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特開2024-24529直列キャパシタ降圧コンバータおよびそのコントローラ回路および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024529
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】直列キャパシタ降圧コンバータおよびそのコントローラ回路および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127430
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 明大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB61
5H730DD04
5H730EE58
5H730FD21
5H730FF09
5H730FG01
5H730FG11
(57)【要約】
【課題】高効率動作が可能な直列キャパシタ降圧コンバータを提供する。
【解決手段】制御ロジック回路210は、第1スイッチS1と第4スイッチS4がオンである第1状態φ1と、第2スイッチS2と第3スイッチS3がオンである第2状態φ2と、を、デッドタイムTを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチS1から第4スイッチS4オン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する。デッドタイム調節回路290は、第1スイッチングノードSW1に生ずる第1スイッチング電圧VSW1を監視し、デッドタイムTの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける第1スイッチング電圧VSW1にもとづいて調節する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端である第1スイッチングノードと接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1スイッチングノードの間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端である第2スイッチングノードの間に接続された第3スイッチと、
前記第2スイッチングノードと接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記コントローラ回路は、
前記第1スイッチと前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチと前記第3スイッチがオンである第2状態と、を、デッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、前記第1スイッチから前記第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、
前記第1スイッチングノードと前記第2スイッチングノードの一方に生ずる第1スイッチング電圧を監視し、前記デッドタイムの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節するデッドタイム調節回路と、
を備える、コントローラ回路。
【請求項2】
前記デッドタイム調節回路は、前記第1タイミングにおける前記第1スイッチング電圧と、前記第2タイミングにおける前記第1スイッチング電圧の電位差を検出し、前記電位差と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、前記デッドタイムの長さを調節する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項3】
前記デッドタイム調節回路は、前記電位差が前記しきい値より大きいとき、前記デッドタイムの長さを長くする、請求項2に記載のコントローラ回路。
【請求項4】
前記デッドタイム調節回路は、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを短くする、請求項3に記載のコントローラ回路。
【請求項5】
前記デッドタイム調節回路は、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを維持する、請求項3に記載のコントローラ回路。
【請求項6】
前記デッドタイム調節回路は、前記第1スイッチングノードおよび前記第2スイッチングノードの他方に生ずる第2スイッチング電圧をさらに監視し、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、を、前記第1スイッチング電圧および前記第2スイッチング電圧にもとづいて独立に調節する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項7】
前記デッドタイム調節回路は、前記第1スイッチング電圧のみを監視し、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、の両方を、前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節する、請求項1に記載のコントローラ回路。
【請求項8】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から7のいずれかに記載のコントローラ回路。
【請求項9】
直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、
前記主回路を駆動する請求項1から7のいずれかに記載のコントローラ回路と、
を備える、直列キャパシタ降圧コンバータ。
【請求項10】
直列キャパシタ降圧コンバータの制御方法であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端である第1スイッチングノードと接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1スイッチングノードの間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端である第2スイッチングノードの間に接続された第3スイッチと、
