(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024516
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】光学部材および車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/24 20180101AFI20240215BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20240215BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20240215BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20240215BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240215BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240215BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/143
F21S41/16
F21W102:10
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127410
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】樋口 義規
(57)【要約】
【課題】近い位置の下方を含んだ広い範囲に対して光を照射することが可能な光学部材および車両用灯具を提供する。
【解決手段】照射光の一部を反射する第1反射部(14a)と、第1反射部(14a)とは少なくとも高さ方向に分離して設けられ、照射光の他の一部を反射する第2反射部(14b)と、第2反射部(14b)から後方に延伸して設けられた後方導光部(11c)と、後方導光部(11c)の端部に設けられ第1反射部(14a)で反射された照射光を少なくとも下方向に屈折する下方屈折部(15a)と、後方導光部(11c)の端部に設けられ第2反射部(14b)で反射された照射光を後方に照射する後方照射部(15b)とを有する光学部材(10)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光の一部を反射する第1反射部と、
前記第1反射部とは少なくとも高さ方向に分離して設けられ、前記照射光の他の一部を反射する第2反射部と、
前記第2反射部から後方に延伸して設けられた後方導光部と、
前記後方導光部の端部に設けられ、前記第1反射部で反射された前記照射光を少なくとも下方向に屈折する下方屈折部と、
前記後方導光部の前記端部に設けられ、前記第2反射部で反射された前記照射光を後方に照射する後方照射部とを有することを特徴とする光学部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記第1反射部は前記第2反射部よりも上方に位置し、
前記下方屈折部は前記後方照射部よりも下方に位置することを特徴とする光学部材。
【請求項3】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記下方屈折部は、さらに前記照射光を横方向に屈折することを特徴とする光学部材。
【請求項4】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記第1反射部および前記第2反射部から下方に延伸して設けられた下方導光部を有し、
前記下方導光部の一面には第3反射部が設けられており、
前記第3反射部で反射された前記照射光は、前記第1反射部および前記第2反射部に入射することを特徴とする光学部材。
【請求項5】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記後方導光部には、上方に突出した突出部が形成されており、
前記第1反射部の少なくとも一部が前記突出部に設けられていることを特徴とする光学部材。
【請求項6】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記第1反射部と前記第2反射部の境界には、境界リブが設けられていることを特徴とする光学部材。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の光学部材と、
前記光学部材の光入射部に対向して配置された発光部を有することを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材および車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用灯具の技術分野においては、複数種類の照明機能を一つのランプハウジング内に収容して一体にしたコンビネーションランプが用いられている。このようなコンビネーションランプとしては、前照灯、車幅灯および方向指示灯等を収容したフロントコンビネーションランプと、制動灯、尾灯、車幅灯および方向指示灯等を収容したリヤコンビネーションランプが挙げられる。また、これらのコンビネーションランプに収容される灯具の種類は近年になって増加している。
【0003】
