(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024527
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】直列キャパシタ降圧コンバータおよびそのコントローラ回路および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02M3/155 Q
H02M3/155 S
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127428
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 明大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB61
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD31
5H730FF05
5H730FF09
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】ZVS動作が可能な直列キャパシタ降圧コンバータを提供する。
【解決手段】コントローラIC200は、直列キャパシタ降圧コンバータ100を制御する。タイミング発生器280は、カップルドインダクタに流れる電流としきい値の比較結果にもとづいて、直列キャパシタ降圧コンバータ100の状態遷移のタイミングを示すタイミング信号TMGを生成する。制御ロジック回路210は、タイミング信号TMGと同期して、第1スイッチから第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する。複数のドライバDR1~DR4は、複数の制御信号に応じて、第1スイッチから第4スイッチを駆動する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記コントローラ回路は、
前記カップルドインダクタに流れる電流としきい値の比較結果にもとづいて、前記直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチから前記第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、
前記複数の制御信号に応じて、前記第1スイッチから前記第4スイッチを駆動する第1ドライバから第4ドライバと、
を備える、コントローラ回路。
【請求項2】
前記タイミング発生器は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項3】
前記タイミング発生器は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項4】
前記タイミング発生器は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項5】
前記タイミング発生器は、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項6】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から5のいずれかに記載のに記載のコントローラ回路。
【請求項7】
直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、
前記主回路に含まれる複数のスイッチを駆動する請求項1から5のいずれかに記載のコントローラ回路と、
を備える、直列キャパシタ降圧コンバータ。
【請求項8】
直列キャパシタ降圧コンバータの制御方法であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記制御方法は、
前記カップルドインダクタに流れる電流としきい値を比較し、比較結果にもとづくタイミング信号を生成するステップと、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチから前記第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成するステップと、
前記複数の制御信号に応じて、前記第1スイッチから前記第4スイッチを駆動するステップと、
を備える、制御方法。
【請求項9】
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を生成するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項8に記載の制御方法。
【請求項11】
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を生成するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項8に記載の制御方法。
【請求項12】
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を生成するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、請求項8に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直列キャパシタコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧よりも低い電圧を生成するために、降圧機能を持つDC/DCコンバータが使用される。降圧機能を持つDC/DCコンバータとしては、降圧(Buck)型、昇降圧型、Cuk型、Zeta型、Sepic型などが知られている。