前記第2スイッチングノードと接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記制御方法は、
前記第1スイッチと前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチと前記第3スイッチがオンである第2状態と、を、デッドタイムを挟みながら交互に繰り返すステップと、
前記第1スイッチングノードおよび前記第2スイッチングノードの一方に生ずる第1スイッチング電圧を監視するステップと、
前記デッドタイムの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節するステップと、
を備える、制御方法。
【請求項11】
前記調節するステップは、前記第1タイミングにおける前記第1スイッチング電圧と、前記第2タイミングにおける前記第1スイッチング電圧の電位差を検出し、前記電位差と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、前記デッドタイムの長さを調節する、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記調節するステップは、前記電位差が前記しきい値より大きいとき、前記デッドタイムの長さを長くする、請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記調節するステップは、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを短くする、請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記調節するステップは、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを維持する、請求項12に記載の制御方法。
【請求項15】
前記第1スイッチングノードおよび前記第2スイッチングノードの他方に生ずる第2スイッチング電圧をさらに監視するステップをさらに備え、
前記調節するステップは、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、を、前記第1スイッチング電圧および前記第2スイッチング電圧にもとづいて独立に調節する、請求項10に記載の制御方法。
【請求項16】
前記調節するステップは、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、の両方を、前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節する、請求項10に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直列キャパシタコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧よりも低い電圧を生成するために、降圧機能を持つDC/DCコンバータが使用される。降圧機能を持つDC/DCコンバータとしては、降圧(Buck)型、昇降圧型、Cuk型、Zeta型、Sepic型などが知られている。
【0003】
用途によっては、降圧コンバータのバリエーションであるインタリーブ型や直列キャパシタ(Series Capacitor)型が採用される。インタリーブ型は、Buckコンバータを並列に接続し、入力同士、出力同士を共通に接続したものである。複数のBuckコンバータがインタリーブ動作することにより、高効率動作が実現される。インタリーブ型は、通常のバックコンバータと同じ降圧比を有する。
【0004】
直列キャパシタ型の降圧コンバータは、フェーズ数が2であるインタリーブ型の修正と考えることができ、直列キャパシタが追加された構成を有する。直列キャパシタ型の降圧コンバータは、降圧比をインタリーブ型の1/2倍と小さくできるため、小さな降圧比が必要なアプリケーションに適している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Stefano Saggini, Shuai Jiang, Mario Ursino, Chenhao Nan, "A 99% Efficient Dual-Phase Resonant Switched-Capacitor-Buck Converter for 48 V Data Center Bus Conversions", 2019 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、高効率動作が可能な直列キャパシタ降圧コンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路に関する。直列キャパシタ降圧コンバータは、入力ラインおよび出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1スイッチと、それぞれの第1端が出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、第1インダクタの第2端である第1スイッチングノードと接地の間に接続された第2スイッチと、第1スイッチの第2端と第1スイッチングノードの間に接続された直列キャパシタと、第1スイッチの第2端と第2インダクタの第2端である第2スイッチングノードの間に接続された第3スイッチと、第2スイッチングノードと接地の間に接続された第4スイッチと、出力ラインと接続された出力キャパシタと、を備える。コントローラ回路は、第1スイッチと第4スイッチがオンである第1状態と、第2スイッチと第3スイッチがオンである第2状態と、を、デッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチから第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、第1スイッチングノードと第2スイッチングノードの一方に生ずる第1スイッチング電圧を監視し、デッドタイムの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける第1スイッチング電圧にもとづいて調節するデッドタイム調節回路と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、高効率動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータの回路図である。
