(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024528
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】直列キャパシタ降圧コンバータおよびそのコントローラ回路および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127429
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 明大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB61
5H730DD04
5H730EE37
5H730EE59
5H730FD31
5H730FF05
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG07
(57)【要約】
【課題】ZVS動作を実現する。
【解決手段】コントローラIC200は、直列キャパシタ降圧コンバータ100を制御する。タイミング発生器260は、直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号TMGを生成する。制御ロジック回路210は、タイミング信号TMGと同期して制御信号を生成する。タイミング調節部270は、第1状態と第2状態の間の遷移のタイミングにおいて、カップルドインダクタ112に流れる電流にもとづいて、タイミング発生器260が発生するタイミング信号TMGのタイミングを調節する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記コントローラ回路は、
前記直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチがオンである第2状態をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチそれぞれのオン、オフを規定する第1制御信号、第2制御信号、第3制御信号および第4制御信号を生成する制御ロジック回路と、
前記第1制御信号、前記第2制御信号、前記第3制御信号および前記第4制御信号に応じて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチを駆動する第1ドライバ、第2ドライバ、第3ドライバおよび第4ドライバと、
前記第1状態と前記第2状態の間の遷移のタイミングにおいて前記カップルドインダクタに流れる電流にもとづいて、前記タイミング発生器が発生する前記タイミング信号のタイミングを調節するタイミング調節部と、
を備える、コントローラ回路。
【請求項2】
前記タイミング発生器は、前記タイミング信号であるデューティサイクルが50%のクロック信号を生成するオシレータを含み、
前記制御ロジック回路は、前記クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジをトリガとして状態遷移を行い、
前記タイミング調節部は、前記オシレータの発振周波数を調節する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項3】
前記タイミング調節部は、
前記第2状態から前記第1状態に遷移するタイミングにおける、前記第1インダクタに流れる第1コイル電流と、負のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、請求項2に記載のコントローラ回路。
【請求項4】
前記タイミング調節部は、
前記第2状態から前記第1状態に遷移するタイミングにおける、前記第2インダクタに流れる第2コイル電流と、正のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、請求項2に記載のコントローラ回路。
【請求項5】
前記タイミング調節部は、
前記第1状態から前記第2状態に遷移するタイミングにおける、前記第1インダクタに流れる第1コイル電流と、正のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、請求項2に記載のコントローラ回路。
【請求項6】
前記タイミング調節部は、
前記第1状態から前記第2状態に遷移するタイミングにおける、前記第2インダクタに流れる第2コイル電流と、負のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、請求項2に記載のコントローラ回路。
【請求項7】
前記タイミング調節部は、
前記第2状態から前記第1状態に遷移するタイミングにおいて、前記第1インダクタに流れる第1コイル電流および前記第2インダクタに流れる第2コイル電流の一方としきい値を比較し、
前記第1状態から前記第2状態に遷移するタイミングにおいて、前記第1コイル電流および前記第2コイル電流の他方としきい値を比較し、
2つの比較結果にもとづいて、前記第1状態と前記第2状態それぞれの長さを調節する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項8】
前記タイミング発生器は、発振周波数およびデューティサイクルが制御可能なオシレータを含み、
前記タイミング調節部は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流の比較結果にもとづいて、前記発振周波数と前記デューティサイクルの一方を調節し、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流の比較結果にもとづいて、前記発振周波数と前記デューティサイクルの他方を調節する、請求項7に記載のコントローラ回路。
【請求項9】
前記タイミング発生器は、
前記第1状態の長さを規定する第1タイマーと、
前記第2状態の長さを規定する第2タイマーと、
を含み、
前記タイミング調節部は、前記第1コイル電流の比較結果にもとづいて、前記第1タイマーおよび前記第2タイマーの一方の計測時間を調節し、前記第2コイル電流の比較結果にもとづいて、前記第1タイマーおよび前記第2タイマーの他方の計測時間を調節する、請求項7に記載のコントローラ回路。
【請求項10】
ひとつの半導体基板に一体集積化される請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項11】