【0003】
用途によっては、降圧コンバータのバリエーションであるインタリーブ型や直列キャパシタ(Series Capacitor)型が採用される。インタリーブ型は、Buckコンバータを並列に接続し、入力同士、出力同士を共通に接続したものである。複数のBuckコンバータがインタリーブ動作することにより、高効率動作が実現される。インタリーブ型は、通常のバックコンバータと同じ降圧比を有する。
【0004】
直列キャパシタ型の降圧コンバータは、フェーズ数が2であるインタリーブ型の修正と考えることができ、直列キャパシタが追加された構成を有する。直列キャパシタ型の降圧コンバータは、降圧比をインタリーブ型の1/2倍と小さくできるため、小さな降圧比が必要なアプリケーションに適している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Stefano Saggini, Shuai Jiang, Mario Ursino, Chenhao Nan, "A 99% Efficient Dual-Phase Resonant Switched-Capacitor-Buck Converter for 48 V Data Center Bus Conversions", 2019 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、ZVS動作が可能な直列キャパシタ降圧コンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路に関する。直列キャパシタ降圧コンバータは、入力ラインおよび出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1スイッチと、それぞれの第1端が出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、第1スイッチの第2端と第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、第1スイッチの第2端と第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、出力ラインと接続された出力キャパシタと、を備える。コントローラ回路は、カップルドインダクタに流れる電流としきい値の比較結果にもとづいて、直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、タイミング信号と同期して、第1スイッチから第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、複数の制御信号に応じて、第1スイッチから第4スイッチを駆動する第1ドライバから第4ドライバと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、ZVS動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータの回路図である。
【
図2】
図2は、第1状態における直列キャパシタ降圧コンバータ(主回路)の等価回路図である。
【
図3】
図3は、第2状態における直列キャパシタ降圧コンバータ(主回路)の等価回路図である。
【
図4】
図4は、直列キャパシタ降圧コンバータの電流波形図である。
【
図5】
図5は、直列キャパシタ降圧コンバータの電流波形図である。
【
図6】
図6は、デッドタイムを考慮した直列キャパシタ降圧コンバータの動作を説明するタイムチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコントローラICのブロック図である。
【
図8】
図8は、スイッチング周波数が共振周波数と等しい場合の、カップルドインダクタの電流を示す図である。
【
図9】
図9は、第1構成例に係るコントローラICの回路図である。
【
図11】
図11は、第2構成例に係るコントローラICの回路図である。
【
図13】
図13は、第3構成例に係るコントローラICの回路図である。
【
図15】
図15は、第4構成例に係るコントローラICの回路図である。
【
図19】
図19は、直列キャパシタ降圧コンバータを備える電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係るコントローラ回路は、直列キャパシタ降圧コンバータを制御する。直列キャパシタ降圧コンバータは、入力ラインおよび出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1スイッチと、それぞれの第1端が出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、第1スイッチの第2端と第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、第1スイッチの第2端と第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、出力ラインと接続された出力キャパシタと、を備える。コントローラ回路は、カップルドインダクタに流れる電流としきい値の比較結果にもとづいて、直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、タイミング信号と同期して、第1スイッチから第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、複数の制御信号に応じて、第1スイッチから第4スイッチを駆動する第1ドライバから第4ドライバと、を備える。
【0013】
