
これにより、自車両から遠い距離の位置を走行する前方車両の有無を精度よく検出することができる。
【0034】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1;ヘッドランプ制御装置
10;撮像部
20;前方車両検出部
30;前方車両位置算出部
40;速度判定部
50;ブレーキ状態検出部
60;ヘッドランプ部
70;ヘッドランプ制御部
図1
図2
図3