(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024514
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】運搬管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240215BHJP
G06Q 10/083 20230101ALI20240215BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20240215BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240215BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240215BHJP
F17C 13/00 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/08 300
H02J15/00 G
H02J3/38 130
H01M8/04 J
F17C13/00 301Z
F17C13/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127405
(22)【出願日】2022-08-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.2021年9月30日付で島 潔が刊行物「水素エネルギーシステム Vol,46,No.3(2021)」において公開。 2.2022年3月1日付で島 潔が刊行物「都市環境エネルギー VOL.131」において公開。 3.https://www.minpo.jp/news/moredetail/2022041196074 2022年4月11日付で福島民報が上記URLにて公開。 4.https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220412_1.html 2022年4月12日付で株式会社大林組が上記URLにて公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】595161979
【氏名又は名称】三国機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513213966
【氏名又は名称】横河ソリューションサービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】島 潔
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 満
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋
(72)【発明者】
【氏名】児玉 雄多
【テーマコード(参考)】
3E172
5G066
5H127
5L049
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB14
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA87
3E172DA90
3E172EA35
5G066HB06
5G066HB08
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA14
5H127FF20
5L049AA16
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】水素製造プラントで製造した水素の車両による複数の供給先への運搬をより効率的に行うことを可能とする運搬管理システムを提供することである。
【解決手段】水素製造プラント1で製造した水素の、複数の供給先A~Dへの車両2による運搬を管理する運搬管理システムであって、それぞれ対応する供給先A~Dに設けられ、供給先A~Dにおける水素の残量の情報を取得する複数の残量情報取得部10A~10Dと、それぞれの残量情報取得部10A~10Dにより取得された複数の供給先A~Dにおける水素の残量の情報に基づいて、車両2による複数の供給先A~Dへの水素の最適な運搬計画を策定する計画策定部20と、を有することを特徴とする運搬管理システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造プラントで製造した水素の、複数の供給先への車両による運搬を管理する運搬管理システムであって、
それぞれ対応する前記供給先に設けられ、前記供給先における水素の残量の情報を取得する複数の残量情報取得部と、
それぞれの前記残量情報取得部により取得された複数の前記供給先における水素の残量の情報に基づいて、前記車両による複数の前記供給先への水素の運搬計画を策定する計画策定部と、を有することを特徴とする運搬管理システム。
【請求項2】
それぞれの前記供給先の水素の需要を予測する需要予測部をさらに備え、
前記計画策定部が、前記需要予測部により取得された複数の前記供給先の水素の需要の予測結果を加味して前記運搬計画を策定する、請求項1に記載の運搬管理システム。
【請求項3】
前記水素製造プラントに設けられ、前記水素製造プラントが製造する水素の生産量を予測する生産量予測部をさらに備え、
前記計画策定部が、前記生産量予測部により予測された水素の生産量の予測結果を加味して前記運搬計画を策定する、請求項1または2に記載の運搬管理システム。