この構成によれば、カップルドインダクタに流れる電流が、所定のしきい値とクロスするタイミングで状態遷移を行い、このしきい値を、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)の条件が成立するように定めることで、ZVS動作が可能となる。
【0014】
一実施形態において、タイミング発生器は、第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、を含み、第1比較信号および第2比較信号が、タイミング信号であってもよい。
【0015】
一実施形態において、タイミング発生器は、第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、を含み、第1比較信号および第2比較信号が、タイミング信号であってもよい。
【0016】
一実施形態において、タイミング発生器は、第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、を含み、第1比較信号および第2比較信号が、タイミング信号であってもよい。
【0017】
一実施形態において、タイミング発生器は、第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、を含み、第1比較信号および第2比較信号が、タイミング信号であってもよい。
【0018】
一実施形態において、コントローラ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0019】
一実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータは、直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、主回路に含まれるスイッチング素子を駆動する上述のいずれかのコントローラ回路と、を備える。
【0020】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0024】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0025】
図1は、実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータ100の回路図である。直列キャパシタ降圧コンバータ100は、入力ライン102に供給された入力電圧Vinを降圧し、降圧後の出力電圧Voutを出力ライン104に発生する。
【0026】
直列キャパシタ降圧コンバータ100は、主回路110およびコントローラIC(Integrated Circuit)200を備える。コントローラIC200は、ひとつの半導体基板に集積化されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0027】
主回路110は、第1スイッチS1~第4スイッチS4、カップルドインダクタ112、直列キャパシタCr、出力キャパシタCoutを備える。
【0028】
第1スイッチS1は、第1端が入力ライン102と接続される。カップルドインダクタ112は、トランスであり、磁気的に結合する第1インダクタL1および第2インダクタL2を含む。第1インダクタL1および第2インダクタL2は、等しいインダクタンスLを有しており、また相互インダクタンスMを有する。第1インダクタL1および第2インダクタL2それぞれの第1端は、出力ライン104と接続される。
【0029】
第2スイッチS2は、第1インダクタL1の第2端と接地の間に接続される。直列キャパシタCrは、第1スイッチS1の第2端と第1インダクタL1の第2端の間に接続される。第3スイッチS3は、第1スイッチS1の第2端と第2インダクタL2の第2端の間に接続される。第4スイッチS4は、第2インダクタL2の第2端と接地の間に接続される。出力キャパシタCoutは、出力ライン104と接地の間に接続される。
【0030】
この例では、第1スイッチS1~第4スイッチS4がすべてNチャンネルMOSFETとして示されるがその限りでなく、その他のトランジスタを用いてもよい。また下側の第2スイッチS2および第4スイッチS4は、ダイオードなどの整流素子であってもよい。
【0031】
コントローラIC200は、第1スイッチS1~第4スイッチS4を制御し、出力ライン104に出力電圧Voutを発生させる。具体的には、コントローラIC200は、第1状態φ1と第2状態φ2を、デッドタイムTDを挟みながら、所定のスイッチング周波数fSWで交互に繰り返す。
第1状態φ1:
第1スイッチS1=ON
第2スイッチS2=OFF
第3スイッチS3=OFF
第4スイッチS4=ON
【0032】
第2状態φ2:
第1スイッチS1=OFF
第2スイッチS2=ON
第3スイッチS3=ON
第4スイッチS4=OFF
【0033】
デッドタイムTD:
第1スイッチS1=OFF
第2スイッチS2=OFF
第3スイッチS3=OFF
第4スイッチS4=OFF
【0034】
第1状態φ1、第2状態φ2それぞれの長さがTONであるとき、スイッチング周波数fSWは、1/(2×TON)である。言い換えると、スイッチング周波数fSWで動作するとは、第1状態φ1および第2状態φ2を、TON=1/(2×fSW)の長さで繰り返すことをいう。
【0035】
以上が直列キャパシタ降圧コンバータ100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0036】
図2は、第1状態φ1における直列キャパシタ降圧コンバータ100(主回路110)の等価回路図である。オンであるスイッチS1,S4は、単なる配線として示している。またカップルドインダクタ112は、励磁インダクタンスLmと、漏れインダクタンスLkを含む等価回路として示している。第1インダクタL1に流れる電流を第1コイル電流I