図2図2は、第1状態における直列キャパシタ降圧コンバータ(主回路)の等価回路図である。
図3図3は、第2状態における直列キャパシタ降圧コンバータ(主回路)の等価回路図である。
図4図4は、直列キャパシタ降圧コンバータの電流波形図である。
図5図5は、直列キャパシタ降圧コンバータの電流波形図である。
図6図6は、デッドタイムを考慮した直列キャパシタ降圧コンバータの動作を説明するタイムチャートである。
図7図7は、第2状態から第1状態に遷移する間のデッドタイムにおける動作波形図である。
図8図8は、実施形態に係るコントローラICを備える直列キャパシタ降圧コンバータのブロック図である。
図9図9は、図8のコントローラICにおいてデッドタイムが短すぎる場合の動作を説明する波形図である。
図10図10は、図8のコントローラICにおいて、デッドタイムが最適である場合の動作を説明する波形図である。
図11図11は、図8のコントローラICにおいて、デッドタイムが長すぎる場合の動作を説明する波形図である。
図12図12は、一実施例に係るコントローラICを備える直列キャパシタ降圧コンバータの回路図である。
図13図13は、変形例1に係るコントローラICのブロック図である。
図14図14は、変形例2に係るコントローラICを備える直列キャパシタ降圧コンバータのブロック図である。
図15図15は、直列キャパシタ降圧コンバータを備える電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
本開示のある態様のコントローラ回路は、直列キャパシタ降圧コンバータを制御する。直列キャパシタ降圧コンバータは、入力ラインおよび出力ラインと、第1端が入力ラインと接続された第1スイッチと、それぞれの第1端が出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、第1インダクタの第2端である第1スイッチングノードと接地の間に接続された第2スイッチと、第1スイッチの第2端と第1スイッチングノードの間に接続された直列キャパシタと、第1スイッチの第2端と第2インダクタの第2端である第2スイッチングノードの間に接続された第3スイッチと、第2スイッチングノードと接地の間に接続された第4スイッチと、出力ラインと接続された出力キャパシタと、を備える。コントローラ回路は、第1スイッチと第4スイッチがオンである第1状態と、第2スイッチと第3スイッチがオンである第2状態と、を、デッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、第1スイッチから第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、第1スイッチングノードと第2スイッチングノードの一方に生ずる第1スイッチング電圧を監視し、デッドタイムの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける第1スイッチング電圧にもとづいて調節するデッドタイム調節回路と、を備える。
【0013】
この構成によると、第1タイミングと第2タイミングの電位差が小さくなるように、たとえば非ゼロの小さい値に近づくように、デッドタイムの長さを調節することで、ソフトスイッチングを実現できる。
【0014】
一実施形態において、デッドタイム調節回路は、第1タイミングにおける第1スイッチング電圧と、第2タイミングにおける第1スイッチング電圧の電位差を検出し、電位差と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、デッドタイムの長さを調節してもよい。
【0015】
一実施形態において、デッドタイム調節回路は、電位差がしきい値より大きいとき、デッドタイムの長さを長くしてもよい。
【0016】
一実施形態において、デッドタイム調節回路は、電位差がしきい値より小さいとき、デッドタイムの長さを短くしてもよい。
【0017】
一実施形態において、デッドタイム調節回路は、電位差がしきい値より小さいとき、デッドタイムの長さを維持してもよい。
【0018】
一実施形態において、デッドタイム調節回路は、第1スイッチングノードおよび第2スイッチングノードの他方に生ずる第2スイッチング電圧をさらに監視し、第1状態から第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、第2状態から第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、を、第1スイッチング電圧および第2スイッチング電圧にもとづいて独立に調節してもよい。
【0019】
一実施形態において、デッドタイム調節回路は、第1スイッチング電圧のみを監視し、第1状態から第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、第2状態から第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、の両方を、第1スイッチング電圧にもとづいて調節してもよい。
【0020】
一実施形態において、コントロール回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0021】
一実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータは、直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、主回路を駆動する上述のいずれかのコントローラ回路と、を備えてもよい。
【0022】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0026】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0027】