また近年の車両では、後進時に車両の後方を撮像するバックカメラと、当該バックカメラで撮像された画像を表示するモニターが普及している。このようなバックカメラとモニターによる後方確認を補助するために、車両後方の撮像範囲に対して光を照射するバックアップランプも用いられている。特許文献1には、車両の後方における路面を照射するバックアップランプの機能を組み込んだリヤコンビネーションランプが記載されている。また、バックアップランプの他にも、車両の周囲に対して光を照射する補助的な車両用灯具をコンビネーションランプに組み込むことも想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コンビネーションランプには上述したように複数の機能が組み込まれており、機能の優先度や意匠上の要請によって、補助的な車両用灯具の大きさや形状は限定される場合が多い。したがって、補助的な車両用灯具から車両周囲の広い範囲に対して光を照射することは困難であった。特に、高さ方向へのサイズを確保できず、横方向に長い形状の補助的な車両用灯具では、車両から近い位置の路面に対して光を照射することが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、近い位置の下方を含んだ広い範囲に対して光を照射することが可能な光学部材および車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の光学部材は、照射光の一部を反射する第1反射部と、前記第1反射部とは少なくとも高さ方向に分離して設けられ、前記照射光の他の一部を反射する第2反射部と、前記第2反射部から後方に延伸して設けられた後方導光部と、前記後方導光部の端部に設けられ、前記第1反射部で反射された前記照射光を少なくとも下方向に屈折する下方屈折部と、前記後方導光部の前記端部に設けられ、前記第2反射部で反射された前記照射光を後方に照射する後方照射部とを有することを特徴とする。
【0008】
このような本発明の光学部材では、第2反射部で反射された照射光を後方導光部の端部から照射するとともに、第1反射部で反射された照射光を下方屈折部で下方向に屈折して照射するため、近い位置の下方を含んだ広い範囲に対して光を照射することが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第1反射部は前記第2反射部よりも上方に位置し、前記下方屈折部は前記後方照射部よりも下方に位置する。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記下方屈折部は、さらに前記照射光を横方向に屈折する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記第1反射部および前記第2反射部から下方に延伸して設けられた下方導光部を有し、前記下方導光部の一面には第3反射部が設けられており、前記第3反射部で反射された前記照射光は、前記第1反射部および前記第2反射部に入射する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記後方導光部には、上方に突出した突出部が形成されており、前記第1反射部の少なくとも一部が前記突出部に設けられている。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記第1反射部と前記第2反射部の境界には、境界リブが設けられている。
【0014】
また上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、上記何れか一つに記載の光学部材と、前記光学部材の光入射部に対向して配置された発光部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、近い位置の下方を含んだ広い範囲に対して光を照射することが可能な光学部材および車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る車両用灯具100の概要を示す模式断面図である。
【
図2】車両用灯具100に用いられる光学部材10の概要を模式的に示す図であり、
図2(a)は上面図であり、
図2(b)は後ろ斜め下方から見た斜視図であり、
図2(c)は斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】光学部材10における後方照射部15bを介しての光照射を説明する模式図であり、
図3(a)は後方正面図であり、
図3(b)は斜め上方から見た斜視図であり、
図3(c)は上面図である。
【
図4】光学部材10における角度調整反射部14a,14bの近傍を拡大して示す模式斜視図である。
【
図5】光学部材10における下方屈折部15aを介しての光照射を説明する模式図であり、
図5(a)は上面図であり、
図5(b)は斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る車両用灯具100の概要を示す模式断面図である。
図1中における右方向をx軸方向(車両後方)の正方向とし、下方向をz軸方向(車両下方)の正方向とし、紙面に垂直な奥行方向をy軸方向(車両の幅方向)とする。