L1、第2インダクタL2に流れる電流を、第2コイル電流I
L2と称する。
【0037】
第1状態φ1では、直列キャパシタCr、第1インダクタL1(漏れインダクタンスLk)および出力キャパシタCoutが直列共振回路を形成しており、第1インダクタL1に共振電流Iresが流れる(IL1=Ires)。第2インダクタL2には、第1インダクタL1に流れる共振電流Iresのレプリカである共振電流Ires’と、励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流Im2の合計電流が流れるから、第2コイル電流IL2は、IL2=Ires’+Im2となる。
【0038】
図3は、第2状態φ2における直列キャパシタ降圧コンバータ100(主回路110)の等価回路図である。オンであるスイッチS2,S3は、単なる配線として示している。
【0039】
第2状態φ2では、直列キャパシタCr、漏れインダクタンスLkおよび出力キャパシタCoutが直列共振回路を形成しており、第2インダクタL2に共振電流Iresが流れる(IL2=Ires)。第1インダクタL1には、第2インダクタL2に流れる共振電流Iresのレプリカである共振電流Ires’と、励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流Im1の合計電流が流れるから、第1コイル電流IL1は、IL1=Ires’+Im1となる。
【0040】
第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返すと、定常状態では、直列キャパシタCrの両端間電圧は、Vin/2となり、カップルドインダクタ112に、残りのVin/2が印加される。第1インダクタL1と第2インダクタL2のインダクタンスが等しいとき、出力ライン104には、Vinの1/4倍の出力電圧Voutが発生する。
【0041】
直列キャパシタ降圧コンバータ100が、ZVS(Zero Voltage Switching)するための条件は、以下の通りである。
【0042】
・第1状態φ1から第2状態φ2への遷移
第1状態φ1の直後のデッドタイムTD中において、IL1≧0であるとき、第2スイッチS2のボディダイオードに電流IL1が流れており、第2スイッチS2の両端間電圧が小さくなる。このときに、第2状態φ2に遷移、すなわち第2スイッチS2をターンオンすると、第2スイッチS2のZVSが成立する。なお、電流IL1,IL2は、出力ライン104に向かう向きを正にとる。
【0043】
またデッドタイムTD中において、IL2<0であるときに、回生電流によって、第3スイッチS3と第4スイッチS4の接続ノードの電圧が上昇し、第3スイッチS3の両端間電圧が小さくなる。このときに、第2状態φ2に遷移、すなわち第3スイッチS3がターンオンすると、第3スイッチS3のZVSが成立する。
【0044】
・第2状態φ2から第1状態φ1への遷移
第2状態φ2の直後のデッドタイムTD中において、IL1<0であるとき、回生電流によって、第1スイッチS1と第2スイッチS2の接続ノードの電圧が上昇し、第1スイッチS1の両端間電圧が小さくなる。このときに第1状態φ1に遷移、すなわち第1スイッチS1をターンオンすると、第1スイッチS1のZVSが成立する。
【0045】
またデッドタイム中において、IL2≧0であるとき、第4スイッチS4のボディダイオードに電流IL2が流れており、第4スイッチS4の両端間電圧が小さくなっている。このときに、第1状態φ1に遷移、すなわち第4スイッチS4をターンオンすると、第4スイッチS4のZVSが成立する。
【0046】
図4は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の電流波形図である。スイッチング周波数f
swは、主回路110の共振周波数f
0と一致しており、共振電流Iresがゼロとなるタイミングで、第1状態φ1と第2状態φ2が遷移する。ここではデッドタイムは省略している。
図4は、第1スイッチS1~第4スイッチS4を理想スイッチとした場合の、すなわち第1スイッチS1~第4スイッチS4が寄生容量を含まないとした場合の電流波形を示している。
【0047】
第1状態φ1の終わりのタイミングでは、第1インダクタL1の電流IL1は正もしくはゼロ(IL1≧0)、第2インダクタL2の電流IL2は負(IL2<0)であるから、上述のZVSの条件を満たしている。
【0048】
同様に、第2状態φ2の終わりのタイミングでは、第1インダクタL1の電流IL1は負(IL1<0)であり、第2インダクタL2の電流IL2は正もしくはゼロ(IL2≧0)であるから、上述のZVSの条件を満たしている。
【0049】
このように、直列キャパシタ降圧コンバータ100は、共振周波数f0でスイッチングすることにより、ZVSの条件を満たすことができ、高効率動作が可能である。
【0050】
図5は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の電流波形図である。
図4では、MOSFETの寄生容量を無視した波形を示したが、実際には、寄生容量が存在する。この寄生容量により、デッドタイムを跨ぐ電流の不連続が抑制される。コイル電流I
L1,I
L2は連続となり、第1状態φ1と第2状態φ2では、デッドタイムに関して時間軸上で対称な波形を有する。
【0051】
図6は、デッドタイムを考慮した直列キャパシタ降圧コンバータ100の動作を説明するタイムチャートである。
図6は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数f