直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、
前記主回路に含まれる複数のスイッチを駆動する請求項1から10のいずれかに記載のコントローラ回路と、
を備える、直列キャパシタ降圧コンバータ。
【請求項12】
直列キャパシタ降圧コンバータの制御方法であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記制御方法は、
前記直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するステップと、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチがオンである第2状態をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すステップと、
前記カップルドインダクタに流れる電流にもとづいて、前記タイミング信号のタイミングを調節するステップと、
を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直列キャパシタコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧よりも低い電圧を生成するために、降圧機能を持つDC/DCコンバータが使用される。降圧機能を持つDC/DCコンバータとしては、降圧(Buck)型、昇降圧型、Cuk型、Zeta型、Sepic型などが知られている。
【0003】
用途によっては、降圧コンバータのバリエーションであるインタリーブ型や直列キャパシタ(Series Capacitor)型が採用される。インタリーブ型は、Buckコンバータを並列に接続し、入力同士、出力同士を共通に接続したものである。複数のBuckコンバータがインタリーブ動作することにより、高効率動作が実現される。インタリーブ型は、通常のバックコンバータと同じ降圧比を有する。
【0004】
直列キャパシタ型の降圧コンバータは、フェーズ数が2であるインタリーブ型の修正と考えることができ、直列キャパシタが追加された構成を有する。直列キャパシタ型の降圧コンバータは、降圧比をインタリーブ型の1/2倍と小さくできるため、小さな降圧比が必要なアプリケーションに適している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Stefano Saggini, Shuai Jiang, Mario Ursino, Chenhao Nan, "A 99% Efficient Dual-Phase Resonant Switched-Capacitor-Buck Converter for 48 V Data Center Bus Conversions", 2019 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、ZVS動作が可能な直列キャパシタ降圧コンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路に関する。直列キャパシタ降圧コンバータは、入力ラインおよび出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1スイッチと、それぞれの第1端が出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、第1スイッチの第2端と第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、第1スイッチの第2端と第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、出力ラインと接続された出力キャパシタと、を備える。コントローラ回路は、直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、タイミング信号と同期して、第1スイッチおよび第4スイッチがオンである第1状態と、第2スイッチおよび第3スイッチがオンである第2状態をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチおよび第4スイッチそれぞれのオン、オフを規定する第1制御信号、第2制御信号、第3制御信号および第4制御信号を生成する制御ロジック回路と、第1制御信号、第2制御信号、第3制御信号および第4制御信号に応じて、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチおよび第4スイッチを駆動する第1ドライバ、第2ドライバ、第3ドライバおよび第4ドライバと、第1状態と前記第2状態の間の遷移のタイミングにおいてカップルドインダクタに流れる電流にもとづいて、タイミング発生器が発生するタイミング信号のタイミングを調節するタイミング調節部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、ZVS動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータの回路図である。
【
図2】
図2は、第1状態φ1における直列キャパシタ降圧コンバータ(主回路)の等価回路図である。
【
図3】
図3は、第2状態φ2における直列キャパシタ降圧コンバータ(主回路)の等価回路図である。
【
図4】
図4は、直列キャパシタ降圧コンバータの電流波形図である。
【
図5】
図5は、直列キャパシタ降圧コンバータの電流波形図である。
【
図6】
図6は、デッドタイムを考慮した直列キャパシタ降圧コンバータの動作を説明するタイムチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコントローラICのブロック図である。
【
図8】
図8は、スイッチング周波数が共振周波数と等しい場合の、カップルドインダクタの電流を示す図である。
【
図9】
図9は、タイミング調節部の動作を説明する波形図である。
【
図10】
図10は、実施例1に係るコントローラICの回路図である。
【
図13】
図13は、実施例2に係るコントローラICの回路図である。
【
図14】
図14は、実施例3に係るコントローラICの回路図である。
【
図15】
