(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002453
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】スライド式回動扉
(51)【国際特許分類】
E05D 15/36 20060101AFI20231228BHJP
E06B 7/18 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E05D15/36
E06B7/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101633
(22)【出願日】2022-06-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 製品設置日 令和4年3月17日 設置場所 塩谷様邸
(71)【出願人】
【識別番号】505064390
【氏名又は名称】株式会社美研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 久吉
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EA03
2E036EB02
2E036EB07
2E036FA10
2E036FB01
2E036FB02
2E036GA07
2E036HA01
2E036HB18
2E036HC02
2E036HC07
(57)【要約】
【課題】安全性の高いスライド式回動扉を提供する。
【解決手段】扉本体2と、扉本体2の上端部に扉本体2の幅方向に互いに離間して設けられた第一戸車3および第二戸車4と、第一戸車3を吊り下げた状態で走行案内する第一レール5と、第二戸車4を吊り下げた状態で走行案内する、第一レール5と異なる方向に延設された第二レール6と、を有し、扉本体2を第一レール5および第二レール6に沿ってスライドさせることで開閉操作を行う構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉本体(2)と、
前記扉本体(2)の上端部に当該扉本体(2)の幅方向に互いに離間して設けられた第一戸車(3)および第二戸車(4)と、
前記第一戸車(3)を吊り下げた状態で走行案内する第一レール(5)と、
前記第二戸車(4)を吊り下げた状態で走行案内する、前記第一レール(5)と異なる方向に延設された第二レール(6)と、
を有し、前記扉本体(2)を前記第一レール(5)および前記第二レール(6)に沿ってスライドさせることで開閉操作を行うスライド式回動扉。
【請求項2】
前記第一レール(5)と前記第二レール(6)が直角をなすように設けられており、前記第一戸車(3)が前記扉本体(2)の開口側端部、前記第二戸車(4)が前記扉本体(2)の開口側の反対側端部にそれぞれ設けられている請求項1に記載のスライド式回動扉。
【請求項3】
前記扉本体(2)の前記第一戸車(3)側の下端部が、前記第一戸車(3)を支点として前記扉本体(2)の厚み方向に揺動可能となっている請求項2に記載のスライド式回動扉。
【請求項4】
前記扉本体(2)を閉じた状態において当該扉本体(2)を外枠(12)に吸着して、前記扉本体(2)と前記外枠(12)との間の水密性を保持する磁性体(17)をさらに有する請求項1から3のいずれか1項に記載のスライド式回動扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばシャワー室などに用いられるスライド式回動扉に関する。
【背景技術】
【0002】
シャワー室や浴室などの比較的狭い空間に設けられる開閉扉には、出入口の十分な開口幅を確保しつつ、内向きに開扉した時に空間内の設置物に干渉しない構成とすることが要求される。特に最近はハイグレード品を中心に、天井面にシャワー吐水口が配置されたオーバーヘッドシャワーが設けられることがあり、開閉扉の開閉時における扉本体との干渉が懸念されるケースが増えている。
【0003】