【請求項4】
前記水素製造プラントは、太陽光発電による電力を利用して水素を製造するものであり、
前記供給先における水素使用機器が夜間において水素を利用するように前記水素使用機器の稼働率を調整する稼働率調整部をさらに備えている、請求項1に記載の運搬管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造プラントで製造した水素の、複数の供給先への車両による運搬を管理する運搬管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素化による地球温暖化への対策として、水素をエネルギー源として利用されている。
【0003】
従来、水素を利用する形態として、水素製造プラントで製造された水素をカードルやトレーラタンク等の容器に充填し、トラックなどの車両により、燃料電池が設置された宿泊施設、介護施設などの施設、燃料電池が設置された事業現場、燃料電池車用の水素供給ステーションなどの種々の供給先へ運搬する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素をエネルギーキャリアとして活用するためのビジネス環境やインフラの整備を促進するために、水素製造プラントで製造した水素の車両による複数の供給先への運搬をより効率的に行うことが求められている。
【0006】
しかし、従来、供給先の水素需要状況の監視や需要予測演算に応じて複数の供給先への水素の運搬を管理するシステムはなく、水素製造プラントと供給先との間で1対1の都度配送をしていたため、運搬に時間や人件費が掛かるなどの問題があり、運搬をより効率的に行うことが求められていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水素製造プラントで製造した水素の車両による複数の供給先への運搬をより効率的に行うことを可能とする運搬管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運搬管理システムは、水素製造プラントで製造した水素の、複数の供給先への車両による運搬を管理する運搬管理システムであって、それぞれ対応する前記供給先に設けられ、前記供給先における水素の残量の情報を取得する複数の残量情報取得部と、それぞれの前記残量情報取得部により取得された複数の前記供給先における水素の残量の情報に基づいて、前記車両による複数の前記供給先への水素の運搬計画を策定する計画策定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の運搬管理システムは、上記構成において、それぞれの前記供給先の水素の需要を予測する需要予測部をさらに備え、前記計画策定部が、前記需要予測部により取得された複数の前記供給先の水素の需要の予測結果を加味して前記運搬計画を策定するのが好ましい。
【0010】
本発明の運搬管理システムは、上記構成において、前記水素製造プラントに設けられ、前記水素製造プラントが製造する水素の生産量を予測する生産量予測部をさらに備え、前記計画策定部が、前記生産量予測部により予測された水素の生産量の予測結果を加味して前記運搬計画を策定するのが好ましい。
【0011】
本発明の運搬管理システムは、上記構成において、前記水素製造プラントは、太陽光発電による電力を利用して水素を製造するものであり、前記供給先における水素使用機器が夜間において水素を利用するように前記水素使用機器の稼働率を調整する稼働率調整部をさらに備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水素製造プラントで製造した水素の車両による複数の供給先への運搬をより効率的に行うことを可能とする運搬管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運搬管理システムによる水素の運搬の概略を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る運搬管理システムの制御体系を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る運搬管理システムの管理手順を示すフロー図である。
【
図4】供給先として水素パイプラインへ水素を供給する供給基地を加えた場合における本実施形態に係る運搬管理システムによる水素の運搬の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る運搬管理システムについて詳細に例示説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る運搬管理システムは、水素の持つエネルギー備蓄能力を生かすために水素製造プラント1で製造した水素の、複数の供給先A~Dへの車両2による運搬を管理するものである。
【0016】
図1に示す水素製造プラント1は、水素を製造する施設である。水素製造プラント1で製造された水素は、車両2で運搬可能なタンク3に充填される。タンク3としては、高圧で圧縮された水素を収納するものであってもよく、低圧で液化された水素を収納するものであってもよく、内部に水素吸着合金が充填された構成のものであってもよい。また、タンク3は、複数を束にしてカードルの形態とされたものであってもよく、車両(トラクター)2により牽引されるトレーラーに取り付けられたものであってもよい。
【0017】