図15は、直列キャパシタ降圧コンバータを備える電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係るコントローラ回路は、直列キャパシタ降圧コンバータを制御する。直列キャパシタ降圧コンバータは、入力ラインおよび出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1スイッチと、それぞれの第1端が出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、第1スイッチの第2端と第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、第1スイッチの第2端と第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、出力ラインと接続された出力キャパシタと、を備える。コントローラ回路は、直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、タイミング信号と同期して、第1スイッチおよび第4スイッチがオンである第1状態と、第2スイッチおよび第3スイッチがオンである第2状態をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチおよび第4スイッチそれぞれのオン、オフを規定する第1制御信号、第2制御信号、第3制御信号および第4制御信号を生成する制御ロジック回路と、第1制御信号、第2制御信号、第3制御信号および第4制御信号に応じて、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチおよび第4スイッチを駆動する第1ドライバ、第2ドライバ、第3ドライバおよび第4ドライバと、第1状態と前記第2状態の間の遷移のタイミングにおいてカップルドインダクタに流れる電流にもとづいて、タイミング発生器が発生するタイミング信号のタイミングを調節するタイミング調節部と、を備える。
【0013】
この構成によれば、状態遷移するタイミングにおいて、カップルドインダクタに流れる電流が、あるしきい値に近づくように帰還をかけることにより、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)の条件が成立するようになり、効率を改善できる。
【0014】
一実施形態において、タイミング発生器は、タイミング信号であるデューティサイクルが50%のクロック信号を生成するオシレータを含んでもよい。制御ロジック回路は、クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジをトリガとして状態遷移を行い、タイミング調節部は、オシレータの発振周波数を調節してもよい。
【0015】
一実施形態において、タイミング調節部は、第2状態から第1状態に遷移するタイミングにおける、第1インダクタに流れる第1コイル電流と、負のしきい値との比較結果にもとづいて、オシレータの発振周波数を調節してもよい。
【0016】
一実施形態において、タイミング調節部は、第2状態から第1状態に遷移するタイミングにおける、第2インダクタに流れる第2コイル電流と、正のしきい値との比較結果にもとづいて、オシレータの発振周波数を調節してもよい。
【0017】
一実施形態において、タイミング調節部は、第1状態から第2状態に遷移するタイミングにおける、第1インダクタに流れる第1コイル電流と、正のしきい値との比較結果にもとづいて、オシレータの発振周波数を調節してもよい。
【0018】
一実施形態において、タイミング調節部は、第1状態から第2状態に遷移するタイミングにおける、第2インダクタに流れる第2コイル電流と、負のしきい値との比較結果にもとづいて、オシレータの発振周波数を調節してもよい。
【0019】
一実施形態において、タイミング調節部は、第2状態から第1状態に遷移するタイミングにおいて、第1インダクタに流れる第1コイル電流および第2インダクタに流れる第2コイル電流の一方としきい値を比較し、第1状態から第2状態に遷移するタイミングにおいて、第1コイル電流および第2コイル電流の他方としきい値を比較し、2つの比較結果にもとづいて、第1状態と第2状態それぞれの長さを調節してもよい。
【0020】
一実施形態において、タイミング発生器は、発振周波数およびデューティサイクルが制御可能なオシレータを含んでもよい。タイミング調節部は、第1インダクタに流れる第1コイル電流の比較結果にもとづいて、発振周波数とデューティサイクルの一方を調節し、第2インダクタに流れる第2コイル電流の比較結果にもとづいて、発振周波数とデューティサイクルの他方を調節してもよい。
【0021】
一実施形態において、タイミング発生器は、第1状態の長さを規定する第1タイマーと、第2状態の長さを規定する第2タイマーと、を含んでもよい。タイミング調節部は、第1インダクタに流れる第1コイル電流の比較結果にもとづいて、第1タイマーおよび第2タイマーの一方の計測時間を調節し、第2インダクタに流れる第2コイル電流の比較結果にもとづいて、第1タイマーおよび第2タイマーの他方の計測時間を調節してもよい。
【0022】
一実施形態において、コントローラ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0023】
一実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータは、直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、主回路に含まれる複数のスイッチを駆動する上述のいずれかのコントローラ回路と、を備える。
【0024】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0028】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0029】
図1は、実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータ100の回路図である。直列キャパシタ降圧コンバータ100は、入力ライン102に供給された入力電圧Vinを降圧し、降圧後の出力電圧Voutを出力ライン104に発生する。
【0030】