図1は、実施形態に係る直列キャパシタ降圧コンバータ100の回路図である。直列キャパシタ降圧コンバータ100は、入力ライン102に供給された入力電圧Vinを降圧し、降圧後の出力電圧Voutを出力ライン104に発生する。
【0028】
直列キャパシタ降圧コンバータ100は、主回路110およびコントローラIC(Integrated Circuit)200を備える。コントローラIC200は、ひとつの半導体基板に集積化されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0029】
主回路110は、第1スイッチS1~第4スイッチS4、カップルドインダクタ112、直列キャパシタCr、出力キャパシタCoutを備える。
【0030】
第1スイッチS1は、第1端が入力ライン102と接続される。カップルドインダクタ112は、トランスであり、磁気的に結合する第1インダクタL1および第2インダクタL2を含む。第1インダクタL1および第2インダクタL2は、等しいインダクタンスLを有しており、また相互インダクタンスMを有する。第1インダクタL1および第2インダクタL2それぞれの第1端は、出力ライン104と接続される。
【0031】
第2スイッチS2は、第1インダクタL1の第2端(第1スイッチングノードSW1)と接地の間に接続される。直列キャパシタCrは、第1スイッチS1の第2端と第1インダクタL1の第2端の間に接続される。第3スイッチS3は、第1スイッチS1の第2端と第2インダクタL2の第2端(第2スイッチングノードSW2)の間に接続される。第4スイッチS4は、第2インダクタL2の第2端と接地の間に接続される。出力キャパシタCoutは、出力ライン104と接地の間に接続される。
【0032】
この例では、第1スイッチS1~第4スイッチS4がすべてNチャンネルMOSFETとして示されるがその限りでなく、その他のトランジスタを用いてもよい。また下側の第2スイッチS2および第4スイッチS4は、ダイオードなどの整流素子であってもよい。
【0033】
コントローラIC200は、第1スイッチS1~第4スイッチS4を制御し、出力ライン104に出力電圧Voutを発生させる。具体的には、コントローラIC200は、第1状態φ1と第2状態φ2を、デッドタイムTを挟みながら、所定のスイッチング周波数fSWで交互に繰り返す。
第1状態φ1:
第1スイッチS1=ON
第2スイッチS2=OFF
第3スイッチS3=OFF
第4スイッチS4=ON
【0034】
第2状態φ2:
第1スイッチS1=OFF
第2スイッチS2=ON
第3スイッチS3=ON
第4スイッチS4=OFF
【0035】
デッドタイムT
第1スイッチS1=OFF
第2スイッチS2=OFF
第3スイッチS3=OFF
第4スイッチS4=OFF
【0036】
第1状態φ1、第2状態φ2それぞれの長さがTONであるとき、スイッチング周波数fSWは、1/(2×TON)である。言い換えると、スイッチング周波数fSWで動作するとは、第1状態φ1および第2状態φ2を、TON=1/(2×fSW)の長さで繰り返すことをいう。
【0037】
以上が直列キャパシタ降圧コンバータ100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0038】
図2は、第1状態φ1における直列キャパシタ降圧コンバータ100(主回路110)の等価回路図である。オンであるスイッチS1,S4は、単なる配線として示している。またカップルドインダクタ112は、励磁インダクタンスLmと、漏れインダクタンスLkを含む等価回路として示している。第1インダクタL1に流れる電流を第1コイル電流IL1、第2インダクタL2に流れる電流を、第2コイル電流IL2と称する。
【0039】
第1状態φ1では、直列キャパシタCr、第1インダクタL1(漏れインダクタンスLk)および出力キャパシタCoutが直列共振回路を形成しており、第1インダクタL1に共振電流Iresが流れる(IL1=Ires)。第2インダクタL2には、第1インダクタL1に流れる共振電流Iresのレプリカである共振電流Ires’と、励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流Imの合計電流が流れるから、第2コイル電流IL2は、IL2=Ires’+Imとなる。
【0040】
図3は、第2状態φ2における直列キャパシタ降圧コンバータ100(主回路110)の等価回路図である。オンであるスイッチS2,S3は、単なる配線として示している。
【0041】
第2状態φ2では、直列キャパシタCr、漏れインダクタンスLkおよび出力キャパシタCoutが直列共振回路を形成しており、第2インダクタL2に共振電流Iresが流れる(IL2=Ires)。第1インダクタL1には、第2インダクタL2に流れる共振電流Iresのレプリカである共振電流Ires’と、励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流Imの合計電流が流れるから、第1コイル電流IL1は、IL1=Ires’+Imとなる。
【0042】
第1状態φ1と第2状態φ2を交互に繰り返すと、定常状態では、直列キャパシタCrの両端間電圧は、Vin/2となり、カップルドインダクタ112に、残りのVin/2が印加される。第1インダクタL1と第2インダクタL2のインダクタンスが等しいとき、出力ライン104には、Vinの1/4倍の出力電圧Voutが発生する。
【0043】
直列キャパシタ降圧コンバータ100が、ZVS(Zero Voltage Switching)するための条件は、以下の通りである。
【0044】
・第1状態φ1から第2状態φ2への遷移
第1状態φ1の直後のデッドタイムT中において、IL1≧0であるとき、第2スイッチS2のボディダイオードに電流IL1が流れており、第2スイッチS2の両端間電圧が小さくなる。このときに、第2状態φ2に遷移、すなわち第2スイッチS2をターンオンすると、第2スイッチS2のZVSが成立する。なお、電流IL1,IL2は、出力ライン104に向かう向きを正にとる。
【0045】
またデッドタイムT中において、IL2<0であるときに、回生電流によって、第3スイッチS3と第4スイッチS4の接続ノードの電圧が上昇し、第3スイッチS3の両端間電圧が小さくなる。このときに、第2状態φ2に遷移、すなわち第3スイッチS3がターンオンすると、第3スイッチS3のZVSが成立する。