水素製造プラント1は、太陽光発電装置1aを備え、太陽光発電装置1aの太陽光発電による電力を利用して水素を製造するものであるのが好ましい。この構成により、水素インフラの低炭素化をより促進することができる。
【0018】
車両2は、水素が充填されたタンク3を運搬可能なトラックなどの種々の車両であってよい。例えば、車両2は、カードルの形態とされたタンク3を搭載可能な荷台を備えたトラックであってよく、タンク3が取り付けられたトレーラーを牽引可能なトラクターであってもよい。
図1に示す場合では、車両2は、カードルの形態とされたタンク3を搭載可能な荷台を備えたトラックである。
【0019】
水素の供給先A~Dは、それぞれ水素の供給を必要とする施設ないし場所である。供給先A~Dは、水素を必要とする種々の施設ないし場所であってよい。
【0020】
例えば、供給先Aは、ホテル、旅館などの宿泊施設である。供給先Aには、宿泊施設に電力を供給するための燃料電池4Aが設置されている。燃料電池4Aは、水素と酸素との反応を用いて発電を行うものである。また、供給先Aには、燃料電池4Aに水素を供給するために、2つのカードルの形態のタンク3が設置されている。燃料電池4Aは、タンク3から供給される水素を用いて発電を行い、発電した電力を宿泊施設に供給することができる。
【0021】
供給先Bは、例えば介護施設などの療養施設である。供給先Bには、療養施設に電力を供給するための燃料電池4Bが設置されている。燃料電池4Bも、水素と酸素との反応を用いて発電を行うものである。供給先Bにも、燃料電池4Bに水素を供給するために、2つのカードルの形態のタンク3が設置されている。燃料電池4Bは、タンク3から供給される水素を用いて発電を行い、発電した電力を療養施設に供給することができる。
【0022】
供給先Cは、建築現場、工事現場などの事業現場である。供給先Cには、事業現場で用いる設備に電力を供給するための燃料電池4Cが設置されている。燃料電池4Cも、水素と酸素との反応を用いて発電を行うものである。供給先Cにも、燃料電池4Cに水素を供給するために、2つのカードルの形態のタンク3が設置されている。燃料電池4Cは、タンク3から供給される水素を用いて発電を行い、発電した電力を事業現場で用いる設備に供給することができる。
【0023】
供給先Dは、燃料電池車用の水素供給ステーションである。燃料電池車5は、燃料電池と燃料電池から電力が供給される駆動用のモーターとを備え、水素を燃料として走行する自動車である。供給先Dには、2つのカードルの形態のタンク3と、燃料電池車5に水素を供給するためのディスペンサー6と、タンク3からディスペンサー6へ送られる水素を圧縮するガス圧縮機7とが設置されている。ディスペンサー6は、タンク3から供給される水素を燃料電池車5に充填することができる。
【0024】
供給先A~Dには、車両2により、水素製造プラント1で製造されてタンク3に充填された水素が運搬される。車両2により供給先A~Dにまで運搬されたタンク3は、供給先A~Dにおいて車両2から降ろされて供給先A~Dに設置されている空のタンク3と交換される。これにより、供給先A~Dに水素が供給されることになる。空のタンク3は車両2に搭載されて水素製造プラント1にまで運搬され、水素製造プラント1において水素が充填されて次の運搬に使用される。
【0025】
供給先A~Dにはそれぞれ2つのカードルの形態のタンク3が設置されているので、空のタンク3を新たなタンク3に交換する際に、他方のタンク3により水素の供給を維持することができる。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る運搬管理システムは、それぞれ対応する供給先A~Dに設けられ、供給先A~Dにおける水素の残量の情報を取得する複数の残量情報取得部10A~10Dと、それぞれの残量情報取得部10A~10Dにより取得された複数の供給先A~Dにおける水素の残量の情報に基づいて、車両2による複数の供給先A~Dへの水素の運搬計画を策定する計画策定部20と、を有している。それぞれの残量情報取得部10A~10Dは、残量情報取得部10A~10Dを操作するためのグラフィックパネル34が接続された構成とすることができる。
【0027】
このような構成を有する本実施形態に係る運搬管理システムによれば、それぞれの供給先A~Dの水素の残量を監視し、当該残量の情報に基づいて水素の供給が必要な供給先A~Dを判断した上で、当該供給先A~Dに効率よく水素を供給できる運搬計画を策定することができる。したがって、計画策定部20により策定された運搬計画に従って車両2による水素の運搬を行うことで、水素製造プラント1で製造した水素の車両2による複数の供給先A~Dへの運搬をより効率的に行うことが可能となる。
【0028】
より具体的には、計画策定部20は監視・制御サーバ20Aと最適化サーバ20Bとを有している。計画策定部20は、水素製造プラント1や供給先A~Dとは別の事務所などに設置すればよい。
【0029】
監視・制御サーバ20Aは、ハブ(HUB)21、VPNルータ22及び光回線終端装置(ONU)23を介して有線の光回線24に接続されている。一方、それぞれの供給先A~Dの燃料電池4A及びディスペンサー6は、それぞれVPNルータ25A~25Dを介して有線の光回線24に接続されており、残量情報取得部10A~10Dにより取得された供給先A~Dにおける水素の残量の情報は、有線の光回線24を通して監視・制御サーバ20Aに入力される。供給先A~Dにおける水素の残量の情報は、所定の時間毎(例えば30分毎)に監視・制御サーバ20Aに入力される。