0と等しいときの動作を示しており、第1状態φ1と第2状態φ2の長さT
ONはそれぞれ、共振周期T
r(=1/f
r)の1/2である。
【0052】
スイッチング周波数fSWを、共振周波数f0と完全に一致させることができれば、ZVSの条件が常に成り立つため、高効率動作が可能となる。しかしながら、主回路110の回路定数はばらつきをもつため、共振周波数f0のばらつきは避けられず、したがってスイッチング周波数fSWを共振周波数f0と常に一致させることは容易ではない。したがってスイッチング周波数fSWを固定すると、ZVSの条件を満たすことは難しく、効率が低下するおそれがある。以下では、ZVSの条件を成立させることが可能なコントローラIC200について説明する。
【0053】
図7は、実施形態に係るコントローラIC200のブロック図である。コントローラIC200は、制御ロジック回路210、タイミング発生器280、ドライバDR1~DR4を備える。コントローラIC200は、第1出力ピンOUT1~第4出力ピンOUT4、電流検出ピンCSを備える。第1出力ピンOUT1~第4出力ピンOUT4は、第1スイッチS1~第4スイッチS4のゲートと接続される。電流検出ピンCSには、カップルドインダクタ112に流れる電流を示す電流検出信号V
CSが入力される。カップルドインダクタ112に流れる電流は、第1インダクタL1に流れる第1コイル電流I
L1、第2インダクタL2に流れる第2コイル電流IL2のいずれか一方、もしくは両方を指すものとする。電流検出信号V
CSはタイミング発生器280に供給される。
【0054】
タイミング発生器280は、電流検出信号VCSが示すカップルドインダクタ112に流れる電流と、しきい値ITHを比較し、比較結果にもとづいて、第1状態φ1と第2状態φ2の状態遷移のタイミングを示すタイミング信号TMGを生成する。タイミング信号TMGは、単一の信号であってもよいし、複数の信号の組み合わせであってもよい。
【0055】
制御ロジック回路210は、タイミング信号TMGと同期して、第1スイッチS1および第4スイッチS4がオンである第1状態φ1と、第2スイッチφ2および第3スイッチS3がオンである第2状態φ2をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチS1~第4スイッチS4それぞれのオン、オフを規定する第1制御信号~第4制御信号を生成する。
【0056】
第1ドライバDR1~第4ドライバDR4はそれぞれ、対応する制御信号にもとづいて、第1スイッチS1~第4スイッチS4のうち対応するひとつを駆動する。
【0057】
以上がコントローラIC200の基本構成である。続いて、コントローラIC200の動作について、いくつかの例を説明する。
【0058】
図8は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数f
0と等しい場合の、カップルドインダクタ112の電流I
L1,I
L2を示す図である。状態遷移のタイミングt
12,t
21において、共振電流Iresはゼロであり、電流I
L1,I
L2は、破線で示す励磁電流Imのみを含んでいる。
【0059】
定常状態において、インダクタL1,L2の両端間電圧をVL、インダクタL1,L2のインダクタンスを等しくLとすると、励磁電流Imの傾きは、
ΔIm/Δt=VL/L
となる。定常状態において、VL=Vin/4である。第1状態φ1(または第2状態φ2)の間の励磁電流Imの変化量ΔImは、
ΔIm=Tr/2×VL/L
となる。励磁電流Imの時間平均はゼロであるから、共振状態において、励磁電流Imのピークとボトムはそれぞれ、Ip=Tr/4×VL/L、In=-Tr/4×VL/Lとなる。
【0060】
タイミング発生器280は、第1状態φ1において、第1コイル電流IL1が正の電流Ipとクロスするタイミング、もしくは、第2コイル電流IL2が負の電流Inとクロスするタイミングt12を示すタイミング信号TMGを発生する。このタイミング信号TMGに応答して、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移することで、共振電流Iresがゼロのタイミングでスイッチングすることが保証される。
【0061】
同様にタイミング発生器280は、第2状態φ2において、第1コイル電流IL1が負の電流Inとクロスするタイミング、もしくは、第2コイル電流IL2が正の電流Ipとクロスするタイミングt21を示すタイミング信号TMGを発生する。このタイミング信号TMGに応答して、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移することで、共振電流Iresがゼロのタイミングでスイッチングすることが保証される。
【0062】
図9は、第1構成例に係るコントローラIC200Aの回路図である。コントローラIC200Aは2個の電流検出ピンCS1,CS2を備える。電流検出ピンCS1には、第1コイル電流I
L1を示す第1電流検出信号V
CS1が入力され、電流検出ピンCS2には、第2コイル電流I
L2を示す第2電流検出信号V
CS2が入力される。
【0063】
タイミング発生器280Aは、第1電流センスアンプ282_1、第2電流センスアンプ282_2、第1コンパレータ284_1、第2コンパレータ284_2を含む。
【0064】
第1電流センスアンプ282_1は、第1電流検出信号V
CS1を増幅する。第1コンパレータ284_1は、増幅後の第1電流検出信号V
CS1を、第1しきい値V
TH1と比較し、比較結果を示す第1タイミング信号TMG1を生成する。第1しきい値V
TH1は、