【0046】
・第2状態φ2から第1状態φ1への遷移
第2状態φ2の直後のデッドタイムT中において、IL1<0であるとき、回生電流によって、第1スイッチS1と第2スイッチS2の接続ノードの電圧が上昇し、第1スイッチS1の両端間電圧が小さくなる。このときに第1状態φ1に遷移、すなわち第1スイッチS1をターンオンすると、第1スイッチS1のZVSが成立する。
【0047】
またデッドタイム中において、IL2≧0であるとき、第4スイッチS4のボディダイオードに電流IL2が流れており、第4スイッチS4の両端間電圧が小さくなっている。このときに、第1状態φ1に遷移、すなわち第4スイッチS4をターンオンすると、第4スイッチS4のZVSが成立する。
【0048】
図4は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の電流波形図である。スイッチング周波数fswは、主回路110の共振周波数fと一致しており、共振電流Iresがゼロとなるタイミングで、第1状態φ1と第2状態φ2が遷移する。ここではデッドタイムは省略している。図4は、第1スイッチS1~第4スイッチS4を理想スイッチとした場合の、すなわち第1スイッチS1~第4スイッチS4が寄生容量を含まないとした場合の電流波形を示している。
【0049】
第1状態φ1の終わりのタイミングでは、第1インダクタL1の電流IL1は正もしくはゼロ(IL1≧0)、第2インダクタL2の電流IL2は負(IL2<0)であるから、上述のZVSの条件を満たしている。
【0050】
同様に、第2状態φ2の終わりのタイミングでは、第1インダクタL1の電流IL1は負(IL1<0)であり、第2インダクタL2の電流IL2は正もしくはゼロ(IL2≧0)であるから、上述のZVSの条件を満たしている。
【0051】
このように、直列キャパシタ降圧コンバータ100は、共振周波数fでスイッチングすることにより、ZVSの条件を満たすことができ、高効率動作が可能である。
【0052】
図5は、直列キャパシタ降圧コンバータ100の電流波形図である。図4では、MOSFETの寄生容量を無視した波形を示したが、実際には、寄生容量が存在する。この寄生容量により、デッドタイムを跨ぐ電流の不連続が抑制される。コイル電流IL1,IL2は連続となり、第1状態φ1と第2状態φ2では、デッドタイムに関して時間軸上で対称な波形を有する。
【0053】
図6は、デッドタイムを考慮した直列キャパシタ降圧コンバータ100の動作を説明するタイムチャートである。図6は、スイッチング周波数fSWが共振周波数fと等しいときの動作を示しており、第1状態φ1と第2状態φ2の長さTONはそれぞれ、共振周期T(=1/f)の1/2である。
【0054】
スイッチング周波数fSWを、共振周波数fと完全に一致させることができれば、ZVSの条件が常に成り立つため、高効率動作が可能となる。
【0055】
デッドタイムの損失について検討する。図6のタイムチャートにおける第2状態φ2と第1状態φ1の間のデッドタイムTD2に着目する。
【0056】
図7は、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移する間のデッドタイムTD2における動作波形図である。電圧VSW1は、第1スイッチングノードSW1の電圧であり、これをスイッチング電圧VSW1と称する。
【0057】
時刻tより前において、第2状態φ2であり、第1スイッチS1がオフ、第2スイッチS2がオンとなっている。第2状態φ2の間、第1スイッチングノードSW1の電圧VSW1は、0Vである。
【0058】
時刻tに、第2スイッチS2がターンオフし、デッドタイムTD2となる。上述したように、ZVSの条件が成立している場合、時刻tにおいて第1コイル電流IL1は負(<0)であり、第1スイッチングノードSW1に向かって流れ込む。この第1コイル電流IL1によって、第1スイッチS1および第2スイッチS2の寄生容量が充電され、スイッチング電圧VSW1が上昇する。そして、スイッチング電圧VSW1が、Vin/2付近まで上昇すると、第1スイッチS1のボディダイオードに、第1コイル電流IL1が流れ始める。第1コイル電流IL1がボディダイオードに流れている間、スイッチング電圧VSW1は、
SW1≒Vin/2+Vf
となる。Vfは、ボディダイオードの順方向電圧である。
【0059】
デッドタイムTD2から第1状態φ1に遷移するタイミングが早すぎると、言い換えるとデッドタイムTD2が短すぎると、充電区間中に、第1スイッチS1がターンオンすることとなる。充電区間中は、第1スイッチS1のドレインソース間電圧Vds1が大きく、ハードスイッチングとなり、効率が低下する。したがって、第1状態φ1への遷移タイミングは、ボディダイオードの導通後であることが好ましい。
【0060】
一方で、第1コイル電流IL1がボディダイオードに流れている間、ボディダイオードには、IL1×Vfの損失が生ずることとなるため、デッドタイムTD2が長すぎると、損失が大きくなる。
【0061】
したがって高効率動作を実現するためには、デッドタイムTD2の長さは、スイッチングノードの充電区間と、ボディダイオードの導通区間の境界に近いことが望ましい。ここでは、第2状態φ2から第1状態φ1に遷移するときのデッドタイムTD2を説明したが、第1状態φ1から第2状態φ2に遷移するときのデッドタイムTD1についても同様である。
【0062】
以下では、高効率動作が可能なデッドタイム制御について説明する。
【0063】
図8は、実施形態に係るコントローラIC200を備える直列キャパシタ降圧コンバータ100のブロック図である。コントローラIC200は、制御ロジック回路210、デッドタイム調節回路290、ドライバDR1~DR4を備える。コントローラIC200は、第1出力ピンOUT1~第4出力ピンOUT4、電圧検出ピンVS1を備える。第1出力ピンOUT1~第4出力ピンOUT4は、第1スイッチS1~第4スイッチS4のゲートと接続される。電圧検出ピンVS1は、第1スイッチングノードSW1と接続され、スイッチング電圧VSW1が入力される。
【0064】