図1に示したように車両用灯具100は、光学部材10と発光素子20を備えている。また、図中において実線および破線等で示した矢印は、発光素子20から照射される照射光の代表的な光路を示している。
【0018】
光学部材10は、光を透過する材料で構成され、発光素子20で発光された光を内部で導光して、所定方向に出射する部材である。
図1に示すように、光学部材10は導光部11と、光入射部12と、分配反射部13と、角度調整反射部14a,14bと、下方屈折部15aと、後方照射部15bと、境界リブ16と、突出部17を備えている。
【0019】
導光部11は、光を透過する材料によって構成されており、公知の方法によって成形され、入射導光部11aと、下方導光部11bと、後方導光部11cを備えている。導光部11を構成する具体的な材料は限定されず、例えばアクリル系樹脂材料やガラス材料を用いることができる。導光部11は、構成材料と空気の屈折率差によって臨界角以上で表面に到達した光を全反射するように、表面が平滑な面として形成されている。
【0020】
入射導光部11aは、発光素子20の近傍に配置されており、光入射部12から入射した照射光を下方導光部11bに導光する部分である。
図1では、入射導光部11aにおけるyz平面を光入射部12とし、x軸の負方向に発光素子20を配置した例を示したが、光入射部12の形状や向きは限定されない。また入射導光部11aの光入射部12と対向する面には、分配反射部13が設けられている。
【0021】
下方導光部11bは、上下方向(z軸方向)に延伸して形成され、入射導光部11aと後方導光部11cの間に設けられて、入射導光部11aから到達した照射光を後方導光部11cに導光する部分である。下方導光部11bには、入射導光部11aと対向する面に分配反射部13が設けられている。また、下方導光部11bの上面はx軸方向およびz軸方向に対して傾斜しており、角度調整反射部14a,14bおよび境界リブ16が設けられている。換言すると下方導光部11bは、角度調整反射部14a,14bから下方に延伸して設けられている。
【0022】
後方導光部11cは、下方導光部11bの上端近傍において角度調整反射部14bから後方(x軸方向)に延伸して設けられ、下方導光部11bから到達した照射光を後方の端部まで導光して外部に照射する部分である。後方導光部11cの上面および下面は、xy平面に平行に形成されており、略平板状の部分として形成されている。また、後方導光部11cの上面には、下方導光部11bとの境界近傍に突出部17が設けられている。後方導光部11cの後方の端部にはx軸、y軸およびz軸に対して傾斜した端面が形成されており、下方屈折部15aと後方照射部15bが設けられている。
【0023】
光入射部12は、発光素子20に対向して入射導光部11aに設けられ、発光素子20が照射した照射光を入射導光部11aに取り込む部分である。
図1に示した例では、光入射部12としてyz平面を示しているが、発光素子20からの照射光を効率よく取り込むために、発光素子20方向に突出した形状としてもよい。また、発光素子20からの照射光の指向性に応じて、光入射部12を凹面として形成してもよい。
【0024】
分配反射部13は、光入射部12に対向して入射導光部11aおよび下方導光部11bにわたって設けられ、照射光を上方(z軸負方向)や横方向(y軸方向)に反射する部分であり、本発明における第3反射部に相当している。分配反射部13は後述するように複数の領域に分割された曲面形状を有しており、照射光が臨界角以上で入射することで照射光が全反射される。ここでは分配反射部13として空気との屈折率差による全反射を用いる例を示したが、分配反射部13の各領域の表面に金属等で反射膜を形成するとしてもよい。
【0025】
角度調整反射部14aは、分配反射部13で反射されて下方導光部11b内を進行してきた照射光の一部が到達して反射される部分であり、本発明における第1反射部に相当している。角度調整反射部14aは、角度調整反射部14bよりも高さ方向(z軸方向)において上方に分離して設けられており、その一部は突出部17に至るまで設けられている。角度調整反射部14aは後述するように横方向に複数の領域に分割されており、各領域において照射光が臨界角以上で入射することで照射光が全反射される。本実施形態では角度調整反射部14aとして各領域を平坦面とした例を示すが、凹面や凸面として構成してもよい。また、ここでは角度調整反射部14aとして空気との屈折率差による全反射を用いる例を示したが、角度調整反射部14aの表面に金属等で反射膜を形成するとしてもよい。
【0026】
角度調整反射部14bは、分配反射部13で反射されて下方導光部11b内を進行してきた照射光の一部が到達して反射される部分であり、本発明における第2反射部に相当している。角度調整反射部14bは、角度調整反射部14aよりも高さ方向(z軸方向)において下方に分離して設けられている。角度調整反射部14bは後述するように横方向に複数の領域に分割されており、各領域において照射光が臨界角以上で入射することで照射光が全反射される。本実施形態では角度調整反射部14bとして各領域を平坦面とした例を示すが、凹面や凸面として構成してもよい。また、ここでは角度調整反射部14bとして空気との屈折率差による全反射を用いる例を示したが、角度調整反射部14bの表面に金属等で反射膜を形成するとしてもよい。
【0027】