図8に示した励磁電流のボトムInにもとづいて定めることができる。つまり、第1コンパレータ284_1は、第1コイル電流I
L1を、電流Inに相当する負のしきい値と比較しており、第1タイミング信号TMG1は、I
L1<Inとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0065】
同様に、第2電流センスアンプ282_2は、第2電流検出信号V
CS2を増幅する。第2コンパレータ284_2は、増幅後の第2電流検出信号V
CS2を、第2しきい値V
TH2と比較し、比較結果を示す第2タイミング信号TMG2を生成する。第2しきい値V
TH2は、
図8に示した励磁電流のボトムInにもとづいて定めることができる。つまり、第2コンパレータ284_2は、第2コイル電流I
L2を、電流Inに相当する負のしきい値と比較しており、第2タイミング信号TMG2は、I
L2<Inとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0066】
制御ロジック回路210は、第1タイミング信号TMG1のアサートに応答して、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移し、第2タイミング信号TMG2のアサートに応答して、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移する。
【0067】
図10は、
図9のコントローラIC200Aの動作波形図である。状態遷移のための電流の検出ポイントに丸を付している。
【0068】
第1構成例に係るコントローラIC200Aによれば、第1コイル電流IL1および第2コイル電流IL2それぞれを、負のしきい値Inと比較することにより、共振状態でスイッチングすることができ、ZVSを実現できる。
【0069】
図11は、第2構成例に係るコントローラIC200Bの回路図である。タイミング発生器280Bは、第1電流センスアンプ282_1、第2電流センスアンプ282_2、第1コンパレータ284_1、第2コンパレータ284_2を含む。
【0070】
第1電流センスアンプ282_1は、第1電流検出信号V
CS1を増幅する。第1コンパレータ284_1は、増幅後の第1電流検出信号V
CS1を、第1しきい値V
TH1と比較し、比較結果を示す第1タイミング信号TMG1を生成する。第1しきい値V
TH1は、
図8に示した励磁電流のピークIpにもとづいて定めることができる。つまり、第1コンパレータ284_1は、第1コイル電流I
L1を、電流Ipに相当する正のしきい値と比較しており、第1タイミング信号TMG1は、I
L1<Ipとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0071】
同様に、第2電流センスアンプ282_2は、第2電流検出信号V
CS2を増幅する。第2コンパレータ284_2は、増幅後の第2電流検出信号V
CS2を、第2しきい値V
TH2と比較し、比較結果を示す第2タイミング信号TMG2を生成する。第2しきい値V
TH2は、
図8に示した励磁電流のピークIpにもとづいて定めることができる。つまり、第2コンパレータ284_2は、第2コイル電流I
L2を、電流Ipに相当する正のしきい値と比較しており、第2タイミング信号TMG2は、I
L2<Ipとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0072】
制御ロジック回路210は、第1タイミング信号TMG1のアサートに応答して、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移し、第2タイミング信号TMG2のアサートに応答して、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移する。
【0073】
図12は、
図11のコントローラIC200Bの動作波形図である。状態遷移のための電流の検出ポイントに丸を付している。
【0074】
第2構成例に係るコントローラIC200Bによれば、第1コイル電流IL1および第2コイル電流IL2それぞれを、正のしきい値Ipと比較することにより、共振状態でスイッチングすることができ、ZVSを実現できる。
【0075】
図13は、第3構成例に係るコントローラIC200Cの回路図である。コントローラIC200Cは、1個の電流検出ピンCS1を備える。電流検出ピンCS1には、第1コイル電流I
L1を示す電流検出信号V
CS1が入力される。
【0076】
タイミング発生器280Cは、電流センスアンプ282、第1コンパレータ284_1、第2コンパレータ284_2を含む。
【0077】
電流センスアンプ282は、電流検出信号V
CS1を増幅する。第1コンパレータ284_1は、増幅後の電流検出信号V
CS1を、第1しきい値V
TH1と比較し、比較結果を示す第1タイミング信号TMG1を生成する。第1しきい値V
TH1は、
図8に示した励磁電流のピークIpにもとづいて定めることができる。つまり、第1コンパレータ284_1は、第1コイル電流I
L1を、電流Ipに相当する正のしきい値と比較しており、第1タイミング信号TMG1は、I
L1<Ipとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0078】
同様に、第2コンパレータ284_2は、増幅後の電流検出信号V
CS1を、第2しきい値V
TH2と比較し、比較結果を示す第2タイミング信号TMG2を生成する。第2しきい値V
TH2は、
図8に示した励磁電流のボトムInにもとづいて定めることができる。つまり、第2コンパレータ284_2は、第1コイル電流I
L1を、電流Inに相当する負のしきい値と比較しており、第2タイミング信号TMG2は、I