直列キャパシタ降圧コンバータ100は、主回路110およびコントローラIC(Integrated Circuit)200を備える。コントローラIC200は、ひとつの半導体基板に集積化されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0031】
主回路110は、第1スイッチS1~第4スイッチS4、カップルドインダクタ112、直列キャパシタCr、出力キャパシタCoutを備える。
【0032】
第1スイッチS1は、第1端が入力ライン102と接続される。カップルドインダクタ112は、トランスであり、磁気的に結合する第1インダクタL1および第2インダクタL2を含む。第1インダクタL1および第2インダクタL2は、等しいインダクタンスLを有しており、また相互インダクタンスMを有する。第1インダクタL1および第2インダクタL2それぞれの第1端は、出力ライン104と接続される。
【0033】
第2スイッチS2は、第1インダクタL1の第2端と接地の間に接続される。直列キャパシタCrは、第1スイッチS1の第2端と第1インダクタL1の第2端の間に接続される。第3スイッチS3は、第1スイッチS1の第2端と第2インダクタL2の第2端の間に接続される。第4スイッチS4は、第2インダクタL2の第2端と接地の間に接続される。出力キャパシタCoutは、出力ライン104と接地の間に接続される。
【0034】
この例では、第1スイッチS1~第4スイッチS4がすべてNチャンネルMOSFETとして示されるがその限りでなく、その他のトランジスタを用いてもよい。また下側の第2スイッチS2および第4スイッチS4は、ダイオードなどの整流素子であってもよい。
【0035】
コントローラIC200は、第1スイッチS1~第4スイッチS4を制御し、出力ライン104に出力電圧Voutを発生させる。具体的には、コントローラIC200は、第1状態φ1と第2状態φ2を、デッドタイムTDを挟みながら、所定のスイッチング周波数fSWで交互に繰り返す。
第1状態φ1:
第1スイッチS1=ON
第2スイッチS2=OFF
第3スイッチS3=OFF
第4スイッチS4=ON
【0036】
第2状態φ2:
第1スイッチS1=OFF
第2スイッチS2=ON
第3スイッチS3=ON
第4スイッチS4=OFF
【0037】
デッドタイムTD:
第1スイッチS1=OFF
第2スイッチS2=OFF
第3スイッチS3=OFF
第4スイッチS4=OFF
【0038】
第1状態φ1、第2状態φ2それぞれの長さがTONであるとき、スイッチング周波数fSWは、1/(2×TON)である。言い換えると、スイッチング周波数fSWで動作するとは、第1状態φ1および第2状態φ2を、TON=1/(2×fSW)の長さで繰り返すことをいう。
【0039】
以上が直列キャパシタ降圧コンバータ100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0040】
図2は、第1状態φ1における直列キャパシタ降圧コンバータ100(主回路110)の等価回路図である。オンであるスイッチS1,S4は、単なる配線として示している。またカップルドインダクタ112は、励磁インダクタンスLmと、漏れインダクタンスLkを含む等価回路として示している。
【0041】
第1状態φ1では、直列キャパシタCr、第1インダクタL1(漏れインダクタンスLk)および出力キャパシタCoutが直列共振回路を形成しており、この経路に、共振電流I1が流れる。第2インダクタL2には、第1インダクタL1に流れる共振電流I1のレプリカである共振電流I1’と、励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流Im2の合計電流が流れる。
【0042】
図3は、第2状態φ2における直列キャパシタ降圧コンバータ100(主回路110)の等価回路図である。オンであるスイッチS2,S3は、単なる配線として示している。
【0043】
第2状態φ2では、直列キャパシタCr、漏れインダクタンスLkおよび出力キャパシタCoutが直列共振回路を形成しており、この経路に、共振電流I2が流れる。第1インダクタL1には、第2インダクタL2に流れる共振電流I2のレプリカである共振電流I2’と、励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流Im1の合計電流が流れる。
【0044】
第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返すと、定常状態では、直列キャパシタCrの両端間電圧は、Vin/2となり、カップルドインダクタ112に、残りのVin/2が印加される。第1インダクタL1と第2インダクタL2のインダクタンスが等しいとき、出力ライン104には、Vinの1/4倍の出力電圧Voutが発生する。
【0045】
直列キャパシタ降圧コンバータ100が、ZVS(Zero Voltage Switching)するための条件は、以下の通りである。
【0046】
・第1状態φ1から第2状態φ2への遷移
第1状態φ1の直後のデッドタイムTD中において、I1≧0であるとき、第2スイッチS2のボディダイオードに電流I1が流れており、第2スイッチS2の両端間電圧が小さくなる。このときに、第2状態φ2に遷移して第2スイッチS2をターンオンすると、第2スイッチS2のZVSが成立する。なお、電流I1,I2は、出力ライン104に向かう向きを正にとる。
【0047】
またデッドタイムTD中において、I2<0であるときに、回生電流によって、第3スイッチS3と第4スイッチS4の接続ノードの電圧が上昇し、第3スイッチS3の両端間電圧が小さくなる。このときに、第2状態φ2に遷移して第3スイッチS3がターンオンすると、第3スイッチS3のZVSが成立する。
【0048】
・第2状態φ2から第1状態φ1への遷移
第2状態φ2の直後のデッドタイムTD中において、I1<0であるとき、回生電流によって、第1スイッチS1と第2スイッチS2の接続ノードの電圧が上昇し、第1スイッチS1の両端間電圧が小さくなる。このときに第1状態に遷移して、第1スイッチS1をターンオンすると、第1スイッチS1のZVSが成立する。
【0049】
またデッドタイム中において、I2≧0であるとき、第4スイッチS4のボディダイオードに電流I2が流れており、第4スイッチS4の両端間電圧が小さくなっている。このときに、第1状態φ1に遷移して第4スイッチS4をターンオンすると、第4スイッチS4のZVSが成立する。