そこで、例えば下記特許文献1に示す構成においては、外枠部材24(上枠24T、下枠24B)に長孔30を形成するとともに扉本体26に1本の軸部材32を設け、この軸部材32が長孔30内で回転および移動することによって、閉塞状態の扉本体26を開放状態まで移動し得るようにしている。この構成によると、出入口の十分な有効開口幅MSを確保しつつ、浴室内での扉本体26の移動軌跡が狭くなり、浴室内のスペース効率が高くなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す構成においては、扉本体26が1本の軸部材32によって回転および移動するため、例えば、浴室の使用者が、不用意に扉本体に手を付いたときに、この扉本体が意図せず軸部材32周りに回転したり、回転する扉本体26の幅方向端部と浴室の内壁11との間に手などが挟まれたりするおそれがあり、安全性の面で十分とはいえない。
【0006】
そこで、この発明は、安全性の高いスライド式回動扉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明では、
扉本体と、
前記扉本体の上端部に当該扉本体の幅方向に互いに離間して設けられた第一戸車および第二戸車と、
前記第一戸車を吊り下げた状態で走行案内する第一レールと、
前記第二戸車を吊り下げた状態で走行案内する、前記第一レールと異なる方向に延設された第二レールと、
を有し、前記扉本体を前記第一レールおよび前記第二レールに沿ってスライドさせることで開閉操作を行うスライド式回動扉を構成した。
【0008】
このようにすると、この第一レールおよび第二レールに沿って扉本体が移動することになるため、使用者が仮に扉本体に手を付いたとしても、扉本体が意図せず回転することはない。また、扉本体と内壁との間には、設計上必ず隙間が確保されるため、手などの挟み込みを防止することができる。これにより、高い安全性を確保することができる。
【0009】
前記構成においては、前記第一レールと前記第二レールが直角をなすように設けられており、前記第一戸車が前記扉本体の開口側端部、前記第二戸車が前記扉本体の開口側の反対側端部にそれぞれ設けられている構成とするのが好ましい。このようにすると、扉本体の幅方向両端に設けられた各戸車によって、扉本体を安定して移動することができる。
【0010】
前記構成においては、前記扉本体の前記第一戸車側の下端部が、前記第一戸車を支点として前記扉本体の厚み方向に揺動可能となっているのが好ましい。このようにすると、第一戸車側、すなわち、扉本体の開口側端部に開閉操作などの際に指を挟みそうになったとしても、扉本体と指などとの接触に伴ってこの扉本体が揺動して逃げるため、指などが強く挟み込まれるのを防止することができる。
【0011】
前記各構成においては、前記扉本体を閉じた状態において当該扉本体を外枠に吸着して、前記扉本体と前記外枠との間の水密性を保持する磁性体をさらに有するのが好ましい。このようにすると、扉本体の内側から外側に水などが飛散するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、上記のように、スライド式回動扉を構成したので、開閉操作時などにおける使用者の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図1に示すスライド式回動扉を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図
【
図6】
図1に示すスライド式回動扉の扉本体の斜視図
【
図7】
図6に示す扉本体の要部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図
【
図8】
図1に示すスライド式回動扉の作用を説明する平面図
【
図9】
図1に示すスライド式回動扉の開閉時における扉本体の軌跡を示す平面図
【
図10】
図1に示すスライド式回動扉の他例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係るスライド式回動扉1の一実施形態を
図1から
図9を用いて説明する。このスライド式回動扉1は、例えばシャワー室の出入り口に用いられるスライド式の内開き回動扉であって、扉本体2、第一戸車3および第二戸車4、ならびに、第一レール5および第二レール6を主要な構成要素としている。
【0015】
図6に示すように、扉本体2は、縦長長方形の板状の部材であり、外側四辺を構成する枠体7(上部枠体7a、下部枠体7b、左右枠体)の内側に、透明の強化ガラス8が嵌め込まれた構成となっている。この扉本体2の表裏面のほぼ中心位置には、それぞれ扉ハンドル9が設けられている。また、この扉ハンドル9の近傍には、扉本体2の開方向を示す表示部材10が設けられている。シャワー室側に設けられる表示部材10には「PULL」の文字が、脱衣室側に設けられる表示部材10には「PUSH」の文字がそれぞれ表示されている。なお、透明の強化ガラス8の代わりに、半透明または不透明の強化ガラス8や樹脂材などを採用することもできる。