L2<Inとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0079】
制御ロジック回路210は、第1タイミング信号TMG1のアサートに応答して、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移し、第2タイミング信号TMG2のアサートに応答して、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移する。
【0080】
図14は、
図13のコントローラIC200Cの動作波形図である。状態遷移のための電流の検出ポイントに丸を付している。
【0081】
第3構成例に係るコントローラIC200Cによれば、第1コイル電流IL1を、正のしきい値Ipおよび負のしきい値Inと比較することにより、共振状態でスイッチングすることができ、ZVSを実現できる。
【0082】
図15は、第4構成例に係るコントローラIC200Dの回路図である。コントローラIC200Cは、1個の電流検出ピンCS2を備える。電流検出ピンCS2には、第2コイル電流I
L2を示す電流検出信号V
CS2が入力される。
【0083】
タイミング発生器280Cは、電流センスアンプ282、第1コンパレータ284_1、第2コンパレータ284_2を含む。
【0084】
電流センスアンプ282は、電流検出信号V
CS2を増幅する。第1コンパレータ284_1は、増幅後の電流検出信号V
CS2を、第1しきい値V
TH1と比較し、比較結果を示す第1タイミング信号TMG1を生成する。第1しきい値V
TH1は、
図8に示した励磁電流のボトムInにもとづいて定めることができる。つまり、第1コンパレータ284_1は、第2コイル電流I
L2を、電流Inに相当する負のしきい値と比較しており、第1タイミング信号TMG1は、I
L1<Inとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0085】
同様に、第2コンパレータ284_2は、増幅後の電流検出信号V
CS2を、第2しきい値V
TH2と比較し、比較結果を示す第2タイミング信号TMG2を生成する。第2しきい値V
TH2は、
図8に示した励磁電流のピークIpにもとづいて定めることができる。つまり、第2コンパレータ284_2は、第2コイル電流I
L2を、電流Ipに相当する負のしきい値と比較しており、第2タイミング信号TMG2は、I
L2<Ipとなるとアサート(たとえばハイ)される。
【0086】
制御ロジック回路210は、第1タイミング信号TMG1のアサートに応答して、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移し、第2タイミング信号TMG2のアサートに応答して、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移する。
【0087】
図16は、
図15のコントローラIC200Dの動作波形図である。状態遷移のための電流の検出ポイントに丸を付している。
【0088】
第4構成例に係るコントローラIC200Dによれば、第2コイル電流IL2を、正のしきい値Ipおよび負のしきい値Inと比較することにより、共振状態でスイッチングすることができ、ZVSを実現できる。
【0089】
図17は、電流検出の一例を示す回路図である。この例では、第1インダクタL1と直列に、センス抵抗Rsが挿入されており、センス抵抗Rsの電圧降下が、電流検出信号V
CSとしてコントローラIC200に供給される。
【0090】
図18は、電流検出の別の一例を示す回路図である。この例では、第2スイッチS2のオン抵抗を利用して、第1コイル電流I
L2が検出される。電流検出ピンCSは、第2スイッチS2のドレインと接続され、第2スイッチS2のドレインソース間電圧が、電流検出信号V
CSとして入力されている。
【0091】
(用途)
図19は、直列キャパシタ降圧コンバータ100を備える電子機器700の一例を示す図である。電子機器700の好適な一例はサーバーである。元来、サーバーには12Vの電源線が引き込まれていたため、内部回路710は12Vで動作するように設計されている。内部回路710は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、LAN(Local Area Network)のインタフェース回路と、12Vの電圧を降圧するDC/DCコンバータなどを含みうる。
【0092】
近年、電線に流れる電流を減らすために、バス電圧を12Vから48Vに置き換える動きが進められている。この場合に、48Vの電源電圧を12Vに降圧する電源回路720が必要となる。上述したゲインが1/4倍の直列キャパシタ降圧コンバータ100は、こうした電源回路720に好適に用いることができる。
【0093】
電子機器700はサーバーに限定されず、車載機器であってもよい。従来の自動車のバッテリは12Vあるいは24Vが主流であるが、ハイブリッド車両では、48Vシステムが採用される場合があり、この場合も48Vのバッテリ電圧を、12Vに変換する電源回路が必要とされる。このような場合に、1/4倍の直列キャパシタ降圧コンバータ100を好適に利用することができる。
【0094】
その他、電子機器700は、産業機器、OA機器であってもよいし、オーディオ機器などの民生機器であってもよい。
【0095】
(付記)
本開示に含まれる技術は、以下のように把握することができる。
【0096】
(項目1)
直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記コントローラ回路は、