【0050】
図4は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の電流波形図である。スイッチング周波数f
swは、主回路110の共振周波数f
0と一致しており、共振電流がゼロとなるタイミングで、第1状態φ1と第2状態φ2が遷移する。ここではデッドタイムは省略している。
図4には、第1インダクタL1と第2スイッチS2の接続ノードの寄生容量、第2インダクタL2と第4スイッチS4の接続ノードの寄生容量を無視した場合の、電流波形を示している。
【0051】
第1状態φ1の終わりのタイミングでは、第1インダクタL1の電流I1は正もしくはゼロ(I1≧0)、第2インダクタL2の電流I2は負(I2<0)であるから、上述のZVSの条件を満たしている。
【0052】
同様に、第2状態φ2の終わりのタイミングでは、第1インダクタL1の電流I1は負(I1<0)であり、第2インダクタL2の電流I2は正もしくはゼロ(I2≧0)であるから、上述のZVSの条件を満たしている。
【0053】
このように、直列キャパシタ降圧コンバータ100は、共振周波数でスイッチングすることにより、ZVSの条件を満たすことができ、高効率動作が可能である。
【0054】
図5は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の電流波形図である。
図4では、MOSFETのドレインの寄生容量を無視した波形を示したが、実際には、寄生容量が存在する。この寄生容量により、デッドタイムを跨ぐ電流の不連続が抑制される。各電流I
1,I
2は連続となり、第1状態φ1と第2状態φ2では、デッドタイムに関して時間軸上で対称な波形を有する。
【0055】
図6は、デッドタイムを考慮した直列キャパシタ降圧コンバータ100の動作を説明するタイムチャートである。
図6は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数f
0と等しいときの動作を示しており、第1状態φ1と第2状態φ2の長さT
ONはそれぞれ、共振周期T
r(=1/f
r)の1/2である。
【0056】
スイッチング周波数fSWを、共振周波数f0と完全に一致させることができれば、ZVSの条件が常に成り立つため、高効率動作が可能となる。しかしながら、スイッチング周波数fSWを固定すると、ZVSの条件を満たすことは難しく、効率が低下するおそれがある。以下では、ZVSの条件を成立させることが可能なコントローラIC200について説明する。
【0057】
図7は、実施形態に係るコントローラIC200のブロック図である。コントローラIC200は、制御ロジック回路210、タイミング発生器260、タイミング調節部270、ドライバDR1~DR4を備える。コントローラIC200は、第1出力ピンOUT1~第4出力ピンOUT4、電流検出ピンCSを備える。第1出力ピンOUT1~第4出力ピンOUT4は、第1スイッチS1~第4スイッチS4のゲートと接続される。電流検出ピンCSには、カップルドインダクタ112に流れる電流を示す電流検出信号V
CSが入力される。カップルドインダクタ112に流れる電流は、第1インダクタL1に流れる第1コイル電流I
L1、第2インダクタL2に流れる第2コイル電流I
L2のいずれか一方、もしくは両方を指すものとする。
【0058】
タイミング発生器260は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の第1状態φ1と第2状態φ2の状態遷移のタイミングを示すタイミング信号TMGを生成する。タイミング信号TMGは、単一の信号であってもよいし、複数の信号の組み合わせであってもよい。
【0059】
制御ロジック回路210は、タイミング信号TMGと同期して、第1スイッチS1および第4スイッチS4がオンである第1状態φ1と、第2スイッチφ2および第3スイッチS3がオンである第2状態φ2をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチS1~第4スイッチS4それぞれのオン、オフを規定する第1制御信号~第4制御信号を生成する。
【0060】
第1ドライバDR1~第4ドライバDR4はそれぞれ、対応する制御信号にもとづいて、第1スイッチS1~第4スイッチS4のうち対応するひとつを駆動する。
【0061】
タイミング調節部270は、第1状態φ1と第2状態φ2の間の状態遷移のタイミングにおいてカップルドインダクタ112に流れる電流にもとづいて、タイミング発生器260が発生するタイミング信号TMGのタイミング、すなわち第1状態φ1と第2状態φ2の間の遷移タイミングを調節する。
【0062】
以上がコントローラIC200の基本構成である。続いて、タイミング調節部270の動作について、いくつかの例を説明する。
【0063】
図8は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数と等しい場合の、カップルドインダクタ112の電流I
L1,I
L2を示す図である。状態遷移のタイミングt
12,t
21において、共振電流I
1,I
2はゼロであり、電流I
L1,I
L2は、破線で示す励磁電流Imのみを含んでいる。
【0064】
定常状態において、インダクタL1,L2の両端間電圧をVL、インダクタL1,L2のインダクタンスを等しくLとすると、励磁電流Imの傾きは、
ΔIm/Δt=VL/L
となる。定常状態において、VL=Vin/4である。第1状態φ1(または第2状態φ2)の間の励磁電流Imの変化量ΔImは、
ΔIm=Tr/2×VL/L
となる。励磁電流Imの時間平均はゼロであるから、共振状態において、励磁電流Imのピークとボトムはそれぞれ、Ip=Tr/4×VL/L、In=-Tr/4×VL/Lとなる。
【0065】
図9は、タイミング調節部270の動作を説明する波形図である。
図9の上段は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数より高い場合、中段は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数と等しい場合、下段は、スイッチング周波数f
SWが共振周波数より低い場合を示す。タイミング調節部270には、負のしきい値I
THNが定められる。このしきい値I
THNは、