制御ロジック回路210は、デッドタイムTD2に遷移するタイミングtを示すタイミング信号(tと符号を付す)を、デッドタイム調節回路290に供給する。
【0065】
デッドタイム調節回路290は、デッドタイムTD2に移行すると、タイミングtを基点として定めたデッドタイムTD1内の第1タイミングtと第2タイミングtにおけるスイッチング電圧VSW1を検出する。
【0066】
デッドタイム調節回路290は、デッドタイムTD2の長さを、当該デッドタイムTD2中に定められた第1タイミングtおよび第2タイミングtそれぞれにおける第1スイッチング電圧VSW1(x)およびVSW1(y)にもとづいて調節する。
【0067】
具体的にはデッドタイム調節回路290は、2つのスイッチング電圧VSW1(x)とVSW1(y)の電位差ΔVが小さくなるように、たとえば非ゼロの所定値に近づくように、デッドタイムTD2の長さを調節する。
【0068】
以上がコントローラIC200の構成である。続いてその動作を、図9図11を参照して説明する。
【0069】
図9は、図8のコントローラIC200においてデッドタイムTD2が短すぎる場合の動作を説明する波形図である。図10は、図8のコントローラIC200において、デッドタイムTD2が最適である場合の動作を説明する波形図である。図11は、図8のコントローラIC200において、デッドタイムTD2が長すぎる場合の動作を説明する波形図である。図9図11では、τの長さが、すなわちデッドタイムTD2の長さが異なっており、図9がもっとも短く、図11が最も長い。
【0070】
デッドタイムTD2に遷移した時刻tを基準とする。第1タイミングtは、基準時刻tから、ある時間τ経過後であり、この時間τが調節される。第2タイミングtは、第1タイミングtよりも所定時間Δt、後に定められる。また第1状態φ1に遷移するタイミングtは、第2タイミングtよりも所定時間Δt、後に定められる。デッドタイムTD2の長さは、τ+Δt+Δtである。
【0071】
図9では、第1スイッチングノードSW1の充電区間において、2つのタイミングt、tが発生している。そのため、2つのタイミングにおけるスイッチング電圧VSW1の電位差ΔVは大きい。この状態では、第1スイッチS1がドレインソース間電圧が非ゼロの状態でターンオンするハードスイッチングが発生するため、デッドタイム調節回路290は、次のサイクル以降、遅延時間τを長くして、デッドタイムTD2を引き延ばす。
【0072】
図10では、第1タイミングtは、スイッチング電圧VSW1が上昇している区間に発生し、第2タイミングtは、スイッチング電圧VSW1がVin/2+Vfまで到達した後に発生している。この状況では、2つのタイミングt,tにおけるスイッチング電圧VSW1の電位差が小さくなっている。この状態では、第1スイッチS1をターンオンさせれば、ハードスイッチングを防止でき、さらにボディダイオードの導通損失を低減できる。つまり図10の状態が、電位差ΔVが最適値Voptであるといえる。
【0073】
図11では、第1タイミングtおよび第2タイミングtはいずれも、スイッチング電圧VSW1がVin/2+Vfまで到達した後に発生している。この状況では、2つのタイミングt,tにおけるスイッチング電圧VSW1の電位差ΔVはゼロである。図11の動作モードでは、第1スイッチS1のボディダイオードに長い時間、第1コイル電流IL1が流れるため、損失が大きくなる。この場合、デッドタイム調節回路290は、次のサイクル以降、遅延時間τ、すなわちデッドタイムTD2を短くする。
【0074】
以上がコントローラIC200の動作である。このコントローラIC200によれば、デッドタイムTD2中の2つのタイミングt,tにおけるスイッチング電圧VSW1の電位差ΔVが小さくなるように、デッドタイムTD2の長さ(遅延時間τ)を最適化することで、低損失なスイッチングが可能となる。
【0075】
図11に示すように、電位差ΔVがゼロの状態は、デッドタイムTD2が長すぎることを意味する。したがって、電位差ΔVは非ゼロでなるべく小さいことが好ましい。そこでデッドタイム調節回路290は、電位差ΔVが、非ゼロの小さい目標レベルVoptに近づくように、遅延時間τを調節してもよい。
【0076】
なお、制御ロジック回路210とデッドタイム調節回路290の間で送受信される信号の種類は限定されない。たとえばデッドタイム調節回路290は、デッドタイムの長さを示すデジタル値DTを、制御ロジック回路210に供給し、制御ロジック回路210がデジタル値DTにもとづいて、遷移を行ってもよい。
【0077】
あるいはデッドタイム調節回路290は、デッドタイムの長さを測定し、デッドタイムの終了のタイミングtを示すタイミング信号tを、制御ロジック回路210に供給してもよい。制御ロジック回路210は、このタイミング信号tをトリガとして、デッドタイムTD2から第1状態φ1に遷移してもよい。
【0078】
図12は、一実施例に係るコントローラIC200Aを備える直列キャパシタ降圧コンバータ100Aの回路図である。デッドタイム調節回路290Aは、サンプルホールド回路292_1,292_2、減算器294、調節部296、タイマー298を備える。デッドタイム調節回路290Aは、アナログ回路で構成してもよいし、デジタル回路で構成してもよい。
【0079】
タイマー298には、遅延時間τを示す信号が入力されている。タイマー298は、タイミング信号tをトリガーとして時間測定を開始し、第1タイミングt、第2タイミングtおよび遷移タイミングtを示すタイミング信号を生成する。
【0080】
サンプルホールド回路292_1は、第1タイミングtにおいてスイッチング電圧VSW1をサンプルホールドする。サンプルホールド回路292_2は、第2タイミングtにおいてスイッチング電圧VSW1をサンプルホールドする。
【0081】
減算器294は、サンプルホールド回路292_1,292_2によってサンプルホールドされたスイッチング電圧VSW1の差分である電位差ΔVを生成する。調節部296は、差分ΔVにもとづいて、遅延時間τ(デッドタイムの長さTD2)を増減する。たとえば、調節部296は、電位差ΔVが、所定の目標値(しきい値)Voptより大きい場合、デッドタイムτを長くし、電位差ΔVが、目標値Voptより小さい場合、デッドタイムτを長くしてもよい。たとえば調節部296は、電位差ΔVと目標値Voptを比較する比較器と、比較器の出力に応じてカウント値が増減するアップダウンカウンタと、を含んでもよい。