下方屈折部15aは、後方導光部11cの後方における端部に設けられた光出射面であり、角度調整反射部14aで反射された照射光が到達し、空気との屈折率差によって照射光を下方および横方向に屈折させて照射する部分である。
図1に示すように、下方屈折部15aは、後方導光部11cの端部において、後方照射部15bよりも下方に位置している。また、下方屈折部15aの傾斜角度は、後方照射部15bの傾斜角度と異なっている。下方屈折部15aは後述するように横方向に複数の領域に分割されており、各領域において照射光が臨界角未満で入射することで、照射光が全反射せずに傾斜角度に応じて屈折される。本実施形態では下方屈折部15aとして各領域を平坦面とした例を示すが、凹面や凸面として構成してもよい。
【0028】
後方照射部15bは、後方導光部11cの後方における端部に設けられた光出射面であり、角度調整反射部14bで反射された照射光が到達し、照射光を後方の外部に照射する部分である。後方照射部15bは後述するように横方向に複数の領域に分割されており、各領域において照射光が臨界角未満で入射することで照射光が全反射せずに透過する。本実施形態では後方照射部15bとして各領域を平坦面とした例を示すが、凹面や凸面として構成してもよい。また、
図1では簡略のために後方照射部15bから後方に照射光が照射された例を示しているが、後方照射部15bの傾斜角度に応じて照射光が屈折して照射されるとしてもよい。
【0029】
境界リブ16は、角度調整反射部14a,14bの境界に突出して設けられた部分である。角度調整反射部14a,14bは、後述するように照射光の入射角度および反射角度を異ならせるために、x軸方向およびy軸方向に対する傾斜角度が異なっている。したがって、角度調整反射部14a,14bを平坦な傾斜面で形成した場合に、その境界は所定角度で交差した頂角を形成し、頂角に到達した照射光に迷光が生じる可能性がある。また、境界に頂角が形成されないように、境界に曲面形状を形成する場合には曲面の面積が大きくなり角度調整反射部14a,14bでの有効な反射面積が小さくなる。そこで角度調整反射部14a,14bの境界に境界リブ16を設けることで、境界に到達した光を境界リブ16内に取り込み、境界から後方導光部11cに向かう照射光の反射を抑制することができる。
図1では境界リブ16を設けた例を示しているが、迷光の影響が小さい場合には境界リブ16を省略するとしてもよい。
【0030】
突出部17は、下方導光部11bと後方導光部11cの境界近傍において、後方導光部11cの上面に突出して設けられた部分である。突出部17の形状は限定されないが、後述するように角度調整反射部14aで反射された照射光の経路を確保するために、後方導光部11cの後方(x軸正方向)に向かって高さが減少することが好ましい。また、突出部17の一部に角度調整反射部14aを設けるとしてもよい。
【0031】
発光素子20は、光学部材10の光入射部12に対向して配置され、配線が形成された搭載基板(図示省略)に搭載されて、駆動回路によって電流が供給されることで所定の色で発光する電子部品であり、本発明における発光部に相当している。発光素子20の具体的な構造は限定されないが、一次光を発光する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)と、一次光の一部を二次光に波長変換する波長変換部材を組み合わせたLEDパッケージを用いることができる。また、発光ダイオードの材料も限定されず、公知の材料および構造を用いることができる。一例としては、青色光を発光するGaN系LEDを用いることができる。また、波長変換部材の材料も限定されず、一例としては青色光で励起されて黄色光を発光するYAG系蛍光体材料等を用いることができる。また発光素子20はLEDに限らず半導体レーザー等であってもよい。
【0032】
図1に示したように本実施形態の車両用灯具100では、発光素子20から照射された照射光は、光入射部12から導光部11に入射する。導光部11では、照射光は入射導光部11a内を進行してその一部は分配反射部13に到達する。
【0033】
図1中に破線矢印で示したように、分配反射部13に到達した照射光の一部は、分配反射部13の曲面形状に応じた角度で全反射されて角度調整反射部14aに到達する。角度調整反射部14aに到達した照射光は、角度調整反射部14aの傾斜角度に応じた角度で全反射されて突出部17および後方導光部11cを斜め下方に進行して下方屈折部15aに到達する。下方屈折部15aは、到達した照射光が全反射しない角度に設定されているため、導光部11を構成する材料と空気の屈折率差によって、照射光は下方および横方向に屈折されて照射される。
【0034】
図1中に実線矢印で示したように、分配反射部13に到達した照射光の一部は、分配反射部13の曲面形状に応じた角度で全反射されて角度調整反射部14bに到達する。角度調整反射部14bに到達した照射光は、角度調整反射部14bの傾斜角度に応じた角度で全反射されて後方導光部11c内を進行して後方照射部15bに到達する。後方照射部15bは、到達した照射光が全反射しない角度に設定されているため、後方照射部15bは到達した照射光を透過し、車両用灯具100の後方に照射光が照射される。このとき、後方照射部15bもx軸方向、y軸方向またはz軸方向に対して傾斜させておくことで、導光部11を構成する材料と空気の屈折率差によって、照射光を適切な方向に屈折して照射することができる。