図8の励磁電流Imのボトムと等しく、またはその近傍に定めることができる。
【0066】
図9の上段に示すように、スイッチング周波数f
SWが共振周波数より高い場合、タイミングt
21におけるコイル電流I
L1は、しきい値I
THNよりも低くなる。反対に、
図9の下段に示すように、スイッチング周波数f
SWが共振周波数より低い場合、タイミングt
21におけるコイル電流I
L1は、しきい値I
THNよりも高くなる。
【0067】
そこでタイミング調節部270は、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移するタイミングt21における、第1インダクタL1に流れる第1コイル電流IL1にもとづいて、それより後のサイクルにおける状態遷移の遷移タイミング、すなわち周期を調節する。ここでは理解の容易化のために、デッドタイムTDを省略して示しているが、実際にはデッドタイムTDが挿入される。タイミングt21は、デッドタイムTDに入る直前であってもよいし、デッドタイムTDから第1状態φ1に遷移した直後であってもよい。
【0068】
タイミング調節部270は、状態遷移のタイミングt21における第1コイル電流IL1と、負のしきい値電流ITHNを比較し、比較結果に応じて、状態遷移のタイミングを調節することができる。具体的にはタイミング調節部270は、タイミングt21において、IL1<ITHNであるとき、次の状態遷移のタイミングを遅らせる、言い換えると、スイッチング周波数fSWを低下させる。
【0069】
反対に、タイミング調節部270は、タイミングt21において、IL1>ITHNであるとき、次の状態遷移のタイミングを早める、言い換えると、スイッチング周波数fSWを上昇させる。
【0070】
この制御を繰り返すことにより、状態遷移のタイミングt
21におけるコイル電流I
L1,I
L2が、
図8の電流Ip,Inに収束し、共振状態に近づいていく。これによりZVSの条件が満たされ、高効率動作が可能となる。
【0071】
(実施例1)
図10は、実施例1に係るコントローラIC200Aの回路図である。タイミング発生器260Aは、デューティサイクルが50%のクロック信号CLKを生成するオシレータ262であり、クロック信号CLKが、タイミング信号TMGとして制御ロジック回路210に供給される。制御ロジック回路210は、クロック信号CLKと同期して、具体的には、クロック信号CLKのエッジに応答して、第1状態φ1と第2状態φ2を切り替える。
【0072】
オシレータ262は、周波数設定信号F_SETに応じて、発振周波数が制御可能に構成される。タイミング調節部270Aには、制御ロジック回路210またはタイミング発生器260Aから、遷移タイミングt21を示す信号が入力される。タイミング調節部270Aは、遷移タイミングt21における第1コイル電流IL1にもとづいて、オシレータ262の発振周波数を制御する。
【0073】
たとえばタイミング調節部270Aは、電流センスアンプ272、コンパレータ274、カウンタ276を含む。電流センスアンプ272は、電流検出信号VCSを増幅する。コンパレータ274は、電流センスアンプ272の出力と、しきい値電流ITHNに相当するしきい値電圧VTHを比較し、アップダウン信号UP/DNを発生する。カウンタ276は、アップダウン信号UP/DNに応答して、周波数設定信号F_SETを上昇、または低下させる。コンパレータ274は、ヒステリシスコンパレータであってもよいし、ウィンドウコンパレータであってもよい。
【0074】
タイミング調節部270Aおよびタイミング発生器260Aは、デジタル回路で構成してもよいし、アナログ回路で構成してもよい。アナログ回路の場合、カウンタ276は、チャージポンプ回路に置き換えればよい。
【0075】
図11は、電流検出の一例を示す回路図である。この例では、第1インダクタL1と直列に、センス抵抗Rsが挿入されており、センス抵抗Rsの電圧降下が、電流検出信号V
CSとしてコントローラIC200に供給される。
【0076】
図12は、電流検出の別の一例を示す回路図である。この例では、第2スイッチS2のオン抵抗を利用して、第1コイル電流I
L2が検出される。電流検出ピンCSは、第2スイッチS2のドレインと接続され、第2スイッチS2のドレインソース間電圧が、電流検出信号V
CSとして入力されている。
【0077】
図11の方式は、第1状態φ1、第2状態φ2、デッドタイム中のいずれにおいても、電流を検出することが可能である。
図12の方式は、第2スイッチS2がオンである第2状態φ2の間のみ、電流検出が可能である。
【0078】
【0079】
(変形例1)
タイミング調節部270は、第1状態φ1から第2状態φ2への遷移タイミングt12における、第2コイル電流IL2にもとづいて、遷移タイミングを調整してもよい。この場合の制御は、第1コイル電流IL1にもとづく制御と同じである。
【0080】
(変形例2)
タイミング調節部270は、第1状態φ1から第2状態φ2への遷移タイミングt12における、第1コイル電流IL1にもとづいて、遷移タイミングを調整してもよい。この場合、タイミング調節部270は、状態遷移のタイミングt12における第1コイル電流IL1と、正のしきい値電流ITHPを比較し、比較結果に応じて、状態遷移のタイミングを調節することができる。具体的にはタイミング調節部270は、タイミングt12において、IL1>ITHPであるとき、次の状態遷移のタイミングを遅らせる、言い換えると、スイッチング周波数fSWを低下させる。反対にタイミング調節部270は、タイミングt12において、IL1<ITHPであるとき、次の状態遷移のタイミングを早める、言い換えると、スイッチング周波数fSWを上昇させる。
【0081】
(変形例3)
タイミング調節部270は、第2状態φ2から第1状態φ1への遷移タイミングt21における、第2コイル電流IL2にもとづいて、遷移タイミングを調整してもよい。この場合の制御は、変形例2と同様である。
【0082】
(変形例4)
タイミング調節部270は、第1コイル電流IL1と第2コイル電流IL2の両方にもとづいて、遷移タイミングを調整してもよい。
【0083】
(実施例2)
図13は、実施例2に係るコントローラIC200Bの回路図である。コントローラIC200Bでは、第1状態φ1と第2状態φ2の長さが独立に制御可能となっている。コントローラIC200Bは、2つの電流検出ピンCS1,CS2を備える。電流検出ピンCS1には、第1コイル電流I