【0030】
最適化サーバ20Bは、監視・制御サーバ20Aから入力される、供給先A~Dにおける水素の残量の情報に基づいて車両2による複数の供給先A~Dへの水素の最適な運搬計画を策定する。
【0031】
最適化サーバ20Bにおける複数の供給先A~Dへの水素の運搬計画の策定は、例えば、線形計画法を応用し、目的関数と制約条件から運搬パターンを最適化するように実行される構成とすることができる。
【0032】
目的関数は、例えば、水素の運搬に掛かる総コストをfz、運搬コストをfz1(x)、運搬人件費をfz2(t)、水素不足時における電力供給コストをfz3(w)、ペナルティコストをfz4(x,t,w)としたとき、fz=fz1(x)+fz2(t)+fz3(w)+fz4(x,t,w)とすることができる。なお、xは運搬距離、tは運搬時間、wは水素不足時の消費電力である。目的関数の最小化を、AI(人工知能)を用いて解くようにしてもよい。
【0033】
制約条件は、運搬パターンと運搬フローが設定される。運搬パターンの制約条件は、例えば、fd(x,t)∈Sd(x,t)とすることができる。なお、fdは運搬パターンの組み合わせ、Sdは選択した運搬パターンである。運搬フロー(設備間水素移送量)の制約条件は、例えば、fi(x,t,v)≦fo(x,t,v)とすることができる。なお、fiは水素供給、foは、供給先A~Dにおける水素の残量の情報に基づいた各供給先A~Dにおける水素需要、vは水素運搬量である。
【0034】
監視・制御サーバ20A、最適化サーバ20Bのデータベースには、需要拠点すなわち供給先A~Dのデータ、最適化パラメータなどが格納されている。
【0035】
最適化サーバ20Bは、供給先A~Dのデータ、最適化パラメータを用いつつ、総コストfzが最小となり、かつ、制約条件を満たすように、最適化した運搬計画を策定する。
【0036】
本実施形態の運搬管理システムは、最適化サーバ20Bに、インターネット26を介して配送情報提供用のサーバ30から、地図情報や配送状況を含む交通情報31を入力し、制約条件において交通情報31を参照して、最適化した運搬計画を策定する構成とするのが好ましい。
【0037】
最適化サーバ20Bにより策定される複数の供給先A~Dへの水素の運搬計画は、タンク3が空になる度に水素を配送する都度配送を採用したものでもよいが、1台の車両2で複数の供給先A~Dに可能な限りまとめて配送する一括配送を採用するのが好ましく、複数台の車両2で複数の供給先A~Dに可能な限りまとめて配送する一括配送を採用するのがより好ましい。
【0038】
本願発明の運搬管理システムを用いてカードルの形態のタンク3を配送する場合、タンク3を都度配送する場合に比べて、配送総距離及び配送時間を短縮することができ、その結果として、配送コスト比較でのコスト削減効果とCO2排出量比較での環境負荷低減効果とを得ることができる。
【0039】
本実施形態に係る運搬管理システムは、それぞれの供給先A~Dの水素の需要を予測する需要予測部11をさらに備え、計画策定部20は、需要予測部11により取得された複数の供給先A~Dの水素の需要の予測結果を加味して運搬計画を策定する構成とすることもできる。
【0040】
この場合、需要予測部11は、監視・制御サーバ20Aに入力された供給先A~Dにおける水素の残量の情報から得られた水素の残量の経時的な変化に基づいて、それぞれの供給先A~Dの水素の需要を予測する構成とすることができる。そして、供給先A~Dの水素の需要の予測結果の情報は、需要予測部11から最適化サーバ20Bに入力され、最適化サーバ20Bにおいて運搬計画が策定される。
【0041】
このように、それぞれの供給先A~Dの水素の残量の情報に加えて供給先A~Dの水素の需要の予測結果を加味することで、水素の供給が必要な供給先A~Dをより正確に判断することができる。よって、当該供給先A~Dにより効率よく水素を供給できるより最適化された運行計画を策定することができる。
【0042】
本実施形態に係る運搬管理システムは、水素製造プラント1に設けられ、水素製造プラント1が製造する水素の生産量を予測する生産量予測部1bをさらに備え、計画策定部20が、生産量予測部1bにより予測された水素の生産量の予測結果を加味して運搬計画を策定する構成とすることもできる。
【0043】
この場合、監視・制御サーバ20A及び水素製造プラント1に設けられた生産量予測部1bは、それぞれインターネット26に接続されており、生産量予測部1bにより予測された水素の生産量の予測結果の情報はインターネット26を通して監視・制御サーバ20A及び最適化サーバ20Bに入力され、最適化サーバ20Bにおいて運搬計画が策定される。
【0044】
このように、それぞれの供給先A~Dの水素の残量の情報(及び供給先A~Dの水素の需要の予測結果)に加えて水素製造プラント1における水素の生産量の予測結果を加味することで、当該供給先A~Dにより効率よく水素を供給できる、より最適化された運行計画を策定することができる。
【0045】
次に、
図3に基づき、上記構成を有する本実施形態に係る運搬管理システムの管理手順について説明する。
【0046】
まず、サーバ30から、地図情報や配送状況(車両2の運搬状況すなわち車両2の位置、配送が完了したか否かなどの情報)を含む交通情報31が計画策定部(EMS)20に入力される。配送状況は、例えば配送ナンバー毎のCSVファイルとして送信される。
【0047】