【0016】
第一戸車3および第二戸車4は、扉本体2の上部枠体7aの長さ方向両端、すなわち、扉本体2の幅方向の両端に離間して設けられている。各戸車3、4は、回転軸方向に対をなす車輪が2列に配置された4個の車輪から構成され、鉛直方向に設けられた軸体11によって扉本体2(上部枠体7a)に対し鉛直軸周りに回転自在となっている。第一戸車3は扉本体2の開口側端部に、第二戸車4は扉本体2の開口側の反対側端部にそれぞれ設けられている。第一戸車3の軸体11は、扉本体2の厚さ方向中心に配置されているのに対し、第二戸車4の軸体11は、扉本体2の厚さ中心よりもシャワー室側に偏心した位置(
図8中の矢印gを参照)に配置されている。また、
図7(a)に示すように、第一戸車3は、扉本体2の幅方向端面に設けられており、その軸体11の回転軸は扉本体2の幅方向端部の外側に位置している。
【0017】
第一レール5は、第一戸車3を吊り下げた状態で走行案内する部材であって、シャワー室を構成する外枠12の出入り口部分の上部に設けられている。この第一レール5には、第一戸車3の車輪が走行する一対の走行溝13が形成されている。第二レール6は、第二戸車4を吊り下げた状態で走行案内する部材であって、シャワー室の出入り口から奥方向(第一レール5の延設方向と異なる方向)に向かって、外枠12の側壁部分の上部に設けられている。この第二レール6には、第二戸車4の車輪が走行する一対の走行溝13が形成されている。
【0018】
この実施形態に係るシャワー室は水平断面が正方形なので、外枠12の出入り口部分と側壁部分がなす角度は直角となり、第一レール5と第二レール6も直角をなしている。
図2に示すように、扉本体2を閉じた状態において、第一レール5で走行案内される第一戸車3の走行方向は扉本体2の幅方向を向いているのに対し、第二レール6で案内される第二戸車4の走行方向は扉本体2の厚み方向を向いている。扉本体2と第一戸車3および第二戸車4とのなす角度は、各戸車3、4が軸体11周りに相対回転することによって次第に変化し、扉本体2を開いた状態において、第一戸車3の走行方向は扉本体2の幅方向にほぼ直交するのに対し、第二戸車4の走行方向は扉本体2の厚み方向にほぼ直交している。
【0019】
なお、第一レール5と第二レール6のなす角は、シャワー室の水平断面の形状によって変わり、例えば、シャワー室の水平断面が正五角形のときは第一レール5と第二レール6のなす角度は108度となり、シャワー室の水平断面が正六角形のときは第一レール5と第二レール6のなす角度は120度となる。
【0020】
扉本体2の第二戸車4の位置に対応する下部枠体7bにはガイドローラ14が設けられる一方で、シャワー室を構成する外枠12の側壁部分の下部には、ガイドローラ14が走行するガイド溝15がシャワー室の奥方向に向かって延設されている。その一方で、扉本体2の第一戸車3の位置に対応する下端部にはガイドローラ14は設けられておらず、扉本体2の第一戸車3側の下端部が、第一戸車3を支点として扉本体2の厚み方向に揺動可能となっている。また、この外枠12の側壁部分には、シャワー室の内外を仕切るガラス戸16が固定されている。
【0021】
図4に示すように、扉本体2の幅方向両端には、この扉本体2の高さ方向の全長に亘って磁性体シート17が設けられるとともに、シャワー室を構成する外枠12には、扉本体2を閉じたときに磁性体シート17に沿う位置に磁石内蔵式セミエアタイト気密ゴム18(以下、磁石内蔵ゴム18と略称する)が設けられており、この扉本体2を閉じると磁性体シート17に磁石内蔵ゴム18が吸着する。
【0022】
このスライド式回動扉1の使用態様について説明する。扉本体2を閉じた状態においては、磁性体シート17と磁石内蔵ゴム18との間の吸着力によって扉本体2が外枠12に吸着している。これにより、扉本体2と外枠12との間の水密性が高まり、シャワー室内の水が外部に漏出するのを防止することができる。
【0023】
脱衣室側から扉本体2を開くときは、脱衣室側の扉ハンドル9を握って扉本体2をシャワー室側に押す。すると、その押圧力によって磁性体シート17と磁石内蔵ゴム18との間の吸着が解除されて、