L1を示す電流検出信号V
CS1が入力され、電流検出ピンCS2には、第2コイル電流I
L2を示す電流検出信号V
CS2が入力される。
【0084】
タイミング調節部270Bは、第1コイル電流IL1と、第2コイル電流IL2の両方にもとづいて、状態遷移のタイミングを調節する。具体的には、タイミング調節部270Bは、第1コイル電流IL1と第2コイル電流IL2のうちの一方と、しきい値の比較結果にもとづいて、第1状態φ1の長さTON1および第2状態φ2の長さTON2の一方を調節し、第1コイル電流IL1と第2コイル電流IL2のうちの他方と、しきい値の比較結果にもとづいて、第1状態φ1の長さTON1および第2状態φ2の長さTON2の他方を調節する。
【0085】
タイミング発生器260Bは、第1状態φ1の長さを規定する第1タイマー264_1、第2状態φ2の長さを規定する第2タイマー264_2を含む。
【0086】
制御ロジック回路210は、第2状態φ1から第1状態φ1に遷移すると、第1タイマー264_1にトリガ信号TRIG1を与える。第1タイマー264_1はトリガ信号TRIG1に応答して時間測定を開始し、制御信号T_SET1にもとづいて調節可能なオン時間TON1が経過すると、タイミング信号TMG1をアサートする。制御ロジック回路210は、タイミング信号TMG1のアサートに応答して、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移し、第2タイマー264_2にトリガ信号TRIG2を与える。第2タイマー264_2はトリガ信号TRIG2に応答して時間測定を開始し、制御信号T_SET2にもとづいて調節可能なオン時間TON2が経過すると、タイミング信号TMG2をアサートする。制御ロジック回路210は、タイミング信号TMG2のアサートに応答して、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移する。
【0087】
タイミング調節部270Bは、状態遷移のタイミングにおける第1コイル電流IL1および第2コイル電流IL2にもとづいて、制御信号T_SET1,T_SET2を生成し、オン時間TON1,TON2を調節する。
【0088】
タイミング調節部270Bの構成は、
図10のタイミング調節部270Aと同様である。電流センスアンプ272_#(#=1,2)は、電流検出ピンCS#の電流検出信号V
CS#を増幅する。コンパレータ274_#は、タイミング信号t
#が示すタイミングにおいて、増幅後の電流検出信号V
CS#をしきい値と比較し、アップダウン信号UP/DN#を生成する。カウンタ276_#は、アップダウン信号UP/DN#に応じて、制御信号T_SET#を増減させる。
【0089】
この例では、第1コイル電流IL1にもとづいて、第1状態φ1の長さTON1が調節され、第2コイル電流IL2にもとづいて、第2状態φ2の長さTON2が調節されることとなるが、その限りでない。たとえば、第2コイル電流IL2にもとづいて、第1状態φ1の長さTON1が調節され、第1コイル電流IL1にもとづいて、第2状態φ2の長さTON2が調節されてもよい。また、実施例1の変形例で説明したように、各電流は、正のしきい値と比較しても良いし、負のしきい値と比較してもよい。
【0090】
(実施例3)
図14は、実施例3に係るコントローラIC200Cの回路図である。タイミング発生器260Cは、デューティサイクルと周波数が独立に制御可能なクロック信号CLKを生成するオシレータ266を含む。タイミング調節部270Cは、オシレータ266のデューティサイクルと周波数のうちの一方を、第1コイル電流I
L1にもとづいて制御し、オシレータ266のデューティサイクルと周波数のうちの他方を、第2コイル電流I
L2にもとづいて制御してもよい。
【0091】
(用途)
図15は、直列キャパシタ降圧コンバータ100を備える電子機器700の一例を示す図である。電子機器700の好適な一例はサーバーである。元来、サーバーには12Vの電源線が引き込まれていたため、内部回路710は12Vで動作するように設計されている。内部回路710は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、LAN(Local Area Network)のインタフェース回路と、12Vの電圧を降圧するDC/DCコンバータなどを含みうる。
【0092】
近年、電線に流れる電流を減らすために、バス電圧を12Vから48Vに置き換える動きが進められている。この場合に、48Vの電源電圧を12Vに降圧する電源回路720が必要となる。上述したゲインが1/4倍の直列キャパシタ降圧コンバータ100は、こうした電源回路720に好適に用いることができる。
【0093】
電子機器700はサーバーに限定されず、車載機器であってもよい。従来の自動車のバッテリは12Vあるいは24Vが主流であるが、ハイブリッド車両では、48Vシステムが採用される場合があり、この場合も48Vのバッテリ電圧を、12Vに変換する電源回路が必要とされる。このような場合に、1/4倍の直列キャパシタ降圧コンバータ100を好適に利用することができる。
【0094】
その他、電子機器700は、産業機器、OA機器であってもよいし、オーディオ機器などの民生機器であってもよい。
【0095】
(付記)
本開示に含まれる技術は、以下のように把握することができる。
【0096】
(項目1)
直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記コントローラ回路は、
前記直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング発生器と、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチがオンである第2状態をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチそれぞれのオン、オフを規定する第1制御信号、第2制御信号、第3制御信号および第4制御信号を生成する制御ロジック回路と、
前記第1制御信号、前記第2制御信号、前記第3制御信号および前記第4制御信号に応じて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチを駆動する第1ドライバ、第2ドライバ、第3ドライバおよび第4ドライバと、