【0082】
あるいは調節部296は、電位差ΔVと目標値Voptの誤差がゼロに近づくように、フィードバック制御によってデッドタイムτの長さを調節してもよい。調節部296をアナログ回路で構成する場合、調節部296は、エラーアンプを含みうる。調節部296をデジタル回路で構成する場合、調節部296は、PI(比例・積分)コントローラなどで構成できる。
【0083】
ここまでは、第2状態φ2から第1状態φ1への遷移途中のデッドタイムTD2の調節について説明した。コントローラIC200Aは、第1状態φ1から第2状態φ2への遷移途中のもう一方のデッドタイムTD1の長さを、調節したデッドタイムTD2の長さに揃えてもよい。あるいは以下で説明するように、デッドタイムTD1の調節も同様に行うことができる。
【0084】
図13は、変形例1に係るコントローラIC200Bのブロック図である。コントローラIC200Bは、デッドタイム調節回路290に代えて、デッドタイム調節回路291を備える。コントローラIC200Bの電圧検出ピンVS2は、第2スイッチングノードSW2と接続され、スイッチング電圧VSW2が入力される。
【0085】
制御ロジック回路210は、デッドタイムTD1に遷移するタイミングtを示すタイミング信号(tと符号を付す)を、デッドタイム調節回路291に供給する。
【0086】
デッドタイム調節回路291は、デッドタイムTD1に移行すると、タイミングtを基点として定めたデッドタイムTD2内の第1タイミングtと第2タイミングtにおけるスイッチング電圧VSW2を検出する。
【0087】
デッドタイム調節回路291は、デッドタイムTD1の長さを、当該デッドタイムTD1中に定められた第1タイミングtおよび第2タイミングtそれぞれにおける第2スイッチング電圧VSW2(x)およびVSW2(y)にもとづいて調節する。デッドタイム調節回路291は、デッドタイムTD1の終点を示すタイミング信号t(もしくはデッドタイムの長さを示すデータ)を制御ロジック回路210に供給する。
【0088】
この構成によれば、スイッチング電圧VSW2にもとづいて、デッドタイムTD1の長さを最適化できる。コントローラIC200Bは、もう一方のデッドタイムTD2の長さを、最適化したデッドタイムTD1の長さと等しくしてもよい。
【0089】
図14は、変形例2に係るコントローラIC200Cを備える直列キャパシタ降圧コンバータ100Cのブロック図である。コントローラIC200Cは、2つのデッドタイム調節回路290,291を備える。
【0090】
図14の変形例によれば、2つのデッドタイムTD1,TD2の長さを独立に最適化できる。
【0091】
(用途)
図15は、直列キャパシタ降圧コンバータ100を備える電子機器700の一例を示す図である。電子機器700の好適な一例はサーバーである。元来、サーバーには12Vの電源線が引き込まれていたため、内部回路710は12Vで動作するように設計されている。内部回路710は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、LAN(Local Area Network)のインタフェース回路と、12Vの電圧を降圧するDC/DCコンバータなどを含みうる。
【0092】
近年、電線に流れる電流を減らすために、バス電圧を12Vから48Vに置き換える動きが進められている。この場合に、48Vの電源電圧を12Vに降圧する電源回路720が必要となる。上述したゲインが1/4倍の直列キャパシタ降圧コンバータ100は、こうした電源回路720に好適に用いることができる。
【0093】
電子機器700はサーバーに限定されず、車載機器であってもよい。従来の自動車のバッテリは12Vあるいは24Vが主流であるが、ハイブリッド車両では、48Vシステムが採用される場合があり、この場合も48Vのバッテリ電圧を、12Vに変換する電源回路が必要とされる。このような場合に、1/4倍の直列キャパシタ降圧コンバータ100を好適に利用することができる。
【0094】
その他、電子機器700は、産業機器、OA機器であってもよいし、オーディオ機器などの民生機器であってもよい。
【0095】
(付記)
本開示に含まれる技術は、以下のように把握することができる。
【0096】
(項目1)
直列キャパシタ降圧コンバータのコントローラ回路であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端である第1スイッチングノードと接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1スイッチングノードの間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端である第2スイッチングノードの間に接続された第3スイッチと、
前記第2スイッチングノードと接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記コントローラ回路は、
前記第1スイッチと前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチと前記第3スイッチがオンである第2状態と、を、デッドタイムを挟みながら交互に繰り返すように、前記第1スイッチから前記第4スイッチのオン、オフ状態を指示する複数の制御信号を生成する制御ロジック回路と、
前記第1スイッチングノードと前記第2スイッチングノードの一方に生ずる第1スイッチング電圧を監視し、前記デッドタイムの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節するデッドタイム調節回路と、
を備える、コントローラ回路。
【0097】
(項目2)
前記デッドタイム調節回路は、前記第1タイミングにおける前記第1スイッチング電圧と、前記第2タイミングにおける前記第1スイッチング電圧の電位差を検出し、前記電位差と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、前記デッドタイムの長さを調節する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0098】
(項目3)