図8中に矢印で示すように、第一戸車3が第一レール5を、第二戸車4が第二レール6をそれぞれ走行し、扉本体2がスライドしながら回動する。扉本体2が半分程度開いたら扉ハンドル9から手を離し、扉本体2の開口側端部などに手を添えて完全に開いた位置まで扉本体2をそのままスライドさせる。
【0024】
また、脱衣室側から扉本体2を閉じるときは、扉本体2の開口側端部に手を添えて扉本体2が半分程度閉じた状態までスライドさせる。さらに、脱衣室側の扉ハンドル9を握って扉本体2を完全に閉じた位置までスライド気味に引き続ける。そして、扉本体2が完全に閉じた位置で、磁性体シート17と磁石内蔵ゴム18との間の吸着力によって扉本体2を外枠12に吸着させる。
【0025】
シャワー室側から扉本体2を開くときは、シャワー室側の扉ハンドル9を握って扉本体2をシャワー室側に引く。すると、その引張力によって磁性体シート17と磁石内蔵ゴム18との間の吸着が解除されて、
図8で説明したのと反対の向きに第一戸車3が第一レール5を、第二戸車4が第二レール6をそれぞれ走行し、扉本体2がスライドしながら回動する。そして、そのまま完全に開いた位置までスライド気味に扉本体2を引き続ける。
【0026】
また、シャワー室側から扉本体2を閉じるときは、シャワー室側の扉ハンドル9を握って扉本体2を完全に閉じた位置までスライド気味に押し続ける。
【0027】
この開扉操作においては、扉本体2は押した方向または引いた方向に直接移動するのではなく、これらの方向と直交するスライド方向に移動するため、使用者が不用意に扉ハンドル9を押したり引いたりした場合でも、それによって使用者がバランスを崩すおそれがない。また、扉本体2は第一レール5および第二レール6に沿ってスライドし、シャワー室の内壁面との間に所定の大きさの隙間が常に確保されるため、使用者が扉本体2とシャワー室の内壁との間に指を挟むおそれもない。
【0028】
また、第一戸車3の軸体11は、扉本体2の厚さ方向中心に配置されているのに対し、第二戸車4の軸体11は、扉本体2の厚さ中心よりもシャワー室側に偏心した位置に配置されているため、開扉操作の際に扉本体2の開口側の反対側端部がシャワー室側に容易に回動し、その開扉操作をスムーズに行うことができる。
【0029】
また、扉本体2の第二戸車4の位置に対応する下端部にはガイドローラ14が設けられており、このガイドローラ14が外枠12の側壁の下部に延設されたガイド溝15を走行するため、扉本体2を安定的に開閉することができる。
【0030】
また、扉本体2の第一戸車3側の下端部が、第一戸車3を支点として扉本体2の厚み方向に揺動可能となっているため、扉本体2を閉めるときにこの扉本体2と外枠12との間に指を挟みそうになっても、扉本体2が揺動することによって指を強く挟まない程度の隙間を確保することができる。このため、指詰めによる怪我を防止することができる。
【0031】
また、扉本体2は
図9に示す軌跡に沿って移動し、シャワー室の内側に入り込みにくいため、例えばシャワー室の天井面にシャワー吐水口が配置されたオーバーヘッドシャワーSが設けられていても、オーバーヘッドシャワーSと扉本体2が干渉するのを防止することができる。また、扉本体2を完全に開いた状態においては、この扉本体2がシャワー室の側壁にほぼ沿った状態となるため、広い有効開口幅を確保することができる。
【0032】
また、第一戸車3が扉本体2の幅方向端面に設けられており、その軸体11の回転軸が扉本体2の幅方向端部の外側に位置しているため、扉本体2がスライドしつつ軸体11周りに回動する際に、扉本体2の幅方向の角部と外枠12が干渉するのを防止することができる。
【0033】
スライド式回動扉1の他例を
図10に示す。この他例は、基本的な構成は
図1などで説明したスライド式回動扉1と共通するが、シャワー室の開口部の横幅に対し半分の横幅の2枚の扉本体2が設けられている点で相違する。この他例においても、上記と同様の操作で扉本体2をスムーズに開閉することができるとともに、開閉操作の際の高い安全性を確保することができる。
【0034】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1 スライド式回動扉
2 扉本体
3 第一戸車
4 第二戸車
5 第一レール
6 第二レール
7 枠体
7a 上部枠体
7b 下部枠体
8 強化ガラス
9 扉ハンドル
10 表示部材
11 軸体
12 外枠
13 走行溝
14 ガイドローラ
15 ガイド溝
16 ガラス戸
17 磁性体シート
18 磁石内蔵式セミエアタイト気密ゴム(磁石内蔵ゴム)