前記第1状態と前記第2状態の間の遷移のタイミングにおいて前記カップルドインダクタに流れる電流にもとづいて、前記タイミング発生器が発生する前記タイミング信号のタイミングを調節するタイミング調節部と、
を備える、コントローラ回路。
【0097】
(項目2)
前記タイミング発生器は、前記タイミング信号であるデューティサイクルが50%のクロック信号を生成するオシレータを含み、
前記制御ロジック回路は、前記クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジをトリガとして状態遷移を行い、
前記タイミング調節部は、前記オシレータの発振周波数を調節する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0098】
(項目3)
前記タイミング調節部は、
前記第2状態から前記第1状態に遷移するタイミングにおける、前記第1インダクタに流れる第1コイル電流と、負のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、項目2に記載のコントローラ回路。
【0099】
(項目4)
前記タイミング調節部は、
前記第2状態から前記第1状態に遷移するタイミングにおける、前記第2インダクタに流れる第2コイル電流と、正のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、項目2に記載のコントローラ回路。
【0100】
(項目5)
前記タイミング調節部は、
前記第1状態から前記第2状態に遷移するタイミングにおける、前記第1インダクタに流れる第1コイル電流と、正のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、項目2に記載のコントローラ回路。
【0101】
(項目6)
前記タイミング調節部は、
前記第1状態から前記第2状態に遷移するタイミングにおける、前記第2インダクタに流れる第2コイル電流と、負のしきい値との比較結果にもとづいて、前記オシレータの発振周波数を調節する、項目2に記載のコントローラ回路。
【0102】
(項目7)
前記タイミング調節部は、
前記第2状態から前記第1状態に遷移するタイミングにおいて、前記第1インダクタに流れる第1コイル電流および前記第2インダクタに流れる第2コイル電流の一方としきい値を比較し、
前記第1状態から前記第2状態に遷移するタイミングにおいて、前記第1コイル電流および前記第2コイル電流の他方としきい値を比較し、
2つの比較結果にもとづいて、前記第1状態と前記第2状態それぞれの長さを調節する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0103】
(項目8)
前記タイミング発生器は、発振周波数およびデューティサイクルが制御可能なオシレータを含み、
前記タイミング調節部は、
前記第1インダクタに流れる第1コイル電流の比較結果にもとづいて、前記発振周波数と前記デューティサイクルの一方を調節し、
前記第2インダクタに流れる第2コイル電流の比較結果にもとづいて、前記発振周波数と前記デューティサイクルの他方を調節する、項目7に記載のコントローラ回路。
【0104】
(項目9)
前記タイミング発生器は、
前記第1状態の長さを規定する第1タイマーと、
前記第2状態の長さを規定する第2タイマーと、
を含み、
前記タイミング調節部は、前記第1コイル電流の比較結果にもとづいて、前記第1タイマーおよび前記第2タイマーの一方の計測時間を調節し、前記第2コイル電流の比較結果にもとづいて、前記第1タイマーおよび前記第2タイマーの他方の計測時間を調節する、項目7に記載のコントローラ回路。
【0105】
(項目10)
ひとつの半導体基板に一体集積化される項目1から9のいずれかに記載のコントローラ回路。
【0106】
(項目11)
直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、
前記主回路に含まれる複数のスイッチを駆動する項目1から10のいずれかに記載のコントローラ回路と、
を備える、直列キャパシタ降圧コンバータ。
【0107】
(項目12)
直列キャパシタ降圧コンバータの制御方法であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端と接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1インダクタの第2端の間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端の間に接続された第3スイッチと、
前記第2インダクタの第2端と接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記制御方法は、
前記直列キャパシタ降圧コンバータの状態遷移のタイミングを示すタイミング信号を生成するステップと、
前記タイミング信号と同期して、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチがオンである第2状態をデッドタイムを挟みながら交互に繰り返すステップと、
前記カップルドインダクタに流れる電流にもとづいて、前記タイミング信号のタイミングを調節するステップと、
を備える、制御方法。
【0108】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示に含まれ、また本発明の範囲を構成しうることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0109】
100 直列キャパシタ降圧コンバータ
102 入力ライン
104 出力ライン
106 接地ライン
110 主回路
112 カップルドインダクタ
Lk 漏れインダクタンス
Lm 励磁インダクタンス
L1 第1インダクタ
L2 第2インダクタ
Cr 直列キャパシタ
S1 第1スイッチ
S2 第2スイッチ
S3 第3スイッチ
S4 第4スイッチ
Cout 出力キャパシタ
200 コントローラIC
210 制御ロジック回路
260 タイミング発生器
262 オシレータ
264_1 第1タイマー
264_2 第2タイマー
266 オシレータ
270 タイミング調節部
272 電流センスアンプ
274 コンパレータ
276 カウンタ