次に、計画策定部20において、需要拠点すなわち供給先A~Dのデータ、供給先A~Dにおける水素の残量の情報、当該情報から得られた供給先A~Dにおける水素の需要予測、最適化パラメータに基づき最適な運搬計画が策定される。当該策定は、例えば5分などの所定の周期で実行する。
【0048】
このようにして計画策定部20により策定された運搬計画は、監視・制御サーバ20Aに接続されたモニター27(
図2参照)に表示される。管理担当者はモニター27に表示された運搬計画の内容を確認し、変更が必要な場合には最適化パラメータを変更し、再度、計画策定部20に運搬計画を策定させる。最適化パラメータの変更は、例えば最適化モードの変更、運搬可能時間帯の変更などとすることができる。
【0049】
一方、策定された運搬計画に問題がない場合には、管理担当者は、運搬計画の確定処理をし、インターネット26を介して運搬計画をサーバ30へ送信する。当該確定処理は、例えば運搬当日の朝に行うが、状況に応じて再度確定処理を行って運搬計画を更新してもよい。
【0050】
サーバ30は、計画策定部20からの運搬計画を受信すると、WEBサーバ32を介して運搬計画を車両2に設置ないし運転者が所持する端末33に転送する。運搬計画は、例えば配送ナンバー毎のCSVファイルとして送信される。端末33は、受信した運搬計画をディスプレイに表示することができる。車両2の運転者は、端末33に表示された運搬計画に従って車両2を走らせることにより、運搬計画に従って供給先A~Dへの水素の運搬を行うことができる。
【0051】
このように、本実施形態に係る運搬管理システムでは、複数の供給先A~Dにおける水素の残量の情報に基づいて車両2による複数の供給先A~Dへの水素の運搬計画を策定するようにしているので、水素製造プラント1で製造した水素を、車両2により、複数の供給先A~Dへより効率的に運搬することができる。
【0052】
特に、本実施形態の運搬管理システムでは、複数の供給先A~Dにおける水素の残量と車両2の運搬状況とを監視し、これらの監視結果に基づいて車両2による複数の供給先A~Dへの水素の運搬計画を策定するようにしているので、水素製造プラント1で製造した水素を、車両2により、複数の供給先A~Dへより効率的に運搬することができる。
【0053】
さらに、本実施形態の運搬管理システムでは、それぞれの供給先A~Dの水素の残量の情報に加えて供給先A~Dの水素の需要の予測結果を加味することで、水素の供給が必要な供給先A~Dをより正確に判断することができ、当該供給先A~Dに、より効率よく水素を供給できる運行計画を策定することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の運搬管理システムでは、それぞれの供給先A~Dの水素の残量の情報に加えて水素製造プラント1が製造する水素の生産量の予測結果を加味することで、供給先A~Dに、より効率よく水素を供給できる運行計画を策定することができる。
【0055】
水素製造プラント1を、太陽光発電による電力を利用して水素を製造するものとした場合には、計画策定部20は、供給先A~Dにおける水素使用機器が夜間において水素を利用するように水素使用機器の稼働率を調整する稼働率調整部40をさらに備えた構成とすることもできる。
【0056】
このような構成により、本実施形態の運搬管理システムによる水素の運搬計画の管理によって、街区全体のインフラの環境性を制御することができる。
【0057】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0058】
例えば、車両2により水素が運搬される供給先の数は、4つに限らず、適宜の数とすることができる。また、インフラの発展に伴って供給先の数を徐々に増加させるようにしてもよい。
【0059】
図4に示すように、追加した供給先Eを、水素パイプライン8へ水素を供給する供給基地としてもよい。供給先Eには、より大量の水素やより高圧の水素を収納できる大型のタンク3がトレーラーに取り付けられた状態で2つ設置されている。水素パイプライン8は、水素の供給を必要とする複数の施設9に接続され、タンク3からそれぞれの施設9に設置された水素を必要とする種々の設備に水素を供給することができる。複数の施設9は、例えば、供給先A~Cのような宿泊施設、療養施設、事業現場、燃料電池車用の水素供給ステーションであってよい。この場合、車両2としては、供給先A~Dに水素を運搬するためのカードルの形態とされたタンク3を搭載可能な荷台を備えたトラックと、供給先Eに水素を供給するためのタンク3が取り付けられたトレーラーを牽引可能なトラクターとの両方を用いればよい。
【符号の説明】
【0060】
1 水素製造プラント
1a 太陽光発電装置
1b 生産量予測部
2 車両
3 タンク
4A 燃料電池
4B 燃料電池
4C 燃料電池
5 燃料電池車
6 ディスペンサー
7 ガス圧縮機
8 水素パイプライン
9 施設
10A 残量情報取得部
10B 残量情報取得部
10C 残量情報取得部
10D 残量情報取得部
11 需要予測部
20 計画策定部
20A 監視・制御サーバ
20B 最適化サーバ
21 ハブ
22 VPNルータ
23 光回線終端装置
24 光回線
25A VPNルータ
25B VPNルータ
25C VPNルータ
25D VPNルータ
26 インターネット
27 モニター
30 サーバ
31 交通情報
32 WEBサーバ
33 端末
34 グラフィックパネル
A 供給先
B 供給先
C 供給先
D 供給先
E 供給先