【0035】
図1に示したように、本実施形態の光学部材10および車両用灯具100では、角度調整反射部14aが角度調整反射部14bよりも上方に位置しており、下方屈折部15aが後方照射部15bよりも下方に位置している。したがって、後方照射部15bから照射される照射光は後方導光部11c内を略水平に進行するのに対して、下方屈折部15aから照射される照射光は突出部17および後方導光部11c内を所定の打ち下ろし角度で傾斜して進行する。これにより、下方屈折部15aはx軸に対して所定角度で傾斜しているため、下方屈折部15aに対する照射光の入射角度は大きくなり、x軸に対して大きな角度で照射光を屈折させて外部に照射することができる。
【0036】
図2は、車両用灯具100に用いられる光学部材10の概要を模式的に示す図であり、
図2(a)は上面図であり、
図2(b)は後ろ斜め下方から見た斜視図であり、
図2(c)は斜め上方から見た斜視図である。
図2(a)~(c)に示したように、後方導光部11cの端部はx軸方向に対しても傾斜して形成されている。また、後方導光部11cの傾斜に対応して、下方屈折部15aおよび後方照射部15bは複数の段差を有する複数の領域に分割されており、それぞれの領域においてx軸方向、y軸方向およびz軸方向に対する傾斜角度がそれぞれ設定されている。
図2(c)に示した例では後方照射部15bをz軸方向に沿って湾曲した曲面形状とした例を示しているが、それぞれの領域における後方照射部15bをさらにz軸方向に沿って複数領域に分割して、傾斜角度が異なる複数の平面形状としてもよい。
【0037】
また、角度調整反射部14a,14bは、y軸方向に沿って複数の領域に分割されており、それぞれの領域においてx軸方向、y軸方向およびz軸方向に対する傾斜角度がそれぞれ設定されている。また角度調整反射部14aは、導光部11のy軸方向における一部の領域に形成されており、それに対応した領域に境界リブ16が形成されている。また光入射部12は入射導光部11aから部分的に突出して形成されている。
【0038】
図2(b)に示すように、分配反射部13は第1領域13aと、第2領域13bと、第3領域13cに分割されている。また、下方導光部11bの側面はy軸方向およびz軸方向に対して傾斜された傾斜側面13dとされている。傾斜側面13dの傾斜角度は、入射した照射光を全反射するように設定されている。ここでは傾斜側面13dが照射光を全反射する角度で傾斜した例を示したが、傾斜側面13dに金属等で反射膜を形成するとしてもよい。
【0039】
第1領域13a,第2領域13bおよび第3領域13cはそれぞれx軸方向に凹形状となる曲面形状を有している。第1領域13a,第2領域13bおよび第3領域13cの曲面形状は限定されず、自由曲面、回転放物面、回転楕円面等を部分的に切り出した形状を用いることができる。また、第1領域13a,第2領域13bおよび第3領域13cの交点は光入射部12に対向する位置に設けられており、発光素子20も当該交点に対向して配置される。
【0040】
図3は、光学部材10における後方照射部15bを介しての光照射を説明する模式図であり、
図3(a)は後方正面図であり、
図3(b)は斜め上方から見た斜視図であり、
図3(c)は上面図である。
図3(a)(b)に示したように、光入射部12から入射した照射光は、分配反射部13の複数の領域である第1領域13a,第2領域13bおよび第3領域13cに到達して反射される。
【0041】
第1領域13aに入射した照射光は、第1領域13aの曲面形状に応じて反射され、下方導光部11bを上方(z軸負方向)に進行して角度調整反射部14bに到達する。ここで、第1領域13aによって反射された照射光が到達する領域は、角度調整反射部14bの複数の領域のうちy軸方向における中央近傍に位置する領域である。角度調整反射部14bに到達した照射光は全反射され、後方導光部11c内を略水平に進行して後方照射部15bに到達し、後方照射部15bから後方に照射される。
【0042】
第2領域13bおよび第3領域13cに入射した照射光は、第2領域13bおよび第3領域13cの曲面形状に応じて反射され、下方導光部11bを横方向(y軸負方向およびy軸正方向)に進行して傾斜側面13dに到達する。傾斜側面13dに到達した照射光は全反射され、下方導光部11b内を上方に進行して角度調整反射部14bに到達する。ここで、第2領域13bおよび第3領域13cによって反射された光が到達する領域は、角度調整反射部14bの複数の領域のうちy軸方向における両端近傍に位置する領域である。角度調整反射部14bに到達した照射光は全反射され、後方導光部11c内を略水平に進行して後方照射部15bに到達し、後方照射部15bから後方に照射される。このとき、両端近傍に位置する角度調整反射部14bで反射された照射光は、横方向(y軸方向)への成分を有しており、後方(x軸方向)に対して傾斜して進行する。
【0043】
図3(c)中に一点鎖線で示したように、中央近傍の角度調整反射部14bで反射された照射光は、x軸方向に進行していく。そのため後方照射部15bに対する照射光の入射角度は比較的小さくなり、照射光はy軸方向への屈折をあまり受けず透過し後方に照射される。またこの経路の照射光も、後方照射部15bにおいて、z軸方向に屈折されて後方の路面に対して照射される。
【0044】