前記デッドタイム調節回路は、前記電位差が前記しきい値より大きいとき、前記デッドタイムの長さを長くする、項目2に記載のコントローラ回路。
【0099】
(項目4)
前記デッドタイム調節回路は、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを短くする、項目3に記載のコントローラ回路。
【0100】
(項目5)
前記デッドタイム調節回路は、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを維持する、項目3に記載のコントローラ回路。
【0101】
(項目6)
前記デッドタイム調節回路は、前記第1スイッチングノードおよび前記第2スイッチングノードの他方に生ずる第2スイッチング電圧をさらに監視し、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、を、前記第1スイッチング電圧および前記第2スイッチング電圧にもとづいて独立に調節する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0102】
(項目7)
前記デッドタイム調節回路は、前記第1スイッチング電圧のみを監視し、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、の両方を、前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節する、項目1に記載のコントローラ回路。
【0103】
(項目8)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から7のいずれかに記載のコントローラ回路。
【0104】
(項目9)
直列キャパシタ降圧コンバータの主回路と、
前記主回路を駆動する項目1から8のいずれかに記載のコントローラ回路と、
を備える、直列キャパシタ降圧コンバータ。
【0105】
(項目10)
直列キャパシタ降圧コンバータの制御方法であって、
前記直列キャパシタ降圧コンバータは、
入力ラインおよび出力ラインと、
第1端が前記入力ラインと接続された第1スイッチと、
それぞれの第1端が前記出力ラインと接続される第1インダクタおよび第2インダクタを含むカップルドインダクタと、
前記第1インダクタの第2端である第1スイッチングノードと接地の間に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチの第2端と前記第1スイッチングノードの間に接続された直列キャパシタと、
前記第1スイッチの前記第2端と前記第2インダクタの第2端である第2スイッチングノードの間に接続された第3スイッチと、
前記第2スイッチングノードと接地の間に接続された第4スイッチと、
前記出力ラインと接続された出力キャパシタと、
を備え、
前記制御方法は、
前記第1スイッチと前記第4スイッチがオンである第1状態と、前記第2スイッチと前記第3スイッチがオンである第2状態と、を、デッドタイムを挟みながら交互に繰り返すステップと、
前記第1スイッチングノードおよび前記第2スイッチングノードの一方に生ずる第1スイッチング電圧を監視するステップと、
前記デッドタイムの長さを、当該デッドタイム中に定められた第1タイミングおよび第2タイミングそれぞれにおける前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節するステップと、
を備える、制御方法。
【0106】
(項目11)
前記調節するステップは、前記第1タイミングにおける前記第1スイッチング電圧と、前記第2タイミングにおける前記第1スイッチング電圧の電位差を検出し、前記電位差と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、前記デッドタイムの長さを調節する、項目10に記載の制御方法。
【0107】
(項目12)
前記調節するステップは、前記電位差が前記しきい値より大きいとき、前記デッドタイムの長さを長くする、項目11に記載の制御方法。
【0108】
(項目13)
前記調節するステップは、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを短くする、項目12に記載の制御方法。
【0109】
(項目14)
前記調節するステップは、前記電位差が前記しきい値より小さいとき、前記デッドタイムの長さを維持する、項目12に記載の制御方法。
【0110】
(項目15)
前記第1スイッチングノードおよび前記第2スイッチングノードの他方に生ずる第2スイッチング電圧をさらに監視するステップをさらに備え、
前記調節するステップは、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、を、前記第1スイッチング電圧および前記第2スイッチング電圧にもとづいて独立に調節する、項目10に記載の制御方法。
【0111】
(項目16)
前記調節するステップは、前記第1状態から前記第2状態に遷移する間の第1デッドタイムの長さと、前記第2状態から前記第1状態に遷移する間の第2デッドタイムの長さと、の両方を、前記第1スイッチング電圧にもとづいて調節する、項目10に記載の制御方法。
【0112】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示に含まれ、また本発明の範囲を構成しうることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0113】
100 直列キャパシタ降圧コンバータ
102 入力ライン
104 出力ライン
106 接地ライン
110 主回路
112 カップルドインダクタ
Lk 漏れインダクタンス
Lm 励磁インダクタンス
L1 第1インダクタ
L2 第2インダクタ
Cr 直列キャパシタ
S1 第1スイッチ
S2 第2スイッチ
S3 第3スイッチ
S4 第4スイッチ
Cout 出力キャパシタ
200 コントローラIC
210 制御ロジック回路
DR ドライバ
290,291 デッドタイム調節回路
292 サンプルホールド回路
294 減算器
296 調節部
298 タイマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15