前記カップルドインダクタに流れる電流としきい値の比較結果にもとづいて、前記直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチから前記第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、
前記複数の制御信号に応じて、前記第1スイッチから前記第4スイッチを駆動する第1ドライバから第4ドライバと、
を備える、コントローラ回路。
【0097】
(項目2)
前記タイミング発生器は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目1に記載のコントローラ回路。
【0098】
(項目3)
前記タイミング発生器は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目1に記載のコントローラ回路。
【0099】
(項目4)
前記タイミング発生器は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目1に記載のコントローラ回路。
【0100】
(項目5)
前記タイミング発生器は、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を発生する第1コンパレータと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生する第2コンパレータと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目1に記載のコントローラ回路。
【0101】
(項目6)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から5のいずれかに記載のに記載のコントローラ回路。
【0102】
(項目7)
直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、
前記主回路に含まれる複数のスイッチを駆動する項目1から6のいずれかに記載のコントローラ回路と、
を備える、直列キャパシタ降圧コンバータ。
【0103】
(項目8)
直列キャパシタ降圧コンバータの制御方法であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記制御方法は、
前記カップルドインダクタに流れる電流としきい値を比較し、比較結果にもとづくタイミング信号を生成するステップと、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチから前記第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成するステップと、
前記複数の制御信号に応じて、前記第1スイッチから前記第4スイッチを駆動するステップと、
を備える、制御方法。
【0104】
(項目9)
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を発生するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目8に記載の制御方法。
【0105】
(項目10)
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を生成するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目8に記載の制御方法。
【0106】
(項目11)
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を正の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流を負の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を生成するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目8に記載の制御方法。
【0107】
(項目12)
前記タイミング信号を生成するステップは、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を負の第1しきい値と比較し、比較結果にもとづく第1比較信号を生成するステップと、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流を正の第2しきい値と比較し、比較結果にもとづく第2比較信号を生成するステップと、
を含み、前記第1比較信号および前記第2比較信号が、前記タイミング信号である、項目8に記載の制御方法。
【0108】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示に含まれ、また本発明の範囲を構成しうることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0109】
100 直列キャパシタ降圧コンバータ
102 入力ライン
104 出力ライン
106 接地ライン
110 主回路
112 カップルドインダクタ
Lk 漏れインダクタンス
Lm 励磁インダクタンス
L1 第1インダクタ
L2 第2インダクタ
Cr 直列キャパシタ
S1 第1スイッチ
S2 第2スイッチ
S3 第3スイッチ
S4 第4スイッチ
Cout 出力キャパシタ
200 コントローラIC
210 制御ロジック回路
DR ドライバ
280 タイミング発生器
282 電流センスアンプ
282_1 第1電流センスアンプ
282_2 第2電流センスアンプ
284_1 第1コンパレータ
284_2 第2コンパレータ