それに対して
図3(c)中に破線および二点鎖線で示したように、両端近傍の角度調整反射部14bで反射された照射光は、後方導光部11c内をy軸方向に横断して進行していく。そのため後方照射部15bに対する照射光の入射角度は比較的大きくなり、照射光はy軸方向への屈折を大きく受けて透過される。またこの経路の照射光も、後方照射部15bにおいて、z軸方向に屈折されて後方の路面に対して照射される。
【0045】
図3(c)中に実線で示した矢印は、角度調整反射部14aで反射された照射光の経路を模式的に示している。角度調整反射部14aと角度調整反射部14bは高さ方向に分離して異なる傾斜面として形成されているため、y軸方向において同じ位置で角度調整反射部14aと角度調整反射部14bにそれぞれ入射した照射光も、異なる角度で反射されて後方導光部11c内を進行する。したがって、角度調整反射部14aでのy軸方向への反射角度を大きくすることで、下方屈折部15aに対する照射光の入射角度をさらに大きくして、y軸方向への屈折をより大きくすることができる。
【0046】
図4は、光学部材10における角度調整反射部14a,14bの近傍を拡大して示す模式斜視図である。
図4に示すように、角度調整反射部14aはy軸方向において部分的に設けられており、角度調整反射部14aに対応した領域に境界リブ16が設けられている。角度調整反射部14aが設けられていない領域では、角度調整反射部14aが突出部17に至るまで延長して設けられている。しかし本実施形態の光学部材10および車両用灯具100では、角度調整反射部14aのうち上方に延長された領域に対しては分配反射部13から照射光が反射されない。これは、上方に延長された領域でも角度調整反射部14aは下方と同じ傾斜角度であるため、下方屈折部15aに照射光を到達させることが困難なためである。したがって、照射光が到達しない領域に設けられた角度調整反射部14aは省略することもできる。しかし、照射光が到達しない領域にも角度調整反射部14aを延長してダミー領域として設けておくことで、車両用灯具100を後方から視認した際の意匠性を向上させることができる。
【0047】
図5は、光学部材10における下方屈折部15aを介しての光照射を説明する模式図であり、
図5(a)は上面図であり、
図5(b)は斜め上方から見た斜視図である。
図5(a)(b)中に各種矢印で示したように、角度調整反射部14aに到達した照射光は、角度調整反射部14aの各領域の傾斜角度に応じた反射角度で反射されて、後方導光部11c内を進行して下方屈折部15aに到達する。この際、角度調整反射部14aの一部を横方向にも傾斜させておくことで、照射光は後方導光部11c内をx軸方向に対して斜めに横断して進行する。
【0048】
図5では、車両の左後方に光学部材10および車両用灯具100を配置した例を示している。角度調整反射部14aによって反射されx軸方向に斜めに横断した照射光は、下方屈折部15aに対して横方向(y軸方向)に大きな入射角度で到達するため、より大きな屈折角度で屈折されて照射される。また、
図1で説明したように、角度調整反射部14aから下方屈折部15aに至る経路は、後方導光部11cを斜め下方に傾斜しており、下方(z軸方向)に対して大きく屈折される。これにより、
図1から
図5に示した光学部材10および車両用灯具100では、車両の中央付近かつ車両に近い位置の路面に対して良好に照射光を照射することができる。また、車両の右後方に配置する車両用灯具100として、
図1から
図5に示した光学部材10とは左右対称の形状のものを用いることで、車両の左右から中央および近い位置の路面に対して良好に照射光を照射することができる。
【0049】
上述したように、本実施形態の光学部材10および車両用灯具100では、角度調整反射部14aと、角度調整反射部14aとは少なくとも高さ方向に分離して設けられた角度調整反射部14bと、後方導光部11cと、照射光を少なくとも下方向に屈折する下方屈折部15aと、照射光を後方に照射する後方照射部15bとを有する。これにより、角度調整反射部14bで反射された照射光を後方導光部11cの端部から照射するとともに、角度調整反射部14aで反射された照射光を下方屈折部15aで下方向に屈折して照射するため、近い位置の下方を含んだ広い範囲に対して光を照射することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、光入射部12を入射導光部11aに設けて、分配反射部13で反射した照射光を角度調整反射部14a,14bに到達させたが、入射導光部11aおよび分配反射部13を省略するとしてもよい。この場合、光入射部12または発光素子20に各種レンズや反射鏡を設けて、x軸方向、y軸方向およびz軸方向への光量分布を設定して、照射光を適切に角度調整反射部14a,14bに到達させることが好ましい。
【0051】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
100…車両用灯具
10…光学部材
11…導光部
11a…入射導光部
11b…下方導光部
11c…後方導光部
12…光入射部
13…分配反射部
13a…第1領域
13b…第2領域
13c…第3領域
13d…傾斜側面
14a,14b…角度調整反射部
15a…下方屈折部
15b…後方照射部
16…境界リブ
17…突出部
20…発光素子